(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、非ヒト動物用の歯石軟化若しくは溶解剤、歯石除去促進剤、又は歯石形成阻害剤を提供する。本発明の歯石軟化若しくは溶解剤、歯石除去促進剤、又は歯石形成阻害剤は、以下の組成物:
(A)カルシウムイオン 1〜300mM、及び
(B)pKaが3以上6未満である物質 7〜300mM
を含有し;
pHが3以上6未満であり;且つ
0.63×log
10[B] +4.04 ≦ [log
10[Ca
2+]+[pH]×1.1] ≦ 1.01×log
10[B]+5.49
(式中、[Ca
2+]:該組成物中の該(A)カルシウムイオンの濃度(mM)、[pH]:該組成物のpH、[B]:該組成物中の該(B)pKaが3以上6未満である物質の濃度(mM))であり、ただし、[log
10[Ca
2+]+[pH]×1.1]は5.0以上7.2以下である、
を有効成分とする。
【0015】
上記本発明の組成物に含有される(A)カルシウムイオンの供給源としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム等の無機カルシウム塩;乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、マロン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、フィチン酸カルシウム等の有機カルシウム塩;及び、リン酸カルシウム、Ca(HPO
4)・2H
2O(ジカルシウム・フォスフェート;DCPD)、Ca
8H
2(PO
4)
6・5H
2O(オクタカルシウム・フォスフェート;OCP)、Ca
9(PO
4)
6(多様)(無定形リン酸カルシウム;ACP)、Ca
3(PO
4)
2(トリカルシウム・フォスフェート;TCP)、Ca
10(PO
4)
6(OH)
2(ハイドロキシアパタイト;HAP)等のリン酸カルシウム塩、などが挙げられる。上記に挙げたカルシウム塩から選択される1種又は2種以上を、(A)カルシウムイオンの供給源として本発明の組成物に添加することができる。好ましくはリン酸カルシウム塩が使用される。本発明の組成物における(A)カルシウムイオンの濃度は、1mM以上、好ましくは3mM以上、より好ましくは5mM以上、且つ300mM以下、好ましくは200mM以下、より好ましくは100mM以下であるか、あるいは、好ましくは1〜300mM、1〜200mM、1〜100mM、3〜300mM、3〜200mM、3〜100mM、5〜300mM、5〜200mM、又は5〜100mMである。
【0016】
上記本発明の組成物に含有される(B)pKaが3以上6未満である物質としては、例えば、乳酸、酢酸、アスコルビン酸、シュウ酸、安息香酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びそれらの塩などが挙げられる。これらの1種又は2種以上を、(B)物質の供給源として本発明の組成物に添加することができ、また使用する(B)物質の種類又は組合せは、本発明の組成物に所望されるpHに合わせて適宜選択することができる。好ましくはクエン酸及びクエン酸塩が使用される。本発明の組成物における(B)物質の濃度は、7mM以上、好ましくは8mM以上、より好ましくは10mM以上、且つ300mM以下、好ましくは200mM以下、より好ましくは150mM以下、さらに好ましくは100mM以下であるか、あるいは、好ましくは7〜300mM、7〜200mM、7〜150mM、7〜100mM、8〜300mM、8〜200mM、8〜150mM、8〜100mM、10〜300mM、10〜200mM、10〜150mM、又は10〜10
0mMである。
【0017】
上記本発明の組成物は、さらに(C)リン酸イオンを含有していてもよい。リン酸イオンの供給源としては、上述したリン酸カルシウム塩の他に、例えば、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸銅などの無機性リン酸化合物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を、(C)リン酸イオンの供給源として本発明の組成物に添加することができる。好ましくは上述したリン酸カルシウム塩が使用される。本発明の組成物における(C)リン酸イオンの濃度は、0.6mM以上、好ましくは1.8mM以上、より好ましくは3.0mM以上であり、且つ300mM以下、好ましくは200mM以下、より好ましくは100mM以下である。あるいは、本発明の組成物における(C)リン酸イオンの濃度は、好ましくは0.6〜300mM、0.6〜200mM、0.6〜100mM、1.8〜300mM、1.8〜200mM、1.8〜100mM、3.0〜300mM、3.0〜200mM、又は3.0〜100mMである。
