特許第6444536号(P6444536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6444536圧縮機劣化診断装置および圧縮機劣化診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444536
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】圧縮機劣化診断装置および圧縮機劣化診断方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20181217BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F25B49/02 A
   F25B49/02 510C
   F25B49/02 510F
   F04B49/10 331G
   F04B49/10 331N
   F04B49/10 331L
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-554692(P2017-554692)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2015084380
(87)【国際公開番号】WO2017098577
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴玄
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 信
(72)【発明者】
【氏名】豊島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 一宏
(72)【発明者】
【氏名】小堀 真吾
(72)【発明者】
【氏名】荒井 洋介
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−212594(JP,A)
【文献】 特開2015−148394(JP,A)
【文献】 特開2014−214970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F04B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を含む冷媒回路と、
前記冷媒回路に関する複数の運転状態量を検出する運転状態量検出器と、
前記複数の運転状態量の遷移状態を規定し、前記冷媒回路が定常状態であることを判定するために用いられる第1の安定判定条件と、劣化判定用の初期値とをあらかじめ記憶する記憶部と、
前記運転状態量検出器で検出された前記複数の運転状態量と、前記記憶部に記憶された前記第1の安定判定条件および前記初期値に基づいて、前記圧縮機の劣化状態を判定するための基準となる判定基準値と、前記圧縮機の現状の劣化状態を示す判定指標とを生成する演算器と、
前記演算器で生成された前記判定基準値と前記判定指標との比較により、前記圧縮機の劣化判定を行う判定器と
を備えた圧縮機劣化診断装置であって、
前記演算器は、
前記冷媒回路の初期運転期間において、前記運転状態量検出器により検出された前記複数の運転状態量の遷移状態が前記第1の安定判定条件を満たさない場合には、前記遷移状態に基づいて前記第1の安定判定条件を満たさない運転状態量を不安定運転状態量として特定し、前記不安定運転状態量の遷移状態に基づいて前記第1の安定判定条件を変更することで第2の安定判定条件を設定し、前記運転状態量検出器により検出された前記複数の運転状態量の遷移状態が前記第2の安定判定条件を満たす場合には、前記第2の安定判定条件を満たす前記遷移状態に基づいて前記圧縮機の設置環境に応じた補正値を算出し、前記補正値により前記初期値を補正することで前記判定基準値を生成する
圧縮機劣化診断装置。
【請求項2】
前記演算器は、前記初期運転期間において、前記運転状態量検出器により検出された前記複数の運転状態量の遷移状態が前記第1の安定判定条件を満たさない場合に、前記補正値および前記判定基準値を算出した後、前記第2の安定判定条件を満たす前記遷移状態に含まれる前記不安定運転状態量の平均値に基づいて前記第2の安定判定条件を変更することで第3の安定判定条件を設定し、前記判定基準値および前記第3の安定判定条件を生成後に、前記第3の安定判定条件を満たす遷移状態のデータ群を取得する度に、前記データ群に基づいて前記判定指標を生成する
請求項1に記載の圧縮機劣化診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の圧縮機劣化診断装置で実行される圧縮機劣化診断方法であって
前記演算器において、
