特許第6444540号(P6444540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6444540スクロール圧縮機および冷凍サイクル装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444540
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   F04C18/02 311Q
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-562401(P2017-562401)
(86)(22)【出願日】2016年1月22日
(86)【国際出願番号】JP2016051865
(87)【国際公開番号】WO2017126106
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩竹 渉
(72)【発明者】
【氏名】河村 雷人
(72)【発明者】
【氏名】関屋 慎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
(72)【発明者】
【氏名】若本 慎一
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−294686(JP,A)
【文献】 特開昭61−28782(JP,A)
【文献】 特開平10−37868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入管を通じて冷媒ガスが取り込まれる密閉容器と、
前記密閉容器内に設けられ、固定スクロールと揺動スクロールとを有し、前記冷媒ガスを圧縮する圧縮機構部と、
前記密閉容器内に設けられた電動機構部と、
前記電動機構部の回転力を前記揺動スクロールに伝達する回転軸と、
前記圧縮機構部に前記吸入管とは別のインジェクション管から冷媒を導入するためのインジェクションポートと、
を備え、
前記固定スクロールと前記揺動スクロールとは、それぞれに台板と渦巻体とを有し、
前記圧縮機構部は相互の前記渦巻体の間に閉じられた圧縮室と閉じられずに前記密閉容器内の前記冷媒ガスを吸い込む吸入室とが形成されるものであり、
前記インジェクションポートは、前記回転軸の全回転位相において、前記圧縮機構部の前記渦巻体同士を組み合わせた構造体部分の最外面よりも内側となる前記固定スクロールの台板に設けられ、前記吸入室のみに開口するスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記インジェクションポートは、前記揺動スクロールの揺動運動に伴って前記揺動スクロールの前記渦巻体による閉塞と開口とが繰り返される請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記圧縮機構部は、前記固定スクロールと前記揺動スクロールとが前記回転軸の回転中心に対して同位相で組み合わされて構成された非対称渦巻形状に形成されている請求項1または2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記インジェクションポートは、前記インジェクションポートの入口から出口に向かうに従って前記渦巻体の渦巻方向の奥側に向かう方向に傾斜している請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記インジェクションポートは、前記インジェクションポートの入口から出口に向かうに従って前記固定スクロールの前記渦巻体の壁面または前記揺動スクロールの前記渦巻体の壁面に向かう方向に傾斜している請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記インジェクションポートは、先細り形状に形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記インジェクションポートは、前記渦巻体の延出する方向に沿って複数並んで形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
前記インジェクションポートの流路横断面形状は、前記渦巻体の延出する方向に沿って長い扁平形状である請求項1〜7のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機と凝縮器と減圧装置と蒸発器とを有し、これらが順次接続されて冷媒が循環するように構成された主回路と、
前記凝縮器と前記減圧装置との間から分岐し、前記スクロール圧縮機の前記インジェクションポートに接続されるインジェクション回路と、
前記インジェクション回路の流量を調整する流量調整弁と、
を備えた冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記主回路の前記スクロール圧縮機と前記凝縮器との間に設けられた油分離器と、
前記油分離器で分離された冷凍機油を前記スクロール圧縮機の吸入側に流入させる油インジェクション回路と、
前記油インジェクション回路の流量を制御する第1油流量調整弁と、
一端が前記油インジェクション回路に接続され、他端が前記インジェクション回路に接続された油インジェクション管と、
前記油インジェクション管に設けられた第2油流量調整弁と、
を備え、
前記流量調整弁、前記第1油流量調整弁および前記第2油流量調整弁の制御により冷媒または冷凍機油のいずれか、もしくは冷媒および冷凍機油の両方を選択的に前記インジェクションポートから前記吸入室にインジェクションする請求項9に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジェクションポートを有する低圧シェル型のスクロール圧縮機および冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル用マルチエアコンなどの空気調和装置では、たとえば建物外に配置した熱源機である室外ユニットとしての室外機と、建物内に配置した室内ユニットとしての室内機と、の間を配管接続して冷媒回路を構成している。そして、冷媒回路に冷媒を循環させ、冷媒の放熱、吸熱を利用して空気を加熱、冷却することで、空調対象空間の暖房または冷房を行っている。
【0003】
このような空気調和装置に用いられるスクロール圧縮機では、寒冷地のような外気温度が低い条件では、吐出温度が高くなり許容温度を超えるため運転が困難となる。このため、スクロール圧縮機が外気温度の低い条件でも運転できるようにするには、吐出温度を低減する対策が必要となる。
【0004】
特許文献1、2、3には、いずれも、吸入冷媒がシェル内に一旦取り込まれてから圧縮室内に吸入される低圧シェル型の構成であって、吐出温度を低減するために圧縮機内に冷媒をインジェクションする構造が開示されている。
【0005】
特許文献1には、インジェクション管の流出口を圧縮機構部の吸入室に対向して配置した構造が開示されている。
【0006】
特許文献2には、インジェクション管の流出口を固定スクロール台板部に配置したインジェクションポートと連通させ、インジェクション管から放出されるインジェクション冷媒が圧縮機構部の圧縮室にインジェクションポートを介して直接流入するようにした構造が開示されている。
【0007】
特許文献3には、特許文献2とほぼ同じ構成であり、インジェクションポートが1回転中の大部分の回転位相で圧縮室に連通するが、ある回転位相では吸入室に連通するようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−54972号公報
【特許文献2】特開昭60−166778号公報
【特許文献3】特開平10−37868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された技術では、インジェクションポートが吸入室と離れた位置にあるため、インジェクション冷媒を吸入室に取り込み難く、吸入室に入りきらなかった液冷媒は低圧シェル型のため、冷凍機油が封入されている容器底部の油溜め部に流れ落ちる。このため、冷凍機油が液冷媒によって希釈されて、軸受部などの摺動部位に給油される冷凍機油の粘度が低下し、圧縮機の信頼性が低下する問題がある。
【0010】
特許文献2に開示された技術では、インジェクションポートが圧縮室とのみ連通し吸入室と連通していないため、油溜め部内の冷凍機油を希釈するおそれは無い。しかし、インジェクション管およびインジェクションポート部の容積は冷媒の圧縮に寄与しない無効容積となるため、インジェクション運転を行わない場合は、無効容積に滞留する冷媒を圧縮する際に無駄な仕事が発生し、圧縮機の性能が低下する問題がある。
【0011】
特許文献3に開示された技術では、1回転中の大部分の回転位相においてインジェクションポートが圧縮室と連通しているため、特許文献2と同様にインジェクション運転を行わない場合は、無効容積に滞留する冷媒を圧縮する際に無駄な仕事が発生し、圧縮機の性能が低下する問題がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、インジェクション冷媒の油溜め部への流出が抑制でき、油溜め部に溜められた冷凍機油の粘度低下に伴う信頼性の低下が抑制できるとともに、無効容積の圧縮による性能低下が抑制できる効率の高いスクロール圧縮機および冷凍サイクル装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るスクロール圧縮機は、吸入管を通じて冷媒ガスが取り込まれる密閉容器と、前記密閉容器内に設けられ、固定スクロールと揺動スクロールとを有し、前記冷媒ガスを圧縮する圧縮機構部と、前記密閉容器内に設けられた電動機構部と、前記電動機構部の回転力を前記揺動スクロールに伝達する回転軸と、前記圧縮機構部に前記吸入管とは別のインジェクション管から冷媒を導入するためのインジェクションポートと、を備え、前記固定スクロールと前記揺動スクロールとは、それぞれに台板と渦巻体とを有し、前記圧縮機構部は相互の前記渦巻体の間に閉じられた圧縮室と閉じられずに前記密閉容器内の前記冷媒ガスを吸い込む吸入室とが形成されるものであり、前記インジェクションポートは、前記回転軸の全回転位相において、前記圧縮機構部の前記渦巻体同士を組み合わせた構造体部分の最外面よりも内側となる前記固定スクロールの台板に設けられ、前記吸入室のみに開口するものである。
