特許第6444601号(P6444601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444601
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】内接歯車ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20181217BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F04C2/10 341B
   F04C2/10 311Z
   F04C15/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-46387(P2014-46387)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2014-181699(P2014-181699A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2017年2月20日
(31)【優先権主張番号】10 2013 204 616.2
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】レーネ・シェップ
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・アラーゼ
(72)【発明者】
【氏名】エドガー・クルツ
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−506088(JP,A)
【文献】 特開2000−145659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯歯車(2)と、該内歯歯車(2)内に配置されて該内歯歯車(2)と噛み合っているピニオン(3)と、該ピニオン(3)および前記内歯歯車(2)の端面に当接している相対回転不能で且つ軸線方向に可動なアキシアルディスク(20)とを備えた液圧式車両ブレーキ装置用内接歯車ポンプにおいて、前記アキシアルディスク(20)の、前記ピニオン(3)および前記内歯歯車(2)とは逆の側に、前記アキシアルディスク(20)を前記ピニオン(3)および前記内歯歯車(2)の前記端面のほうへ付勢する、軸線方向に可動な中間部材(22)が配置されていて、
前記中間部材(22)が、前記アキシアルディスク(20)とは逆の側に、前記内接歯車ポンプ(1)の吐出圧で付勢される環状段部(27)を有していて、
前記環状段部(27)への圧力の作用は、シーリングエッジ(28)の密接を生じさせ、該シーリングエッジ(28)は前記中間部材(22)の周部に、該中間部材(22)と一体で周回するように延在するパッキンであることを特徴とする内接歯車ポンプ。
【請求項2】
前記中間部材(22)が前記内接歯車ポンプ(1)の吐出圧によって軸線方向において前記アキシアルディスク(20)の方向に付勢されることを特徴とする、請求項1に記載の内接歯車ポンプ。
【請求項3】
前記内接歯車ポンプ(1)のポンプ吐出部(26)が、前記ピニオン(3)と前記内歯歯車(2)との間にあるポンプ室(7)から前記アキシアルディスク(20)と前記中間部材(22)とを通り、該中間部材(22)を、前記アキシアルディスク(20)とは逆の側で、前記内接歯車ポンプ(1)の前記吐出圧で付勢することを特徴とする、請求項2に記載の内接歯車ポンプ。
【請求項4】
前記内接歯車ポンプ(1)のポンプ吐出部(26)が前記中間部材(22)を通って該中間部材(22)の周部へ通じていることを特徴とする、請求項3に記載の内接歯車ポンプ。
【請求項5】
前記ピニオン(3)と前記内歯歯車(2)とが軸線方向に可動であることを特徴とする、請求項1に記載の内接歯車ポンプ。
【請求項6】
前記内接歯車ポンプ(1)が軸受ブラケット(31)を有し、該軸受ブラケットが、前記内接歯車ポンプ(1)のポンプ軸(5)を回転可能に支持する軸受(32)を保持していることを特徴とする、請求項1に記載の内接歯車ポンプ。
【請求項7】
