(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6444557
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米、肥満防止機能、腸内環境改善機能及び血糖値上昇抑制機能を有する擬似米、並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/21 20160101AFI20181217BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20181217BHJP
【FI】
A23L33/21
!A23L7/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-133927(P2018-133927)
(22)【出願日】2018年7月17日
【審査請求日】2018年7月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398036508
【氏名又は名称】株式会社山忠
(74)【代理人】
【識別番号】100094581
【弁理士】
【氏名又は名称】鯨田 雅信
(72)【発明者】
【氏名】山城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】山城 達郎
【審査官】
北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−126401(JP,A)
【文献】
特開2012−139158(JP,A)
【文献】
特開2012−080806(JP,A)
【文献】
特開平06−197713(JP,A)
【文献】
特開平06−315356(JP,A)
【文献】
Korean J. Fish. Aquat. Sci., 2016, Vol.49, p.20-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00−33/29
A23L 7/00−7/25
A23L 17/60
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程の全体において型を使用しての成型工程を経ることなく、アルギン酸類溶液から多数の略球状体を形成し、前記略球状体を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状に加工することを特徴とする肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法。
【請求項2】
製造工程の全体において型を使用しての成型工程を経ることなく、アルギン酸類溶液を一滴ずつ塩化カルシウム水溶液中に落下させることによりアルギン酸類の略球状体を形成し、前記略球状体を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状に加工することを特徴とする肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法。
【請求項3】
製造工程の全体において型を使用しての成型工程を経ることなく、アルギン酸類溶液から多数の略球状体を形成し、前記略球状体を前記略球状体の直径よりも内径が小さい部分を有するパイプ中に1〜20m通過させることにより、前記略球状体を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状に加工して擬似米を製造することを特徴とする肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法。
【請求項4】
前記アルギン酸類はアルギン酸ナトリウムである、請求項1から3までのいずれかに記載の肥満防止機能、腸内環境改善機能及び血糖値上昇抑制機能を有する擬似米の製造方法。
【請求項5】
水分を除いては80〜99重量%のアルギン酸類及び1〜20重量%の食塩を含有して成り、米に近似した大きさ及び形状を有するように加工されて成る、請求項1から4までのいずれかの製造方法のみにより製造された、肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米。
【請求項6】
水分を除いては90〜99重量%のアルギン酸類及び1〜10重量%の食塩を含有して成り、米に近似した大きさ及び形状を有するように加工されて成る、請求項1から4までのいずれかの製造方法のみにより製造された、肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米。
【請求項7】
