特許第6444679号(P6444679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000002
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000003
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000004
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000005
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000006
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000007
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000008
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000009
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000010
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000011
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000012
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000013
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000014
  • 特許6444679-庇型光ダクト 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444679
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】庇型光ダクト
(51)【国際特許分類】
   F21S 11/00 20060101AFI20181217BHJP
   E04F 17/06 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F21S11/00 200
   E04F17/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-195043(P2014-195043)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-66524(P2016-66524A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大山 能永
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正文
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−019905(JP,U)
【文献】 実開昭59−059405(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 11/00
E04F 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を採光する採光部と当該採光部で採光した太陽光を導光する導光部とを有し、建物の外側に配置される庇状の庇部と、
太陽光を導光する導光部と当該導光部で導光された太陽光を屋内空間に放光する放光部とを有し、前記建物の内側に配置される屋内部と、を備え、
前記屋内部は、前記庇部内の導光部の前記建物側の端部と前記屋内部の導光部の屋外側の端部とが対向し、前記庇部内の導光部により前記建物側の端部に導光された太陽光が前記屋内部の導光部に入光されるように配置され
さらに、前記採光部と前記庇部内の導光部とは筒状に形成され、
前記庇部は、風抜きとなる所定の間隔を前記建物との間に持って前記建物の外側に配置されることを特徴とする庇型光ダクト。
【請求項2】
前記庇部と前記建物との間の隙間を前記庇部の側面側から塞ぐ、鏡面反射材からなる光漏れ防止部材を備えることを特徴とする請求項記載の庇型光ダクト。