前記冷媒回路の初期運転期間において、前記運転状態量検出器により検出された前記複数の運転状態量の遷移状態が前記第1の安定判定条件を満たさない場合には、前記遷移状態に基づいて前記第1の安定判定条件を満たさない運転状態量を不安定運転状態量として特定する第1ステップと、
特定した前記不安定運転状態量の遷移状態に基づいて前記第1の安定判定条件を変更することで第2の安定判定条件を設定する第2ステップと、
前記運転状態量検出器により検出された前記複数の運転状態量の遷移状態が前記第2の安定判定条件を満たす場合には、前記第2の安定判定条件を満たす前記遷移状態に基づいて前記圧縮機の設置環境に応じた補正値を算出し、前記補正値により前記初期値を補正することで前記判定基準値を生成する第3ステップと
を有する圧縮機劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を循環させる冷媒回路を有する空気調和装置に関し、特に、空気調和装置で使用される圧縮機の効率低下検知技術に着目した圧縮機劣化診断装置および圧縮機劣化診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを行う空気調和装置において、装置を据え付けてから稼働期間が長期間経過すると、圧縮機自体が劣化する。具体的には、圧縮機構部の摩耗により、圧縮機内部での高圧側から低圧側への冷媒漏れ等が生じることで、圧縮効率が低下し、冷凍サイクルのCOP(Coefficient Of Performance:成績係数)が低下する。
【0003】
従来は、このように圧縮機が劣化しても、それを直接知る方法はなく、明らかに異常とわかる事態が生じるまで、あるいは圧縮機が完全に故障するまで、空気調和装置が更新されることなく、放置されているケースが多かった。
【0004】
これに対して、冷媒回路を有する冷凍サイクル装置において、冷媒回路における圧縮機の劣化検知を行うための従来技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
特許文献1は、所定の条件を満たした安定運転を強制的に実行する方法(アクティブ運転)にて、所定動作を行わせることで、圧縮機効率低下を検知する技術である。
【0006】
また、特許文献2は、劣化診断に必要な補正値をあらかじめ設定して、一定期間後に効率低下を検知する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−147905号公報
【特許文献2】特開2003−214735号公報
【特許文献3】特開2014−231975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1は、圧縮機効率低下を検知するために、アクティブ運転を実行する必要がある。しかしながら、冷媒充填の過不足によっては、アクティブ運転が成立しない場合がある。
【0009】
また、特許文献2は、圧縮機効率低下を検知するために、補正値を設定する必要がある。また、特許文献2は、補正値があらかじめ設定されていない場合には、安定時における運転状態量の計測結果から補正値を算出する技術も開示している。しかしながら、機械任せの成行き運転で圧縮機効率低下診断を行うパッシブ方式の場合には、据付け後の運転開始から一定期間経過しても、診断に必要な補正値が得られない可能性がある。
【0010】
具体的には、空気調和器の設置状況によっては、周期的に発停を繰り返し、安定運転が継続しない場合がある。また、冷媒充填量によっては、高圧保護のために周期的にHIC−LEVが開閉する場合がある。従って、これらの場合には、据付け後の運転開始から一定期間経過しても、診断に必要な補正値を算出することができず、圧縮機効率判定が行えない問題がある。
【0011】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、安定運転が継続せず、補正値を算出するための判定条件が成立しない場合にも、診断に必要な補正値を高精度に得ることができ、確実に圧縮機効率低下を検知することのできる圧縮機劣化診断装置および圧縮機劣化診断方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る圧縮機劣化診断装置は、圧縮機を含む冷媒回路と、冷媒回路に関する複数の運転状態量を検出する運転状態量検出器と、複数の運転状態量の遷移状態を規定し、冷媒回路が定常状態であることを判定するために用いられる第1の安定判定条件と、劣化判定用の初期値とをあらかじめ記憶する記憶部と、運転状態量検出器で検出された複数の運転状態量と、記憶部に記憶された第1の安定判定条件および初期値に基づいて、圧縮機の劣化状態を判定するための基準となる判定基準値と、圧縮機の現状の劣化状態