特許第6444516号(P6444516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6444516磁気結合エネルギー伝送用インダクタ及びこの形式のインダクタの作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444516
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】磁気結合エネルギー伝送用インダクタ及びこの形式のインダクタの作動方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20181217BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20181217BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20181217BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20181217BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H05B6/12 308
   H01F17/06 A
   H01F38/14
   H01F17/06 F
   H05B6/36 Z
   H05B6/44
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-538433(P2017-538433)
(86)(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公表番号】特表2018-504751(P2018-504751A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】EP2016052039
(87)【国際公開番号】WO2016124526
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年7月20日
(31)【優先権主張番号】102015202032.0
(32)【優先日】2015年2月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515028838
【氏名又は名称】ウルト エレクトロニク アイソス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
(72)【発明者】
【氏名】ケム ゾム
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−517926(JP,A)
【文献】 特開2008−053056(JP,A)
【文献】 特開2008−117638(JP,A)
【文献】 特開2013−101981(JP,A)
【文献】 特開2012−060812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
H01F 17/06
H01F 38/14
H05B 6/36
H05B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルキャリア(2)と、
第1の電力範囲でエネルギー伝送のために前記コイルキャリア(2)上に配置され第1の外径(D)を有する第1のコイル(3)と、
第2の電力範囲でエネルギー伝送のためにコイルキャリア2上に配置され第2の外径(D)を有し、第2の外径(D)が第1の外径(D)よりも大きい第2のコイル(4)と、
コイルキャリア(2)上に配置され、第2の外径(D)より大きい外径(D)を有する第3のコイル(5)と、
第1のコイル(3)の縦方向中心軸線(M)を取り囲む磁気コア(14)とを有する磁気結合エネルギー伝送用インダクタにおいて、
第1のコイル(3)及び第2のコイル(4)が互いに独立して作動され同時には作動しないようにデザインされる制御ユニット(8)を備え、第3のコイル(5)は第2のコイル(4)と共に作動されることを特徴とする磁気結合エネルギー伝送用インダクタ。
【請求項2】
制御ユニット(8)は、第1のコイル(3)が第1の作動周波数(F)で作動され
1の作動周波数(F)が100kHz≦F1≦220kHzが適用されるようにデザインされることを特徴とする請求項1記載のインダクタ。