【0014】
本発明に係る冷凍サイクル装置は、上記のスクロール圧縮機と凝縮器と減圧装置と蒸発器とを有し、これらが順次接続されて冷媒が循環するように構成された主回路と、前記凝縮器と前記減圧装置との間から分岐し、前記スクロール圧縮機の前記インジェクションポートに接続されるインジェクション回路と、前記インジェクション回路の流量を調整する流量調整弁と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスクロール圧縮機および冷凍サイクル装置によれば、インジェクション冷媒の油溜め部側への流出が抑制でき、油溜め部に溜められた冷凍機油の粘度低下に伴う信頼性の低下が抑制できるとともに、無効容積の圧縮による性能低下が抑制できる効率の高いスクロール圧縮機および冷凍サイクル装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機の全体構成を示す概略縦断面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機の圧縮機構部近傍を示す説明図である。
図3A】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体の1回転中のうちθ=0degの動作を示す圧縮工程図である。
図3B】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体の1回転中のうちθ=90degの動作を示す圧縮工程図である。
図3C】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体の1回転中のうちθ=180degの動作を示す圧縮工程図である。
図3D】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体の1回転中のうちθ=270degの動作を示す圧縮工程図である。
図4A】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体のインジェクションポート付近の1回転中のうちθ=0degの動作を示す圧縮工程図である。
図4B】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体のインジェクションポート付近の1回転中のうちθ=90degの動作を示す圧縮工程図である。
図4C】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体のインジェクションポート付近の1回転中のうちθ=180degの動作を示す圧縮工程図である。
図4D】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体のインジェクションポート付近の1回転中のうちθ=270degの動作を示す圧縮工程図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機におけるインジェクションポート開口率を示す説明図である。
図6A】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機におけるインジェクションポートの設置位置制約を示す説明図である。
図6B】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機におけるインジェクションポートの設置位置制約を示す説明図である。
図7】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機におけるインジェクションポート設置角度を示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機におけるインジェクションポート設置角度を変化させたときの回転位相とインジェクションポート開口面積との関係を示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機を備えたインジェクション回路を含む冷凍サイクル装置の一例を示す図である。
図10A】本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体の1回転中のうちθ=0degの動作を示す圧縮工程図である。
図10B】本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体の1回転中のうちθ=90degの動作を示す圧縮工程図である。
図10C】本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体の1回転中のうちθ=180degの動作を示す圧縮工程図である。
図10D】本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機における図1中のA−A断面での揺動渦巻体の1回転中のうちθ=270degの動作を示す圧縮工程図である。
図11A】本発明の実施の形態3に係るスクロール圧縮機を示す要部説明図である。
図11B】本発明の実施の形態3に係るスクロール圧縮機における図11A中のB−B断面を示す断面図である。
図12A】本発明の実施の形態4に係るスクロール圧縮機を示す要部説明図である。
図12B】本発明の実施の形態4に係るスクロール圧縮機における図12A中のC−C断面を示す断面図である。
図13A】本発明の実施の形態5に係るスクロール圧縮機を示す要部説明図である。
図13B】本発明の実施の形態5に係るスクロール圧縮機における図13A中のD−D断面を示す断面図である。
図14A】本発明の実施の形態6に係るスクロール圧縮機を示す要部説明図である。
図14B】本発明の実施の形態6に係るスクロール圧縮機における図14A中のE−E断面を示す断面図である。
図15A】本発明の実施の形態7に係るスクロール圧縮機を示す要部説明図である。
図15B】本発明の実施の形態7に係るスクロール圧縮機における図15A中のF−F断面を示す断面図である。
図16】本発明の実施の形態8に係る冷凍サイクル装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るスクロール圧縮機および冷凍サイクル装置について図面などを参照しながら説明する。ここで、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30の全体構成を示す概略縦断面図である。また、図2は本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30の圧縮機構部8近傍を示す説明図である。
【0019】
実施の形態1の低圧シェル型のスクロール圧縮機30は、揺動スクロール1および固定スクロール2を有する圧縮機構部8と、回転軸6を介して圧縮機構部8を駆動する電動機構部110と、その他の構成部品とを有している。スクロール圧縮機30は、これらの構成部品が外郭を構成する密閉容器100の内部に収納された構成を有している。回転軸6は、密閉容器100の内部にて電動機構部110からの回転力を揺動スクロール1に伝達する。揺動スクロール1は、回転軸6に偏心して連結され、電動機構部110の回転力により揺動運動する。スクロール圧縮機30は、吸入された低圧冷媒ガスを密閉容器100の内部空間に一旦取り込んでから圧縮するいわゆる低圧シェル型である。
【0020】
密閉容器100の内部には、更に、回転軸6の軸方向に電動機構部110を挟んで対向するようにフレーム7とサブフレーム9とが配置されている。フレーム7は、電動機構部110の上側に配置されて電動機構部110と圧縮機構部8との間に位置している。サブフレーム9は、電動機構部110の下側に位置している。フレーム7は、焼嵌め、溶接などによって密閉容器100の内周面に固着されている。また、サブフレーム9は、サブフレームホルダ9aを介して焼嵌め、溶接などによって密閉容器100の内周面に固着されている。
【0021】
サブフレーム9の下方には、上端面で回転軸6を軸方向に支承するようにして容積型ポンプを含むポンプ要素111が取り付けられている。ポンプ要素111は、密閉容器100の底部の油溜め部100aに溜められた冷凍機油を圧縮機構部8の後述の主軸受7aなどの摺動部位に供給する。
【0022】
密閉容器100には、冷媒を吸入するための吸入管101と、冷媒を吐出するための吐出管102と、インジェクション管201と、が設けられている。密閉容器100内の空間への冷媒の取り込みは、吸入管101を通じて行われる。インジェクション管201は、吸入管101とは別に、密閉容器100内の圧縮機構部8内に冷媒を導入するためのものである。圧縮機構部8は、インジェクション管201を通じて冷媒を導入するためのインジェクションポート202を有する。
【0023】
圧縮機構部8は、吸入管101から吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を密閉容器100内の上方に形成されている高圧部に排出する機能を有している。
圧縮機構部8は、揺動スクロール1および固定スクロール2を有している。
【0024】
固定スクロール2は、フレーム7を介して密閉容器100に固定されている。揺動スクロール1は、固定スクロール2の下側に配置されて回転軸6の後述の偏心軸部6aに揺動自在に支持されている。
【0025】
揺動スクロール1は、揺動台板1aと、揺動台板1aの一方の面に立てて設けられた渦巻状突起である揺動渦巻体1bと、を有している。固定スクロール2は、固定台板2aと、固定台板2aの一方の面に立てて設けられた渦巻状突起である固定渦巻体2bと、を有している。揺動スクロール1および固定スクロール2は、揺動渦巻体1bと固定渦巻体2bとを逆位相で組み合わせた対称渦巻形状の状態で密閉容器100内に配置されている。
