(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データベースは、前記走査装置による前記粒子ビームの前記x方向の偏向角であるx方向偏向角と、前記走査装置による前記粒子ビームの前記y方向の偏向角であるy方向偏向角を記憶しており、
前記合計線量演算部は、
前記選択x方向線量を選択する際に、
前記x方向偏向角から、前記測定ビーム中心軸位置における前記x方向の位置及び前記測定エネルギーに対応して選択した選択x方向偏向角に基づいてx座標を演算し、
前記x方向線量分布から、前記x座標に対応する線量を前記選択x方向線量として選択し、
前記選択y方向線量を選択する際に、
前記y方向偏向角から、前記測定ビーム中心軸位置における前記y方向の位置及び前記測定エネルギーに対応して選択した選択y方向偏向角に基づいてy座標を演算し、
前記y方向線量分布から、前記y座標に対応する線量を前記選択y方向線量として選択することを特徴とする請求項2記載の粒子線治療装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による粒子線治療装置の概略構成図である。
図2は
図1の線量分布演算装置の構成を示す図であり、
図3は
図2の機能ブロックを実現するハードウェア構成を示す図である。
図4は
図1の線量分布演算装置に入力されるデータ構造の例を示す図であり、
図5は本発明の実施の形態1による粒子線治療における合計線量分布と線量評価点の例を説明する図である。
図6、
図7は、本発明の実施の形態1による粒子線治療の流れを説明する図である。
図8は、本発明の実施の形態1による線量分布の補正例を示す図である。一般的に、粒子線スキャニング照射を実施する粒子線治療装置50は、治療に必要なエネルギーの粒子ビーム20を発生させる粒子ビーム発生装置1と、走査装置3を備えた粒子線照射装置へ粒子ビーム20を輸送するビーム輸送装置2と、粒子ビーム20をビーム進行方向であるz方向に対して垂直な2方向、すなわちx方向およびy方向に偏向させ、患者位置において粒子ビーム20の走査が可能な走査装置3を備えている。
【0017】
走査装置3は、粒子ビーム20をx方向に偏向させるx方向走査電磁石4と、粒子ビーム20をy方向に偏向させるy方向走査電磁石5を備えている。粒子線治療装置50は、粒子ビーム発生装置1による粒子ビーム20の出射開始および遮断と、走査装置3による粒子ビーム20の走査とを制御する制御部(図示せず)と、走査装置3で走査された粒子ビーム20が治療対象(患者)の各照射位置に照射される線量値を測定する線量測定装置7と、x方向走査電磁石4及びy方向走査電磁石5で走査された粒子ビーム20が通過するビームにおける通過位置(重心位置)やサイズを演算するためのビーム情報を検出する位置モニタ(図示せず)を備えている。治療対象(患者)は、粒子ビーム20を照射する照射対象である。
【0018】
実際に粒子ビーム20を照射する場合における不確定要素を排除するため、粒子線治療の計画を立案した後で実際に粒子ビーム20を患者に照射する前に、治療計画となるべく同一の条件でファントム(患者代替物)21に対してビーム照射を実施し、線量絶対値(絶対線量値)および線量分布を測定し、治療計画と合っているかどうかを確認する作業が行われるのが一般的である。この作業を患者QA(Quality Assurance)と呼ぶ。ファントム21には一般的には水槽に入れた水が使用されることが多く、水中に設置された線量測定装置を用いて線量を測定する。
【0019】
患者QAを実行する際には、
図1に示すように、治療(粒子線治療)の際に患者が固定される位置にファントム21を配置する。患者QAを実行する際の粒子線治療装置50は、粒子ビーム発生装置1と、ビーム輸送装置2と、走査装置3と、ビームエネルギー測定装置6と、線量測定装置7と、ビーム偏向情報測定装置8と、線量分布演算装置10を備える。治療の際には、位置モニタ(図示せず)を走査装置3と線量測定装置7との間に配置すると共に、ファントム21の位置に患者が固定される。ビームエネルギー測定装置6は、粒子ビーム20における粒子のエネルギーを測定する。ビームエネルギー測定装置6は、例えば、薄膜シンチレーション検出器などである。患者QA及び治療を実行する際の線量測定装置7は、例えば、電離箱であり、粒子ビーム20により発生する電離イオンの電荷数(単位電荷のカウント値)を測定する。電離イオンの電荷数は粒子ビーム20のビーム量と1対1で対応する。
【0020】