【請求項3】
前記庇部上面の前記建物側の端部に、前記建物側に張り出した雨水導板を備え、前記雨水導板の前記建物側の端部は、前記庇部の前記建物側の端部と前記建物との間に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の庇型光ダクト。
【請求項4】
太陽光を採光する採光部と当該採光部で採光した太陽光を導光する導光部とを有し、建物の外側に配置される庇状の庇部と、
太陽光を導光する導光部と当該導光部で導光された太陽光を屋内空間に放光する放光部とを有し、前記建物の内側に配置される屋内部と、を備え、
前記屋内部は、前記庇部内の導光部の前記建物側の端部と前記屋内部の導光部の屋外側の端部とが対向し、前記庇部内の導光部により前記建物側の端部に導光された太陽光が前記屋内部の導光部に入光されるように配置され
さらに、前記庇部上面の前記建物側の端部に、前記建物側に張り出した雨水導板を備え、前記雨水導板の前記建物側の端部は、前記庇部の前記建物側の端部と前記建物との間に位置することを特徴とする庇型光ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昼光を建物内に取り込む、庇型光ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光を建物内に導き、照明光源として利用する技術は複数用いられており、その一つの方法として、光ダクトという技術がある。光ダクトは、建物外皮を貫く位置に設けられる採光部と、導いた太陽光を利用する部分に設けられる放光部と、これら採光部から放光部に太陽光を導くための導光部と、に分けられる。
光ダクトには、縦ダクト(採光部は屋上に設置)と、水平型光ダクト(採光部は外壁に設置)の2種類があるが、後者の実施例は少ない。水平型光ダクトが採用されない理由として、(1)太陽の位置変動に対応しにくいこと、(2)必要なダクト背は一般的な階高に収まらない程大きいこと、(3)採光部を外壁に設置しようとすると外壁デザインと調和する必要があること、等が挙げられる。
【0003】
(1)に対する対策は提案されており、例えば太陽光を建物内に取り込むための反射面の傾斜角度を、自動調整する方法等も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、水平型光ダクトの採光部は、一般に「受け口」のような形状を有している。この「受け口」のような形状は、採光部の内部に、より多くの昼光を取り込むための工夫である。この「受け口」のような形状を持つ採光部は、採光部の底部部分が、窓ガラスや腰壁よりも屋外側に突出して設けられる。また、採光部を、外壁ラインより内側に納まるように配置する方法もあるが、いずれの場合も、採光部の高さが比較的大きい。
【0004】
このように採光部は、開口面の高さが大きいために、建物の外観デザインと調和しにくい。そのため、外壁デザインと調和するように数々の工夫がなされている。例えば、採光部を窓の一部のように見せるためのデザイン化を行う方法、採光部の設置箇所が外壁でないように見せるための設置場所に工夫する方法、採光部を外壁に埋め込む方法などが提案されている。
【0005】
採光部を窓の一部のように見せるための方法としては、例えば、窓と同数の採光部を窓の上部に設けることで、外観全体を見ると採光部は窓の一部のように見えることから、外壁全体の中で採光部に違和感が生じないようにしている。しかしながら、窓の数と同数の採光部が必要となることから、水平型光ダクトの価格(施工費用、設置によって生じる建築費用を含む)が低くなければコスト的に実施は困難であり、現実には水平型光ダクトの価格は安価ではない。
【0006】
また、採光部の設置箇所を工夫する方法としては、採光部を外壁の頂部に設置することで、採光部が屋根面に配置されているかのように見える。そうすると、採光部と外壁デザインとは無関係のように感じさせることができる。このように採光部を最上階に設けて昼光利用を行うのであれば、縦型光ダクトの方が価格は安く、太陽の方位変動に対する対応性も高い。
