特許第6444495号(P6444495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444495
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20181217BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20181217BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20181217BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B62D5/04
   H02K11/33
   H05K3/46 Q
   H05K3/46 U
   H05K7/20 B
   H05K7/20 C
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-514939(P2017-514939)
(86)(22)【出願日】2016年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2016086970
(87)【国際公開番号】WO2017158966
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2017年3月16日
【審判番号】不服-15268(P-15268/J1)
【審判請求日】2017年10月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-54696(P2016-54696)
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】中野 公輔
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉瀬 幸司
(72)【発明者】
【氏名】白木 康博
(72)【発明者】
【氏名】多田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】六分一 穂隆
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 島田 信一
【審判官】 氏原 康宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−152091(JP,A)
【文献】 特開2016−36246(JP,A)
【文献】 特開2010−267945(JP,A)
【文献】 特開2007−237790(JP,A)
【文献】 特開2007−137302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が車両の操舵系に加える操舵トルクに対応した補助トルクを発生する電動モータと、前記電動モータの駆動を制御する制御ユニットとを備え、前記運転者の操舵を前記補助トルクにより補助するようにした電動パワーステアリング駆動装置であって、
前記電動モータは、その軸方向の端部に固定された金属筐体を備え、
前記制御ユニットは、
複数のパワースイッチング素子を有し、前記パワースイッチング素子のスイッチング動作に基づいて、前記車両に搭載された直流電源からの直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給する電力変換回路と、
前記パワースイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御部と、
前記電力変換回路と前記制御部とを構成する部材のうちの少なくとも一部が搭載され、複数の多層基板が組み合わされて構成された一体型多層基板と、を有し、
前記一体型多層基板は、
放熱板と、
前記放熱板の第1の面に固定され、少なくとも前記パワースイッチング素子が表面に載置されて接続された多層基板により構成された第1の領域と、
前記放熱板の前記第1の面に対して表裏の関係をなす第2の面に固定され、前記制御部を構成する部材のうちの少なくとも一部が表面に載置されて接続され、前記第1の領域を構成する多層基板とは厚さの異なる多層基板により構成された第2の領域と
前記第1の領域に埋設され、一端が前記パワースイッチング素子に接触し、他端が前記放熱板の前記第1の面の近傍に位置し且つ前記放熱板に対して電気的に絶縁され、前記パワースイッチング素子が発生した熱を前記放熱板に伝達する伝熱部材と、
を有し、
前記放熱板は、
前記第1の領域と前記第2の領域とのうちの少なくとも一方から露出して前記放熱板の面の延びる方向に延出された延出部を有し、
前記延出部は、その少なくとも一部が前記金属筐体に直接当接するように前記金属筐体に固定される、
ことを特徴とする電動パワーステアリング駆動装置。
【請求項2】
前記一体型多層基板は、前記電動モータに近い方から、前記第1の領域を構成する多層基板、前記放熱板、前記第2の領域を構成する多層基板、の順で配置されるように前記金属筐体に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
【請求項3】
前記電力変換回路は、平滑コンデンサをさらに備え、
前記一体型多層基板は、前記第1の領域を構成する多層基板、前記放熱板、および、前記第2の領域を構成する多層基板を貫通する貫通スルーホールが設けられており、
前記平滑コンデンサと前記パワースイッチング素子とを接続する配線は、前記一体型多層基板に設けられた貫通スルーホールを貫通している、
ことを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
【請求項4】
前記第1の領域と前記第2の領域は、夫々配線パターンが設けられた複数の層を備え、
前記第1の領域に搭載された前記パワースイッチング素子は、前記第1の領域の層に設けられた前記配線パターンにより配線され、
前記第2の領域に搭載された前記制御部を構成する部材のうちの少なくとも一部は、前記第2の領域の層に設けられた前記配線パターンにより配線され、
前記第1の領域の少なくとも一つの層に設けられた前記配線パターンの厚さ寸法と、前記第2の領域の少なくとも一つの層に設けられた前記配線パターンの厚さ寸法と、は異なる値に形成され、
前記第1の領域に設けられた前記配線パターンの厚さ寸法は、前記第2の領域に設けられた前記配線パターンの厚さ寸法より大きく形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
【請求項5】
前記パワースイッチング素子は、前記第1の領域の前記複数の層のうちの表層に載置され、
前記伝熱部材は、前記複数の層を貫通して配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
【請求項6】
前記パワースイッチング素子は、前記一体型多層基板に対向する面に対して反対側の面が前記金属筐体に当接するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から5のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
【請求項7】