ビーム偏向情報測定装置8は、x方向走査電磁石4及びy方向走査電磁石5により形成されるビーム中心軸の位置x、yを測定する。具体的には、ビーム偏向情報測定装置8は、走査装置3が粒子ビーム20の進路上に発生させた磁界強度Bに基づき演算して、ビーム中心軸の位置であるビーム中心軸位置x、yを測定する。ビーム中心軸位置xはx方向の位置であり、ビーム中心軸位置yはy方向の位置である。線量分布演算装置10は、ビームエネルギー測定装置6により複数の時刻に、例えば所定の時間間隔Δtで測定された測定エネルギーE(t)と、線量測定装置7により複数の時刻に測定された測定電荷数Q(t)(測定ビーム量)と、ビーム偏向情報測定装置8により複数の時刻に測定された測定ビーム中心軸位置Px(t)、Py(t)に基づいて、線量分布を演算する。粒子ビーム20のエネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Pyは、粒子ビーム20の粒子ビーム情報である。測定エネルギーE(t)、測定ビーム量(測定電荷数Q(t))、測定ビーム中心軸位置Px(t)、Py(t)は、測定粒子ビーム情報である。
【0021】
線量分布演算装置10は、
図6のデータベース情報36に記載した5つの情報を記憶したデータベース11と、測定電荷数Q(t)を記憶する測定電荷記憶部12と、測定ビーム中心軸位置Px(t)、Py(t)を記憶する測定ビーム中心軸記憶部13と、測定エネルギーE(t)を記憶する測定エネルギー記憶部14と、合計線量演算部15と、計画線量比較部16を備える。合計線量演算部15、計画線量比較部16は、プロセッサ98がメモリ99に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。また、複数のプロセッサ98および複数のメモリ99が連携して上記機能を実行してもよい。線量分布演算装置10の詳細は後述する。
【0022】
まず、スキャニング照射にて腫瘍体積(腫瘍領域)に付与する合計線量について説明する。スキャニング照射においては腫瘍体積(腫瘍領域)内に複数のスポットを設け、各スポットに適切な量の粒子ビーム20を照射することで、例えば
図5のように、所望の合計線量分布25を形成する。スポット番号をj、ファントム21内の線量評価点番号をi、j番目のスポットに粒子を1個照射したときにi番目の線量評価点piに付与される線量をd
i,j、j番目のスポットに付与する粒子数をw
j、スポットの総数をnとすると、全スポットに照射が完了した場合におけるi番目の線量評価点piに付与される合計線量D
iは、式(1)のように表すことができる。
【0023】
【数1】
この各線量評価点piにおける合計線量D
iが目標とする線量分布(目標線量分布)D
objiになるべく近くなるように、最適なスポットに付与する粒子数w
jを照射前に算出する工程が必要である。この工程を治療計画と呼ぶ。適宜、粒子数w
jをスポット粒子数w
jと呼ぶ。
【0024】
図5は、治療計画で行うスポットの数及び位置とスポット粒子数w
jを決定した一例である。
図5の縦軸は線量であり、横軸はz方向の位置である。
図5では、簡単のためスポット配置も線量分布もz軸(ビーム進行方向)方向の1次元の例を示した。
図5には、4個のスポットsp1、sp2、sp3、sp4と、13個の線量評価点p1、p2、p3、p4、p5、p6、p7、p8、p9、p10、p11、p12、p13を示した。線量分布26はスポットsp1に照射したスポット粒子数による線量分布である。同様に、線量分布27、28、29は、それぞれスポットsp2、sp3、sp4に照射したスポット粒子数による線量分布である。合計線量分布25は、線量分布26、27、28、29を足し合わせた線量分布である。腫瘍内における線量評価点は、8個あり、線量評価点p3からp10である。腫瘍外における線量評価点は、5個あり、線量評価点p1、p2、p11からp13である。
【0025】
図5に示すように、スポットsp1からsp4へ与える粒子数w
jを適切に決めることにより、合計線量分布25を、腫瘍内では高く、腫瘍外では低くすることができている。
図5ではスポット数が4個、線量評価点が13個であったが、一般的には腫瘍サイズに合わせてもっと多くのスポットと線量評価点が短い間隔で配置される。また
図5では簡単のためスポット配置も線量分布もz軸方向の1次元でしか表示していないが、実際には腫瘍形状に合わせてスポットはx軸方向及びy軸方向も含めた3次元に配置される。実際の腫瘍形状に合わせて、線量分布も3次元で計算される必要があるので、線量評価点も3次元に配置される。
【0026】
一般的に、ビーム進行方向(z方向)に垂直な方向であるx方向、y方向のスポット位置は、ビーム偏向角によって決まり、ビーム偏向角は走査装置3の形成する磁界強度に依存して決まる。また、ビーム進行方向であるz軸方向のスポット位置は、粒子ビーム20のビームエネルギーに依存して決まる。したがって、粒子線治療装置50は、粒子ビーム20のビームエネルギーと走査装置3の磁界強度を調整することで、スポット位置を調整している。
【0027】
式(1)では、スポットごとの線量分布を足し合わせることで、i番目の線量評価点piにおける合計線量分布を求めた。同一対象に対して粒子ビーム20の照射が終了した後の線量分布は、時間毎に足し合わせることでも可能であり、式(1)と同様に、式(2)のように計算することが可能である。