を示す判定指標とを生成する演算器と、演算器で生成された判定基準値と判定指標との比較により、圧縮機の劣化判定を行う判定器とを備えた圧縮機劣化診断装置であって、演算器は、冷媒回路の初期運転期間において、運転状態量検出器により検出された複数の運転状態量の遷移状態が第1の安定判定条件を満たさない場合には、遷移状態に基づいて第1の安定判定条件を満たさない運転状態量を不安定運転状態量として特定し、不安定運転状態量の遷移状態に基づいて第1の安定判定条件を変更することで第2の安定判定条件を設定し、運転状態量検出器により検出された複数の運転状態量の遷移状態が第2の安定判定条件を満たす場合には、第2の安定判定条件を満たす遷移状態に基づいて圧縮機の設置環境に応じた補正値を算出し、補正値により初期値を補正することで判定基準値を生成するものである。
【0013】
また、本発明に係る圧縮機劣化診断方法は、本発明の圧縮機劣化診断装置で実行される圧縮機劣化診断方法であって、演算器において、冷媒回路の初期運転期間において、運転状態量検出器により検出された複数の運転状態量の遷移状態が第1の安定判定条件を満たさない場合には、遷移状態に基づいて第1の安定判定条件を満たさない運転状態量を不安定運転状態量として特定する第1ステップと、特定した不安定運転状態量の遷移状態に基づいて第1の安定判定条件を変更することで第2の安定判定条件を設定する第2ステップと、運転状態量検出器により検出された複数の運転状態量の遷移状態が第2の安定判定条件を満たす場合には、第2の安定判定条件を満たす遷移状態に基づいて圧縮機の設置環境に応じた補正値を算出し、補正値により初期値を補正することで判定基準値を生成する第3ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、補正値を算出できない場合には、運転状態量の計測結果に基づいて、補正値を算出するための判定条件を変更した上で新たな補正値を算出し、設置環境に応じた新たな補正値を圧縮機の劣化診断に適用できる構成を備えている。この結果、安定運転が継続せず、補正値を算出するための判定条件が成立しない場合にも、診断に必要な補正値を高精度に得ることができ、確実に圧縮機効率低下を検知することのできる圧縮機劣化診断装置および圧縮機劣化診断方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る空気調和装置の冷媒回路図である。
図2】本発明の実施の形態1における空気調和装置に含まれる圧縮機劣化診断装置の内部構成を示した機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における圧縮機劣化診断装置内の演算器で実行される一連処理を示したフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態1における圧縮機劣化診断装置内の演算器で実行される、補正値αの算出に関する一連処理を示したフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態1における圧縮機劣化診断装置内の演算器で実行される、劣化判定に関する一連処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の圧縮機劣化診断装置および圧縮機劣化診断方法の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置の冷媒回路図である。本実施の形態1における空気調和装置は、劣化診断対象である圧縮機を含む室外ユニット10と、室内ユニット20とを有し、冷媒配管により接続されている。
【0018】
室外ユニット10は、圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、アキュムレータ14、および絞り装置15を備えて構成されている。一方、室内ユニット20は、室内熱交換器21と、開度可変の減圧装置である絞り装置22とを備えて構成されている。
【0019】
なお、図示を省略しているが、室外熱交換器13には、空気を送風する室外送風装置が設けられ、室内熱交換器21にも、同様に、空気を送風する室内送風装置が設けられている。これらの送風装置は、空気を送風するファンであり、DCモータによって駆動される遠心ファンや多翼ファン等から構成されており、送風量を調整することが可能になっている。
【0020】
圧縮機11は、運転周波数を可変させることが可能な容積式圧縮機である。運転周波数を可変させる制御方法としては、例えば、インバータにより制御されるモータの駆動による方法が挙げられる。
【0021】
