(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のプリント回路基板(PCB)は、穿孔後メッキされたスルーホール(PTH)を介して基板の反対側および/または内部層との間の接続を形成する非導電性誘電体積層基板から構成される。無電解メッキは、表面に金属被膜を作製するためのよく知られたプロセスである。誘電体表面の無電解メッキは、事前に触媒を堆積させることが必要である。無電解メッキの前に非導電性誘電体積層基板領域を触媒または活性化するために最もよく使われる方法は、酸性塩化物媒体中の水性スズ−パラジウムコロイドで基板を処理することである。コロイドは、スズ(II)イオンの安定化層により取り囲まれた金属パラジウムコアから構成される。[SnCl
3]
−錯体のシェルが、懸濁液中のコロイドの凝集を防ぐ表面安定化基の役割を果たす。
【0003】
活性化プロセスでは、パラジウムベースコロイドは、エポキシまたはポリイミドなどの絶縁基板上に吸着されて、無電解銅の堆積を活性化する。理論的には、無電解金属堆積時には、触媒粒子は、メッキ浴中での還元剤から金属イオンへの電子の移動経路中のキャリアとしての役割を果たす。無電解銅プロセスの性能は、堆積溶液やリガンドの選択などの多くの因子の影響を受けるが、活性化ステップは、無電解堆積の速度とメカニズムを制御するための重要な因子である。パラジウム/スズコロイドは、無電解金属堆積用の活性剤として数十年間にわたり商業的に使用され、また、その構造は広く研究されてきた。しかし、その空気に対する感受性と高コストのために、改善または代替プロセスが登場する余地が残されている。
【0004】
コロイドパラジウム触媒は良好な有用性を示すが、製造されるプリント回路基板の品質が高まるに伴い、多くの欠点が目立つようになってきている。近年では、寸法が小さくなり、電子デバイスの性能が高まるに伴い、電子回路の実装密度がより高くなり、それに続く無電解メッキ後に無欠陥であることが要求されている。信頼性に対するより大きな要求の結果として、代替触媒組成物が必要とされている。コロイドパラジウム触媒の安定性もまた、懸念材料である。上述のように、パラジウム/スズコロイドは、スズ(II)イオン層により安定化され、その対イオンはパラジウムの凝集を防ぐことができる。スズ(II)イオンは、容易にスズ(IV)に酸化され、この結果、コロイドはそのコロイド構造を維持できない。この酸化は、温度と攪拌の増加により促進される。スズ(II)の濃度をゼロ近くまで低下させると、パラジウム粒子は大きくなり、凝集して、沈殿する場合がある。
【0005】
より良い新しい触媒を見つけるために多くの努力がなされてきた。例えば、パラジウムが高コストであるために、多くの努力が非パラジウムまたは2種金属からなる代替触媒の開発に向けて行われてきた。これまで、問題点として、スルーホールメッキ用として十分に活性化しない、または十分な信頼性がないという事実が挙げられてきた。さらに、これらの触媒は、通常、放置により徐々に活性が低下し、この活性の変化がこのような触媒の信頼性を低くし、商業的用途にとって実用的でないものにしている。米国特許第4,248,632号は、無電解メッキ用非パラジウム/スズ触媒を開示している。触媒には、触媒金属、例えば、銀および金などのパラジウムや代替金属の錯体、窒素含有リガンドならびに酸ラジカルを含むが、酸環境は、触媒の活性化性能にとって絶対に必要である。酸環境は、通常、多くの誘電体基板上で認められる望ましくない金属クラッドの腐食の原因であり、欠陥商品を生ずる。この問題は、基板が銅で厚くクラッドされることが多いプリント回路基板の製造で非常によく見られる。従って、工業生産では酸環境は極めて望ましくない。
【0006】
金属クラッド誘電体は、アルカリ環境下で電解メッキされるのが好ましいが、多くの非パラジウム/スズ触媒は、このような条件下では、不安定で、信頼性が低い。米国特許第5,503,877号は、酸環境中、ならびに、アルカリ環境中で使用可能な別の非パラジウム/スズ触媒を開示している。触媒は、触媒金属、例えば、パラジウム、銀または金、窒素含有リガンドおよび溶媒成分から構成される。しかし、触媒は、オリゴマー/ポリマーを形成するために長時間加熱を行う必要があり、これを行わないと、触媒は活性化が不十分となる。さらに、長時間加熱とその後の実装のための冷却は、大規模触媒調製での人員と設備費の増加のために、さらに多くの費用が必要となる。従って、現在も、パラジウム/スズ触媒の代替品に対するニーズがある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書全体を通して使われる下記の省略は、文脈から明確に別義が示されない限り、次の意味を持つ。g=グラム、mg=ミリグラム、mL=ミリリットル、L=リットル、cm=センチメートル、m=メートル、mm=ミリメートル、μm=ミクロン、ppm=百万分の一、M=モル濃度、℃=セ氏温度、g/L=リットル当たりのグラム、DI=脱イオン、Pd=パラジウム、wt%=重量パーセント、およびT
