特許第6444688号(P6444688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444688
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】むくみ抑制または改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/48 20060101AFI20181217BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20181217BHJP
   A23L 11/00 20160101ALI20181217BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   A61K36/48
   A61P7/10
   A23L11/00 D
   A61K131:00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-211330(P2014-211330)
(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-79124(P2016-79124A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼ 発行者名 株式会社ヘルスビジネスマガジン社 刊行物名 ヘルスライフビジネス 2014年7月1日付 第10面 発行年月日 2014年7月1日 ▲2▼ 掲載年月日 2014年8月1日(2014年8月の第1週) 掲載アドレス htps://www.foodchemicalnews.co.jp/ htps://www.foodchemicalnews.co.jp/topics/1160.html htps://www.foodchemicalnews.co.jp/wp/image/HP−omote−ura.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】591183625
【氏名又は名称】フジッコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 文男
(72)【発明者】
【氏名】戸田 登志也
【審査官】 原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−095940(JP,A)
【文献】 特開2006−290742(JP,A)
【文献】 特開2005−082587(JP,A)
【文献】 特表2011−529874(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1935000(CN,A)
【文献】 中薬大辞典 第二巻,株式会社小学館,1998年,初版第三刷,p. 807,左欄
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/48
A23L 11/00
A61P 7/10
A61K 131/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒大豆種皮の酸性抽出物を有効成分とするむくみ抑制または改善剤。
【請求項2】
医薬品、医薬部外品または飲食物である請求項1記載のむくみ抑制または改善剤。
【請求項3】
黒大豆種皮の酸性抽出物を有効成分とするむくみ抑制または改善用の経口組成物用添加剤。
【請求項4】
前記経口組成物が経口医薬品組成物、経口医薬部外品組成物または食品組成物(飲料を含む)である請求項3記載の経口組成物用添加剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体局所のむくみ、特に下肢部のむくみを抑制または改善する効果を有する可食性組成物に関する。当該可食性組成物は、それ自体、経口医薬品、経口医薬部外品、及び飲食物として使用されるほか、むくみ抑制または改善を効能・効果とする経口医薬品、経口医薬部外品、及び飲食物を製造するための添加物として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
長時間の立位や座位などによって発生する自然発生的な身体局所のむくみ、特に下肢部のむくみは、靴が履き難くなるなど日常活動に支障が生じるといった問題のほか、だるさ、重さ、つっぱり感、痛みなどの不快感(身体的不調)を伴う場合もある。またむくみ(血管性むくみ)が慢性化すると慢性静脈不全になりやすくなったり、さらにこれが重症化すると、静脈瘤、下肢の皮膚の褐色調変色、または下肢の皮膚潰瘍などを招く場合があるとされている。