前記一体型多層基板の前記第1の領域と前記第2の領域は、夫々、
配線パターンを有する複数の層と、
前記複数の層の間に配置されたプリプレグと、を有し、
前記第1の領域に於ける前記プリプレグは、前記第2の領域に於ける前記プリプレグの熱伝導率よりも高い熱伝導率を備えている、
ことを特徴とする請求項1から6のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
【請求項8】
前記金属筐体に固定され、少なくとも前記一体型多層基板を覆う絶縁物製のカバーを備え、
前記一体型多層基板は、前記電力変換回路の平滑コンデンサとノイズフィルタを搭載しており、
前記カバーは、前記平滑コンデンサと前記ノイズフィルタを覆うように構成され、且つ第1の緩衝部材を介して前記平滑コンデンサと当接し、第2の緩衝部材を介して前記ノイズフィルタと当接するように構成され、
前記一体型多層基板の前記延出部は、前記第1の領域と前記第2の領域との双方から露出して前記放熱板の面の延びる方向に延出され、
前記延出部は、前記金属筐体と前記カバーとの間に挿入され、
前記延出部の一方の面は、第3の緩衝部材を介して前記カバーに当接し、
前記延出部の前記一方の面に対して表裏の関係をなす他方の面は、前記金属筐体に直接接触するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から7のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
【請求項9】
前記第1の緩衝部材の圧縮に対する反力と前記第2の緩衝部材の圧縮に対する反力は、前記第3の緩衝部材の圧縮に対する反力よりも小さく構成されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータの回転力によって車両の操舵装置にアシスト力を付与する電動パワーステアリングの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電動パワーステアリング駆動装置は、車両のハンドルに加えられた運転者の操舵トルクに応じた補助トルクを発生する電動モータと、この電動モータを駆動する電子制御ユニットとを備える。電子制御ユニットは、電動モータに電力を供給するパワースイッチング素子で構成された電力変換装置と、パワースイッチング素子を制御する制御回路とを備えており、電動モータに一体に固定される。
【0003】
特許文献1に開示された従来の電動パワーステアリング駆動装置に於ける電子制御ユニットは、電力変換装置のパワースイッチング素子を収納したパワーモジュールと、パワースイッチング素子を制御する制御回路とが別体で構成されており、別体で構成されたパワーモジュールと制御回路は、コネクタ及び接続端子を用いて電気的に接続されている。
【0004】
一方、特許文献2に開示された従来の電動パワーステアリング駆動装置に於ける電子制御ユニットは、パワースイッチング素子を収納したパワーモジュールと制御回路とを1枚の多層基板を用いて一体に構成されている。より詳しく述べれば、樹脂製の一枚の基板の両面、つまり基板の互いに表裏の関係を成す一方の面と他方の面に、パワースイッチング素子が夫々配置され、その基板の同一面に電力変換装置のパワースイッチング素子と制御回路の部品とが混在して配置される構成とされている。そして、パワースイッチング素子と制御回路の部品は、基板に設けられた銅等の導電材料からなる配線パターンにより電気的に接続される。従って、パワースイッチング素子と制御回路の部品とを電気的に接続するためのコネクタや接続端子等の接続部材は不要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−134598号公報
【特許文献2】特開2014−34229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来の電動パワーステアリング駆動装置は、前述のようにパワーモジュールと制御回路とが別体で構成されているので、これ等を電気的に接続するためのコネクタや接続端子等の接続部材が必要となり、装置の小型化、省スペース化の支障となる。
【0007】
一方、特許文献2に開示された従来の電動パワーステアリング駆動装置は、比較的大電流が流れるパワースイッチング素子と比較的小電流が流れる制御回路の部品とが基板の同一面に混在して配置され、これ等が基板に設けられた配線パターンにより電気的に接続されているので、これ等を電気的接続するためのコネクタや接続端子等の接続部材を必要としない。しかしながら、通常、制御回路には端子幅がパワー系の部品の端子幅と比較して狭ピッチに構成された部品が存在しており、この狭ピッチの端子幅を有する部品の配線を行う配線パターンは、狭ピッチであるが故に厚みを大きくすることが望まれるものの基板としての制約を受けて所定値以上に厚みを大きくすることができず、従って、配線抵抗の低減には限界があり配線での発熱が大きくなるという課題があった。
【0008】
又、前述の基板は通常、基板を貫通するスルーホールを有する多層基板で構成されており、そのスルーホールの影響を受けて、基板の一方の面に対して裏面となる他方の面に部品の実装が不可能となる領域が発生し、従って基板の一方の面に多くの部品が実装される結果、その一方の面に於ける部品実装面積が減少するのを避けるために基板の外形寸法を大きくせざるを得ないという課題があった。
【0009】
更に、前述の基板に於けるスルーホールは、銅板等で形成された配線パターンの厚さが大きくなるにつれて、穴径が大きくなるため、パワースイッチング素子を有するパワー系と制御回路を有する制御系を別邸で構成した場合には制御系の基板のスルーホールの穴径を比較的小さくできるのに対して、パワー系と制御系とを一枚の基板に一体の構成する場合には、パワー系が必要とする比較的大きな穴径のスルーホールが必要となり、基板に於ける制御系の部品の実装面積が減少することを避けるためには、基板の寸法を大きくせざるを得ないという課題があった。
【0010】
この発明は、従来の電動パワーステアリング駆動装置に於ける前述のような課題を解決するためになされたものであり、小型で低損失な電子制御ユニットを備えた電動パワーステアリングを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による電動パワーステアリング駆動装置は、
運転者が車両の操舵系に加える操舵トルクに対応した補助トルクを発生する電動モータと、前記電動モータの駆動を制御する制御ユニットとを備え、前記運転者の操舵を前記補助トルクにより補助するようにした電動パワーステアリング駆動装置であって、
前記電動モータは、その軸方向の端部に固定された金属筐体を備え、
前記制御ユニットは、
複数のパワースイッチング素子を有し、前記パワースイッチング素子のスイッチング動作に基づいて、前記車両に搭載された直流電源からの直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給する電力変換回路と、
前記パワースイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御部と、
前記電力変換回路と前記制御部とを構成する部材のうちの少なくとも一部が搭載され、複数の多層基板が組み合わされて構成された一体型多層基板と、を有し、