また、採光部を外壁に埋め込む方法の場合、採光部内の光反射材による反射光によってかえって採光部が目立つことがある。また、採光部を外壁に埋め込む方法は、埋め込まない場合に比較して光を導く効率が低下するため、他の階にはない庇を設置し、この庇で反射した光を採光部に導入すること等により、採光部を照射する光量を補う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平4−55365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、採光部を建物の外観デザインと調和させる方法が提案されているが、それらの方法はコストや効率の点で不利である。そのため、コストの増加や効率の低下を伴うことなく、建物の外観デザインとより調和させられる採光部を有する光ダクトが望まれていた。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、コストの増加を伴うことなく効率よく導光を行い、且つ建物の外観デザインとより調和させることの可能な庇型光ダクトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る庇型光ダクトは、太陽光を採光する採光部と当該採光部で採光した太陽光を導光する導光部とを有し、建物の外側に配置される庇状の庇部と、太陽光を導光する導光部と当該導光部で導光された太陽光を屋内空間に放光する放光部とを有し、前記建物の内側に配置される屋内部と、を備え、前記屋内部は、前記庇部内の導光部の前記建物側の端部と前記屋内部の導光部の屋外側の端部とが対向し、前記庇部内の導光部により前記建物側の端部に導光された太陽光が前記屋内部の導光部に入光されるように配置され、さらに、前記採光部と前記庇部内の導光部とは筒状に形成され、前記庇部は、風抜きとなる所定の間隔を前記建物との間に持って前記建物の外側に配置されることを特徴としている。
なお、ここでいう庇状とは、いわゆる庇そのものを含むとともに、庇のように建物外壁から外側に飛び出した形状も含む。
【0010】
た、請求項に係る庇型光ダクトは、前記庇部と前記建物との間の隙間を前記庇部の側面側から塞ぐ、鏡面反射材からなる光漏れ防止部材を備えることを特徴としている。
また、請求項に係る庇型光ダクトは、前記庇部上面の前記建物側の端部に、前記建物側に張り出した雨水導板を備え、前記雨水導板の前記建物側の端部は、前記庇部の前記建物側の端部と前記建物との間に位置することを特徴としている。
さらに、請求項4に係る庇型光ダクトは、太陽光を採光する採光部と当該採光部で採光した太陽光を導光する導光部とを有し、建物の外側に配置される庇状の庇部と、太陽光を導光する導光部と当該導光部で導光された太陽光を屋内空間に放光する放光部とを有し、前記建物の内側に配置される屋内部と、を備え、前記屋内部は、前記庇部内の導光部の前記建物側の端部と前記屋内部の導光部の屋外側の端部とが対向し、前記庇部内の導光部により前記建物側の端部に導光された太陽光が前記屋内部の導光部に入光されるように配置され、さらに、前記庇部上面の前記建物側の端部に、前記建物側に張り出した雨水導板を備え、前記雨水導板の前記建物側の端部は、前記庇部の前記建物側の端部と前記建物との間に位置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、採光部と導光部の一部とが庇部に含まれおり、建物外観において、水平型光ダクトは一見庇に見えるため、コスト増加等を伴うことなく、水平型光ダクトの採光部を建物の外観デザインと、より調和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の概念を示す説明図である。
図2】本発明における庇型光ダクトに適用した水平型光ダクトの一例の概略構成を示す断面図である。
図3】採光部の幅方向の概略構成を説明するための部分断面図である。
図4】庇部の先端部分の一例を示す断面図である。
図5】風抜き部分の構成の一例を示す断面図である。
図6】風抜き部分の構成のその他の例を示す断面図である。
図7】風抜き部分の構成の一例を示す上面図である。
図8】光漏れ防止板の作用を説明するための説明図である。
図9】光漏れ防止板の配置位置を説明するための説明図である。
図10】光漏れ防止板の固定部の一例を示す断面図である。
図11】光漏れ防止板の反射部の一例を示す断面図である。
図12】雨水導板の配置位置を説明するための風抜き部分の断面図である。
図13】多段庇の一例である。
図14】庇型光ダクトのその他の配置例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明における庇型光ダクト1の一例を示す概念図である。
