特許第6444691号(P6444691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444691
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】燃料電池システムの運転制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20181217BHJP
   H01M 8/04119 20160101ALI20181217BHJP
   H01M 8/04291 20160101ALI20181217BHJP
   H01M 8/04828 20160101ALI20181217BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20181217BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20181217BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20181217BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20181217BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04119
   H01M8/04291
   H01M8/04828
   H01M8/04007
   H01M8/04701
   H01M8/00 Z
   H01M8/04858
   H01M8/04 J
   H01M8/10
【請求項の数】21
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-215695(P2014-215695)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-15302(P2016-15302A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0082646
(32)【優先日】2014年7月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】クォン、サン、ウク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、スン、イル
(72)【発明者】
【氏名】ク、ジェ、ホ
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−211935(JP,A)
【文献】 特開2007−066565(JP,A)
【文献】 特開2007−005064(JP,A)
【文献】 特開2004−047427(JP,A)
【文献】 特開2011−113647(JP,A)
【文献】 特開2008−123930(JP,A)
【文献】 特開2013−101844(JP,A)
【文献】 特開2013−219042(JP,A)
【文献】 特開平09−245826(JP,A)
【文献】 特開2012−221890(JP,A)
【文献】 特開2007−123095(JP,A)
【文献】 特開2007−234452(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/017028(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0092617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックへの空気過給状態または燃料電池スタックの劣化状態に基づいて前記燃料電池スタック内の水不足状態を判断する段階と、
前記判断された状態に応じて燃料電池システムの診断レベルを分類する段階と、
前記分類された診断レベルに対応する少なくとも一つの回復運転モードを選択して回復運転させる段階とを含んでなり、
前記分類する段階は、
前記判断する段階で、前記燃料電池システムの故障に起因して前記燃料電池スタックへの空気過給が予測される第1状態と判断されると、前記第1状態を第1診断レベルに分類する段階と、
前記判断する段階で、前記燃料電池スタックへ空気が過給されて前記燃料電池スタック内の水不足発生が予測される第2状態であると判断されると、前記第2状態を第2診断レベルに分類する段階と、
前記判断する段階で、水不足による前記燃料電池スタックの劣化が進んだ第3状態であると判断されると、前記第3状態を第3診断レベルに分類する段階とを含み、
前記回復運転させる段階は、
前記分類された診断レベルに応じて、前記選択された回復運転モードの数を異ならせて回復運転させる段階を含むことを特徴とする、燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項2】
前記第2状態は、前記燃料電池スタックの出力電流消耗量に対して前記燃料電池スタックへ過給される空気量、または前記燃料電池スタックのカソード側相対湿度の推定値から算出される前記カソード側の残存水の変化に基づいて判断されることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項3】
前記第2状態は、前記燃料電池スタックの出力電流消耗量に要求される空気量と現在燃料電池スタックへ供給される空気量との差である空気過給量および前記燃料電池スタックの運転温度に基づいて算出された結果値が第1基準値以上である状態であることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項4】
前記第2状態は、前記燃料電池スタックの出力電流消耗量に要求される空気量と現在燃料電池スタックへ供給される空気量との比率および前記燃料電池スタックの運転温度に基づいて算出された結果値が第1基準値以上である状態であることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項5】
前記燃料電池スタックのカソード側相対湿度の推定値は、前記燃料電池スタックのカソー側入口および出口の温度、前記燃料電池スタック入口の空気流量、ならびに前記燃料電池スタックの生成電流量に基づいて推定されることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項6】
前記残存水の変化は、前記カソード側出口の相対湿度が前記推定値であるときおよび前記カソード側出口の相対湿度が90〜110%であるときのカソード側出口の水蒸気流量に基づいて算出されることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項7】
前記カソード側出口の水蒸気流量は、前記カソード側出口の水蒸気圧、前記燃料電池スタック入口の空気流量による前記カソード側出口の空気圧、および前記燃料電池スタック入口の空気流量に基づいて算出されることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項8】
記判断する段階、前記燃料電池の電流および電圧、インピーダンスまたは電流遮断法を用いて、前記燃料電池スタックの劣化が進んだ前記第3状態であると判断することを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項9】
前記回復運転モードは、前記燃料電池スタックの冷却水入口および出口の温度を制御して前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モード、前記燃料電池システムのアイドルストップ進入条件を緩和させる回復運転モード、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モード、基本空気供給流量を下方調整する回復運転モード、および最小化学量論比(SR)で前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モードを含むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項10】
前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードは、冷却水入口および出口の目標温度を基準温度より低く設定して前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードであることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項11】
前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードは、冷却水入口および出口の温度を実際の温度より所定のオフセット分だけ高い温度に設定し、設定された温度に合わせて強制冷却させる回復運転モードであることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項12】
前記回復運転させる段階は、