【請求項3】
制御ユニット(8)は、第2のコイル(4)が第2の作動周波数(F)で作動され、
第2の作動周波数(F)は40kHz≦F2≦250kHzが適用されるようにデザインされることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のインダクタ。
【請求項4】
磁気コア(14)は、一体に環状コアとしてデザインされることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載のインダクタ。
【請求項5】
磁気コア(14)は複数のコアエレメント(29)で構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載のインダクタ。
【請求項6】
磁気コア(14)は第1のコイル(3)を取り囲んで、第1のコイル(3)と第2のコイル(4)との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項5何れか1項記載のインダクタ。
【請求項7】
磁気コア(14)及び/又はコイル(3、4、5)は、コイルキャリア(2)の第1の面(S)上に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項6何れか1項記載のインダクタ。
【請求項8】
第1のコイル(3)の縦方向中心軸線(M)に対して半径方向に配置される複数の磁気ロッド(26)を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7何れか1項記載のインダクタ。
【請求項9】
複数の磁気ロッド(26)がコイルキャリア(2)の第2の面(S)上に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項8何れか1項記載のインダクタ。
【請求項10】
磁気ロッド(26)は、第2のコイル(4)及び/又は第3のコイル(5)のレセプタクル領域(A2、A3)内に第1のコイル(3)のレセプタクル領域(A)の外側に延伸することを特徴とする請求項8又は請求項9記載のインダクタ。
【請求項11】
コイルキャリア(2)はコイル(4、5)の少なくとも1つを冷却するための複数の開孔(27、28)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10何れか1項記載のインダクタ。
【請求項12】
コイル(3、4、5)の少なくとも1つは螺旋状であることを特徴とする請求項1乃至請求項11何れか1項記載のインダクタ。
【請求項13】
インダクタ(1)と、第1のコイル(3)と、第2のコイル(4)と、第3のコイル(5)と、第1のコイル(3)の縦方向中心軸線(M)を取り囲む磁気コア(14)とを設けること、
第1のコイル(3)を第1の作動周波数(F)により第1の電力範囲で作動すること、
第2のコイル(4)を第1のコイル(3)とは独立して同時には作動すしないように第2の作動周波数(F)により第2の電力範囲で作動すること、
第3のコイル(5)を第2のコイル(4)と共に作動させることを特徴とする磁気結合エネルギー伝送用インダクタの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブル(前文)にしたがう特に磁気結合エネルギー伝送のためのインダクタに関する。更に、本発明は、特に磁気結合エネルギー伝送のためのインダクタの作動方法に関する。インダクタは、特に家庭部所において、特に誘導加熱調理ホブ(料理用レンジ上部)における用途に使用される。
【背景技術】
【0002】
誘導調理ホブ用のインダクタは、誘導コイルが配置されるコイルキャリアを備え、特許文献1(EP 1 560 462 A2)から知られている。更に、インダクタは複数のフェライトロッドを備え、これらのフェライトロッドは誘導コイルの縦方向中心軸線に対して半径方向に延伸し、磁気回路を完成させるように作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP 1 560 462 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、柔軟性があり効率的な方法で使用することができるインダクタを作成する目的に基づいている。インダクタは、特に磁気結合エネルギー伝送に使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有するインダクタによって達成される。インダクタは、少なくとも2つのコイル又は誘導コイルを備え、第1のコイルは第1の電力範囲の第1の作動周波数Fで作動可能であり又は作動され、第2のコイルは第2の電力範囲の第2の作動周波数Fで作動可能であり又は作動される。作動周波数F及びFは特に相違する周波数である。第1のコイルは低電力範囲の誘導エネルギー伝送に使用され、第2のコイルは高電力範囲の誘導エネルギー伝送に使用される。