g=ガラス転移温度。
【0010】
用語の「電子供与基」は、共鳴または誘導性電子求引を介してその電子密度の一部を共役π系に供与し、その結果、π系をさらに求核性にする原子または官能基を意味する。用語の「単量体」または「単量体の」は、1個または複数個の同じまたは類似の分子と結合可能な単一分子を意味する。用語の「オリゴマー」は、結合して単一分子を形成した2個または3個の単量体を意味する。用語の「ポリマー」は、結合した2個以上の単量体、または結合して単一分子を形成した2個以上のオリゴマーを意味する。用語の「プリント回路基板」および「プリント配線基板」は、本明細書全体を通して同義に使用される。用語の「メッキ」および「堆積」は、本明細書全体を通して同義に使用される。別段の記述がない限り、全ての量は重量パーセントである。全ての数値範囲は包括的であり、このような数値範囲の合計が100%になるように制約されるのが論理的である場合を除き、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0011】
水性アルカリ触媒溶液は、銀、金、白金、パラジウム、銅、コバルトおよびニッケルから選択される金属イオン
と、式:
【化2】
の1種または複数種のピラジン誘導体錯体形成化合物
との錯体を含み、式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、同じでも異なっていてもよい水素、直鎖もしくは分岐(C
1〜C
5)アルキル、−N(R)
2、直鎖もしくは分岐アミノ(C
1〜C
5)アルキル、アセチル、直鎖もしくは分岐ヒドロキシ(C
1〜C
5)アルキル、または直鎖もしくは分岐(C
1〜C
5)アルコキシであり、Rは、同じでも異なっていてもよい水素または直鎖もしくは分岐(C
1〜C
5)アルキルである(但し、R
1、R
2、R
3およびR
4の内の少なくとも1つが水素以外である)。水素を除いて、R
1、R
2、R
3およびR
4は、電子供与基である。好ましくは、R
1、R
2、R
3およびR
4は、同じでも異なっていてもよい水素、(C1〜C
2)アルキル、−NH
2、アセチル、(C
1〜C
2)アルコキシまたはヒドロキシ(C
1〜C
3)アルキルである(但し、R
1、R
2、R
3およびR
4の内の1つは、電子供与基である)。より好ましくは、R
1、R
2、R
3およびR
4は、同じでも異なっていてもよい水素、またはメチルである(但し、R
1、R
2、R
3およびR
4の内の少なくとも2つがメチルである)。 も好ましくは、R
1、R
2、R
3およびR
4の内の2つがメチルで、残りが水素である。
【0012】
このようなピラジン誘導体の例は、2,6−ジメチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,3,5−トリメチルピラジン、2−アセチルピラジン、アミノピラジン、エチルピラジン、メトキシピラジン、および2−(2’−ヒドロキシエチル)ピラジンである。
【0013】
金属イオン源には、触媒活性を有する金属を提供する当該技術および文献で既知の従来の水可溶金属塩のいずれかが含まれる。1種の触媒金属イオンを使用可能であり、または2種以上の触媒金属イオンの混合物を使用可能である。このような塩は、20ppm〜2000ppm、好ましくは、25ppm〜500ppmの量の金属イオンを与えるように混入される。銀塩には、限定されないが、硝酸銀、酢酸銀、銀トリフルオロアセタート、銀トシラート、銀トリフラート、フッ化銀、酸化銀、チオ硫酸ナトリウム銀およびシアン化銀カリウムが挙げられる。パラジウム塩には、限定されないが、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化カリウムパラジウム、塩化ナトリウムパラジウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、硫酸パラジウムおよび硝酸パラジウムが挙げられる。