【0026】
ここで、揺動渦巻体1bが描くインボリュート曲線の基礎円の中心を基礎円中心204aとする。また、固定渦巻体2bが描くインボリュート曲線の基礎円の中心を基礎円中心204bとする。基礎円中心204aが基礎円中心204bまわりに回転することで、後述する図3に示すように揺動渦巻体1bは、固定渦巻体2bまわりに揺動運動を行う。スクロール圧縮機30の運転中での揺動スクロール1の運動については後に詳細を述べる。
【0027】
揺動渦巻体1bにおいて、巻き始めを基礎円中心204aから最も内側にある端部とし、巻き終わりを基礎円中心204aから最も外側にある端部とする。同様に、固定渦巻体2bにおいて、巻き始めを基礎円中心204bから最も内側にある端部とし、巻き終わりを基礎円中心204bから最も外側にある端部とする。
【0028】
揺動スクロール1の揺動渦巻体1bの内向面205aにおいて、固定スクロール2の固定渦巻体2bの外向面206bが揺動運動中に接触する最も巻き終わり側の地点を巻き終わり接触点207aとする。また、固定スクロール2の固定渦巻体2bの内向面205bにおいて、揺動スクロール1の揺動渦巻体1bの外向面206aが揺動運動中に接触する最も巻き終わり側の地点を巻き終わり接触点207bとする。
【0029】
基礎円中心から巻き終わりまで渦巻に沿って見た場合に、揺動渦巻体1bの内向面205aと固定渦巻体2bの外向面206bとの間に複数の接触点ができる。つまり、揺動渦巻体1bの内向面205aと固定渦巻体2bの外向面206bとの間隙は複数の接触点によって区切られて複数の室になる。
また、基礎円中心から巻き終わりまで渦巻に沿って見た場合に、固定渦巻体2bの内向面205bと揺動渦巻体1bの外向面206aとの間に複数の接触点ができる。つまり、固定渦巻体2bの内向面205bと揺動渦巻体1bの外向面206aとの間隙は複数の接触点によって区切られて複数の室になる。
なお、揺動渦巻体1bの巻き終わり接触点207aと固定渦巻体2bの巻き終わり接触点207bとは、基礎円中心204aおよび基礎円中心204bを挟んで反対側に配置される。揺動渦巻体1bと固定渦巻体2bとが対称渦巻形状であるので、図2に示すように、揺動渦巻体1bと固定渦巻体2bとの間には渦巻の外側から一対の室が複数形成されている。
【0030】
吸入口208aは、巻き終わり接触点207aと固定渦巻体2bの外向面206b上のある点を通り、回転軸6の軸方向である鉛直方向に平行でかつ面積が最小となる平面とする。吸入口208bは、巻き終わり接触点207bと揺動渦巻体1bの外向面206a上のある点を通り、回転軸6の軸方向である鉛直方向に平行でかつ面積が最小となる平面とする。
【0031】
吸入室70aは、吸入口208a、揺動渦巻体1bの内向面205a、固定渦巻体2bの外向面206b、揺動台板1a、固定台板2aで囲まれた空間と定義される。吸入室70bは、吸入口208b、揺動渦巻体1bの外向面206a、固定渦巻体2bの内向面205b、揺動台板1a、固定台板2aで囲まれた空間と定義される。
【0032】
巻き終わり側の吸入口208aまたは吸入口208bから巻き始め側へ渦巻体を渦巻に沿って見た場合に固定渦巻体2bと揺動渦巻体1bとが最初に接しあう箇所がある。吸入室70aは、その最初に接しあう箇所と吸入口208aとで挟まれた空間である。また、吸入室70bは、その最初に接しあう箇所と吸入口208bとで挟まれた空間である。言い換えると、吸入室70aは、巻き終わり接触点207aが固定渦巻体2bの外向面206bから離間して吸入口208aが形成されている空間である。また、吸入室70bは、巻き終わり接触点207bが揺動渦巻体1bの外向面206aから離間して吸入口208bが形成されている空間である。後述するように揺動渦巻体1bが回転すると、固定渦巻体2bと揺動渦巻体1bとが接する位置が移動し、吸入口208aまたは吸入口208bの幅も変化するため、回転により吸入室70aおよび吸入室70bの体積は変動する。
なお、吸入口208a、208bが開口部であり、吸入室70a、70bは閉じられていない室である。このため、吸入室70a、70bは、圧力変動のほとんどない室である。
【0033】
また、圧縮室71aは、揺動渦巻体1bの内向面205a、固定渦巻体2bの外向面206b、揺動台板1a、固定台板2aで囲まれた空間と定義される。圧縮室71bは、揺動渦巻体1bの外向面206a、固定渦巻体2bの内向面205b、揺動台板1a、固定台板2aで囲まれた空間と定義される。
【0034】
上述したように、巻き終わり側の吸入口208aまたは吸入口208bから巻き始め側へ渦巻体を渦巻に沿って見た場合に固定渦巻体2bと揺動渦巻体1bとが接しあう箇所がある。圧縮室71a、71bはその2つの接しあう箇所で挟まれた空間である。後述するように揺動渦巻体1bが回転すると、固定渦巻体2bと揺動渦巻体1bとが接する位置が移動し、回転により圧縮室71a、71bの体積は変動する。
なお、圧縮室71a、71bは、閉じられた空間であり、体積変動する。このため、圧縮室71a、71bは、回転軸6の回転とともに圧力変動が発生する室である。
【0035】
つまり、図2に示す状態では、最外室が吸入室70a、70bであり、それ以外の室が圧縮室71a、71bである。
このように、揺動スクロール1および固定スクロール2は、それぞれが揺動台板1aまたは固定台板2a上に設けられた揺動渦巻体1bまたは固定渦巻体2bを有し、相互の揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bが組み合わされて圧縮室71a、71bを含む複数の室を形成する。
【0036】
固定スクロール2の固定台板2aにおいて揺動スクロール1とは反対側の面には、バッフル4が固定されている。バッフル4には、固定スクロール2の吐出口2cに連通する貫通孔が形成され、その貫通孔には吐出バルブ11が設けられている。そして、この吐出口2cを覆うように吐出マフラ12が取り付けられている。
【0037】
フレーム7は固定スクロール2を固定配置し、揺動スクロール1に作用するスラスト力を軸方向に支持するスラスト面を有している。また、フレーム7には、吸入管101から吸入された冷媒を圧縮機構部8内に導く開口部7c、7dが貫通形成されている。
【0038】
回転軸6に回転駆動力を供給する電動機構部110は、電動機固定子110aと電動機回転子110bとを有している。電動機固定子110aは、外部から電力を得るために、フレーム7と電動機固定子110aとの間に存在する図示しないガラス端子に図示しないリード線で接続されている。また、電動機回転子110bは、回転軸6に焼嵌めなどによって固定されている。また、スクロール圧縮機30の回転系全体のバランシングを行うため、回転軸6には、第1バランスウェイト60が固定されているとともに、電動機回転子110bには、第2バランスウェイト61が固定されている。
【0039】
回転軸6は、回転軸6の上部の偏心軸部6aと、主軸部6bと、回転軸6の下部の副軸部6cと、で構成されている。偏心軸部6aには、スライダー5と揺動軸受1cとを介して揺動スクロール1が嵌め合わされ、冷凍機油による油膜を介して揺動軸受1cと摺動する。揺動軸受1cは、銅鉛合金などの滑り軸受に使用される軸受材料を圧入するなどしてボス部1d内に固定されていて、回転軸6の回転により揺動スクロール1が揺動運動するようになっている。主軸部6bは、フレーム7に設けられたボス部7bの内周に配置された主軸受7aにスリーブ13を介して嵌め合わされ、冷凍機油による油膜を介して主軸受7aと摺動する。主軸受7aは、銅鉛合金などの滑り軸受に使用される軸受材料を圧入するなどしてボス部7b内に固定されている。
【0040】
サブフレーム9の上部には、玉軸受からなる副軸受10を備え、電動機構部110の下方で回転軸6を半径方向に軸支する。なお、副軸受10は、玉軸受以外の別の軸受構成によって軸支してもよい。副軸部6cは、副軸受10と嵌め合わされ、副軸受10と摺動する。主軸部6bおよび副軸部6cの軸心は、回転軸6の軸心と一致している。
【0041】
実施の形態1では、圧縮機構部8といったスクロール圧縮要素の揺動運動によって形成される空間を以下のように定義する。密閉容器100内のハウジング空間であり、フレーム7より電動機回転子110b側の空間を第1空間72とする。また、フレーム7の内壁と固定台板2aとにより形成される空間を第2空間73とする。また、固定台板2aより吐出管102側の空間を第3空間74とする。
【0042】
次に、図3A図3Dを用いて圧縮機構部8の動作について説明する。
図3Aは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bの1回転中のうちθ=0degの動作を示す圧縮工程図である。図3Bは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bの1回転中のうちθ=90degの動作を示す圧縮工程図である。図3Cは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bの1回転中のうちθ=180degの動作を示す圧縮工程図である。図3Dは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bの1回転中のうちθ=270degの動作を示す圧縮工程図である。
【0043】
回転位相θは、圧縮開始時の揺動渦巻体1bの基礎円中心を204a’とした時の基礎円中心204a’と固定渦巻体2bの基礎円中心204bとを結ぶ直線と、あるタイミングでの揺動渦巻体1bの基礎円中心204aと固定渦巻体2bの基礎円中心204bを結ぶ直線と、が成す角度と定義する。つまり、回転位相θは、圧縮開始時に0degであり、0degから360degまで変動する。図3A図3Dは、それぞれ揺動渦巻体1bが回転位相θ=0deg→90deg→180deg→270degと揺動運動する状況を表している。