【0003】
このような身体局所、特に下肢部のむくみ(血管性むくみ)は、立位や座位などによる毛細血管の静水圧の上昇により、毛細血管から細胞間質に体液が漏出し。さらに細胞の水分代謝が停滞することで体液回収のバランスが崩れ、細胞間質に体液が停滞することが主な原因と考えられている。具体的には、立位や座位が長く続くと、足の筋ポンプが機能しなくなり、そのため血液が心臓にむかって流れる血流は停滞する。このとき、血液自体の重量が静脈内にかかるため、静脈圧(静脈内の圧力)が上昇し、静脈が拡張した状態となり、当該静脈の拡張により、静脈内の血液は下肢に溜まりやすくなる。このように、下肢で静脈環流が滞ると、下肢静脈内の圧力が上昇するため、血管内から血管外へ血液の血漿成分(水分)が滲み出て、細胞外に水分が貯留する。これが下肢部のむくみの原因である。
【0004】
むくみの改善方法としては、従来から、靴下やストッキングで足を適度に締め付ける方法のほか、足温器や足マッサ−ジ器などを利用して体外から刺激を与える方法が提案されている。また飲食物等の可食性組成物を服用(摂取)する方法としては、ヒハツを有効成分とするむくみ感改善剤(特許文献1)、α−グルコシル化ヘスペリジンを有効成分とするむくみ改善剤(特許文献2)、及びロイシン、イソロイシン及びバリンを含有するむくみの予防又は改善用食品組成物(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−104109号公報
【特許文献2】特開平10−218777号公報
【特許文献3】特開2002−330728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、むくみ、特に下肢部のむくみを抑制または改善する効果を発揮する可食性組成物を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は当該可食性組成物を、経口投与(または経口摂取)により使用される「むくみ抑制または改善剤」として、また経口投与(または経口摂取)される経口組成物に、むくみ抑制または改善作用を付加するために用いられる添加剤、つまり「むくみ抑制または改善用の経口組成物用添加剤」として提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討を重ねていたところ、黒大豆種皮抽出物、特に黒大豆種皮の酸性抽出物に優れたむくみ抑制または改善作用があることを見出し、さらに研究を重ねることによって本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、下記の実施形態を有するものである。
(I)むくみ抑制または改善剤
I−1.黒大豆種皮抽出物を有効成分とするむくみ抑制または改善剤。
I−2.黒大豆種皮加工物が黒大豆種皮の酸性抽出物である、I−1記載のむくみ抑制または改善剤。
I−3.上記酸性抽出物が、黒大豆種皮からスルホ基含有酸を含む溶媒を用いて抽出された組成物である、I−2記載のむくみ抑制または改善剤。
I−4.スルホ基含有酸が、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホ酸、及び10−カンファースルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、I−3記載のむくみ抑制または改善剤。
I−5.上記抽出物が、黒大豆種皮を加温条件下、30℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは50〜80℃の条件下で抽出して得られたものである、I−1〜I−4のいずれかに記載するむくみ抑制または改善剤。
I−6.経口投与形態を有するものであるI−1〜I−5のいずれかに記載するむくみ抑制または改善剤。
I−7.錠剤、丸剤、カプセル剤(硬質カプセル、軟質カプセル)、散剤、顆粒剤、トロ−チ錠、液剤、及びゼリー剤から選択される製剤形態を有する、I−1〜I−6のいずれかに記載するむくみ抑制または改善剤。
I−8.飲食物、好ましくは水または清涼水と組み合わせて使用されるI−1〜I−7のいずれかに記載するむくみ抑制または改善剤。
【0009】
(II)むくみ抑制または改善用の経口組成物用添加剤
II−1.黒大豆種皮抽出物を有効成分とするむくみ抑制または改善用の経口組成物用添加剤。
II−2.黒大豆種皮抽出物が黒大豆種皮の酸性抽出物である、II−1記載の経口組成物用添加剤。
II−3.上記酸性抽出物が、黒大豆種皮からスルホ基含有酸を含む溶媒を用いて抽出された組成物である、II−2記載の経口組成物用添加剤。
