(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444710
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 15/01 20060101AFI20181217BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20181217BHJP
F01N 3/02 20060101ALI20181217BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20181217BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20181217BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
B60K15/01 A
B60K13/04 B
F01N3/02 201
B60K11/04 A
B62D21/18 A
A01D41/12 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-243161(P2014-243161)
(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-104601(P2016-104601A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【審査官】
稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−70629(JP,A)
【文献】
特開2012−237232(JP,A)
【文献】
特開2014−159812(JP,A)
【文献】
特開2014−64529(JP,A)
【文献】
特開2012−241425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/12
B60K 11/04
13/04
15/01
B62D 21/18
F01N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームの右側部に載置されるエンジンルーム内に収容されるエンジンと、該エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を除去する粒子状物質除去装置と、外気を取込んで前記エンジンに冷却風を送る冷却ファンと、を備えた作業車両において、
前記エンジンルームの内部にあって、前記粒子状物質除去装置に対して前記冷却ファンの送風方向上流側に、前後方向に延設される配管と、
前記エンジンルームの後方に設けられ、後部を軸にして水平方向に回動するグレンタンクと、を備え、
前記機体フレームは、前記グレンタンクの下方において機体幅方向に延びて前記グレンタンクの底部の右下方において一部が切除され、かつ該切除部分に通過空間を存して連結される第1の横フレームと、該第1の横フレームの後方において機体幅方向に延びる第2の横フレームと、を有し、
前記配管は、前記エンジンルームから後方に延出し、前記通過空間を通って、前記グレンタンクの前記底部の下方を迂回して、前記第2の横フレームの上方を通るように延設されてなる、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記第1の横フレームの前記切除部分は、上方が開口する凹形状からなるガイドプレートと、該ガイドプレートとの間に前記通過空間を存して、該ガイドプレートの開口部を覆うように配置されるカバープレートと、によって連結されてなる、
請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記配管は、燃料ホースと、油圧ホースと、を含んでなる、
請求項1又は2記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の作業車両に係り、詳しくはエンジンの排気経路にDPF(粒子状物質除去装置)を介在する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンを動力源とする作業車両は、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を除去するために、エンジンの排気管に接続された粒子状物質除去装置(以下、DPFとする)を備えたものが知られている。作業者は、DPF内部のフィルタによって粒子状物質を捕集すると共に、エンジンを高速回転して高温の排気ガスをDPFに送ることで、捕集された粒子状物質を燃焼してフィルタの除去性能を再生することができる。
【0003】
