特許第6444572号(P6444572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6444572-電力増幅回路及び無線送信装置 図000002
  • 特許6444572-電力増幅回路及び無線送信装置 図000003
  • 特許6444572-電力増幅回路及び無線送信装置 図000004
  • 特許6444572-電力増幅回路及び無線送信装置 図000005
  • 特許6444572-電力増幅回路及び無線送信装置 図000006
  • 特許6444572-電力増幅回路及び無線送信装置 図000007
  • 特許6444572-電力増幅回路及び無線送信装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6444572
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】電力増幅回路及び無線送信装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20181217BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20181217BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H03F1/32
   H03F3/24
   H04B1/04 R
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-543259(P2018-543259)
(86)(22)【出願日】2017年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2017004543
【審査請求日】2018年8月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】安藤 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 賢一
(72)【発明者】
【氏名】横山 明男
【審査官】 小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−294659(JP,A)
【文献】 特表2012−531815(JP,A)
【文献】 特開2009−267514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/32
H03F 3/24−3/68
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された送信信号の周波数帯域をN個の狭帯域(Nは2以上の整数)に分割して、前記N個の狭帯域をそれぞれ有するN個の帯域信号を生成する帯域分割部と、
前記N個の帯域信号からフィードバック信号を減算してN個の歪み補償信号を生成するN個の歪み補償部と、
直流成分のみを有する入力信号から前記フィードバック信号を減算して補助歪み補償信号を生成する補助歪み補償部と、
前記N個の歪み補償信号と前記補助歪み補償信号とを合成して合成信号を生成する合成部と、
前記合成信号の電力を増幅する電力増幅部と、
前記電力増幅部の出力信号の一部を分岐させる分岐部と、
前記分岐部で分岐された当該一部の電力を減衰させて前記フィードバック信号を生成し、前記フィードバック信号を前記N個の歪み補償部に供給する減衰部と
を備えることを特徴とする電力増幅回路。
【請求項2】
請求項1記載の電力増幅回路であって、
前記N個の歪み補償部の各歪み補償部は、
前記フィードバック信号を直交復調して復調信号を生成する直交復調部と、
前記N個の帯域信号のうち当該各歪み補償部に入力された帯域信号から前記復調信号を減算して差信号を出力する減算部と、
前記差信号の周波数帯域を制限する帯域制限部と、
前記帯域制限部の出力信号を直交変調して変調信号を生成する直交変調部と
を含むことを特徴とする電力増幅回路。
【請求項3】
請求項記載の電力増幅回路であって、
前記補助歪み補償部は、
前記フィードバック信号を直交復調して復調信号を生成する直交復調部と、
前記入力信号から前記復調信号を減算して差信号を出力する減算部と、
前記差信号の周波数帯域を制限する帯域制限部と、
前記帯域制限部の出力信号を直交変調して変調信号を生成する直交変調部と