前記軸受(32)が、前記ポンプ軸(5)を軸線方向において保持し且つ前記軸受ブラケット(31)によって軸線方向に保持される固定軸受であることを特徴とする、請求項に記載の内接歯車ポンプ。
【請求項8】
前記ピニオン(3)が前記ポンプ軸(5)上に相対回転不能に且つ軸線方向に可動に配置されていることを特徴とする、請求項に記載の内接歯車ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文の構成を備えた液圧式車両ブレーキ装置用内接歯車ポンプに関するものである。このような内接歯車ポンプは、スリップコントロール式および/またはパワー式車両ブレーキ装置において通常使用されるピストンポンプの代わりに使用され、必ずしも適切な表現ではないが、逆送ポンプと呼ばれることがある。
【背景技術】
【0002】
内接歯車ポンプは公知であり、内歯歯車と、該内歯歯車内に偏心して配置されるピニオンとを有し、ピニオンは周部分で内歯歯車と噛み合っている。内歯歯車は内歯の歯車であり、ピニオンは外歯の歯車であり、内歯歯車とピニオンとは内接歯車ポンプの歯車と見なされる。ピニオンという名称と内歯歯車という名称はこれらを区別するために用いられる。これらの歯車が噛み合っている周部分では、内歯歯車とピニオンとの間にある三日月状の自由空間(ここではポンプ室と記す)が対向している。ポンプ室内には仕切り部材が配置され、該仕切り部材は両歯車の歯先に外側と内側から当接し、ポンプ室を吸込み室と加圧室とに分割させている。仕切り部材はその典型的な形状から三日月体または三日月状部材と呼ばれることもある。仕切り部材の他の名称は充填部材である。歯車は回転駆動によって流体を吸込み室から加圧室へ搬送する。仕切り部材を設けていない内接歯車ポンプも知られており、区別のために環状歯車ポンプと呼ばれる。
【0003】
ポンプ室を側部から画成し密封するため、制御円板または加圧円板、または、制御板または加圧板とも呼ばれるアキシアルディスクが知られている。アキシアルディスクは相対回転不能であり、加圧域で内接歯車ポンプの吐出圧によって付勢される。加圧域は、アキシアルディスクの、ほぼ加圧室を覆っているピニオンおよび内歯歯車とは逆の側に設けた、典型的には三日月状の平坦な凹部である。加圧域を密封するには加圧域パッキンが必要であり、ほとんどの場合支持リングが設けられ、支持リングは、加圧域パッキン内で支配的な内接歯車ポンプの吐出圧に対して加圧域パッキンを外側から支持する。
【発明の概要】
【0004】
請求項1の構成を備えた本発明による内接歯車ポンプは、ピニオンと、該ピニオンが内設されて噛み合っている内歯歯車と、ピニオンおよび内歯歯車の片側に設けられ、ピニオンおよび内歯歯車の端面に当接して該ピニオンと内歯歯車との間のポンプ室を側方から覆っているアキシアルディスクとを有している。アキシアルディスクは必ずしも円板の形状を有している必要はない。同様にピニオンおよび内歯歯車の反対側にアキシアルディスクが設けられていてよいが、第2のアキシアルディスクを設ける必要はない。本発明による内接歯車ポンプは、さらに、軸線方向に可動な中間部材を有し、該中間部材は、アキシアルディスクの、ピニオンおよび内歯歯車とは逆の側に配置され、アキシアルディスクをピニオンおよび内歯歯車の端面のほうへ付勢するとともに、ピニオンと内歯歯車との間のポンプ室を吸込み室と加圧室とに分割している仕切り部材(もしこれが設けられていればのことであるが)の端面のほうへも付勢することで、ポンプ室を、または、いかなる場合も加圧室を、側方から覆って密封する。この場合、液密または気密な密封は必要なく、アキシアルディスクは、アキシアルスライドベアリングに比肩しうるようにピニオンおよび内歯歯車の端面に当接することができ、その結果漏れが発生する。小さな漏れと小さな摩擦との間で最善の妥協が求められる。本発明の利点は、加圧域と、特に加圧域パッキンおよびその支持リングとを省略できることである。これによってそれらの取り付けも省略できる。
【0005】
従属項は、請求項1に記載した発明の有利な構成および更なる構成を対象としている。
【0006】