【0044】
密閉容器100に設けられた図示しないガラス端子に通電されると、電動機回転子110bにより回転軸6が回転する。そして、その回転力が偏心軸部6aを介して揺動軸受1cに伝わり、揺動軸受1cから揺動スクロール1に伝えられ、揺動スクロール1は、揺動運動を行う。吸入管101から密閉容器100内に吸入された冷媒ガスは、吸入室70a、70bに取り込まれる。
【0045】
図3Aの状態は、最外室が閉じられて冷媒の吸入が完了した状態を示しており、最外室を含む全室が圧縮室71a、71bである。この場合には、最外室の圧縮室71a、71bに着目すると、これらの圧縮室71a、71bは、揺動スクロール1の揺動運動に伴い、外周部から中心方向に移動しながら容積を減じる。圧縮室71a、71b内の冷媒ガスは、圧縮室71a、71bの容積の減少に伴い、圧縮される。
【0046】
一般に、スクロール圧縮機30では、揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bの外周側終端からインボリュート曲線に沿って渦巻中心側に向かうと、2つの渦巻体が複数の接触点で接している。図3Aに示すように、巻き終わり接触点207aが外向面206bと接触しているとき、また、巻き終わり接触点207bが外向面206aと接触しているときは、吸入を完了した時点であり、この時点では吸入口208a、208bが閉じており、最外室が吸入室70a、70bではない。
【0047】
図3Aに示すように、吸入を完了した時点では、揺動渦巻体1bの内向面205aと固定渦巻体2bの外向面206bとの最初の接触点である巻き終わり接触点207aから、2つ目の接触点209aまでは閉じた空間となる。また、吸入を完了した時点では、揺動渦巻体1bの外向面206aと固定渦巻体2bの内向面205bとの最初の接触点である巻き終わり接触点207bから、2つ目の接触点209bまでは閉じた空間となる。しかし、吸入の完了直前または完了直後に僅かに吸入口208a、208bが開くと、吸入を完了した時点における外側から2つ目の接触点209a、209bが最も外側の接触点となり、吸入口208a、208bと連通する。
【0048】
吸入室70a、70bは揺動渦巻体1bの回転によって容積が変化する空間である。すなわち、吸入室70a、70bは、回転位相θの増加に伴い、図3B図3C図3Dに示されるように、揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bの略接線方向に沿って容積を拡大する。容積の拡大により、吸入室70a、70bは、密閉容器100内の冷媒ガスを吸入する。図3Aの時点で吸入口208a、208bが無くなり、容積が最大になると同時に、吸入室70a、70bは圧縮室71a、71bに移行する。
【0049】
圧縮室71a、71bは、渦巻の形状により、中心になるほど容積が小さくなり、上述したように回転軸6の回転により容積が変化し、圧縮室71a、71b内に吸入された冷媒を圧縮する。最も中央にある圧縮室71a、71bは、図1に示す吐出口2cと連通している。吐出口2cでは、圧縮された冷媒が吐出バルブ11を経て吐出マフラ12内に吐出され、その後に第3空間74に吐出される。
【0050】
次に、図1および図2を参照して本発明の特徴部分であるインジェクションポート202について説明する。
固定台板2aには、吸入室70a、70bに1対のインジェクションポート202が穴加工により形成されている。各インジェクションポート202へはスクロール圧縮機30の外部よりインジェクション管201を経由して液または二相冷媒が流入する。ここで、各インジェクションポート202は、1回転中で圧縮室71a、71bには開口せず、吸入室70a、70bのみにしか開口しない位置に穴加工されている。
【0051】
固定台板2aに形成されたインジェクションポート202は、回転軸6の回転によって揺動渦巻体1bの軸方向端部である歯先としての固定台板2a側の端部によって開口と閉塞が繰り返される。径方向ポートの幅が揺動渦巻体1bの渦巻体厚さより狭ければ、回転軸6のある回転角の範囲でインジェクションポート202は完全に閉じられる。ここでの揺動渦巻体1bの渦巻体厚さとは、揺動渦巻体1bのインボリュート曲線によって描かれる内向面205aと外向面206aの最近接距離である。
インジェクションポート202は、回転軸6の全回転位相において、圧縮機構部8の揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2b同士を組み合わせた構造体部分の最外面よりも内側に設けられている。
【0052】
ここで、吸入室70aに連通するインジェクションポート202をインジェクションポート202aとし、吸入室70bに連通するインジェクションポート202をインジェクションポート202bとする。なお、以降の図においてインジェクションポート202a、202bは、その位置を明確に示す観点から、揺動渦巻体1bとの位置関係によらず、常に白丸で図示している。
【0053】
揺動渦巻体1bの軸方向端部である歯先は、相対する固定台板2aと摺動するように接しており、また、固定渦巻体2bの軸方向端部である歯先は、相対する揺動台板1aと摺動するように接している。これにより、吸入室70a、70bおよび圧縮室71a、71bがシールされる。揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bの厚さは、強度の点からある程度の厚みを有するように形成され、シールする歯先部分は厚み分の幅を有した平坦な面となっている。
【0054】
以下、図4図5を参照して、インジェクションポート202の開閉動作ついて説明する。図4では吸入室70aに連通するインジェクションポート202aのみについて示しているが、吸入室70bに連通するインジェクションポート202bについても同様に開閉動作する。
【0055】
図4Aは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bのインジェクションポート202a付近の1回転中のうちθ=0degの動作を示す圧縮工程図である。図4Bは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bのインジェクションポート202a付近の1回転中のうちθ=90degの動作を示す圧縮工程図である。図4Cは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bのインジェクションポート202a付近の1回転中のうちθ=180degの動作を示す圧縮工程図である。図4Dは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bのインジェクションポート202a付近の1回転中のうちθ=270degの動作を示す圧縮工程図である。図5は、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30におけるインジェクションポート開口率を示す説明図である。
【0056】
インジェクションポート202aの開口率は、インジェクションポート202aの全面積に対する、吸入室70aに開口するインジェクションポート202aの面積の比率である。
【0057】
回転位相θ=0degでは、図4Aに示すようにインジェクションポート202aは揺動渦巻体1bによって完全に閉塞している。このときの最外室は、圧縮室71aである。回転位相θが進むと、回転位相θ=110degあたりからインジェクションポート202aは吸入室70aに開口し始め、徐々に開口率は上昇して行き、回転位相θ=130degあたりで完全に開口する。さらに回転位相θが進み、回転位相θ=350degあたりでインジェクションポート202aは、揺動渦巻体1bによって完全に閉塞する。この間、回転位相θ=180deg、270degでは、図4C図4Dに示すように、インジェクションポート202aは吸入室70aに完全に開口している。回転位相θ=360deg以降は上記動作を再び繰り返す。
【0058】
すなわち、インジェクションポート202a、202bは、揺動スクロール1の揺動運動に伴い一方の揺動渦巻体1bまたは固定渦巻体2bの巻き終わり接触点207a、207bが他方の揺動渦巻体1bまたは固定渦巻体2bから離間して吸入室70a、70bが形成されたときのみ開口する。
また、インジェクションポート202a、202bは、揺動スクロール1の揺動運動に伴い一方の揺動渦巻体1bまたは固定渦巻体2bの巻き終わり接触点207a、207bが他方の揺動渦巻体1bまたは固定渦巻体2bに接触している間にわたって揺動スクロール1の揺動渦巻体1bに覆われて閉塞される。
【0059】
以下に、インジェクションポート202a、202bの設置位置について説明する。
図6Aは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30におけるインジェクションポート202aの設置位置制約を示す説明図である。図6Aは、吸入室70aに開口するインジェクションポート202aまわりを示す拡大図である。
【0060】
最外室を形成する揺動渦巻体1bの外向面206aよりも径方向外側の位置は、第2空間73に面しており、この空間は回転軸6の一回転中で吸入室70aにも圧縮室71aにもならない領域である。このため、この位置にインジェクションポート202aがあると、インジェクションポート202aが揺動渦巻体1bをまたぎ、1回転中のある回転位相θでインジェクション冷媒が第2空間73に漏れだす。したがって、インジェクションポート202aは、回転軸6のいかなる回転位相θにおいても、水平方向平面からみて、揺動渦巻体1bの外向面206aと交差してはならない。以上より、インジェクションポート202aの外径をD、インジェクションポート202aの中心の固定渦巻体2bの外向面206bからの距離をLo、揺動渦巻体1bの渦巻体厚さをtoとしたとき、「Lo<to−D/2」式(1)である必要がある。