金塩には、限定されないが、シアン化金、三塩化金、三臭化金、塩化金カリウム、シアン化金カリウム、塩化金ナトリウムおよびシアン化ナトリウム金が挙げられる。白金塩には、限定されないが、塩化白金および硫酸白金が挙げられる。銅塩には、限定されないが、硫酸銅および塩化銅が挙げられる。ニッケル塩には、限定されないが、塩化ニッケルおよび硫酸ニッケルが挙げられる。コバルト塩には、限定されないが、酢酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルトおよび硫酸コバルトアンモニウムが挙げられる。好ましくは、金属イオンは、銀、パラジウムおよび金イオンである。さらに好ましくは、金属イオンは、銀およびパラジウムである。最も好ましくは、イオンはパラジウムである。
【0014】
水性アルカリ触媒を構成する成分は、任意の順序で混合できる。当技術分野および文献で既知の任意の適切な方法を使用して水性触媒を調製できるが、錯体形成ピラジン誘導体および金属イオンから構成される触媒の形成には加熱の必要がない。水性アルカリ触媒溶液中に含まれるピラジン誘導体錯体形成化合物および1種または複数種の金属イオンの量は、錯体形成化合物の金属イオンに対するモル比が、1:1〜4:1、好ましくは、1:1〜2:1となるような量である。通常、1種または複数種の錯体形成化合物は、最初、十分な量の水中に溶解される。1種または複数種の金属イオン源が最小限の量の水中に溶解され、その後、攪拌しながら錯体形成溶液と混合され、均一の水性溶液が形成される。通常、触媒溶液は、室温で調製されるが、成分の可溶化を促進するためにある程度の加熱が必要な場合もある。水性触媒溶液のpHは、四ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの塩、または水酸化カリウムもしくはナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、またはこれらの混合物でアルカリpHに調節される。水性アルカリ触媒溶液のpHの範囲は、8.5以上、好ましくは、9以上、より好ましくは、9〜13、最も好ましくは、9〜12である。水性アルカリ触媒は、スズ、スズイオンおよび抗酸化剤を含まない。好ましくは、水性アルカリ触媒は、ハロゲン不含である。
【0015】
触媒の基板への適用後で、メタライゼーションの前に、1種または複数種の還元剤が触媒された基板に適用され、金属イオンが金属状態に還元される。金属イオンを金属に還元することが既知の従来の還元剤を使用できる。このような還元剤には、限定されないが、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、ギ酸およびホルムアルデヒドが挙げられる。好ましくは、還元剤は、次亜リン酸ナトリウムである。還元剤は、実質的にすべての金属イオンが金属に還元される量で混入される。このような量は、通常、従来から用いられている量であり、当業者にはよく知られている。
【0016】
水性アルカリ触媒は、種々の基板、例えば、半導体装置、プリント回路基板などの金属クラッドおよび非クラッド基板の無電解金属メッキに使用できる。このような金属クラッドおよび非クラッドプリント回路基板には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂およびこれらの組み合わせを挙げることができ、これらには、ガラス繊維などの繊維、および前述の含浸例が含まれる。好ましくは、基板は、金属クラッドプリント回路または配線回路基板である。
【0017】
熱可塑性樹脂には、限定されないが、アセタール樹脂、アクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、酢酸エチル、プロピオニルセルロース、アセチルブチルセルロースおよび硝酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリエーテル、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレンおよびコポリマーならびにアクリロニトリル−ブタジエンスチレンコポリマーなどのスチレンブレンド、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ならびに、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、塩化ビニル、塩化酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニリデンおよびビニルホルマールなどのビニルポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0018】