を含むことを特徴とする電力増幅回路。
【請求項4】
請求項記載の電力増幅回路と、
前記電力増幅部の出力信号に基づいて無線信号を送信するアンテナ部と
を備えることを特徴とする無線送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅器の非線形な入出力特性(以下「非線形特性」という。)を補償する回路に関し、特に、無線通信技術において使用される電力増幅器の非線形特性を補償する回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信機の構成要素である電力増幅器(Power Amplifier,PA)は、送信信号の電力を増幅してアンテナ素子へ出力する機能を有している。この種の電力増幅器が非線形特性を示す領域で動作するとき、その電力効率(以下、単に「効率」ともいう。)は高くなる反面、当該電力増幅器の非線形特性により送信信号に歪み成分が加わることから信号品質が劣化するという問題がある。そこで、電力増幅器で発生した当該歪み成分を補償する歪み補償技術が広く採用されている。
【0003】
歪み補償技術の1つとしては、カルテシアン・フィードバック・ループ(Cartesian feedback loop)が知られている。カルテシアン・フィードバック・ループを有する電力増幅回路は、入力ベースバンド信号の同相成分(I成分)及び直交成分(Q成分)をアナログ帰還信号の同相成分及び直交成分にそれぞれ加算するアナログ加算器と、このアナログ加算器の出力を直交変調して変調信号を生成する直交変調器と、当該変調信号の電力を増幅する電力増幅器と、この電力増幅器の出力信号から取り出された一部の信号をアナログ帰還信号として負帰還させるフィードバック経路と、そのアナログ帰還信号を直交復調して当該アナログ帰還信号の同相成分及び直交成分を生成する直交復調器とを備えている。この電力増幅回路では、アナログ加算器、直交変調器、電力増幅器、フィードバック経路及び直交復調器がループ回路を構成する。アナログ帰還信号は電力増幅器で発生した歪み成分を含むので、アナログ加算器において当該アナログ帰還信号の同相成分及び直交成分が入力ベースバンド信号の同相成分及び直交成分にそれぞれ加算されることで、電力増幅器の非線形特性を補償することができる。このようなカルテシアン・フィードバック・ループを有する電力増幅回路は、たとえば、特許文献1(国際公開第2014/112382号)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/112382号(たとえば、段落0005〜0021,図10及び図12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のカルテシアン・フィードバック・ループの場合、ループ回路は、電力増幅器で発生する歪み成分を打ち消すように構成されており、高い歪み補償効果を得ることができる。しかしながら、その高い歪み補償効果は、周波数帯域が狭い場合に限られるという課題がある。すなわち、ループ回路における信号の遅延時間が、電力増幅器で生ずる群遅延などの要因により長くなると、周波数が高い領域において発振などの不安定な動作が起きてしまう。上記した従来のカルテシアン・フィードバック・ループでは、そのような不安定な動作を回避するため、電力増幅器の非線形特性を補償することができる周波数帯域(以下、「歪み補償帯域」ともいう。)を狭くせざるを得ないため、カルテシアン・フィードバック・ループを広帯域な信号に適用することが難しかった。
【0006】
上記に鑑みて本発明の目的は、高い歪み補償効果を確保しつつ歪み補償帯域を広帯域化することができる電力増幅回路及び無線送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電力増幅回路は、入力された送信信号の周波数帯域をN個の狭帯域(Nは2以上の整数)に分割して、前記N個の狭帯域をそれぞれ有するN個の帯域信号を生成する帯域分割部と、前記N個の帯域信号からフィードバック信号を減算してN個の歪み補償信号を生成するN個の歪み補償部と、直流成分のみを有する入力信号から前記フィードバック信号を減算して補助歪み補償信号を生成する補助歪み補償部と、前記N個の歪み補償信号と前記補助歪み補償信号とを合成して合成信号を生成する合成部と、前記合成信号の電力を増幅する電力増幅部と、前記電力増幅部の出力信号の一