(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抵抗発熱配線部の一部の上層側表面又は下層側表面に、前記抵抗発熱配線部の線幅と同じ又はそれ以上の長さで、接触形成された断線部形成用絶縁部であって、前記抵抗発熱配線部が所定温度以上になった場合に、該抵抗発熱配線部を構成する材料(m1)と反応する材料を含み、該反応により電気的絶縁部を形成し、前記抵抗発熱配線部を断線させる断線部形成用絶縁部を備える請求項1に記載のヒータ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明におけるヒータは、長尺状の基部と、基部の表面側又は内部に、基部に対して電気的に絶縁された状態で形成されている抵抗発熱部であって、通電により発熱する複数の抵抗発熱配線部と、基部の表面側又は内部に、基部に対して電気的に絶縁された状態で形成されている
少なくとも2つの給電用端子部と、
基部の表面側又は内部に、基部に対して電気的に絶縁された状態で形成されている2つの導体配線部と、を備え、
各抵抗発熱配線部は2つの導体配線部により電気的に並列に接続されており、抵抗発熱配線部は、抵抗値温度係数が500〜4,400ppm/℃の材料を含み、
各抵抗発熱配線部は傾斜した矩形パターンを含
み、前記傾斜した矩形パターンは、前記基部の長手方向に形成された横配線と、前記基部の幅方向に前記横配線より短く形成された縦配線と、が繋がったつづら折れ形状をなし、隣り合う抵抗発熱配線部の隙間の部分に、ヒータの幅方向に対して斜めになった非形成部分を有することを特徴とする。抵抗発熱配線部及び給電用端子部は、導体配線部により接続されていてもよい。
本発明におけるヒータは、
上記1態様のヒータにおいて、抵抗発熱配線部の線幅と同じ又はそれ以上の長さで、接触形成された断線部形成用絶縁部であって、抵抗発熱配線部が所定温度以上になった場合に、抵抗発熱配線部を構成する材料(m1)と反応する材料を含み、この反応により電気的絶縁部を形成し、抵抗発熱配線部を断線させる断線部形成用絶縁部を備える
ことができる。
【0018】
本発明におけるヒータは、長尺状の基部11(基層12及び電気的絶縁層13からなる基部11)と、基部11の表面側又は内部に、基部11に対して電気的に絶縁された状態で形成されている抵抗発熱部であって、通電により発熱する複数の抵抗発熱配線部15と、基部11の表面側又は内部に、基部11に対して電気的に絶縁された状態で形成されている給電用端子部であって、給電用端子部の数は少なくとも2つであり、抵抗発熱配線部15に電力を供給するために、抵抗発熱配線部15を介して一方の端子部及び他方の端子部を電気的に接続する給電用端子部17とを備える。
また、本発明におけるヒータは、長尺状の基部11(基層12及び電気的絶縁層13からなる基部11)と、基部11の表面側又は内部に、基部11に対して電気的に絶縁された状態で形成されている抵抗発熱部であって、通電により発熱する抵抗発熱配線部15と、基部11の表面側又は内部に、基部11に対して電気的に絶縁された状態で形成されている、2つの給電用端子部17と、基部11の表面側又は内部に、基部11に対して電気的に絶縁された状態で形成されている導体配線部であって、導体配線部の数は2つであり、抵抗発熱配線部15の1端側及び他端側と2つの給電用端子部17とを、別々に、電気的に接続する導体配線部19と、抵抗発熱配線部15の一部及び導体配線部19の一部のうちの少なくとも一方の上層側表面又は下層側表面に、抵抗発熱配線部15の線幅若しくは導体配線部19の線幅と同じ又はそれ以上の長さで、接触形成された断線部形成用絶縁部であって、抵抗発熱配線部15が所定温度以上になった場合に、抵抗発熱配線部15を構成する材料(m1)、及び、導体配線部19を構成する材料(m2)から選ばれた少なくとも1種と反応する材料を含み、この反応により電気的絶縁部を形成し、抵抗発熱配線部15又は導体配線部19を断線させる断線部形成用絶縁部32とを備える
ことができる。
両方の態様において、ヒータの断面構造は、例えば、
図5、
図8及び
図9に示される。これらの図は、抵抗発熱配線部15と給電用端子部17とを接続する導体配線部19を含み、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19が、基部11の表面に、基部11に対して電気的に絶縁された状態で形成された態様を示している。
【0019】
本発明において、ヒータの形状は、通常、基部又は基層の形状に依存する。基部又は基層の形状は、通常、平板状であり、凹部、凸部、中空部等を備えてもよい。また、基部又は基層の形状は、曲板状であってもよい。
本発明において、抵抗発熱配線部、給電用端子部、導体配線部等の構成要素は、基部の表面(1面側又は両面)に形成された態様とするだけでなく、その内部に形成された態様とすることができる。後者の場合の基部の形状は中空体等とすることができる。
以下の説明において、「基部の表面、又は、基部の表面側に形成(配設)」等の記載は、例えば、平板状の基部の表面、又は、表面側(基部の表面に形成された他の層の表面)に対して、形成(配設)されることを意味する。基部が中空体からなる場合には、中空部の内表面に対して、形成(配設)されることを意味する。
【0020】
基部11の厚さは、目的、用途等に応じて、適宜、選択されるが、通常、0.4〜20mmである。
また、基部11の長さは、通常、20mm以上、好ましくは200〜350mmである。
【0021】
基部又は基層の構成材料は、好ましくはステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金又は絶縁性セラミックスである。
ステンレスは、好ましくはフェライト系耐熱鋼、特に好ましくは、SUS430、SUS444及びSUS436である。
尚、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金は、電気抵抗値が低いので、その表面に、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17、導体配線部19等の構成要素を、直接、形成することができない。従って、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む基層12と、この基層に接合された電気的絶縁層13とを備える基部11が用いられる。上記のように、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17、導体配線部19等の構成要素は、基部11の両面に形成されていてもよいので、この場合には、基層12の両面に形成された電気的絶縁層13を備える基部11が用いられる。
本発明において、基層12の構成材料は、好ましくはステンレスであり、電気的絶縁層13の構成材料は、ステンレスとの熱膨張バランスの観点から、好ましくは、結晶化ガラス及び半結晶化ガラスであり、軟化点が600℃以上である、SiO
2−Al
2O
3−MO系ガラスが好ましい。但し、MOは、アルカリ土類金属の酸化物(MgO,CaO,BaO,SrO等)である。電気的絶縁層13の厚さは、好ましくは60〜120μm、より好ましくは70〜110μm、更に好ましくは75〜100μmである。
また、絶縁性セラミックスは、好ましくは、電気抵抗値が10
7Ω・cm以上の無機化合物であり、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリカ、ムライト、スピネル、コージェライト、窒化ケイ素等が挙げられる。これらのうち、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムが好ましい。
【0022】
本発明において、ヒータの構造は、基部11の構成材料に依存し、平面図として、例えば、
図4、
図6、
図7、
図10、
図11等、断面図として、例えば、
図5、
図8、
図9、
図12、
図13、
図14、
図15等で示されるものとすることができる。
基部11の構成材料が、ステンレスを基層12として含む場合、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17、導体配線部19等の構成要素は、基層12のステンレス部分に、直接、接触しないよう、電気的絶縁層13(以下、「第1絶縁層13」ともいう)の表面に形成されている(
図4、
図5、
図6、
図7、
図10、
図11、
図12、
図13、
図14等参照)。
第1絶縁層13の厚さは、好ましくは60〜120μm、より好ましくは70〜110μm、更に好ましくは75〜100μmである。
また、基部の構成材料が絶縁性セラミックスである場合、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17、導体配線部19等の構成要素は、
図8に示されるように、基部11の表面に配されてもよいし、別途、図示しない、電気的絶縁材料からなる部分に接触するように形成されていてもよい。
【0023】
本発明における1態様のヒータにおいて、ヒータの主要部である抵抗発熱配線部15は、抵抗値の変化に対して温度の追随性に優れることから、抵抗値温度係数が500〜4,400ppm/℃の材料を含む。具体例は、銀−パラジウム、銀−白金等の銀合金;銀;モリブデン:タングステン等である。これらの材料は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい材料は、ヒータの断面構造、基部の構成材料等により、適宜、選択される。また、抵抗発熱配線部15の線厚は、好ましくは3〜27μmである。
また、「傾斜した矩形パターン」とは、例えば、
図1(B)、
図2及び
図3に示される形状を有するパターン20である。即ち、
図1(A)に示される、従来、公知の矩形パターンの立ち上がり部分がθの角度をもって傾斜している形状のパターンを、「傾斜した矩形パターン」とする。角度θは、好ましくは10〜80度、より好ましくは20〜70度である。尚、隣り合う矩形は、互いに同一形状であってよいし、異なる形状であってもよい。また、配線は、各所において、直線である必要はなく、部分的に曲線を有してもよい。
抵抗発熱配線部15は、長尺状の基部11の表面側又は内部に、基部11に対して電気的に絶縁された状態で形成されている抵抗発熱部であり、並列配線、即ち、電気的に並列に少なくとも2つの給電用端子部17を接続する配線、を複数含む。給電用端子部17もまた、長尺状の基部11の表面側又は内部に、基部11に対して電気的に絶縁された状態で形成されている。
並列配線の形態は、特に限定されない。1つの並列配線は、ヒータの長手方向に形成されていてよいし、ヒータの幅方向に形成されていてよいし、ヒータの幅方向に斜めに形成されていてもよい。
本発明において、傾斜した矩形パターンを備える抵抗発熱配線部15を含むヒータは、好ましくは
図4、
図6及び
図7に示される。
図4及び