【数2】
【0028】
ここで、式(2)は全照射時間をm個の時間区間に分けた場合である。kは時間区間の番号である。i番目の線量評価点piにおいて、k番目の時間区間において照射された粒子数をw
k、k番目の時間区間において滞在していたビームの平均位置に1個の粒子ビームが照射された場合にi番目の線量評価点piに付与される線量(単位粒子線量)をd
i,kと定義している。時間間隔をじゅうぶん短くすれば、この式(2)は高い精度で線量分布を再現することが可能である。ここで、時間間隔は1スポットあたりの所要時間と同程度かそれよりも短いことが望ましく、例えば数十マイクロ秒から1ミリ秒程度が良いと考えられる。同一の時間区間における粒子数をw
kと単位粒子線量d
i,kとを積算したw
kd
i,kは時間区間線量である。
【0029】
ある時間区間において照射される粒子数wkは、例えば、電離箱による線量測定装置7で測定することができる。一般的に電離箱は、粒子ビーム20が通過したことで電気信号を発する機器であり、通過した粒子ビーム20の粒子個数と発せられる電離イオンの電荷数(単位電荷のカウント値)との間には比例関係がある。したがって、ある時間区間の開始時から終了時までに発せられた総電荷数をQk、総電荷数Qkと粒子ビーム20の粒子数wkとの比例係数をC(E)とすると、式(3)のようにして粒子数wkを求めることができる。総電荷数Qkはビーム量を表しているので、比例係
数C(E)はビーム量に対する粒子数wkの比と言うこともできる。なお、適宜、粒子数wkを照射粒子数wkと呼ぶ。
【0030】
【数3】
ここで、Eは粒子ビーム20における粒子のエネルギーである。一般的に比例係数にはエネルギー依存性があり、比例係数は粒子ビーム20における粒子のエネルギーEを含む表式となっている。
【0031】
比例係数C(E)は、治療を行う前に、前もって取得しておく必要がある。取得方法の一例としては、総電荷数Q
krと粒子数w
krとの比例係数が既知の参照用電離箱と、治療の時に実際に使用する治療用電離箱とを用意して、測定値の比較により比例係数C(E)を求めることができる。具体的には、参照用電離箱を治療用電離箱の下流側に配置し、一定のエネルギーEの粒子ビーム20を適切な量照射することにより、治療用電離箱の出力による粒子数w
kと、参照用電離箱の出力から求められる粒子数w
krとの比から、そのエネルギーに対する比例係数C(E)を求めることができる。エネルギーEを変えて同様の測定を実施することで、任意のエネルギーEに対する比例係数C(E)を知ることが可能となる。
【0032】
治療で使用する可能性のある全てのエネルギーEに対して、参照用電離箱及び治療用電離箱による測定を行い、C(E)を取得してデータベースとして記憶することが理想である。しかし、測定の手間を省くため、いくつかのエネルギーEに対してのみ測定を行い、その間を線形に補間して比例係数C(E)の関数を得るという方法も考えられる。この場合、補
間を用いることによる近似精度を十分に検証し、把握しておく必要がある。
【0033】
粒子ビーム20における粒子のエネルギーEは、例えば、薄膜シンチレーション検出器などのビームエネルギー測定装置6を用いることにより測定することができる。ビームエネルギー測定装置6の他の例として、粒子ビーム発生装置1から患者またはファントム21にビームが輸送されるまでの経路において曲線部分があるような場合には、ビーム経路の曲線部分に配置された偏向電磁石の磁界を用いる方法が考えられる。具体的には、ビーム経路の曲線部分に配置された偏向電磁石のつくる磁界強度とビーム経路の曲率半径との関係からビームエネルギーを求めることが可能である。
【0034】
式(2)における線量評価点が3次元の場合は、線量d
i,kは次のように求めることができる。3次元線量分布d(x,y,z)は、z方向の線量分布とx方向の線量分布及びy方向の線量分布との積で近似することができることが知られている。Inaniwaらの論文(非特許文献1)では、1本のビームに対する3次元線量分布d(x,y,z)を、式(4)のように、z方向とx方向及びy方向のそれぞれの分布に因数分解する方法が紹介されている。
【数4】
【0035】
ここで、x
0およびy
0は、深さzにおける1本のビームの中心軸の座標である。この式(4)から分かるように、z方向の線量分布はx方向の座標及びy方向の座標に依存せずz方向の座標とビームエネルギーE(ビームのエネルギーE)のみで決まるが、x方向及びy方向の線量分布はx方向の座標及びy方向の座標とビームエネルギーEだけでなく、z方向の座標とビーム中心軸の位置(x
0,y
0)によっても変わる。前述したように、同一対象に対して粒子ビーム20の照射が終了した後の線量分布は、スポットごとの線量分布を足し合わせることと同様に、時間毎に足し合わせることでも可能なので、線量評価点が3次元の場合における線量d