部を分岐させる分岐部と、前記分岐部で分岐された当該一部の電力を減衰させて前記フィードバック信号を生成し、前記フィードバック信号を前記N個の歪み補償部に供給する減衰部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歪み補償部1個あたりの補償帯域幅が狭い場合であっても、電力増幅回路全体の補償帯域幅を広帯域化することができ、広帯域な信号に対して高い歪み補償効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施の形態1の無線送信装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1の無線送信装置における歪み補償部の概略構成を示すブロック図である。
図3図3A図3Cは、パワースペクトルの例を示す図である。
図4】実施の形態1における電力増幅部の出力信号のパワースペクトルの一例を示す図である。
図5】本発明に係る実施の形態2の無線送信装置の概略構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態2の無線送信装置における補助歪み補償部の概略構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態2における電力増幅部の出力信号のパワースペクトルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る種々の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面全体において同一符号を付された構成要素は、同一構成及び同一機能を有するものとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1の無線送信装置1の概略構成を示すブロック図である。この無線送信装置1は、図1に示されるように、同相信号(I信号)及び直交信号(Q信号)からなる送信信号(ベースバンド信号)BSを出力する信号生成部10と、この信号生成部10から入力された送信信号BSの周波数帯域をN個の狭帯域Δ〜Δ(Nは2以上の整数)に分割してこれら狭帯域Δ〜Δをそれぞれ有する帯域信号X〜Xを生成する帯域分割部11と、これら帯域信号X〜Xに対してフィードバック信号FSを用いた歪み補償処理を実行して歪み補償信号Y〜Yを生成する歪み補償部12〜12と、歪み補償信号Y〜Yの電力を合成して合成信号CSを生成する合成部14と、合成信号CSの電力を増幅する電力増幅部15と、電力増幅部15の出力信号の一部を分岐させる方向性結合器からなるカプラ16と、カプラ16で分岐された出力信号の一部の電力を減衰させてフィードバック信号FSを生成する減衰部17と、電力増幅部15の出力信号に基づいて無線信号を送信するアンテナ部19とを備えて構成されている。
【0012】
本実施の形態の電力増幅回路は、帯域分割部11、歪み補償部12〜12,12、合成部14、電力増幅部15、カプラ16及び減衰部17によって構成される。電力増幅部15及び減衰部17は、たとえば、電界効果トランジスタ(FET)またはバイポーラトランジスタで構成可能である。カプラ16は、たとえば、公知の方向性結合器で構成可能である。また、信号生成部10、帯域分割部11、歪み補償部12〜12及び合成部14は、たとえば、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの半導体集積回路で構成されていればよい。
【0013】
図2は、歪み補償部12〜12のうちn番目の歪み補償部12の概略構成を示すブロック図である。ここで、番号nは、1〜Nのうちの任意の整数である。図2に示されるように、歪み補償部12は、減算部21、帯域制限部22、直交変調部23及び直交復調部24を有している。
【0014】
直交復調部24は、減衰部17から入力された無線周波数(RF)帯域のフィードバック信号FSを入力とし、このフィードバック信号FSに対し、局部発振源(図示せず。)から供給された局部発振信号を用いた直交復調を実行してI信号及びQ信号からなる復調信号DSを生成する。減算部21は、帯域分割部11から入力された帯域信号Xから復調信号DSを減算することにより、帯域信号Xと復調信号DSとの差を示す差信号を生成し、この差信号を帯域制限部22に供給する。
【0015】