四方弁12は、冷媒の流れの方向を切り換える機能を有する弁である。より具体的には、冷房運転時には、図1の四方弁12の実線で示すように、四方弁12は、圧縮機11の吐出側と室外熱交換器13とを接続するとともに、圧縮機11の吸入側と室内ユニット20との接続配管を接続するように冷媒流路を切り換える。
【0022】
一方、暖房運転時には、図1の四方弁12の破線で示すように、四方弁12は、圧縮機11の吐出側と室内ユニット20との接続配管を接続するとともに、圧縮機11の吸入側と室外熱交換器13とを接続するように冷媒流路を切り換える。
【0023】
室外熱交換器13は、暖房運転時には蒸発器として機能し、冷房運転時には凝縮器(放熱器)として機能する。そして、室外熱交換器13は、例えば、空気や水等の熱媒体と冷媒との間で熱交換を行ない、その冷媒を蒸発ガス化または凝縮液化するものである。
【0024】
アキュムレータ14は、圧縮機11の吸入側に設けられ、過剰な冷媒を貯留するものである。
【0025】
室外絞り装置15は、室外熱交換器13と室内絞り装置22との間に設けられ、流量調整弁としての機能を有するとともに、全閉時には冷媒の流れを遮断可能な機能を有する。この室外絞り装置15は、開度が制御可能で、緻密な流量調整が可能なもので構成することが好ましく、たとえば、電子膨張弁等の流量制御手段を採用することができる。
【0026】
室外ユニット10の配管出口に設けられたバルブ16a、16bは、例えば、ボールバルブや開閉弁、操作弁などの開閉動作が可能な弁により構成されている。
【0027】
一方、室内ユニット20内の室内熱交換器21は、暖房運転時には凝縮器(放熱器)として機能し、冷房運転時には蒸発器として機能する。そして、室内熱交換器21は、例えば、空気や水等の熱媒体と冷媒との間で熱交換を行ない、その冷媒を凝縮液化または蒸発ガス化するものである。
【0028】
室内絞り装置22は、減圧弁や膨張弁としての機能を有し、冷媒を減圧して膨張させるものである。この室内絞り装置22は、開度が制御可能で、たとえば、電子式膨張弁による緻密な流量制御手段や、毛細管等の安価な冷媒流量調節手段等で構成することが好ましい。
【0029】
なお、本実施の形態1では、室内ユニット20が1台の場合の構成を例に説明するが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。室内ユニット20が2台以上の複数で構成されていてもよい。また、複数の室内ユニット20のそれぞれの容量が、大から小まで異なっても、全てが同一容量であっても、いずれであってもよい。
【0030】
また、本実施の形態1における空気調和装置の冷媒回路を循環する冷媒の種類は、特に限定はなく、任意の冷媒を用いることができる。例えば、二酸化炭素、炭化水素、ヘリウム等のような自然冷媒の他、R410Aはもちろん、R407C、R404A等の代替冷媒等の塩素を含まない冷媒を採用してもよい。
【0031】
また、本実施の形態1では、四方弁12を設けて暖房運転と冷房運転とを切り換え可能な冷媒回路を構成する場合を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、四方弁12を設けずに、冷房運転のみ、または暖房運転のみを行うようにしてもよい。
【0032】
続いて、センサ群について説明する。
室外ユニット10は、運転状態量検出器として、吐出圧力センサ(高圧圧力センサ)101、吸入圧力センサ(低圧圧力センサ)102、吐出温度センサ103、室外吸込空気温度センサ(外気温度センサ)104、室外機出口温度センサ105、HIC出口温度センサ106、およびHICバイパス出口温度センサ107を備えている。
【0033】
高圧圧力センサ101は、圧縮機11の吐出側に設置され、圧縮機11から吐出された冷媒の圧力を検出する。低圧圧力センサ102は、圧縮機11の吸入側に設置され、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力を検出する。吐出温度センサ103は、圧縮機11の吐出側に設置され、圧縮機11より吐出された冷媒の温度を検出する。
【0034】
そして、高圧圧力センサ101の検出値の圧力を飽和温度に換算することにより、冷凍サイクルの凝縮温度CTを求めることができる。また、低圧圧力センサ102の検出値の圧力を飽和温度に換算することにより、冷凍サイクルの蒸発温度ETを求めることができる。
【0035】
なお、高圧圧力センサ101および吐出温度センサ103の設置位置については、図1で示した位置に限定されるものではなく、圧縮機11の吐出側から四方弁12に至るまでの区間であれば、何処の場所に設けられていてもよい。
【0036】
また、低圧圧力センサ102の設置位置についても、図1で示した位置に限定されるものではなく、四方弁12から圧縮機11の吸入側に至るまでの区間であれば、何処の場所に設けられていてもよい。