i,kは、z方向とx方向及びy方向のそれぞれの線量に因数分解して、式(5)のように表すことができる。
【数5】
【0036】
なお、d
z(z,E)は、任意のz座標に対してはz方向の線量分布であるが、一意のz座標に対してはそのz座標の線量の値であるので、z座標が一意か任意かによって線量分布や線量を使い分ける。d
x(x,z,E)、d
y(y,z,E)についても同様であり、任意の(x,y)座標に対してはそれぞれx方向の線量分布、y方向の線量分布であるが、一意の(x,y)座標に対してはその(x,y)座標の線量の値であるので、(x,y)座標が一意や任意かによって線量分布や線量を使い分ける。i番目の線量評価点piはその座標(x,y,z)が一意に決まっているので、d
z(z,E)、d
x(x,z,E)、d
y(y,z,E)は、それぞれz方向の線量、x方向の線量、y方向の線量である。任意のi番目の線量評価点piを考えた場合は、各方向の線量分布と表現している。また、同様にD
i、d
i,kについても、線量評価点が一意か任意かによって線量分布や線量を使い分ける。一意の線量評価点に対して使う場合は、合計線量D
i、線量d
i,kと表現し、任意の線量評価点に対して使う場合は、合計線量分布D
i、線量分布d
i,kと表現する。
【0037】
式(4)におけるビーム中心軸の位置は、式(6)で表されるローレンツ力に基づく解析的計算で求めることもできる。
【数6】
ここで、式(6)におけるq、v、Bは、それぞれ粒子の電荷、粒子の速度、粒子に与える磁界の磁束密度である。なお、式(6)及びローレンツ力の説明のみ、Bを磁束密度として説明する。
【0038】
ビーム中心軸の位置は、事前に直接測定してデータベース化しておいても良い。すなわち、走査装置3よりも下流側に位置モニタを置いて、ある磁界強度Bの磁界を発生させて、あるビームエネルギーEにおいて粒子ビーム20を照射し、ビーム中心軸が通過した位置を測定すれば、走査装置3と位置モニタとの配置距離から粒子ビーム20の偏向角θが分かる。ビームの偏向角から、任意の位置z(z座標)におけるビーム中心軸を基準にしたx座標及びy座標を算出することが可能となる。このビームの偏向角θの測定も理想的には、治療で使用する可能性のある全てのビームエネルギーE及び磁界強度Bに対して事前に行っておくことが望まれるが、手間を省くため幾つかのデータを取得した後に線形補間を用いても良い。特に、磁界強度Bに関しては、ローレンツ力の定義から、磁界強度Bと偏向角θとの間に線形関係があることが期待されるため、ある程度測定を省いて補間しても精度を落とさないことが可能であると期待できる。なお、x方向の偏向角θをθ
xと表記し、y方向の偏向角θをθ
yと表記する。また、偏向角θは、磁界強度B、位置z(z座標)に依存するので、適宜、偏向角θ
xをθ
x(B,E)と表記し、偏向角θ
yをθ
y(B,E)と表記する。
【0039】
式(4)及び式(5)のz方向の線量分布d
z(z,E)に関しては、Braggの式として知られる理論による計算も可能ではあるが、事前に水ファントム(ファントム21)と線量計を用いて実際に測定し、データベース化しておくのが最も簡便であると考える。事前測定する場合は、水ファントム中に水を入れ線量計を配置し、粒子ビーム20を照射しながら、線量計の位置をz方向に動かしていくことで、分布を得ることができる。この測定を実施する前に比例係数C(E)を取得するための測定を実施しておけば、そのときの治療用電離箱を上流に配置しておくことで、照射された粒子数wと水ファントム中の線量dとを得ることができる。そして、その比を求めることで粒子1個に対する線量分布d
z(z,E)を知ることができる。
【0040】
式(4)の線量分布d
x(x−x
0,z,E)や式(5)の線量分布d
x(x,z,E)に関しては、MoliereやFermi−Eyges、Highlandらによる多重散乱理論による計算が可能である。また、やはり事前に水ファントム(ファントム21)と線量計を用いて実際に測定し、データベース化しておいても良い。この測定は線量分布d
z(z,E)の測定に比べ、線量分布がxとzの両方に依存して変化するため全てx、zに対して測定を実施する必要があるが、それは大変である。そこで、Geant4等で知られるモンテカルロ・シミュレーション・ツール(非特許文献2)を用いれば、水ファントム(ファントム21)中の任意の位置における、粒子1個あたりの線量を計算できる。具体的には、モンテカルロ・シミュレーションを実行する場合には、ファントム21等の物の形状、粒子ビーム20のエネルギーや電離の発生位置や発生方向、走査装置3の電磁石(x方向走査電磁石4、y方向走査電磁石5)により偏向されるビーム中心軸位置等の情報を入力することで、水ファントム(ファントム21)中の任意の位置における、粒子1個あたりの線量を計算できる。したがって、モンテカルロ・シミュレーションを実行すれば、実測するよりも効率的にx方向の線量分布d
