特許第6444456号(P6444456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444456
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】燃料電池システムの起動方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04225 20160101AFI20181217BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20181217BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01M8/04225
   H01M8/04302
   H01M8/10
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-130831(P2017-130831)
(22)【出願日】2017年7月4日
(62)【分割の表示】特願2014-151995(P2014-151995)の分割
【原出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2017-199689(P2017-199689A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】谷本 智
(72)【発明者】
【氏名】濱地 正和
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】樽家 憲司
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−091314(JP,A)
【文献】 特開2011−175777(JP,A)
【文献】 特開2008−243488(JP,A)
【文献】 特開2012−113848(JP,A)
【文献】 特表2007−504623(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0178342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスが供給されると発電する燃料電池と、当該燃料電池を含む熱媒体回路内で熱媒体を循環させるポンプと、を備えた燃料電池システムの起動方法であって、
前記燃料電池が氷点下で起動されたか否かを判定する起動判定工程と、
氷点下で起動されたと判定された後、前記燃料電池がアイドル状態であるか否かを判定するアイドル判定工程と、を備え、
前記アイドル判定工程において前記燃料電池がアイドル状態であると判定された場合には、前記ポンプをオフからオンにし、前記熱媒体の循環を開始することを特徴とする燃料電池システムの起動方法。
【請求項2】
氷点下で起動されたと判定された後、前記燃料電池の内部温度及び前記熱媒体回路の内部温度に関する所定の開始条件が成立したか否かを判定する開始条件判定工程をさらに備え、
前記アイドル判定工程において前記燃料電池がアイドル状態でないと判定された場合には、その後前記開始条件判定工程において前記開始条件が成立したと判定されるまで、前記ポンプをオフにし続け、前記熱媒体の循環を開始せず、その後前記開始条件判定工程において前記開始条件が成立したと判定された場合には、前記ポンプをオフからオンにし、前記熱媒体の循環を開始することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムの起動方法。
【請求項3】
前記開始条件判定工程では、前記燃料電池の内部温度と前記熱媒体回路の内部温度とに基づいて前記開始条件が成立したか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システムの起動方法。
【請求項4】
前記開始条件は、前記燃料電池の内部温度と前記熱媒体回路の内部温度との差が所定値以上であることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システムの起動方法。
【請求項5】
前記アイドル判定工程では、前記燃料電池の目標電流値に基づいて前記アイドル状態であるか否かを判定することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の燃料電池システムの起動方法。
【請求項6】
前記ポンプをオンにし、前記熱媒体の循環を開始した後には、前記燃料電池の内部の温度が高くなるほど前記熱媒体の単位時間当たりの循環量を増加することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の燃料電池システムの起動方法。
【請求項7】
反応ガスが供給されると発電する燃料電池と、当該燃料電池を含む熱媒体回路内で熱媒体を循環させるポンプと、を備えた燃料電池システムの起動方法であって、
前記燃料電池がアイドル状態であるか否かを判定するアイドル判定工程と、
前記燃料電池の内部温度及び前記熱媒体回路の内部温度に関する所定の開始条件が成立しているか否かを判定する開始条件判定工程と、
前記燃料電池が氷点下で起動された後、前記アイドル判定工程の判定結果又は前記アイドル判定工程の判定結果及び前記開始条件判定工程の判定結果の組み合わせに応じて前記ポンプをオフからオンにし、前記熱媒体の循環を開始する熱媒体循環工程と、を備えることを特徴とする燃料電池システムの起動方法。