また、コンバインの右側方にエンジン及びラジエータを配置し、該ラジエータの後下部にDPFを配置すると共に、エンジン、ラジエータ及びDPFを原動ボックスで覆ったものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−230522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のコンバインにおいて、エンジンを冷却する冷却ファンはエンジンとラジエータとの間に配置されて、冷却ファンとDPFとは機体左右方向に重なり合う位置にあったため、DPFは冷却ファンによる冷却風の影響をほとんど受けなかった。一般に、エンジンボックスの右側部には、エンジンに燃料を供給する燃料配管や油圧回路を構成する油圧配管が設けられることが多く、冷却ファンによってほとんど冷却されず高温となるDPFがこれら配管の付近に配置されることは、配管の安全性及び耐久性の面で好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、エンジンルーム(原動ボックス)内部の配管を、DPFの温度影響を軽減するように配置して、以て上述した課題を解決した作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、機体フレーム(4)に載置され、エンジンルーム(11)内に収容されるエンジン(13)と、該エンジン(13)の排気ガスに含まれる粒子状物質を除去する粒子状物質除去装置(30)と、外気を取込んで前記エンジン(13)に冷却風を送る冷却ファン(27)と、を備えた作業車両において、
前記エンジンルーム(11)の内部にあって、前記粒子状物質除去装置(30)に対して前記冷却ファン(27)の送風方向上流側に、前後方向に延設される配管(g)を備えてなる、
ことを特徴とする。
【0008】
例えば
図4を参照して、前記配管(g)は、燃料ホース(f)と、油圧ホース(h)と、を有してなる。
【0009】
例えば
図3ないし
図6を参照して、前記エンジンルーム(11)は、前記機体フレーム(4)の右側部に載置され、
前記エンジンルーム(11)の後方に設けられ、後部を軸(P)にして水平方向に回動するグレンタンク(7)を備え、
前記機体フレーム(4)は、前記グレンタンク(7)の下方において機体幅方向に延びて前記グレンタンク(7)の底部(20)の右下方において一部が切除され、かつ該切除部分に通過空間(R)を存して連結される第1の横フレーム(41)と、該第1の横フレーム(41)の後方において機体幅方向に延びる第2の横フレーム(42)と、を有し、
前記配管(g)は、前記エンジンルーム(11)から後方に延出し、前記通過空間(R)を通って、前記グレンタンク(7)の前記底部(20)の下方を迂回して、前記第2の横フレーム(42)の上方を通るように延設されてなる。
【0010】
例えば
図5(a)を参照して、前記第1の横フレーム(41)の前記切除部分は、上方が開口する凹形状からなるガイドプレート(45)と、該ガイドプレート(45)との間に前記通過空間(R)を存して、該ガイドプレート(45)の開口部を覆うように配置されるカバープレート(23)と、によって連結されてなる。
【0011】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、エンジンルームの内部において、配管を、粒子状物質除去装置に対して、冷却ファンの送風方向上流に配置したので、粒子状物質除去装置の周囲に発生する熱風が、冷却ファンの作る冷却風により、配管とは逆方向に誘導されて、配管に与える熱影響を小さくすることができる。これにより、安全性を高めると共に、配管の劣化を抑えることができる。
【0013】
請求項
3に記載の本発明は、配管が燃料ホース及び油圧ホースを有するので、燃料又は作動油がDPFの熱によって燃焼又は劣化することを防止すると共に、燃料ホース及び油圧ホースの劣化を抑えることができる。
【0014】
請求項
1に記載の本発明は、作業車両の配管を、第1の横フレームに設けた通過空間を通って、グレンタンクの底部の下方を迂回して、第2の横フレームの上方を通るように配設するので、機体フレームの強度を十分に保ったまま、グレンタンクの回動にあたってグレンタンクの底部と配管が接触することを防止できる。これにより、これらグレンタンク又は配管が損傷することを防止することができる。
【0015】
請求項
2に記載の本発明は、第1の横フレームの切除部分を連結するガイドプレート及びカバープレートを設けるので、第1の横フレームの強度を増すことができる。また、カバープレートはガイドプレートに載置された配管を覆って設けられるので、グレンタンクを機体外側に回動させて走行機体の点検整備を行う場合において、配管が作業者に踏まれることを防止して、メンテナンス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るコンバインの全体斜視図。
【
図2】(a)は走行機体の側面図であり、(b)はグレンタンクのロック機構を示す拡大図。
【
図5】(a)は走行機体の機体フレーム及びエンジンを示す斜視図であり、(b)は配管の配設経路を示す斜視図。