x(x−x
0,z,E)や線量分布d
x(x,z,E)を得ることができる。y方向の線量分布、すなわち式(4)の線量分布d
y(y−y
0,z,E)や式(5)の線量分布d
y(y,z,E)についても同様である。
【0041】
モンテカルロ・シミュレーション・ツールを用いた場合、1次元方向の線量分布だけでなく3次元線量分布d(x,y,z)を直接求めることも可能であり、これを事前に計算してd(x,y,z)の情報をデータベースとして所持しておく方法も可能ではある。しかし、3次元に広がる線量分布を記憶装置に記憶しておくには多くのメモリー容量が必要となるため、記憶装置の性能と必要なデータ精度とを考慮して、どのような形でデータ保持するのが良いか検討する必要がある。
【0042】
図6及び
図7を用いて、本発明の粒子線治療の流れを説明する。
図6では、粒子線治療に先だって準備するデータベース情報36と、粒子線治療における分割された回毎のビーム照射中に測定する測定値情報37と、ビーム照射後に演算する演算結果情報38を、時系列順に上から下へ記載した。
図7では、複数回に分割された粒子線治療のフローチャートを示した。まず、照射を始めるよりも前(施設の立ち上げ時など)に、事前準備として、ここまでで説明した方法により必要なデータを取得し、データベース情報36に記載した5つの情報を記憶したデータベース11を作成しておく作業(データベース作成工程)が必要となる。1つ目のデータベースは、線量測定装置7の出力電荷数である測定電荷数Q(t)から粒子数wへ換算する係数、すなわち比例係数C(E)である。2つ目のデータベースは、z方向の線量分布d
z(z,E)である。3つ目のデータベースは、x方向の線量分布d
x(x,z,E)である。4つ目のデータベースは、y方向の線量分布d
y(y,z,E)である。5つ目のデータベースは、走査装置3の電磁石(x方向走査電磁石4、y方向走査電磁石5)の形成する磁界強度Bと粒子ビーム20の偏向角θ
x(B,E)、θ
y(B,E)の換算テーブルである。
【0043】
次に、実際に患者に治療を施す際には、まずCT撮像を行い、腫瘍の位置や形状を特定した後に、治療計画装置22による治療計画の立案を実施する(治療計画作成工程)。治療計画に基づいて粒子ビーム20が患者に照射される(治療照射工程)という流れになる。なお、治療計画の立案から患者への照射までの期間のどこかで、患者QA作業(患者QA工程)は必要になる。患者QAは一般的には患者へ照射の前日に行われることが多いと考えられるが、必ずしもそうである必要はない。
【0044】
粒子線治療のビーム照射中には、あらかじめ定められた時間区間Δtごとに、測定値情報37に記載した3つの測定値である測定電荷数Q、測定ビーム中心軸位置Px、Py、測定エネルギーEが測定される(治療データ測定工程)。測定電荷数Q(測定ビーム量)は、時間区間Δtごとに測定された、線量測定装置7の電荷数である測定電荷数Q(t)(測定ビーム量の情報)の全データである。測定ビーム中心軸位置Px、Pyは、時間区間Δtごとに測定された、走査装置3のx方向走査電磁石4及びy方向走査電磁石5の磁界である測定ビーム中心軸位置Px(t)、Py(t)の全データである。測定エネルギーEは、時間区間Δtごとに測定された、粒子ビーム20のビームエネルギーである測定エネルギーE(t)の全データである。
【0045】
測定電荷数Q、測定ビーム中心軸位置Px、Py、測定エネルギーEは、それぞれ測定電荷記憶部12、測定ビーム中心軸記憶部13、測定エネルギー記憶部14に記憶される。測定電荷数Qは測定ビーム量とも言うので、測定電荷記憶部は測定ビーム量記憶部とも言うこともできる。測定電荷数Q、測定ビーム中心軸位置Px、Py、測定エネルギーEは、
図4に記載した測定値記憶情報35のテータ構造のようにまとめることができる。第1の測定区間を代表する時刻t1に、測定電荷数Q(t1)、測定エネルギーE(t1)、測定ビーム中心軸位置Px(t1)、Py(t1)が測定される。時間区間Δtが経過した時刻t2に、測定電荷数Q(t2)、測定エネルギーE(t2)、測定ビーム中心軸位置Px(t2)、Py(t2)が測定される。時間区間Δtが経過する度に、同様に測定電荷数Q(t)、測定エネルギーE(t)、測定ビーム中心軸位置Px(t)、Py(t)が測定される。最後の測定区間を代表する時刻tnに、測定電荷数Q(tn)、測定エネルギーE(tn)、測定ビーム中心軸位置Px(tn)、Py(tn)が測定される。なお、測定電荷記憶部12、測定ビーム中心軸記憶部13、測定エネルギー記憶部14は、線量分布演算装置10の内部の記憶領域でなく、外の記憶領域であってもよい。
【0046】
照射後に、測定電荷記憶部12、測定ビーム中心軸記憶部13、測定エネルギー記憶部14に記憶された各情報(測定電荷数Q、測定ビーム中心軸位置Px、Py、測定エネルギーE)と、データベース11の情報をもとに、線量分布演算装置10は患者の体内の合計線量分布D