熱硬化性樹脂には、限定されないが、フタル酸アリル、フラン、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒドおよびフェノール−フルフラルコポリマーの単独、またはブタジエンアクリロニトリルコポリマーまたはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリアクリル酸エステル、シリコーン、尿素ホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、アリル樹脂、フタル酸グリセリルおよびポリエステルとのコンパウンドが挙げられる。
【0019】
触媒は、低および高Tgの両方の樹脂基板のメッキに使用できる。低T
g樹脂は、160℃未満のT
gであり、高T
g樹脂は、160℃以上のT
gである。典型的な高T
g樹脂は、160℃〜280℃、または例えば、170℃〜240℃のT
gである。高T
gのポリマー樹脂には、限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリテトラフルオロエチレンブレンドが挙げられる。このようなブレンドには、例えば、PTFEとポリフェニレンオキサイドおよびシアナートエステルとのブレンドが挙げられる。高Tgの樹脂を含むその他の種類のポリマー樹脂には、限定されないが、二官能性および多官能性エポキシ樹脂、ビスマレイミド/トリアジンおよびエポキシ樹脂(BTエポキシ)、エポキシ/ポリフェニレン酸化物樹脂などのエポキシ樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホン(PS)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、エポキシおよびこれらの複合体が挙げられる。
【0020】
触媒を使って、誘電体材料およびプリント回路基板のスルーホールまたはバイアホールの壁上に金属を堆積できる。触媒は、プリント回路基板製造の水平および垂直プロセスの両方で使用可能である。
【0021】
水性触媒は、従来の水性アルカリ無電解金属メッキ浴と共に使用可能である。触媒を使って、無電解メッキ可能な任意の金属を無電解堆積できることが想定されるが、好ましくは、金属は、銅、銅合金、ニッケルまたはニッケル合金から選択される。より好ましくは、 金属は、銅および銅合金から選択され、最も好ましくは、金属は銅である。市販品として入手可能な無電解銅メッキ浴の例は、CIRCUPOSIT(商標)880Electroless Copper浴である(Dow Advanced Materials、Marlborough、MA、から入手可能)。
【0022】
通常、銅イオン源には、限定されないが、水可溶塩化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩およびその他の有機や無機の銅の塩が挙げられる。1種または複数種のこのような銅塩の混合物を使って、銅イオンを供給できる。例には、硫酸銅・5水和物などの硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、水酸化銅およびスルファミン酸銅が挙げられる。組成物中に従来の量の銅塩を使うことができる。通常、組成物中の銅イオン濃度は、0.5g/L〜30g/Lの範囲であってよい。
【0023】
また、1種または複数種の合金化金属を無電解組成物中に含めてもよい。このような合金化金属には、限定されないが、ニッケルおよびスズが挙げられる。銅合金の例には、銅/ニッケルおよび銅/スズが挙げられる。典型的な銅合金は銅/ニッケルである。
【0024】
ニッケルおよびニッケル合金無電解浴用のニッケルイオン源には、1種または複数種の従来のニッケルの水可溶性塩を含めてもよい。ニッケルイオン源には、限定されないが、硫酸ニッケルおよびハロゲン化ニッケルが挙げられる。従来から用いられている量のニッケルイオン源を無電解合金化組成物中に含めることができる。通常、0.5g/L〜10g/Lの量のニッケルイオン源を含めることができる。