【0018】
上記本発明の組成物は、pH3以上、好ましくはpH3.5以上であり、且つpH6未満、好ましくはpH5.5以下、より好ましくはpH5以下である。あるいは、本発明の組成物は、pH3〜6未満、好ましくはpH3〜5.5、より好ましくはpH3〜5、より好ましくはpH3.5〜6未満、さらに好ましくはpH3.5〜5.5、なお好ましくはpH3.5〜5である。本発明の組成物のpHは、上記(A)〜(C)成分の添加によっても調整できるが、さらに薬学的に許容される酸又はアルカリ等の他のpH調整剤の添加によっても調整することができる。
【0019】
さらに本発明の組成物においては、(A)カルシウムイオンの濃度がpHに応じて特定の範囲に調整されている。本発明の組成物におけるカルシウムイオンの濃度が高過ぎると、歯石成分である炭酸カルシウムの溶解能が低下し、一方、濃度が低過ぎると、歯石成分とともに歯のエナメル質成分(HAP)まで溶解されてしまうため好ましくない。また、本発明の組成物は、緩衝能が高過ぎると、歯石成分とともに歯のエナメル質成分(HAP)まで溶解されてしまい、一方、緩衝能が低過ぎると、歯石成分である炭酸カルシウムの溶解能が低下する。したがって、本発明の組成物は、以下の条件を満たすものであることが好ましい。
0.63×log
10[B] +4.04 ≦ [log
10[Ca
2+]+[pH]×1.1] ≦ 1.01×log
10[B]+5.49
ただし、[log
10[Ca
2+]+[pH]×1.1]は、5.0以上7.2以下であり、より好ましくは5.3以上7.2以下である。
上式において、[Ca
2+]は、本発明の組成物中の上記(A)カルシウムイオンの濃度(mM)を表し、[pH]は、本発明の組成物のpHを表し、[B]は、本発明の組成物中の上記(B)pKaが3以上6未満である物質の濃度(mM)を表す。
【0020】
本発明の組成物は、任意成分として、殺菌成分、細菌分解酵素、界面活性剤、エナメル質再石灰化成分(フッ化物等)などの有効成分をさらに含有していてもよい。さらに本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、例えば、ゲル化剤、増粘剤、保型剤、緩衝剤、防腐剤、浸透圧調節剤、色素、香料などを含有していてもよい。
【0021】
本発明の組成物を有効成分とする非ヒト動物用の歯石軟化若しくは溶解剤、歯石除去促進剤、又は歯石形成阻害剤は、医薬品や医薬部外品として提供され得る。当該医薬品又は医薬部外品は、非ヒト動物における歯石の軟化若しくは溶解のため、歯石除去促進のため、歯石の形成若しくは蓄積の阻害のために使用され得る。したがって、非ヒト動物におけるデンタルケアや、歯周病の予防に有用である。当該医薬品や医薬部外品の剤型としては、口腔内の歯石に塗布される塗布剤やスプレー、及び経口投与されると口腔内に広がり歯石を軟化又は溶解することのできる固形製剤、ゲル状製剤、液状製剤などの経口剤が挙げられる。当該医薬品や医薬部外品の投与の間隔及び用量は、動物の種、年齢、性別、体重、状態等によって適宜決定すればよい。例えばイヌやネコの場合の用量は、本発明の組成物の量として、0.01〜100g/体重1kg/日、好ましくは0.04〜50g/体重1kg/日であり得る。投与間隔は、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、週に2回、週に1回などであり得る。
【0022】
本発明の組成物を有効成分とする非ヒト動物用の歯石軟化若しくは溶解剤、歯石除去促進剤、又は歯石形成阻害剤はまた、非医薬的又は非治療的に使用されてもよい。非医薬的又は非治療的に使用される場合、上記本発明の剤は、本発明の組成物を含有する非ヒト動物用の飲食品や歯磨き剤として、又は非ヒト動物用の飲食品や歯磨き剤に添加されるためのサプリメントとして提供されて、該非ヒト動物に経口投与される。経口投与された本発明の歯石軟化又は溶解剤は、口腔内に広がり、歯石を軟化又は溶解するか、歯石除去を促進するか、あるいは飲食品の成分から歯石が形成されたり又は該飲食品の成分が歯石として蓄積したりすることを防止する。当該本発明の組成物を含有する非ヒト動物用の飲食品、歯磨き剤又はサプリメントは、歯石除去を促進、歯石の形成を抑制、又は歯石蓄積を軽減することにより、日常的に該非ヒト動物の歯の健康を維持する。