前記分類された診断レベルに応じて、前記設定する基準温度およびオフセットを可変させて回復運転させる段階であることを特徴とする、請求項10または11に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項13】
前記アイドルストップ進入条件は、燃料電池車両の負荷が所定の基準値より小さく、バッテリーの充電状態(SOC)が所定の充電状態より高い場合であり、
前記アイドルストップ進入条件を緩和させる回復運転モードは、前記所定の基準値を高め、前記所定の充電状態を低める回復運転モードであることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項14】
前記回復運転させる段階は、
前記分類された診断レベルに応じて前記所定の基準値をさらに大幅高め、前記所定の充電状態をさらに大幅低めて回復運転させる段階であることを特徴とする、請求項13に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項15】
前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させる場合、
前記回復運転させる前に、バッテリーの充電が可能な状態であるか否かを判断する段階をさらに含み、
前記メインバス端の電圧を下方調整する回復運転は、前記メインバス端の運転電圧の上限値を下方調整することにより、前記燃料電池スタックの出力が所定の出力値以下となることを防止する運転であることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項16】
前記分類された診断レベルに応じて、回生制動中の場合にも、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項17】
前記回復運転させる前に、バッテリーの充電が可能な状態であるか否かを判断する段階で、前記バッテリーの充電状態(SOC)が所定のSOC以上である場合、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させず、前記燃料電池スタックの出力端に接続された高電圧ヒーターを動作させることを特徴とする、請求項15に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項18】
前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させる場合、
前記分類された診断レベルに応じて、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧上限値の下方調整程度を可変させることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項19】
前記基本空気供給流量を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させる場合、
前記分類された診断レベルに応じて前記基本空気供給流量の下方調整程度を可変させることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項20】
前記最小化学量論比(SR)で前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モードは、 燃料電池スタックのカソード側入口および出口の温度、前記燃料電池スタック入口の空気流量、および前記燃料電池スタックの生成電流量に基づいて推定される燃料電池スタックのカソード側相対湿度の推定値に応じて前記化学量論比の制御領域を下方調整する回復運転モードであることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【請求項21】
前記最小化学量論比(SR)で前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モードを選択して回復運転させる場合、
前記分類された診断レベルに応じて化学量論比の制御領域の下方調整程度を可変させることを特徴とする、請求項20に記載の燃料電池システムの運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの運転制御方法に係り、より詳しくは、燃料電池スタックの状態に応じて相異なる回復運転を行うことができる、燃料電池システムの運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境にやさしい未来型自動車の一つである水素燃料電池車両に適用される燃料電池システムは、反応ガスの電気化学反応から電気エネルギーを発生させる燃料電池スタック、燃料電池スタックに燃料としての水素を供給する水素供給装置、燃料電池スタックへ電気化学反応に必要な酸化剤としての酸素を含む空気を供給する空気供給装置、並びに燃料電池スタックの電気化学反応の副産物である熱を外部へ放出させて燃料電池スタックの運転温度を最適に制御し且つ水管理機能を行う熱/水管理システムを含んでなる。
【0003】
このような車両用燃料電池システムでは、燃料電池のみを車両の動力源として用いる場合、車両を構成している全負荷を燃料電池が担当するので、燃料電池の効率が低い運転領域で性能低下が発生するという欠点がある。
【0004】
また、車両に急激な負荷が印加される場合には、燃料電池の出力電圧が瞬間的に急降下し、駆動モーターへ十分な電力を供給することができないため、車両性能が低下するおそれがある(燃料電池は、化学反応によって電気を発生させるので、急激な負荷変動に対しては無理である)。
【0005】
また、燃料電池は、単方向性出力特性を有するから、車両制動の際に駆動モーターから引き込まれるエネルギーを回収することができないため、車両システムの効率性を低下させるという欠点がある。
【0006】
かかる欠点を補完するための方案として、主動力源である燃料電池の他に、駆動モーターおよび高電圧部品の駆動のための別途の補助動力源としてエネルギー蓄積装置、例えば充/放電可能な高電圧バッテリーまたはスーパーキャパシタ(スーパーキャップ)を搭載することができる。
【0007】
一方、アノードに残っている残存水素が電気発生なしに電解質膜を直接通過してカソードの酸素と反応する現象を水素クロスオーバー(Crossover)という。このような水素クロスオーバー量を減らすために、低出力区間ではアノード圧力を低め、高出力区間ではアノード圧力を高めなければならない。アノード圧力(水素圧)が大きくなるほど、水素クロスオーバー量は増加し、水素クロスオーバーは燃費および燃料電池の耐久性に悪影響を及ぼす。よって、適切なアノード圧力を保つことが必要である。水素パージバルブは、アノード側の不純物および凝縮水を排出してスタック性能を確保するための用途である。アノード出口端がウォータートラップに接続されるため、凝縮水は、貯水した後、その量が一定の水準に到達すると、バルブを介して排出する。
【0008】
このように燃費向上のために車両運行途中で必要な場合、燃料電池の発電を停止し再開する過程[燃料電池停止(Fuel Cell Stop)/燃料電池再始動(Fuel Cell Restart)過程]、すなわち燃料電池ハイブリッド車両において燃料電池の発電を一時的に停止するアイドルストップ(Idle Stop)/解除制御過程[燃料電池のオン/オフ制御過程]が重要に考慮されるべきである。
【0009】
特に、走行中に燃料電池の発電を停止し再開するに際して、空気の流入によって燃料電池スタックにドライアウト(Dry out)が発生する問題だけでなく、車両の再加速性や燃費などを総合的に考慮した制御が重要である。
【0010】
特許文献1には、低出力区間で燃料電池が開回路電圧近くで運転しないように燃料電池スタックへの供給空気をバイパスさせて燃料電池スタックへの供給空気の量を減らし、バッテリーを強制充電し或いは負荷を利用する発明が開示されており、特許文献2には、燃料電池スタックが高温で運転中であるとき、燃料電池スタックの電圧をバッテリーの充電量に応じて強制的に降圧させてバッテリーを充電させる発明が開示されている。
【0011】
また、本出願人によって、特許文献3には、燃費低減のために低出力区間で燃料電池の発電を中止し、燃料電池の発電状況では一定の電圧以下でのみ使用されるようにする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国公開特許第2013−0320910号明細書
【特許文献2】特開2013−101844公報
【特許文献3】韓国登録特許第1230900号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、燃料電池スタックの状態に応じて回復運転モードを選択する燃料電池システムの運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法は、燃料電池スタックへの空気過給状態または燃料電池スタックの劣化状態に基づいて前記燃料電池スタック内の水不足状態を判断する段階と、前記判断された状態に応じて燃料電池システムの診断レベルを分類する段階と、前記分類された診断レベルに対応する少なくとも一つの回復運転モードを選択して回復運転させる段階とを含んでなる。
【0015】