帯域制限部22は、減算部21から入力された差信号の周波数帯域を所定の周波数帯域に制限する帯域制限フィルタである。直交変調部23は、帯域制限部22の出力信号に対し、局部発振源(図示せず。)から供給された局部発振信号を用いた直交変調を実行してRF帯域の歪み補償信号Yを生成し、この歪み補償信号Yを合成部14に供給する。
【0016】
次に、上記無線送信装置1の構成例について説明する。以下の構成例では、歪み補償部12〜12の個数Nが2個であり、歪み補償部12,12の各々の歪み補償帯域幅は、帯域制限部22,22により、3BW(単位:Hz)に制限されているものとする。また、送信信号BSは、図3Aのパワースペクトルに示されるように、−BW(Hz)から+BW(Hz)までの周波数成分を有する複素ベースバンド信号(I信号及びQ信号からなるベースバンド信号)であるものとする。送信信号BSの帯域幅(以下「信号帯域幅」という。)は、2BWである。
【0017】
このとき、帯域分割部11は、送信信号BSから−BW(Hz)から0Hzまでの帯域の信号成分を抽出し、当該抽出された信号成分を、図3Bのパワースペクトルに示されるようにBW/2(Hz)から3BW/2(Hz)までの狭帯域Δを有する複素ベースバンド信号である帯域信号Xに周波数変換する。同時に、帯域分割部11は、送信信号BSから0Hzから+BW(Hz)までの信号成分を抽出し、当該抽出された信号成分を、図3Cのパワースペクトルに示されるように、−3BW/2(Hz)から−BW/2(Hz)までの狭帯域Δを有する複素ベースバンド信号である帯域信号Xに周波数変換する。
【0018】
歪み補償部12では、減算部21が、帯域信号Xから復調信号DSを減算することで、電力増幅部15で発生した歪み成分が抑制された差信号を生成する。直交変調部23は、減算部21から帯域制限部22を介して入力された差信号を、中心周波数F(単位:Hz)を有する歪み補償信号Yに周波数変換する。この歪み補償信号Yは、合成部14に供給される。
【0019】
一方、歪み補償部12では、減算部21が、帯域信号Xから復調信号DSを減算することで、電力増幅部15で発生した歪み成分が抑制された差信号を生成する。直交変調部23は、減算部21から帯域制限部22を介して入力された差信号を、中心周波数F(単位:Hz)を有する歪み補償信号Yに周波数変換する。この歪み補償信号Yは、合成部14に供給される。
【0020】
合成部14は、歪み補償部12,12から入力された歪み補償信号Y,Yの電力を合成して合成信号CSを生成する。電力増幅部15は、合成信号CSの電力を増幅する。今、電力増幅部15の出力信号のうち中心周波数Fを中心とした±3BW/2(Hz)の周波数範囲内(すなわち、F−3BW/2〜F+3BW/2の周波数範囲内)の信号成分をZとし、電力増幅部15の増幅率をgとし、減衰部17の減衰率をβとし、電力増幅部15で発生した歪み成分のうち、中心周波数Fを中心とした±3BW/2(Hz)の周波数範囲に対応する歪み成分をNとし、直交変調部23及び直交復調部24の増幅率をそれぞれ1であると仮定する。このとき、信号成分Zは、次式(1)で表現される。
={g/(1+gβ)}・X+{1/(1+gβ)}・N (1)
【0021】
増幅率gと減衰率βとの積(=gβ)が1よりも大きい場合、信号成分Zは、近似的に次式(2)で表現され得る。
={1/β}・X+{1/(gβ)}・N (2)
【0022】
式(2)によれば、電力増幅部15で発生する歪み成分Nは、増幅率gと減衰率βとの積に応じて小さくなることが分かる。この場合、歪み成分Nが小さくなる周波数範囲は、帯域制限部22により制限された帯域幅3BW(Hz)に相当する範囲であるため、中心周波数Fを中心とする±3BW/2(Hz)の周波数範囲における歪み成分Nが抑圧される。
【0023】
一方、電力増幅部15の出力信号のうち中心周波数Fを中心とした±3BW/2(Hz)の周波数範囲内(すなわち、F−3BW/2〜F+3BW/2の周波数範囲内)の信号成分をZとし、電力増幅部15の増幅率をgとし、減衰部17の減衰率をβとし、電力増幅部15で発生した歪み成分のうち、中心周波数Fを中心とした±3BW/2(Hz)の周波数範囲に対応する歪み成分をNとし、直交変調部23及び直交復調部24の増幅率をそれぞれ1であると仮定する。中心周波数Fは、次式(3)に示すように設定されるものとする。
=F+3BW (3)
【0024】
このとき、信号成分Zは、次式(4)で表現される。