【請求項8】
前記熱媒体循環工程では、前記アイドル判定工程において前記燃料電池がアイドル状態であると判定された場合には、前記ポンプをオフからオンにすることによって前記熱媒体の循環を開始し、前記アイドル判定工程において前記燃料電池がアイドル状態でないと判定された場合には前記開始条件判定工程を実行し、当該開始条件判定工程において前記開始条件が成立していると判定された場合に、前記ポンプをオフからオンにすることによって前記熱媒体の循環を開始することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システムの起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池システムの起動方法、特に冷媒の温度が0℃以下となるような氷点下の環境下における燃料電池システムの起動方法が開示されている。特許文献1の燃料電池システムでは、氷点下起動時には、燃料電池の温度を調整するための冷媒の循環を停止し、燃料電池の発電による昇温を促進することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−257635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の燃料電池システムでは、上述のように氷点下起動時には冷媒の循環を一時的に停止し、燃料電池の内部温度が所定温度以上まで上昇してから冷媒の循環を開始している。しかしながらこれでは、図5に示すように冷媒循環を停止している間における燃料電池の昇温は速やかにできるものの、冷えた冷媒の循環を開始した途端に燃料電池スタックの総電圧及び最低セル電圧共に大きく低下してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、燃料電池の電圧を過剰に低下させることなく適切なタイミングで冷媒の循環を開始できる燃料電池システムの起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)燃料電池システム(例えば、後述の燃料電池システム1)は、反応ガスが供給されると発電する燃料電池(例えば、後述の燃料電池スタック2)と、当該燃料電池を含む熱媒体回路(例えば、後述の冷媒循環路51)内で熱媒体を循環させる温度調整装置(例えば、後述のウォータポンプ52)と、を備える。この燃料電池システムの起動方法は、所定の起動指令に応じて前記燃料電池への反応ガスの供給を開始する発電工程(例えば、後述のシステム起動処理)と、前記燃料電池の内部の温度と前記熱媒体回路の内部の温度との差(例えば、後述の内外温度差)を推定する温度差推定工程(例えば、後述の図3のS6の処理)と、低温起動時には前記発電工程を開始してから前記温度差が所定値(例えば、後述の導入判定温度差)を超えたことに応じて前記熱媒体の循環を開始する熱媒体循環工程(例えば、後述の図3のS7〜S9の処理)と、を備える。
【0007】
(2)燃料電池システムの起動方法は、所定の起動指令に応じて前記燃料電池への反応ガスの供給を開始する発電工程(例えば、後述のシステム起動処理)と、前記燃料電池の目標電流値を取得し、当該目標電流値に基づいてアイドル状態であるか否かを判定するアイドル判定工程(例えば、後述の図3のS3の処理)と、低温起動時には前記発電工程を開始してから前記アイドル状態であると判定されたことに応じて前記熱媒体の循環を開始する熱媒体循環工程(例えば、後述の図3のS3〜S9の処理)と、を備える。
【0008】
(3)この場合、前記熱媒体循環工程では、前記燃料電池の内部の温度が高くなるほど前記熱媒体の単位時間当たりの循環量を増加することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明では、燃料電池システムの起動時には、始めに反応ガスの供給を開始し、さらに熱媒体の循環を停止する。これにより、起動開始直後に冷えた熱媒体が燃料電池を流れることによって、発電による燃料電池の昇温が阻害されるのを防止でき、ひいては速やかに燃料電池を要求に応じた出力が可能な状態にできる。また、このように熱媒体の循環を停止すると燃料電池の内部温度が速やかに上昇するものの、燃料電池の内部温度と熱媒体回路の内部温度との差も速やかに広がってしまう。そこで本発明では、燃料電池の内部と熱媒体回路の内部との温度差が所定値を超えたことに応じて熱媒体の循環を開始する。換言すれば本発明では、温度差が過剰に大きくなる前に熱媒体の循環を開始する。これにより、冷えた熱媒体の循環を開始することによる燃料電池の電圧の低下を小さくできるので、燃料電池システムの低温起動時における発電安定性を向上することができる。
【0010】
(2)本発明では、燃料電池システムの起動時には、始めに反応ガスの供給を開始し、さらに熱媒体の循環を停止する。これにより、(1)と同様に発電による燃料電池の昇温が阻害されるのを防止でき、ひいては速やかに燃料電池を要求に応じた出力が可能な状態にできる。また本発明では、燃料電池の目標電流値に基づいてアイドル状態であるか否かを判定し、アイドル状態であると判定された場合には、これに応じて熱媒体の循環を開始する。熱媒体の循環を開始すると燃料電池の昇温速度は低下してしまう。しかしアイドル状態である場合には、そもそも燃料電池から大きな電流が取り出されることも無いため、燃料電池の昇温速度が遅くてもそれほど支障はない。むしろ、燃料電池と熱媒体回路の内部温度の差が広がった状態で熱媒体の循環が開始されてしまい、これによって燃料電池の温度が大きく低下し、発電が不安定になることの弊害の方が大きい。本発明では、アイドル状態である場合には温度差が広がる前に速やかに熱媒体の循環を開始することにより、このような弊害を未然に防ぐことができる。