前記一体型多層基板は、
放熱板と、
前記放熱板の第1の面に固定され、少なくとも前記パワースイッチング素子が表面に載置されて接続された多層基板により構成された第1の領域と、
前記放熱板の前記第1の面に対して表裏の関係をなす第2の面に固定され、前記制御部を構成する部材のうちの少なくとも一部が表面に載置されて接続され、前記第1の領域を構成する多層基板とは厚さの異なる多層基板により構成された第2の領域と
前記第1の領域に埋設され、一端が前記パワースイッチング素子に接触し、他端が前記放熱板の前記第1の面の近傍に位置し且つ前記放熱板に対して電気的に絶縁され、前記パワースイッチング素子が発生した熱を前記放熱板に伝達する伝熱部材と、
を有し、
前記放熱板は、
前記第1の領域と前記第2の領域とのうちの少なくとも一方から露出して前記放熱板の面の延びる方向に延出された延出部を有し、
前記延出部は、その少なくとも一部が前記金属筐体に直接当接するように前記金属筐体に固定される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明による電動パワーステアリング駆動装置によれば、前記制御ユニットは、複数のパワースイッチング素子を有し、前記パワースイッチング素子のスイッチング動作に基づいて、前記車両に搭載された直流電源からの直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給する電力変換回路と、前記パワースイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御部と、前記電力変換回路と前記制御部とを構成する部材のうちの少なくとも一部が搭載され、複数の多層基板が組み合わされて構成された一体型多層基板と、を有し、前記一体型多層基板は、放熱板と、前記放熱板の第1の面に固定され、少なくとも前記パワースイッチング素子が表面に載置されて接続された多層基板により構成された第1の領域と、前記放熱板の前記第1の面に対して表裏の関係をなす第2の面に固定され、前記制御部を構成する部材のうちの少なくとも一部が表面に載置されて接続され、前記第1の領域を構成する多層基板とは厚さの異なる多層基板により構成された第2の領域と、前記第1の領域に埋設され、一端が前記パワースイッチング素子に接触し、他端が前記放熱板の前記第1の面の近傍に位置し且つ前記放熱板に対して電気的に絶縁され、前記パワースイッチング素子が発生した熱を前記放熱板に伝達する伝熱部材と、を有し、前記放熱板は、前記第1の領域と前記第2の領域とのうちの少なくとも一方から露出して前記放熱板の面の延びる方向に延出された延出部を有し、前記延出部は、その少なくとも一部が前記金属筐体に直接当接するように前記金属筐体に固定されるので、電子制御ユニットを低損失化することができ、また、多層基板に於ける実装面積を大きくすることができるため小型化することが可能な電動パワーステアリングの駆動装置をえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置の回路構成を示すブロック図である。
図2】この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置の構成を示す概略断面図である。
図3】この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置に於ける、一体型多層基板のパワー領域の層構成を示す概略断面図である。
図4】この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置に於ける、樹脂ケースの平面図である。
図5】この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング駆動装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置について、図を用いて説明する。図1は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置の回路構成を示すブロック図である。図1では、パワースイッチング素子としてn型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor FIELD-EFFECT-Transistor)を用いた場合の構成例を示しており、n型MOSFETに並列接続された還流ダイオードはボディーダイオードを示しているが、これに限定するものではない。
【0015】
図1に於いて、電動パワーステアリング駆動装置100は、電動モータ9と、電子制御ユニット20とを備えている。電動パワーステアリング駆動装置100は、電源コネクタ11を介して車両に搭載されたバッテリ1に電気的に接続され、車載各種センサ用コネクタ12を介して車両側から車両の走行速度信号等の車載各種センサ14が入力され、トルクセンサ用コネクタ13を介してトルクセンサ15からの操舵トルク信号が入力される。
トルクセンサは、車両のステアリングシャフト等に設けられ、運転者による操舵トルクを検出し、操舵トルク信号を出力する。
【0016】
電動モータ9は、3相ブラシレスモータで、例えば永久磁石からなる界磁磁極を備えた回転子92と、U相、V相、W相からなる三相電機子巻線を有する固定子91を備えている。図1では、電機子巻線をΔ結線で示しているがY結線でも良い。尚、ブラシレスモータは一例であって、誘導機であっても良い。
【0017】
電動モータ9の回転子92の回転角(電動モータの回転角と称する場合もある)は、電子制御ユニット20によって検出される。3相ブラシレスモータである電動モータ9の回転子92は、前述のように永久磁石で構成された界磁磁極を備えており、後述するように電子制御ユニット20は、その界磁磁極の動きを回転センサ84で検出することができる。回転センサ84は、磁気センサ、又はレゾルバにより構成されている。
【0018】
電子制御ユニット20は、ノイズフィルタ2と、バッテリ電流を通電、遮断するスイッチ手段である電源リレー部3と、電力変換回路を構成する3相ブリッジ回路4と、3相ブリッジ回路4の後述するU相アームとV相アームとW相アームに夫々並列接続された平滑コンデンサ6u、6v、6wと、電動モータ9への電流を通電、遮断するスイッチ手段であるモータリレー部5と、電動モータ9の電機子巻線流れる電流を検出するためのシャント抵抗回路7と、マイクロコンピュータ81と、FET駆動回路82と、電流検出手段83と、回転センサ84と、を備えている。シャント抵抗回路7は、後述するシャント抵抗7u、7v、7wを備える。
【0019】
3相ブリッジ回路4は、直列接続されたU相上アームとU相下アームとからなるU相アームと、直列接続されたV相上アームとV相下アームとからなるV相アームと、直列接続されたW相上アームとW相下アームとからなるW相アームとを有している。高電位側であるU相上アーム、V相上アーム、及びW相上アームには、パワースイッチング素子としての高電位側FET41u、41v、41wが夫々接続されており、低電位側であるU相下アーム、V相下アーム、及びW相下アームには、パワースイッチング素子としての低電位側FET42u、42v、42wが夫々接続されている。