前記アルギン酸類はアルギン酸ナトリウムであり、水溶性植物繊維の粘性及び二糖類分解酵素の阻害効果による血糖値上昇抑制機能をも有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の肥満防止機能、腸内環境改善機能及び血糖値上昇抑制機能を有する擬似米。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肥満対策やダイエットなどへの関心の高まりに伴い、炭水化物を多く含む高カロリー食となってしまう米飯に代えて、他の素材から成る主食のニーズが増加している。このような近年のニーズに応えるものとして、例えばペースト状コンニャクを主原料とする米に類似した食品(米飯状低カロリー食品)が提案等されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5049860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のような従来のペースト状コンニャクを主原料とする米に類似した食品(米飯状低カロリー食品)は、粘り気などの食感は通常の白米と類似しているとしても、通常の白米と比較して味が大きく劣るため消費者の食欲をそそらないなどの問題があった。また、従来のペースト状コンニャクを主原料とする米に類似した食品(米飯状低カロリー食品)は、金型などの型を使用して成型する必要があるため、金型などの製造コストが高額になってしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来技術の課題に着目して為されたものであって、従来の、炭水化物を主成分とする白米のみを主食とすることによる肥満等の問題に困っている人々が有していた、肥満防止及び腸内環境改善等のニーズに応えることができる新規な主食となることができ、従来の白米と比較して味、食感及び匂いなどの点で遜色が無く、低カロリーで肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米、並びにそのような肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、従来の、炭水化物を主成分とする白米のみを主食とすることによる肥満等の問題に困っている人々が有していた、肥満防止及び腸内環境改善等のニーズに応えることができる新規な主食となることができ、従来の白米と比較して味、食感及び匂いなどの点で遜色が無く、肥満防止機能、腸内環境改善機能及び血糖値上昇抑制機能を有する擬似米、並びにこのような肥満防止機能、腸内環境改善機能及び血糖値上昇抑制機能を有する擬似米の製造方法を提供することをも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法は、製造工程の全体において型を使用しての成型工程を経ることなく、アルギン酸類溶液から多数の略球状体を形成し、前記略球状体を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状に加工することを特徴とするものである。
【0008】
本発明による肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法は、製造工程の全体において型を使用しての成型工程を経ることなく、アルギン酸類溶液を一滴ずつ塩化カルシウム水溶液中に落下させることによりアルギン酸類の略球状体を形成し、前記略球状体を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状に加工することを特徴とするものである。
【0009】
本発明による肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法は、製造工程の全体において型を使用しての成型工程を経ることなく、アルギン酸類溶液から多数の略球状体を形成し、前記略球状体を前記略球状体の直径よりも内径が小さい部分を有するパイプ中に1〜20m通過させることにより、前記略球状体を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状に加工して擬似米を製造することを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法においては、前記アルギン酸類はアルギン酸ナトリウムであってもよい。
【0011】
本発明に係る肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米は、上記製造方法のみにより製造された擬似米であって、水分を除いては80〜99重量%のアルギン酸類及び1〜20重量%の食塩を含有して成り、米に近似した大きさ及び形状を有するように加工されて成るものである。
【0012】
本発明に係る肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米は、上記製造方法のみにより製造された擬似米であって、水分を除いては90〜99重量%のアルギン酸類及び1〜10重量%の食塩を含有して成り、米に近似した大きさ及び形状を有するように加工されて成るものである。
【0013】
本発明に係る肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米は、上記製造方法のみにより製造された擬似米であって、前記アルギン酸類はアルギン酸ナトリウムであり、水溶性植物繊維の粘性及び二糖類分解酵素の阻害効果による血糖値上昇抑制機能をも有するものである。
【0014】