図1に示すように、庇型光ダクト1は水平型光ダクトからなり、建物2に設けられた窓枠上部近傍に建物外皮を貫通して水平に配置される。庇型光ダクト1は、庇部1Aと、屋内部1Bと、風抜き1Cとを備え、庇部1Aは建物の外側に配置され、庇として作用する。屋内部1Bは、建物の内側に配置される。風抜き1Cは、庇部1Aと建物2の外皮との間に形成される。
【0014】
図2は、本発明における庇型光ダクト1に適用した水平型光ダクトの一例の概略構成を示す断面図である。なお、風抜き1C部分の構成については後述する。
図2に示すように、庇型光ダクト1は、太陽から照射された太陽光を採光する採光部3と、採光部3から射出された太陽光を導光する導光部5と、導光部5により導光された太陽光を室内空間92の照明光として放光する放光部7と、を備える。そして、採光部3と導光部5の一部とが庇部1Aに設けられるようになっている。庇型光ダクト1の屋内に配置される部分すなわち屋内部1Bは、天井板93の上に水平に配置され、導光部5は水平に配置されるようになっている。
【0015】
導光部5は、水平幅が大きい略角筒状に形成され、導光部5の内側全面は鏡面反射材で仕上げられている。採光部3は導光部5の一端の開口部に設けられ、放光口7aは導光部5の途中の導光部下面5bに形成される。放光部7には、導光された光の進行方向を放光口7a側に変更する鏡面反射部8を備える。放光口は導光部5の端部の側面に設けることも可能である。
【0016】
採光部3は、導光部5に対して上方に傾斜して設けられて開口部が形成され、開口部は日中の太陽高度に対応してより多くの太陽光を受光できる角度に形成される。この採光部3内に太陽光の進行方向を変更する進行方向変更部が形成されている。
すなわち、図2に示すように、採光部3の採光部上面3aの、太陽光の導光方向で下流側(以下、単に下流側という。)が、導光部上面5aの、太陽光の導光方向で上流側(以下、単に上流側という。)と接合され、且つ、採光部上面3aは、上流側が導光部上面5aに対して上方に傾斜して接合される。
【0017】
採光部3の下面側は、採光部上面3aよりも傾斜の緩い第1の下側傾斜面3bと、第1の下側傾斜面3bの下流側と接合される略水平な水平面3cと、水平面3cの下流側に接続され且つ第1の下側傾斜面3bよりも傾斜の緩い第2の下側傾斜面3dとを備え、第2の下側傾斜面3dの下流側が導光部下面5bと接合される。
そして、採光部3の採光部上面3a部分に、採光部3の幅方向に延びる角柱状の第1の屈折体4aが配置され、第1の屈折体4aと第1の下側傾斜面3bとの間に、採光部3の幅方向に延びる角柱状の第2の屈折体4bが間隙をもって配置される。第1の屈折体4aおよび第2の屈折体4bは例えば、ガラス、水晶、樹脂などで形成される、入射光を反射或いは屈折させて出射することの可能な透明なプリズムで構成される。
【0018】
第1の屈折体4aは、採光部3の開口部に面した第1の面m1と、採光部上面3aよりも傾斜の緩い第2の面m2と、導光部上面5aと垂直に設けられた第3の面m3とを備える。
第2の屈折体4bは、採光部3の開口部に面し、第1の面m1よりも傾斜の緩い第1の面m11と、第1の下側傾斜面3bに面し、この第1の下側傾斜面3bよりも傾斜の緩い第2の面m12と、第2の屈折体4bに入射された太陽光の進行方向を、横からみて導光部5の延びる方向に沿って水平となるように変更して出射する第4の面m14と、第2の面m12と第4の面m14との間に形成される略水平面からなる第3の面m13と、を備える。
【0019】
採光部上面3a、第1の下側傾斜面3b、水平面3c、第3の下側傾斜面3dにはそれぞれ鏡面反射材が配置されて、鏡面反射面が形成されている。
このように構成される採光部3では、第1の屈折体4a、第2の屈折体4b、および各鏡面反射面のいずれかまたは複数を経由することによって、入射される太陽光の進行方向を、横からみて水平となるように変更する。すなわち、第1の屈折体4a、第2の屈折体4b、および採光部上面3a、第1の下側傾斜面3b、水平面3c、第3の下側傾斜面3dのそれぞれに形成された鏡面反射面が、進行方向変更部を構成している。
【0020】
太陽光の進行方向を、横からみて水平となるように変更する方法としては、3通りある。なお、以後、太陽光の進行方向を、横からみて水平となるように変更することを水平化ともいい、その方法を水平化方法ともいう。