図7は、抵抗発熱配線部15が、ヒータ1の長手方向への折り返しパターンにより、幅方向に並列配線を備える例である。また、
図6は、抵抗発熱配線部15が、ヒータ1の幅方向への折り返しパターンにより、幅方向に並列配線を備える例である。
図4、
図6及び
図7は、ヒータ1の長手方向における温度補完性の観点から好ましい態様であり、2つの給電用端子部17をヒータ1の長手方向の両端側に備える
図4、及び、2つの給電用端子部17をヒータ1の長手方向の一端側に備える
図7は、特に好ましい態様である。更に、これらの図において、抵抗発熱配線部15の隙間の部分の中には、ヒータ1の幅方向に対して斜めになった非形成部分14がある(
図4参照)。即ち、並列配線を構成する一部が、ヒータ1の長手方向又は幅方向に対して斜めになっている態様もまた、ヒータ1の長手方向における温度補完性の観点から好ましい。
図4及び
図7は、
図1(B)に示される傾斜した矩形パターンを、ヒータ1の幅方向に対して、斜めに配置した態様であり、
図6は、
図1(B)に示される傾斜した矩形パターンを、ヒータ1の長手方向に対して、水平に配置した態様である。
これらの態様の場合、傾斜した矩形パターンを備えた結果、配線の非形成部分14が、ヒータの長手方向又は幅方向に対して斜めになっているので、被熱処理物が静止している状態で、ヒータ1を、その幅方向に移動させながら、熱処理する場合、及び、ヒータ1を固定した状態で、被熱処理物を、長尺状のヒータ1に対して垂直の方向に移動させながら、熱処理する場合、に、使用時における抵抗発熱配線部の局所的な温度上昇を招くことなく、安定した熱処理を行うことができる。
【0024】
図4、
図6、
図7、
図10及び
図11は、ステンレス製の基層12及び電気的絶縁層13からなる基部11を備えるヒータ(以下、「ヒータ(I)」ともいう。)を例示する平面図である。
図5は、
図4におけるX−X線断面を示す概略図である。
図4、
図5、
図6、
図7、
図10及び
図11のヒータ1は、長尺状の基層12と、基層12の表面に形成された電気的絶縁層13と、電気的絶縁層13の表面に形成されており、通電により発熱する複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15と、電気的絶縁層13の表面に形成されており、抵抗発熱配線部15に電力を供給する2つの給電用端子部17と、を備える。尚、これらのヒータは、各給電用端子部17に導通する導体配線部19を電気的絶縁層13の表面に備え、この導体配線部19を分岐させて、並列配線を有する複数の抵抗発熱配線部15に接続した態様としている。並列配線の効率的な構築のために、導体配線部19を備えることが好ましい。また、電気的絶縁層13は、基層12及び抵抗発熱配線部15の間において、電気的に絶縁しており、基層12及び給電用端子部17の間においても、電気的に絶縁している。更に、電気的絶縁層13は、基層12及び導体配線部19の間においても、電気的に絶縁している。
【0025】
ヒータ(I)において、抵抗発熱配線部15の構成材料は、抵抗値温度係数が1,000〜3,000ppm/℃である、銀−パラジウム等の銀合金を含むことが好ましい。
尚、抵抗発熱配線部15の線厚は、面積固有抵抗の観点から、好ましくは3〜27μm、より好ましくは4〜20μm、更に好ましくは5〜17μm、特に好ましくは8〜12μmである。
【0026】
また、ヒータ(I)において、給電用端子部17及び導体配線部19の構成材料は、銀、銀−パラジウム、銀−白金、銅、金、白金−ロジウム等とすることができる。尚、抵抗発熱配線部15よりも単位面積当たりの抵抗値が低くなるように、給電用端子部17又は導体配線部19の材料及び線幅等が選択される。
【0027】
ヒータ(I)において、基層12の構成材料は、好ましくはフェライト系耐熱鋼である。特に好ましい材料は、SUS430、SUS444及びSUS436である。
基部11の厚さは、好ましくは0.4〜20mm、より好ましくは0.6〜5mmである。
【0028】
また、電気的絶縁層13の構成材料は、ステンレスとの熱膨張バランスの観点から、SiO
2−Al
2O
3−MO系ガラスが好ましい。但し、MOは、アルカリ土類金属の酸化物(MgO,CaO,BaO,SrO等)である。
電気的絶縁層13の厚さは、好ましくは60〜120μm、より好ましくは70〜110μm、更に好ましくは75〜100μmである。
【0029】
図4、
図5、
図6及び
図7において、電気的絶縁層13は、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19の領域に接触するように、基部11の表面の大部分に配されているが、この態様に限定されない。例えば、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19のパターンと同じ領域をもって、これらの各下方側に形成されていてもよい。
【0030】
尚、
図5等に図示していないが、ヒータ(I)は、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19を覆う保護層を備えることができる。この保護層は、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19のパターンと同じ領域をもって、これらの各上方側に形成されていてよいし、基部11(基層12又は電気的絶縁層13)の全面に形成されていてもよい。
保護層は、電気的絶縁材料からなることが好ましく、電気的絶縁層13と同じ材料からなるものであってもよい。
【0031】
図4、
図5、
図6及び
図7に示されるヒータ(I)は、例えば、長尺状のステンレス板の表面に電気的絶縁膜を形成する工程、電気的絶縁膜の表面に、抵抗値温度係数が500〜4,400ppm/℃の材料を含み、且つ、傾斜した矩形パターンを含む抵抗発熱配線部を形成する工程、電気的絶縁膜の表面であって、ステンレス板の長手方向の両端又はその周辺部に少なくとも2つの給電用端子部を形成する工程、を備える製造方法により得ることができる。更に、導体配線部を形成する工程、保護層を形成する工程等を備えることができる。
電気的絶縁膜及び保護層を形成する場合には、電気的絶縁材料の前駆体を含む組成物等を用いて形成した膜を熱処理する方法等を適用することができる。
抵抗発熱配線部、給電用端子部及び導体配線部を形成する場合には、印刷法;ディップ法;蒸着法等の物理的気相成長法等を適用することができる。
【0032】
上記ヒータ(I)は、
図10及び
図11に示されるように、ヒータに熱暴走等の不具合が発生し、発熱している抵抗発熱配線部15が過昇温して所定温度以上になった際に、抵抗発熱配線部15又は導体配線部19を断線させる断線部形成用絶縁部32を備えることができる。この断線部形成用絶縁部32は、具体的には、発熱している抵抗発熱配線部15が所定温度以上になった際に、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19の少なくとも一方と、断線部形成用絶縁部32との接触部を電気的絶縁部34に形成変換する作用を有する。即ち、以下に好ましい態様を示すように、断線部形成用絶縁部32は、抵抗発熱配線部15の一部及び導体配線部19の一部のうちの少なくとも一方の上層側表面又は下層側表面に、抵抗発熱配線部15の線幅若しくは導体配線部19の線幅と同じ又はそれ以上の長さで、抵抗発熱配線部15又は導体配線部19を横断するように接触形成されている。従って、抵抗発熱配線部15が過昇温して所定温度以上になった際に、断線部形成用絶縁部32の構成材料と、抵抗発熱配線部15の構成材料(m1)及び導体配線部19の構成材料(m2)から選ばれた少なくとも1種とが反応し、電気的絶縁材料からなる電気的絶縁部34が形成され、この電気的絶縁部34において、抵抗発熱配線部15又は導体配線部19が断線する。断線部形成用絶縁部32は、1のヒータにおいて、1箇所のみ配されていてよいし、2箇所以上配されていてもよい。
図12は、導体配線部19の一部の表面に断線部形成用絶縁部32を備える態様を示し、
図13は、この断線部形成用絶縁部32において導体配線部19が断線し、電気的絶縁部34が形成された態様を示す。
【0033】
断線部形成用絶縁部32の配設形態は、
図36に示される。
図36は、例えば、
図10等のヒータを上方から見た要部拡大図であり、(A1)は、断線部形成用絶縁部32が、抵抗発熱配線部15の一部又は導体配線部19の一部の表面に、その幅方向に、線幅を超えて、これらを覆うように配設されている態様であり、(A2)は、断線部形成用絶縁部32が、抵抗発熱配線部15の一部又は導体配線部19の一部の表面に、その線幅を超えることなく、線幅と同じ長さで配設されている態様である。また、(B1)は、抵抗発熱配線部15の一部又は導体配線部19の一部の線幅を超える長さで配設された断線部形成用絶縁部32の表面に、抵抗発熱配線部15の一部又は導体配線部19が配設されている態様であり、(B2)は、抵抗発熱配線部15の一部又は導体配線部19の一部、の線幅と同じ長さで配設された断線部形成用絶縁部32の表面に、抵抗発熱配線部15の一部又は導体配線部19の一部が配設されている態様である。これらの図において、断線部形成用絶縁部32の形状は、四角形の面としているが、これに限定されず、抵抗発熱配線部15の線幅若しくは導体配線部19の線幅と同じ又はそれ以上の長さの任意の形状(線等)であってもよい。
【0034】
断線部形成用絶縁部32が導体配線部19の表面に配設されている態様は、例えば、
図10及び
図12に示される。また、断線部形成用絶縁部32が抵抗発熱配線部15の表面に配設されている態様は、例えば、
図11、
図14及び
図15に示される。
断線部形成用絶縁部32が抵抗発熱配線部15に接触したヒータとする場合には、
図11に示すように、並列配線部の全てにおいて、断線部形成用絶縁部32を接触形成させておく必要がある。
また、断線部形成用絶縁部32が導体配線部19に接触したヒータとする場合には、
図10に示すように、抵抗発熱配線部15を構成する並列配線部の全てに通電させることとなる導体配線部19の主配線において、好ましくは給電用端子部17に近い位置において、断線部形成用絶縁部32を接触形成させておく必要があり、1箇所でも2箇所でもよい。
【0035】
断線部形成用絶縁部32の厚さは、抵抗発熱配線部15又は導体配線部19において確実に断線させることから、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜60μm、更に好ましくは15〜40μmである。
【0036】
