特許第6444612号(P6444612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6444612液体を案内する原動機付き車両用導管と導管コネクタを接続するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444612
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】液体を案内する原動機付き車両用導管と導管コネクタを接続するための方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 13/02 20060101AFI20181217BHJP
   F16L 11/127 20060101ALI20181217BHJP
   B29C 65/36 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F16L13/02
   F16L11/127
   B29C65/36
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-92230(P2014-92230)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2014-219099(P2014-219099A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】13166901.2
(32)【優先日】2013年5月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503126212
【氏名又は名称】ティ・アイ・オートモーティヴ(フルダブリュック)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】イーリス・バルテル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・イェンゼン
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0200342(US,A1)
【文献】 特開昭62−004994(JP,A)
【文献】 特開2005−233319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 13/02
B29C 65/36
F16L 11/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を案内する原動機付き車両用導管(2)と導管コネクタ(1)を接続するための方法であって、
前記導管(2)が合成樹脂から、あるいは実質的に合成樹脂から成
導管(2)の導管端部(6)が、前記導管コネクタ(1)の周囲を取囲む、導管コネクタ(1)の収容スロット(7)内に差込まれ
前記収容スロット(7)の一つあるいは複数の壁部(8,9)の少なくとも一部が、合成樹脂から成
収容スロット(7)に接してあるいは収容スロット(7)内に、少なくとも一つの伝導要素(10)が配置され
前記伝導要素(10)が電磁誘導により加熱され
この加熱の結果として、導管端部(6)の少なくとも合成樹脂領域が溶け、従って導管端部(6)が、収容スロット(7)の一つあるいは複数の壁部(8,9)と溶接され
少なくとも一つの伝導要素(10)が、収容スロット(7)の周囲を環状に取り囲んでいる、
ものにおいて、
伝導要素(10)の肉厚が導管(2)の肉厚に一致し、伝導要素(10)が、軸方向に収容スロット(7)に接触していることを特徴とする方法。
【請求項2】
原動機付き車両用導管(2)が、多層の導管(2)として構成されており、導管(2)の外側層(3)および/または内側層(5)が合成樹脂から成ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
導管(2)の外側層(3)が“ポリアミド、ポリフェニルサルファイド、ポリフタルアミド”のグループから選択される少なくとも一つのポリマーから成ることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
導管(2)の内側層(5)が、“ポリアミド、フッ素ポリマー、ポリフェニルサルファイド、ポリブチレンナフタレート”のグループから選択される少なくとも一つのポリマーから成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
導管コネクタ(1)の収容スロット(7)の壁部(8,9)が、合成樹脂から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
導管(2)の横断面が円形に構成されており、収容スロット(7)が円筒形か、あるいは横断面が円形に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
導管端部(6)が収容スロット(7)内に差込まれた状態で導管端部の端面でもって金属要素(10)に当接するように、伝導要素(10)が配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
導管端部(6)が、少なくともその端面において、少なくとも外側層(3)および/または内側層(5)で溶解され、従って導管端部(6)が収容スロット(7)の一つの壁部あるいは複数の壁部(8,9)と溶接されることを特徴とする請求項2〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
導管コネクタ(1)の収容スロット(7)の内側壁部(8)および/または外側壁部(9)が、少なくとも領域毎に溶解され、従って導管端部(6)が収容スロット(7)の一つあるいは複数の壁部(8,9)と溶接されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
導管端部(6)が、押込み嵌合でかつ遊びなく収容スロット(7)内に差込まれることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