前記分類する段階は、前記判断する段階で、前記燃料電池システムの故障に起因して前記燃料電池スタックへの空気過給が予測される第1状態と判断されると、前記第1状態を第1診断レベルに分類する段階であることを特徴とする。
【0016】
前記分類する段階は、前記判断する段階で、前記燃料電池スタックへ空気が過給されて前記燃料電池スタック内の水不足発生が予測される第2状態と判断されると、前記第2状態を第2診断レベルに分類する段階であることを特徴とする。
【0017】
前記第2状態は、前記燃料電池スタックの出力電流消耗量に対して前記燃料電池スタックへ過給される空気量、または前記燃料電池スタックのカソード側相対湿度の推定値から算出される前記カソード側の残存水の変化に基づいて判断されることを特徴とする。
【0018】
前記第2状態は、前記燃料電池スタックの出力電流消耗量に要求される空気量と現在燃料電池スタックへ供給される空気量との差である空気過給量、および前記燃料電池スタックの運転温度に基づいて算出された結果値が第1基準値以上である状態であることを特徴とする。
【0019】
前記第2状態は、前記燃料電池スタックの出力電流消耗量に要求される空気量と現在燃料電池スタックへ供給される空気量との比率および前記燃料電池スタックの運転温度に基づいて算出された結果値が第1基準値以上である状態であることを特徴とする。
【0020】
前記燃料電池スタックのカソード側相対湿度の推定値は、前記燃料電池スタックのカソー側入口および出口の温度、前記燃料電池スタック入口の空気流量、並びに前記燃料電池スタックの生成電流量に基づいて推定されることを特徴とする。
【0021】
前記残存水の変化は、前記カソード側出口の相対湿度が前記推定値であるときおよび前記カソード側出口の相対湿度が90〜110%であるときのカソード側出口の水蒸気流量に基づいて算出されることを特徴とする。
【0022】
前記カソード側出口の水蒸気流量は、前記カソード側出口の水蒸気圧、前記燃料電池スタック入口の空気流量による前記カソード側出口の空気圧、および前記燃料電池スタック入口の空気流量に基づいて算出されることを特徴とする。
【0023】
前記分類する段階は、前記判断する段階で、前記燃料電池の電流および電圧、インピーダンスまたは電流遮断法を用いて、水不足によるスタックの劣化が進んだ第3状態であると判断されると、前記第3状態を第3診断レベルに分類する段階であることを特徴とする。
【0024】
前記回復運転モードは、前記燃料電池スタックの冷却水入口および出口の温度を制御して前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モード、前記燃料電池システムのアイドルストップ進入条件を緩和させる回復運転モード、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モード、基本空気供給流量を下方調整する回復運転モード、および最小化学量論比(Stoichiometry Ratio:SR)で前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モードを含むことを特徴とする。
【0025】
前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードは、冷却水入口および出口の目標温度を基準温度より低く設定して前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードであることを特徴とする。
【0026】
前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードは、冷却水入口および出口の温度を実際の温度より所定のオフセット分だけ高い温度に設定し、設定された温度に合わせて強制冷却させる回復運転モードであることを特徴とする。
【0027】
前記回復運転させる段階は、前記分類された診断レベルに応じて、前記設定する基準温度とオフセットを可変させて回復運転させる段階であることを特徴とする。
【0028】
前記アイドルストップ進入条件は、燃料電池車両の負荷が所定の基準値より小さく、バッテリーの充電状態(SOC)が所定の充電状態より高い場合であり、前記アイドルストップ進入条件を緩和させる回復運転モードは、前記所定の基準値を高め、前記所定の充電状態を低める回復運転モードであることを特徴とする。
【0029】
前記回復運転させる段階は、前記分類された診断レベルに応じて前記所定の基準値をさらに大幅高め、前記所定の充電状態をさらに大幅低めて回復運転させる段階であることを特徴とする。
【0030】
前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させる場合、前記回復運転させる前に、バッテリーの充電が可能な状態であるか否かを判断する段階をさらに含み、前記メインバス端の電圧を下方調整する回復運転は、前記メインバス端の運転電圧の上限値を下方調整することにより、前記燃料電池スタックの出力が所定の出力値以下となることを防止する運転であることを特徴とする。
【0031】
前記分類された診断レベルに応じて、回生制動中の場合にも、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させることを特徴とする。
【0032】
前記回復運転させる前に、バッテリーの充電が可能な状態であるか否かを判断する段階で、前記バッテリーの充電状態(SOC)が所定のSOC以上である場合、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させず、前記燃料電池スタックの出力端に接続された高電圧ヒーターを動作させることができる。
【0033】
前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させる場合、前記分類された診断レベルに応じて、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧上限値の下方調整程度を可変させることを特徴とする。
【0034】
前記基本空気供給流量を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させる場合、前記分類された診断レベルに応じて前記基本空気供給流量の下方調整程度を可変させることを特徴とする。
【0035】
前記最小化学量論比(Stoichiometry Ratio:SR)で前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モードは、燃料電池スタックのカソード側入口および出口の温度、前記燃料電池スタック入口の空気流量、および前記燃料電池スタックの生成電流量に基づいて推定される燃料電池スタックのカソード側相対湿度の推定値に応じて前記化学量論比の制御領域を下方調整する回復運転モードであることを特徴とする。
【0036】
前記最小化学量論比(Stoichiometry Ratio:SR)で前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モードを選択して回復運転させる場合、前記分類された診断レベルに応じて化学量論比の制御領域の下方調整程度を可変させることを特徴とする。
【0037】
前記回復運転させる段階は、前記分類された診断レベルに応じて、前記選択された回復運転モードの数を異ならせて回復運転させる段階である。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法によれば、燃料電池スタックのドライアウト(Dry Out)状況を防止し、ドライアウト状況の回復運転によって燃料電池の耐久性を向上させることができるという効果がある。
【0039】
また、本発明によれば、燃料電池システムで発生しうる問題または運転パターンによる燃料電池スタックの性能減少を最小化させ、初期の運転性能を持続的に維持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムのパワーネット構成図である。
図2】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの動作基準を示す図である。
図3】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムのアイドルストップおよび再始動過程を説明する図である。
図4】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムのアイドルストップおよび再始動過程の具現例を示す図である。
図5】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法で利用する診断レベル別状態感知方法および状態発生原因を示す表である。
図6】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法における相対湿度推定モデルを簡略に示す図である。
図7】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法を示すフローチャートである。
図11】本発明の一実施態様に係る強制冷却回復運転を示す図である。
図12】本発明の一実施態様に係る燃料電池スタックの状態とそれに対応する回復運転モードを示す表である。