【0061】
また、図6Bは、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30におけるインジェクションポート202bの設置位置制約を示す説明図である。図6Bは、吸入室70bに開口するインジェクションポート202bのまわりを示す拡大図である。
【0062】
最外室を形成する揺動渦巻体1bの内向面205bよりも径方向内側の位置は、圧縮室71aに面している。このため、この位置にインジェクションポート202bがあるとインジェクションポート202bが揺動渦巻体1bをまたぎ、1回転中のある回転位相θでインジェクション冷媒が圧縮室71bに漏れだす。したがって、インジェクションポート202bは、回転軸6のいかなる回転位相θにおいても、水平方向平面からみて、揺動渦巻体1bの内向面205bと交差してはならない。以上より、インジェクションポート202bの外径をD、インジェクションポート202bの中心の固定渦巻体2bの内向面205bからの距離をLi、揺動渦巻体1bの渦巻体厚さをtoとしたとき、「Li<to−D/2」式(2)である必要がある。
【0063】
次に、インジェクションポート設置角度αの範囲について説明する。
図7は、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30におけるインジェクションポート設置角度αを示す説明図である。
【0064】
インジェクションポート202aの設置角度αは、回転位相θ=0degのときの巻き終わり接触点207aと基礎円中心204bとを結ぶ直線と、インジェクションポート202aの中心と基礎円中心204bとを結ぶ直線と、がなす角度である。
図示はしないが、インジェクションポート202bにおけるインジェクションポート設置角度αも同様にして、回転位相θ=0degのときの巻き終わり接触点207bと基礎円中心204aとを結ぶ直線と、インジェクションポート202bの重心と基礎円中心204aとを結ぶ直線と、がなす角度である。
【0065】
設置角度αは大きくとる方が、当然ながらインジェクションポート202a、202bからインジェクションされた冷媒は、吸入口208a、208bを経由して第2空間73に漏れ難くなる。このため、設置角度αは、大きくとる方が望ましいが、設置角度αを大きくとるにはLoおよびLiを大きくとる必要がある。
しかし、式(1)、式(2)の制約によりαには上限があり、実際にαのとり得る範囲は最大で110deg程度である。
【0066】
次に、インジェクションポート設置角度αとインジェクションポート開口面積の関係について説明する。
図8は、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30におけるインジェクションポート設置角度αを変化させたときの回転位相θとインジェクションポート開口面積との関係を示す説明図である。
【0067】
実線は、設置角度αが大きい場合、破線は設置角度αが小さい場合を示している。設置角度αが大きい場合は前述のようにLoおよびLiが大きくなり、また式(1)、式(2)の制約から必然的にインジェクションポート202a、202bの外径Dを小さくせざるを得ない。
一方、設置角度αが小さい場合はLoおよびLiは小さくてよく、またインジェクションポート202a、202bの外径Dを大きくとることができる。したがってインジェクションポート設置角度αを大きくしすぎると、LoおよびLiが大きくなることで狭い回転位相範囲しかインジェクションポート202a、202bが吸入室70a、70bに開口しない上に、インジェクションポート202a、202bの外径Dも小さいことで、1回転中のインジェクション量が少なくなってしまう。このため、ある程度インジェクション量を多くするためには、インジェクションポート設置角度αは0degから60deg程度の範囲に設けることが望ましい。
【0068】
図9は、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機30を備えたインジェクション回路34を含む冷凍サイクル装置300の一例を示す図である。
【0069】
図9に示す冷凍サイクル装置300は、スクロール圧縮機30と、凝縮器31と、減圧装置としての膨張弁32と、蒸発器33と、を有し、これらが順次配管で接続されて冷媒が循環するように構成されている回路を備えている。
また、冷凍サイクル装置300は、凝縮器31と膨張弁32との間から分岐し、スクロール圧縮機30に接続されるインジェクション回路34を備えている。
インジェクション回路34には、流量調整弁としての膨張弁34aが設けられており、吸入室70a、70bにインジェクションする流量を調整可能となっている。
膨張弁32の開度、膨張弁34aの開度およびスクロール圧縮機30の回転数は、図示しない制御装置によって制御される。
【0070】
なお、冷凍サイクル装置300に更に図示しない四方弁を設け、冷媒の流れ方向を逆に切り替えるようにしてもよい。この場合、スクロール圧縮機30の下流側に設置した凝縮器31を室内機側、蒸発器33を室外機側とすれば暖房運転となり、凝縮器31を室外機側、蒸発器33を室内機側とすれば冷房運転となる。インジェクション運転を行うのは通常暖房運転時であるが、冷房運転時にインジェクション運転をしても構わない。
【0071】
以下では、スクロール圧縮機30、凝縮器31、膨張弁32および蒸発器33を有する回路を主回路、この主回路を循環する冷媒を主冷媒と記載する。また、インジェクション回路34を流れる冷媒をインジェクション冷媒と記載する。
【0072】
次に冷媒の流れについて説明する。
(主冷媒の流れ)
主回路においては、スクロール圧縮機30から吐出された主冷媒が、凝縮器31、膨張弁32および蒸発器33を経由してスクロール圧縮機30に戻る。スクロール圧縮機30に戻る冷媒は、吸入管101から密閉容器100内に流入する。
【0073】
吸入管101から密閉容器100内の第1空間72に流入した低圧冷媒は、フレーム7内に設置された2つの開口部7c、7dを通って第2空間73に流入する。第2空間73に流入した低圧冷媒は、圧縮機構部8の揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bの相対的な揺動動作に伴って吸入室70a、70bへと吸い込まれる。吸入室70a、70bに吸い込まれた主冷媒は、揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bの相対的な動作に伴う圧縮室71a、71bの幾何学的な容積変化によって低圧から高圧へと昇圧される。そして、高圧となった主冷媒は、吐出バルブ11を押し開けて吐出マフラ12内に吐出され、その後、第3空間74に吐出され、吐出管102から高圧冷媒としてスクロール圧縮機30の外部へと吐出される。
【0074】
(インジェクション冷媒の流れ)
スクロール圧縮機30から吐出され、凝縮器31を通過した主冷媒の一部であるインジェクション冷媒は、インジェクション回路34に流入し、膨張弁34aを経てスクロール圧縮機30のインジェクション管201に流入する。インジェクション管201に流入した液または二相のインジェクション冷媒は、図示しない配管にて2つに分岐し、2箇所のインジェクションポート202a、202bのそれぞれに流入する。インジェクションポート202a、202bに流入した冷媒は、上述したように圧縮機構部8内の吸入室70a、70bに流入するか、揺動渦巻体1bによって遮断されることになる。
【0075】
上述の特許文献1に開示された技術では、吐出温度を下げることを目的としてインジェクションを行う場合、液冷媒を吸入室から離れたインジェクションポートからインジェクションするようにしていた。このため、吸入室に入りきらなかった液冷媒が密閉容器底部に流れ落ち、油溜め部の冷凍機油が希釈されることがあった。
【0076】
これに対し、実施の形態1では、インジェクションポート202a、202bの出口は直接、吸入室70a、70bに開口するようにし、インジェクション冷媒が油溜め部100aに流入することを抑制している。このため、実施の形態1では、液または二相の冷媒を多量にインジェクションすることが可能であり、大幅な吐出温度の低減が可能である。
【0077】
また、上述の特許文献2に開示された技術のような、インジェクションポートが常に圧縮室に連通する構成のスクロール圧縮機であったり、または特許文献3に開示された技術のような、インジェクションポートが1回転中の大部分の回転位相θで圧縮室に連通する構成のスクロール圧縮機であったりすると、インジェクションポートが冷媒の圧縮に寄与しない無効容積となる。このため、インジェクションを行わない運転時において、無効容積に滞留する冷媒を圧縮する際に無駄な仕事が発生し、スクロール圧縮機の性能が低下する課題がある。
【0078】
これに対し、実施の形態1では、インジェクションポート202a、202bの出口は直接、吸入室70a、70bに開口するようにした。このため、インジェクション冷媒は、油溜め部100aに流出し難くなり、油溜め部100aに溜められた冷凍機油が希釈されることを抑制できる。
また、インジェクションポート202が圧縮室71a、71bには開口せず、吸入室70a、70bのみに開口しているので、1回転中の全回転位相θで無効容積を圧縮しない。このため、スクロール圧縮機30の性能の損失を抑えることができ、高効率なスクロール圧縮機30を得ることができる。
なお、上記では、吸入室70a、70bのいずれにもインジェクションポート202a、202bを設けたため、吐出温度の低減に優れるが、いずれか一方にのみインジェクションポートを設ける構成としても、ある程度の吐出温度の低減が可能である。すなわち、スクロール圧縮機30が上記のようなインジェクションポートを少なくとも1つ有すればよい。
ここまでインジェクションする冷媒は、液または二相冷媒としたが、吸入冷媒よりも温度が低いガス冷媒をインジェクションしてもよい。
【0079】
実施の形態2.