第1の水平化方法は、第1の屈折体4aまたは第2の屈折体4bによる、屈折体内における屈折と高屈折体から低屈折体(空気)への全反射とによるもの、第2の水平化方法は、鏡面反射面による鏡面反射によるもの、第3の水平化方法は、第1の屈折体4aまたは第2の屈折体4bによる、屈折体内における屈折と、鏡面反射面による鏡面反射とによるものがある。
【0021】
各太陽高度からの太陽光を、これら3通りの水平化方法により、横からみて水平から±10度以内の方向に進むように水平化する。
なお、第1の屈折体4a、第2の屈折体4bの形状や材質(屈折率)および、配置位置、採光部3の形状は、庇型光ダクト1が設置される地域、具体的には緯度や軽度、周辺状況などに応じて設定される。
【0022】
図3は、本発明における庇型光ダクト1の採光部3の幅方向の概略構成を説明するための部分断面図であって、庇型光ダクト1の幅方向の上半分を示したものであり、下半分の形状は上半分と面対象の形状となる。
図3に示すように、庇型光ダクト1の採光部3の向かい合う側面は、互いに平行に配置されているのではなく、鏡面反射材が配置された複数の鏡面反射面(図3の場合には、片側の側面にm51〜m53が配置され且つ他方の側面にも同様に配置される)が所定の角度をもって接合されており、採光部3の開口部から離れるほど、側面間の距離が徐々に大きくなるように配置されている。
【0023】
具体的には、採光部3の側面に配置された1または複数の鏡面反射面は、これら鏡面反射面で反射された太陽光の、上からみた進行方向が導光部5の延びる方向に沿って平行となるように、複数の鏡面反射面どうしのなす角度を調整して配置する。なお、複数の鏡面反射面は、入射される太陽光の太陽方位角に応じてその角度が決定される。すなわち、庇型光ダクト1が設置された地域或いは経度に基づいて決定される。
【0024】
図4は、庇部1Aの先端部分の一例を示す図である。
前述のように、庇型光ダクト1は、取り込んだ光をより多く導くために、内部の仕上げは高い鏡面反射率となっている。そして汚れによる鏡面反射率の低下を防ぐために庇部1Aの内部に外気が入らないように、採光部3の開口部は密閉されている。
具体的には、より多くの昼光を取り込めるように、採光部3の先端の開口部には光透過材からなる密閉部材31が設けられている。密閉部材31は光透過率の低下を防ぐために、防汚処理を施すことが望ましい。防汚処理としては、具体的には、透明性の高い防護膜(光触媒、ロータス表面構造を持つ撥水被膜)が考えられる。
【0025】
図5図7は、庇型光ダクト1の風抜き1C部分の構成を示す図であって、図5図6は断面図、図7は上面図である。なお、図5図7において、簡単のため各部の厚みは省略している。
図5に示すように、庇型光ダクト1は、採光部3側が庇部1Aに設けられ、放光部7側が屋内部1Bに設けられ、庇部1Aと屋内部1Bとに亙って導光部5は設けられている。庇部1Aは、建物2との間に風抜き1Cとなる間隔を空けて建物2に固定される。また、庇部1Aは、庇部1Aの建物2側の面と、建物2の外側の面と、屋内部1Bの庇部1A側の面とが平行となるように配置される。導光部5は、庇部1Aに設けられた導光部と屋内部1Bに設けられた導光部とからなり、庇部1Aの建物2の外側の面と、屋内部1Bの庇部1A側の面とが平行となり、且つ、庇部1Aの延びる方向と屋内部1Bの延びる方向とが同一直線上となるように配置することによって、庇部1Aに設けられた導光部の屋内部1Bに設けられた導光部側の面と、屋内部1Bに設けられた導光部の庇部1A側の面とが平行となり、且つ、庇部1Aに設けられた導光部の延びる方向と、屋内部1Bに設けられた導光部の延びる方向とが同一直線上に位置する。その結果、庇部1A側の導光部により導光された光が、風抜き1Cを介して屋内部1Bに設けられた導光部に伝達され、放光部7側に伝達されるようになっている。
【0026】
例えば図5に示すように、庇部1Aの上側の面と、建物2の外側の面とをブラケット1Dにより固定することにより、庇部1Aが吊り下げられて、建物2と所定の間隔をもって固定される。なお、図6に示すように、庇型光ダクト1の庇部1Aの下側の面と、建物2の外側の面とをブラケット1Dにより固定することにより、庇部1Aを下側から支持することで、建物2と所定の間隔をもって固定するようにしてもよい。
ブラケット1Dは、例えば図7に示すように、庇部1Aの幅方向両端近傍の位置で固定すればよい。