【0023】
上記飲食品や歯磨き剤において、本発明の組成物は、その組成を保ったまま口腔内の歯石に接触できるように他の成分から隔離されていることが好ましい。例えば、当該飲食品や歯磨き剤は、本発明の組成物を含む粒状物やカプセルが全体に分散した飲食品や歯磨き剤であり得る。また例えば、当該飲食品や歯磨き剤は、本発明の組成物の層や本発明の組成物を含むフィリングを包含する飲食品や歯磨き剤であり得る。
【0024】
好ましくは、上記飲食品や歯磨き剤用のサプリメントは、当該飲食品や歯磨き剤と同包又は別包にて提供されて、当該飲食品や歯磨き剤を動物に適用する際に、それらに添加される。例えば、当該サプリメントは、日常の食餌にトッピングされるゼリー状(又はゲル状)組成物、粒状組成物、又はカプセル化組成物であり、動物による食餌の摂取と咀嚼に伴って口腔内に行き渡る。
【0025】
上記本発明の組成物を含有する飲食品、歯磨き剤及びサプリメントの投与の間隔及び用量は、動物の種、年齢、性別、体重、状態等によって適宜決定すればよい。例えばイヌやネコの場合の用量は、本発明の組成物の量として、0.02〜100g/体重1kg/日、好ましくは0.04〜50g/体重1kg/日であり得る。投与間隔は、例えば、食餌毎、又は1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、週に2回、週に1回などであり得る。本発明の組成物を含有する飲食品を与えられる動物は、当該飲食品を食餌として摂取してもよいが、別途又は同時に他の食物や飼料を摂取してもよい。
【0026】
本発明の組成物を含有する医薬品又は医薬部外品の適用対象としては、歯周病に罹患している非ヒト動物、及び歯周病の予防又は歯石除去が必要な非ヒト動物が挙げられる。本発明の組成物を含有する飲食品、歯磨き剤及びサプリメントの適用対象としては、歯の健康を維持するために歯石の形成の抑制又は歯石蓄積の軽減が所望される非ヒト動物が挙げられる。本発明の組成物を適用される非ヒト動物としては、非ヒト哺乳動物、好ましくはイヌ及びネコが挙げられる。
【0027】
上記非ヒト動物に本発明の組成物を適用する用法の好ましい例を以下に述べる。まず、予め本発明の組成物又は上述した本発明の剤を添加した食餌を準備する。食餌の種類は、適用対象の非ヒト動物の種、年齢、状態等に応じて選択すればよく、特に限定されない。該食餌に対する本発明の組成物又は剤の添加の方法としては、上述した形態で本発明の組成物又は剤を含有する飼料、フード又は飲料を製造してもよいが、市販品等の日常給与される飼料、フード又は飲料に対して本発明の組成物又は剤をトッピングしたり、混入させたりしてもよい。この本発明の組成物又は剤を添加した食餌を該非ヒト動物に摂食(例えば、咀嚼又はなめ取り)させると、本発明の組成物が該動物の歯に接触し、歯石軟化若しくは溶解、歯石除去促進、又は歯石形成阻害の効果を発揮する。本発明の組成物の用量及び投与間隔は、上述したとおりでよく、該動物の歯石の蓄積の状態に応じて変更することができる。
【0028】
したがって、本発明はまた、上記本発明の組成物又は剤を添加した食餌を非ヒト動物に摂食させることを含む、非ヒト動物の歯石軟化若しくは溶解、歯石除去促進、又は歯石形成阻害のための方法、あるいは非ヒト動物の歯周病予防又は改善方法を提供する。該方法において、本発明の組成物又は剤は、好ましくは食餌へのトッピング用のゼリー状(又はゲル状)組成物であり、該食餌の上からトッピングされて、該非ヒト動物に摂食される。
【0029】
上述した本発明の別の例示的実施形態として、さらに以下を本明細書に開示する。
【0030】
<1>組成物であって、以下:
(A)カルシウムイオン;
該カルシウムイオンの濃度は、
好ましくは1mM以上、より好ましくは3mM以上、さらに好ましくは5mM以上であり、且つ好ましくは300mM以下、より好ましくは200mM以下、さらに好ましくは100mM以下であるか、又は
好ましくは1〜300mM、1〜200mM、1〜100mM、3〜300mM、3〜200mM、3〜100mM、5〜300mM、5〜200mM、又は5〜100mMである、
及び
(B)pKaが3以上6未満である物質
該物質の濃度は、
好ましくは7mM以上、より好ましくは8mM以上、さらに好ましくは10mM以上であり、且つ好ましくは300mM以下、より好ましくは200mM以下、さらに好ましくは150mM以下、なお好ましくは100mM以下であるか、又は