断線部形成用絶縁部32の構成材料は、抵抗発熱配線部15の構成材料(m1)、又は、導体配線部19の構成材料(m2)と反応して電気的絶縁材料となるものであれば、特に限定されない。好ましい材料はガラスであり、結晶化ガラス及び非晶質ガラスのいずれでもよい。本発明においては、抵抗発熱配線部15の構成材料(m1)及び導体配線部19の構成材料(m2)が銀又は銀合金を含むことが好ましいことから、更に好ましい断線部形成用絶縁部32の構成材料は、ビスマス系ガラス及び鉛系ガラスであり、特に好ましい構成材料は、軟化点が370℃〜550℃である、ビスマス系ガラス及び鉛系ガラスである。断線部形成用絶縁部32がビスマス系ガラス又は鉛系ガラスを含む場合、抵抗発熱配線部15が、例えば、600℃以上になると、ビスマス系ガラス又は鉛系ガラスが軟化し、銀又は銀合金と反応して、電気的絶縁部34を形成し、抵抗発熱配線部15又は導体配線部19を断線させることができる。
ビスマス系ガラスとしては、Bi
2O
3−ZnO−B
2O
3系ガラス等が挙げられる。また、鉛系ガラスとしては、PbO−B
2O
3系ガラス等が挙げられる。
【0037】
上記のように、抵抗発熱配線部15が、熱暴走等により、所定温度以上になった場合には、断線部形成用絶縁部32が電気的絶縁部34を形成させる。この現象を、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、導体配線部19の一部の上層側表面に、導体配線部19の線幅と同じ又はそれ以上の長さで、接触形成された断線部形成用絶縁部32を備え、抵抗発熱配線部15を図示していないヒータの概略図であり、抵抗発熱配線部15が所定温度以上になると、
図13に示すように、断線部形成用絶縁部32の構成材料と、導体配線部19の構成材料とが反応して、電気的絶縁部34を形成し、導体配線部19を断線する。
並列配線を有する抵抗発熱配線部15の上層側表面に接触形成された断線部形成用絶縁部32を備える
図14のヒータにおいて、抵抗発熱配線部15が所定温度以上になると、断線部形成用絶縁部32の構成材料と、抵抗発熱配線部15の構成材料とが反応して、図示していない電気的絶縁部34を形成し、抵抗発熱配線部15を断線する。
【0038】
断線部形成用絶縁部32を有するヒータ(I)を稼働させると、抵抗発熱配線部15を中心として、基部11(又は基層12)の全体が熱源となるので、電気的絶縁部34が形成されて、電力供給が中断されても、瞬時にヒータの温度が低下しない場合がある。本発明においては、断線部形成用絶縁部32が抵抗発熱配線部15に接触形成されているヒータ(
図11及び
図14参照)、又は、断線部形成用絶縁部32が導体配線部19に接触形成しているヒータであって、更に、導体配線部19を、密集する配線(抵抗発熱配線部15)の間に、割り込むように延長して形成させて、その一部に断線部形成用絶縁部32を接触形成されているヒータ(
図16参照)とすることによって、抵抗発熱配線部15の余熱温度をより早く低下させることができる。
【0039】
ヒータ(I)は、ステンレス製の基層12及び電気的絶縁層13からなる基部11を備えるので、その使用時において、構成部材からの微粒子が生成しないため、クリーンルーム、精密機械、減圧又は加圧を伴う熱処理装置、定着装置等における使用に好適である。
【0040】
一方、
図8は、抵抗発熱配線部15等を、絶縁性セラミックス製の基部11の表面に備えるヒータ(以下、「ヒータ(II)」ともいう。)を示す断面図である。このヒータ(II)において、絶縁性セラミックス製の基部11の表面の構成要素は、
図4、
図6及び
図7に示されるヒータ(I)における電気的絶縁層13の表面の構成要素と同様とすることができる。
図8により示されたヒータは、長尺状の基部11と、基部11の表面に形成されており、通電により発熱する複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15と、基部11の表面に形成されており、導体配線部19を介して抵抗発熱配線部15に電力を供給する2つの給電用端子部17と、を備える。尚、このヒータ(II)は、図示していない保護層を備えることができる。また、ヒータ(I)と同じ形態で、断線部形成用絶縁部32を備えることもできる(
図15参照)。
【0041】
また、
図9は、抵抗発熱配線部15等を、絶縁性セラミックス製の基部11の内部に備えるヒータ(以下、「ヒータ(III)」ともいう。)を示す断面図である。このヒータ(III)において、絶縁性セラミックス製の基部11の内部の構成要素は、
図4及び
図6に示されるヒータ(I)における電気的絶縁層13の表面の構成要素と同様とすることができる。また、導体配線部を備えない態様とすることもでき、この場合、給電用端子部17の間に抵抗発熱配線部15が接続している構成である。但し、このヒータ(III)において、ヒータ(I)における保護層は、通常、配設されない。
図9の断面図により示されたヒータ(III)は、長尺状の基部11と、基部11の内部に埋設されており、通電により発熱する複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15と、一部が基部11の内部において抵抗発熱配線部15に接続されて、一部が基部11の表面に露出しており、抵抗発熱配線部15に電力を供給する2つの給電用端子部17と、を備える。尚、このヒータ(III)は、上記のように、
図9に示していない導体配線部19を備えることができる。
【0042】
ヒータ(II)及び(III)において、抵抗発熱配線部15の構成材料は、抵抗値温度係数が500〜4,400ppm/℃である、銀、モリブデン、タングステン、銀−パラジウム、銀−白金等を含むことが好ましい。
尚、抵抗発熱配線部15の線厚は、面積固有抵抗の観点から、好ましくは3〜20μm、より好ましくは5〜17μm、更に好ましくは8〜12μmである。
【0043】
また、ヒータ(II)及び(III)において、給電用端子部17の構成材料、及び、導体配線部19の構成材料は、銀、銀−パラジウム、銀−白金、銅、金、白金−ロジウム等とすることができる。
【0044】
ヒータ(II)及び(III)において、基部11の構成材料としては、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムが好ましい。
【0045】
ヒータ(II)における基部11の厚さは、好ましくは0.2〜5mm、より好ましくは0.4〜2mmである。
また、ヒータ(III)における基部11の厚さは、好ましくは0.2〜5mm、より好ましくは0.4〜2mmである。
【0046】
ヒータ(III)を示す
図9において、給電用端子部17は、抵抗発熱配線部15と、基部11の内部において接続されているが、この態様に限定されず、給電用端子部17が、ヒータの長手方向における両端側の各端面に配設される態様であってもよい。
図9では、導体配線部19を示していないが、抵抗発熱配線部15と導通する導体配線部19を備える場合にも、各端面において、導体配線部19が配設される態様であってもよい。
【0047】
ヒータ(II)は、絶縁性セラミックスを含む長尺状の板を作製する工程、このセラミックス板の表面に、抵抗値温度係数が500〜4,400ppm/℃の材料を含み、且つ、傾斜した矩形パターンを含む抵抗発熱配線部を形成する工程、セラミックス板の表面であって、板の長手方向の両端又はその周辺部に少なくとも2つの給電用端子部を形成する工程、を備える製造方法により得ることができる。更に、導体配線部を形成する工程を備えることができる。
セラミックス板を作製する方法は、以下に例示される。
(1)絶縁性セラミックスの粉末を含有するセラミックススラリーを用いてグリーンシートを作製し、これを熱処理する方法
セラミックススラリーには、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の焼結助剤、分散剤、可塑剤、有機溶媒等を添加することができる。
(2)絶縁性セラミックスの粉末、焼結助剤等の混合物を、加圧成形等に供して作製された所定形状の成形体を熱処理する方法
【0048】
また、ヒータ(II)は、上記のように作製した絶縁性セラミックスの粉末を含む長尺状のグリーンシートの表面の所定の位置に、抵抗発熱配線部用の、抵抗値温度係数が500〜4,400ppm/℃の材料を含むペースト、又は、その材料からなる金属箔を配する工程、グリーンシートの表面の所定の位置に、給電用端子部用又は導体配線部用の材料を含むペースト、又は、その材料からなる金属箔を配する工程、これらの積層状態において熱処理を行う工程を備える製造方法により得ることができる。
【0049】
上記に示したヒータ(II)の製造方法におけるいずれの場合も、更に、保護層を形成する工程等を備えることができる。
【0050】
ヒータ(III)は、例えば、絶縁性セラミックスの粉末を含む長尺状のグリーンシートを2体作製する工程、一方のグリーンシートの表面の所定の位置に、抵抗発熱配線部用の、抵抗値温度係数が500〜4,400ppm/℃の材料を含むペースト、又は、その材料からなる金属箔を配する工程、グリーンシートの表面の所定の位置に、給電用端子部用又は導体配線部用の材料を含むペースト、又は、その材料からなる金属箔を配する工程、これらの積層物の表面を挟むように、他のグリーンシートを配して熱処理を行う工程を備える製造方法により得ることができる。
【0051】
本発明において、具体的に示した給電用端子部17、導体配線部19等の位置は、
図4〜
図9に示した位置に限定されるものではない。
また、
図4〜
図7において、1体の基部11に、1つの回路を備える態様を示したが、これに限定されず、複数の回路を備える態様とすることができる。
【0052】
断線部形成用絶縁部32を有するヒータ(II)又は(III)においても、その稼働時に、抵抗発熱配線部15を中心として、基部11の全体が熱源となるので、熱暴走等により電気的絶縁部34が形成されて、電力供給が中断されても、瞬時に、ヒータの温度が低下しない場合がある。本発明においては、断線部形成用絶縁部32が抵抗発熱配線部15に接触形成されているヒータ(
図15参照)、又は、断線部形成用絶縁部32が導体配線部19に接触形成しているヒータであって、更に、導体配線部19を、密集する配線(抵抗発熱配線部15)の間に、割り込むように延長して形成させて、その一部に断線部形成用絶縁部32を接触形成されているヒータ(図示せず)とすることによって、抵抗発熱配線部15の余熱温度をより早く低下させることができる。
【0053】
本発明における1態様のヒータは、給電用端子部17において、従来、公知の電力供給装置に接続することにより、発熱させることができる。発熱温度は、ヒータ(I)及び(II)において、好ましくは50℃〜600℃、より好ましくは120℃〜500℃である。また、ヒータ(III)において、好ましくは50℃〜1,000℃である。
【0054】
本発明における1態様のヒータは、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17、導体配線部19等が、基部の表面に直接形成されていなくてもよい。
以下、断線部形成用絶縁部32を備えるヒータであって、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19の少なくとも1つが、基部11の表面に直接形成されている態様について、説明する。