実施の形態2は、揺動スクロール1の揺動渦巻体1bと固定スクロール2の固定渦巻体2bとの組み合わせ方が実施の形態1と異なるものである。実施の形態2では、その特徴部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0080】
図10Aは、本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bの1回転中のうちθ=0degの動作を示す圧縮工程図である。図10Bは、本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bの1回転中のうちθ=90degの動作を示す圧縮工程図である。図10Cは、本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bの1回転中のうちθ=180degの動作を示す圧縮工程図である。図10Dは、本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機30における図1中のA−A断面での揺動渦巻体1bの1回転中のうちθ=270degの動作を示す圧縮工程図である。
図10A図10Dには、揺動渦巻体1bが回転位相θ=0deg→90deg→180deg→270degと揺動運動する状況が表されている。
【0081】
実施の形態1では、揺動スクロール1の揺動渦巻体1bと固定スクロール2の固定渦巻体2bとを逆位相で組み合わせていた。これに対し、実施の形態2は、揺動スクロール1の揺動渦巻体1bと固定スクロール2の固定渦巻体2bとを同位相で組み合わせている。そして、巻き終わり接触点207a、207bを基礎円中心204bに対して逆位相ではなく同位相にして、圧縮機構部8を非対称渦巻形状としている。
【0082】
実施の形態2においては、実施の形態1と同様、回転位相θ=0deg→90deg→180deg→270degと変化する状況において、インジェクションポート202a、202bは吸入室70a、70bのみに開口する。
【0083】
このように構成することで、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、以下の効果が得られる。
すなわち、実施の形態1と同様に、圧縮室71a、71bへのインジェクション冷媒の流入を完全に防ぎ、インジェクションポート202a、202bによる無効容積を0にすることができる。また、油溜め部100aに溜められた冷凍機油の粘度低下に伴うスクロール圧縮機30の信頼性の低下を抑制することができる。
また、実施の形態2では、2箇所のインジェクションポート202a、202bの位置が互いに近接するため、インジェクションポート202a、202bの位置が離れていた実施の形態1に比べてインジェクション管201を簡略化することができ、より簡便な構造でインジェクションの効果を得ることができる。
なお、インジェクションポートを2箇所設けることが望ましいが、いずれか1箇所としても、ある程度の吐出温度の低減が可能である。
【0084】
実施の形態3.
実施の形態3は、インジェクションポート202aの開口方向に関するものである。実施の形態3では、その特徴部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0085】
図11Aは、本発明の実施の形態3に係るスクロール圧縮機30を示す要部説明図である。図11Bは、本発明の実施の形態3に係るスクロール圧縮機30における図11A中のB−B断面を示す断面図である。
【0086】
実施の形態3では、インジェクションポート202aが回転軸6の軸方向に対して傾斜して固定台板2aに形成されている。その傾斜方向は、インジェクションポート202aの入口から出口に向かうに従って、渦巻に沿って冷媒が圧縮される方向である渦巻方向の奥側に傾斜している。なお、インジェクションポート202bも、インジェクションポート202aと同様の構成となっている。
【0087】
このように構成することで、実施の形態1の効果に加えて更に以下の効果が得られる。
すなわち、インジェクション冷媒がインジェクションポート202a、202bから吸入口208a、208bとは逆側の渦巻の奥側に向かって噴出する。このため、インジェクション冷媒が吸入口208a、208bおよび第2空間73を経由して第1空間72へ流出するのを抑制し、スクロール圧縮機30の信頼性を更に向上できる。
【0088】
実施の形態4.
実施の形態4は、インジェクションポート202の開口方向に関するものである。実施の形態4では、その特徴部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0089】
図12Aは、本発明の実施の形態4に係るスクロール圧縮機30を示す要部説明図である。図12Bは、本発明の実施の形態4に係るスクロール圧縮機30における図12A中のC−C断面を示す断面図である。
【0090】
実施の形態4では、インジェクションポート202aの開口方向を揺動スクロール1の揺動渦巻体1bの壁面である内向面205aまたは固定スクロール2の固定渦巻体2bの壁面である外向面206bに向くようにしている。図12Bでは一例として、インジェクションポート202aが固定渦巻体2bの壁面である外向面206b側に向き、固定渦巻体2bに向けてインジェクション冷媒を噴き出す場合を挙げている。なお、インジェクションポート202bも、インジェクションポート202aと同様の構成となっている。
【0091】
このように構成することで、実施の形態1の効果に加えて更に以下の効果が得られる。
すなわち、インジェクションポート202a、202bから噴出されたインジェクション冷媒は、揺動スクロール1の揺動渦巻体1bの内向面205aまたは固定スクロール2の固定渦巻体2bの外向面206bに衝突し、衝突の衝撃で微粒子化する。このように、インジェクションポート202a、202bから噴出されたインジェクション冷媒が圧縮機構部8内で微粒子化することで、拡散され易くなり吸入室70a、70b内で主冷媒との混合が促進される。そうすると、吸入室70a、70b内に主冷媒とともに取り込まれた冷凍機油が液冷媒によって希釈されることが無く、吸入室70a、70bおよび圧縮室71a、71b内のシール性を保つことができる。
【0092】
実施の形態5.
実施の形態5は、インジェクションポート202の流路縦断面形状に関するものである。実施の形態5では、その特徴部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0093】
図13Aは、本発明の実施の形態5に係るスクロール圧縮機30を示す要部説明図である。図13Bは、本発明の実施の形態5に係るスクロール圧縮機30における図13A中のD−D断面を示す断面図である。
【0094】
実施の形態5では、インジェクションポート202aは、流路面積がインジェクションポート202aの入口から出口に向かうに従って縮小する先細り形状に形成されており、インジェクションポート202aの出口の冷媒流速が大きくなる様にしている。なお、インジェクションポート202bも、インジェクションポート202aと同様の構成となっている。
【0095】
このように構成することで、実施の形態1の効果に加えて更に以下の効果が得られる。
すなわち、インジェクションポート202a、202bからは微粒子状となった液または二相冷媒がインジェクションされ、冷媒流速が高速となることでより微粒化される。これにより、インジェクションされた冷媒が拡散され易くなり、吸入室70a、70b内で主冷媒との混合が促進される。そうすると、吸入室70a、70b内に主冷媒とともに取り込まれた冷凍機油が液冷媒によって希釈されることが無く、吸入室70a、70bおよび圧縮室71a、71b内のシール性を保つことができる。
【0096】
実施の形態6.