【0006】
低電力範囲での第1のコイルの伝送電力Pについて次式が適用される。
【0007】
0W≦P≦300W、好ましくは0W≦P≦250W、より好ましくは0W≦P≦200W
対照的に、高電力範囲での第2のコイル及び該当する場合には第3のコイルの伝送電力Pについて次式が適用される。
【0008】
200W≦P≦4.0kW、好ましくは250W≦P≦3.3kW、より好ましくは300W≦P≦2.4kW
複数のコイルの組み合わせによって、異なる要求される電力等級での極めて多様な適用例を柔軟な方法で作動させることができる。コイルは互いに独立して作動し、即ち同時には作動しないので、コイル間の相互影響が回避され、それぞれの電力範囲において高い効率が達成される。第1のコイルは例えばモバイル電話の無線充電に使用することができ、第2のコイルは例えば台所電気器具又はロボット電気掃除機のような高電力装置の作動に使用することができる。
【0009】
異なる電力範囲を達成するために、第2のコイルの外径Dは第1のコイルの外径Dよりも大きい。
【0010】
特に外径Dについて次式が適用される。
【0011】
10mm≦D≦60mm、好ましくは15mm≦D≦55mm、より好ましくは20mm≦D≦50mm
特に外径Dについて次式が適用される。
【0012】
100mm≦D≦180mm、好ましくは110mm≦D≦160mm、より好ましくは120mm≦D≦140mm
第2のコイルの内径dについては、好ましくはd>Dが適用される。
【0013】
さらに、第1のコイルは第1のインダクタンスLを有し、これには好ましくは次式が適用される。
【0014】
1μH≦L≦100μH、好ましくは4μH≦L≦50μH、より好ましくは5μH≦L≦25μH
これに対応して、第2のコイルは第2のインダクタンスLを有し、これには好ましくは次式が適用される。
【0015】
50μH≦L≦150μH、好ましくは70μH≦L≦130μH、より好ましくは90μH≦L≦120μH
このインダクタは高効率を保証する。磁力線は磁気コアにより良好に誘導され、それによって漂遊磁場が低減される。磁気コアは、一体的にデザインすることもできるし、複数のコアエレメントで構成することもできる。磁気コアはフェライトコアであることが好ましい。磁気コアは任意の閉路形態を有することができる。磁気コアは、例えば多角形、円形、半円形、楕円形又は半楕円形の断面形状を有する。
【0016】
請求項2に記載のインダクタは高効率を保証する。制御ユニットは、第1のコイル及び第2のコイルが互いに独立して、特に単独で独立して作動することを保証する。これは、特に第1のコイル又は第2のコイルの何れか一方が作動していることを意味する。したがって、制御ユニットは第1のコイルと第2のコイルが同時に作動することを防止する。
【0017】
請求項3に記載のインダクタは低電力範囲での効率的な作動を保証する。第1のコイルに印加される電圧Uは0V〜50Vの間の振幅を有する。第1のコイルを流れる電流Iは0A〜15Aの間の振幅を有する。
【0018】
請求項4に記載のインダクタは高電力範囲で第2のコイルを作動させるときに高い効率を保証する。第2のコイルに印加される電圧Uは0V〜240Vとの間の振幅を有する。第2のコイルを流れる電流Iは0A〜30Aとの間の振幅を有する。
【0019】
請求項5に記載のインダクタは高電力範囲での用途における柔軟性を高める。第3のコイルを介して、高電力範囲が拡張され又は完全に利用される。外径Dについて好ましくは次式が適用される。
【0020】
160mm≦D≦250mm、好ましくは170mm≦D≦240mm、より好ましくは180mm≦D≦230mm。
【0021】
さらに、第3のコイルは第3の内径dを有し、好ましくはd>Dである。第3のコイルは第3のインダクタンスLを有し、好ましくは次式が適用される。
【0022】
20μH≦L≦100μH、好ましくは30μH≦L≦90μH、より好ましくは50μH≦L≦80μH