={g/(1+gβ)}・X+{1/(1+gβ)}・N (4)
【0025】
増幅率gと減衰率βとの積(=gβ)が1よりも大きい場合、信号成分Zは、近似的に次式(5)で表現され得る。
={1/β}・X+{1/(gβ)}・N (5)
【0026】
式(5)によれば、電力増幅部15で発生する歪み成分Nは、増幅率gと減衰率βとの積に応じて小さくなることが分かる。この場合、歪み成分Nが小さくなる周波数範囲は、帯域制限部22により制限された帯域幅3BW(Hz)に相当する範囲であるため、中心周波数Fを中心とする±3BW/2(Hz)の周波数範囲における歪み成分Nが抑圧される。
【0027】
電力増幅部15の出力信号は、信号成分Z,Zの合成により得られる信号と等価である。よって、図4のパワースペクトルに示されるように、歪み補償部12,12により歪み成分N,Nが抑圧された信号の周波数範囲ΔFは、中心周波数Fを中心とする±3BW/2(Hz)の周波数範囲ΔFと、中心周波数Fを中心とする±3BW/2(Hz)の周波数範囲ΔFとで構成される範囲である。すなわち、周波数範囲ΔFは、F−3BW/2(Hz)からF+3BW/2(Hz)までの範囲となる。したがって、本実施の形態は、信号帯域幅2BW(Hz)に対して3倍の帯域幅6BW(Hz)の歪みを補償することが可能である。
【0028】
以上に説明したように実施の形態1の電力増幅回路は、送信信号BSからN個の帯域信号X〜Xを並列に生成する帯域分割部11と、これら帯域信号X〜Xに対してフィードバック信号FSを用いた歪み補償処理を実行して歪み補償信号Y〜Yを生成する歪み補償部12〜12と、歪み補償信号Y〜Yの電力を合成して合成信号CSを生成する合成部14と、合成信号CSの電力を増幅する電力増幅部15とを備えているので、歪み補償部121個あたりの補償帯域幅が狭くても、電力増幅回路全体の補償帯域幅を広帯域化することが可能である。したがって、従来技術と比べると、本実施の形態は、広帯域な信号に対しても十分な歪み補償効果を得ることが可能となる。
【0029】
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図5は、本発明に係る実施の形態2の無線送信装置1Aの概略構成を示すブロック図である。この無線送信装置1Aは、上記実施の形態1の無線送信装置1と同様に、信号生成部10、帯域分割部11、歪み補償部12〜12、電力増幅部15、カプラ16、減衰部17及びアンテナ部19を備えている。本実施の形態の無線送信装置1Aは、直流成分のみを有する入力信号k,kに対してフィードバック信号FSを用いた歪み補償処理を実行して補助歪み補償信号S,Sを生成する補助歪み補償部13,13と、補助歪み補償信号S,S及び歪み補償信号Y〜Yの電力を合成して合成信号CSを生成する合成部14Aとを備えて構成されている。
【0030】
本実施の形態の電力増幅回路は、帯域分割部11、歪み補償部12〜12,12、補助歪み補償部13,13、合成部14A、電力増幅部15、カプラ16及び減衰部17によって構成される。信号生成部10、帯域分割部11、補助歪み補償部13,13、歪み補償部12〜12及び合成部14Aは、たとえば、FPGAまたはASICなどの半導体集積回路で構成されていればよい。
【0031】
図6は、補助歪み補償部13,13のうちm番目の補助歪み補償部13の概略構成を示すブロック図である。ここで、番号mは、1,2のうちのいずれか一方である。図6に示されるように、補助歪み補償部13は、減算部31、帯域制限部32、直交変調部33及び直交復調部34を有している。
【0032】
この補助歪み補償部13は、帯域信号Xに代えて、直流成分のみを有する入力信号kが入力される点を除いて、上記した実施の形態1の歪み補償部12と同じ構成を有する。すなわち、直交復調部34は、減衰部17から入力されたフィードバック信号FSに対し、局部発振源(図示せず。)から供給された局部発振信号を用いた直交復調を実行してI信号及びQ信号からなる復調信号DSを生成する。減算部31は、直流成分のみを有する入力信号kから復調信号DSを減算することにより、入力信号kと復調信号DSとの差を示す差信号を生成し、この差信号を帯域制限部32に供給する。帯域制限部32は、減算部31から入力された差信号の周波数帯域を所定の周波数帯域に制限する帯域制限フィルタである。
【0033】