中間部材は、アキシアルディスクをたとえば弾性でピニオンおよび内歯歯車のほうへ付勢することができる。好ましくは、中間部材は内接歯車ポンプの吐出圧でアキシアルディスクのほうへ付勢されて、該アキシアルディスクをピニオンおよび内歯歯車並びに(仕切り部材が設けられていれば)仕切り部材の端面に対して押圧させる(請求項2)。これにより、アキシアルディスクをピニオンおよび内歯歯車並びに(仕切り部材が設けられていれば)仕切り部材の端面に対して押圧させるスラスト力は、ピニオンと内歯歯車との間の加圧室内の圧力に対応する内接歯車ポンプの吐出圧に依存している。これが意味することは、アキシアルディスクは、加圧室内の圧力が低い場合には小さな力で、加圧室内の圧力が高い場合には大きな力で軸線方向にピニオンおよび内歯歯車並びに(仕切り部材が設けられていれば)仕切り部材の端面に対して押圧せしめられるということであり、加圧室内の圧力が補償される。
【0007】
請求項3によれば、内接歯車ポンプのポンプ吐出部は、ポンプ室から、或いは、加圧室から、アキシアルディスクと中間部材とを通っている。このようにして、内接歯車ポンプの加圧室内の圧力に依存して中間部材を軸線方向に簡単に付勢することが実現される。
【0008】
請求項6によれば、たとえば内接歯車ポンプのポンプケースまたは受容部での密封のために、周回するように延在するパッキンが、中間部材の周部に該中間部材と一体に設けられる。この構成により、内接歯車ポンプを密封するための別個のパッキンを省略できる。
【0009】
本発明による内接歯車ポンプは、特に液圧式、スリップコントロール式および/またはパワー式車両ブレーキ装置のためのハイドロポンプとして、通常使用されるピストンポンプの代わりに設けられている。スリップコントロール式車両ブレーキ装置では、ハイドロポンプは逆送ポンプとも呼ばれる。本発明による内接歯車ポンプは、ブレーキ圧生成、および/または、パワー式車両ブレーキ装置を操作するためのスリップコントロールまたはブレーキ圧生成時にブレーキ液を車輪ブレーキからブレーキマスタシリンダへ逆送するために用いられる。好ましくは、内接歯車ポンプはハイドロリックブロックの受容部に組み込まれる。このようなハイドロリックブロックはスリップコントロールにおいて公知であり、スリップコントロールシステムの個々の液圧構成要素の機械的固定および液圧相互接続に用いられる。このような構成要素は、内接歯車ポンプ以外にスリップコントロール用のソレノイド弁、ハイドロアキュムレータである。ハイドロリックブロックは通常金属、特にアルミニウムから成る直方体状の部材であり、その中に、スリップコントロールシステムの液圧構成要素のための受容部として筒状の、しばしば径を段階付けした複数の凹部と、受容部またはその中に組み込まれている構成要素を結合させ、または、液圧相互接続させる複数の孔とが設けられている。
【0010】
本発明の他の構成は、請求の範囲と関連している本発明の1実施形態に関する以下の説明と、図面とから明らかである。次に、本発明を図面に図示した実施形態に関し詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による内接歯車ポンプを、図2の線I−Iに沿って角度を成すように切断した軸断面図である。
図2図1の内接歯車ポンプの端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に図示した本発明による内接歯車ポンプ1は2つの歯車2,3を有し、すなわち内歯の内歯歯車2と外歯の歯車とを有している。外歯の歯車をここではピニオン3と記す。ピニオン3は内歯歯車2内に偏心して配置され、両歯車2,3は互いに平行な軸線を有して互いに噛み合っている。内歯歯車2は、ポンプケースまたはハイドロリックブロック40内に回転可能に滑り支承されている軸受リング4に圧入されている。ピニオン3はポンプ軸5上に相対回転不能に且つ軸線方向に変位するように配置されている。ピニオン3をポンプ軸5上で相対回転不能に且つ軸線方向に可動に保持するため、ここで説明している図示の実施形態では、ピニオン3とポンプ軸5とは合同の多歯プロファイル6を有している。内接歯車ポンプ1を作動させるため、ポンプ軸5を回転駆動させ、これと一緒に、ポンプ軸5上の相対回転不能なピニオン3が回転し、噛み合っている内歯歯車2を回転駆動させる。回転方向を図2で矢印Pで示した。