【0055】
図18、
図20、
図29及び
図30のヒータは、基部11の1面側に、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19をこの順に備える積層型ヒータであって、基部11からこれらを見た場合に、抵抗発熱配線部15の一部、断線部形成用絶縁部32の少なくとも一部、及び、導体配線部19の一部が、順次、面接触している部分を有するヒータである。
図18は、ステンレス等からなる基層12の表面に、電気的絶縁層である第1絶縁層13と、抵抗発熱配線部15と、電気的絶縁層である第2絶縁層16と、この第2絶縁層16の中に、第2絶縁層16に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32と、を備え、これら第2絶縁層16及び断線部形成用絶縁部32の表面に形成され、更に、抵抗発熱配線部15の左端部から表面側に向けて堆積形成された導体配線部19を備え、この導体配線部19の表面に形成された、絶縁材料からなるオーバーコート層21を備える態様である。また、
図20は、ステンレス等からなる基層12の表面に、電気的絶縁層である第1絶縁層13と、抵抗発熱配線部15と、電気的絶縁層である第2絶縁層16と、この第2絶縁層16の中に、第2絶縁層16に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32とを備え、これら第2絶縁層16及び断線部形成用絶縁部32の表面に形成され、更に、抵抗発熱配線部15の左端部から表面側に向けて堆積形成された導体配線部19と、この導体配線部19の表面に形成された、絶縁材料からなるオーバーコート層21とを備え、このオーバーコート層21の中に、オーバーコート層21に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32を備える態様である。
更に、
図29は、絶縁性セラミックスからなる基部11の表面に、抵抗発熱配線部15と、電気的絶縁層である第2絶縁層16と、この第2絶縁層16の中に、第2絶縁層16に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32と、を備え、これら第2絶縁層16及び断線部形成用絶縁部32の表面に形成され、更に、抵抗発熱配線部15の左端部から表面側に向けて堆積形成された導体配線部19を備え、この導体配線部19の表面に形成された、絶縁材料からなるオーバーコート層21を備える態様である。また、
図30は、絶縁性セラミックスからなる基部11の表面に、抵抗発熱配線部15と、電気的絶縁層である第2絶縁層16と、この第2絶縁層16の中に、第2絶縁層16に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32とを備え、これら第2絶縁層16及び断線部形成用絶縁部32の表面に形成され、更に、抵抗発熱配線部15の左端部から表面側に向けて堆積形成された導体配線部19と、この導体配線部19の表面に形成された、絶縁材料からなるオーバーコート層21とを備え、このオーバーコート層21の中に、オーバーコート層21に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32を備える態様である。
【0056】
図18及び
図29のヒータにおいて、抵抗発熱配線部15が所定温度以上になると、
図21に示すように、断線部形成用絶縁部32の構成材料が、抵抗発熱配線部15の構成材料及び導体配線部19の構成材料の両方と反応して、電気的絶縁部34を形成し、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19を断線する。
また、
図20及び
図30のヒータにおいて、抵抗発熱配線部15が所定温度以上になると、
図22に示すように、断線部形成用絶縁部32の構成材料が、抵抗発熱配線部15の構成材料及び導体配線部19の構成材料の両方と反応し、更に、断線部形成用絶縁部32の構成材料が、導体配線部19の構成材料と反応して、電気的絶縁部34を形成し、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19を断線する。
【0057】
図24、
図26、
図32及び
図33のヒータは、基部11の1面側に、導体配線部19及び抵抗発熱配線部15をこの順に備える積層型ヒータであって、基部11からこれらを見た場合に、導体配線部19の一部、断線部形成用絶縁部32の少なくとも一部、及び、抵抗発熱配線部15の一部が、順次、面接触している部分を有するヒータである。
図24は、ステンレス等からなる基層12の表面に、電気的絶縁層である第1絶縁層13と、導体配線部19と、電気的絶縁層である第2絶縁層16と、この第2絶縁層16の中に、第2絶縁層16に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32とを備え、これら第2絶縁層16及び断線部形成用絶縁部32の表面に形成され、更に、導体配線部19の左端部から表面側に向けて堆積形成された導体配線部19に接続する抵抗発熱配線部15と、この抵抗発熱配線部15の表面に形成された、絶縁材料からなるオーバーコート層21とを備える態様である。また、
図26は、ステンレス等からなる基層12の表面に、電気的絶縁層である第1絶縁層13と、導体配線部19と、電気的絶縁層である第2絶縁層16と、この第2絶縁層16の中に、第2絶縁層16に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32とを備え、これら第2絶縁層16及び断線部形成用絶縁部32の表面に形成され、更に、導体配線部19の左端部から表面側に向けて堆積形成された導体配線部19に接続する抵抗発熱配線部15と、この抵抗発熱配線部15の表面に形成された、絶縁材料からなるオーバーコート層21とを備え、このオーバーコート層21の中に、オーバーコート層21に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32を備える態様である。
更に、
図32は、絶縁性セラミックスからなる基部11の表面に、導体配線部19と、電気的絶縁層である第2絶縁層16と、この第2絶縁層16の中に、第2絶縁層16に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32とを備え、これら第2絶縁層16及び断線部形成用絶縁部32の表面に形成され、更に、導体配線部19の左端部から表面側に向けて堆積形成された導体配線部19に接続する抵抗発熱配線部15と、この抵抗発熱配線部15の表面に形成された、絶縁材料からなるオーバーコート層21とを備える態様である。また、
図33は、絶縁性セラミックスからなる基部11の表面に、導体配線部19と、電気的絶縁層である第2絶縁層16と、この第2絶縁層16の中に、第2絶縁層16に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32とを備え、これら第2絶縁層16及び断線部形成用絶縁部32の表面に形成され、更に、導体配線部19の左端部から表面側に向けて堆積形成された導体配線部19に接続する抵抗発熱配線部15と、この抵抗発熱配線部15の表面に形成された、絶縁材料からなるオーバーコート層21とを備え、このオーバーコート層21の中に、オーバーコート層21に包囲されるように配設された断線部形成用絶縁部32を備える態様である。
【0058】
図24及び
図26のヒータにおいて、抵抗発熱配線部15が所定温度以上になった場合にも、導体配線部19の一部、断線部形成用絶縁部32の少なくとも一部、及び、抵抗発熱配線部15の一部が、順次、面接触している部分において、少なくとも電気的絶縁部34が形成される(図示せず)。
【0060】
図17〜
図33において示した第2絶縁層16又は第3絶縁層23を構成する材料は、第1絶縁層13の構成材料である、結晶化ガラス及び半結晶化ガラスから選ばれたものであって、軟化点が600℃以上であるものとすることができ、SiO
2−Al
2O
3−MO系ガラス等が好ましい。但し、MOは、アルカリ土類金属の酸化物(MgO,CaO,BaO,SrO等)である。
また、
図17〜
図35において示したオーバーコート層21、21A及び22Bは、抵抗発熱配線部15、導体配線部19等の保護のために配され、具体的には、ヒータが稼働している際に、抵抗発熱配線部15、導体配線部19等の酸化劣化等を抑制する作用を備えるものである。オーバーコート層の構成材料は、好ましくはSiO
2−Al
2O
3−MO系ガラス等である。
オーバーコート層の構成材料の軟化点は、断線部形成用絶縁部32の構成材料の軟化点より高いことが好ましい。両者の温度差は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上である。
【0061】
次に、本発明における他態様のヒータでは、抵抗発熱配線部15の構成材料及びその配線形態並びに給電用電極部の数は、特に限定されない。
抵抗発熱配線部15の構成材料は、抵抗値温度係数が好ましくは500〜4,400ppm/℃であるが、これに限定されない。抵抗発熱配線部15の配線は、好ましくは並列配線であるが、これに限定されず、直列配線であってもよい。更に、矩形パターンを備える場合、
図1(B)、
図2及び
図3に示される傾斜矩形パターン20が好ましいが、
図1(A)に示されるパターンであってもよい。また、抵抗発熱配線部15の線厚は、好ましくは5〜27μm、より好ましくは7〜24μm、更に好ましくは8〜13μmである。
【0062】
本発明における他態様のヒータでは、給電用端子部は、必要により、3箇所以上とすることができる(図示せず)。
【0063】
給電用端子部及び導体配線部の厚さは、いずれも、好ましくは5〜27μm、より好ましくは7〜24μm、更に好ましくは9〜12μmである。
【0065】
本発明における他態様のヒータは、給電用端子部17において、従来、公知の電力供給装置に接続することにより、発熱させることができる。発熱温度は、好ましくは50℃〜1,000℃である。
【0066】
本発明のヒータを用いると、被熱処理物として、有機物、無機物、及び、これらを組み合わせた複合物、のいずれに対しても、その大きさに依存することなく、温度むらを抑制しつつ安定した熱処理を行うことができる。熱処理の方法は、目的、用途等により選択されるが、ヒータ及び被熱処理物を移動させながら行ってよいし、一方を固定し、他方を移動させながら行ってもよい。
【0067】
本発明の定着装置は、上記本発明のヒータを備える。即ち、本発明の定着装置は、ヒータを発熱させて、2つの物品を接合する装置である。
本発明の定着装置の構成は、得られる製品の用途、定着手段等により、適宜、選択されたものとすることができる。例えば、圧着を伴う定着手段を備える場合であって、紙等の記録用媒体に、トナー等を定着させる場合、及び、複数の部材を貼り合わせる場合には、ヒータを備える加熱部と、加圧部とを備える定着装置とすることができる。勿論、圧着を伴わない定着手段とすることもできる。本発明においては、