収容スロット(7)の長さが、導管コネクタ(1)の長さの少なくとも25%に達することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を案内する原動機付き車両用導管と導管コネクタを接続するための方法に関し、前記導管は合成樹脂から、あるいは実質的に合成樹脂から成る。導管コネクタと液体を案内する原動機付き車両用導管から成る本発明によるユニットは、特に原動機付き車両の内燃機関用の燃料を通すために設けられている。しかし基本的に本発明によるシステムは、原動機付き車両の触媒システムの範囲において、さらに尿素溶液あるいは水を含む尿素溶液を通すためにも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
最初に挙げた様式の方法は、実務経験上様々な実施形態において知られている。これらの公知の方法により製造される、導管コネクタと導管から成るユニットの場合、導管の導管端部が損傷もしくは不利な影響にさらされているという問題がある。特に多層導管の場合、層の層間剥離の問題がある。さらに導管端部は、例えば塩溶液およびそのような溶液の影響のような化学製品による影響に対して十分でないことが多い。液体を案内する原動機付き車両用導管と導管コネクタを接続するためのこれまで知られた方法には改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/200342号明細書
【特許文献2】米国特許第3238346号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2172328号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2748415号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それに対して本発明の根底をなす技術的課題は、先に説明した短所が有効にかつ常に安全側に制御して防止される、冒頭で挙げた方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するために、本発明は、液体を案内する原動機付き車両用導管と導管コネクタを接続するための方法であって、
前記導管が合成樹脂から、あるいは実質的に合成樹脂から成ること、
導管の導管端部が、前記導管コネクタの周囲取囲む、導管コネクタの収容スロット内に差込まれること、
好ましくは前記収容スロットの一つあるいは複数の壁部の少なくとも一部が、合成樹脂から成ること、
収容スロットに接してあるいは収容スロット内に、少なくとも一つの伝導要素が配置されていること、
前記伝導要素が電磁誘導により加熱されること、そして
この加熱の結果として、導管端部の少なくとも合成樹脂領域が溶け、従って導管端部が、収容スロットの一つあるいは複数の壁部と溶接されることを特徴とする方法を示す。伝導要素は電気伝導体であるのが特に好ましい。例えば伝導要素は金属要素あるいはほぼ電気的に伝導性の合成樹脂から成る導体要素である。
【0006】
液体を案内する原動機付き車両用導管とは、液体の媒体を通すための、とりわけ原動機付き車両において動力用燃料を通すための特に導管を指す。しかし基本的に、原動機付き車両用導管は、尿素溶液あるいは水を含む尿素溶液を通すためにも使用できる。以下、原動機付き車両用導管という概念の代わりに単純に導管という概念を使用する。すなわち、本発明の範囲内には、液体の媒体あるいは液状の媒体が、導管を通ってかつ導管コネクタを通って案内されることが含まれる。その上本発明の範囲内には、導管コネクタがこれに加えて液体の媒体を貫流させるための内部管路を備えていることが含まれる。導管コネクタが別の管路を接続するために、あるいは貯蔵槽等のような、ユニットを接続するために設けられていると有利である。導管コネクタが迅速コネクタあるいはいわゆるクイックコネクタであるのが好ましい。
【0007】
本発明の範囲内には、収容スロットの一つあるいは複数の壁部が、収容される導管端部の方を向いた壁部あるいは内側壁部であることが含まれる。導管端部はその外壁および/またはその内壁でもって、収容スロットの一つあるいは複数の壁部に直接当接するのが効果的である。収容スロットの一つあるいは複数の壁部と導管端部の接続は、本発明によれば誘導溶接を介して行われる。一般的にあるいは従来技術から知られた誘導装置は、誘導溶接接合部を作るために使用されるのが効果的である。この目的で導管コネクタの少なくとも一部を取囲む少なくとも一つの誘導コイルを使用するのが有利である。誘導溶接は、
電磁交番磁界を用いて行われ、この電磁交番磁界は電波により実行されるのが効果的である。
【0008】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、原動機付き車両用導管は、多層の導管として構成されている。多層の導管の外側層および/または内側層は合成樹脂から成るのが有利である。本発明の範囲内では、この場合は溶接された誘導溶接法により溶接可能な合成樹脂であることが含まれる。誘導溶接法において導管の溶接に必要な加熱は伝導要素により行われるのが効果的である。多層の導管の層あるいは内側層は、金属層としてあるいはそのように構成されていてもよい。
【0009】
本発明の推奨される実施形態によれば、導管の外側層は“ポリアミド、ポリフェニルサルファイド、ポリフタルアミド”のグループから選択される少なくとも一つのポリマーから成る。本発明の範囲内では、導管の外側層が導管の機械的強度あるいは安定性を保障することが含まれている。本発明の特に好ましい実施形態によれば、導管の外側層はポリアミドから成る。本発明の推奨される実施形態は、導管の内側層が、“ポリアミド、フッ素ポリマー、ポリフェニルサルファイド、ポリブチレンナフタレート”のグループから選択される少なくとも一つのポリマーから成ることを特徴とする。本発明の実施変形によれば、原動機付き車両用導管の内側層は、導電的に構成されている。この目的で、内側層の金属あるいは合成樹脂には導電性カーボンブラックおよびそのような物のような導電性の添加物が供給される。
【0010】
本発明の範囲内では、導管コネクタの収容スロットの壁部が好ましくは繊維強化された合成樹脂から成ることが含まれる。壁部は場合によっては、繊維強化されたポリアミドあるいはポリフタルアミドから成るか、あるいはほぼこれらから成ることも可能である。ほぼこれらから成るとは、ここでは特に収容スロットの壁部が少なくとも80重量%まで、あるいは少なくとも90重量%まで、好ましくは繊維強化された合成樹脂から、あるいは好ましくは繊維強化されたポリアミドから、あるいは場合によっては繊維強化されたポリフタルアミドから成ることを意味する。繊維強化として、ガラス繊維を使用するのが効果的である。