【0027】
ここで、庇部1Aの屋内部1B側の端面は、透明性の高い防護膜などで形成された密閉部材32により密閉されている。同様に、屋内部1Bの庇部1A側の端面は、透明性の高い防護膜などで形成された密閉部材33により密閉されている。これにより、庇型光ダクト1内に外気が入ることにより、庇型光ダクト1内部の汚れによる鏡面反射率の低下を防止している。密閉部材32は光透過率の低下を防ぐために、防汚処理を施すことが望ましい。防汚処理としては、具体的には、透明性の高い防護膜が考えられる。防護膜としては、光触媒、ロータス表面構造を持つ撥水被膜等を適用することができる。
【0028】
そして、屋内部1Bが天井板93の上に水平に載置されると共に、屋内部1Bの庇部1A側の端面が、窓ガラス上部近傍であり且つ、屋内の天井板近傍の建物外皮に形成した貫通孔2aに嵌め込まれ、屋内部1Bの長手方向の延長上に庇部1Aが位置するように、庇部1Aが固定される。これにより、建物外皮を貫通して庇型光ダクト1が固定されることになる。
このように配置された庇型光ダクト1において、太陽光は、開口部に設けられた密閉部材31を介して採光部3に取り込まれ、導光部5により導光され、且つ、庇部1Aの建物2側に設けられた光透過材からなる密閉部材32、屋内部1B側に設けられた光透過材からなる密閉部材33を介して、屋内部1B側に導光される。
【0029】
また、庇部1Aの内部は空洞であるため、従来の庇とは異なり、自重が軽く風の影響を受け易い。しかしながら、庇部1Aの建物2側の端部と建物2との間に、風抜き1Cを設けているため、風の影響を低減することができる。
ここで、採光部3の開口部と水平方向において正対する太陽からの光の軌跡を図7に示す。開口部と正対する太陽光の多くは水平化され、導光部5内において、垂直方向に反射されながら放光部7に導光される。
【0030】
一方、図8に示すように、開口端部と正対しない太陽光は、水平方向にも反射されることになり、その際、庇部1Aと建物2との間の風抜き1Cにより形成される隙間部分において、光が漏れる可能性がある。これはすなわち導光量の低下につながる。
そのため、図9に示すように、風抜き1Cの幅方向両端に光漏れ防止板(東)34E、光漏れ防止板(西)34Wを設ける。
この光漏れ防止板(東)34E、(西)34Wは、風抜き1C部分から水平方向への光の漏れを防止するための反射部34aと、光漏れ防止板34E、34Wを庇部1Aに固定するための固定部34bと、を備え、固定部34bと反射部34aとは連接されている。
【0031】
固定部34bは、庇型光ダクト1の長手方向の断面が図10に示すように、カタカナの「コ」又は左右逆の形状を有する。
反射部34aは、庇型光ダクト1の長手方向の断面が図11に示すように、ローマ字の「L」を上下逆にした形状又はその左右逆の形状を有する。反射部34aはローマ字のLの短辺に相当する部分が上となり且つ内側を向くように、庇部1Aの幅方向側面に沿って配置され、且つローマ字のLの長辺に相当する部分により庇部1Aと建物2との間の隙間を側面から塞ぐように配置される。
【0032】
これにより、反射部34aにおいて、ローマ字のLの長辺に対応する部分により、水平方向に進む太陽光が反射され、光漏れが防止される。また、ローマ字のLの短辺に相当する部分を設けることにより、反射部34aの長辺に対応する部分、すなわち水平方向の太陽光を反射する鏡面に、雨水等が降りかかることが防止され、鏡面が汚れることが防止される。
【0033】
光漏れ防止板34E、34Wの固定部34bを庇部1Aの建物2側の幅方向側面に固定することで、図9図12に示すように、風抜き1Cにより形成される隙間が、庇部1Aの幅方向両側から覆われ、その結果、風抜き1Cから漏れた太陽光が反射部34aにより反射され、導光部5に戻るようになっている。なお、反射部34aは、少なくとも風抜き1Cに面する側が鏡面反射材からなる。
【0034】
また、庇部1Aの上面は、開口部側に比較して建物2側がより低くなるように傾斜がつけられている。このように傾斜をつけることによって庇部1Aの上面に雨水が溜まることを防止している。庇部1Aの上面の傾斜は例えば「1/30」程度である。
また、庇部1Aの建物2側端部上面には、図7図12に示すように、雨水導板35を備える。
【0035】