図13】本発明の一実施態様に係る空気供給化学量論比の可変制御を図式化して示す図である。
図14】従来の技術に対する本発明の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書または出願に開示されている本発明の実施態様に対して、特定の構造的または機能的説明は単に本発明に係る実施態様を説明するために例示されたものに過ぎず、本発明に係る実施態様は、様々な形態で実施でき、本明細書または出願に説明された実施態様に限定されるものではない。
【0042】
本発明に係る実施態様は、多様な変更を加えることができ、種々の形態を有することができるので、特定の実施態様を図面に例示して本明細書に詳細に説明する。しかし、これは本発明の概念による実施様態を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むと理解されるべきである。
【0043】
本明細書において、「第1」および/または「第2」等の用語は多様な構成要素の説明に使用できるが、これらの構成要素はこのような用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の概念による権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名でき、同様に第2構成要素も第1構成要素とも命名できる。
【0044】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる或いは「接続されて」いると言及された場合には、該他の構成要素に直接連結または接続されていることも意味するが、それらの間に別の構成要素が介在する場合も含むと理解されるべきである。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いる或いは「直接接続されて」いると言及された場合には、それらの間に別の構成要素が介在しないと理解されるべきである。構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち「〜間に」と「すぐに〜間に」または「〜に隣り合う」と「〜に直接隣り合う」等も同様に解釈されるべきである。
【0045】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施態様を説明するために使用されたもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は説示された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0046】
また、別に定義しない限り、技術的或いは科学的用語を含んで、本明細書において使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば一般的に理解されるのと同一の意味を有する。 一般に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上において有する意味と一致する意味であると解釈されるべきであり、本明細書において明白に定義しない限りは、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0047】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施態様を説明することにより、本発明を詳細に説明する。各図面に提示された同一の参照符号は同一の部材を示す。
【0048】
図1は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムのパワーネット構成図である。
【0049】
図示の如く、車両用燃料電池−バッテリーハイブリッドシステムは、メインバス端11を介して並列に接続される主動力源としての燃料電池10と、補助動力源としての高電圧バッテリー(メインバッテリー)20と、高電圧バッテリー20の出力制御ができるように高電圧バッテリー20に接続された両方向DC/DCコンバータ(BHDC:Bidirectional High Voltage DC/DC Converter)21と、燃料電池10と高電圧バッテリー20の出力側であるメインバス端11に接続されたインバータ31と、インバータ31に連結された駆動モーター32と、高電圧負荷33と、低電圧バッテリー(補助バッテリー)40と、低電圧負荷41と、低電圧バッテリー40とメインバス端11との間に接続されて高電圧を低電圧に変換する低電圧DC/DCコンバータ(LDC:Low Voltage DC/DC Converter)42とを含むことができる。
【0050】
ここで、車両の主動力源としての燃料電池10および補助動力源としての高電圧バッテリー20がメインバス端11を介してインバータ31/駆動モーター32などのシステム内の各負荷に対して並列に接続され、高電圧バッテリー端に接続された両方向DC/DCコンバータ21が燃料電池10の出力側のメインバス端11に接続されることにより、両方向DC/DCコンバータ21の電圧(メインバス端への出力電圧)制御によって燃料電池10の出力および高電圧バッテリー20の出力が制御できるようになっている。
【0051】
燃料電池10の出力端には、逆電流が流れないように接続されたダイオード13、および燃料電池10をメインバス端11に選択的に接続するように備えられたリレー14が設置される。リレー14は、燃料電池10が正常運転される車両運行中だけでなく、燃料電池システムのアイドルストップ/再始動状態で常時接続された状態にあり、車両のキーオフ(キーオフによる正常シャットダウン)時または非常シャットダウン時にのみ接続が解除される。
【0052】
また、駆動モーター32を回転させるためのインバータ31がメインバス端11を介して燃料電池10および高電圧バッテリー20の出力側に接続されることにより、燃料電池10および/または高電圧バッテリー20から供給される電源を相変換させて駆動モーター32を駆動させる。
【0053】
このような燃料電池システムにおける駆動モーター32の駆動は、燃料電池10の出力(電流)を単独で利用するFCモード、高電圧バッテリー20の出力を単独で利用するEVモード、または燃料電池10の出力を高電圧バッテリー20の出力が補助するHEVモードで行われる。特に、燃料電池システムにおいてアイドルストップおよび再始動の後に燃料電池10の出力で駆動モーター32が駆動される前までのEVモード走行状態では、燃料電池10の発電が停止して高電圧バッテリー20の出力のみで駆動モーター32の駆動および車両走行が行われる。
【0054】
このようなEVモード走行状態では、リレー14がオンになったとともに燃料電池10の発電が中止(空気供給中止)した状態で高電圧バッテリー20の出力端に接続された両方向DC/DCコンバータ21のブースト制御によって高電圧バッテリー20の電圧をブーストしてメインバス端11の電圧を上昇させ、それにより高電圧バッテリー20の出力のみでインバータ31/駆動モーター32などの車両内負荷を作動させる。
【0055】
勿論、燃料電池システムのアイドルストップ時に空気の供給を中止してから再始動した場合には空気供給を再開し、再始動の後に燃料電池システムの正常運転モードに復帰した場合には空気が正常供給される状態でさらに燃料電池10の出力を車両負荷に応じて追従制御し(負荷追従(Load Following)制御)且つ両方向DC/DCコンバータ21のブースト状態を解除する。
【0056】
図2は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの動作基準を示す図である。
【0057】
燃料電池制御器(図示せず)は、図2に示すように、車両状態チェック過程(左側)と燃料電池状態チェック過程(右側)を介して燃料電池システムのアイドルストップ、アイドルストップ禁止および再始動などを制御する。
【0058】
図1図2を参照すると、燃料電池制御器は、車両状態チェック過程で車両負荷と補助動力源としての高電圧バッテリー20のSOC(異常車両状態条件となる)を基準として燃料電池のオン(発電)およびオフ(発電停止)条件を判断する。また、燃料電池制御器は、燃料電池状態チェック過程で燃料電池10の非常運転条件、燃料電池スタック10の温度、燃料電池スタック10のアノード圧力、制御器間の通信状態、ヒーター作動有無(異常燃料電池状態条件となる)などを考慮して燃料電池システムのアイドルストップ、アイドルストップ禁止および始動条件を判断する。
【0059】
ここで、車両状態チェック過程の燃料電池オフ(OFF)条件と燃料電池状態チェック過程のアイドルストップ条件を同時に満足する場合にのみ、燃料電池アイドルストップ過程が行われる。車両状態チェック過程の燃料電池オン条件と燃料電池状態チェック過程の始動条件のうちいずれか一つを満足する場合には、燃料電池再始動過程が行われる。
【0060】
図2の左側に示すように、車両状態チェック過程では、基本的に車両負荷が所定の基準値より大きい高負荷状態(燃料電池要求出力Pidle_on以上)である場合、燃料電池オン(ON)条件となる。また、車両負荷が所定の基準値より小さい低負荷状態(燃料電池要求出力Pidle_off以下)であり、高電圧バッテリー20のSOCが所定の上限値(SOChigh)以上と十分に高い場合にのみ、燃料電池オフ(OFF)条件、すなわちアイドルストップ進入条件を満足すると判定する。