【
図7】グレンタンクの底部と配管との位置関係を示す拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。コンバイン1(作業車両)は、
図1に示すように、左右のクローラ走行装置2,2に支持される走行機体3を有しており、該走行機体3の前方には、穀稈を刈取・搬送する前処理部5が昇降自在に設けられ、走行機体3の一側方(左方)には、穀粒を脱穀・選別する脱穀部6が設けられ、他側方(右方)には、コンバイン1を運転操作する運転操作部8と、穀粒を一時貯留して排出オーガ9を介して機外に排出可能なグレンタンク7と、が設けられている。
【0018】
上記運転操作部8の下方には、
図2(a)ないし
図3に示すように、エンジン13を覆うエンジンルーム11が設けられ、運転操作部8の後方には、エンジン13に外気を浄化して供給するエアクリーナ(不図示)を収めるエアクリーナボックス12が設けられている。エンジンルーム11の右側面は、防塵網を有しエンジン13を冷却するラジエータ(不図示)を内蔵するエンジンカバー11aと、該エンジンカバー11aの後方を覆う補助カバー11bとが開閉自在に設けられて構成され、後側面は後部カバー11c(
図5(a)参照)によって覆われている。エンジンルーム11の内部には、いずれも後述する冷却ファン27,DPF30及びバルブユニット36,37等が収められている。
【0019】
エンジンルーム11の後方に位置するグレンタンク7は、上記排出オーガ9を支持するオーガ支持部7aを後部に有しており、該オーガ支持部7aから上下に延びる軸Pを中心に水平方向に回動して開閉可能に設けられている。グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7及び排出オーガ9の内部に設けられるスパイラルシャフト(不図示)によって運搬され、機外に放出される。グレンタンク7の下部は、
図2及び
図3に示すように、V字形状に形成される左右の斜板19L,19R及びこれら斜板19L,19Rを接続する底部20からなり、右側方を取外し自在のサイドカバー18にて覆われている。サイドカバー18の内部前方には、グレンタンク7を上記脱穀部6に固定する固定ピン22bをワイヤー操作するタンク固定レバー22aと、機体フレーム4の一部をなすカバープレート23に対して抜挿し自在に設けられるタンク固定レバー21と、を有してグレンタンク7を閉位置にロック可能なロック機構17が設けられている。
【0020】
エンジン13の右方には、
図3ないし
図7に示すように、エンジン13の動力によって駆動されて正転又は逆転する冷却ファン27が配置されている。冷却ファン27は正転により、機体左右方向において右方から左方への冷却風を発生させ、エンジンカバー11aから取込んだ外気によってエンジンルーム11の内部を冷却すると共に、短時間の逆転により、送風方向を反転してエンジンカバー11aの上記防塵網に付着した藁屑等を除去できるように設けられている。
【0021】
エンジン13の後方には、スス等の粒子状物質を除去するフィルタを内蔵したDPF30(粒子状物質除去装置)が配置され、エンジン13から発生する排気ガスは、エンジン13とDPF30を接続する排気管29と、DPF30と、該DPF30から延出して機体下部に開口部を有するテールパイプ31と、を経由して機外に放出される。DPF30を左方及び後方から覆うDPFカバー35は、右方において上記後部カバー11cに連続し、左方において上記テールパイプ31に沿って下方に開口しており、DPF30の右方には該DPF30から右方へ向かう熱放射を遮る遮熱板39が立設されている。
【0022】
エンジン13の燃料を貯留する燃料タンク25は、走行機体3の左後方に設けられ、給油口26を介して燃料が補給される。燃料タンク25に燃料が補給される際には、ブリーザ28によって空気抜きされる。燃料タンク25から取出された燃料は、セジメンタ47で水分を除去され、ポンプ48で加圧され、フィルタ49で不純物を除去されて、燃料ホースfのフィード用ホースを介してエンジン13に供給されると共に、余分な燃料は燃料ホースfのリターン用ホースを介して燃料タンク25に戻される。
【0023】
上記エンジンルーム11の内部には、エンジン13の動力を使用して作動油を加圧するギヤポンプ(不図示)と、作業者の操作に基づいて圧油を各々の油圧装置に配分するバルブユニット36,37が配置されている。走行機体3の後部には、上記スパイラルシャフトを駆動する油圧モータ40が設けられており、バルブユニット37から後方に延出する油圧ホースhを介して圧油を供給されて作動すると共に、油圧ホースhを介して作動油を走行機体3の前部に設けられるオイルタンク(不図示)に還流している。
【0024】
本発明に係る配管経路及び機体フレーム4について詳述する。機体フレーム4は、走行機体3の外周に沿って設けられる外フレーム43と、上記グレンタンク7の下方において外フレーム43を左右方向に連結する第1の横フレーム41と、該第1の横フレームの後方において外フレーム43を左右方向に連結する第2の横フレーム42と、を有する。