【0020】
高電位側FET41uは、U相上アームとU相下アームとの接続点から導出されているU相出力線ULと正極側入力線PLとの間を開閉する。高電位側FET41vは、V相上アームとV相下アームとの接続点から導出されているV相出力線VLと正極側入力線PLとの間を開閉する。高電位側FET41wは、W相上アームとW相下アームとの接続点から導出されているW相出力線WLと正極側入力線PLとの間を開閉する。低電位側FET42uは、U相出力線ULと負極側入力線NLとの間を開閉する。低電位側FET42vは、V相出力線VLと負極側入力線NLとの間を開閉する。低電位側FET42wは、W相出力線WLと負極側入力線NLとの間を開閉する。
【0021】
U相の高電位側FET41uの負極側と低電位側FET42uの正極側が接続され、その接続部に接続されたU相出力線ULがモータリレー部5のU相のモータリレー用FET5uの基準電位側に接続されており、モータリレー用FET5uの他端は、電動モータ9の固定子91に於けるU相巻線端子UTに接続されている。低電位側FET42uの負極側とシャント抵抗7uの一端が接続されており、シャント抵抗7uの他端は平滑コンデンサ6uの負極側に接続されている。
【0022】
V相の高電位側FET41vの負極側と低電位側FET42vの正極側が接続され、その接続部に接続されたV相出力線VLがモータリレー部5のV相のモータリレー用FET5vの基準電位側に接続されており、モータリレー用FET5vの他端は、電動モータ9の固定子91に於けるV相巻線端子VTに接続されている。低電位側FET42vの負極側とシャント抵抗7vの一端が接続されており、シャント抵抗7vの他端は平滑コンデンサ6vの負極側に接続されている。
【0023】
W相の高電位側FET41wの負極側と低電位側FET42wの正極側が接続され、その接続部に接続されたW相出力線WLがモータリレー部5のW相のモータリレー用FET5wの基準電位側に接続されており、モータリレー用FET5wの他端は、電動モータ9の固定子91に於けるW相巻線端子WTに接続されている。低電位側FET42wの負極側とシャント抵抗7wの一端が接続されており、シャント抵抗7wの他端は平滑コンデンサ6wの負極側に接続されている。高電位側FET41u、41v、41wの正極側は、平滑コンデンサ6u、6v、6wの正極側に夫々接続されている。
【0024】
尚、各相の平滑コンデンサ6u、6v、6wと、各相の上アーム及び下アームに接続された高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wとの間に、FETがスイッチングしたときのサージ電圧を抑制するためのスナバ回路を設けても良い。この場合、スナバ回路は、コンデンサ、又は抵抗とコンデンサを接続した回路により構成しても良い。又、高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42と並列にそれぞれスナバ回路を設けても良い。
【0025】
電子制御ユニット20に設けられた、3相ブリッジ回路4と、回転子92の回転位置を検出する回転センサ84と、シャント抵抗7u、7v、7wに接続されて電動モータ9の電機子巻線に流れる電流を検出する電流検出手段83と、マイクロコンピュータ81と、マイクロコンピュータ81からの指令によりFETの動作を制御する駆動信号を出力するFET駆動回路82と、電流検出手段83と、マイクロコンピュータ81と、FET駆動回路82とは、後述するように一体型多層基板200に搭載されている。
【0026】
マイクロコンピュータ81は、トルクセンサ15からの操舵トルク信号に基づいて電動モータ9が出力すべき補助トルクを演算すると共に、電流検出手段83により検出されたモータ電流、及び回転センサ84により検出された回転子92の回転位置をフィードバックして補助トルクを発生させるための目標電流を演算する。
【0027】
電源リレー部3は、互いに直列接続された2個の電源リレー用FET31、32で構成されており、電源リレー用FET31のソース端子と電源リレー用FET32のソース端子が接続されている。電源リレー用FET31のドレイン端子はノイズフィルタ2に接続されており、電源リレー用FET32のドレイン端子は平滑コンデンサ6u、6v、6wの正極側に接続されている。電源リレー用FET31と電源リレー用FET32のゲート端子は、FET駆動回路82に接続されている。
【0028】
マイクロコンピュータ81は、AD変換器とPWMタイマ回路等の他に、周知の自己診断機能を含み、システムが正常に動作しているか否かを常に自己診断しており、異常が発生すると、電源リレー部3の電源リレー用FET31、32と、モータリレー部5のモータリレー用FET5u、5v、5wを全てオフし、3相ブリッジ回路4と電動モータ9との接続を遮断するようにFET駆動回路82に指令を与える。
【0029】
FET駆動回路82は、マイクロコンピュータ81からの指令に基づいて、電源リレー部3の電源リレー用FET31、32と、モータリレー部5のモータリレー用FET5u、5v、5wを駆動すると共に、パワースイッチング素子としての高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wを駆動する。
【0030】
マイクロコンピュータ81には、前述のようにトルクセンサ15から操舵トルク情報、回転センサ84から電動モータ9の回転子92の回転位置の情報が夫々入力され、又、車載各種センサ用コネクタ12からは車載各種センサ14の一つとして走行速度信号が入力される。更に、シャント抵抗7u、7v、7wの両端間電圧値に基づいてモータ電流が電流検出手段83により検出され、その検出されたモータ電流がマイクロコンピュータ81にフィードバック入力される。マイクロコンピュータ81は、これらの情報、信号に基づいてパワーステアリングの回転方向指令、及び補助トルクに相当する電流制御量がそれぞれ生成され、夫々の駆動信号がFET駆動回路82に入力される。
【0031】
FET駆動回路82は、マイクロコンピュータ81からパワーステアリングの回転方向指令及び電流制御量が入力されると、PWM駆動信号を生成し、パワースイッチング素子である高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wに電圧を印加する。これにより電動モータ9にはバッテリ1からの電流が、電源コネクタ11、ノイズフィルタ2、電源リレー部3、3相ブリッジ回路4、及びモータリレー部5を通じて流れ、所要方向に所要量の補助トルクが電動モータ9から出力される。
【0032】
このとき、マイクロコンピュータ81には、シャント抵抗及び電流検出手段を通じて検出されたモータ電流がフィードバックされ、マイクロコンピュータ81からFET駆動回路52に送られるモータ電流指令と一致するよう制御される。
【0033】
図1では平滑コンデンサ6u、6v、6wの負極側を直接GNDに接続していない。これは平滑コンデンサ6u、6v、6wと各相の上アーム及び下アームとの閉ループを最小限にして、寄生インダクタンスを低減し、高電位側FET41u、41v、41wと低電位側FET42u、42v、42wがスイッチングしたときに発生するサージ電圧を抑制するためである。
【0034】