好ましくは7〜300mM、7〜200mM、7〜150mM、7〜100mM、8〜300mM、8〜200mM、8〜150mM、8〜100mM、10〜300mM、10〜200mM、10〜150mM、又は10〜100mMである、
を含有し;
pHが3以上、好ましくはpH3.5以上であり、且つpH6未満、好ましくはpH5.5以下、より好ましくはpH5以下であるか、又はpH3〜6未満、好ましくはpH3〜5.5、より好ましくはpH3〜5、より好ましくはpH3.5〜6未満、さらに好ましくはpH3.5〜5.5、なお好ましくはpH3.5〜5であり;
且つ
0.63×log
10[B] +4.04 ≦ [log
10[Ca
2+]+[pH]×1.1] ≦ 1.01×log
10[B]+5.49
(式中、[Ca
2+]:該組成物中の該(A)カルシウムイオンの濃度(mM)、[pH]:該組成物のpH、[B]:該組成物中の該(B)pKaが3以上6未満である物質の濃度(mM))であり、ただし、[log
10[Ca
2+]+[pH]×1.1]は5.0以上7.2以下であり、好ましくは5.3以上7.2以下である、
組成物。
【0031】
<2>好ましくは以下を含有する<1>記載の組成物:
(A)カルシウムイオン:1〜300mM、及び
(B)pKaが3以上6未満の物質:7〜300mM、7〜200mM、7〜150mM、7〜100mM、8〜300mM、8〜200mM、8〜150mM、8〜100mM、10〜300mM、10〜200mM、10〜150mM又は10〜100mM。
【0032】
<3>好ましくは、(A)カルシウムイオンの濃度が3〜200mMである<1>又は<2>記載の組成物。
【0033】
<4>好ましくは、(A)カルシウムイオンの濃度が5〜100mMである<1>又は<2>記載の組成物。
【0034】
<5>好ましくは、(B)pKaが3以上6未満の物質の濃度が7〜300mMである<1>〜<4>のいずれか1に記載の組成物。
【0035】
<6>好ましくは、(B)pKaが3以上6未満の物質の濃度が8〜200mMである<1>〜<4>のいずれか1に記載の組成物。
【0036】
<7>好ましくは、(B)pKaが3以上6未満の物質の濃度が10〜100mMである<1>〜<4>のいずれか1に記載の組成物。
【0037】
<8>好ましくはpH3〜6未満、より好ましくはpH3.5〜6未満、さらに好ましくはpH3.5〜5.5、なお好ましくはpH3.5〜5である、<1>〜<7>のいずれか1に記載の組成物。
【0038】
<9>好ましくはさらに(C)リン酸イオンを含有する<1>〜<8>のいずれか1に記載の組成物。
【0039】
<10>(C)リン酸イオンの濃度が、好ましくは0.6mM以上、より好ましくは1.8mM以上、さらに好ましくは3.0mM以上であり、且つ300mM以下、好ましくは200mM以下、より好ましくは100mM以下であるか、又は
好ましくは0.6〜300mM、0.6〜200mM、0.6〜100mM、1.8〜300mM、1.8〜200mM、1.8〜100mM、3.0〜300mM、3.0〜200mM、又は3.0〜100mMである、
<9>記載の組成物。
【0040】
<11>上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物を有効成分とする、非ヒト動物用の歯石軟化若しくは溶解剤、歯石除去促進剤、又は歯石形成阻害剤。
【0041】
<12>非ヒト動物における歯石軟化若しくは溶解、歯石除去促進、又は歯石形成阻害のための、上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物の使用。
【0042】
<13>非ヒト動物における歯石軟化若しくは溶解、歯石除去促進、又は歯石形成阻害に使用するための、上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物。
【0043】
<14>非ヒト動物用の歯石軟化若しくは溶解剤、歯石除去促進剤、又は歯石形成阻害剤の製造のための、上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物の使用。
【0044】
<15>上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物を非ヒト動物に投与することを含む、非ヒト動物の歯石の軟化若しくは溶解方法、歯石除去促進方法、又は歯石形成阻害方法。