【0037】
室外吸込空気温度センサ104は、室外熱交換器13に取り込まれる空気温度を検出し、室外熱交換器13が設置される室外ユニット10の周囲空気温度を検出する。
【0038】
室外機出口温度センサ105は、室外熱交換器13から流出する冷媒の温度を検出する。HIC出口温度センサ106は、HIC(Heat Inter Changer)の出口での冷媒の温度を検出する。さらに、HICバイパス出口温度センサ107は、HICのバイパス出口での冷媒の温度を検出する。
【0039】
一方、室内ユニット20は、運転状態量検出器として、室内機吸込み空気温度センサ201、室内機液配管温度センサ202、および室内機ガス配管温度センサ203を備えている。
【0040】
室内機吸込み空気温度センサ201は、室内熱交換器21に取り込まれる空気温度を検出し、室内ユニットの周囲空気温度を検出する。
【0041】
室内機液配管温度センサ202は、暖房運転時に室内熱交換器21から流出する冷媒の温度を検出する。また、室内機ガス配管温度センサ203は、冷房運転時に室内熱交換器21から流出する冷媒の温度を検出する。
【0042】
次に、本実施の形態1における空気調和装置に含まれる圧縮機劣化診断装置によって実行される圧縮機効率低下検知方法について説明する。図2は、本発明の実施の形態1における空気調和装置に含まれる圧縮機劣化診断装置30の内部構成を示した機能ブロック図である。本実施の形態1における圧縮機劣化診断装置30は、運転状態量生成器31、演算器32、記憶部33、および判定器34を備えて構成されている。
【0043】
運転状態量生成器31は、先の図1に示したセンサ101〜107、201〜203からなるセンサ群からの検出結果を読み取る。また、運転状態量生成器31は、圧縮機11を駆動制御する際に、図示していない駆動部から出力される回転数指令値を読み取ることで、圧縮機の回転数を取得する。
【0044】
そして、運転状態量生成器31は、読み取った種々のデータに基づいて、空気調和装置の冷媒回路が定常状態であるか否かを判定するために用いられるデータ、および劣化診断で用いられるデータを、運転状態量として生成する。
【0045】
演算器32は、運転状態量生成器31で生成された運転状態量に基づいて、補正値αの算出、劣化診断の判定指標δの算出を行うとともに、あらかじめ記憶部33に記憶された判定基準値を補正値αで更新し、判定基準値δmを設定する。そして、演算器32は、補正値α、判定指標δ、および判定基準値δmを記憶部33に記憶させる。
【0046】
ここで、補正値αは、空気調和装置が現場に据え付けられた直後の初期運転において収集される運転状態量に基づいて算出される値である。このような補正値を、設置環境に応じて算出し、圧縮機単体としてあらかじめ設定された判定基準値をこの補正値を用いて修正することで、現場での空気調和装置の実態に合った劣化判定用の判定基準値δmを設定することができる。
【0047】
また、判定指標δは、冷媒回路が定常状態での運転状態量の計測結果に基づいて算出される値である。そして、この判定指標δは、現状の圧縮機の劣化状態を定量的に評価するための値として用いることができる。
【0048】
判定器34は、記憶部33に記憶された判定指標δと、補正値αによって補正された判定基準値δmとを読み出す。そして、判定器34は、判定指標δと判定基準値δmとの比較により、圧縮機の劣化診断を行うことができる。
【0049】
なお、判定指標δと判定基準値δmとの比較による劣化診断手法は、例えば、特許文献3に開示された技術を用いることができる。そして、本願発明は、一定時間経過前に安定運転が継続せず、補正値を算出するための判定条件が成立しないことで補正値αが算出できない場合に、新たな判定条件を設定して、新たな補正値α’を算出することに技術的特徴を有している。そこで、演算器32により実行されるこの技術的特徴について、フローチャートを用いて詳細に説明する。
【0050】
図3は、本発明の実施の形態1における圧縮機劣化診断装置30内の演算器32で実行される一連処理を示したフローチャートである。また、図4は、本発明の実施の形態1における圧縮機劣化診断装置30内の演算器32で実行される、補正値αの算出に関する一連処理を示したフローチャートである。さらに、図5は、本発明の実施の形態1における圧縮機劣化診断装置30内の演算器32で実行される、劣化判定に関する一連処理を示したフローチャートである。
【0051】
まず始めに、図3のステップS301において、演算器32は、空気調和装置が現場に据え付けられた直後の初期運転期間であるか否かを、例えば、1ヶ月以上経過しているか否かで判断する。そして、1ヶ月以上経過していない場合には、ステップS302に進み、演算器32は、設置環境に応じた補正値αの算出処理を行う。