図37及び
図38に示すように、紙、フィルム等の記録用媒体の表面に形成されたトナーを含む未定着画像を記録用媒体に定着させる定着装置5であることが好ましい。
【0068】
以下、
図37及び
図38に基づいて、本発明の定着装置を説明する。
図37は、電子写真方式の画像形成装置に配設される定着装置5の要部を示す概略図であり、回転可能な定着用ロール51と、回転可能な加圧用ロール54とを備え、ヒータ1を定着用ロール51の内部に配設する態様である。ヒータ1は、好ましくは、定着用ロール51の内表面に近接するように配設されている。
図37の定着装置5において、図示していない電源装置からの電圧印加によりヒータ1を駆動させ、図示していない温度測定装置により検知されている熱が、定着用ロール51に伝えられる。そして、表面に未定着のトナー画像を有する記録用媒体が、定着用ロール51と、加圧用ロール54との間に供給されると、定着用ロール51及び加圧用ロール54の圧接部において、トナーが溶融して定着画像が形成される。
尚、
図37では、定着用ロール51及び加圧用ロール54の圧接部を有するので、定着装置の駆動中において、定着用ロール51及び加圧用ロール54は連れだって回転する。上記のように、ヒータ1は、小さい記録用媒体を用いた際に発生しやすい局所的な温度上昇が抑制されるので、定着用ロール51における温度むらも発生しにくく、定着を円滑に進めることができる。また、ヒータ1の周辺に配設された部材の損傷を抑制することができる。
【0069】
更に、
図38もまた、電子写真方式の画像形成装置に配設される定着装置5の要部を示す概略図であり、回転可能な定着用ロール51と、回転可能な加圧用ロール54とを備え、定着用ロール51に熱を伝えるヒータ1、及び、加圧用ロール54とともに記録用媒体を圧接する加圧用ロール52、を定着用ロール51の内部に配設する態様である。ヒータ1は、好ましくは、定着用ロール51の内表面に沿うように配設されている。
図38の定着装置5において、図示していない電源装置からの電圧印加によりヒータ1を駆動させ、図示していない温度測定装置により検知されている熱が、定着用ロール51に伝えられる。そして、表面に未定着のトナー画像を有する記録用媒体が、定着用ロール51と、加圧用ロール54との間に供給されると、加圧用ロール52に加圧される定着用ロール51と、加圧用ロール54との圧接部において、トナーが溶融して定着画像が形成される。
尚、
図38においても、定着用ロール51及び加圧用ロール54の圧接部を有するので、定着装置の駆動中において、定着用ロール51及び加圧用ロール54は連れだって回転する。上記のように、ヒータ1は、小さい記録用媒体を用いた際に発生しやすい局所的な温度上昇が抑制されるので、定着用ロール51における温度むらも発生しにくく、定着を円滑に進めることができる。また、ヒータ1の周辺に配設された部材の損傷を抑制することができる。
【0070】
本発明の定着装置における他の態様としては、上型及び下型を備える金型であって、上型及び下型の少なくとも一方の内部にヒータを配設した態様とすることができる。
【0071】
本発明の乾燥装置は、上記本発明のヒータからなるヒータ部を備える。
本発明の乾燥装置の構成は、被熱処理物の形状、大きさ等により、適宜、選択されたものとすることができる。本発明においては、例えば、筐体部と、被熱処理物の出し入れ等のために配された密閉可能な窓部と、筐体部の内部に配された移動可能なヒータ部と、を備える態様とすることができる。必要に応じて、筐体部の内部に、被熱処理物を配置する被熱処理物設置部、被熱処理物の乾燥により気体が排出された場合に、この気体を排出する排気部、筐体部の内部の圧力を調整する、真空ポンプ等の圧力調整部等を備えることができる。
【0072】
乾燥は、被熱処理物及びヒータ部を固定した状態で行ってよいし、いずれか一方を移動させながら行ってもよい。
【0073】
本発明のヒータは、画像形成装置の構成部材として好適である。
画像形成装置の構成は、得られる製品の用途、加熱の目的等により、適宜、選択されたものとすることができる。例えば、
図39に示すように、紙、フィルム等の記録用媒体の表面に未定着画像を形成する作像手段と、未定着画像を記録用媒体に定着させる定着手段5とを備え、定着手段5が上記本発明のヒータを備える画像形成装置4とすることができる。
【0074】
以下、
図39に基づいて、画像形成装置を説明する。
図39は、電子写真方式の画像形成装置4の要部を示す概略図である。
作像手段としては、転写ドラムを備える方式及び転写ドラムを備えない方式のいずれでもよいが、
図39は、転写ドラムを備える態様である。
作像手段では、回転しながら、帯電装置43により所定の電位に帯電処理された感光ドラム44の帯電処理面に、レーザースキャナー41から出力されるレーザーが照射され、現像器45から供給されるトナーにより目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。次いで、電位差を利用して、感光ドラム44と連動する転写ドラム46の表面に、トナー画像が転写される。その後、転写ドラム46及び転写用ロール47の間に供給される記録用媒体の表面に、トナー画像が転写され、未定着画像を有する記録用媒体が得られる。
尚、作像手段は、感光ドラム44及び転写ドラム46の表面には、不溶なトナー等を除去するための清掃装置を備えることができるが、
図39には示していない。
また、トナーは、結着樹脂と、着色剤と、添加剤とを含む粒子であり、結着樹脂の溶融温度は、通常、90℃〜220℃である。
【0075】
次に、定着手段5は、上記本発明における定着装置と同じ構成とすることができ、加圧用ロール54と、通紙方向通電型のヒータ1を保持したヒータホルダ53を内部に備え、加圧用ロール54と連動する定着用ロール51とを備える。作像手段からの未定着画像を有する記録用媒体は、定着用ロール51及び加圧用ロール54の間に供給され、画像が定着した記録媒体が得られる。即ち、定着用ロール51の熱が、記録用媒体のトナー画像を溶融し、更に、溶融したトナーが、定着用ロール51と加圧用ロール54との圧接部で加圧されて、トナー画像が記録用媒体に定着される。
一般に、定着用ロール51の温度が不均一となって、トナーに与えられる熱量が小さすぎる場合、トナーが記録用媒体から剥がれ、一方、熱量が大きすぎる場合、トナーが定着用ロール51に付着し、定着用ロール51が一周して記録用媒体に再付着してしまうことがあるが、本発明のヒータを備える定着手段5によれば、所定の温度への調整が迅速であるので、不具合を抑制することができる。
【0076】
図39の定着手段5は、定着用ロール51と、加圧用ロール54とを備える態様としたが、画像形成装置は、定着用ロール51に代えて、ヒータ1を近接配置した定着用ベルトを備える態様であってもよい。
【0077】
図39の画像形成装置4において、図示していない、他の手段としては、記録用媒体搬送手段や、この記録用媒体搬送手段、及び、上記各手段を制御するための制御手段が挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0079】
実施例1
(1)ステンレスヒータの製造
以下の要領で、
図40に示すステンレスヒータ1Aを製造した。
SUS430からなる基板(長さ270mm、幅24mm及び厚さ0.6mm)の表面を平滑処理した後、成分がSiO
2−Al
2O
3−ROである結晶化ガラス形成用材料を、乾燥処理後100μmとなるように、基板の全面に塗布した。次いで、塗膜を850℃で焼成して、膜厚85μmの結晶化ガラスからなる絶縁層を得た。
その後、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,500ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、絶縁層13の表面に、
図40に示す抵抗発熱配線部15とするための傾斜した矩形パターンを含み、ステンレス基板の長手方向において折り返している回路状パターンを印刷した。次いで、この印刷部を850℃で焼成して抵抗発熱配線部15を形成した。尚、抵抗発熱配線部15の線幅は0.5mm、線厚は13μmである。更に、銀粉末を含むペーストを用いて、所定の位置に、この抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17及び導体配線部19とするためのパターンを印刷した。そして、この印刷部を850℃で焼成して、複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15及び導体配線部19を介して、一方の給電用端子部17から他方の給電用端子部17に接続させた(
図40参照)。
次に、得られた抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19の表面を含む基板の全面に、上記絶縁層13の形成の際に用いた結晶化ガラス形成用材料を用いて、膜厚50μmの第1保護層を形成した。そして、SiO
2−Al
2O
3−B
2O
3−ROからなる非晶質ガラス形成用材料を第1保護層の表面に塗布した。その後、塗膜を750℃で焼成し、膜厚25μmの第2保護層を形成し、ステンレスヒータ1Aを得た(
図40参照、尚、第1保護層及び第2保護層は、図示せず)。
【0080】
(2)ヒータの評価
この評価(以下、「評価E1」という。)は、電子写真方式等を採用した印刷機、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられ、紙等の記録媒体上に担持された未定着トナー像を加熱することにより、トナー像を定着する装置において、移動する記録媒体へ定着を行う際に、熱を奪う記録媒体に見立てたヒートシンク3Aをステンレスヒータ1Aの裏面に接触させて、ヒートシンク3Aがステンレスヒータ1Aに接触する接触部分の温度、及び、ヒートシンク3Aがステンレスヒータ1Aに接触しない非接触部分における温度を経時観測したものである。尚、ヒートシンク3Aは、アルミニウム製であり、
図41に示すように、8枚のフィン(16mm×100mm)を5mmの間隔をもって平行に配置した一体化物である。
【0081】
図42は、評価E1用の装置の概略図である。この評価装置において、ステンレスヒータ1Aは、抵抗発熱配線部等を上方に向けた状態で、両端を支持させて配置されている。ヒータ1Aの中央には、熱電対(Kタイプ)が接続され、ステンレスヒータ1Aの両端側の給電用端子部17には、オムロン社製温度コントローラー「E5EN」から交流電圧(100V)が供給されて、PID制御によりステンレスヒータを稼働し、所定の温度に発熱する。そして、ヒートシンク3Aの接触により変化するヒータの温度を、ステンレスヒータ1Aの上方に設置したNEC社製サーモトレーサー「TH9100MR/WRI」により測定した。尚、熱電対及び温度測定器は、