一般的にノイズフィルタ2の構成としては、ノーマルモードフィルタとコモンモードフィルタを併用することで所定の性能を得る設計を行うが、ノイズフィルタ2はノーマルモードフィルタのみ、又はコモンモードフィルタのみであってもよく、或いは、ノーマルモードフィルタとコモンモードフィルタの両方を設けても良く、ノーマルモードフィルタとコモンモードフィルタの機能を統合したフィルタでも良いのであって、要求仕様に応じ設計すれば良い。
【0035】
図2は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置の構成を示す概略断面図である。電動パワーステアリング駆動装置100は、前述の図1に示すブロック回路構成を備え、図2に示すように構成されている。図2に於いて、三相ブラシレスモータで構成される電動モータ9の軸方向の反出力側端部(図2の上方部)にヒートシンクの機能を有する金属筐体101が配置され、その金属筐体101の軸方向の上方部(図2の上方部)に一体型多層基板200が配置され、その多層基板200の軸方向の上方部(図2の上方部)に平滑コンデンサ6u、6v、6wとノイズフィルタ2が配置され、更にそれらの上部(図2の上部)に樹脂ケース102が配置されている。
【0036】
又、樹脂ケース102には、外部の直流電源である車両に搭載されたバッテリ1が接続されるパワー系の電源コネクタ11と、トルクセンサ15と車載各種センサ14が接続される制御系のトルクセンサ用コネクタ13(図示せず)、車載各種センサ用コネクタ12(図示せず)が樹脂ケース102に一体化されて成型されている。平滑コンデンサ6u、6v、6wは、電解コンデンサ、又は導電性高分子コンデンサ、又はハイブリッドコンデンサが使用される。
【0037】
一体型多層基板200は、第1の領域としてのパワー領域23と、第2の領域としての制御領域21と、パワー領域23制御領域21の間に挿入された放熱板22とが一体に組み合わされて構成されている。放熱板22の径方向の端部は、パワー領域23と制御領域21の径方向の端部よりも径方向に延出した延出部221を備えており、その放熱板22の延出部221のモータ側の端面がヒートシンクの機能を有する金属筐体101に接触している。一体型多層基板200で発生した熱は、放熱板22の延出部221と金属筐体101に伝熱する。
【0038】
パワー領域23は、100[um]を超える大きな厚みを有する銅板により配線が行われるように構成された多層基板である。制御領域21は、100[um]以下の薄い厚みを有する銅板で配線が行われるように構成された多相基板である。従って、制御領域21とパワー領域23の層構成は同一ではない。尚、これ等の銅板の厚さの数値は一例である。又、使用している銅板の厚みは異なるが、制御領域21とパワー領域23の全体の厚みは同じでも良いし異なっても良い。
【0039】
通常、制御領域21とパワー領域23の層構成、又は厚みが異なる基板を一枚で構成すると、基板の反りが問題となる。しかし、図2の構成ではパワー領域23と制御領域21の間に放熱板22を挿入しているので大幅に基板の反りが緩和される。放熱板22は、パワー領域23を構成する多層基板の一層に設けられた配線に使用する銅板と同じか更に厚みの大きい銅板により構成されている。又、放熱板22は,モータ側からの熱を遮熱する効果もある。
【0040】
平滑コンデンサ6u、6v、6wの端子とノイズフィルタ2の端子の一つは、制御領域21と放熱板22を貫通してパワー領域23に接続されている。磁気センサにより構成された回転センサ84は、パワー領域23に接続されている。尚、回転センサ84としての磁気センサは、電動モータ9の回転子92の磁極位置を検出できれば良く、必ずしもパワー領域23へ接続する必要はない。
【0041】
前述のように構成された一体型多層基板200は、パワー領域23と制御領域21を夫々個別に製作し、しかる後に放熱板22の両面にプリプレグを介してパワー領域23と制御領域21を固着して一体化させることで製作される。その後、制御領域21とパワー領域23の配線を行う。
【0042】
パワー領域23のみで結線される貫通スルーホールは、その片側端部が制御領域21の表層に現れることがないため、制御領域21の部品実装面積が増え、小型化が可能である。又、制御領域21のみで結線される貫通スルーホールは、その片側端部がパワー領域23に現れることがないため、パワー領域23の部品実装面積が増え、小型化が可能である。更に、制御領域21の配線は、1相辺り100[um]以下の薄い銅板のみで構成されるため、制御領域内を配線するスルーホールの径を小さくできる特徴もある。
【0043】
マイクロコンピュータ81とFET駆動回路82は、制御領域21の表層に接続されている。マイクロコンピュータ81とFET駆動回路82との接続は、制御領域21内で貫通スルーホールにより接続されている。パワースイッチング素子としての高電位側FET41u、41v、41wと低電位側FET42u、42v、42wは、パワー領域23の表層に接続されている。高電位側FET41u、41v、41w及び低電位側FET42u、42v、42wのゲート、ソース間とFET駆動回路82とはパワー領域23のスルーホールで接続されているため、配線を短くすることが可能でありノイズを低減できる。
【0044】
電動パワーステアリング駆動装置100の組立て手順としては、樹脂ケース102の平滑コンデンサ6u、6v、6wが配置される部位1021に第1の緩衝部材6aを配置し、樹脂ケース102のノイズフィルタ2が配置される部位1022に第2の緩衝部材2aを配置し、次に、平滑コンデンサ6u、6v、6wとノイズフィルタ2を、樹脂ケース102の夫々の所定の部位1021、1022に配置し、平滑コンデンサ6u、6v、6wとノイズフィルタ2の軸方向の高さ、及び端子位置を確定する。平滑コンデンサ6u、6v、6wの上面は、防爆弁の開封を考慮して、樹脂ケース102との間にスペースが確保されている。
【0045】
次に外部電源であるバッテリ1との接続部を構成する電源コネクタ11の一端と、ノイズフィルタ2の入力端211を接続する。その接続は溶接でも良いし、はんだ付け、ねじ止め、プレスフィットでも良い。電源コネクタ11の他端は、外部電源であるバッテリ1のコネクタ(図示せず)に接続される。
【0046】
一体型多層基板200を樹脂ケース102に配置する前に、第3の緩衝部材24を樹脂ケース102に挿入する。この第3の緩衝部材24は、放熱板22とヒートシンクとしての金属筐体101の熱抵抗を低減出来れば良く、リング状に配置しても良いし、部分的に配置しても良い。
【0047】
次に、平滑コンデンサ6u、6v、6wとノイズフィルタ2のリード線を一体型多層基板200に設けられた所定の貫通スルーホールに通し、一体型多層基板200のパワー領域23に予めはんだ付けされたL字端子4bに接続する。この接続部分は溶接でも良いし、はんだ付け、ねじ止め、プレスフィットでも良い。尚、一体型多層基板200に設けられた貫通スルーホールは、制御領域21と放熱板22とパワー領域23を貫通して設けられており、前述の制御領域のみに設けられている貫通スルーホールとパワー領域のみに設けられている貫通スルーホールとは別体である。
【0048】