実施の形態6では、インジェクションポート202aは、揺動渦巻体1bの延出する方向に沿って複数並んで形成されている。実施の形態6では、その特徴部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0097】
図14Aは、本発明の実施の形態6に係るスクロール圧縮機30を示す要部説明図である。図14Bは、本発明の実施の形態6に係るスクロール圧縮機30における図14A中のE−E断面を示す断面図である。
【0098】
実施の形態6では、インジェクションポート202aは、揺動渦巻体1bの延出する方向に沿って複数並んで形成されている。図14では、インジェクションポート202aが3つ形成された構成を示している。なお、インジェクションポート202bも、インジェクションポート202aと同様の構成となっている。
【0099】
このように構成することで、実施の形態1の効果に加えて更に以下の効果が得られる。
すなわち、揺動回転時にインジェクションポート202a、202bが揺動渦巻体1bをまたがずに、大面積のインジェクションポート202a、202bが設置でき、インジェクション冷媒の流路面積を確保して、必要十分なインジェクション量を得ることができる。
【0100】
実施の形態7.
実施の形態7は、インジェクションポート202の流路横断面形状に関するものである。実施の形態7では、その特徴部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0101】
図15Aは、本発明の実施の形態7に係るスクロール圧縮機30を示す要部説明図である。図15Bは、本発明の実施の形態7に係るスクロール圧縮機30における図15A中のF−F断面を示す断面図である。
【0102】
実施の形態7では、インジェクションポート202aの流路横断面形状は、揺動渦巻体1bの延出する方向に沿って長い扁平形状としている。なお、インジェクションポート202bも、インジェクションポート202aと同様の構成となっている。
【0103】
このように構成することで、実施の形態1と同様の効果が得られる。すなわち、揺動回転時にインジェクションポート202a、202bが揺動渦巻体1bをまたがずに、大面積のインジェクションポート202a、202bが設置でき、インジェクション冷媒の流路面積を確保して、必要十分なインジェクション量を得ることができる。
【0104】
なお、上記各実施の形態においてそれぞれ別の実施の形態として説明したが、各実施の形態の特徴的な構成を適宜組み合わせてスクロール圧縮機30を構成してもよい。たとえば、圧縮機構部8を非対称渦巻形状とした実施の形態2と、インジェクションポート202a、202bの流路縦断面形状を特定した実施の形態5と、を組み合わせ、図10A図10Dに示したインジェクションポート202a、202bの流路縦断面形状を図13Bに示したような先細り形状としてもよい。
【0105】
実施の形態8.
実施の形態1では、冷媒をインジェクションするようにしていた。これに対し、実施の形態8は、冷媒と冷凍機油とを選択してインジェクションできるようにしたものである。実施の形態8では、その特徴部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0106】
図16は、本発明の実施の形態8に係る冷凍サイクル装置300の一例を示す図である。
【0107】
実施の形態8の冷凍サイクル装置300は、図9に示す構成に加えて更に、スクロール圧縮機30の下流側に配置され、主冷媒から冷凍機油を分離させる油分離器35と、油分離器35により分離された油をスクロール圧縮機30に戻すための油インジェクション回路36と、を備えている。
また、油インジェクション回路36には、流量調整を行う第1油流量調整弁としての制御弁37が設けられており、スクロール圧縮機30に戻す冷凍機油の量がコントロールされてスクロール圧縮機30に戻されるようになっている。スクロール圧縮機30には、上記実施の形態1〜7のいずれかのスクロール圧縮機30が用いられる。
【0108】
実施の形態8では、更に、一端が油インジェクション回路36に接続され、他端がインジェクション回路34に接続された油インジェクション管38と、油インジェクション管38に設けられた第2油流量調整弁としての制御弁39と、を備えている。
制御弁37、39はたとえば電子式膨張弁で構成される。膨張弁32の開度、膨張弁34aの開度、制御弁37の開度、制御弁39の開度およびスクロール圧縮機30の回転数は図示しない制御装置によって制御される。
【0109】
以上の構成によれば、インジェクション回路34から液冷媒または二相冷媒をスクロール圧縮機30のインジェクションポート202にインジェクションする場合は、膨張弁34aを開き、制御弁37、39を閉じる。また、油インジェクション回路36から冷凍機油をスクロール圧縮機30のインジェクションポート202にインジェクションする場合は、制御弁39を開き、膨張弁34aおよび制御弁37を閉じる。これにより、油分離器35で分離された冷凍機油は、油インジェクション管38を介してスクロール圧縮機30のインジェクションポート202からインジェクションされる。
また、油インジェクション回路36から冷凍機油をスクロール圧縮機30の吸入側に戻す場合は、制御弁37を開き、膨張弁34aおよび制御弁39を閉じる。これにより、油分離器35で分離された冷凍機油が油インジェクション回路36からスクロール圧縮機30の吸入側に戻される。
【0110】
このように実施の形態8では、スクロール圧縮機30に液または二相冷媒をインジェクションするか、冷凍機油をインジェクションするかを選択できる。このため、揺動スクロール1の揺動渦巻体1bおよび固定スクロール2の固定渦巻体2bからの歯先漏れの影響が大きい低速領域では、冷凍機油をインジェクションポート202からインジェクションすることで揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bが構成する圧縮室71a、71bのシール性が高くなり、スクロール圧縮機30の性能を向上させることができる。
また、膨張弁34a、制御弁39を両方開けて、インジェクションポート202から冷媒と冷凍機油をインジェクションしてもよい。このような構成にすることで、インジェクション時に摺動部位のシール性を向上させることができる。
また、油溜め部100aの冷凍機油が不足する時には制御弁37、制御弁39の両方を開け、スクロール圧縮機30内に冷凍機油を戻してもよい。
また、高速領域では、液または二相冷媒をインジェクションすることで吐出温度を下げることができる。
【0111】
以上の実施の形態1〜8によると、スクロール圧縮機30は、吸入管101を通じて冷媒ガスが取り込まれる密閉容器100を備えている。密閉容器100内に設けられ、固定スクロール2と揺動スクロール1とを有し、冷媒ガスを圧縮する圧縮機構部8を備えている。密閉容器100内に設けられた電動機構部110を備えている。電動機構部110の回転力を揺動スクロール1に伝達する回転軸6を備えている。圧縮機構部8に吸入管101とは別のインジェクション管201から冷媒を導入するためのインジェクションポート202を備えている。固定スクロール2と揺動スクロール1とは、それぞれに固定台板2aまたは揺動台板1aと固定渦巻体2bまたは揺動渦巻体1bとを有する。圧縮機構部8は、相互の固定渦巻体2bおよび揺動渦巻体1bの間に閉じられた圧縮室71a、71bと閉じられずに密閉容器100内の冷媒ガスを吸い込む吸入室70a、70bとが形成される。インジェクションポート202は、回転軸6の全回転位相において、圧縮機構部8の固定渦巻体2bおよび揺動渦巻体1b同士を組み合わせた構造体部分の最外面よりも内側となる固定スクロール2の固定台板2aに設けられ、吸入室70a、70bのみに開口する。
この構成によれば、インジェクション冷媒は、油溜め部100aに流出し難くなり、油溜め部100aに溜められた冷凍機油が希釈されることを抑制できる。また、液または二相の冷媒を多量にインジェクションすることが可能であり、大幅な吐出温度の低減が可能である。
また、インジェクションポート202が圧縮室71a、71bには開口せず、吸入室70a、70bのみに開口しているので、1回転中の全回転位相θで無効容積を圧縮しない。このため、スクロール圧縮機30の性能の損失を抑えることができ、高効率なスクロール圧縮機30を得ることができる。
【0112】
インジェクションポート202は、揺動スクロール1の揺動運動に伴って揺動スクロール1の揺動渦巻体1bによる閉塞と開口とが繰り返される。