第3のコイルは第2のコイルに従応して作動させることができる。第3のコイルは例えば第2のコイルと直列又は並列に接続されて、電力を増加させる。好ましくは、第3のコイルは第2のコイルと共に単独で作動可能である。対照的に、第1のコイルは第2のコイル及び第3のコイルとは独立して、特に単独で独立して作動可能である。この目的のために、インダクタは特に適切にデザインされた制御ユニットを備える。
【0023】
請求項6に記載のインダクタは高効率を保証する。その理由は磁力線が最適に誘導されるからである。コアは好ましくは閉じた円形又は多角形、特に長方形の形状を有する。磁気コアは、好ましくは環状コアとして、特に環状フェライトコアとしてデザインされる。
【0024】
請求項7に記載のインダクタは高効率を保証する。磁気コアは複数のコアエレメントから構成されているので、その形状は技術的に製造が容易であり、必要に応じて最適化できる複数のコアエレメントから簡易かつ柔軟に組み立てることができる。複数のコアエレメントは、例えば多角形として形成された1つのコアに組み立てることができる複数のロッドとしてデザインすることができる。さらに、複数のコアエレメントは、円弧、例えば四分円弧又は半円弧としてデザインされ、1つの環状コアに組み立てることができる。複数のコアエレメントは好ましくはフェライトコアエレメントとしてデザインされる。
【0025】
請求項8に記載のインダクタは、低電力範囲で第1のコイルを作動させるとき及び高電力範囲で第2のコイルを作動させるときの両方で高い効率を保証する。好ましくは、磁気コアは環状コア、特に環状フェライトコアとしてデザインされ、環状コアの内径dについて次式が適用される。
【0026】
>D
さらに、環状コアの外径D及び第2のコイルの内径dについて、好ましくは次式が適用される。
【0027】
>D
請求項9に記載のインダクタは高効率を保証する。好ましくは、磁気コア及びこれらのコイルはコイルキャリアの上面に配置される。例えば、台所用品では、この上面は作業面の直下に取り付けられ、又は作業面に嵌め込まれる。
【0028】
請求項10に記載のインダクタは高効率を保証する。磁気ロッドは磁力線の良好な誘導を可能にし、それによって漏洩磁場が低減される。好ましくは、磁気ロッドはフェライトロッドとしてデザインされる。ロッドは、特に縦方向中心軸線を中心に回転対称に配置されている。特に、インダクタは3〜48本、好ましくは4〜36本、より好ましくは6〜24本のロッドを含む。
【0029】
請求項11に記載のインダクタは高効率を保証する。磁場は、第2の面で、特に下面で複数の磁気ロッドの配置によって遮蔽される。好ましくは、磁気コアはコイルキャリアの上面に配置され、磁気ロッドはコイルキャリアの下面に配置される。磁気ロッドに加えて又は磁気ロッドの代替として、コイルキャリアの第2の面には遮蔽材料を設けることができる。
【0030】
請求項12に記載のインダクタは高電力範囲において高い効率を保証する。
【0031】
請求項13に記載のインダクタは温度特性を改善し、それによって高効率が達成される。開孔は穴及び/又はスロットとしてデザインすることができる。さらに、インダクタは開孔と組み合わせて少なくとも1つのコイルを冷却するファンを備えることができる。好ましくは、開孔は第2のコイル及び/又は第3のコイルの領域内にデザインされる。
【0032】
請求項14に記載のインダクタは高い柔軟性と効率を保証する。第1のコイル及び/又は第2のコイル及び/又は該当する場合には第3のコイルが螺旋状に形成されているため、それぞれのコイルの所望の数の巻線がそれぞれのコイルの比較的平坦なデザイン組み合わせて実現することができる。それぞれのコイルは単一の平面又は複数の平面内に螺旋状に巻回することができる。それぞれのコイルは多くても8つの面に、好ましくは多くても6つの面に、より好ましくは多くとも4つの面に螺旋状に巻回されている。それぞれのコイルは半径方向に一定の巻線密度を有する。
【0033】
さらに、本発明はそのようなインダクタの作動方法を作成する目的に基づいており、この作動方法は柔軟で効率的な形態で使用することができる。
【0034】
この目的は請求項15の特徴を有する方法によって達成される。本発明にしたがう方法の利点は既に説明した本発明にしたがうインダクタの利点に対応する。相互に独立したこれらのコイルの作動、即ち特にこれらのコイルが作動周波数F及びFで単独で非同期的な作動をするために、第1のコイルを作動させるとき又は第2のコイルを作動させるとき、誘導エネルギー伝送の相互影響は生じることがない。その結果、これらの適用例は低電力範囲及び高電力範囲で簡易かつ柔軟に実行できる。本発明にしたがう方法は、特に請求項1〜14の少なくとも1つの特徴を用いて展開することもできる。