【0013】
歯車2,3は、互いに噛み合っている周部分において、互いの間で三日月状のポンプ室7を画成している。ポンプ室7には、複数に分割した三日月状の仕切り部材8が配置されている。仕切り部材は部分三日月状または半三日月状と見なすこともでき、その形状から三日月状部材または三日月体と呼ばれることもある。仕切り部材8はポンプ室7を吸込み室9と加圧室10とに仕切っている。吸込み室9には吸込み孔11が開口している。内接歯車ポンプ1の歯車2,3の歯先は仕切り部材8の外面または内面に当接し、歯車2,3の回転駆動の際に仕切り部材8の外面または内面に沿って滑動する。仕切り部材8は歯車2,3と同じ幅であり、両歯車は同じ幅を有している。仕切り部材8は歯車2,3の歯中間空間内の液体容積部を取り囲んでおり、その結果歯車2,3の回転駆動は液体を吸込み室9から加圧室10へ搬送させる。仕切り部材8は吸込み室側端部において対向支持部材12で支持され、対向支持部材はポンプ室7を横切っている、すなわち軸線平行に貫通しているピンによって形成されている。
【0014】
仕切り部材8は、円弧状の外側脚部13と、同様に円弧状の内側脚部14とを有し、これら脚部は双方とも対向支持部材12から加圧室10の方向に延在している。外側脚部13の外面は内歯歯車2の歯先円と同じ半径で円弧状に湾曲し、該外面には内歯歯車2の歯の歯先が密接して、回転駆動の際にこれに沿って滑動する。内側脚部14の内面はピニオン3の歯先円と同じ半径で円弧状に湾曲し、該内面にはピニオン3の歯の歯先が密接して、回転駆動の際にこれに沿って滑動する。歯車2,3の歯先は仕切り部材8の脚部13,14に液密または気密状態で密接している必要はなく、漏れ流を許容する。脚部13,14は対向支持部材および吸込み室側端部で互いに枢着されている。脚部13,14の間に配置されるU字状の脚ばね15は脚部13,14を互いに引き離すように押し、これによって外側脚部13を内歯歯車2の歯先に対し押圧させ、内側脚部14をピニオン3の歯先に対し押圧させる。脚部13,14の間にしてその対向支持部材および吸込み室側端部付近に配置されている密封要素16は、脚部13,14の間と、後述するアキシアルディスク20,21の間とを密封する。仕切り部材8は加圧室側端部において開口しており、その結果脚部13,14の間の中間空間は加圧室10と連通している。
【0015】
内接歯車ポンプ1は、その歯車2,3の各端面に、アキシアルディスク20,21を有している。ポンプ軸5と対向支持部材12を形成しているピンとがこのアキシアルディスク20,21を貫通し、これによってアキシアルディスクが相対回転不能に保持されるとともに、軸線方向には可動である。アキシアルディスク20,21はポンプ軸5と対向支持部材12とを貫通させるために複数の穴を備えている。これらの穴は、周方向において、これらの穴を部分的に覆っている吸込み室9から180゜超にわたって仕切り部材8および加圧室10を越えて延在している。吸込み孔11は、歯車2,3の回転方向Pに見てアキシアルディスク20,21の手前でポンプ室7の吸込み室9に開口している。吸込み孔11は図1の断面の外側にある。
【0016】
内接歯車ポンプ1は、歯車2.3とは逆の側の、軸線方向において両アキシアルディスクのうちの一方のアキシアルディスク20の横に、実質的に筒状の中間部材22を有し、該中間部材をポンプ軸5が貫通している。中間部材22とポンプ軸5との間を密封するため、中間部材22は軸封部23としてラジアルシャフトシールリングを有している。
【0017】