【0011】
(3)本発明では、燃料電池の内部温度が高くなるほど熱媒体の単位時間当たりの循環量を増加する。すなわち、始めは熱媒体の循環量を少なくし、徐々に循環量を増加させる。これにより、冷えた熱媒体が大量に燃料電池に導入されることによって燃料電池の温度が大きく低下し、ひいては電圧も大きく低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
図2】ウォータポンプの駆動電流のデューティ比を決定するマップの一例である。
図3】ウォータポンプをオン/オフするタイミングを決定する手順を示すフローチャートである。
図4図3の手順に従ってウォータポンプをオン/オフした場合における冷媒循環量の変化を示すタイムチャートである。
図5】従来の起動方法に従って冷媒を導入するタイミングを決定した場合における燃料電池の電圧の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1の構成を示す図である。
燃料電池システム1は、燃料電池スタック2と、燃料電池スタック2に反応ガスとしての水素を供給するアノード系3と、燃料電池スタック2に反応ガスとしての酸素を含んだエアを供給するカソード系4と、燃料電池スタック2を冷却する冷却装置5と、燃料電池スタック2で発電した電力を蓄えるバッテリBと、燃料電池スタック2及びバッテリBからの電力の供給によってタイヤ(図示せず)を駆動する走行モータMと、これらの電子制御ユニットであるECU6と、を備える。なお、この燃料電池システム1は、上記タイヤを駆動輪とした燃料電池車両(図示せず)に搭載される。
【0014】
燃料電池スタック(以下、単に「スタック」という)2は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。各燃料電池セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、アノード電極(陰極)及びカソード電極(陽極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。通常、両電極は、固体高分子電解質膜に接して酸化・還元反応を行う触媒層と、この触媒層に接するガス拡散層とから形成される。このスタック2は、アノード電極側に形成されたアノード流路21に水素が供給され、カソード電極側に形成されたカソード流路22に酸素を含んだ空気が供給されると、これらの電気化学反応により発電する。
【0015】
発電中のスタック2から取り出される出力電流は、電流制御器29を介してバッテリBや負荷(走行モータM及びエアコンプレッサ41等)に入力される。ECU6は、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサからの出力信号に基づいて、スタック2の出力電流に対する目標値に相当する目標電流値を算出する(図示せず)。電流制御器29は、ECU6によって算出されたこれら目標電流値を用いて、これが実現されるように発電中のスタック2の出力電流を制御する。
【0016】
バッテリBは、スタック2で発電した電力や、走行モータMによって回生制動力として回収した電気エネルギーを蓄える。また、例えば燃料電池システム1の起動時において、スタック2の出力電流が制限されているときや車両の高負荷運転時等には、バッテリBに蓄えられた電力はスタック2の出力を補うようにして負荷に供給される。
【0017】
アノード系3は、水素ガスを高圧で貯蔵する水素タンク31と、水素タンク31からスタック2のアノード流路21の導入部に至る水素供給管32と、アノード流路21の排出部からカソード系4に設けられた希釈器(図示せず)に至る水素排出管33と、水素排出管33から分岐し水素供給管32に至る水素還流管34と、を含んで構成される。水素を含んだガスの水素循環流路は、水素供給管32、アノード流路21、水素排出管33及び水素還流管34によって構成される。
【0018】
水素供給管32には、水素タンク31側からスタック2側へ向かって順に、遮断弁321と、遮断弁321を介して供給された新たな水素ガスをスタック2へ向けて噴射するインジェクタ322と、水素還流管34から還流されたガスをスタック2へ循環させるイジェクタ323と、が設けられている。遮断弁321は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。インジェクタ322からの水素ガスの噴射量は、ECU6によるPWM制御によって制御される。
【0019】
水素排出管33には、スタック2側からカソード系4側へ向かって順に、アノード流路21からガスと共に排出された水を貯留するキャッチタンク331と、水素循環流路内のガスをカソード系4側へ排出するパージ弁332と、が設けられている。パージ弁332は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。
【0020】