【0011】
導管コネクタの横断面は円形に構成されているのが好ましく、収容スロットは円筒形か、あるいは横断面が円形に構成されているのが好ましい。しかし原則として、本発明の範囲内では、導管コネクタのためのあるいは収容スロットのための別の横断面も可能である。
【0012】
本発明の範囲内では、導電性の伝導要素が本発明による方法のために使用されることが含まれる。この伝導要素は、特に銅、鋼、あるいはそのような金属から成っていてもよい。伝導要素から成る金属は銅よりも低い電気的伝導率を備えているのが特に好ましい。本発明の著しく特に好ましい実施形態によれば、少なくとも一つの伝導要素は、導管コネクタの周囲をあるいは収容スロットの周囲を取囲んでいる。少なくとも一つの伝導要素は、環状にあるいは円筒状に構成されており、かつ横断面は円形に構成されているのが効果的である。本発明の特に推奨される実施形態は、導管端部が収容スロット内に差込まれた状態で導管端部の端面でもって少なくとも一つの金属要素に当接するように、少なくとも一つの伝導要素が配置されていることを特徴とする。さらに、導管端部の合成樹脂の溶解は導管端部の端面の領域で行われるのが効果的である。本発明の範囲内では、好ましくは多層導管の導管端部は、少なくともその端面において、少なくとも外側層および/または内側層で溶解され、従って導管端部は収容スロットの一つの壁部あるいは複数の壁部と溶接される。
【0013】
導管コネクタの収容スロットの内側壁部および/または外側壁部は、少なくとも領域毎に溶解され、従って導管端部は収容スロットの内側壁部および/または外側壁部と溶接される。さらに導管端部あるいは導管端部の端面は、少なくとも領域毎に溶解され、収容スロットの内側壁部および/または外側壁部は、少なくとも領域毎に溶解され、従って導管コネクタの導管端部と収容スロットの間の材料を溶かした溶接部あるいは接合部を製造することができる。
【0014】
本発明の範囲内では、原動機付き車両用導管の導管端部は、押込み嵌合でかつ特に遊びなく収容スロット内に差込まれる。この場合、遊びなくとは、導管端部と収容スロットの一つあるいは複数の壁部の間の当接面の領域では、自由空間が全く無いか、あるいはできる限り無いことを意味する。本発明の好ましい実施形態によれば、収容スロットの長さは、導管コネクタの長さの少なくとも25%、好ましくは少なくとも20%に達する。その際に、長さという考えは、導管コネクタあるいは原動機付き車両用導管の長手方向軸線に関連する。
【0015】
本発明の根底を成す認識は、本発明による方法により、導管コネクタと導管の間の極めて安定し、かつ安全作動する接続部を製造できることである。特に導管あるいは導管端部は、この接続部により機械的損傷あるいはそのように状況にから保護することができる。多層の導管の層間剥離は本発明による接続部を製造した際にほとんどなくすことができる。さらに、接続すべき導管の導管端部は、腐食による影響あるいは塩溶液あるいはそのような物の影響のような化学製品による影響から効果的に保護することができる。本発明による方法は、わずかな経費によっても実施することができる。本発明による方法の別の長所は、溶接過程において、導管の流路の汚染が防止されることである。
【0016】
以下本発明をただ一つの実施例を示す図により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による方法に従って製造された、導管コネクタと導管の間の接続部の断面図である。
図2図1による対象の別の機能状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
二つの図は、液体を案内する原動機付き車両用導管2と導管コネクタ1を接続するための方法を具体的に説明する。導管コネクタ1とは、実施例においては迅速コネクタあるいはいわゆるクイックコネクタであってもよい。原動機付き車両用導管2は合成樹脂から成り、かつ好ましくはそして実施例においては多層の導管2から構成されているのが好ましい。実施例において、導管2は三つの層を備えている。多層導管2の外側層3も内側層5も実施例ではポリアミドから成っていてもよい。
【0019】
本発明によれば、導管2の導管端部6は導管コネクタ1の周囲にわたり取囲む収容スロット7内に差込まれる。図はすでに差込まれた導管端部6の状態を示す。好ましくはそして実施例において、収容スロット7あるいは収容スロット7の壁部8,9は、合成樹脂から、そして好ましい実施例ではポリアミドから成る。導管2の横断面は円形に構成されているのが効果的であり、収容スロットは円柱状に構成されているかあるいはその横断面が円形に構成されているのが好ましい。導管2は好ましくはそして実施例において、押込み嵌合で(formschlussig)かつ好ましくは遊びなく導管コネクタ1の収容スロット7内に収容されている。
【0020】
効果的にそして実施例で、収容スロット7の端部には導管コネクタ1の周囲にわたり取囲む環状の金属要素10が配置されている。金属要素10として構成されている伝導要素(Leitfaehigkeitselement)は、実施例では鋼から成っていてもよい。導管端部6は図で示した、収容スロット7内に導管端部での端面でもって差込まれた状態で金属要素10に当接している。本発明によれば、金属要素10は電磁誘導により加熱される。この目的で、図1に概略的に示してある電磁交番磁界11が金属要素10の領域内に生じる。
加熱の結果として、導管端部6の合成樹脂領域は導管端部6の端面が溶ける。好ましくはそして実施例において、収容スロット7の壁部8,9の合成樹脂領域も溶ける。これにより導管端部は導管コネクタ1の収容スロット7の壁部8,9と溶接される。本発明によれば、誘導溶接も行われ、これにより導管12の導管端部6は、導管コネクタ1の収容スロット7の壁部8,9により材料を溶かして接続されるか、あるいは溶接される。図2は導管コネクタ1と導管2から成るユニットの溶接された状態を示す。
【符号の説明】
【0021】
1 導管コネクタ
2 原動機付き車両用導管
3 外側層
5 内側層
6 導管端部
7 収容スロット
8 壁部
9 壁部
10 金属要素
図1
図2