【0025】
基板の無電解金属メッキに使われる従来のステップをこの触媒で使用可能であるが、水性アルカリ触媒は、多くの従来のプロセスの場合のように、スズを取り除いて無電解メッキのためにパラジウム金属を露出させる加速ステップを必要としない。従って、この触媒を使う場合、加速ステップが除かれる。好ましくは、触媒が、無電解金属メッキされる基板の表面に適用され、続けて、還元剤が触媒された基板に適用された後、金属メッキ浴が適用される。温度と時間などの無電解金属メッキパラメータは、従来通りであってよい。無電解金属メッキ浴のpHはアルカリ性である。基板表面のクリーニングまたは脱脂、表面の粗化または微細粗化、表面のエッチングまたはマイクロエッチング、溶媒膨潤処理、スルーホールのスミア除去および種々のすすぎと変色防止処理などの従来の基板調製法を使用可能である。このような方法と処方は当技術分野でよく知られており、文献で開示されている。
【0026】
好ましくは、金属メッキされる基板は、誘電体材料で作られ、複数のスルーホールを有する金属クラッド基板、例えば、プリント回路基板である。基板は、水ですすがれ、清浄化および脱脂され、続けて、スルーホール壁のスミア除去が行われる。通常、誘電体の準備もしくは軟化、またはスルーホールのスミア除去は、溶媒膨潤処理で開始される。
【0027】
従来のいずれの溶媒膨潤も使用できる。具体的な種類は、誘電体材料の種類に応じて変化してもよい。誘電体の例は上記で開示されている。簡単な実験を行うことにより、どの溶媒膨潤が特定の誘電体材料に適するかを判定できる。誘電体のT
gが、使用される溶媒膨潤の種類を決める場合が多い。膨潤用溶媒には、限定されないが、グリコールエーテルおよびそれらの関連酢酸エーテルが挙げられる。従来の量のグリコールエーテルおよびそれらの関連酢酸エーテルを使用できる。市販品として入手可能な膨潤用溶媒の例は、CIRCUPOSIT(商標)Conditioner3302、CIRCUPOSIT(商標)Holerep3303およびCIRCUPOSIT(商標)Hole Prep4120溶液(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。
【0028】
溶媒膨潤後、促進剤を適用できる。従来の促進剤を使用できる。このような促進剤には、硫酸、クロム酸、過マンガン酸アルカリまたはプラズマエッチングが含まれる。通常、過マンガン酸アルカリが促進剤として使用される。市販品として入手可能な促進剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)Promoter4130およびCIRCUPOSIT(商標)MLB Promoter3308溶液(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。任意選択で、基板およびスルーホールを水ですすいでもよい。
【0029】
その後、中和剤が適用され、促進剤によって残された全ての残留物が中和される。従来の中和剤を使用できる。通常、中和剤は、1種または複数種のアミンを含む酸性水溶液または3wt%過酸化水素と3wt%硫酸の溶液である。市販品として入手可能な中和剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)MLB Neutralizer216−5である。任意選択で、基板およびスルーホールを水ですすぎ、その後乾燥してもよい。
【0030】
中和後、スルーホールをメッキする際に酸またはアルカリコンディショナーが適用される。従来のコンディショナーを使用できる。このようなコンディショナーは、1種または複数種の陽イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、錯体形成剤およびpH調整剤または緩衝剤を含んでもよい。市販品として入手可能な酸コンディショナーの例は、CIRCUPOSIT(商標)コンディショナー3320および3327溶液(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。適切なアルカリコンディショナーには、限定されないが、1種または複数種の4級アミンおよびポリアミンを含むアルカリ界面活性剤水溶液が挙げられる。市販品として入手可能なアルカリ界面活性剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)Conditioner231、3325、813および860配合物である。任意選択で、基板およびスルーホールを水ですすいでもよい。