【0061】
また、車両負荷は小さいが高電圧バッテリーのSOCが下限値(SOClow)以下と低い場合には、燃料電池オン条件を満足すると判定するものの、燃料電池オン時の出力値は設定値(Pidle_on)以上を常時維持するようにして高電圧バッテリー20を充電することができるようにする。
【0062】
また、車両負荷状態チェック過程でシステムの応答性を考慮して、フル(full)加速または一定水準以上の急加速の際には燃料電池オン条件を満足し、回生制動の際には回生制動の回収率の増加のために燃料電池オフ(OFF)条件を満足することが追加できる。
【0063】
一方、燃料電池状態チェック過程では、図2の右側に示すように、燃料電池の非常運転状況、スタックの温度が設定温度未満である状態、スタックのアノード圧力が設定圧力未満である状態、空気ブロワーの制御器の通信不可状態、またはヒーター作動状況である場合、燃料電池の発電を維持し続けなければならない条件(アイドルストップ禁止条件、始動条件)(図2において「燃料電池状態OK=0」)と判定し、この状況でなければ、燃料電池システムのアイドルストップが可能な条件(アイドルストップ条件)(「燃料電池状態OK=1」)と判定する。
【0064】
このような車両状態チェック過程および燃料電池状態チェック過程で図2に示すように「燃料電池OFFおよび燃料電池状態OK=1」である場合、燃料電池システムのアイドルストップ進入が行われ、いずれか一つの条件を満足しない場合には、燃料電池システムのアイドルストップ進入は禁止される。例えば、車両状態条件、すなわち車両負荷およびSOC条件が燃料電池オフ条件を満足しても、燃料電池状態チェック過程でアイドルストップ禁止条件(「燃料電池状態OK=0」の条件)と判定されると、燃料電池システムのアイドルストップ進入が禁止される。また、図2に示すように、「燃料電池ONまたは燃料電池状態OK=0」の条件では、アイドルストップが禁止(正常運転状態の場合)されるか或いは燃料電池を再始動(アイドル状態の場合)させるが、例えば燃料電池システムのアイドルストップ状態で車両状態条件(車両負荷およびSOC条件)がスタックオン条件を満足しなくても(すなわち、「燃料電池OFF」の条件)、燃料電池状態チェック過程で燃料電池の発電を再開すべき条件(始動条件)(「燃料電池状態OK=0」の条件)になると、燃料電池を再始動させる。
【0065】
燃料電池システムにおける低出力区間の効率は、常に補機類のパワーにより非常に低く、この領域の回避運転のためには、効率が悪くなる時点である出力Pidleを負荷判断条件として設定し、Pidleに該当する電圧としてのVidleまたはその近くの電圧値(図4においてV(1))を両方向電力変換装置の電圧制御上限値として設定することにより、燃料電池システムの正常運転モードで両方向DC/DCコンバータ21の電圧を設定された電圧制御上限値に制限するので、燃料電池の低出力区間の使用が制限される。
【0066】
このように、本発明では、両方向DC/DCコンバータ21の電圧制御上限値を設定することにより、燃料電池システムの正常運転モード、すなわち燃料電池の負荷追従運転制御が行われる状態で制御される両方向DC/DCコンバータ21の電圧を電圧上限値に制限し、これにより両方向DC/DCコンバータ21の電圧が電圧制御上限値に制限される間に燃料電池の低出力区間の使用が制限されるようにする。両方向DC/DCコンバータ21の電圧上限値の制限をおくと、燃料電池の出力が一定の水準以上を維持し、燃料電池の低出力区間の使用が制限される。
【0067】
ところが、燃料電池システムの出力を常にPidle以上に維持すると、低出力区間におけるバッテリーの過多充電、回生制動量の制限などの問題があるので、前述したように、車両状態条件での回生制動時または低出力および高SOC条件(図2の「燃料電池OFF」の条件)では燃料電池をオフ(アイドルストップ)にして低効率区間を回避する。
【0068】
図3は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムのアイドルストップおよび再始動過程を説明する図であり、図4は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムのアイドルストップおよび再始動過程の具現例を示す図である。図3および図4を参照すると、燃料電池システムの正常運転モードでは、燃料電池の出力が負荷に応じて制御される負荷追従運転制御が行われる。このような燃料電池の出力制御は、制御器が両方向DC/DCコンバータ21のメインバス端の出力電圧(以下、両方向DC/DCコンバータ21の電圧と略称する。)を制御することにより行われる。
【0069】
特に、本発明では、燃料電池システムの正常運転モードに対する両方向DC/DCコンバータ21の電圧制御上限値(図4においてV(1))が設定されるので、運転中に負荷に応じて制御される両方向DC/DCコンバータ21の電圧が所定の電圧制御上限値に制限されながら、燃料電池の低出力区間の使用が禁止される。
【0070】
このように正常運転モードで燃料電池の負荷追従運転中の両方向DC/DCコンバータ21の電圧制御の際に、予め設定された制御上限値に両方向DC/DCコンバータ21の電圧を制限することにより、燃料電池の出力が一定の水準以上維持されるようにする。
【0071】
次に、図2で説明した車両状態チェック過程で車両状態条件、すなわち車両負荷および高電圧バッテリーのSOCが燃料電池オフ条件を満足すると、燃料電池状態チェック過程で燃料電池状態が燃料電池システムのアイドルストップ可能な条件であるか否かを判定する。
【0072】
ここで、車両状態条件が燃料電池オフ条件を満足しても、燃料電池状態チェック過程で燃料電池システムのアイドルストップ禁止条件に該当する場合であれば(図2において「燃料電池状態OK=0」の条件)、燃料電池システムのアイドルストップを禁止して燃料電池を運転状態に維持するが、両方向DC/DCコンバータ21の電圧を所定の電圧制御上限値V(1)に制限する電圧上限制御を解除し、燃料電池を低出力区間でも使用することができるようにする。
【0073】
これは、燃料電池10の低出力区間でありながら高電圧バッテリー20のSOCが高い状態であるとともに、燃料電池10をオフにすることができない状況(アイドルストップ進入禁止状態)であるとき、両方向DC/DCコンバータ21の電圧上限制御によって燃料電池10の出力を一定の水準に維持し続ける場合に高電圧バッテリー20が過度に充電され得るためである。
【0074】
燃料電池状態チェック過程で燃料電池システムのアイドルストップ条件と判定される場合には、燃料電池システムのアイドルストップ過程が行われる。すなわち、まず燃料電池10への空気供給を中断して(空気ブロワーなどの空気供給装置をオフにして)燃料電池電圧をメインバス端の電圧より低くなるようにし、これにより自然にメインバス端への燃料電池出力(電流出力)が行われないようにする(図4の空気供給中断後の燃料電池電流を参照)。
【0075】
次に、空気供給を中断した状態で所定の時間を経過した後(または、流量計によって、空気供給量がないことを確認した後)には、両方向DC/DCコンバータ21の電圧を設定値(図4においてV(2))に下降させて燃料電池10のカソード内の酸素消尽がなされるようにするので、両方向DC/DCコンバータ21の電圧を設定値に下降させて維持すると、両方向DC/DCコンバータ21の出力側となるメインバス端の電圧が低くなるので、カソード内の酸素が消尽する間にメインバス端へ燃料電池の電流がさらに出力され、このときの燃料電池の出力で高電圧バッテリー20を強制充電する。
【0076】
すなわち、燃料電池10の電圧が両方向DC/DCコンバータ21の電圧(メインバス端の電圧)より降下する前までは、カソード内の酸素消尽の際に発生する燃料電池10の出力電流によって高電圧バッテリー20を充電し、この高電圧バッテリー20の強制充電により、燃料電池10のカソード内に残っている残存酸素が一定の水準に除去できるのである。
【0077】
また、カソード内の酸素消尽により燃料電池10の電圧が両方向DC/DCコンバータ21の電圧より低くなると、高電圧バッテリー20の充電は終了するが、アノード内の水素が電解質膜を介してカソードへ引き続きクロスオーバー(crossover)されながらカソードの酸素が漸次消尽するので、燃料電池10の電圧が完全に除去されると、アイドルストップ進入が完了する(燃料電池電圧が完全に除去される)。
【0078】
したがって、空気供給中断の後に両方向DC/DCコンバータ21の電圧を設定値V(2)に低める電圧制御によって、カソード内の酸素消尽の際に発生する燃料電池10の出力を高電圧バッテリー20の充電に使用することができ、これとともに燃料電池10の電圧も低めることができて、スタックの耐久および燃費の観点から有利な効果を同時に得ることができる。
【0079】