この構成によれば、インジェクションポート202が揺動スクロール1の揺動運動に伴って閉塞と開口とを繰り返す。このため、スクロール圧縮機30の性能の損失を抑えることができ、高効率なスクロール圧縮機30を得ることができる。
【0113】
圧縮機構部8は、固定スクロール2と揺動スクロール1とが回転軸6の回転中心に対して同位相で組み合わされて構成された非対称渦巻形状に形成されている。
この構成によれば、圧縮室71a、71bへのインジェクション冷媒の流入を完全に防ぎ、インジェクションポート202a、202bによる無効容積を0にすることができる。また、油溜め部100aに溜められた冷凍機油の粘度低下に伴うスクロール圧縮機30の信頼性の低下を抑制することができる。
また、2箇所のインジェクションポート202a、202bの位置が互いに近接するため、インジェクションポート202a、202bの位置が離れていた場合に比べてインジェクション管201を簡略化することができ、より簡便な構造でインジェクションの効果を得ることができる。
【0114】
インジェクションポート202a、202bは、インジェクションポート202a、202bの入口から出口に向かうに従って揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bの渦巻方向の奥側に向かう方向に傾斜している。
この構成によれば、インジェクション冷媒がインジェクションポート202a、202bから吸入口208a、208bとは逆側の渦巻の奥側に向かって噴出する。このため、インジェクション冷媒が吸入口208a、208bおよび第2空間73を経由して第1空間72へ流出するのを抑制し、スクロール圧縮機30の信頼性を更に向上できる。
【0115】
インジェクションポート202a、202bは、インジェクションポート202a、202bの入口から出口に向かうに従って固定スクロール2の固定渦巻体2bの外向面206bまたは揺動スクロール1の揺動渦巻体1bの内向面205aに向かう方向に傾斜している。
この構成によれば、インジェクションポート202a、202bから噴出されたインジェクション冷媒は、揺動スクロール1の揺動渦巻体1bの内向面205aまたは固定スクロール2の固定渦巻体2bの外向面206bに衝突し、衝突の衝撃で微粒子化する。このように、インジェクションポート202a、202bから噴出されたインジェクション冷媒が圧縮機構部8内で微粒子化することで、拡散され易くなり吸入室70a、70b内で主冷媒との混合が促進される。そうすると、吸入室70a、70b内に主冷媒とともに取り込まれた冷凍機油が液冷媒によって希釈されることが無く、吸入室70a、70bおよび圧縮室71a、71b内のシール性を保つことができる。
【0116】
インジェクションポート202a、202bは、先細り形状に形成されている。
この構成によれば、インジェクションポート202a、202bからは微粒子状となった液または二相冷媒がインジェクションされ、冷媒流速が高速となることでより微粒化される。これにより、インジェクションされた冷媒が拡散され易くなり、吸入室70a、70b内で主冷媒との混合が促進される。そうすると、吸入室70a、70b内に主冷媒とともに取り込まれた冷凍機油が液冷媒によって希釈されることが無く、吸入室70a、70bおよび圧縮室71a、71b内のシール性を保つことができる。
【0117】
インジェクションポート202a、202bは、揺動渦巻体1bの延出する方向に沿って複数並んで形成されている。
この構成によれば、揺動回転時にインジェクションポート202a、202bが揺動渦巻体1bをまたがずに、大面積のインジェクションポート202a、202bが設置でき、インジェクション冷媒の流路面積を確保して、必要十分なインジェクション量を得ることができる。
【0118】
インジェクションポート202a、202bの流路横断面形状は、揺動渦巻体1bの延出する方向に沿って長い扁平形状である。
この構成によれば、揺動回転時にインジェクションポート202a、202bが揺動渦巻体1bをまたがずに、大面積のインジェクションポート202a、202bが設置でき、インジェクション冷媒の流路面積を確保して、必要十分なインジェクション量を得ることができる。
【0119】
冷凍サイクル装置300は、スクロール圧縮機30と凝縮器31と膨張弁32と蒸発器33とを有し、これらが順次接続されて冷媒が循環するように構成された主回路を備えている。凝縮器31と膨張弁32との間から分岐し、スクロール圧縮機30のインジェクションポート202に接続されるインジェクション回路34を備えている。インジェクション回路34の流量を調整する膨張弁34aを備えている。
この構成によれば、スクロール圧縮機30から吐出され、凝縮器31を通過した主冷媒の一部であるインジェクション冷媒は、インジェクション回路34に流入し、膨張弁34aを経てスクロール圧縮機30のインジェクション管201に流入する。インジェクション管201に流入した液または二相のインジェクション冷媒は、図示しない配管にて2つに分岐し、2箇所のインジェクションポート202a、202bのそれぞれに流入する。インジェクションポート202a、202bに流入した冷媒は、圧縮機構部8内の吸入室70a、70bに流入するか、揺動渦巻体1bによって遮断されることになる。
【0120】
冷凍サイクル装置300は、主回路のスクロール圧縮機30と凝縮器31との間に設けられた油分離器35を備えている。油分離器35で分離された冷凍機油をスクロール圧縮機30の吸入側に流入させる油インジェクション回路36を備えている。油インジェクション回路36の流量を制御する制御弁37を備えている。一端が油インジェクション回路36に接続され、他端がインジェクション回路36に接続された油インジェクション管38を備えている。油インジェクション管38に設けられた制御弁39を備えている。膨張弁34a、制御弁37および制御弁39の制御により冷媒または冷凍機油のいずれか、もしくは冷媒および冷凍機油の両方を選択的にインジェクションポート202a、202bから吸入室70a、70bにインジェクションする。
この構成によれば、揺動スクロール1の揺動渦巻体1bおよび固定スクロール2の固定渦巻体2bからの歯先漏れの影響が大きい低速領域では、冷凍機油をインジェクションポート202a、202bからインジェクションすることで揺動渦巻体1bおよび固定渦巻体2bが構成する圧縮室71a、71bのシール性が高くなり、スクロール圧縮機30の性能を向上させることができる。
また、膨張弁34a、制御弁39を両方開けて、インジェクションポート202a、202bから冷媒と冷凍機油をインジェクションしてもよい。このような構成にすることで、インジェクション時に摺動部位のシール性を向上させることができる。
また、油溜め部100aの冷凍機油が不足する時には制御弁37、制御弁39の両方を開け、スクロール圧縮機30内に冷凍機油を戻してもよい。
また、高速領域では、液または二相冷媒をインジェクションすることで吐出温度を下げることができる。
【符号の説明】
【0121】
1 揺動スクロール、1a 揺動台板、1b 揺動渦巻体、1c 揺動軸受、1d ボス部、2 固定スクロール、2a 固定台板、2b 固定渦巻体、2c 吐出口、4 バッフル、5 スライダー、6 回転軸、6a 偏心軸部、6b 主軸部、6c 副軸部、7 フレーム、7a 主軸受、7b ボス部、7c 開口部、7d 開口部、8 圧縮機構部、9 サブフレーム、9a サブフレームホルダ、10 副軸受、11 吐出バルブ、12 吐出マフラ、13 スリーブ、30 スクロール圧縮機、31 凝縮器、32 膨張弁、33 蒸発器、34 インジェクション回路、34a 膨張弁、35 油分離器、36 油インジェクション回路、37 制御弁、38 油インジェクション管、39 制御弁、60 第1バランスウェイト、61 第2バランスウェイト、70a 吸入室、70b 吸入室、71a 圧縮室、71b 圧縮室、72 第1空間、73 第2空間、74 第3空間、100 密閉容器、100a 油溜め部、101 吸入管、102 吐出管、110 電動機構部、110a 電動機固定子、110b 電動機回転子、111 ポンプ要素、201 インジェクション管、202 インジェクションポート、202a インジェクションポート、202b インジェクションポート、204a 基礎円中心、204a’ 基礎円中心、204b 基礎円中心、205a 内向面、205b 内向面、206a 外向面、206b 外向面、207a 巻き終わり接触点、207b 巻き終わり接触点、208a 吸入口、208b 吸入口、209a 接触点、209b 接触点、300 冷凍サイクル装置。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16