II−4.スルホ基含有酸が、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホ酸、及び10−カンファースルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、II−3記載の経口組成物用添加剤。
II−5.上記抽出物が、黒大豆種皮を加温条件下、30℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは50〜80℃の条件下で抽出して得られたものである、II−1〜II−4のいずれかに記載する経口組成物用添加剤。
II−6.飲食品用の添加剤であるII−1〜II−5のいずれかに記載する経口組成物用添加剤。
II−7.錠剤、丸剤、カプセル剤(硬質カプセル、軟質カプセル)、散剤、顆粒剤、トロ−チ錠、液剤、及びゼリー剤から選択される製剤形態を有する、II−1〜II−6のいずれかに記載する経口組成物用添加剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のむくみ抑制または改善剤によれば、長時間の立居や座位等によって生じる身体局所、特に下肢部のむくみを抑制するかまた改善することができる。また本発明のむくみ抑制または改善用の経口組成物用添加剤は、経口組成物に対してむくみ抑制または改善作用を付与または強化するために用いることができる。つまり、本発明の添加剤は、むくみ抑制または改善用の経口組成物の調製に使用することができ、斯くして、長時間の立居や座位等によって生じる身体局所、特に下肢部のむくみを抑制するかまた改善する効果に優れたむくみ抑制または改善用経口組成物(経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品)を調製し、提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)むくみ抑制または改善剤
本発明のむくみ抑制または改善剤は、黒大豆種皮の抽出物、好ましくは可食性の抽出物を有効成分とすることを特徴とする。
【0012】
本発明において用いられる黒大豆とは、マメ科ダイズ属Glycine max(L.)Merrillに属する短日性の一年生草木の黒い種子(子実)(黒大豆)である。黒大豆には、例えば中生光黒、トカチクロ、いわいくろ、玉大黒、丹波黒、信濃黒及び雁喰などの品種があるが、黒大豆であればどの品種の種子を使用しても良い。
【0013】
黒大豆を、例えば分別機等に供することで種皮と胚(子葉および胚軸)とに分別することができる。本発明では当該分別により得られる黒大豆の種皮を加工原料として使用することができる。加工処理に際して、黒大豆の種皮は、分別したそのままの状態(生または乾燥物)のものであっても、またそれを破砕若しくは粉砕した状態のもの(破砕物、粉砕物、及び粉末状物を含む)であってもよい。
【0014】
黒大豆種皮からの抽出方法としては、一般に用いられる方法を利用することができる。制限はされないが、例えば水溶性溶媒中に生または乾燥処理した黒大豆種皮(そのままの形状、若しくは粗末、細切、破砕、粉砕状)を浸漬する方法;必要に応じて攪拌しながら抽出する方法;またはパーコレーション法等を挙げることができる。抽出に使用する温度条件は、特に制限されず、低温、常温、加温条件(高温を含む)のいずれの条件でもよいが、好ましくは加温条件(高温を含む)である。より具体的には、後述の含水低級アルコールで抽出する場合は30℃以上、好ましくは40℃〜60℃の範囲であり、制限されないものの、かかる温度条件での抽出を60分以上、好ましくは90分〜120分程度行なう。また、酸性水溶液で抽出する場合は、50℃以上、好ましくは50〜80℃の範囲であり、制限されないものの、かかる温度条件での抽出を10分以上、好ましくは20分〜120分程度行う。
【0015】
抽出に使用する水溶性溶媒としては、特に制限されないが、水、低級アルコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールを例示することができる。低級アルコールとして好ましくはエタノールを挙げることができる。水溶性溶媒として好ましくは、水、または含水低級アルコール(特に含水エタノール)であり、より好ましくは水である。尚、含水低級アルコールを溶媒として使用する場合、それに含まれる低級アルコール量は80容量%以下であることが好ましい。
【0016】
抽出に使用する水溶性溶媒は酸性に調整されていることが好ましい。特に制限されないが、水溶性溶媒のpH範囲は、好ましくはpH1〜4程度の範囲であり、特にpH1〜2の範囲であることが好ましい。水溶性溶媒のpHを、かかる範囲になるように調整するため、通常、有機酸や無機酸などの適当な酸性物質を用いることができる。