【0045】
<16>上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物を有効成分とする、非ヒト動物用の歯周病予防又は改善剤。
【0046】
<17>非ヒト動物の歯周病予防又は改善に使用するための、上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物。
【0047】
<18>非ヒト動物用の歯周病予防又は改善剤の製造のための、上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物の使用。
【0048】
<19>上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の組成物を非ヒト動物に投与することを含む、非ヒト動物の歯周病予防又は改善方法。
【0049】
<20>上記<11>〜<19>において、好ましくは、上記非ヒト動物はイヌ又はネコである。
【0050】
<21>上記<12>及び<14>において、好ましくは、上記組成物は非治療的に使用される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0052】
試験1:モデル歯石溶解試験
(A)カルシウムイオン、(B)pKaが3以上6未満である物質としてのクエン酸、(C)リン酸イオンを各種濃度で含有し、pHの異なる試験液を調製した。(A)カルシウムイオン、(C)リン酸イオンとしては、CaCl
2、KH
2PO
4、ハイドロキシアパタイト、CaHPO
4、Ca
3(PO
4)
2のいずれかを用いた。pHの調整は、水酸化カリウム又は塩酸を添加することで行った。各試験液の組成を表1〜4に示す。なお、表中のHAPはハイドロキシアパタイトを意味する。表4中のクエン酸ナトリウムは、クエン酸含有試験液のpHを調整するために添加した。
【0053】
38℃に加温した試験液を、200μLずつ96穴マイクロプレートに分注し、38℃に保った状態で各ウェルの吸光度(620nm)を測定し、バックグラウンド吸光度とした。
別途、1Lビーカーに38℃に加温したイオン交換水500ccを入れ、スターラーで撹拌しながら、ハイドロキシアパタイト(HAP)粉末(モデル歯)0.1質量%又は炭酸カルシウム(CaCO
3)粉末(モデル歯石)0.4質量%を添加し分散させた分散液をそれぞれ調整した。調整したHAP分散液あるいはCaCO
3分散液を、スターラーで均一な分散状態を保ったまま、8連ピペッターを用いて前記の96穴マイクロプレートの試験液入りの各ウェルに対して速やかに100μLずつ添加し、直後の各ウェルの吸光度(620nm)を参考値として測定した。その後、加温機能付きプレートシェーカーにて38℃、500rpmでの1分間撹拌→直ちに各ウェルの吸光度(620nm)を測定する工程を、HAP分散液の場合は5回繰り返して実施し、CaCO
3分散液の場合は1回実施した。
各々のHAP分散液、及びCaCO
3分散液について、最後に測定した吸光度値から対応するバックグラウンド吸光度値を引いた計算値(Δ吸光度)を算出した。
【0054】
基準値として、試験液をイオン交換水に換えて同様の試験を行い、Δ吸光度を算出した。各試験液について、HAP分散液、CaCO
3分散液のそれぞれにつき、対応するイオン交換水への分散液のΔ吸光度(基準値)を1とした場合のΔ吸光度の比(HAP吸光度比、CaCO
3吸光度比)を求めた。
各試験液について、HAP吸光度比の値からCaCO
3吸光度比の値を差し引いた値を求め、効果指数(−1〜+1)とした。より高い効果指数が得られた試験液ほど、CaCO
3が溶解しやすく且つHAPが溶解しにくい、より好ましい試験液である。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
図1に、クエン酸濃度(mM)を横軸(X)に、{log
10[Ca
2+]+[pH]×1.1}([Ca
2+]はカルシウムイオン濃度(mM)を表す)の値を縦軸(Y)にして、表1〜4のデータをプロットした図を示す(カルシウムイオン濃度が0の場合を除く)。
図1のマークはそれぞれ、各データの効果指数を表しており、◆:0.70以上1.00まで、●:0.50以上0.70未満、○:0.33以上0.50未満、×:0.33未満を表す。表1〜4中の効果指数の欄のマークは、
図1のマークに対応している。*マークの付いたサンプルでは、沈殿発生により吸光度測定ができなかったため効果指数が測定できなかった。