【0052】
このステップS302の処理の詳細を示したものが、図4のフローチャートである。ステップS3021において、演算器32は、初期運転期間において運転状態量生成器31によって生成される運転状態量を逐次取得する。
【0053】
次に、ステップS3022において、演算器32は、空気調和装置の運転状態が定常状態で安定していることを規定するための安定判定条件の要件を満たしているか否かを判定する。なお、以下では、安定判定条件のことを、単に、判定条件と称す。
【0054】
本実施の形態1では、運転状態量の遷移状態として規定される判定条件の一例として、判定条件Aを以下のように規定する場合について具体的に説明する。
<判定条件A:以下の要件a、b、c、が10分間継続すること>
要件a:圧縮機回転数が80%以上
要件b:HIC_SH>10[K]
要件c:室内機出口SH>5[K]
【0055】
ここで、要件aに相当する計測値は、駆動部から出力される回転数指令値に基づいて、運転状態量生成器31によって生成される。また、要件bに相当するHIC_SH(スーパーヒート)の値は、HIC出口温度センサ106による計測値に基づいて、運転状態量生成器31によって生成される。さらに、要件cに相当する室内機出口SHの値は、室内機ガス配管温度センサ203による計測値に基づいて、運転状態量生成器31によって生成される。
【0056】
なお、図1の構成では、室内ユニット20を1つとした構成を示しているが、室内ユニット20が複数ある場合には、すべての室内ユニットで要件cが成立することで、判定条件Aが判定されることとなる。
【0057】
そこで、ステップS3022において、演算器32は、要件a〜cを満たすと判断した場合には、ステップS3023に進み、安定判定を開始する。具体的には、演算器32は、要件a〜cのデータをあらかじめ決められたサンプリング間隔の時系列データとして記憶部33に記憶させていく。
【0058】
次に、ステップS3024において、演算器32は、初期運転期間において、判定条件Aを満たしたデータが取得されたか否かを判定する。すなわち、演算器32は、記憶部33に記憶された時系列データに基づいて、要件a〜cを満たす状態が10分継続し、定常状態の運転状態量が取得できたか否かを判定する。そして、演算器32は、ステップS3204の判定結果がYESの場合には、ステップS3025に進み、ステップS3204の判定結果がNOの場合には、ステップS3026に進む。
【0059】
ステップS3025に進んだ場合には、演算器32は、記憶部33に記憶された定常状態での運転状態量に基づいて、補正値αを算出し、一連処理を終了する。一方、ステップS3026に進んだ場合には、記憶部33に記憶された運転状態量に基づいて、要件a〜cのうち、どの要件が10分以上継続しなかったために、判定条件Aをクリアできなかったかを特定する。そして、演算器32は、特定した要因を記憶部33に記憶させ、一連処理を終了する。
【0060】
図3の説明に戻り、ステップS303において、演算器32は、初期運転期間において、すでに補正値αが算出されているか否かを判定する。そして、演算器32は、ステップS303の判定結果がYESの場合には、ステップS304に進み、ステップS303の判定結果がNOの場合には、ステップS306に進む。
【0061】
ステップS304に進んだ場合には、演算器32は、初期運転期間の経過後において、運転状態量生成器31によって生成される運転状態量を逐次取得する。さらに、ステップS305において、演算器32は、判定条件Aを満たした際の、記憶部33に記憶されている運転状態量、および補正値αを用いて、劣化判定処理を行い、一連の処理を終了する。
【0062】
このステップS304、ステップS305の処理は、初期運転期間で補正値αが求まり、その補正値αを用いて劣化判定処理を行う場合であり、従来技術と同様である。そして、このステップS305の処理の詳細を示したものが、図5のフローチャートである。
【0063】
ステップS3051において、演算器32は、判定指標δを算出する。具体的には、演算器32は、記憶部33に記憶された、冷媒回路が定常状態での運転状態量の計測結果に基づいて、現状の圧縮機の劣化状態を定量的に評価するための値である判定指標δを算出し、記憶部33に記憶させる。
【0064】
次に、ステップS3052において、演算器32は、判定基準値δmの設定を行う。具体的には、演算器32は、圧縮機単体として、劣化診断のためにあらかじめ設定された判定基準値に対して、補正値αを用いて修正することで、設置環境における空気調和装置の実態に合った劣化判定用の判定基準値δmを算出し、記憶部33に記憶させる。
【0065】