【0017】
酸性物質として、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸;並びにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースフホン酸、フルオロスルホン酸(以上、スルホン酸)、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸(以上、カルボン酸)などの有機酸を挙げることができる。好ましくはスルホ基を有する酸であり、具体的には硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースフホン酸、及びフルオロスルホン酸を挙げることができる。中でも好ましくは硫酸である。なお、水溶性溶媒における酸の規定度は、水溶性溶媒が上記pH範囲になるような範囲であれば特に制限されないものの、好ましくは0.01〜0.5Nの範囲、より好ましくは0.03〜0.5Nの範囲である。
【0018】
本発明の効果を奏することを限度として、得られた抽出液に対し、必要に応じて、さらにろ過、共沈または遠心分離による固形物の除去、抽出処理、吸着処理等の精製処理を行ってもよい。
【0019】
斯くして調製される黒大豆種皮抽出物は、本発明の効果を奏することを限度として、さらに必要に応じて、UHT殺菌、レトルト殺菌処理といった公知の方法による殺菌処理を行ってもよい。
【0020】
本発明のむくみ抑制または改善剤は、経口投与形態であれば、その形態を特に問わない。また経口投与(経口摂取)形態を有するものである限り、その用途の別(医薬品、医薬部外品、飲食物[特定保健用食品や栄養機能性食品などの保健機能性食品やサプリメントを含む])は、特に制限されるものではない。
【0021】
経口投与形態として、具体的には、上記抽出方法により調製される抽出液を液剤(エキス形態やシロップを含む)またはゼリー剤の形態に調製したもの;抽出液を常法により粉末状または顆粒状に製剤化した散剤、細粒剤、または顆粒剤;液剤や散剤または顆粒剤をカプセルに充填したカプセル剤(硬質カプセル剤、軟質カプセル剤);または粉末または顆粒をさらに打錠して錠剤形態としたものなどを挙げることができる(固形製剤)。
【0022】
本発明のむくみ抑制または改善剤は、上記黒大豆種皮抽出物と薬学的にまたは食品として許容される従来公知の可食性の担体、賦形剤等を組み合わせて各種剤型(経口投与形態)に調製することもできる。
【0023】
本発明のむくみ抑制または改善剤を液状製剤の形態とする場合、凍結保存することもでき、また凍結乾燥等により水分を除去して保存してもよい。凍結乾燥製剤やドライシロップ等は、使用時に滅菌水等を加え、再度溶解して使用される。
【0024】
本発明のむくみ抑制または改善剤を固形剤の形態とする場合、例えば、錠剤の場合であれば、担体として当該分野で従来公知のものを広く使用することができる。このような担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、アルギン酸ナトリウム等の結合剤;乾燥デンプン、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、クロスポビドン、ポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。さらに錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。また、前記有効成分を含有する組成物を、ゼラチン、プルラン、デンプン、アラビアガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等を原料とする従来公知のカプセルに充填して、カプセル剤とすることができる。
【0025】
また、丸剤の形態とする場合、担体として当該分野で従来公知のものを広く使用できる。その例としては、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0026】
上記以外に、添加剤として、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤など、製剤の形態に応じて適宜選択し使用することができる。
【0027】
これらの形態はいずれも当該分野における通常の方法を用いて調製でき、例えば、錠剤は、上記有効成分とその他錠剤を得るために必要な賦形剤等を適宜添加し、よく混合分散させたのち打錠して得ることができる。また、散剤は、上記有効成分とその他散剤を得る為に必要な賦形剤等を適宜添加し、好適な方法にて混合、粉体化して得ることができる。