上記製造方法のみにより製造された本発明による擬似米は、炊飯後においては肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する主食となりうるものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のような課題を解決するための本発明による擬似米は、前述のように、少なくとも、80〜99重量%のアルギン酸類と、1〜20重量%の食塩となり得る塩類とを含有して成り、米に近似した大きさ及び形状を有するように加工されて成るものである。そして、このような本発明による擬似米は、本発明者の実験によれば、その「大きさ及び形状」が通常の白米と同様であるだけでなく、その「味、食感及び匂い」においても通常の白米と同じ程度に(遜色なく)食べやすく食事に適したものであることが分かった。また、本発明の擬似米によるときは、カロリーを含まない植物繊維であるアルギン酸を主要成分としているため、低カロリー食品として肥満防止のニーズに対応することができ、且つ便秘を改善するなどの腸内環境改善等のニーズにも適切に対応することができるようになる。よって、本発明によれば、例えば、消費者の好み等により、本発明の擬似米の約100%を主食として、本発明の擬似米と白米とを約50%ずつ混合したものを主食として、又は本発明の擬似米30%と白米70%とを混合したものを主食として食すること(この擬似米と白米との混合割合は様々に変更可能である)などにより、従来より多くの人々が主食に対して望んでいた肥満防止及び腸内環境改善等のニーズに適切に対応することができ、従来の白米のみを主食とする場合と比較しても「味、食感及び匂い」において遜色のない低カロリーの擬似米から成る、肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する新規な主食を、新たに提供できるようになる。
【0016】
また、前述のように、本発明による擬似米は、少なくとも、90〜99重量%のアルギン酸類と、1〜10重量%の食塩となり得る塩類とを含有して成り、米に近似した大きさ及び形状を有するように加工されて成るものである。そして、このような本発明による擬似米は、本発明者の実験によれば、その「大きさ及び形状」が通常の白米と同様であるだけでなく、その「味、食感及び匂い」においても通常の白米と同じ程度に(遜色なく)食べやすく食事に適したものであることが分かった。また、本発明の擬似米によるときは、カロリーを含まない植物繊維であるアルギン酸を主要成分としているため、低カロリーで肥満防止効果があり且つ腸内環境改善等のニーズに適切に対応することができるようになる。よって、本発明によれば、例えば、消費者の好み等により、本発明の擬似米の約100%を主食として、本発明の擬似米と白米とを約50%ずつ混合したものを主食として、又は本発明の擬似米30%と白米70%とを混合したものを主食として食すること(この擬似米と白米との混合割合は様々に変更可能である)などにより、従来より多くの人々が主食に対して望んでいた肥満防止及び腸内環境改善等のニーズに適切に対応することができ、従来の白米のみを主食とすると場合と比較しても「味、食感及び匂い」において遜色のない低カロリーの擬似米から成る、肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する新規な主食を、新たに提供できるようになる。
【0017】
また、前述のように、本発明による擬似米は、少なくとも、80〜99重量%のアルギン酸類と、1〜20重量%の食塩となり得る塩類とを含有し、さらに塩化カルシウムなどから成る微量の凝固剤を添加して成るものである。そして、このような本発明による擬似米は、本発明者の実験によれば、その「大きさ及び形状」が通常の白米と同様であるだけでなく、その「味、食感(特に上記凝固剤により生じる粘り気など)及び匂い」においても通常の白米と同じ程度に(遜色なく)食べやすく食事に適したものであることが分かった。また、本発明の擬似米によるときは、カロリーを含まない植物繊維であるアルギン酸を主要成分としているため、低カロリーで肥満防止効果があり且つ腸内環境改善等のニーズに適切に対応することができるようになる。よって、本発明によれば、例えば、消費者の好み等により、本発明の擬似米の約100%を主食として、本発明の擬似米と白米とを約50%ずつ混合したものを主食として、又は本発明の擬似米30%と白米70%とを混合したものを主食として食すること(この擬似米と白米との混合割合は様々に変更可能である)などにより、従来より多くの人々が主食に対して望んでいた肥満防止及び腸内環境改善等のニーズに適切に対応することができ、従来の米のみを主食とすると場合と比較して「味、食感(特に上記凝固剤により生じる粘り気など)及び匂い」において遜色のない低カロリーの擬似米から成る、肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する新規な主食を、新たに提供できるようになる。
【0018】
また、本発明に係る肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米において、前記アルギン酸類をアルギン酸ナトリウムとしたときは、アルギン酸ナトリウムが有する、水溶性植物繊維の粘性及び二糖類分解酵素の阻害効果による血糖値上昇抑制機能をも有する、肥満防止機能、腸内環境改善機能及び血糖値上昇抑制機能を有する、新規な主食となり得る擬似米を、提供できるようになる。
【0019】
また、本発明に係る肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法として、アルギン酸類溶液から多数の略球状体を形成し、前記略球状体を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状に加工するようにしたときは、高価な金型などを使用しての成型工程を経る必要がなくなるので、極めて低コストで、前記擬似米を製造できるようになる。