この雨水導板35は、庇部1Aの上面の傾斜により雨水が風抜き1C側に流れ落ち、その結果庇部1Aの光透過材からなる密閉部材32が汚れ、光透過率が低下することを回避している。雨水導板35は、例えば板状に形成され、庇部1Aの幅と同等程度の幅を有し、且つ雨水導板35の庇部1Aの長手方向の端部が、庇部1Aの端部よりも建物2側に張り出し、且つ建物2との間に隙間を持って形成され、庇部1Aの上面を建物2側に流れる雨水が、庇部1Aの密閉部材32に降りかかることを防止する。
【0036】
また、庇型光ダクト1の設置高さが高い場合には、庇部1Aと建物2との間の距離、すなわち風抜き1Cの、庇型光ダクト1の長手方向の長さ、つまり庇部1Aと建物2との間の距離を大きくとることによって、建物2の上層に設けられた庇型光ダクト1の庇部1Aが受けた雨水の滴りを下層の庇型光ダクト1の庇部1Aで受けることができる。つまり、窓の設置位置が垂直方向の同一線上に位置する場合には、上層階の窓に設置された庇型光ダクト1の庇部1Aで受けた雨水は、風抜き1Cを伝って落下し、下層階の窓に設置された庇型光ダクト1の庇部1Aで受けることになり、その後、地上等に落下する。下層階の庇部1Aにより、上層階の庇部1Aで受けた雨水が直接地上等に落下することを回避することができるため、上層階であるほど庇部1Aと建物2との間の距離を大きくとり風抜け1Cを大きくとることによって、上層階から落下する雨水をその下の階の庇部1Aで受けることができる。そのため、例えば上層階で受けた雨水が滝のように地上等に落下することを回避することができ、歩行者等に直撃することを回避することができる。さらに、上層階で大きな風抜き1Cを設けることは、より大きな風を受ける可能性の高い上層階において、風により受ける力を十分低減することができる。これらのことは、ブラケットにより庇部1Aを上方からつり下げる場合、また下方から支える場合のいずれの場合であっても同等の作用効果を得ることができる。
【0037】
また、積雪時に、庇部1Aの上に積もった雪は庇部1Aの上で溶け、以後雨水と同等に処理されるため、雪塊が落下することを回避することができる。
また、庇部1Aの上面に、上向きの針上突起物を設置することで、庇部1Aの上にハトなどが留まらないようにしてもよい。
本実施形態における庇型光ダクト1は、以上説明したような構成を有する結果、従来の水平型光ダクト用採光部と比べて外観デザインに調和しやすい。その理由は、従来から外皮に設置されてきた庇とサイズ、形状、取り付け方法が類似しており、一見庇に見えるからである。
【0038】
つまり、以上説明したような形状を有する庇型光ダクト1は、開口面の高さが比較的小さく(例えば、100mm程度)、一見して庇のように見えるため、比較的外観デザインと調和させ易い。そのため、例えば全ての窓に採光部を設ける、或いは、採光部を外壁の上部にのみ設ける、等といった外観デザインと調和させるための工夫を行う必要はない。また、全ての窓に採光部を設けるために光ダクトの設置数が増加する、或いは、光ダクトの設置階が最上階に限定される、というような制約を受けることはなく、任意の位置に任意数の庇型光ダクト1を設置することができる。
【0039】
また、本実施形態における庇型光ダクト1は、採光部3の開口面の高さが比較的低くてすむため、例えば、図13に示すように、庇型光ダクト1を多段化して配置することも可能である。図13では、庇型光ダクト1が3段重ねて配置されている。このように、配置する採光部3の数を増やすことで、利用できる昼光の量を増加させたり、個々の庇型光ダクト1から導かれた昼光を別々の区画に導光したりすることも可能である。積層された個々の庇型光ダクト1から導かれた昼光を別々の場所で利用する場合、1つの庇型光ダクト1で導光した昼光を分けて各区画に導光する場合とは異なり、ほぼ同量の昼光が導光される。前述のように、導光される昼光は水平化されているため、各庇型光ダクト1で導光される距離が異なる場合であっても、ほぼ同じ量の昼光を導光することができる。つまり、放光口7aから放光される光量を同等とすることができるため、放光口7aからの光量を同等に制御するための制御装置等を設ける必要はない。
【0040】
また、従来の光ダクトは受光量の確保等のために、光ダクトの開口面の高さが比較的大きく、そのため、庇の上に光ダクトを取り付けると、その分、庇と上階の床スラブとの間に光ダクトを取り付ける空間を確保する必要がある。しかしながら本実施形態における庇型光ダクト1は、前述のように、庇型光ダクト1の開口面の高さは比較的小さくてすむため、庇部1Aと上階の床スラブとの間に庇型光ダクト1を設けるための空間の高さはより低くてすむ。そのため、階高の高い建物に適用が限られることはなく、適用範囲を拡大することができる。