図42には示していない。
この評価実験では、ステンレスヒータ1Aの温度を200℃に保持した状態で、ヒートシンク3Aとステンレスヒータ1Aの裏面との接触位置を変化させながら、
図42に示す所定の3カ所(P)、(Q)及び(R)において連続的に温度を測定した。尚、(P)、(Q)及び(R)は、いずれも、ステンレスヒータ1Aの幅方向の中央であって、(Q)がステンレスヒータ1Aの中心、(P)及び(R)が、中心から75mm離れた位置である。また、測温点の面積は、いずれも、約0.8mm
2である。
ヒートシンク3Aの使用方法は、以下の通りである。即ち、ヒートシンク3Aを、200℃に保持されたステンレスヒータ1Aにおける位置(P)で2分間接触させた後、ヒートシンク3Aを除去し、ステンレスヒータ1Aの温度が200℃に回復するのを待つ。次いで、ヒートシンク3Aをステンレスヒータ1Aの位置(Q)で2分間接触させた後、ヒートシンク3Aを除去し、ステンレスヒータ1Aの温度が200℃に回復するのを待つ。その後、ヒートシンク3Aをステンレスヒータ1Aの位置(R)で2分間接触させた後、ヒートシンク3Aを除去し、3カ所(P)、(Q)及び(R)における温度がほぼ一定となったところで実験を終了する。
【0082】
評価E1の実験結果を
図43に示す。
図43によれば、ヒートシンク3Aがステンレスヒータ1Aにおける位置(P)及び(R)に接触しているときには、それぞれの位置における温度低下は、約30℃〜40℃であったが、ヒートシンク3Aが位置(Q)に接触しているときには、位置(P)及び(R)における温度上昇は、約40℃〜50℃であった。
【0083】
実施例2
抵抗発熱配線部15とするためのペーストとして、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,000ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、
図44に示すパターンを有する抵抗発熱配線部15を形成した以外は、実施例1と同様にして、
図44に示すステンレスヒータ1Aを製造し、実施例1と同じ評価を行った。
【0084】
評価E1の実験結果を
図45に示す。
図45によれば、ステンレスヒータ1Aにおける位置(P)及び(R)にヒートシンク3Aが接触しているときには、それぞれの位置における温度低下は、約30℃〜40℃であったが、位置(Q)にヒートシンク3Aが接触しているときには、位置(P)及び(R)における温度上昇は、約60℃〜70℃であった。
【0085】
比較例1
抵抗発熱配線部15とするためのペーストとして、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,000ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、
図46に示すパターンを有する抵抗発熱配線部15を形成した以外は、実施例1と同様にして、
図46及び
図47に示すステンレスヒータを製造し、実施例1と同じ評価を行った。
【0086】
評価E1の実験結果を
図48に示す。
図48によれば、ヒータにおける位置(P)及び(R)にヒートシンク3Aが接触しているときには、それぞれの位置における温度低下は、約20℃〜80℃であったが、位置(Q)にヒートシンク3Aが接触しているときには、位置(P)及び(R)における温度上昇は、約80℃〜90℃であった。
【0087】
比較例2
図49に示すパターンを有する抵抗発熱配線部を備える、市販のセラミックヒータを用いて、実施例1と同じ評価を行った。基部の材質は、Al
2O
3である。
【0088】
評価E1の実験結果を
図50に示す。
図50によれば、ヒータにおける位置(P)及び(R)にヒートシンク3Aが接触しているときには、それぞれの位置における温度低下は、約50℃〜60℃であったが、位置(Q)にヒートシンク3Aが接触しているときには、位置(P)及び(R)における温度上昇は、約90℃〜110℃であった。
【0089】
実施例3
(1)ステンレスヒータの製造
以下の要領で、
図51に示すステンレスヒータ1Bを製造した。
SUS430からなる基板(長さ270mm、幅24mm及び厚さ0.6mm)の表面を平滑処理した後、成分がSiO
2−Al
2O
3−ROである結晶化ガラス形成用材料を、乾燥処理後39μmとなるように、基板の全面に塗布した。次いで、塗膜を850℃で焼成して、膜厚25μmの結晶化ガラス膜を形成した。この塗布及び焼成を、更に2回ずつ繰り返し、膜厚75μmの絶縁層を得た。
その後、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,500ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、絶縁層の表面に、
図51に示す抵抗発熱配線部15とするための傾斜した矩形パターンを含み、ステンレス基板の長手方向において折り返している回路状パターンを印刷した。次いで、この印刷部を850℃で焼成して抵抗発熱配線部15を形成した。尚、抵抗発熱配線部15の線幅は0.5mm、線厚は13μmである。更に、銀粉末を含むペーストを用いて、所定の位置に、この抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17及び導体配線部19とするためのパターンを印刷した。そして、この印刷部を850℃で焼成して、複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15及び導体配線部19を介して、一方の給電用端子部17から他方の給電用端子部17に接続させた(
図51参照)。
次に、得られた抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19の表面を含む基板の全面に、上記絶縁層13の形成の際に用いた結晶化ガラス形成用材料を用いて、塗布及び焼成を、2回ずつ繰り返し、膜厚44μmの第1保護層を形成した。そして、SiO
2−Al
2O
3−B
2O
3−ROからなる非晶質ガラス形成用材料を第1保護層の表面に塗布した。その後、塗膜を750℃で焼成し、膜厚20μmの第2保護層を形成し、ステンレスヒータ1Bを得た(
図51参照、尚、第1保護層及び第2保護層は、図示せず)。
【0090】
(2)ヒータの評価
実施例1及び2と同じ目的で、
図52に示す装置を用いて評価を行った(以下、「評価E2」という。)。尚、実施例1等で用いたヒートシンク3Aの代わりに、
図41に示すヒートシンク3Aを土台とするアルミニウム板3B(幅100mm×長さ300mm×厚さ1mm)をヒートシンクとして載置した。このアルミニウム板3Bと、ヒータの裏面との間隔を約1mmとして、試験を行った。
【0091】
図52に示される評価E2用の装置において、ステンレスヒータ1Bは、抵抗発熱配線部等を上方に向けた状態で、両端を支持させて配置されている。ステンレスヒータ1Bの中央には、熱電対(Kタイプ)が接続され、ステンレスヒータ1Bの両端側の給電用端子部17には、オムロン社製温度コントローラー「E5EN」から交流電圧(100V)が供給されて、PID制御によりヒータを稼働し、所定の温度に発熱する。そして、アルミニウム板3Bの設置により変化するヒータの温度を、ステンレスヒータ1Bの上方に設置したNEC社製サーモトレーサー「TH9100MR/WRI」により測定した。尚、熱電対及び温度測定器は、
図52には示していない。
この評価実験では、ステンレスヒータ1Bの温度を200℃に保持した状態で、アルミニウム板3Bの載置点を、位置(Q’)として、
図52に示す所定の3カ所(P’)、(Q’)及び(R’)において連続的に温度を測定した。尚、(P’)、(Q’)及び(R’)は、いずれも、ステンレスヒータ1Bの幅方向の中央であって、(Q’)がヒータの中心、(P’)及び(R’)が、中心から75mm離れた位置である。また、測温点の面積は、いずれも、約0.8mm
2である。
アルミニウム板3Bを用いた試験方法は、以下の通りである。即ち、アルミニウム板3Bを、200℃に保持されたステンレスヒータ1Bにおける位置(Q’)に2分間載置した後、アルミニウム板3Bを除去し、ステンレスヒータ1Bの温度が200℃に回復するのを待ち、3カ所(P’)、(Q’)及び(R’)における温度がほぼ一定となったところで実験を終了する。
【0092】
評価E2の実験結果を
図53に示す。
図53によれば、アルミニウム板3Bが位置(Q’)にあるときには、位置(P’)及び(R’)における温度上昇は、約25℃〜30℃であった。
【0093】
実施例4
以下の要領で、
図54に示すステンレスヒータ1Bを製造し、実施例3と同様にして、評価E2を行った。
SUS430からなる基板(長さ270mm、幅24mm及び厚さ0.6mm)の表面を平滑処理した後、成分がSiO
2−Al
2O
3−ROである結晶化ガラス形成用材料を、乾燥処理後39μmとなるように、基板の全面に塗布した。次いで、塗膜を850℃で焼成して、膜厚25μmの結晶化ガラス膜を形成した。この塗布及び焼成を、更に2回ずつ繰り返し、膜厚75μmの絶縁層を得た。
その後、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,000ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、絶縁層の表面に、
図54に示す抵抗発熱配線部15とするための傾斜した矩形パターンを含み、ステンレス基板の長手方向において折り返している回路状パターンを印刷した。次いで、この印刷部を850℃で焼成して抵抗発熱配線部15を形成した。尚、抵抗発熱配線部15の線幅は0.5mm、線厚は13μmである。更に、銀粉末を含むペーストを用いて、所定の位置に、この抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17及び導体配線部19とするためのパターンを印刷した。そして、この印刷部を850℃で焼成して、複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15及び導体配線部19を介して、一方の給電用端子部17から他方の給電用端子部17に接続させた(
図54参照)。
次に、得られた抵抗発熱配線部15、給電用端子部17及び導体配線部19の表面を含む基板の全面に、上記絶縁層13の形成の際に用いた結晶化ガラス形成用材料を用いて、塗布及び焼成を、2回ずつ繰り返し、膜厚44μmの第1保護層を形成した。そして、SiO
2−Al
2O
3−B
2O
3−ROからなる非晶質ガラス形成用材料を第1保護層の表面に塗布した。その後、塗膜を750℃で焼成し、膜厚20μmの第2保護層を形成し、ステンレスヒータ1Bを得た(
図54参照、尚、第1保護層及び第2保護層は、図示せず)。
【0094】
評価E2の実験結果を
図55に示す。