【0031】
コンディショニングに続けてマイクロエッチングを行うことができる。従来のマイクロエッチング組成物を使用できる。マイクロエッチングは、露出金属上に微細粗化金属表面を与え(例えば、内部層および表面のエッチングにより)、メッキされた無電解金属と後で行われる電気メッキの間の接着を強化するように設計される。マイクロエッチング剤には、限定されないが、60g/L〜120g/Lの過硫酸ナトリウムまたはオキシ一過硫酸ナトリウムもしくはカリウムと硫酸(2%)混合物、または一般的硫酸/過酸化水素が挙げられる。市販品として入手可能なマイクロエッチング組成物の例は、CIRCUPOSIT(商標)Microetch3330Etch溶液およびPREPOSIT(商標)748Etch溶液で、両方共、Dow Advanced Materialsから入手可能である。任意選択で、基板を水ですすいでもよい。
【0032】
任意選択で、次に、前ディップをマイクロエッチング基板およびスルーホールに適用してもよい。前ディップ剤の例には、酒石酸ナトリウムカリウム、炭酸ナトリウム、もしくはクエン酸ナトリウムなどの有機塩、0.5%〜3%硫酸または25g/L〜75g/L硫酸ナトリウムの酸性溶液が挙げられる。
【0033】
その後、水性アルカリ触媒が基板に適用される。適用は、当技術分野で使われる従来の方法、例えば、従来の装置を使った触媒溶液中への基板の浸漬、またはスプレーにより行うことができる。触媒滞留時間は、垂直装置に対しては、1分〜10分、通常は2分〜8分、水平装置に対しては、25秒〜120秒の範囲であってよい。触媒は、室温〜80℃、通常は30℃〜60℃の温度で適用できる。任意選択で、基板およびスルーホールに触媒を適用後、水ですすいでもよい。
【0034】
次に、還元溶液が基板に適用され、触媒の金属イオンがそれらの金属状態に還元される。基板を還元溶液中に浸漬することにより、または還元溶液を基板にスプレーすることにより還元溶液を適用できる。溶液の温度は、室温〜65℃、通常は、30℃〜55℃の範囲であってよい。還元溶液と触媒された基板との間の接触時間は、無電解金属メッキ浴の適用の前の30秒〜5分の範囲であってよい。
【0035】
その後、基板およびスルーホールの壁は、無電解浴を使って、銅、銅合金、ニッケルまたはニッケル合金などの金属で無電解メッキされる。好ましくは、銅がスルーホールの壁上にメッキされる。メッキ時間と温度は、従来の通りでよい。典型的には、金属堆積は、20℃〜80℃、さらに典型的には、30℃〜60℃の温度で行われる。基板を無電解メッキ浴中に浸漬してもよく、または無電解浴を基板上にスプレーしてもよい。通常、無電解メッキは、5秒〜30分間行うことができるが、メッキ時間は、対象金属の厚さに応じて変動してもよい。メッキは、アルカリ環境下で行われ、基板上の全ての金属クラッドの望ましくない腐食を防ぐ。通常、メッキ溶液のpHは8以上、好ましくは、pHは8.5以上、より好ましくは、pHは9〜13、最も好ましくは、pHは9〜12である。
【0036】
任意選択で、金属に変色防止剤を適用してもよい。従来の変色防止組成物を使用できる。変色防止剤の例は、ANTITARNISH(商標)7130溶液(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。基板は、任意選択で、水ですすぎ、その後、基板を乾燥してもよい。
【0037】
さらなる処理には、光イメージングによる従来の処理、および例えば、銅、銅合金、スズおよびスズ合金の電解金属堆積などの基板上へのさらなる金属堆積を含めてもよい。
【0038】
水性アルカリ触媒を使って、誘電体材料基板および金属クラッドを含む基板上の金属にも同様に無電解メッキできる。水性アルカリ触媒は、貯蔵安定性があり、さらに、アルカリ無電解金属メッキ環境中であっても無電解金属メッキを行っている間安定である。水性アルカリ触媒は、抗酸化剤不含であっても、従来のスズ/パラジウム触媒に比べて、容易には酸化されない。水性アルカリ触媒は、安定性の形成または維持に強い酸を必要としないため、従来の触媒より腐食性が少ない。水性アルカリ触媒は、安定性のためのスズ化合物を必要とせず、ハロゲンは腐食作用が生ずる場合があるのでハロゲン不含であってもよい。また、安定かつ触媒的に活性な金属リガンド錯体を形成するための長期間の加熱の必要がなく、より効率的な無電解メッキ方法を提供する。触媒は、プリント回路基板の製造におけるバイアホールおよびスルーホール充填中の良好な金属被覆形成を可能とする。