内接歯車ポンプ1のポンプ吐出部26は、加圧室10から、片側では内歯歯車2およびピニオン3と仕切り部材8との間にあって他の側では内歯歯車およびピニオンと中間部材22との間にあるようにアキシアルディスク20に設けた貫通穴と、中間部材22内で当初は軸線平行に延在してその後半径方向外側へ延びている屈曲孔とを通って、中間部材22の周部へ通じている。ポンプ吐出部26は、アキシアルディスク20から中間部材22への移行部において、これを取り囲むパッキンによって密封されていてよい。このようなパッキンを設ける場合、該パッキンはたとえばポンプ吐出部26を取り囲む隆起した密封隆起部、パッキンフィンまたはパッキンリップとして、プラスチックから成る中間部材22と一体であるのが好ましい。また、前記パッキンをアキシアルディスク20と一体に形成すること、或いは、ポンプ吐出部26を取り囲む別個のパッキン、たとえばパッキンリングを設けることが可能である。本実施例では、アキシアルディスク20と中間部材22との間でポンプ吐出部26を密封するためのパッキンは特に設けられておらず、中間部材22がアキシアルディスク20に面当接して密封している。
【0018】
中間部材22は環状段部27でもってアキシアルディスク20から離間する方向に先細りになっている。環状段部は、本実施形態では、軸線方向において中間部材22の略中心にある。環状段部27により、周回するように延在して中間部材22をその外周において密封するシーリングエッジ28が形成されている。ポンプ吐出部26は、環状段部27の、アキシアルディスク20とは逆の側で、中間部材22の周部で開口しており、その結果環状段部27はポンプ吐出部26を通じて加圧室10と連通し、これによって内接歯車ポンプ1の吐出圧の作用を受けている。環状段部27に対する圧力の作用はスラスト力を生じさせ、該スラスト力は中間部材22をアキシアルディスク20に対し密接させ、アキシアルディスク20をピニオン3および内歯歯車2並びに仕切り部材8の端面に密接させる。
【0019】
ピニオン3と内歯歯車2と仕切り部材8とは軸線方向に可動であり、それらの端面でもってアキシアルディスク21に対し中間部材22とは反対側で押圧され、その結果ポンプ室7またはいかなる時も加圧室10は、ピニオン3および内歯歯車2並びに仕切り部材8の両側で密封されている。中間部材22とは反対側にあるアキシアルディスク21は、内接歯車ポンプ1が組み込まれている受容部39の底部に当接している。これによってアキシアルディスク21は軸線方向において支持されている。内歯歯車2が圧入されている軸受リング4は、両アキシアルディスク20,21と歯車2,3とを合わせたものよりも幅狭であり、その結果内歯歯車2は軸線方向に可動である。アキシアルディスク20,21と歯車2,3との間の密封は完全に液密または気密なものではなく、アキシアルディスク20,21は、アキシアルスライドベアリングに比肩しうるように、歯車2,3の端面に当接しており、その結果漏れが優勢である。良好な圧力作用と低摩擦との間に満足な妥協を見いだす必要がある。中間部材22はその環状段部27において内接歯車ポンプ1の加圧室10内で支配的な吐出圧の作用を受けるので、圧力平衡が優勢であり、アキシアルディスク20,21は低圧の場合小さな力で内接歯車ポンプ1の歯車2,3の端面を押す。環状段部27の面の大きさは該環状段部27の半径方向の高さに依存しており、これによってスラスト力を発生させることができる。
【0020】
環状段部27への圧力の作用は、シーリングエッジ28の密接をも生じさせる。シーリングエッジ28は、一般的には、中間部材22の周部に設けた、周回するように延在するパッキンと見なすことができ、シーリングエッジ28または前記パッキンは、プラスチックから成っている中間部材22と一体である。
【0021】
中間部材22は、アキシアルディスク20とは逆の側でパッキンリング29(図示した実施形態ではOリング)で密封されている。シーリングエッジ28とパッキンリング29との間には、周回するように延在する溝30があり、この溝の中にポンプ吐出部26が開口し、ポンプ吐出部の一部がある。
【0022】
内接歯車ポンプ1は、アキシアルディスク20とは逆の側にして軸線方向において中間部材22の横に、軸受32を備えた軸受ブラケット31を有している。軸受ブラケット31は薄板から成る円形穴付き円板であり、この円形穴付き円板に深絞りによって容器状で筒状の軸受受容部33が軸受32のために形成され、該軸受受容部に軸受32が圧入されている。図示した実施形態では、軸受32は玉軸受であり、その外レースは前述のように軸受ブラケット31の軸受受容部33に圧入され、内レースにはポンプ軸5が圧入されている。従って軸受32は、本実施形態では、ポンプ軸5を軸線方向に位置固定して保持する固定軸受である。ポンプ軸5は、ピニオン3とは反対の側で軸受ブシュ34で回転可能に支持され、該軸受ブシュ内でポンプ軸受5は軸線方向にも可動であり、すなわち軸受ブシュ34はポンプ軸5を可動に支持する可動軸受である。