【0041】
また、このように、庇型光ダクト1は、階高の高い建物に適用が制限されるものではなく、すなわち比較的階高の低い建物であっても適用することができるため、例えば、ライトシェルフを適用できない一般的な階高の建物にも適用することができる。つまり、ライトシェルフは、窓面の中段に庇を設けて直射日光の遮蔽を図ると共に、庇より上部の窓から庇で反射された光を取り入れて昼光利用するものである。そのため、庇よりも上部に比較的大きな窓が必要であり、階高の比較的高い建物に適用が限定される。高い階高が必要なため、床面積当たりの建築コストが高くなることも多く、階高の面や価格の面でライトシェルフによる昼光を利用できないこともある。しかしながら、庇型光ダクト1を適用することによって、昼光利用が可能となる。ライトシェルフはコア部など窓の無い居室での昼光利用はできないが、光ダクトによる昼光利用はコア部など窓の無い居室での昼光利用を可能とする。
【0042】
言い換えれば、利用したい部分の相対的位置や階高の面、また、価格の面で、ライトシェルフや従来の光ダクト等による昼光利用ができない場合でも、上述のように、庇型光ダクト1を適用することによって昼光利用が可能となる。
ちなみに、疑似水平光を用いて、庇型光ダクト1に様々な角度で光を照射し、水平化されている光の量を計測した結果、水平化性能があることが確認できた。この結果をもとに、厚み約0.1mの庇部1Aを有する庇型光ダクト1を用いて、庇部1Aの屋外側端部から4.75m先の居室(例えば洗面所等4.5m)に太陽光を導いたときの照度が100(lx)以下である場合には、100(lx)となるように補光する構成とした場合、照明電力を31.6%削減可能(9:00〜16:00)との効果が試算された。
【0043】
また、庇型光ダクト1は、屋外及び屋内に亙って配置されるため、屋外の冷気が庇型光ダクト1の例えば金属製ダクトを伝わって室内側に伝わる可能性がある。しかしながら、風抜き1Cを設けることによって、屋外側の金属製ダクトと、屋内側の金属製ダクトとが分断されるため、金属製ダクトをつたわって屋外側の冷気が、室内側の金属製ダクトに伝達されることを回避することができる。その結果、金属製ダクトを介して冷気が屋内側に伝達されることによって、屋内側の金属製ダクトにおいて結露が生じることを回避することができる。
【0044】
なお、上記実施形態においては、プリズムを用いた水平型光ダクトを用いた場合について説明したが、これに限るものではなく、開口面の高さが比較的小さく、太陽光を水平に維持して導光するようにした水平型光ダクトを用いることも可能である。
また、上記実施形態においては、窓枠の上に庇型光ダクト1を設ける場合について説明したが必ずしも窓枠の上に限るものではなく、屋内部1Bが天井板93の上に水平に配置される位置であればよい。
また、上記実施形態においては、屋内部1Bが天井板93の上に水平に配置される場合について説明したが必ずしも天井板93の上に限るものではなく、天井板93が無い場合でも配置することができ、屋内部1Bを水平に配置することができればよく、すなわち庇部1A及び屋内部1Bに設けられる導光部5を水平に維持することができればよい。
【0045】
また、庇部1Aは、導光部5を水平に維持することができれば、より張り出して設けることも可能である。例えば、図14に示すように、通路側に設けられた窓に、庇型光ダクト1を取り付けることも可能である。この場合には、通路の屋根があることから、通路の屋根の幅相当だけ庇部1Aを張り出して形成し、例えば通路の屋根に庇部1Aを固定すればよい。このように、通路の屋根に庇部1Aを配置する場合であっても、庇部1Aの開口面の高さは比較的小さいため、比較的屋根のデザインと調和させ易い。
【0046】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。
さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0047】
1 庇型光ダクト
1A 庇部
1B 屋内部
1C 風抜き
2 建物
3 採光部
5 導光部
7 放光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14