iを算出する(合計線量分布演算工程)。合計線量分布演算工程にて、演算結果情報38に記載した3つの照射粒子数w
k、線量分布d
i,k、合計線量分布D
iを演算する。合計線量演算部15は、式(3)により測定区間毎に比例係数C(E)と、総電荷数Q
kに相当する測定電荷数Q(t)から、照射粒子数w
kを演算する。また、合計線量演算部15は測定ビーム中心軸位置Px、Py、測定エネルギーEにより選択されたz方向線量分布d
z(z,E)、x方向線量分布d
x(x,z,E)、y方向線量分布d
y(y,z,E)に基づいて、式(5)により、線量分布d
i,kを演算する。
【0047】
また、線量分布演算装置10は、計画線量比較部16にて、算出された合計線量分布D
iと、1日あたりの目標線量分布D
objiとを比較し、その線量分布差分ΔD
iを式(7)のように算出する(線量分布差分演算工程)。
【数7】
【0048】
線量分布差分演算工程にて、線量分布演算装置10は演算結果情報38に記載した線量分布差分ΔD
iを算出する。そして、線量分布演算装置10は線量分布差分ΔD
iを治療計画装置22に送る。治療計画装置22は、線量分布差分ΔD
iを補正するように翌日の治療計画を立案する(治療計画補正工程)。すなわち、式(8)を満たすような、補正スポット粒子数w
cjを算出する。
【数8】
【0049】
翌日の治療照射において粒子線治療装置50は、補正スポット粒子数w
cjに基づき粒子ビーム20の照射を行う。このようにすることで、
図8に示すように、粒子線治療装置50は、2日間合計での照射線量分布(合計線量分布43)と2日ぶんの目標線量分布とを等しくすることが可能となる。
図8の縦軸は線量であり、横軸はx方向の位置である。線量分布41は1日目の治療でビーム照射によるx方向の線量分布であり、線量分布42は2日目の治療でビーム照射によるx方向の線量分布である。合計線量分布43は、2日間合計でのx方向の線量分布である。
【0050】
上述した実施の形態1の粒子線治療の流れを、
図7を用いて説明する。ステップS001にて、治療計画装置22は、1日あたりの目標線量分布D
objiをもとにスポット毎の総電荷数Q
j(粒子数w
j)を算出する(治療計画作成工程)。ステップS002にて、粒子線治療装置50は、治療計画作成工程の治療計画で定めたスポット毎の総電荷数Q
j(粒子数w
j)に従って粒子ビーム20を患者に照射する(初回照射工程)。ステップS003にて、線量分布演算装置10は、合計線量分布D
iと、線量分布差分ΔD
iを算出する(線量分布演算工程)。線量分布演算工程は、上述した合計線量分布演算工程と線量分布差分演算工程を実行する工程である。
【0051】
ステップS004にて、治療計画装置22は、線量分布差分ΔD
iをもとにスポット毎の補正総電荷数Q
cj(補正スポット粒子数w
cj)を算出する(治療計画補正工程)。ステップS005にて、粒子線治療装置50は、治療計画作成工程で定めたスポットに対して補正総電荷数Q
cj(補正スポット粒子数w
cj)に従って粒子ビーム20を患者に照射する(継続回照射工程)。ステップS006にて、治療計画で定めた治療回数に達するまでステップS003からステップS005を繰り返す。
【0052】
合計線量演算部15の演算動作を詳しく説明する。合計線量演算部15は、測定エネルギーEに該当する比例係数C(E)をデータベース11から読み出し、測定電荷数Q(t)と比例係数C(E)とを積算して照射粒子数w
kを演算する。また、合計線量演算部15における線量分布d
i,kの演算を、i番目の線量評価点piを例にして説明する。合計線量演算部15は、i番目の線量評価点piのz座標であり、かつ測定エネルギーEに該当するz方向の線量、すなわち選択z方向線量d
zを、データベース11のz方向線量分布d
z(z,E)から導出する。
【0053】
合計線量演算部15は、測定ビーム中心軸位置Px、Py及び測定エネルギーEに該当するx方向の偏向角(選択x方向偏向角)θ
x、y方向の偏向角(選択y方向偏向角)θ
yを、データベース11のビーム偏向角θ
x(B,E)、θ
y(B,E)から導出する。合計線量演算部15は、x方向の偏向角θ
xからx座標を演算し、このx座標、線量評価点のz座標及び測定エネルギーEに該当するx方向の線量(選択x方向線量)d
xを、データベース11のx方向線量分布d
x(x,z,E)から導出する。合計線量演算部15は、同様に、y方向の偏向角θ
yからy座標を演算し、このy座標、線量評価点のz座標及び測定エネルギーEに該当するy方向の線量(選択y方向線量)d
yを、データベース11のy方向線量分布d
y(y,z,E)から導出する。
【0054】
合計線量演算部15は、導出したz方向の線量d
z、x方向の線量d
x、y方向の線量d
yに基づいて、式(5)により3つの線量d
z、d
x、d