直交変調部33は、帯域制限部32の出力信号に対し、局部発振源(図示せず。)から供給された局部発振信号を用いた直交変調を実行してRF帯域の補助歪み補償信号Yを生成し、この補助歪み補償信号Yを合成部14Aに供給することとなる。ここで、一方の補助歪み補償部13の直交変調部33は、減算部31から帯域制限部32を介して入力された差信号を、中心周波数F(単位:Hz)を有する補助歪み補償信号Sに周波数変換することができる。他方の補助歪み補償部13の直交変調部33は、減算部31から帯域制限部32を介して入力された差信号を、中心周波数F(単位:Hz)を有する補助歪み補償信号Sに周波数変換することができる。
【0034】
上記した実施の形態1の構成例(歪み補償部12,12が2個のみ)と同様の構成例が採用される場合を考える。中心周波数F,Fは、次式(6),(7)に示すように設定されるものとする。
=F−3BW (6)
=F+3BW (7)
【0035】
上式(2),(4)において、仮に、帯域信号X,Xが零信号である場合でも、上式(2),(4)の右辺第2項の存在により、歪み成分N,Nが抑圧されることが分かる。本実施の形態では、一方の補助歪み補償部13は、F−3BW/2(Hz)からF+3BW/2(Hz)までの周波数範囲ΔFの歪み成分を抑圧することができる。他方の補助歪み補償部13も、F−3BW/2(Hz)からF+3BW/2(Hz)までの周波数範囲ΔFの歪み成分を抑圧することが可能である。
【0036】
したがって、本実施の形態の場合、図7のパワースペクトルに示されるように、歪み補償部12,12及び補助歪み補償部13,13により歪み成分が抑圧される周波数範囲ΔFは、中心周波数Fを中心とする±3BW/2(Hz)の周波数範囲ΔFと、中心周波数Fを中心とする±3BW/2(Hz)の周波数範囲ΔFと、中心周波数Fを中心とする±3BW/2(Hz)の周波数範囲ΔFと、中心周波数Fを中心とする±3BW/2(Hz)の周波数範囲ΔFとで構成される範囲である。すなわち、周波数範囲ΔFは、F−3BW/2(Hz)からF+3BW/2(Hz)までの範囲となる。したがって、本実施の形態は、信号帯域幅2BW(Hz)に対して6倍の帯域幅12BW(Hz)の歪みを補償することが可能である。
【0037】
以上に説明したように実施の形態2の電力増幅回路は、上記実施の形態1の電力増幅回路と同様に、歪み補償部121個あたりの補償帯域幅が狭くても、電力増幅回路全体の補償帯域幅を広帯域化することが可能である。本実施の形態の電力増幅回路は、更に補助歪み補償部13,13を備えるため、実施の形態1の場合と比べると、更に電力増幅回路全体の補償帯域幅を広帯域化することができる。
【0038】
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これら実施の形態は本発明の例示であり、これら実施の形態以外の様々な形態を採用することもできる。なお、本発明の範囲内において、上記実施の形態1,2の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、または各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る電力増幅回路は、高い歪み補償効果を確保しつつ歪み補償帯域を広帯域化することができることから、電力増幅器を使用する無線通信技術において好適に使用され得る。
【符号の説明】
【0040】
1,1A 無線送信装置、10 信号生成部、11 帯域分割部、12〜12,12 歪み補償部、13,13,13 補助歪み補償部、14,14A 合成部、15 電力増幅部、16 カプラ、19 アンテナ部、21 減算部、22 帯域制限部、23 直交変調部、24 直交復調部、31 減算部、32 帯域制限部、33 直交変調部、34 直交復調部。
【要約】
電力増幅回路は、送信信号(BS)からN個の帯域信号(X〜X)を生成する帯域分割部(11)と、帯域信号(X〜X)からフィードバック信号(FS)を減算してN個の歪み補償信号(Y〜Y)を生成するN個の歪み補償部(12〜12)と、歪み補償信号(Y〜Y)を合成して合成信号(CS)を生成する合成部(14)と、合成信号(CS)の電力を増幅する電力増幅部(15)と、電力増幅部(15)の出力信号の一部を分岐させる分岐部(16)と、分岐部(16)で分岐された当該一部の電力を減衰させてフィードバック信号(FS)を生成する減衰部(17)とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7