【0028】
本発明のむくみ抑制または改善剤の投与量(摂取量)は、被験者の状態や症状の程度によって適宜変更され得るが、成人一人(体重50kg)に対する1日あたりの投与量(摂取量)は、当該むくみ抑制または改善剤に含まれる黒大豆種皮抽出物(乾燥量)の量に換算して通常40〜160mg程度である。通常一日1回または2〜3回に分けて経口投与の形態で用いられる。服用時刻は、特に限定されないが、朝、または長時間立位または座位する前が好ましい。また食前または食間が好ましい。
【0029】
本発明のむくみ抑制または改善剤は、むくみ、特に下肢部にむくみを生じやすい人に対して広く適用することができる。下肢部にむくみを生じやすいか否かは、後述する実験例1に従って評価することができ、具体的には、朝と夕方とで下肢部の体積を測定比較し、夕方測定した下肢部の体積が朝測定した下肢部の体積よりも大きい場合(体積比[夕方の下肢部体積/朝の下肢部体積]が1を超える場合)をむくみを生じやすいと判断することができる。この体積比が大きいほど、むくみを生じる程度が大きいことになる。
【0030】
なお、「むくみ」は、浮腫と同義で用いられ、組織液又はリンパ液がなんらかの原因によって細胞内、細胞間隙、又は体腔内に貯留した状態であり、皮下組織においてみられる。特に本発明が対象とする「むくみ」は日常生活における立位や座位により生じる自然発生的なむくみであり、拘束はされないが、毛細血管からの体液の漏出と静脈及びリンパ系による体液の回収とのバランスが損なわれた場合に生じるものであると考えられる。
【0031】
本発明のむくみ抑制または改善剤は、当該身体局所、特に下肢部のむくみに対して優れた抑制または改善効果を発揮する。
【0032】
(II)むくみ抑制または改善用の経口組成物用添加剤
本発明のむくみ抑制または改善用の経口組成物用添加剤は、黒大豆種皮抽出物、好ましくは可食性の黒大豆種皮抽出物を有効成分とすることを特徴とする。
【0033】
当該本発明の添加剤は、その有効成分である黒大豆種皮抽出物が有するむくみ抑制または改善作用に基づいて、対象とする経口組成物にむくみ抑制または改善作用を付与するために用いられる添加剤である。また本発明の添加剤は、むくみ抑制または改善作用を有する経口組成物に対して、その作用をさらに強化するためにも用いることができる。
【0034】
ここで、本発明が対象とする経口組成物には、人に対して経口的に投与する組成物または人が摂取する組成物、具体的には経口医薬品組成物、経口医薬部外品組成物、及び食品組成物(飲料を含む。以下、同じ)が含まれる。好ましくは食品組成物である。
【0035】
本発明の添加剤の原料として使用する黒大豆の種類、黒大豆種皮の取得方法、黒大豆種皮抽出物、特に抽出物の好適な一態様である黒大豆種皮酸性抽出物の調製方法は、上記(I)で説明した通りであり、本欄(II)において援用することができる。
【0036】
本発明の添加剤は、可食性の黒大豆種皮抽出物のなかでも、黒大豆種皮から水溶性溶媒にて加温酸性条件下で抽出して得られる抽出物を有効成分とすることが好ましい。
【0037】
また本発明の添加剤は、黒大豆種皮を原料として溶媒抽出、好ましくは酸性溶媒抽出により調製される組成物を有効成分とする。
【0038】
本発明の添加剤は、黒大豆種皮抽出物そのものであってもよいし、また黒大豆種皮抽出物に薬学的にまた食品として許容される従来公知の可食性の担体、賦形剤等を組み合わせて調製されたものであってもよい。本発明の添加剤は、上記経口医薬品、経口医薬部外品、及び/又は飲食物に添加配合して、むくみ抑制または改善用組成物(経口組成物)を調製するために用いられる。このため、その限りにおいて、その形態を特に問わず、上記抽出方法により調製される液剤(エキス形態やシロップを含む)やゼリー剤の形態を有していても、また当該液剤を常法により粉末状または顆粒状に製剤化した散剤、細粒剤、顆粒剤;液剤や散剤または顆粒剤をカプセルに充填したカプセル剤(硬質カプセル剤、軟質カプセル剤)、または粉末または顆粒をさらに打錠して錠剤形態としたものを使用してもよい(固形製剤)。
【0039】
経口医薬品、経口医薬部外品、及び/又は飲食物に添加配合して用いられる本発明の添加剤の量は、本発明の添加剤を配合することで調製されるむくみ抑制または改善用の経口組成物の一日投与(摂取)が、黒大豆種皮抽出物(乾燥量)の量に換算して、通常40〜160mg程度になるよう割合を挙げることができる。
【0040】