yを積算することで、線量d
i,kを演算する。合計線量演算部15は、線量評価点、時間区間ごとに線量d
i,kを演算して、線量分布d
i,kを求める。合計線量演算部15は、既に演算した照射粒子数w
k及び線量分布d
i,kに基づいて、式(2)により合計線量分布D
iを算出する。
【0055】
実施の形態1の線量分布演算装置10は、測定粒子ビーム情報(測定エネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Py)に基づき、患者に付与される照射線量分布(合計線量分布D
i)を算出し、照射線量分布(合計線量分布D
i)と1日あたりの目標線量分布D
objiとを比較し、照射線量分布(合計線量分布D
i)と目標線量分布D
objiとの差分である線量分布差分ΔD
iを算出するので、高い位置分解能を有する線量検出器を必要とせず、かつ静的および動的な不確定性の両方が線量分布に与える影響を正しく定量的に見積もることができる。実施の形態1の粒子線治療装置50は、2回目以降の治療照射の際に、治療計画装置22が線量分布差分ΔD
iを基づいて算出した補正総電荷数Q
cj(補正スポット粒子数w
cj)に従って粒子ビーム20を患者に照射するので、高い位置分解能を有する線量検出器を必要とせず、かつ静的および動的な不確定性の両方を補償することができる。
【0056】
実施の形態1の線量分布演算装置10は、粒子線治療装置50が走査装置3により粒子ビーム20を照射対象において走査して粒子線治療を行う際に、粒子線治療装置50が照射対象に付与する照射線量分布(合計線量分布D
i)及び照射線量分布(合計線量分布D
i)と目標線量分布D
objiとの差分である線量分布差分ΔD
iを演算する線量分布演算装置10であって、測定装置(ビームエネルギー測定装置6、線量測定装置7、ビーム偏向情報測定装置8)によって測定された粒子ビーム20の粒子ビーム情報である測定粒子ビーム情報を記憶するビーム情報記憶部(測定エネルギー記憶部14、測定ビーム量記憶部(測定電荷記憶部12)、測定ビーム中心軸記憶部13)と、測定粒子ビーム情報(測定エネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Py)に基づいて、照射線量分布を演算する合計線量演算部15と、照射線量分布(合計線量分布D
i)と目標線量分布D
objiとの差分である線量分布差分ΔD
iを演算する計画線量比較部16を備えたことを特徴とする。実施の形態1の線量分布演算装置10は、この特徴により、測定粒子ビーム情報に基づいて、照射線量分布(合計線量分布D
i)及び線量分布差分ΔD
iを演算するので、高い位置分解能を有する線量検出器を必要とせず、静的および動的な不確定性の両方が線量分布に与える影響を正しく定量的に見積もることができる。
【0057】
また、実施の形態1の線量分布演算装置10は、粒子ビーム情報が、粒子ビーム20におけるビーム量、エネルギー、ビーム中心軸位置を含み、ビーム情報記憶部が、粒子ビーム20のエネルギーを、複数の時刻において測定した測定エネルギーE(t)を記憶する測定エネルギー記憶部14と、粒子ビーム20のビーム中心軸位置を、複数の時刻において測定した測定ビーム中心軸位置Px(t)、Py(t)を記憶する測定ビーム中心軸記憶部13と、粒子ビーム20のビーム量を、複数の時刻において測定した測定ビーム量(測定電荷数Q(t))を記憶する測定ビーム量記憶部(測定電荷記憶部12)と、を含んでいる。実施の形態1の線量分布演算装置10の合計線量演算部15は、粒子ビーム情報が測定された時間区間の同一区間における測定エネルギーE(t)及び測定ビーム量(測定電荷数Q(t))に基づいて求めた照射粒子数w
kと、時間区間の同一区間における測定エネルギーE(t)及び測定ビーム中心軸位置Px(t)、Py(t)に基づいて求めた、粒子ビーム20における1個の粒子によって付与される線量である単位粒子線量(線量d
i,k)と、を積算した時間区間線量を、全ての時間区間において加算することにより、照射対象の演算対象点(線量評価点pi)における線量を演算することを特徴とする。実施の形態1の線量分布演算装置10の計画線量比較部16は、照射線量分布(合計線量分布D
i)と目標線量分布D
objiとの差分である線量分布差分ΔD
iを演算することを特徴とする。実施の形態1の線量分布演算装置10は、これらの特徴により、合計線量演算部15が時間区間毎における、測定エネルギーE(t)、測定ビーム中心軸位置Px(t)、Py(t)、及び測定ビーム量(測定電荷数Q(t))に基づいて、照射線量分布(合計線量分布D
i)及び線量分布差分ΔD
iを演算するので、高い位置分解能を有する線量検出器を必要とせず、静的および動的な不確定性の両方が線量分布に与える影響を正しく定量的に見積もることができる。
【0058】