図1に示すとおり、{log
10[Ca
2+]+[pH]×1.1}が、5.0(
図1中の直線(3))以上且つ0.63×log
10[B]+4.04([B]はクエン酸濃度(mM)、
図1中の直線(5))以上、及び7.2(
図1中の直線(4))以下且つ1.01×log
10[B]+5.49(
図1中の直線(6))以下という条件を満たす組成を有する試験液では、高い効果指数が得られた。また、試験液のクエン酸濃度が7〜300mMの範囲(
図1中の直線(1)と(2)の間)の場合、CaCO
3の溶解性も良く、高い効果指数が得られた。
すなわち、表1、2に示す組成物はいずれも
図1の(1)〜(6)の直線で囲まれる領域に含まれ、且つ効果指数が0.33以上であった。一方、表3、4に示す組成物はいずれも
図1の(1)〜(6)の直線で囲まれる領域外であり、且つ効果指数が0.33未満又は効果指数が測定できなかった。
【0060】
以上の結果より、
図1の(1)〜(6)の直線で囲まれる領域に含まれる組成物が、非ヒト動物の歯のエナメル質の溶解を極力抑制しつつ、歯石を軟化又は溶解させることができる好ましい組成物であることが明らかになった。
【0061】
試験2:歯石溶解試験
歯石の付着したイヌの抜去歯を実施例1〜2及び比較例1の液に浸漬させ、室温で1週間放置した後、歯石の付着状態を観察した。実施例1〜2及び比較例1の組成は以下に記載する。
実施例1:Ca
3(PO
4)
2 0.10質量%、クエン酸・1H
2O 0.20質量%、pH=3.82
実施例2:Ca
3(PO
4)
2 0.30質量%、クエン酸・1H
2O 1.00質量%、pH=3.32
比較例1:精製水
結果を
図2に示す。実施例1〜2の液に浸漬させた歯は歯石が減少した。歯浸漬後の実施例1〜2の液中には歯から剥がれた歯石が観察された。精製水に浸漬させた歯の歯石には変化が認められなかった。
【0062】
試験3:トッピング用ゼリー状組成物による歯石形成阻害試験
(1)ゼリー状組成物の調製
85℃に昇温したイオン交換水2,975gを十分な撹拌力で撹拌しながら、香料1.50g、甘味料1.05g、ジェランガム含有製剤(ゲルアップK−S(F)、三栄源FFI製)10.5gを溶解させたのち、リン酸3カルシウム2.40gを分散させ、次いでキサンタンガム/ローカストビーンガム製剤(ゲルアップSA−3C、三栄源FFI製)3.00gを溶解させた。そののち、クエン酸1水和物(結晶)を6.60g添加し、溶解させた。これを開封時の開口部が幅2cmとなるようにヒートシール加工した袋(ナイロンポリGタイプ、福助工業株式会社製)に100gずつ分注し、その後室温に放置し、ゲル化させた。得られたゲルのpHは3.8であった。
【0063】
(2)試験手順
供試犬(ビーグル犬4頭、試験開始時体重11.7kg〜13.5kg)を2頭ずつの2群に分けクロスオーバー試験を行った。4週間を1クールとしこれを2クール(前期試験及び後期試験)行った。試験期間中、各個体に市販のドッグフード(総合栄養食;日本ヒルズ・コルゲート株式会社製、サイエンス・ダイエット アダルト小粒)を、おおよそ体重を維持する量で1日2回給与した(1回目:9〜10時、2回目:16〜17時)。餌皿は底面内側が15cm×7cmの長方形であり、給与量は1回の給与あたり110〜135g/頭であった。
前期試験(試験0〜27日)では、第1群を(1)のゼリー状組成物の投与群(第2群は対照群)とし、後期試験(試験28〜55日)では、第2群を(1)のゼリー状組成物の投与群(第1群は対照群)とした。投与群では、毎食時、ドッグフードの上に(1)のゼリー状組成物(100g/頭)をトッピングして食餌とともに摂食させることにより、個体の口腔内にゼリー状組成物を投与した。
【0064】
(3)歯石付着量評価
前期試験0日目、及び28日目(=後期試験0日目)には、麻酔下で各個体の歯石付着量評価を実施した後スケーリングを行った。後期試験28日目には、麻酔下で歯石付着量評価を実施した。歯石付着量は、上顎及び下顎の左右各6本ずつ(第3切歯、犬歯、第2前臼歯、第3前臼歯、第4前臼歯、第1後臼歯)、計24本の歯について評価した。
歯石付着量評価では、麻酔下において、各個体の歯垢をガーゼで拭い取った後、歯石の付着面積と付着厚さを、表5に従って目視評価によりスコア化した。付着面積スコアと付着厚さスコアから、下記式にて歯石の総合スコアを求めた。結果を表6に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】