【0020】
また、本発明に係る肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法として、アルギン酸類溶液を一滴ずつ塩化カルシウム水溶液中に落下させることによりアルギン酸類の略球状体を形成するようにしたときは、高価な金型などを使用しての成型工程を経る必要がなくなるので、極めて低コストで、前記擬似米を製造できるようになる。
【0021】
さらに、本発明に係る肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米の製造方法として、アルギン酸類溶液から多数の略球状体を形成し、前記略球状体を前記略球状体の直径よりも内径が小さい部分を有するパイプ中に1〜20m通過させることにより、前記略球状体を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状に加工して擬似米を製造するようにしたときは、高価な金型などを使用しての成型工程を経る必要がなくなるので、極めて低コストで、前記擬似米を製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る擬似米の製造工程の全体を示す概略図である。
【
図2】本実施形態の製造工程中の球体を側面視で略楕円形状に変形、加工する方法の一例を示す概略図である。
【
図3】(a)及び(b)は
図1の製造工程の途中で生成された略球状体の一例を示す斜視図である。
【
図4】(a)及び(b)は
図1の製造工程の途中で生成された側面視で楕円状の擬似米の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の実施形態に係る擬似米及びその製造方法について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る擬似米の製造工程の全体を示す概略図、
図2は本実施形態の製造工程中の球体を側面視で略楕円形状に変形、加工する方法の一例を示す概略図、
図3(a)及び(b)は
図1の製造工程の途中で生成された略球状体の一例を示す斜視図、
図4(a)及び(b)は
図1の製造工程の途中で生成された側面視で楕円状の擬似米の一例を示す斜視図である。
【0024】
本実施形態の製造工程は、
図1に示すとおりであるが、まず、タンク1内において、例えば数十分〜数時間くらいかけて、コンブ、ワカメなどの天然海藻類から公知の方法で天然多糖類としてのアルギン酸ナトリウム溶液を抽出、生成する。
【0025】
その過程で又はその後、前記タンク1内のアルギン酸ナトリウム溶液中に、食塩となり得る塩類(塩化ナトリウム又は市販の食塩など)を、前記タンク1内のアルギン酸ナトリウム溶液中において1〜20重量%、望ましくは1〜10重量%となるように、添加する。これにより、前記タンク1内のアルギン酸ナトリウム溶液を、例えば80〜99重量%(より望ましくは90〜99重量%)のアルギン酸類と1〜20重量%(より望ましくは1〜10重量%)の食塩となり得る塩類(塩化ナトリウム又は市販の食塩など)とが混合されるように調整する。また、前記タンク1内のアルギン酸ナトリウム溶液中に、例えば塩化カルシウムなどから成る微量の凝固剤をも添加する。
【0026】
その後、
図1に示すように、前記タンク1内のアルギン酸ナトリウム溶液(前述のように食塩となり得る塩類が所定量だけ添加され、さらに微量の凝固剤が添加された、アルギン酸ナトリウム溶液)を、定量供給装置2に一定量ずつ送出する。前記定量供給装置2は、前記タンク1から送出されたアルギン酸ナトリウム溶液を、例えば0.04〜1.2ccの1滴ずつ、球状形成装置3に放出、供給する。すなわち、前記定量供給装置2から、アルギン酸ナトリウム溶液が各一滴ずつ、球状形成装置3に供給され、前記球状形成装置3中に備えられた容器内の塩化カルシウム水溶液中に前記各一滴ずつが落下される。
【0027】
前記球状形成装置3中に備えられた容器内の塩化カルシウム水溶液中に落下したアルギン酸ナトリウムの前記各一滴は、それぞれ、前記容器内の塩化カルシウム水溶液中で自然に略球状体に形成、固化される。すなわち、前記定量供給装置2から供給されたアルギン酸ナトリウム溶液の各一滴は、前記球状形成装置3の塩化カルシウム水溶液の容器内において、例えば1分〜数時間くらいかけて、
図3(a)及び(b)に示すような略球状体11に形成、固化される。このようにして形成、固化された多数の各略球状体11の直径は、例えば3〜10mmである。
【0028】
前記球状形成装置3内で形成された多数の略球状体11は、例えば1個ずつ米粒状形成装置4に供給される。前記米粒状形成装置4は、前記球状形成装置3からの各略球状体11を、例えば数分〜数時間くらいかけて、
図4(a)及び(b)に示すような側面視で略楕円形状の米粒状体12に変形、加工する。この
図4の米粒状体12の図示横方向の長さは例えば4〜15mm、図示縦方向の長さは例えば2〜5mmである。このような前記略球状体11から前記側面視で略楕円形状の米粒状体12への変形、加工は、例えば前記略球状体11に圧力を加えることにより可能である。
【0029】
次に
図2は、前記米粒状形成装置4が、前記略球状体11を、