図55によれば、アルミニウム板3Bが位置(Q’)にあるときには、位置(P’)及び(R’)における温度上昇は、約25℃〜30℃であった。
【0095】
実施例5
以下の要領で、いずれも概略図である
図10及び
図12に示すステンレスヒータを製造した。
SUS430からなる基板(270mm×24mm×0.6mm)の表面を平滑処理した後、成分がSiO
2−Al
2O
3−RO(軟化点:740℃)である結晶化ガラス形成用材料を、乾燥処理後100μmとなるように、基板の表面に塗布した。次いで、塗膜を850℃で焼成して、膜厚85μmの結晶化ガラスからなる第1絶縁層13を得た。
その後、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,500ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、第1絶縁層13の表面に、
図10に示す抵抗発熱配線部15とするための傾斜した矩形パターンを含み、ステンレス基板の幅方向において折り返している回路状パターンを印刷した。次いで、この印刷部を850℃で焼成して抵抗発熱配線部15を形成した。尚、抵抗発熱配線部15の線幅は0.5mm、線厚は10μmである。更に、銀粉末を含むペーストを用いて、所定の位置に、この抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17及び導体配線部19とするための各パターンを印刷した。そして、この印刷部を850℃で焼成して、複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15及び導体配線部19を介して、一方の給電用端子部17から他方の給電用端子部17に導通が得られるようにした(
図10参照)。
次に、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19の表面に、上記第1絶縁層13の形成の際に用いた結晶化ガラス形成用材料を用いて、膜厚40μmの第2絶縁層を形成した。このとき、結晶化ガラス形成用材料を、
図10において、「32」で示した部分(後に断線部形成用絶縁部となる部分。大きさ:2mm×4mm)が未印刷となるように、且つ、この部分が、導体配線部19の線幅を超えるように印刷した。そして、第2絶縁層が形成された後には、凹部が形成されて、「32」で示した導体配線部19の一部が露出した。
その後、同じスクリーンマスクを用いて、「32」で示した導体配線部19の露出部を残しつつ、SiO
2−Al
2O
3−B
2O
3−RO(軟化点:580℃)からなる非晶質ガラス形成用材料を第2絶縁層の表面に塗布した。そして、塗膜を750℃で焼成し、膜厚20μmのオーバーコート層を形成した。次いで、「32」が形成される前の凹部に、PbO−B
2O
3(軟化点:375℃)を含む非晶質ガラス形成用材料を充填し、450℃で焼成して、断線部形成用絶縁部32を形成させ、ステンレスヒータを得た(
図10において、第2絶縁層及びオーバーコート層は、図示していない。また、
図12において、抵抗発熱配線部15、第2絶縁層及びオーバーコート層は、図示していない。)。
【0096】
上記のようにして得られたステンレスヒータにおける2つの給電用端子部17のそれぞれに、AC100Vの電圧を印加して、抵抗発熱配線部15を発熱させて、ステンレス基板部の温度を約570℃(NEC/Avio社製サーモトレーサー「TH9100MR/WRI」により測定)とした。電圧を印加して15秒後、断線部形成用絶縁部32に接触していた導体配線部19が断線したことを確認した(
図4参照)。
【0097】
この実施例5では、
図10に示されるように、図面の右側に断線部形成用絶縁部32が1箇所形成されたヒータを示したが、例えば、図面の左側の対称位置にもう1つの断線部形成用絶縁部を備えるヒータとすることができる。
【0098】
実施例6
以下の要領で、いずれも概略図である
図11及び
図14に示すステンレスヒータを製造した。
SUS430からなる基板の表面を平滑処理した後、成分がSiO
2−Al
2O
3−RO(軟化点:740℃)である結晶化ガラス形成用材料を、乾燥処理後100μmとなるように、基板の表面に塗布した。次いで、塗膜を850℃で焼成して、膜厚85μmの結晶化ガラスからなる第1絶縁層13を得た。
その後、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,500ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、第1絶縁層13の表面に、
図11に示す抵抗発熱配線部15とするための傾斜した矩形パターンを含み、ステンレス基板の幅方向において折り返している回路状パターンを印刷した。次いで、この印刷部を850℃で焼成して抵抗発熱配線部15を形成した。尚、抵抗発熱配線部15の線幅は0.5mm、線厚は12μmである。更に、銀粉末を含むペーストを用いて、所定の位置に、この抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17及び導体配線部19とするための各パターンを印刷した。そして、この印刷部を850℃で焼成して、複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15及び導体配線部19を介して、一方の給電用端子部17から他方の給電用端子部17に導通が得られるようにした(
図11参照)。
次に、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19の表面に、上記第1絶縁層13の形成の際に用いた結晶化ガラス形成用材料を用いて、膜厚40μmの第2絶縁層を形成した。このとき、結晶化ガラス形成用材料を、
図11において、「32」で示した部分(後に断線部形成用絶縁部となる部分。大きさ:1.7mm×2.5mm)が未印刷となるように、且つ、この部分が、抵抗発熱配線部15の線幅を超えるように印刷した。そして、第2絶縁層が形成された後には、凹部が形成されて、「32」で示した抵抗発熱配線部15の一部が露出した。
その後、同じスクリーンマスクを用いて、「32」で示した抵抗発熱配線部15の露出部を残しつつ、SiO
2−Al
2O
3−B
2O
3−RO(軟化点:580℃)からなる非晶質ガラス形成用材料を第2絶縁層の表面に塗布した。そして、塗膜を750℃で焼成し、膜厚20μmのオーバーコート層を形成した。次いで、「32」が形成される前の凹部に、PbO−B
2O
3(軟化点:375℃)を含む非晶質ガラス形成用材料を充填し、450℃で焼成して、断線部形成用絶縁部32を形成させ、ステンレスヒータを得た(
図11において、第2絶縁層及びオーバーコート層は、図示していない。また、
図14において、抵抗発熱配線部15、第2絶縁層及びオーバーコート層は、図示していない。)。
【0099】
上記のようにして得られたステンレスヒータにおける2つの給電用端子部17のそれぞれに、AC100Vの電圧を印加して、抵抗発熱配線部15を発熱させて、ステンレス基板部の温度を約570℃(NEC/Avio社製サーモトレーサー「TH9100MR/WRI」により測定)とした。電圧を印加して10秒後、断線部形成用絶縁部32に接触していた抵抗発熱配線部15が断線したことを確認した。
【0100】
実施例7
第1絶縁層13を備えるSUS430に代えて、窒化アルミニウムを用いた基板に対して、実施例6と同じ要領で、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17、導体配線部19等を形成し、概略図である
図15に示すセラミックヒータを製造した。
その後、得られたセラミックヒータにおける2つの給電用端子部17のそれぞれに、AC100Vの電圧を印加して、抵抗発熱配線部15を発熱させて、窒化アルミニウム基板部の温度を約570℃(NEC/Avio社製サーモトレーサー「TH9100MR/WRI」により測定)とした。電圧を印加して10秒後、断線部形成用絶縁部32に接触していた抵抗発熱配線部15が断線したことを確認した。
【0101】
これらの実施例5〜7では、第2絶縁層の表面にSiO
2−Al
2O
3−B
2O
3−RO(軟化点:580℃)からなる非晶質ガラス形成用材料を塗布してオーバーコート層を形成したが、この非晶質ガラス形成用材料に代えて、断線部形成用絶縁部32の形成に用いたPbO−B
2O
3(軟化点:375℃)を含む非晶質ガラス形成用材料を用い、凹部を充填するとともに、第2絶縁層の表面にも塗膜を形成し、絶縁材料からなるオーバーコート層とする態様とすることもできる。この場合、断線部形成用絶縁部32が抵抗発熱配線部15に接触しているので、断線部形成用絶縁部32と同じ組成のオーバーコート層が、熱暴走時に断線の障害となることはない。
【0102】
実施例8
以下の要領で、ステンレスからなる基部11に、第1絶縁層13、抵抗発熱配線部15、断線部形成用絶縁部32(第2絶縁層)及び導体配線部19を、順次、備え、概略図である
図18に示す積層型のステンレスヒータを製造した。
SUS430からなる基板の表面を平滑処理した後、成分がSiO
2−Al
2O
3−RO(軟化点:740℃)である結晶化ガラス形成用材料を、乾燥処理後100μmとなるように、基板の表面に塗布した。次いで、塗膜を850℃で焼成して、膜厚85μmの結晶化ガラスからなる第1絶縁層13を得た。
その後、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,500ppm/℃)からなる粉末を含むペーストと、銀粉末を含むペーストとを用いて、所定の位置に、抵抗発熱配線部15及び給電用端子部17Aの各パターンを、それぞれ、印刷し、850℃で焼成した。これにより、矩形パターンを含み、ステンレス基板の幅方向において折り返している直列配線を有する抵抗発熱配線部15を得た。
次に、抵抗発熱配線部15の表面に、上記第1絶縁層13の形成の際に用いた結晶化ガラス形成用材料を用いて、膜厚55μmの第2絶縁層16を形成した。このとき、結晶化ガラス形成用材料を、
図18において、「32」で示した部分(後に断線部形成用絶縁部となる部分。大きさ:1.7mm×2.5mm)が未印刷となるように、且つ、この部分が、抵抗発熱配線部15の線幅を超えるように印刷した。そして、第2絶縁層16が形成された後には、凹部が形成されて、「32」で示した抵抗発熱配線部15の一部が露出した。
その後、「32」が形成される前の凹部に、Bi
2O
3−Zn−B
2O
3(軟化点:506℃)を含む非晶質ガラス形成用材料を充填し、550℃で焼成して、断線部形成用絶縁部32を形成した。
次に、銀粉末を含むペーストを用いて、露出した断線部形成用絶縁部32を被覆するように、導体配線部19及び給電用端子部17Bの各パターンを印刷し、この印刷部を500℃で焼成して導体配線部19及び給電用端子部17Bを形成した。尚、導体配線部19の線幅は1mm、線厚は10μmであり、下層側に位置する断線部形成用絶縁部32が導体配線部19の線幅よりも長いことを確認した。その後、導体配線部19の表面に、Bi