尚、実施の形態1では、予めL字端子4bをはんだ付けした一体型多層基板200に平滑コンデンサ6u、6v、6wとノイズフィルタ2の端子を接続しているが、L字端子4bを設けずに直接一体型多層基板200のランドにはんだ付けしても良い。
【0049】
次に、金属筐体101と一体型多層基板200の放熱板が接触するように、金属筐体101と樹脂ケース102とを接合する。ヒートシンクとしての金属筐体101と樹脂ケース102との接合は、接着剤でもよいし、ねじ止め、プレスフィットでも良い。
【0050】
ここで、第3の緩衝部材24の役割について詳細に説明する。理想的には、樹脂ケース102が一体型多層基板200の放熱板22を固定して放熱板22と金属筐体101とを接触させることが望ましい。しかし、実際には製作公差が生じる。図2の構成に於いては、放熱板22と金属筐体101の熱抵抗を低減することが重要である。ここで放熱板22と金属筐体101が接触する前に、樹脂ケース102と金属筐体101が接触してしまうと、放熱板22と樹脂ケース102との間に隙間が生じたり、樹脂ケース102が、一体型多層基板200を金属筐体101に押さえることができず、放熱板22と金属筐体101との接触熱抵抗が増加してしまう。
【0051】
しかし図2に示すように、第3の緩衝部材24を放熱板22の延出部221と樹脂ケース102との間に挿入することで、樹脂ケース102と金属筐体101が放熱板22と金属筐体101とが接触するよりも先に接触することなく、放熱板22と金属筐体101の接触を確保したうえで、第3の緩衝部材24が圧縮されて収縮することで、樹脂ケース102と金属筐体101を接合することが可能になる。
【0052】
次に、第2の緩衝部材2a、第1の緩衝部材6aの役割について詳細に説明する。平滑コンデンサ6u、6v、6wの軸方向の一方の端面(図の上端面)と樹脂ケース102の内面とが固定されていると、及び/又は、ノイズフィルタ2の軸方向の一方の端面(図の上端面)と樹脂ケース102の内面とが固定されていると、樹脂ケース102とヒートシンクとしての金属筐体101を接合したときに一体型多層基板200と平滑コンデンサ6u、6v、6wとの接続部、及び/又は、一体型多層基板200とノイズフィルタ2との接続部、にストレスがかかることになる。
【0053】
これに対して実施の形態1の場合のように、樹脂ケース102の内面とノイズフィルタ2の軸方向の一方の端面(図の上端面)との間に第2の緩衝部材2aを挿入し、樹脂ケース102の内面と平滑コンデンサ6u、6v、6wの軸方向の一方の端面(図の上端面)との間に第1の緩衝部材6aを挿入することで、樹脂ケース102と金属筐体101を接合させるときにこの第2の緩衝部材2aと、第1の緩衝部材6aが圧縮されて収縮し、L字端子4bとノイズフィルタ2の接続部にかかるストレスと、L字端子4bと平滑コンデンサ6u、6v、6wの接続部にかかるストレスを緩和することが可能である。
【0054】
好ましくは、第2の緩衝部材2aと、第1の緩衝部材6aの反力が、樹脂ケース102と放熱板22の延出部221との間に挿入する第3の緩衝部材24の反力よりも小さくなるように、第2の緩衝部材2a、第1の緩衝部材6a、及び第3の緩衝部材24の材料を選定するのが良い。これにより、前述のストレスをより緩和することができる効果がある。
【0055】
又、第1の緩衝部材6aは、空気が抜けやすいような構造にすることで、平滑コンデンサ6u、6v、6wの軸方向の一方の端面(図の上端面)に設けた防爆弁が開封する空間の空気が抜け易くなる。
【0056】
次に、一体型多層基板200に於けるパワー領域23の構成について説明する。パワー領域23は、多層基板により構成されている。図3は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置に於ける、一体型多層基板のパワー領域の層構成を示す概略断面図である。図3ではパワー領域23を5層の多層基板により構成しているが、これに限るものではない。
【0057】
図3に於いて、パワー領域23は、表層としての第1の層231と、プリプレグ23aを介して第1の層231の下に設けられた第2の層232と、プリプレグ23aを介して第2の層232の下に設けられた第3の層233と、プリプレグ23aを介して第3の層233の下に設けられた第4の層234と、プリプレグ23aを介して第4の層234の下に設けられた第5の層235と、第5の層235と放熱板22の一方の表面との間に設けられたプリプレグ23aとにより構成されている。第1の層〜第5の層231〜235は、夫々銅板により構成されている。プリプレグ23aは、第1の層〜第5の層231〜235の間を電気的に絶縁すると共に、第5の層235と放熱板22との間を電気的に絶遠する材料で構成されている。前述のプリプレグ23aは、例えば炭素繊維等に樹脂を含浸して構成されている。
【0058】
表層としての第1の層231には、平滑コンデンサ6u、6v、6w、ノイズフィルタ2、パワースイッチング素子としての高電位側FET41u、41v、41w、低電位側FET42u、42v、42w、シャント抵抗7u、7v、7w、及び回転センサ84が接続される。
【0059】
2層目としての第2の層232と、3層目としての第3の層233には、3相ブリッジ回路4の各相の上アームと下アーム、及びモータリレー部5に於けるモータリレー用FET5u、5v、5wを接続する配線パターンが形成されている。
【0060】
4層目としての第4の層234には、電源リレー部3から平滑コンデンサ6u、6v、6wの正極側への配線パターンが形成されている。5層目としての第5の層235には、電源リレー部3から平滑コンデンサ6u、6v、6wの負極側への配線パターンが形成されている。
【0061】
高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wの夫々の直下には、銅等の熱良導体の材料により形成された伝熱部材である銅ピン4a1が配置され、高電位側FET41u、41v、41w、低電位側FET42u、42v、42wの片側の面(図の下側の面)に銅ピン4a1の端面が直接接触している。この銅ピン4a1は、第1の層231、第2の層232、第3の層234、及び第5の層235を貫通し、第5の層の放熱板22側の面にまで達している。銅ピン4a1は、高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wにより発生した熱を放熱板22まで伝熱する。尚、銅ピン以外に、通常のサーマルビアを用いても良い。
又、好ましくは、5層目としての第5の層235と放熱板22との間に挿入されたプリプレグ23aは、他の層の間に挿入されているプリプレグ23aより薄いプリプレグで構成される。これにより、銅ピン4a1と放熱板22との間の熱抵抗を下げることができ、高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wの温度上昇を効果的に抑えることが可能である。通常、高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wは、温度が上がるとオン抵抗が大きくなる傾向を持つため、FET4aの温度上昇を抑制することができれば、FET4aでの損失低減が可能である。
【0062】