燃料電池10のカソード内酸素消尽の間に高電圧バッテリー20を強制充電させた後、燃料電池電圧がメインバス端の電圧、すなわち両方向DC/DCコンバータ21の電圧よりさらに低くなると、燃料電池10からは電流出力が行われないので、高電圧バッテリーの出力のみで駆動モーターを駆動させるEVモード走行が行われる。図4を参照すると、空気供給中断が開始する前の区間で両方向DC/DCコンバータ21および燃料電池電圧が電圧制御上限値V(1)に制限されていることが分かる。この際、燃料電池電流は電圧上限制御により一定の水準を維持している。
【0080】
また、空気供給が中断した後に燃料電池が再始動するまでバッテリー電流をMCU(Motor Control Unit)を介してインバータに供給してEVモード走行が行われることが分かる。この際、両方向DC/DCコンバータ21の電圧制御によって、メインバス端の電圧を設定値V(2)(一定値または可変値になれる)に維持するEVモード走行が行われる。
【0081】
空気供給中断の後に両方向DC/DCコンバータ21の電圧を下降させる設定値V(2)の設定は、両方向DC/DCコンバータ21の効率と駆動モーター32の効率の観点から最適化が必要である。駆動モーター32の効率側面では設定値V(2)を高く設定することが有利であるが、両方向DC/DCコンバータ21の効率側面では設定値V(2)を低く設定してEVモード走行が行われるようにすることがさらに有利であるので、適切な設定値V(2)を設定することが必要である。
【0082】
EVモードで走行する間に、前述したように車両状態条件が燃料電池オン条件であり或いは燃料電池状態条件が始動条件(図2において「燃料電池状態OK=0」の条件)である場合には、燃料電池システムを再始動させる。この際、まず両方向DC/DCコンバータ21の電圧を設定値(図5においてV(3))に上昇させて維持することにより、メインバス端への燃料電池の出力が過度に行われることを防ぐ。
【0083】
もし車両負荷条件を満足していなかったが(車両負荷が基準値を満足させていない低負荷状態、すなわち燃料電池要求出力Pidle_on未満)、燃料電池以上に再始動させる場合には、両方向DC/DCコンバータ21の電圧上昇維持値をOCV(Open Circuit Voltage)近く、すなわちOCV未満の最大設定値まで上昇させて維持させる。
【0084】
これは、アイドルストップ時と同様に車両負荷が基準値未満と小さく高電圧バッテリー20のSOCも高い状況で再始動電圧値、すなわち両方向DC/DCコンバータ21の電圧上昇設定値V(3)図2のVidle近くに維持すると、燃料電池10の出力が高電圧バッテリー20を過度に充電するためである。
【0085】
次に、メインバス端の電圧が設定値V(3)に維持されるかを電圧計などを用いて確認した後には、空気供給を開始して燃料電池10の発電を再開するが、空気供給開始時点で空気ブロワーの回転数を上昇させて燃料電池10の電圧が両方向DC/DCコンバータ21の電圧上昇維持値V(3)まで上昇するようにする。この際、空気供給によって燃料電池10の電圧を上昇させると同時に、両方向DC/DCコンバータ21の電圧上昇維持値V(3)に該当する一定の出力を燃料電池10が出せるようにする。
【0086】
また、再始動過程の空気供給再開の際に燃料電池電圧を迅速に上昇させるために、必要電流量だけの要求空気量に設定量αの空気がさらに供給されるように空気ブロワーを駆動させ、それにより燃料電池に「要求空気量+設定量(α)」の空気が供給される。
【0087】
その後、燃料電池状態をモニタリングし続けた結果、最小セル電圧、セル電圧偏差、空気流量などが安定化されると、再始動過程を終了し、両方向DC/DCコンバータ21の電圧の設定値維持を解除する。
【0088】
その次に、正常運転モードでは、さらに燃料電池10の正常的な負荷追従運転が行われる。この際、両方向DC/DCコンバータ21の電圧を前述したように制御上限値V(1)に制限することにより、燃料電池10が低出力区間で使用されないようにしながら一定の出力以上を維持することができるようにする。
【0089】
図4を参照すると、本発明に係るアイドルストップ過程と再始動過程では、両方向DC/DCコンバータ21の電圧制御と空気供給制御によって効果的に燃料電池10の低出力回避運転が行われることが分かる(OCVとV(1)間の電圧が形成されないことが分かる)。電圧設定値であるV(1)およびV(3)電圧はPidle近くの電圧に設定するが、ヒステリシス(Hysteresis)を勘案して、V(1)はPidle_offに該当する電圧に設定し、V(3)はPidle_onに該当する電圧に設定することが好ましい。
【0090】
また、再始動過程で空気供給再開の際に要求空気量命令は燃料電池必要電流量から計算されるが、必要電流量より設定量(α)だけさらに吹き込んで燃料電池の電圧安定性が速く回復できるようにする。これとともに、燃料電池システムのアイドルストップ過程中に、EVモード走行の際に両方向DC/DCコンバータ21の電圧制御値であるV(2)は、前述したように、両方向DC/DCコンバータ21の効率や駆動モーター32の効率などを考慮して適正の値に設定し、EVモード走行の際にセル電圧偏差、空気流量などに関連した診断ロジックは中止させて診断ロジックによる燃料電池システムおよび車両のシャットダウンを防ぐ。
【0091】
図4において、燃料電池10の再始動過程では、燃料電池端のリレー(図1において、図面符号14)を予めオンにしておいた状態で両方向DC/DCコンバータ21の電圧を一定の水準に上昇維持し、空気供給によって燃料電池10の電圧を上昇させながら、両方向DC/DCコンバータ21の電圧上昇維持値に該当する一定の出力を燃料電池10が同時に出せるようにして再始動を完了する。正常始動の際にシーケンスをそのまま使用しても構わない。
【0092】
図5は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法で利用する診断レベル別状態感知方法と状態発生原因を示す表である。
【0093】
図5を参照すると、燃料電池スタックへの空気過給状態または燃料電池スタック内の水不足状態の水準、すなわち診断レベルをFlt Lvlで表現した。空気過給状態または劣化状態などに基づいて、水不足状態が激しい程度によって3つの診断レベルLvlに分類した。
【0094】
すなわち、本発明の一実施態様によって、3つの診断レベルは空気過給状態または水不足状態の程度によって分類されたのである。3つの診断レベルを第1状態による診断レベル、第2状態による診断レベル、および第3状態による診断レベルとすると、まず、第1状態の原因は燃料電池システム、および燃料電池システムを構成するコンポナントの故障でありうる。また、第2状態の原因は、このような燃料電池システム、および燃料電池システムを構成するコンポナントの故障が感知できないこと、運転者のパターン、および環境的な要素でありうる。また、第3状態の原因は、既に燃料電池スタックの劣化が進んで燃料電池の水不足状態が発生したことでありうる。
【0095】
すなわち、燃料電池スタックへの空気過給状態または劣化状態に基づいて燃料電池スタック内の水不足状態を判断するが、燃料電池システムの故障に起因して燃料電池スタックへの要求空気量よりさらに多くの空気が燃料電池スタックへ供給される(空気過給)状態が第1状態であり、燃料電池システムが正常動作中であるにも拘らず、燃料電池スタックへ空気が過給されるか或いはドライアウト(水不足)が発生する状態が第2状態であり、燃料電池スタックの劣化が進んでいる状態が第3状態である。
【0096】
具体的に、診断レベルFlt Lvlが高いほど、既にスタック劣化が進んだ状態を意味し、診断レベルが低いほど、水不足は発生しなかったが発生する可能性のある低い水準の状態を意味する。診断レベルが高くなるほど深刻度の程度が高く、回復運転を強化するなど(回復運転の個数および水準の増加)、戦略が要求されるのである。
【0097】
第1状態は、燃料電池システム(特に、空気供給システム)の正常な運転が不可能であって空気が必要量より過給される状況である。低出力においても燃料電池発電停止が不可能な状況が該当し、この際、低出力においても基本供給空気流量によって空気過給状況が発生しうる。基本供給空気流量は、アイドルストップではない条件で負荷条件を問わずに最小に供給されるべき最小空気供給流量のことをいう。FC Onlyモード、空気ブロワーのホールセンサーおよび電流センサーのうち一つ以上の故障に起因した空気ブロワー非常状況での固定Rpm非常運転、高電圧バッテリー20の出力不足、低温状態の燃料電池などの状況から第1状態を判断することができる。
【0098】
例えば、空気ブロワー非常運転の際に固定回転数の運転により要求空気量よりさらに多くの空気が過給される状態、または空気ブロワー回生制動不可状況(バッテリーSOC過多、空気ブロワー制御不良)では、減速区間で慣性流量に起因して空気が過給される状態などでありうる。
【0099】
第2状態は、燃料電池システムおよび空気ブロワーなどの燃料電池システムを構成するコンポナントの故障を認知することができない状態である。例えば、燃料電池システムが非正常であるがこれを診断することができない場合、燃料電池システムは正常であるが継続的な急加速/減速運転のような特定運転パターンの場合、下り坂運転時または外風の強い状況におけるラムエアが流入する場合を原因として空気過給が発生しうる。このような第2状態を判断するためには、燃料電池スタックで生成した電流が消耗される量である消耗電流に対する空気過給量の程度を実時間で計算することができ、カソード側の湿度推定モデルから、燃料電池スタックの内部に残存する水の量を間接的に推定することができる。