【0035】
本発明の他の特徴、利点及び詳細は複数の実施例について以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、第1の実施例にしたがうインダクタの概略図を示す。
図2図2は、3つのコイルがコイルキャリア上に配置され、一体的なコアを有するインダクタの上面の平面図を示す。
図3図3は、複数の磁気ロッドを有するコイルキャリアの下面の平面図を示す。
図4図4は、図3における切断線IV−IVに沿ったインダクタを通る第1の断面を示す。
図5図5は、図3における切断線V−Vに沿ったインダクタを通る第2の断面を示す。
図6図6は、コイルを省略したコイルキャリアの斜視図を示す。
図7図7は、複数のコアエレメントから組み立てたコアを有する第2の実施例にしたがうインダクタの上面の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の磁気結合エネルギー伝送用インダクタ及びこの形式のインダクタの作動方法をその好ましい実施例について図面を参照して説明する。
【0038】
本発明の第1の実施例が図1図6を参照して下記で説明される。インダクタ1はコイルキャリア2を備え、この上に3つのコイル3、4、5が配置されている。コイル3、4、5はインバータ6に接続され、これは給電ネットワーク7を介してネットワーク電圧U及びネットワーク周波数fが給電される。インバータ6は制御ユニット8によって制御され、これは入力ユニット9への信号接続部を有する。インダクタ1は、例えば誘導結合エネルギー伝送又はエネルギー給電のための装置の一部である。インダクタ1は、特に誘導調理ホブのような家庭用部所における用途に使用される。
【0039】
コイルキャリア2は円板状に形成されて、縦方向の中心軸線Mを有している。コイルキャリア2は、その上面S上に、コイル3〜5のための3つのレセプタクル領域A、A、Aを形成している。第1のコイル3はレセプタクル領域A内でコイルキャリア2の上面S上に配置されている。第1のコイル3はコイルキャリア2と同心に配置され、第1のコイル3の縦方向中心軸線Mが縦方向中心軸線Mと一致するようになっている。第1のコイル3は螺旋状に巻回され、2本の接続ワイヤ10、11を備えている。接続ワイヤ10、11はコイルキャリア2内の組み合わされる開孔12、13を通ってその下面Sに至り、そこからインバータ6に接続されている。
【0040】
第1コイル3は低電力範囲における誘導エネルギー伝送に用いられる。低電力範囲は、例えば0W〜200Wである。第1のコア3は、例えば以下の特性データを有する。
【0041】
外径D=50mm
インダクタンスL=6.3μH
直流抵抗R1DC=48mΩ
第1のコイル3は磁気コア14によって取り囲まれている。したがって、磁気コア14は第1のコイル3の縦方向中心軸線M1を取り囲んでいる。磁気コア14は一体としてデザインされている。コア14は、特に環状フェライトコアとしてデザインされている。
【0042】
磁気コア14は第1のコイル3と第2のコイル4との間においてコイルキャリア2の上面S上に配置される。磁気コア14は内径dを有し、次式が適用される。
【0043】
>D
第2のコイル4は、レセプタクル領域A2内でコイルキャリア2の上面S上に配置され、磁気コア14を取り囲んでいる。磁気コア14は、例えば外径D=70mm、高さH=5mmを有している。
【0044】
第2のコイル4は螺旋状に巻回され、接続ワイヤ15、16を備えている。接続ワイヤ15、16は組み合わされる開孔17、18を通ってコイルキャリア2の下面Sに至る。そこから、接続ワイヤ15、16はインバータ6に接続されている。第2のコイル4はコイルキャリア2と同心に配置され、第2のコイル4の縦方向中心軸線Mがコイルキャリア2の縦方向中心軸線Mと一致するようになっている。第2のレセプタクル領域Aは環状の内側リッジ19によって取り囲まれている。
【0045】
第2のコイル4は高電力範囲での誘導エネルギー伝送に用いられる。高電力範囲は、例えば200W〜4.0kWである。第2のコイル4は、例えば以下の特性データを有する。
【0046】
内径d=72mm
外径D=140mm