尚、絶縁を確保した状態で銅ピン4a1を5層目である第5の層235の放熱板22側の面よりも放熱板22の方向に突出するように構成しても前述と同様の放熱効果が得られる。又、好ましくは、5層目の第5の層235と放熱板22との間の挿入するプリプレグ23aは、熱伝導の高い材料で形成するのが良い。これにより、更に熱抵抗を下げることができ、温度上昇を抑えることが可能であり、高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wでの発熱を低減することがとなる。
【0063】
車載各種センサ14に接続される車載各種センサ用コネクタ12と、トルクセンサ15に接続されるトルクセンサ用コネクタ13は、一体型多層基板200に接続されるが、その場合、パワー領域23へ接続しても良いし、制御領域表面実装部品を制御領域21へ接続しても良い。
【0064】
図4は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置に於ける、樹脂ケースの平面図であって、バッテリ1に接続される電源コネクタ11と、車載各種センサ14に接続される車載各種センサ用コネクタ12と、トルクセンサ15に接続されるトルクセンサ用コネクタ13の配置を示している。図4に示すように、電源コネクタ11は樹脂ケース102の一方の半円部のほぼ頂部近傍に配置され、車載各種センサ用コネクタ12とトルクセンサ用コネクタ13は、樹脂ケース102の他方の半円部の頂部を挟んでその両側の周縁部に夫々配置されている。
【0065】
電動モータ9の固定子91と、一体型多層基板200との接続は、予め一体型多層基板200のパワー領域23に、はんだ付けされたL字端子4bを接続する。その接続は、はんだ付以外に、溶接、ねじ止め、プレスフィットにより行っても良い。
【0066】
放熱板22は、一体型多層基板200の接地(GND)用として使用することも可能である。放熱板22は、その延出部221が金属筐体101へ直接接触しているので、放熱板22と金属筐体101の接続にコネクタやリード線を使用する必要がなく、ノイズが低減することができる。
【0067】
又、好ましくは、パワー領域23の表層である第1の層231に、ヒートシンクとしての金属筐体101の一部を絶縁材料で構成された放熱シートを介して接触させることで、配線の寄生抵抗で発生する損失による熱も放熱することができ、配線パターンの温度上昇を抑制することができる。
【0068】
以上説明したように、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング駆動装置は、電子制御ユニットの低損失化を実現することができ、又、基板の実装面を有効に利用することができるため、電動パワーステアリング駆動装置を小型化することができる。
【0069】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング駆動装置について説明する。図5は、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング駆動装置の構成を示す概略断面図である。発明の実施の形態2による電動パワーステアリング駆動装置の回路構成は、図1と同様である。尚、図5では、図2に示した構成と同一ないし同等である構成要素には、同一の符号が付されている。ここでは、実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0070】
前述の実施の形態1では、高電位側FET41u、41v、41wと、低電位側FET42u、42v、42wを、夫々一体型多層基板200に於けるパワー領域23の表層である第1の層231に配置し、これ等の高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wの片側の面に銅ピン4a1を接触させ、この銅ピン4a1を介して放熱板22へ放熱するようにしていたが、実施の形態2では、高電位側FET41u、41v、41wと、低電位側FET42u、42v、42wの両面から放熱が可能なように構成している。
【0071】
即ち、図5に於いて、高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wの一方の面(図の下方の面)は、ヒートシンクとしての金属筐体101の凸部に、絶縁物により形成された放熱シート4eを介して当接し、他方の面(図の上方の面)は直接、一体型多層基板200のパワー領域23の表層である第1の層231に当接している。従って、高電位側FET41u、41v、41w、及び低電位側FET42u、42v、42wの一方の面が放熱シート4eを介して金属筐体101に放熱され、他方の面が銅ピン4a1を介して一体型多層基板200の放熱板22により放熱され、より効果的に冷却されることになる。通常,パワースイッチング素子の上面にヒートシンク置くとノイズ源となる。この構成では,パワー領域23と,金属筐体101が対向しているために,接地(GND)された金属筐体101の凸部に,パワースイッチング素子を接触させるために低ノイズである。
【0072】
以上述べたこの発明の各実施の形態による電動パワーステアリング駆動装置は、少なくとも下記の何れかの発明を具体化したものである。
(1)運転者が車両の操舵系に加える操舵トルクに対応した補助トルクを発生する電動モータと、前記電動モータの駆動を制御する制御ユニットとを備え、前記運転者の操舵を前記補助トルクにより補助するようにした電動パワーステアリング駆動装置であって、
前記電動モータは、その軸方向の端部に固定された金属筐体を備え、
前記制御ユニットは、
複数のパワースイッチング素子を有し、前記パワースイッチング素子のスイッチング動作に基づいて、前記車両に搭載された直流電源からの直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給する電力変換回路と、
前記パワースイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御部と、
前記電力変換回路と前記制御部とを構成する部材のうちの少なくとも一部が搭載され、複数の多層基板が組み合わされて構成された一体型多層基板と、を有し、
前記一体型多層基板は、
放熱板と、
前記放熱板の第1の面に固定され、少なくとも前記パワースイッチング素子が表面に載置されて接続された多層基板により構成された第1の領域と、
前記放熱板の前記第1の面に対して表裏の関係をなす第2の面に固定され、前記制御部を構成する部材のうちの少なくとも一部が表面に載置されて接続され、前記第1の領域を構成する多層基板とは厚さの異なる多層基板により構成された第2の領域と
前記第1の領域に埋設され、一端が前記パワースイッチング素子に接触し、他端が前記放熱板の前記第1の面の近傍に位置し且つ前記放熱板に対して電気的に絶縁され、前記パワースイッチング素子が発生した熱を前記放熱板に伝達する伝熱部材と、
を有し、
前記放熱板は、
前記第1の領域と前記第2の領域とのうちの少なくとも一方から露出して前記放熱板の面の延びる方向に延出された延出部を有し、
前記延出部は、その少なくとも一部が前記金属筐体に直接当接するように前記金属筐体に固定される、
ことを特徴とする電動パワーステアリング駆動装置。
この発明によれば、電子制御ユニットを低損失化することができ、また、多層基板に於ける実装面積を大きくすることができるため小型化することが可能な電動パワーステアリングの駆動装置をえることができる。