【0100】
消耗電流に対する空気過給量の程度を計算する第一の方法は、空気供給量と電流消耗に必要な空気量との差を空気過給量として定義し、空気過給量、基準空気過給量および運転温度加重値に基づいて空気過給量偏差を求めて時間積分することである。空気過給量偏差の時間に対する積分値が第1基準値以上である場合、第2状態に該当すると判断できる。
【0101】
消耗電流に対する空気過給量の程度を計算する第二の方法は、空気過給量と電流消耗に必要な空気量の比率を空気過給比率として定義し、空気過給比率、基準空気過給比率および運転温度加重値に基づいて空気過給比率偏差を時間積分することである。空気過給比率偏差の時間に対する積分値が第1基準値以上である場合、第2状態に該当すると判断できる。
【0102】
燃料電池スタック内の残存水量を予測する方法は図6に示されている。図6は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法における相対湿度推定モデルを簡略に示す図である。図6を参照すると、燃料電池スタックのカソード出口の相対湿度を予測するために、スタック入口の水蒸気流量、生成水の量、およびスタック内のカソードとアノード間の水移動量を考慮して、燃料電池スタックのカソード側の水変化量がないと仮定する。
【0103】
具体的に、カソード側相対湿度を推定するために要求される入力値は、燃料電池スタックのカソード側入口および出口の空気温度、燃料電池スタック入口の空気流量、および燃料電池スタックの生成電流量である。燃料電池スタック入口の空気全体圧力は燃料電池スタックのカソード側入口の空気流量の関数であり、燃料電池スタックのカソード側出口の空気全体圧力も燃料電池スタック入口の空気流量の関数である。燃料電池スタックのカソード側入口および出口の飽和水蒸気圧は、燃料電池スタックのカソード側入口および出口の空気温度の関数である。
【0104】
燃料電池スタック内の残存水量を予測するために、まず、カソード出口の相対湿度が推定値であるときの燃料電池スタック出口の水蒸気流量を計算する。具体的に、燃料電池スタック出口の水蒸気流量は燃料電池スタック出口の乾空気流量(燃料電池スタック入口の空気流量−反応酸素量)、0.622(水蒸気1モル質量を乾空気1モル質量で割った値)、および燃料電池スタックのカソード側出口の水蒸気圧が燃料電池スタック出口の空気全体圧力からカソード側出口の水蒸気圧力を差し引いた量において占有する比率を掛けたものである。
【0105】
次に、カソード出口の相対湿度が100%であるときの燃料電池スタック出口の水蒸気流量を計算する。具体的な計算方法は、カソード出口の相対湿度が推定値であるときと同一である。
【0106】
カソード出口の相対湿度が100%であるときの燃料電池スタック出口の水蒸気流量から、カソード出口の相対湿度が推定値であるときの燃料電池スタック出口の水蒸気流量を差し抜き、これを時間に対して積分すると、カソード内の残存水量を予測することができる。
【0107】
このような方法によって、第2状態であることを判断することができる。
【0108】
第3状態は、既に燃料電池スタックの水不足が発生した状態であって、電流電圧曲線の傾き、垂下量、インピーダンス測定、CI(Current Interrupt、電流遮断法)を用いたメンブラン抵抗測定などによって劣化状態を判断することにより分かる。
【0109】
第1状態と判断されると、第1状態を複数の診断レベルのうち第1診断レベルとして分類し、第2状態と判断されると、第2状態を複数の診断レベルのうち第2診断レベルとして分類し、第3状態と判断されると、第3状態を複数の診断レベルのうち第3診断レベルとして分類することができる。すなわち、判断された状態の程度によって複数の診断レベルに分類するが、一例として、図5に示すように判断された状態の程度を3つに区分してこれを3つの診断レベルに分類し、各診断レベル別に対応する回復運転モードを選択して水不足状態または空気過給状態を回復するようにすることができる。
【0110】
図7は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法を示すフローチャートである。
【0111】
図7を参照すると、図5に示すように、第1状態、第2状態および第3状態に該当するか否かを判断し(S710)、判断結果によって第1状態、第2状態および第3状態に該当しない場合、正常運転モードで動作し(S720)、第1状態、第2状態および第3状態に該当する場合、各状態に対応する回復運転モードを選択して動作制御することができる(S730)。回復運転モード(S730)で動作することにより、第1状態、第2状態または第3状態が回復すると、さらに燃料電池スタックの空気過給状態または水不足状態を判断する(S740)。回復運転モードは第1状態、第2状態または第3状態が回復するまで繰返し行われる。
【0112】
回復運転モードは、燃料電池スタックの冷却水入口および出口の温度を制御して前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モード、前記燃料電池システムのアイドルストップ進入条件を緩和させる回復運転モード、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モード、基本空気供給流量を下方調整する回復運転モード、および最小化学量論比(Stoichiometry Ratio:SR)で前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モードを含むことができる。
【0113】
図8は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法のいずれか一つを示すフローチャートである。図8を参照すると、正常運転モードであるか否かを判断し(S720)、正常運転モードである場合、燃料電池の温度がそのまま維持されるようにし(S722)、正常モードではない場合、燃料電池を強制に冷却させる回復運転モードが行われる(S732)。このような強制冷却運転制御は、燃料電池制御器の一部分である冷却制御部で行われ得る。
【0114】
図11は本発明の一実施態様に係る強制冷却回復運転を示す図である。図11を参照すると、回復運転モードのいずれか一つである強制冷却制御のために、燃料電池スタックの冷却水入口および出口の温度、外気温、車速などの情報を入力値として受信して冷却水入口および出口の目標温度を設定する。そして、目標温度に冷却させるために、冷却制御部から水ポンプ回転数、ラジエーターファン回転数、サーモスタット開度制御指令を水ポンプ、ラジエーターファン、サーモスタットなどへ送信する。
【0115】
回復運転モードでは、燃料電池スタック内の水不足現象を緩和させるために、燃料電池スタックの運転温度を強制に冷却させる必要がある。すなわち、燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードは、冷却水入口および出口の目標温度を基準温度より低く設定して前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードである。
【0116】
よって、冷却水入口および出口の温度情報を入力値として受信するとき、実際冷却水入口および出口の温度よりオフセット分だけさらに高い温度を入力値として使用することができる。冷却水温度入力情報をチーティング(Cheating)し、或いは冷却水入口および出口の目標温度がさらに低く設定できる。
【0117】
例えば、燃料電池スタックの状態が第3診断レベルに該当すると、冷却水入口および出口の温度を制御して燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードが選択できる。すなわち、冷却水入口および出口の目標温度を既存の温度よりさらに低く設定して燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モードが選択できる(図12のA1)。
【0118】
図9および図10は本発明の一実施態様に係る燃料電池システムの運転制御方法を示すフローチャートであり、図12は本発明の一実施態様に係る燃料電池スタックの状態とそれに対応する回復運転モードを示す表である。図9は回復運転モードで燃料電池の発電とアイドルストップを制御する方法を示している。
【0119】
図2に関連して上述したように、車両負荷、バッテリーの充電状態(SOC)、燃料電池の状況などを考慮して燃料電池の発電および停止を制御することができる。ところが、回復運転モードでは燃料電池発電停止の条件がさらに緩和して燃料電池発電停止区間がさらに拡張されるべきである。例えば、Pidle_off、Pidle_on基準値をさらに上昇させるか、SOChigh、SOClow基準を下方調整するか、或いは燃料電池状態チェック項目の一部を削除するなどの方法によって燃料電池発電停止区間がさらに拡大すべきである。
【0120】