次に、ステップS3053において、判定器34は、記憶部33に記憶された判定指標δと判定基準値δmとの比較により、圧縮機の劣化診断を行う。そして、劣化していると判断した場合には、ステップS3054に進み、判定器34は、報知器40を介して、劣化異常を報知し、一連処理を終了する。
【0066】
一方、劣化していないと判断した場合には、判定器34は、報知することなく、一連処理を終了する。
【0067】
図3の説明に戻り、ステップS306に進んだ場合には、演算器32は、新たな補正値α’を算出することとなる。まず、ステップS306において、演算器32は、先の図4におけるステップS3026の処理によって記憶部33に記憶された、判定条件Aをクリアできなかった理由として特定された要件を読み出す。そして、演算器32は、特定された要件を修正することで、判定条件Aに代わる新たな判定条件Bを作成する。なお、この判定条件Aをクリアできなかった理由として特定された要件は、不安定運転状態量に相当する。
【0068】
具体例として、以下の3ケースについて、判定条件Aに代わる新たな判定条件B1〜B3を作成する場合について、説明する。
ケース1:要件aだけが10分間継続できなかったために、判定条件Aが成立せず、要件aが、判定条件Aをクリアできなかった理由として特定されたことで、新たな判定条件B1を作成する場合。
ケース2:要件bだけが10分間継続できなかったために、判定条件Aが成立せず、要件bが、判定条件Aをクリアできなかった理由として特定されたことで、新たな判定条件B2を作成する場合。
ケース3:要件cだけが10分間継続できなかったために、判定条件Aが成立せず、要件cが、判定条件Aをクリアできなかった理由として特定されたことで、新たな判定条件B3を作成する場合。
【0069】
なお、要件a〜cのうち、2つ以上の要件が10分間継続できなかったために、判定条件Aが成立しない場合には、補正値が生成できる定常状態が得られないとして、判定器34により、報知器40を介した報知を行うことができる。
【0070】
演算器32は、ケース1においては、以下のような判定条件B1に変更する。
<判定条件B1:以下の要件a、b、c、が30分間継続すること>
更新後の要件a:圧縮機回転数が60%以上
要件b:HIC_SH>10[K]
要件c:室内機出口SH>5[K]
すなわち、判定条件B1では、判定条件Aと比較して、継続時間が10分から30分に延長されるとともに、更新後の要件aにおいて、圧縮機回転数が80%から60%に変更されている。
【0071】
演算器32は、ケース2においては、以下のような判定条件B2に変更する。
<判定条件B2:以下の要件a、b、c、が100分間継続すること>
要件a:圧縮機回転数が80%以上
更新後の要件b:HIC_SHに関しては無条件として無視する
要件c:室内機出口SH>5[K]
すなわち、判定条件B2では、判定条件Aと比較して、継続時間が10分から100分に延長され、要件bを無視するように変更されている。
【0072】
演算器32は、ケース3においては、以下のような判定条件B3に変更する。
<判定条件B3:以下の要件a、b、c、が100分間継続すること>
要件a:圧縮機回転数が80%以上
要件b:HIC_SH>10[K]
更新後の要件c: 室内機出口SHに関しては無条件として無視する
すなわち、判定条件B3では、判定条件Aと比較して、継続時間が10分から100分に延長され、要件cを無視するように変更されている。
【0073】
このようにして、演算器32は、不安定運転状態量の遷移状態に基づいて、判定条件Aを変更することで、判定条件B1〜B3のいずれかを新たに設定できる。
【0074】
次に、ステップS307において、演算器32は、新たに設定した判定条件Bを用いて、設置環境に応じた新たな補正値α’の算出処理を行う。この算出処理は、基本的には、先の図4で示した、判定条件Aを満たす補正値αの算出処理と同様に行うことができる。
【0075】
ただし、ステップS3024において、「運転開始から1ヶ月以内」といった初期運転期間の設定ではなく、補正値α’を算出するために設定された期間で判断されることとなる。さらに、演算器32は、ステップS307において、補正値α’を算出する際の、判定条件Bを満たしていた状態での要件a〜cのデータを、あらかじめ決められたサンプリング間隔の時系列データとして記憶部33に記憶させておく。
【0076】
次に、ステップS308において、演算器32は、補正値α’を算出する際に、記憶部33に記憶された時系列データに基づいて、判定条件Aをクリアできなかった理由として特定された要件を新たに設定し直し、判定条件Cを設定する。具体例として、上述した判定条件B1〜B3に対応して、新たな判定条件C1〜C3を以下のように作成することができる。
【0077】
演算器32は、判定条件B1を、以下のような判定条件C1に変更する。