【0073】
(2)前記一体型多層基板は、前記電動モータに近い方から、前記第1の領域を構成する多層基板、前記放熱板、前記第2の領域を構成する多層基板、の順で配置されるように前記金属筐体に固定される、
ことを特徴とする上記(1)に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
(3)前記電力変換回路は、平滑コンデンサをさらに備え、
前記一体型多層基板は、前記第1の領域を構成する多層基板、前記放熱板、および、前記第2の領域を構成する多層基板を貫通する貫通スルーホールが設けられており、
前記平滑コンデンサと前記パワースイッチング素子とを接続する配線は、前記一体型多層基板に設けられた貫通スルーホールを貫通している、
ことを特徴とする上記(2)に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
(4)前記第1の領域と前記第2の領域は、夫々配線パターンが設けられた複数の層を備え、
前記第1の領域の搭載された前記パワースイッチング素子は、前記第1の領域の層に設けられた前記配線パターンにより配線され、
前記第2の領域に搭載された前記制御部を構成する部材のうちの少なくとも一部は、前記第2の領域の層に設けられた前記配線パターンにより配線され、
前記第1の領域の少なくとも一つの層に設けられた前記配線パターンの厚さ寸法と、前記第2の領域の少なくとも一つの層に設けられた前記配線パターンの厚さ寸法と、は異なる値に形成され、
前記第1の領域に設けられた前記配線パターンの厚さ寸法は、前記第2の領域に設けられた前記配線パターンの厚さ寸法より大きく形成されている、
ことを特徴とする上記(1)に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
この発明によれば、パワー領域の表層の銅板厚を厚くすることが可能であるため、配線での損失を低減できる。
【0074】
(5)前記パワースイッチング素子は、前記第1の領域の前記複数の層のうちの表層に載置され、
前記伝熱部材は、前記複数の層を貫通して配置されている、
ことを特徴とする上記(4)に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
この発明によれば、パワースイッチング素子を効果的に冷却することができる。

【0075】
)前記パワースイッチング素子は、前記一体型多層基板に対向する面に対して反対側の面が前記金属筐体に当接するように構成されている、
ことを特徴とする上記(1)から()のうちの何れか一つに記載の電動パワーステアリング駆動装置。
この発明によれば、極めて効果的にパワースイッチング素子を冷却することができる。
【0076】
)前記一体型多層基板の前記第1の領域と前記第2の領域は、夫々、
配線パターンを有する複数の層と、
前記複数の層の間に配置されたプリプレグと、を有し、
前記第1の領域に於ける前記プリプレグは、前記第2の領域に於ける前記プリプレグの熱伝導率よりも高い熱伝導率を備えている、
ことを特徴とする上記(1)から()のうちの何れか一つに記載の電動パワーステアリング駆動装置。
この発明によれば、パワースイッチング素子をより効果的に冷却することができる。
【0077】
)前記金属筐体に固定され、少なくとも前記一体型多層基板を覆う絶縁物製のカバーを備え、
前記一体型多層基板は、前記電力変換回路の平滑コンデンサとノイズフィルタを搭載しており、
前記カバーは、前記平滑コンデンサと前記ノイズフィルタを覆うように構成され、且つ第1の緩衝部材を介して前記平滑コンデンサと当接し、第2の緩衝部材を介して前記ノイズフィルタと当接するように構成され、
前記一体型多層基板の前記延出部は、前記第1の領域と前記第2の領域との双方から露出して前記放熱板の面の延びる方向に延出され、
前記延出部は、前記金属筐体と前記カバーとの間に挿入され、
前記延出部の一方の面は、第3の緩衝部材を介して前記カバーに当接し、
前記延出部の前記一方の面に対して表裏の関係をなす他方の面は、前記金属筐体に直接接触するように構成されている、
ことを特徴とする上記(1)から()のうちの何れか一つに記載の電動パワーステアリング駆動装置。
この発明によれば、平滑コンデンサと多層基板との接続部、ノイズフィルタと多層基板との接続部のストレスを緩和することができる。
【0078】
)前記第1の緩衝部材の圧縮に対する反力と前記第2の緩衝部材の圧縮に対する反力は、前記第3の緩衝部材の圧縮に対する反力よりも小さく構成されている、
ことを特徴とする上記()に記載の電動パワーステアリング駆動装置。
この発明によれば、すくなくとも平滑コンデンサと多層基板との接続部、ノイズフィルタと多層基板との接続部のストレスを緩和することができる。
【0079】
以上説明したように、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング駆動装置によれば、パワースイッチング素子としてのFETを、その両面から放熱可能な構成とされており、低損失な電動パワーステアリングの駆動装置を提供することができる。
【0080】
尚、この発明は前述の実施の形態1及び2による電動パワーステアリング駆動装置に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態1及び2の構成を適宜組み合わせたり、その構成に一部変形を加えたり、構成を一部省略することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
この発明は、電動パワーステアリング装置の分野、ひいてはその電動パワーステアリング装置を用いる自動車等の車両の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
100 電動パワーステアリング駆動装置、200 一体型多層基板、21 制御領域、22 放熱板、221 延出部、23 パワー領域、1 バッテリ、2 ノイズフィルタ、3 電源リレー部、31、32 電源リレー用FET、4 3相ブリッジ回路、5 モータリレー部、5u、5v、5w モータリレー用FET、6u、6v、6w 平滑コンデンサ、7u、7v、7w シャント抵抗、8 制御基板、9 電動モータ、91 固定子、92 回転子、31、32 電源リレーFET、6a 第1の緩衝部材、2a 第2の緩衝部材、24 第3の緩衝部材、4e 放熱シート、11 電源コネクタ、12 車両側信号用コネクタ、13 トルクセンサ用コネクタ、14 車両側信号、15 トルクセンサ、20 電子制御ユニット、101 金属筐体、102 樹脂ケース、4b L字端子、84 回転センサ、81 マイクロコンピュータ、82 FET駆動回路、83電流検出手段、100 電動パワーステアリング駆動装置、41u、41v、41w 高電位側FET、42u、42v、42w 低電位側FET、UL U相出力線、VL V相出力線、WL W相出力線、PL 正極側入力線、NL 負極側出力線、UT U相巻線端子、VT V相巻線端子、WT W相巻線端子
図1
図2
図3
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図5