一例として、図12に示すように、第3状態に対応する第3診断レベルに該当する場合、燃料電池発電停止区間がさらに拡張できる。すなわち、アイドルストップ進入条件を緩和させることができる。燃料電池発電停止条件に該当するか否かを判断し(S910)、条件に該当すると判断される場合には燃料電池発電を停止させ(S920)、燃料電池発電停止の後、さらに再始動条件になるか否かを判断することにより(S930)、条件になると判断される場合には燃料電池を再始動することができる(S940)。
【0121】
一方、回復運転モードで燃料電池発電停止条件に該当しなければ、様々な回復運転モードの動作が行われるように制御することができる。まず、両方向DC/DCコンバータ20を介してのバス端の電圧上限値を可変制御することができる(S950)。
【0122】
図10は本発明の一実施態様に係るメインバス端の電圧上限値の可変制御方法を示すフローチャートである。両方向DC/DCコンバータを介してメインバス端の電圧上限値を可変制御する方法は、まず、現在駆動モーター32が回生制動中であるか否かを判断する段階を含むことができる(S1010)。駆動モーター32が回生制動中であると判断される場合にはメインバス端の電圧上限値を既存通りに開放回路電圧近くまで復元させることができる(S1020)。これは、回生制動の際にメインバス端の電圧上限値を下方調整すると、高電圧バッテリー20の充電電流量により回生制動量が減少して燃費に大きな損失が発生するためである。よって、回復運転モードでもまず回生制動か否かを判断して大きな燃費損失を防ぐために、メインバス端の電圧上限値の下方調整運転をしない。
【0123】
但し、図12に示すように、第3状態に対応する第3診断レベルに該当する場合、大きな燃費損失を甘受しても、燃料電池の水不足状態の回復がさらに重要であるため、回生制動有無を問わずにメインバス端の電圧上限値を下方調整して高電圧バッテリーを充電させることができる(図12のC2)。よって、駆動モーター32が回生制動中であるか否かの判断は省略できる。
【0124】
メインバス端の電圧上限値を下方調整する回復運転モードを行うようにするために、高電圧バッテリーの充電状態(SOC)とEV側に故障があるか否かを判断する(S1030)。すなわち、高電圧バッテリーの充電が不可能な状況であるか否かを判断し、高電圧バッテリー充電が可能な状況であるときにのみメインバス端の電圧上限値を下方調整するのである(S1060)。電圧上限値を下方調整する場合にも、燃料電池スタックの状態が第1状態、第2状態または第3状態であるか否かに応じて、診断レベルが高いほどメインバス端の電圧上限値をさらに大幅下方調整することができる(図12のA2)。高電圧バッテリーが緩衝状態であり或いはEV側に故障がある場合には、メインバス端の電圧上限値を下方調整せず、正常運転モードの上限値に運転する(S1040)。例えば、バッテリーの充電状態(SOC)が所定のSOC以上である場合、すなわちバッテリーが緩衝状態またはそれ以上充電不可能な状態である場合、燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させず、燃料電池スタックの出力端に接続された高電圧ヒーターを動作させる。
【0125】
また、燃料電池スタックの空気過給状態または水不足状態が激しい場合、例えば第3状態に該当する場合、燃料電池の水生成のために燃料電池に接続された高電圧ヒーターを使用することができる(S1050、図12のA5)。すなわち、燃料電池スタックの状態が第3診断レベルに該当すると、燃料電池スタックの出力を負荷に応じて制御して負荷追従運転させる回復運転モードが選択できる。EV側の故障は両方向DC/DCコンバータまたは高電圧バッテリーの故障発生状況であり、高電圧ヒーターの使用は省略可能である。
【0126】
メインバス端の電圧上限値を下方調整する場合、燃料電池の低出力使用頻度が減少し、燃料電池発電停止区間が増加し、基本電流生成頻度が増加する。また、高電圧バッテリーの使用領域が拡大する。このような効果は、図14に示した従来と本発明に係る車速、バッテリー状態、相対湿度などの差を示すグラフから確認することができる。従来と比較して燃料電池の低出力使用頻度が減少し、燃料電池発電停止区間が増加し、基本電流生成頻度が増加した。バッテリーの充電状態に関するグラフから、高電圧バッテリーの使用領域、すなわち充放電領域が拡大したことが分かる。すなわち、燃料電池スタックにおける低電流要求の際に残る電力は、バッテリー強制充電によってEVモードへの走行区間を拡大することができる。
【0127】
両方向DC/DCコンバータ21を介してメインバス端の電圧上限値を下方調整し、その後、燃料電池制御器は基本空気供給流量を下方調整することができる(S960)。例えば、電流30Aに該当する流量から10Aに該当する空気流量へと、基本空気供給流量を下方調整することができる。基本空気供給流量を下方調整する場合でも、燃料電池スタックの状態が第1状態、第2状態または第3状態であるか否かに応じて、診断レベルが高いほど、燃料電池スタックへ供給される空気の量をさらに大幅下降させることができる(図12のA3)。すなわち、基本空気供給流量を下方調整する回復運転モードを選択して回復運転させる場合、分類された診断レベルに応じて化学量論比の制御領域の下方調整程度を可変させることができる。
【0128】
また、空気供給SR可変制御をディスエーブルさせて最小SRで運転させることにより、空気供給を最大限低めることもできる(S970、図12のA4)。例えば、燃料電池スタックの状態が第2診断レベルまたは第3診断レベルに該当すると、最小SRで燃料電池スタックを運転させる回復運転モードが選択できる。
【0129】
図13は本発明の一実施態様に係る空気供給化学量論比の可変制御を図式化した図である。図13に示すように、実際の燃料電池電流、実際の空気流量、カソード側入口の温度、カソード側出口温度、および燃料電池スタックを構成する燃料電池セルの個数を入力とし、内部パラメータで加湿器効率マップ、アノード側からカソード側へ移動する水の量、空気流量に対するカソード側入口の圧力、および空気流量に対するカソード側出口の圧力を含む相対湿度(RH)推定モデルから推定されたカソード側出口の相対湿度推定値に基づいて、推定値と既にマッピングされた化学量論比マップまたは目標相対湿度基盤の化学量論比P1の制御によって目標化学量論比を決定することができる。図示の如く、相対湿度推定値に応じて化学量論比を可変制御することができるが、このような可変制御をディスエーブルさせ、最小化学量論比で運転させる回復運転モードで回復運転させることができる。
【0130】
例えば、最小化学量論比(Stoichiometry Ratio:SR)で前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モードは、燃料電池スタックのカソード側入口および出口の温度、前記燃料電池スタック入口の空気流量、および前記燃料電池スタックの生成電流量に基づいて推定される燃料電池スタックのカソード側相対湿度の推定値に応じて前記化学量論比の制御領域を下方調整する回復運転モードである。最小化学量論比(Stoichiometry Ratio:SR)で燃料電池スタックを運転させる回復運転モードを選択して回復運転させる場合、分類された診断レベルに応じて化学量論比の制御領域の下方調整程度を可変させることができる。
【0131】
回復運転モードでは、燃料電池発電停止領域が拡大し、発電停止がなされなくても、空気供給量を低めると同時に燃料電池の出力を発生させて水を生成させるのである。これにより、運転性および燃費の損害が発生しても、低出力運転回避を強化して水不足状況による燃料電池の劣化を防止することができる。
【0132】
上述したように診断レベルが低いほど、判断された燃料電池スタックの空気過給または水不足状態が低いほど、複数の回復運転モードそれぞれの実行強度を低めるとともに項目を減らすことが好ましい。複数の回復運転モードは、燃料電池スタックの冷却水入口および出口の温度を制御して前記燃料電池スタックを強制冷却させる回復運転モード、前記燃料電池システムのアイドルストップ進入条件を緩和させる回復運転モード、前記燃料電池スタックの出力端に接続されたメインバス端の電圧を下方調整する回復運転モード、最小SRで前記燃料電池スタックを運転させる回復運転モード、および前記燃料電池スタックに供給される空気の量を下降させる回復運転モードのうち少なくとも一つを含むことができる。ところが、このような回復運転モードは、燃費または加速応答性が低下するという問題があるため、燃料電池スタックの状態の深刻度に応じて選択的に行われるべきである。
【0133】
本発明は図示した一実施態様を参考として説明されたが、これらの実施態様は例示的なものに過ぎない。当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明は様々な変形および均等な他の実施が可能であることを理解するであろう。よって、本発明の真正な技術的保護範囲は添付した特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0134】
10 燃料電池
13 ダイオード
14 リレー
20 高電圧バッテリー
21 両方向DC/DCコンバータ
31 インバータ
32 駆動モーター
33 高電圧負荷
40 低電圧バッテリー
41 低電圧負荷
42 低電圧DC/DCコンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14