<判定条件C1:以下の要件a、b、c、が30分間継続すること>
要件a:圧縮機回転数が60%以上
要件b:HIC_SH>10[K]
要件c:室内機出口SH>5[K]
すなわち、判定条件C1は、判定条件B1と同一内容として設定される。
【0078】
演算器32は、判定条件B2を、以下のような判定条件C2に変更する。
<判定条件C2:以下の要件a、b、c、が100分間継続すること>
要件a:圧縮機回転数が80%以上
要件b:判定条件B2の下で取得されたHIC_SHの時系列データの平均値±1℃として再設定
要件c:室内機出口SH>5[K]
すなわち、判定条件C2は、判定条件B2と比較して、無視していた要件bが、計測結果の平均値に基づいて再設定されている。
【0079】
演算器32は、判定条件B3を、以下のような判定条件C3に変更する。
<判定条件C3:以下の要件a、b、c、が100分間継続すること>
要件a:圧縮機回転数が80%以上
要件b:HIC_SH>10[K]
要件c:判定条件B3の下で取得された室内機出口SHの時系列データの平均値±1℃として再設定
すなわち、判定条件C3は、判定条件B3と比較して、無視していた要件cが、計測結果の平均値に基づいて再設定されている。
【0080】
このようにして、演算器32は、不安定運転状態量の遷移状態に基づいて、判定条件B1〜B3をさらに変更することで、判定条件C1〜C3を再設定できる。
【0081】
次に、ステップS309において、演算器32は、新たな判定条件Cを設定後に、運転状態量生成器31によって生成される運転状態量を逐次取得する。さらに、ステップS310において、演算器32は、あらかじめ設定した許容時間内に、新たな判定条件Cを満たすデータが取得できたか否かを判定する。そして、演算器32は、ステップS310の判定結果がYESの場合には、ステップS311に進み、ステップS310の判定結果がNOの場合には、ステップS312に進む。
【0082】
ステップS311に進んだ場合には、演算器32は、判定条件Cを満たした際の、記憶部33に記憶されている運転状態量、および新たな補正値α’を用いて、劣化判定処理を行い、一連の処理を終了する。この劣化判定処理は、基本的には、先の図5で示した処理と同様に行うことができる。
【0083】
また、ステップS312に進んだ場合には、演算器32は、許容時間内に劣化診断処理を実行できなかったフラグを立てて、記憶部33に記憶させる。そして、判定器34は、許容時間内に劣化診断処理を実行できなかったフラグが立った場合には、報知器40を介して、劣化診断処理ができなかったことをアナウンスし、一連処理を終了する。
【0084】
なお、上述したステップS305において、判定条件Aを満たすデータが、あらかじめ決められた時間内に収集できず、劣化判定処理が行えない場合には、ステップS306以降の処理を実行し、新たな補正値α’および新たな判定条件Cに基づいて劣化診断処理を行うことも可能である。
【0085】
また、上述したステップS306において、新たな判定条件を設定する場合に、段階的に設定変更していくことも可能である。具体的には、上述した判定条件B1に設定変更する際に、要件aにおける圧縮機回転数を、まずは。80%から60%に更新し、更新後の要件aでも30分継続しない場合には、さらに、圧縮機回転数を、60%から40%に下げていくことも考えられる。
【0086】
以上のように、実施の形態1によれば、従来技術と比較して、以下のような顕著な効果を得ることができる。
機械任せの成行き運転で圧縮機効率低下診断を行うパッシブ方式では、所定の条件を満たし安定運転が所定時間継続したデータが必要である。しかしながら、実際の設置環境によっては、発停を繰り返すなどの安定しない系統、あるいはほとんど運転しない系統などが存在する。この結果、据付け後、一定期間運転しても、効率低下検知に必要な補正値が設定できず、圧縮機の劣化診断を行えないことが考えられる。
【0087】
これに対して、本実施の形態1における圧縮機劣化診断装置は、以下のような機能を有している。
・複数の運転状態量の遷移状態のモニタ結果に基づいて、安定運転が所定時間継続しない理由となる要件を特定する機能
・特定した要件を、モニタ結果に基づいて変更し、新たな補正値を算出する機能
・新たな補正値を算出した際の運転状態量に基づいて新たな判定条件を設定する機能
・新たな補正値および新たな判定条件を用いて、劣化診断を行う機能
【0088】
この結果、安定運転が継続せず、補正値を算出するための判定条件が成立しない場合にも、診断に必要な補正値を高精度に得ることができる。従って、設置環境に応じて、再現性の高い判定指標に基づいて、確実に圧縮機効率低下を検知する圧縮機劣化診断装置および圧縮機劣化診断方法を実現できる。
図1
図2
図3
図4
図5