実施の形態1の粒子線治療装置50は、粒子線治療に必要な線量を複数回に分割して照射対象に付与する粒子線治療装置であって、粒子線治療に必要なエネルギーの粒子ビーム20を発生させる粒子ビーム発生装置1と、粒子ビーム20をビーム進行方向に対して垂直な2方向に偏向させ、照射対象の配置位置において粒子ビーム20を走査する走査装置3と、粒子ビーム20を走査装置3に輸送するビーム輸送装置2と、粒子ビーム発生装置1が発生させた粒子ビーム20の粒子ビーム情報を測定する測定装置(ビームエネルギー測定装置6、ビーム偏向情報測定装置8、ビーム量測定装置(線量測定装置7))と、粒子ビーム20によって照射対象に付与する照射線量分布(合計線量分布D
i)及び、照射線量分布(合計線量分布D
i)と目標線量分布D
objiとの差分である線量分布差分ΔD
iを演算する線量分布演算装置10と、備え、2回目以降の治療照射において、治療計画装置22により演算された、線量分布差分ΔD
iを補正する補正ビーム量(補正総電荷数Q
cj)を含む制御データに基づいて制御されることを特徴とする。実施の形態1の粒子線治療装置50における線量分布演算装置10は、測定装置(ビームエネルギー測定装置6、線量測定装置7、ビーム偏向情報測定装置8)により測定された測定粒子ビーム情報を記憶するビーム情報記憶部(測定エネルギー記憶部14、測定ビーム量記憶部(測定電荷記憶部12)、測定ビーム中心軸記憶部13)と、測定粒子ビーム情報(測定エネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Py)に基づいて、照射線量分布(合計線量分布D
i)を演算する合計線量演算部15と、線量分布差分ΔD
iを算出する計画線量比較部16を備えたことを特徴とする。実施の形態1の粒子線治療装置50は、これらの特徴により、測定粒子ビーム情報(測定エネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Py)に基づいて照射線量分布(合計線量分布D
i)及び線量分布差分ΔD
iを演算し、2回目以降の治療照射において、治療計画装置22により演算された、線量分布差分ΔD
iを補正する補正ビーム量(補正総電荷数Q
cj)を含む制御データに基づいて制御されるので、高い位置分解能を有する線量検出器を必要とせず、静的および動的な不確定性の両方を補償することができる。
【0059】
実施の形態1の治療計画補正方法は、粒子線治療に必要な線量を複数回に分割して粒子線治療装置50により照射対象に付与する粒子線治療計画を補正する治療計画補正方法であって、粒子線治療装置50が発生させた粒子ビーム20の粒子ビーム情報(エネルギー、ビーム量、ビーム中心軸位置)を、複数の時刻において測定して、測定粒子ビーム情報(測定エネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Py)を収集する治療データ測定工程と、粒子ビーム情報が測定された時間区間毎における測定粒子ビーム情報(測定エネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Py))に基づいて、粒子ビーム20によって照射対象に付与する照射線量分布(合計線量分布D
i)を演算する合計線量分布演算工程と、照射線量分布(合計線量分布D
i)と目標線量分布D
objiとの差分である線量分布差分ΔD
iを演算する線量分布差分演算工程と、線量分布差分ΔD
iを補正する補正ビーム量(補正総電荷数Q
cj)を演算する治療計画補正工程と、を含むことを特徴とする。実施の形態1の治療計画補正方法は、測定粒子ビーム情報(測定エネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Py)に基づいて照射線量分布(合計線量分布D
i)及び線量分布差分ΔD
iを演算し、線量分布差分ΔD
iを粒子線治療装置50に送るので、2回目以降の治療照射において、治療計画装置22により演算された、線量分布差分ΔD
iを補正する補正ビーム量(補正総電荷数Q
cj)を含む制御データに基づいて粒子線治療装置50が制御されることにより、高い位置分解能を有する線量検出器を必要とせず、静的および動的な不確定性の両方を補償することができる。
【0060】
なお、本発明は、測定装置により測定する測定粒子ビーム情報として測定エネルギーE、測定ビーム量(測定電荷数Q)、測定ビーム中心軸位置Px、Pyの3つを同時に用いる例を説明したが、1つだけでもよい。前述したように、特許文献1の線量分布を計算する方法では、2次元線量検出の精度ならびに位置分解能も高い2次元線量検出器が必要となる。これに対して、本発明では、測定ビーム量(測定電荷数Q)を測定粒子ビーム情報とすれば、高い位置分解能を有する線量検出器を必要とせず、かつ静的および動的な不確定性の両方を補償することができる。また、本発明は、その発明の範囲内において、各構成を組み合わせたり、各構成を適宜、変形、省略することが可能である。