インダクタンスL=100μH
直流抵抗R2DC=45mΩ
また、次式が第2のコイル4について適用される。
【0047】
>D、したがってD<d<D
第1のコイル3及び第2のコイル4は異なる電力範囲で使用されるので、制御ユニット8は第1のコイル3及び第2のコイル4を互いに独立して作動できるようにデザインされている。これは第1のコイル3又は第2のコイル4の何れか一方を単独で作動できることを意味する。
【0048】
第3のコイル5はレセプタクル領域A3内でコイルキャリア2の上面S上に配置され、第2のコイル4及び環状の内側リッジ19を取り囲んでいる。レセプタクル領域Aは環状の内側リッジ19及び環状の外側リッジ20によって取り囲まれている。
【0049】
第3のコイル5は螺旋状に巻回され、接続ワイヤ21、22を備えている。接続ワイヤ21、22は組み合わされる開孔23、24を通ってコイルキャリア2の下面Sに至る。そこから、接続ワイヤ21、22はインバータ6に接続されている。第3のコイル5はコイルキャリア2と同心に配置され、それで第3のコイル5の縦方向中心軸線Mはコイルキャリア2の縦方向中心軸線Mと一致するようになっている。
【0050】
第3のコイル5は、高電力範囲での誘導エネルギー伝送に用いられる。第3のコイル5は、例えば以下の特性データを有する。
【0051】
内径d=180mm
外径D=214mm
インダクタンスL=60μH
直流抵抗R3DC=45mΩ
第3のコイル5は第2のコイル4を取り囲んでいるので、次式のようになる。
【0052】
>D
コイル3、4、5は単一の平面又は複数の平面内に螺旋状に巻回することができる。この実施例において、コイル3、4、5はそれぞれ2つの平面内で螺旋状に巻回されている。コイル3、4、5は半径方向に一定の巻線密度を有する。
【0053】
第3のコイル5は好ましくは第2のコイル4に単独で従応して作動可能であり、このため第3のコイル5は例えば必要に応じて第2のコイル4と並列又は直列に接続されている。例えば、第2のコイル4は高電力範囲の第1の部分領域のみをカバーし、第3のコイル5の追加の作動によって、高電力範囲の残りの第2の部分範囲をカバーすることができるようになっている。したがって、制御ユニット8は第3のコイル5が第2のコイル4に単独で従応して作動可能であるようにデザインされる。第3のコイル5は、第2のコイル4に対応して、第1のコイル3とは独立に作動可能である。第2のコイル4に対応する。改言すれば、第1のコイル3はコイル4、5とは独立して作動可能である。
【0054】
複数のレセプタクル25がコイルキャリア2において下面S上にデザインされており、これらのレセプタクルはレセプタクル領域A及びAの下方で縦方向中心軸線M又はMに対して半径方向に延伸している。磁気ロッド26は、特にフェライトロッドとしてデザインされ、レセプタクル25内に配置されている。ロッド26は第1のコイル3のレセプタクル領域Aの外側からコイル4、5のレセプタクル領域A及びAに延伸している。
【0055】
コイル4、5を冷却するために、コイルキャリア2はレセプタクル領域A及びA内に複数の開孔27、28を備えている。開孔27、28は、例えば円形及び/又はスロット形状でデザインされる。レセプタクル領域Aにデザインされた開孔28は、例えばレセプタクル領域Aにデザインされた開孔27の直径よりも小さい直径を有する。
【0056】
インダクタ1が機能する形態は以下の通りである。
【0057】
インダクタ1が低電力範囲で作動されるとき、第1のコイル3のみが作動する。この目的のために、第1のコイル3及び所望の伝送電力P1が入力ユニット9によって選択され、制御ユニット8に送信される。制御ユニット8は、それに対応してインバータ6を駆動し、その入力として第1の作動周波数F及び第1の電圧Uを指定する。所定のネットワーク周波数fと所定のネットワーク電圧Uとに基づいて、インバータ6は制御部8によって指定された作動周波数F及び電圧Uをインバータ6の出力側、即ちコイル側に設定する。したがって、次式が理想的にはインバータ6の出力電圧U及び出力周波数fについて適用される。
【0058】
=F、U=U
次式が第1の作動周波数Fに適用される。
【0059】
100kHz≦F≦220kHz、好ましくは100kHz≦F≦210Hz、より好ましくは120kHz≦F≦200kHz