またキャッチタンク331には、溜まった水を排出するためのドレイン管35が設けられている。このドレイン管35は、キャッチタンク331から水素排出管33のうちパージ弁332の下流側に至る。ドレイン管35にはドレイン弁351が設けられている。このドレイン弁351を開くと、キャッチタンク331内に溜まった水は、水素排出管33を介してカソード系4の図示しない希釈器へ排出される。ドレイン弁351は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。
【0021】
カソード系4は、エアコンプレッサ41と、エアコンプレッサ41からカソード流路22の導入部に至る空気供給管42と、カソード流路22の排出部から図示しない希釈器に至る空気排出管43と、空気排出管43から分岐し空気供給管42に至る空気還流管45と、空気排出管43と空気供給管42とを接続する加湿器46と、を含んで構成される。酸素を含んだガスの酸素循環流路は、空気供給管42、カソード流路22、空気排出管43及び空気還流管45によって構成される。
【0022】
エアコンプレッサ41は、空気供給管42を介してスタック2のカソード流路22に外気を供給する。エアコンプレッサ41は、ECU6からの指令信号に応じて作動する。エアコンプレッサ41の回転数は、ECU6によって制御される。
【0023】
加湿器46は、カソード流路22から排出されたガスに含まれる水を回収し、回収した水を用いてエアコンプレッサ41から供給される空気を加湿する。この加湿器46の機能により、発電中のスタック2のMEAは発電に適した程度に湿潤な状態に維持される。
【0024】
空気供給管42には、加湿器46をバイパスするバイパス管47が設けられている。このバイパス管47には、バイパス弁471が設けられている。バイパス弁471を開くと、エアコンプレッサ41から供給される空気の多くはバイパス管47を介して、すなわち加湿器46を迂回してスタック2に供給される。バイパス弁471は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。
【0025】
また、空気供給管42及び空気排出管43には、それぞれ入口封止弁421及び出口封止弁431が設けられている。これら封止弁421,431を閉じると、スタック2のカソード流路22の内部は、外気から遮断される。これら封止弁421,431は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。
【0026】
冷却装置5は、スタック2の内部を流路の一部として含む冷媒循環路51と、冷媒循環路51に設けられこの循環路51内で冷媒を循環させるウォータポンプ52と、冷媒循環路51の一部となるラジエタ53と、を備える。冷却装置5は、ウォータポンプ52によって冷媒を循環しスタック2と冷媒との熱交換を促進するとともに、ラジエタ53によって冷媒を冷却することにより、スタック2を保護するために定められた上限温度を上回らないようにする。
【0027】
冷媒循環路51を循環する冷媒の単位時間当たりの循環量は、ウォータポンプ52の回転数によって制御される。また、ウォータポンプ52のオン/オフ又はその回転数は、バッテリBからウォータポンプ52に供給される駆動電流のデューティ比をECU6によって制御することによって調整される。ECU6は、後述の図3に示す手順に従ってウォータポンプ52のオン/オフを決定するとともに、ウォータポンプ52をオンにする場合には、後述の手順に従ってスタック2の内部温度を推定し、このスタック内部温度に基づいて図2に示すようなマップを検索することによって、ウォータポンプ52のデューティ比を決定する。図2に示すマップによれば、スタック2の内部温度が高くなるほど冷媒の単位時間当たりの循環量は増加する。
【0028】
ECU6には、冷媒温度センサ24、スタックエア温度センサ25、電流センサ26等の燃料電池システム1の状態を把握するための複数のセンサが接続されている。
【0029】
冷媒温度センサ24は、冷媒循環路51に設けられ、その内部を流れる冷媒の温度に略比例した信号をECU6に送信する。ECU6は、この冷媒温度センサ24の出力に基づいて冷媒の温度を取得する。
【0030】
電流センサ26は、スタック2の出力電流を検出し、検出値に略比例した信号をECU6に送信する。スタックエア温度センサ25は、カソード流路22の出口側に設けられ、カソード流路22から排出されるガスの温度を検出し、検出値に略比例した信号をECU6に送信する。ECU6は、これら電流センサ26やスタックエア温度センサ25の検出値を用いることによって、スタック2の内部温度を推定する。スタック2の内部温度は、その発電状態によって変化する。ECU6では、電流センサ26を用いてスタック2の出力電流の履歴を参照したり、スタックエア温度センサ25を用いてスタック2の内部から排出されるガスの温度を参照したりすることによって、精度良くスタック2の内部温度を推定できる。
【0031】
図示しない車両の運転席には、燃料電池システム1を起動したり停止したりするために運転者が操作可能なイグニッションスイッチIGが設けられている。イグニッションスイッチIGは、運転者によってオフからオンにされると、燃料電池システム1の起動指令信号をECU6に出力する。ECU6は、この起動指令信号を受信したことを契機として、スタックへの水素及び空気の供給を開始するシステム起動処理(図示せず)や冷媒循環を開始又は停止するタイミングを決定する処理(後述の図3参照)等を開始する。イグニッションスイッチIGは、運転者によってオンからオフにされると燃料電池システム1の停止指令信号をECU6に出力する。ECU6は、この停止指令信号を受信したことを契機として、システム停止処理(図示せず)を開始する。