なお、本発明の添加剤は、上記経口組成物(経口医薬品、経口医薬部外品、及び/又は飲食物)を調製する工程で他の原料とともに原料の一つとして使用されるか、或いは経口組成物を服用(投与または摂取)する際に、当該経口組成物に用事配合して使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実験例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記の実施例において特に言及しない場合は、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味するものとする。
【0042】
実験例1 黒大豆種皮抽出物(含水エタノール抽出物)の抗むくみ作用
3名の被験者(被験者A〜C)を対象として、黒大豆種皮の酸性抽出物及び含水エタノール抽出物のそれぞれについて抗むくみ作用を評価した。
【0043】
(1)被験試料の調製
(a)黒大豆種皮の含水エタノール抽出物
黒大豆種皮の含水エタノール抽出物は、下記の方法で調製した。
(1)黒大豆種皮(生)500gを抽出溶媒として40%濃度のエタノール水溶液15Lに浸漬し、40℃に加温しながら90分間撹拌抽出する。
(2)抽出後、黒大豆種皮と液とを固液分離し、液を回収する。
(3)回収した液を遠心分離を行ない、固液分離では取り除けない浮遊固形物を除去する。
(4)得られた抽出液を減圧下で加熱することにより蒸発させ、濃縮する。
(5)得られた濃縮液に、賦形剤としてデキストリンを添加する。
(6) これを加熱殺菌後、乾燥して粉末(合計119.8g、黒大豆種皮抽出物31.9g含有)とし、これを100mgずつカプセル基剤に充填して、被験試料1(1カプセルあたり乾燥粉末100mg含有)とした。
【0044】
(b)プラセボ
プラセボとして賦形剤(デキストリン)だけをカプセル基剤に充填したカプセル(1カプセルあたりデキストリン100mg含有)を使用した。
【0045】
(2)実験方法
(1)朝9時〜9時半に各被験者の右膝下の体積を測定する。
(2)12時〜13時の間に、上記で調製した被験試料1、またはプラセボを3カプセルずつ経口摂取する。なお、被験試料1には3カプセル(乾燥粉末合計300mg)あたり、黒大豆種皮抽出物が乾燥重量で80mg含まれている。
(3)夕方17時半〜18時に再び各被験者の右膝下下肢部の体積を測定する。
(4)各被験者とも、上記試験を被験試料およびプラセボともに2日間ずつ行った(クロスオ−バ−試験)。
【0046】
膝下体積の測定は、足先から膝下までがすべて入る大きさのアクリル製の水槽(タテ30cm×横20cm×高さ60cm)を用いて行った。具体的には、当該水槽に予め深さ45cmまで水を張っておき(総容積22.47L)、その中に右脚を入れ、上昇した水位から右膝下下肢部の体積を求めた。なお、水槽に脚を入れる深さが毎回変わらないように、膝中央部とひかがみに印を付けておき、当該印が水面と一致するようにした。測定は2回ずつ行い、その平均値を求めた。
【0047】
(3)実験結果
朝夕の右膝下下肢部の体積(cm3)とその体積差([夕方の体積(cm3)]−[朝の体積(cm3)])の平均を、各被験者毎に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
この結果から、黒大豆種皮の含水エタノール抽出物(被験試料1)は、経口的摂取によって、下肢部に対して抗むくみ作用を発揮することがわかる。
【0050】
実験例2 黒大豆種皮抽出物(酸性熱水抽出物)の抗むくみ作用の評価
23〜36才の女性20名(被験者)(実験例1の被験者A〜Cを含む)を対象として、黒大豆種皮抽出物の抗むくみ作用を評価した。
【0051】
(1)被験試料の調製
黒大豆種皮の酸性熱水抽出物は下記の方法により調製した。
(1)黒大豆種皮(生)500gを抽出溶媒として希硫酸(0.3%w/v)15Lに浸漬し、55〜60℃に加熱しながら20分間撹拌抽出する。
(2)抽出後、黒大豆種皮と液とを固液分離し、液を回収する。
(3)回収した液を遠心分離を行ない、固液分離では取り除けない浮遊固形物を除去する。
(4)得られた抽出液を合成吸着樹脂(セパビーズSP700:三菱化学(株)製)を入れたカラムに投入し、樹脂に吸着させる。
(5)カラム内に残存する硫酸を洗い流すため、カラムに水を通液して樹脂を洗浄する。
(6)カラムに59容量%濃度のアルコ−ル水溶液を通液して、樹脂に吸着されたポリフェノールを溶出させる。
(7)回収した溶出液(アルコール溶液)を減圧下で加熱することにより蒸発させ、濃縮する。
(8)得られた濃縮液に、賦形剤としてデキストリンを添加する。
(9)加熱殺菌する。
(10)加熱殺菌後の濃縮液を噴霧乾燥して粉末(合計42.5g、黒大豆種皮酸性熱水抽出物34g含有)とし、これを100mgずつカプセル基剤に充填して、被験試料2(1カプセルあたり乾燥粉末100mg含有)とした。一方、プラセボとして賦形剤(デキストリン)のみを充填したカプセル(1カプセルあたりデキストリン100mg含有)を用いた。