第1のコイル3は0W〜200Wの低電力範囲で作動することができ、それで例えばモバイル電話、スマートウォッチ、フィットネストラッカー、デジタルカメラ、ベビーモニター、ラジオ又はリモコンユニットなどの携帯装置を第1のコイル3で誘導充電することができる。
【0060】
第1のコイル3によって生成された磁力線は磁気コア14を通って誘導されて、漂遊磁界が低減され、それで誘導エネルギー伝送が高効率で達成される。第1のコイル3が作動しているとき、第2のコイル4及び/又は第3のコイル5は同時に作動することはない。
【0061】
インダクタ1が高電力範囲で作動するとき、第2のコイル4及び該当する場合には第3のコイル5も作動される。この目的のために、コイル4及び所望の伝送電力Pが入力ユニット9によって選択され、制御ユニット8に送信される。制御ユニット8は、これに対応してインバータ6を駆動し、その入力として第2の作動周波数F及び第2の電圧Uを指定する。インバータ6は作動周波数Fと電圧Uを設定し、それで次式が理想的には出力側で適用される。
【0062】
=F、U=U
また、制御ユニット8は、インバータ6に対して、所望の電力伝送P2が第2のコイル4の作動によって単独で達成できるかどうか又は第3のコイル5が必要とされるかどうかを指定する。第3のコイル5がさらに必要とされる場合には、コイル4及び5が並列又は直列に接続される。これは図2に概略的に図示されている。したがって、第3のコイル5は、第2のコイル4に対応して、作動周波数F及び電圧Uで作動する。
【0063】
次式が第2の作動周波数Fについて適用される。
【0064】
40kHz≦F≦250kHz、好ましくは50kHz≦F≦200kHz、より好ましくは60kHz≦F≦120kHz
特に、第2の作動周波数Fは第1の作動周波数Fと相違している。
【0065】
さて、磁気コア14は磁力線を案内し、それで漂遊磁場が減少する。これによりエネルギー移動が高効率で達成される。また、下面Sに発生した磁界は磁気ロッド26によって遮蔽され、これによっても高効率が達成される。コイル4、5は開孔27、28を介して冷却される。ファン(図示せず)を付加的に使用することも可能である。
【0066】
本発明の第2の実施例は図7を参照して以下に説明される。第1の実施例とは対照的に、磁気コア14は複数のコアエレメント29から構成されている。コア14はデザイン上環状であり、4つの四分円弧から構成されている。コア14の極めて特異な形態は、標準化されたコアエレメント29を用いて磁気コア14を組み立てることにより簡易な形態で形成することができる。コアエレメント29は、特にフェライトコアエレメントとしてデザインされる。インダクタ1をさらに展開し、さらに機能の態様をとることに関して上述の実施例が参照される。
【0067】
本発明にしたがうインダクタ1は極めて多様な用途を簡易で柔軟な形態で可能にする。第1のコイル3は例えば200Wまでの低電力範囲で使用され、第2のコイル4は該当する場合には第3のコイル5と共に、例えば200Wを超える高電力範囲で使用される。第1のコイル3は単独で低電力範囲で作動し、高電力範囲では第2のコイル4が単独に又は第2のコイル4及び第3のコイル5が共に作動する。異なるコイル3、4、5の組み合わせをとることで、異なる用途が異なる電力等級で可能になる。低電力範囲での第1のコイル3及び高電力範囲での第2のコイル4又は該当する場合にはそれに加えて第3のコイル5は同時に作動することはないので、低電力範囲で及び高電力範囲でのエネルギー伝送に影響は生じない。
【0068】
磁気コア14及び磁気ロッド26の組み合わせにより、効率的なエネルギー伝送が誘導結合によって低損失で可能になる。
【0069】
第1のコイル3の接続ワイヤ10、11は編組線としてデザインすることができ、0.1mm〜2.5mmの断面を有することができる。接続ワイヤ10、11は、例えばナイロン、シルク又はフォイルのような材料で被覆することができる。第2、第3のコイル4、5の接続ワイヤ15、16、21、22は編組線としてデザインすることができ、0.5mm〜5mmの断面を有することができる。接続ワイヤ15、16、21、22は、例えばナイロン、シルク又はフォイルのような材料で被覆することができる。
【0070】
コイル4、5を冷却するためにファンを設けることができる。冷却プレートを代替物又は追加物として設けることができる。インダクタ1は片面又は両面に蓋で覆うことができる。さらに、インダクタ1は鋳造することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7