【0039】
以下の実施例は、本発明の範囲を制限する意図はなく、本発明を例証することを意図している。
【0040】
実施例1
以下の手続きにより、1リットルの水中に1,000ppmのパラジウムイオンおよび1,020ppmの2,6−ジメチルピラジンを含む触媒を調製した:1.02gの2,6−ジメチルピラジンを500mLのDI水に溶解した。2.6gの硝酸パラジウム水和物を500mLのDI水に溶解し、1μmの膜を使って濾過した。攪拌子で攪拌しながら2,6−ジメチルピラジン溶液をパラジウム溶液にゆっくり加えた。混合物を室温で60分攪拌した。上記と同じ製法を使って、1リットルの水中に1,000ppmのパラジウムイオンおよび1,020ppmの2,5−ジメチルピラジンまたは1,150ppmの2,3,5−トリメチルピラジンを含む第2および第3の触媒を調製した。それぞれの触媒の金属イオンに対する錯体形成剤のモル比は、1:1であった。
【0041】
次に、一定分量の各触媒濃縮物をDI水で希釈して、1リットルの75〜100ppmのパラジウム触媒作業浴を作った。緩衝剤として、2gの四ホウ酸ナトリウムを触媒浴に加えた。その後、1MのNaOHまたは5%硝酸を使って、各触媒浴のpHを9〜9.5に調節した。その後、触媒浴を使って、以下の方法に従いNY−1140非クラッド積層板(NanYaから入手)を無電解メッキした。
1.各非クラッド積層板を50℃のアルカリCIRCUPOSIT(商標)Conditioner3325溶液または46℃の酸性CIRCUPOSIT(商標)3320A溶液中に5分間浸漬後、流れている水道水で4分間すすいだ。
2.積層板を硫酸および過硫酸ナトリウムベースPREPOSIT(商標)748Etch溶液中に室温で1分間浸漬した後、流れているDI水で4分間すすいだ。
3.各積層板を3種の水性アルカリ触媒溶液の内の1種中で、40℃で5分間浸漬し、続けて、流れているDI水で1分間すすいだ。
4.積層板を0.25Mの次亜リン酸ナトリウム溶液中に50℃で1分間浸漬してパラジウムイオンをパラジウム金属に還元した後、流れているDI水で1分間すすいだ。
5.活性化された積層板をCIRCUPOSIT(商標)880Electroless Copper浴に40℃で15分間浸漬し、積層板に銅をメッキした。
6.銅メッキ後、積層板を流れている水道水で4分間すすいだ。
【0042】
各積層板の銅メッキ性能を調査した。全積層板表面積は完全に銅層により被覆され、銅堆積物は、光沢があり均質な外観であった。これらは全てスコッチテープ試験に合格し、積層板への良好な接着を示唆した。従って、全ての触媒は、下準備中の加熱を必要とせずに、活性であった。
【0043】
実施例2
実施例1で調製された2,6−ジメチルピラジンの触媒溶液を使って、スルーホールを備えた銅クラッド積層板をメッキし、従来のコロイドパラジウム/スズ触媒と比較した。複数のスルーホールを有する次の6枚の異なる銅クラッドパネルを2セットずつ用意した:TUC−662、SY−1141、SY−1000−2、IT−158、IT−180およびNPG−150。TUC−662は、Taiwan Union Technologyから入手し、SY−1141とSY−1000−2は、Shengyiから入手した。IT−158とIT−180は、ITEQ Corp.から入手し、NPG−150は、NanYaから入手した。パネルのT
g値は、140℃〜180℃の範囲であった。各パネルは5cm×12cmとし、以下のように処理した:
1.各セットのパネルをCIRCUPOSIT(商標)MLB Conditioner211溶液中に80℃で7分間浸漬した。
2.各パネルのスルーホールを、流れている水道水で4分間すすいだ。
3.スルーホールをCIRCUPOSIT(商標)MLB Promoter3308水性過マンガン酸塩溶液を使い、80℃で10分間処理した。
4.スルーホールを流れている水道水で4分間すすいだ。
5.スルーホールを3wt%硫酸/3wt%過酸化水素中和剤を使って、室温で2分間処理した。
6.各パネルのスルーホールを流れている水道水で4分間すすいだ。