【0023】
軸受32はポンプ軸5およびピニオン3と同軸であり、従って内歯歯車2内でのピニオン3の偏心に対応して、内歯歯車2に対し、且つ軸受ブラケット31または内歯歯車2に同軸のその周部に対し偏心している。
【0024】
ポンプ軸5は、これを取り囲んでいる環状隙間35でもって軸受ブラケット31内の穴を貫通している。軸受ブラケット31の、中間部材22とは逆の側には、駆動歯車36としての歯車がポンプ軸5に圧着され、該歯車は電動駆動可能な歯車37と噛み合っている。
【0025】
軸受32は、中間部材22の側で、軸受ブラケット31の軸受受容部33から軸線方向へわずかに突出して、中間部材22の筒状凹部38に係合し、これによって中間部材22が心合わせされている。
【0026】
内接歯車ポンプ1は、ポンプケースをカートリッジの形状でも有していてよい(図示せず)。本実施形態では、内接歯車ポンプ1はハイドロリックブロック40の受容部39に挿着されている。ハイドロリックブロックは液圧式車両ブレーキ装置のスリップコントロールシステムから公知であり、スリップコントロールシステムの個々の液圧構成要素の機械的固定および液圧相互接続のために用いられる。典型的には、ハイドロリックブロックは金属(ほとんどの場合アルミニウム)から成る直方体状部材であり、ハイドロポンプ、ソレノイド弁、ハイドロリックリザーバーのような液圧構成要素のための受容部として複数の凹部を有し、これらの凹部は複数の孔によって結合され、すなわち互いに液圧接続されている。これらの構成要素を備えたハイドロリックブロックは、スリップコントロールシステムのハイドロリックアッセンブリと見なすこともでき、すなわち各ブレーキ回路に対しては1つの内接歯車ポンプ1を有し、2回路型車両ブレーキ装置に対しては、電動駆動可能な歯車37によって好ましくは一緒に駆動される2つの内接歯車ポンプ1を有している。
【0027】
内歯歯車2およびピニオン3の、中間部材22とは反対の側にあるアキシアルディスク21は、受容部39の底部に載置されている。吸込み孔11は受容部39の底部において軸線平行に吸込み室9に開口し、すなわちアキシアルディスク21の外側に開口している。吸込み孔11はアキシアルディスク21によって覆われていない。吸込み孔11は図2では図の面の手前で開口しており、このためその位置を一点鎖線で示した。図1では吸込み孔は断面の外側にあるので、見えない。
【0028】
中間部材22を取り囲み、ポンプ吐出部26が開口している溝30には、ハイドロリックブロック40に設けた孔が開口し、この孔を通じて、スリップコントロールシステムの他の図示していない複数の液圧構成要素が内接歯車ポンプ1に接続されている。図1ではこの孔は中間部材22によって覆われているので、見えない。
【0029】
軸受ブラケット31は、受容部39の開口部付近にある環状段部41において受容部39に挿着され、かしめ部42によって固定されている。
【0030】
内接歯車ポンプ1は、図示していない液圧式自動車ブレーキ装置のハイドロポンプとして設けられ、そこではいわゆるアンチロックブレーキシステム、アンチスピンレギュレーションシステムおよび/またはドライブダイナミックコントロールシステムのようなスリップコントロール用の逆送ポンプとして、および/または、液圧によるパワー式車両ブレーキ装置でブレーキ圧発生用の逆送ポンプとして用いられる。上記のスリップコントロールシステムに対しては、ABS,ASR,FDR,ESPのような略語が慣用され、ドライブダイナミックコントロールシステムは通称的にエレクトロニックスタビリティプログラムとも呼ばれる。
【符号の説明】
【0031】
1 内接歯車ポンプ
2 内歯歯車
3 ピニオン
5 ポンプ軸
7 ポンプ室
20 アキシアルディスク
22 中間部材
26 ポンプ吐出部
27 環状段部
28 パッキン
31 軸受ブラケット
32 軸受
図1
図2