【0052】
(2)実験方法
実験例1(2)に記載する方法に従って、20名の被験者に、被験試料2またはプラセボを1カプセルずつ、それぞれ2日間服用してもらい、服用前(朝)と服用後(夕方)とで、右膝下下肢部の体積を比較し、被験試料2の抗むくみ作用を評価した。なお、被験試料2には1カプセル(乾燥粉末合計100mg)あたり、黒大豆種皮酸性熱水抽出物が乾燥重量で80mg含まれている。
【0053】
(3)実験結果
(3−1)朝夕の右膝下下肢部の体積(cm3)とその体積差([夕方の体積(cm3)]−[朝の体積(cm3)])の20名の被験者の平均値を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
この結果から、被験試料2(黒大豆種皮酸性熱水抽出物)を経口摂取することで、下肢部のむくみが有意に抑制(または改善)することがわかる。つまりこのことから、黒大豆種皮酸性熱水抽出物には、下肢部のむくみを抑制または改善する作用(抗むくみ作用)があることが判明した。
【0056】
(3−2)また、実験例1で実験した被験者A〜Cに対して、被験試料2(黒大豆種皮酸性熱水抽出物)を経口摂取させた結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
この結果から、黒大豆種皮の含水エタノール抽出物(被験試料1)よりも、被験試料2(黒大豆種皮酸性熱水抽出物)のほうが抗むくみ作用に優れていることがわかる。
【0059】
実験例3 黒大豆種皮酸性熱水抽出物の抗むくみ作用の評価
23〜30才の女性3名(被験者D、E及びF)を対象として、黒大豆種皮酸性熱水抽出物の抗むくみ作用の用量依存性を評価した。
【0060】
(1)実験方法
実験例2で調製した黒大豆種皮酸性熱水抽出物含有乾燥粉末を50mg(黒大豆種皮酸性熱水抽出物40mg含有)、または100mg(黒大豆種皮酸性熱水抽出物80mg含有)、または200mg(黒大豆種皮酸性熱水抽出物160mg含有)を、実験例1と同じ方法で3名の被験者に経口摂取してもらい(昼間)、朝夕に右膝下下肢部の体積を測定して(2日間、2回ずつ測定)、朝夕の下肢部体積(cm3)の差([夕方の体積(cm3)]−[朝の体積(cm3)])から、当該被験試料のむくみ抑制または改善効果を調べた。なお、同被験者に、別の日に、被験試料を摂取することなく、朝夕に右膝下下肢部の体積を測定してもらい(2日間、2回ずつ測定)、この体積差([夕方の体積(cm3)]−[朝の体積(cm3)])をコントロ−ル値とした。
【0061】
(2)実験結果
表4に、朝夕の右膝下下肢部の体積差(cm3)の平均値を各被験者毎に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
この結果から、被験試料(黒大豆種皮抽出物)を経口摂取することで、下肢部のむくみが有意に抑制(または改善)することがわかる。用量の範囲としては、少なくとも今回検討した黒大豆種皮酸性熱水抽出物によれば、乾燥重量として40mg〜160mgの範囲において、本発明の所望の効果が得られることがわかる。
【0064】
黒大豆種皮抽出物の処方例を以下に示す。
処方例1 ソフトカプセル
下記の原料を用いて、定法に従ってソフトカプセルを調製した。なお、黒大豆種皮抽出物として、実験例2(1)の方法に従って調製した黒大豆種皮の酸性熱水抽出物を用いた。
植物油脂:158.6mg
ゼラチン:135.2mg
黒大豆種皮抽出物:100mg
グリセリン:30.2mg
レシチン:30mg
ミツロウ:26mg
ビタミンE:20mg。
【0065】
処方例2 錠剤
下記の原料を用いて、定法に従って錠剤を調製した。なお、黒大豆種皮抽出物として、実施例1(1)の方法に従って調製した黒大豆種皮の含水エタノール抽出物を用いた。
デキストリン:179.69mg
黒大豆種皮抽出物:100mg
還元水あめ:28.56mg
結晶セルロース:26.51mg
ステアリン酸カルシウム:5.25mg
微粒二酸化ケイ素:5.25mg
ヒドロキシプロピルセルロース:4.77mg。
【0066】
処方例3 個包装スティックゼリー
下記の原料を用いて、定法に従って個包装スティックゼリーを調製した。なお、黒大豆種皮抽出物として、実施例1(1)の方法に従って調製した黒大豆種皮の含水エタノール抽出物を用いた。
希少糖含有シロップ:1000mg
黒大豆種皮抽出物:100mg
ゲル化剤(増粘多糖類):100mg
甘味料(キシリトール、スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム):70mg
香料:20mg
水:8710mg