7.各パネルのスルーホールをCIRCUPOSIT(商標)Conditioner3325アルカリ溶液を使って50℃で5分間処理した。
8.スルーホールを、流れている水道水で4分間すすいだ。
9.スルーホールを1%硫酸および過硫酸ナトリウムエッチング液を使い室温で2分間処理した。その後、各パネルのスルーホールを、流れているDI水で4分間すすいだ。
10.1セットのパネルをCATAPREP(商標)404Pre−Dip溶液に室温で1分間浸漬し、続いて、パネルを75ppmのパラジウム金属を含むCATAPOSIT(商標)44パラジウム/スズ触媒に40℃で5分間浸漬した。他方、もう1セットのパネルを75ppmのパラジウムイオンおよび75ppmの2,6−ジメチルピラジンを含む水性アルカリ触媒中に40℃で5分間浸漬した。
11.パラジウムイオンおよび2,6−ジメチルピラジンを含む水性アルカリ触媒で処理したパネルを0.25Mの次亜リン酸ナトリウム還元剤溶液中に50℃で1分間浸漬した。
12.全パネルを流れているDI水で2分間すすいだ。
13.パネルをCIRCUPOSIT(商標)880Electroless Copperメッキ浴に40℃で15分間浸漬し、スルーホールの壁上に銅を堆積させた。
14.銅メッキ積層板を冷水で4分間すすいだ。
15.各銅メッキ積層板を圧縮空気で乾燥した。
16.積層板のスルーホールの壁の銅メッキ被覆率を、下記のバックライトプロセスを使って調べた。
【0044】
可能な限り銅メッキ壁を露出させるように、各基板のスルーホールの中心近くの断面で切断した。スルーホールの中心から3mm以下の厚さの位置の断面をそれぞれの基板から取り出し、スルーホール壁の被覆率を測定した。欧州バックライト等級スケール(European Backlight Grading Scale)を使用した。各基板由来の断面は、試料の背面に光源を備えた50Xの倍率の通常の光学的顕微鏡の下に置かれた。銅堆積の品質は、顕微鏡下で認められる試料透過光の量により判定された。透過光は、不完全な無電解銅被覆が存在するメッキスルーホールの領域のみで見ることができる。光が透過せず、断面が完全に黒く見える場合は、バックライトスケールで、スルーホール壁の完全な銅被覆を示す5に等級付けされた。光が何らの暗い領域もなく全断面を通過する場合は、壁上への非常にわずかな量の銅金属堆積のケースから全く銅金属堆積がないケースを示し、この断面を0と等級付けした。断面が幾分かの暗い領域ならびに明るい領域を持つ場合は、0〜5に等級付けされた。少なくとも、10個のスルーホールを検査し、それぞれの基板を等級付けした。
【0045】
パラジウム/2,6−ジメチルピラジン触媒は、従来のパラジウム/スズコロイド触媒と実質的に同じ性能であり、バックライト等級値は、4.7〜4.9であった。4.5以上の典型的なバックライト等級値は、商業的に許容可能なメッキ用触媒であることを示す。
【0046】
実施例3
電子吸引性官能基を有するピラジン誘導体を使って、1リットルの水中に1,000ppmのパラジウムイオンおよび1,080ppmの2−クロロピラジンを含むイオン触媒を調製した。1.08gの2−クロロピラジンを500mLのDI水に溶解した。2.6gの硝酸パラジウム水和物を500mLのDI水に溶解し、1μmの膜を使って濾過した。パラジウムイオン溶液に2−クロロピラジン溶液を攪拌子で攪拌しながら室温でゆっくり加えた。混合開始数分後に、黄色沈殿が認められ、調製時の不安定性が示された。
【0047】
実施例4
1リットルの水中に1,000ppmの銀イオンおよび1,110ppmの2−(2’−ヒドロキシエチル)ピラジンを含むイオン触媒を以下の手順により調製する:1.11gの2−(2’−ヒドロキシエチル)ピラジンを500mLのDI水に溶解する。1.57gの硝酸銀を500mLのDI水に溶解する。銀溶液に2−(2’−ヒドロキシエチル)ピラジン溶液を攪拌子で攪拌しながらゆっくり加えた。混合物を室温で60分間攪拌する。銀にイオンに対する錯体形成剤のモル比は、1:1である。
【0048】
次に、一定分量のイオン触媒濃縮物を取り出し、DI水で希釈して、1リットルの250ppm銀触媒作業浴を作る。炭酸ナトリウムを触媒浴に加えて、pHを9〜9.5に調節する。その後、触媒浴を使って、実施例1に記載の方法に従いNY−1140非クラッド積層板(NanYa)を無電解メッキする。積層板は、光沢のある均一な銅堆積物が得られることが期待され、スコッチテープ試験に合格して、無電解銅と積層板との間の良好な接着を示唆する。