2O
3−Zn−B
2O
3(軟化点:506℃)からなる非晶質ガラス形成用材料を塗布した。そして、塗膜を500℃で焼成し、膜厚20μmのオーバーコート層21を形成させ、ステンレスヒータを得た。
その後、得られたステンレスヒータにおける2つの給電用端子部17A及び17Bのそれぞれに、AC100Vの電圧を印加して、抵抗発熱配線部15を発熱させて、ステンレス基板部の温度を約650℃(NEC/Avio社製サーモトレーサー「TH9100MR/WRI」により測定)とした。電圧を印加して12秒後、断線部形成用絶縁部32に接触していた抵抗発熱配線部15及び導体配線部19が断線したことを確認した。
【0103】
実施例9
第1絶縁層13を備えるSUS430に代えて、窒化アルミニウムを用いた基板に対して、実施例8と同じ要領で、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17A及び17B、導体配線部19等を形成し、概略図である
図29に示すセラミックヒータを製造した。
その後、得られたセラミックヒータにおける2つの給電用端子部17A及び17Bのそれぞれに、AC100Vの電圧を印加して、抵抗発熱配線部15を発熱させて、窒化アルミニウム基板部の温度を約650℃(NEC/Avio社製サーモトレーサー「TH9100MR/WRI」により測定)とした。電圧を印加して13秒後、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19が断線したことを確認した。
【0104】
実施例10
以下の要領で、ステンレスからなる基部11に、第1絶縁層13、導体配線部19、断線部形成用絶縁部32(第2絶縁層)及び抵抗発熱配線部15を、順次、備え、概略図である
図24に示す積層型のステンレスヒータを製造した。
SUS430からなる基板の表面を平滑処理した後、成分がSiO
2−Al
2O
3−RO(軟化点:740℃)である結晶化ガラス形成用材料を、乾燥処理後100μmとなるように、基板の表面に塗布した。次いで、塗膜を850℃で焼成して、膜厚85μmの結晶化ガラスからなる第1絶縁層13を得た。
その後、銀粉末を含むペーストを用いて、所定の位置に、抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17A及び導体配線部19の各パターンを印刷し、850℃で焼成した。
次に、導体配線部19の表面に、上記第1絶縁層13の形成の際に用いた結晶化ガラス形成用材料を用いて、膜厚55μmの第2絶縁層16を形成した。このとき、結晶化ガラス形成用材料を、
図24において、「32」で示した部分(後に断線部形成用絶縁部となる部分。大きさ:1.7mm×2.5mm)が未印刷となるように、且つ、この部分が、導体配線部19の線幅を超えるように印刷した。そして、第2絶縁層16が形成された後には、凹部が形成されて、「32」で示した導体配線部19の一部が露出した。
その後、「32」が形成される前の凹部に、SiO
2−Al
2O
3−B
2O
3−RO(軟化点:580℃)を含む非晶質ガラス形成用材料を充填し、750℃で焼成して、断線部形成用絶縁部32を形成した。
次に、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,500ppm/℃)からなる粉末を含むペースト(材料の軟化点:550℃)を用いて、露出した断線部形成用絶縁部32を被覆するように、
図24に示す抵抗発熱配線部15とするための傾斜した矩形パターンを含み、ステンレス基板の幅方向において折り返している回路状パターンを印刷した。次いで、この印刷部を550℃で焼成して直列配線を有する抵抗発熱配線部15を形成した。尚、抵抗発熱配線部15の線幅は1mm、線厚は10μmであり、下層側に位置する断線部形成用絶縁部32が抵抗発熱配線部15の線幅よりも長いことを確認した。その後、銀粉末を含むペースト(材料の軟化点:550℃)を用いて、所定の位置に、この抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17Bのパターンを印刷した。次いで、抵抗発熱配線部15の表面に、Bi
2O
3−Zn−B
2O
3(軟化点:506℃)からなる非晶質ガラス形成用材料を塗布した。そして、塗膜を550℃で焼成し、膜厚20μmのオーバーコート層21を形成させ、ステンレスヒータを得た。
その後、得られたステンレスヒータにおける2つの給電用端子部17A及び17Bのそれぞれに、AC100Vの電圧を印加して、抵抗発熱配線部15を発熱させて、ステンレス基板部の温度を約650℃(NEC/Avio社製サーモトレーサー「TH9100MR/WRI」により測定)とした。電圧を印加して12秒後、断線部形成用絶縁部32に接触していた抵抗発熱配線部15及び導体配線部19が断線したことを確認した。
【0105】
これらの実施例8〜10では、抵抗発熱配線部15を直列配線として、基板から垂直方向に導体配線部19、断線部形成用絶縁部32及び抵抗発熱配線部15が互いに接触したヒータを示したが、抵抗発熱配線部15が並列配線であって、更に、3者が互いに接触する位置として、例えば、
図10に示す「32」の位置に、断線部形成用絶縁部を形成したヒータとすることができる。
【0106】
実施例11
以下の要領で、ステンレスからなる基部11の1面側に抵抗発熱配線部15を、他面側に、導体配線部19及び断線部形成用絶縁部32を、順次、備え、概略図である
図27に示す積層型のステンレスヒータを製造した。
SUS430からなる基板の両面を平滑処理した後、成分がSiO
2−Al
2O
3−RO(軟化点:740℃)である結晶化ガラス形成用材料を、乾燥処理後100μmとなるように、基板の両面に塗布した。次いで、塗膜を850℃で焼成して、いずれも、膜厚85μmの結晶化ガラスからなる第1絶縁層13及び第3絶縁層23を得た。
その後、第1絶縁層13の表面に、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,500ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、
図10に示すような抵抗発熱配線部15とするための傾斜した矩形パターンを含み、ステンレス基板の幅方向において折り返している回路状パターンを印刷した。そして、この印刷部を850℃で焼成して抵抗発熱配線部15を形成した。尚、抵抗発熱配線部15の線幅は0.5mm、線厚は11μmである。
次いで、銀粉末を含むペーストを用いて、第1絶縁層13の表面における所定の位置に、抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17A及び導体配線部(端子部)25とするための各パターンを印刷し、一方、第3絶縁層23の表面における所定の位置に、給電用端子部17B及び導体配線部19とするための各パターンを印刷した。そして、これらの印刷部を850℃で焼成して、1面側に複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15を、他面側に導体配線部19を形成させた。
その後、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19の表面に、上記第1絶縁層13及び第3絶縁層23の形成の際に用いた結晶化ガラス形成用材料を用いて、いずれも、膜厚が55μmの第1オーバーコート層21A及び第2オーバーコート層21Bを形成した。このとき、結晶化ガラス形成用材料を、
図27において、「32」で示した部分(後に断線部形成用絶縁部となる部分。大きさ:1.7mm×2.5mm)が未印刷となるように、且つ、この部分が、導体配線部19の線幅を超えるように印刷した。そして、第2オーバーコート層21Bが形成された後には、凹部が形成されて、「32」で示した第2オーバーコート層21Bの一部が露出した。
次いで、「32」が形成される前の凹部に、PbO−B
2O
3(軟化点:375℃)を含む非晶質ガラス形成用材料を充填し、450℃で焼成して、断線部形成用絶縁部32を形成させ、ステンレスヒータを得た。尚、このステンレスヒータでは、抵抗発熱配線部15が形成された側(上方側)の導体配線部(端子部)25と、下方側の導体配線部19の左端部とを、コネクター、ソケット等の接続部材27によって導通させる態様としている。
【0107】
実施例12
第1絶縁層13及び第3絶縁層23を備えるSUS430に代えて、窒化アルミニウムを用いた基板に対して、実施例11と同じ要領で、抵抗発熱配線部15、給電用端子部17A及び17B、導体配線部(端子部)25、導体配線部19等を形成し、概略図である
図34に示すセラミックヒータを製造した。
【0108】
実施例13
以下の要領で、窒化アルミニウムからなり、その一端側に上下に開口する貫通孔(断面形状:円形、内径:0.3mm)を有する基板を用い、概略図である
図35に示すセラミックヒータを製造した。
この基板の1面側表面の所定の位置に、鉛、カドミウム、ニッケルを含まず、銀−パラジウム合金(抵抗値温度係数1,500ppm/℃)からなる粉末を含むペーストを用いて、
図10に示すような抵抗発熱配線部15とするための傾斜した矩形パターンを含み、ステンレス基板の幅方向において折り返している回路状パターンを印刷した。そして、この印刷部を850℃で焼成して抵抗発熱配線部15を形成した。尚、抵抗発熱配線部15の線幅は0.5mm、線厚は10μmである。
次いで、銀粉末を含むペーストを用いて、基板の他面側表面の所定の位置に、給電用端子部17B及び導体配線部19とするための各パターンを印刷するとともに、貫通孔を充填させた。一方、抵抗発熱配線部15の表面における所定の位置に、抵抗発熱配線部15に電力を供給するための給電用端子部17Aとするための各パターンを印刷し、導体配線部19と導通が得られるようにした。そして、これらの印刷部を950℃で焼成して、給電用端子部17A及び17Bの間に複数の並列配線を有する抵抗発熱配線部15及び導体配線部19が接続する配線を形成させた。
その後、抵抗発熱配線部15及び導体配線部19の表面に、成分がSiO
2−Al
2O
3−RO(軟化点:740℃)である結晶化ガラス形成用材料を用いて、第1オーバーコート層21A及び第2オーバーコート層21Bを形成した。このとき、結晶化ガラス形成用材料を、
図35において、「32」で示した部分(後に断線部形成用絶縁部となる部分。大きさ:1.7mm×2.5mm)が未印刷となるように、且つ、この部分が、導体配線部19の線幅を超えるように印刷した。そして、第2オーバーコート層21Bが形成された後には、凹部が形成されて、「32」で示した第2オーバーコート層21Bの一部が露出した。
次いで、「32」が形成される前の凹部に、PbO−B
2O
3(軟化点:375℃)を含む非晶質ガラス形成用材料を充填し、450℃で焼成して、断線部形成用絶縁部32を形成させ、セラミックヒータを得た。