【0025】
第1の横フレーム41は、グレンタンク7の上記底部20の右下方において切除されたパイプ材46と、上方に開口するコ字形状(凹形状)からなりパイプ材46の上記切除部分を連結するガイドプレート45と、該ガイドプレート45の開口部を覆ってパイプ材46を連結するカバープレート23と、を有する。なお、図示の都合上、
図4、
図5(b)及び
図6は、カバープレート23を取外した状態のコンバイン1を示している。ガイドプレート45の開口部は、カバープレート23により覆われた状態において、上記燃料ホースf及び油圧ホースhが通過可能な通過空間Rを形成するように、深さ及び幅が設定されている。上記グレンタンク7の底部20は、カバープレート23から上方に0.5cm〜3cmの空隙を存して配置されている。
【0026】
上記燃料ホースf及び上記油圧ホースhを有する配管gは、エンジンルーム11の内部において、DPF30及び上記遮熱板39の右方において前後方向に延設され、エンジンルーム11の後部カバー11cの下部に設けられた切欠き11dを経由して後方に延出している。配管gはグレンタンク7の下方において、上記第1の横フレーム41の上記通過空間Rを通って後方に延出し、グレンタンク7の上記底部20の下方を左後方に斜行(迂回)すると共に高さを上げ、上記第2の横フレーム42の上方を後方に延出して上記油圧モータ40又は上記燃料タンク25等に接続する。
【0027】
本発明は上述したような構成からなるので、エンジン13を回転させると、該エンジン13からの排気ガスによってDPF30が加熱されて高温となる。エンジンルーム11の内部において、冷却ファン27が正転するときには、冷却ファン27の送風方向は機体右側から機体左側となる。このため、配管gはDPF30に対して送風方向上流側にあり、DPF30によって発生する熱風が機体左側へ誘導されて、配管gが熱風にさらされて高温になることを防ぐことができる。また、配管gをDPF30からの熱風を避けるように配置したことで、DPF30の全周を覆うカバーを設けることなく、簡易な遮熱板39によって配管gへの熱影響を抑えることができる。冷却ファン27が逆転する時間は、正転する時間に比べて短いため、配管gの温度上昇は最小限に抑えられている。
【0028】
また、作業者は、機体内方のベルトやプーリをメンテナンスする際には、ロック機構17を解除して、軸Pを中心にグレンタンク7を水平方向に開く。グレンタンク7の下方において、配管gは、第1の横フレーム41に設けられた通過空間Rを通して、グレンタンク7の底部20を下方から迂回して、第2の横フレーム42の上方を通るように配設されている。このため、機体フレーム4の強度を十分に保ったまま、グレンタンク7を回動させるときにグレンタンク7の底部20と配管gが接触することを防止して、これらグレンタンク7及び配管gが損傷することを防止することができる。
【0029】
また、配管gをグレンタンク7の底部20の右方(右下方)に設けられた第1の横フレーム41の通過空間Rを通して延設するため、上記底部20の左方かつ第1の横フレーム41の上方に配管gを延設するものに比して、後面視において第1の横フレーム41と、グレンタンク7と、脱穀部6とによって囲まれるスペースが大きくなり、例えば選択触媒還元脱硝装置を始めとする排気ガス浄化装置を配置しやすくなる。
【0030】
第1の横フレーム41のパイプ材46は、通過空間Rを囲んで取付けられるガイドプレート45及びカバープレート23によって連結されるため、第1の横フレーム41の強度を増すことができる。
【0031】
カバープレート23は、グレンタンク7の底部20と所定空隙を有して設けられるため、グレンタンク7の回動にあたって、グレンタンク7の底部20と配管gとが接触して損傷することをより確実に防止することができる。
【0032】
なお、配管gは燃料ホースf及び油圧ホースh以外の配管・配索・配線等を有してもよく、例えばコンバイン1の電気回路を構成するケーブルを有してもよい。
【0033】
なお、第1の横フレーム41のガイドプレート45及びカバープレート23は、上述した形状に限らず、上記通過空間Rを有するいかなる構成であってもよく、例えば開口部を前後方向に向けたパイプ形状からなってもよい。
【0034】
なお、上述した実施の形態は、作業車両としてコンバインに本発明を適用したが、これに限らず、ハーベスタ等の他の作業車両にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 作業車両(コンバイン)
4 機体フレーム
7 グレンタンク
11 エンジンルーム
13 エンジン
20 底部
23 カバープレート
27 冷却ファン
30 粒子状物質除去装置(DPF)
41 第1の横フレーム
42 第2の横フレーム
45 ガイドプレート
P 軸
R 通過空間
f 燃料ホース
g 配管
h 油圧ホース