図4(a)及び(b)に示すような側面視で略楕円形状の米粒状体12に形成、加工するために前記略球状体11に圧力を加える方法の一例を示す概略図である。本実施形態では、前記米粒状形成装置4中に、
図2に示すようなパイプ(チューブ)21を備えている。前記パイプ21は、例えばステンレスなどの金属製又はプラスチック製で、その全長は、数十cm〜十数m、望ましくは数mである。
【0030】
図2において、21aは前記略球状体11が前記パイプ21中に送られる入口部分、21bは前記略球状体11が前記パイプ21中を移動する途中に形成された略テーパー状部分(前記略球状体11の移動方向に向かうに従って徐々に内径が小さくなっている部分)、21cは前記略球状体11が前記パイプ21中から外部に排出される出口部分である。前記入口部分21a及びその近傍部分は、比較的大きな例えば5〜15mmの内径を有するように形成されている。前記出口部分21c及びその近傍部分は、比較的小さな例えば2〜5mmの内径を有するように形成されている。前記略テーパー状部分21bは、図示のように、前記入口部分21a又はその近傍部分から前記出口部分21c又はその近傍部分に向かうに従って内径が徐々に小さくなっていく略テーパー状に形成されている。
【0031】
前記略球状体11は、前記パイプ21内に、前記入口部分21aから挿入されて前記出口部分21cに移動させられる途中の、前記略テーパー状部分21b内を通過する過程で、略球状から側面視で略楕円形状に形成、加工される。前記略球状体11の前記パイプ21内への挿入及び前記パイプ21内での移動は、例えば、前記略球状体11を前記移動方向に吸引する吸引装置(図示省略)などにより行われる。
【0032】
また、前記略球状体11の前記パイプ21内への挿入及び前記パイプ21内での移動速度などに関しては、前記略球状体11を前記パイプ21内で移動させるために使用される水などの流体の流量や流速、前記吸引装置の吸引力、前記パイプ21内の圧力等を調整することなどにより、前記略球状体11が側面視で所望の略楕円形状に変形しやすい移動速度となるように、適宜調整、変更される。
【0033】
前記パイプ21内で側面視略楕円形状に変形されて前記パイプ21から排出された米粒状体12(
図4参照)は、
図1のエージングタンク5に移送され、そこで例えば数分〜数時間くらいかけてエージングされ、その後、包装装置6で包装され、殺菌装置7で殺菌される。
【0034】
次に、本発明者らは、5名のモニターに対し、「白米(大分県米穀卸株式会社販売の大分産コシヒカリ)100%の米飯」を食してもらった後に、「本実施形態に係る擬似米を100%使用した擬似米飯」を食してもらい、「白米100%の米飯」との間で「味、食感及び匂い」などを比較する官能テストを行った。この官能テストの結果を示すものが、下表1である。
【0036】
この表1を見ると、「擬似米100%から成る擬似米飯」の味については「白米100%から成る米飯と比べて、味がしないから美味しくない」という感想が一部にはあったが「味はないが特に違和感はない、味がないから何にでも(どのような料理にでも)合わせ易い」という肯定的な感想が多かった。また、食感については「プチプチ感がある」という感想はかなりあったがそれが故に食べ難いとか食感が悪いという感想はなく、むしろ「プチプチ感はあるが良い、食感が面白い」などの肯定的な感想が多かった。また、匂いはなく無臭であった。
【0037】
以上より、この表1に示す官能テスト結果から、本実施形態における「擬似米100%から成る擬似米飯」を「白米100%の米飯」と比較した結果、味が薄い又は食感がプリプリしているなどの点での「多少の違い」はあるとしても、少なくとも「食感、味及び匂いなどにおいてどちらが食べやすいか」という点における優劣はほぼ無い、すなわち、その「味、食感及び匂い」において通常の白米と同じ程度に(遜色なく)食べやすく食事に適していると感じたモニターが多かった、ということが分かった。
【0038】
その後、さらに本発明者らは、前記5名を含む計8名のモニターに対し、白米100%の米飯を食してもらった後に、「本実施形態に係る擬似米50%及び白米50%を使用した半擬似米飯」を食してもらい、「白米100%から成る米飯」との間で「味、食感及び匂い」などを比較する官能テストを行った。この官能テストの結果を示すものが、下表2である。
【0040】
この表2を見ると、「擬似米50%及び白米50%を使用した半擬似米飯」の味については「白米100%から成る米飯のような甘みがない」などの感想が一部にあったが「特に違和感はない」という感想が多かった。また、食感については「プチプチ感がある」という感想はかなりあったがそれが故に食べ難いとか食感が悪いという感想はなく、むしろ「プチプチ感があって面白い」などの肯定的な感想が多かった。また、匂いはなく無臭であった。
【0041】
以上より、この表2に示す官能テスト結果から、本実施形態における「擬似米50%及び白米50%を使用した半擬似米飯」を「白米100%から成る米飯」と比較した結果、味が薄い又は食感がプチプチしているなどの点での「多少の違い」はあるとしても、少なくとも「食感、味及び匂いなどにおいてどちらが食べやすいか」という点における優劣はほぼ無い、すなわち、その「味、食感及び匂い」において、通常の白米と同じ程度に(遜色なく)食べやすく食事に適したものであると感じた人が多かった、ということが分かった。
【0042】