【0032】
図3は、冷媒の循環を開始又は停止するタイミング、すなわちウォータポンプをオン/オフするタイミングを決定する手順を示すフローチャートである。なお、上述のようにウォータポンプのデューティ比は、上述のように図2に示すようなマップを参照してスタックの内部温度に応じて適切な値に制御される。図3に示す処理は、運転者によってイグニッションスイッチがオフからオンにされてから所定のシステム暖機時間が経過するまでの間にわたり、所定の周期で繰り返し実行される。
【0033】
始めにS1では、ECUは、今回のシステム起動が氷点下起動であるか否かを判定する。より具体的には、ECUは、冷媒温度センサの出力に基づいて冷媒温度を取得し、冷媒温度が所定温度(例えば、0℃)以下である場合には氷点下起動であると判定し、S2に移り、冷媒温度が上記所定温度より高い場合には氷点下起動でないと判定し、S8に移る。S8では、ECUは、ウォータポンプをオンにし、冷媒を循環させる。
【0034】
S2では、ECUは、スタックの目標電流値を取得し、S3に移る。S3では、ECUは、現在のスタックがアイドル状態であるか否かを判定する。より具体的には、ECUは、先のステップで取得したスタックの目標電流値が所定値以下である場合にはアイドル状態であると判定し、S8に移り、ウォータポンプをオンにし、冷媒を循環させる。また、目標電流値が上記所定値より大きい場合にはアイドル状態でないと判定し(すなわち、加速状態であると判定し)、S4に移る。
【0035】
ここで、氷点下起動時であってもアイドル状態である場合には、冷媒を循環させることの効果について説明する。氷点下起動時に冷媒を循環させると、発電中のスタックには冷えた冷媒が導入されるため、その温度上昇速度は低下する。しかしながらアイドル状態では、そもそもスタックに対して大きな出力が要求されないため、速やかにスタックの温度を上昇させることの必要性は低い。それよりも、氷点下起動時において冷媒の循環を開始するタイミングを遅らせてしまい、スタックと冷媒の温度差が大きくなった状態で冷えた冷媒を導入することによって大きくスタックの温度が低下してしまい、ひいては電圧も大きく低下することの弊害の方が大きい。図3の処理では、このような弊害を防止するため、アイドル状態である場合には直ちに冷媒の循環を開始する。
【0036】
フローチャートの説明に戻り、S4では、ECUは、電流センサ及びスタックエア温度センサの出力を用いることによってスタックの内部温度を推定し、S5に移る。S5では、ECUは、冷媒温度センサの出力に基づいて冷媒温度を取得し、S6に移る。S6では、ECUは、取得したスタック内部温度から冷媒温度を減算することによって内外温度差を算出し、S7に移る。S7では、ECUは、内外温度差が所定の導入判定温度差より高いか否かを判定する。S7の判定がNOである場合(すなわち、内外温度差が導入判定温度差以下である場合)には、ECUは、ウォータポンプをオフにし、冷媒の循環を停止する(S9)。またS7の判定がYESである場合(すなわち、内外温度差が導入判定温度差より高い場合)には、ECUは、ウォータポンプをオンにし、冷媒の循環を開始する(S8)。図3の処理では、氷点下起動時にはこのように内外温度差が導入判定温度差を超えたことに応じて冷媒の循環を開始することにより、冷えた冷媒がスタックに導入されることによって、その温度が大きく低下してしまい、ひいてはスタックの発電が不安定になるのを防止できる。
【0037】
図4は、図3のフローチャートに従ってウォータポンプをオン/オフした場合における冷媒循環量の変化を示すタイムチャートである。図4には、時刻0において氷点下起動(IG−ON)を開始し、その後、スタックから所定値の電流を引き続けた場合における、スタックの出力電流値、冷媒循環量、内外温度差の変化を示す。また図4には、スタックへの負荷を3段階に変化させた場合を、線種を変えて示す。より具体的には、実線は高負荷とした場合、破線は中負荷とした場合、一点鎖線は低負荷(アイドル状態)とした場合を示す。
【0038】
図4において実線及び破線で示すように、氷点下起動を行った場合、内外温度差が導入判定温度差を超えるまでは冷媒の循環は停止され、内外温度差が導入判定温度差を超えると冷媒の循環は開始される。この際、スタックから大きな電流を引き続けた場合(高負荷の場合)、スタックの内部温度は速やかに上昇するため、内外温度差も急激に大きくなる。したがって、中負荷よりも高負荷の方が、冷媒の循環を開始するタイミングは早くなる。
【0039】
また図4において一点鎖線で示すように、氷点下起動を行ってから常に低負荷とした場合、内外温度差が導入判定温度差以下であるにも関わらず、高負荷又は中負荷とした場合よりも速やかに冷媒の循環が開始される。これは、図3を参照して説明したように、アイドル状態ではそもそも大きな電流が引きだされることも無いため、スタックの内部温度を速やかに上昇させる必要がないからである。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…燃料電池システム
2…燃料電池スタック
51…冷媒循環路(熱媒体回路)
52…ウォータポンプ(温度調整装置)
6…ECU
図1
図2
図3
図4
図5