よって、上記表1及び表2に示す官能テストの結果から、本実施形態の擬似米が、その「味、食感及び匂い」において通常の白米と同じ程度に(遜色なく)食べやすく食事に適したものであることが分かった。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態に係る擬似米においては、カロリーを含まない植物繊維であるアルギン酸を主要成分として少なくとも80重量%以上(より望ましくは少なくとも90重量%以上)含有させるようにしたので、肥満防止のニーズに対応することができる低カロリーの新規な主食、しかも、便秘を改善するなどの腸内環境改善等のニーズにも適切に対応することができる新規な主食を、新たに提供できるようになる。
【0044】
そして、このような擬似米は、前述のように側面視で略楕円形状の米粒状の大きさに形成されているため「形状及び大きさ」において通常の白米と同様であり、さらに、前述の官能テストの結果からは「味、食感及び匂い」においても通常の白米と同じ程度に(遜色なく)食べやすく食事に適したものであることが分かった。よって、本実施形態に係る擬似米を使用することにより、例えば、消費者の好み等により、前記擬似米の約100%を主食として、前記擬似米と白米とを約50%ずつ混合したものを主食として、又は前記擬似米30%と白米70%とを混合したものを主食として食することなどにより、従来より多くの人々が主食に対して望んできた肥満防止及び腸内環境改善等のニーズに適切に対応することができ、従来の米のみを主食とすると場合と遜色のない味と食感等を有する低カロリーの擬似米(上記のようにこの擬似米と白米との混合割合は様々に変更可能である)から成る、肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する新規な主食を、新たに提供できるようになる。
【0045】
また、本実施形態による肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米は、特に、アルギン酸ナトリウムを主要成分として少なくとも80重量%以上(より望ましくは少なくとも90重量%以上)含有させるようにしたので、アルギン酸ナトリウムが有する、水溶性植物繊維の粘性及び二糖類分解酵素の阻害効果による血糖値上昇抑制機能をも有する擬似米、及びこのような擬似米から成る新規な主食を提供できるようになる。
【0046】
また、本実施形態においては、アルギン酸ナトリウム溶液を一滴ずつ塩化カルシウム水溶液中に落下させることによりアルギン酸類の略球状体11を形成し、その後、前記略球状体11を側面視で略楕円形状の米粒状体12に変形、加工するようにしたので、高価な金型などを使用しての成型工程を経ることが不要となる結果、極めて低コストで、前記擬似米を製造できるようになる。
【0047】
さらに、本実施形態においては、アルギン酸ナトリウム溶液から略球状体11を形成した後、前記略球状体11をその直径よりも内径が小さいパイプ21中に1〜20m通過させることにより、前記略球状体11を側面視で略楕円形状の米に近似した大きさ及び形状の米粒状体12に変形、加工するようにしたので、高価な金型などを使用しての成型工程を経ることが不要となる結果、極めて低コストで、前記擬似米を製造できるようになる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施形態においては、アルギン酸塩の一種であるアルギン酸ナトリウム溶液から略球状体を形成し米粒状体を形成するようにしたが、本発明は、アルギン酸類の溶液から略球状体を形成し米粒状体(擬似米)を形成することを包含するものであり、例えば、同じアルギン酸塩の一種であるアルギン酸カリウムなどの溶液を使用すること、あるいは、アルギン酸塩だけでなく、アルギン酸、アルギン酸エステルなどの溶液を使用することも、可能である。また、前記実施形態においては、前記略球状体11を、
図4(a)及び(b)に示すような側面視で略楕円形状の米粒状体12に形成、加工する方法の一例として、
図2に示すような略球状体11をその直径よりも内径が小さいパイプ21中に1〜20m通過させることにより当該略球状体11に圧力を加える方法を説明したが、本発明においてはこれに限られるものではなく、様々な圧力を加える方法が利用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
1 タンク
2 定量供給装置
3 球状形成装置
4 米粒状形成装置
5 エージングタンク
6 包装装置
7 殺菌装置
11 略球状体
12 米粒状体
21 パイプ
21a パイプ21の入口部分
21b パイプ21の略テーパー状部分
21c パイプ21の出口部分
【要約】
【目的】 従来の、炭水化物を主成分とする白米のみを主食とすることによる肥満等の問題に困っている人々が有していた肥満防止及び腸内環境改善等のニーズに適切に対応することができ、従来の米とほとんど変わらない味と食感を有する肥満防止機能及び腸内環境改善機能を有する擬似米、並びにそのような低カロリー食としての擬似米の製造方法を提供する。
【構成】 少なくとも90〜99重量%(又は80〜99重量%)のアルギン酸類(例えばアルギン酸ナトリウム)と、1〜10重量%(又は1〜20重量%)の食塩となり得る塩類とを含有して成り、場合により塩化カルシウムなどから成る微量の凝固剤を含有して成り)、白米に近似した大きさ及び形状を有するように加工されて成る擬似米及びその製造方法である。
【選択図】
図1