特許第6444740号(P6444740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444740
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】風力発電システムおよび風力発電方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20181217BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F03D80/00
   F03D1/06 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-4715(P2015-4715)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2016-6316(P2016-6316A)
(43)【公開日】2016年1月14日
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-111426(P2014-111426)
(32)【優先日】2014年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 元史
(72)【発明者】
【氏名】志村 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】大迫 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏雅
(72)【発明者】
【氏名】松田 寿
(72)【発明者】
【氏名】大西 祐太
(72)【発明者】
【氏名】中山 真哉
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−249510(JP,A)
【文献】 特開2006−177354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流を受けて回転する風車と、
運転・停止可能に設けられ、運転時には前記風車に対して揚力を増大する高揚力装置と、
前記風車の回転により発電し前記風車の回転を抑えるためのトルクを発生する発電機と、
前記発電機の回転数に対して前記発電機に発生させるトルクの特性を示す複数の特性マップが記憶された記憶部と、
前記高揚力装置の運転・停止の状態に応じて前記記憶部の複数の特性マップを切り替えて使用し前記発電機の発電量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記発電機の回転数を低回転領域、中回転領域、高回転領域に分けた場合、前記高揚力装置が運転する状態では、前記高揚力装置が停止した状態よりも前記中回転領域のトルクを増加させる特性の特性マップを使用する風力発電システム。
【請求項2】
前記特性マップは、
前記低回転領域側を、より増強させる特性である請求項記載の風力発電システム。
【請求項3】
前記高揚力装置の停止状態と運転状態とでは前記発電機の回転数が同じときに運転状態では出力するトルクを停止状態よりも大きくする特性マップを使用する請求項1記載の風力発電システム。
【請求項4】
前記高揚力装置が、放電プラズマの作用により気流を発生させる気流発生装置である請求項1記載の風力発電システム。
【請求項5】
前記高揚力装置が、MEMS素子を用いたシンセティックジェットである請求項1記載の風力発電システム。
【請求項6】
気流を受けて回転する風車と、
運転・停止可能に設けられ、運転時には前記風車に対して揚力を増大する高揚力装置と、
前記風車の回転により発電し前記風車の回転を抑えるためのトルクを発生する発電機と、
前記発電機の出力Pを前記発電機の回転数ωで除したP/ωと、前記発電機の回転数ωとの、所定の期間にわたって平均化された相関関係が、前記高揚力装置を停止した場合と前記高揚力装置を駆動させた場合で異なるように制御する制御部と
を具備する風力発電システム。
【請求項7】
気流を受けて回転する風車と、運転・停止可能に設けられ、運転時には風車に対して揚力を増大する高揚力装置と、前記風車の回転により発電し前記風車の回転を抑えるためのトルクを発生する発電機とを備えた風力発電システムにおける風力発電方法において、
前記発電機の回転数に対して前記発電機に発生させるトルクの特性を示す複数の特性マップを記憶し、
前記高揚力装置の運転・停止の状態に応じて前記複数の特性マップを切り替えて使用し前記発電機の発電量を制御する上で、前記発電機の回転数を低回転領域、中回転領域、高回転領域に分けた場合、前記高揚力装置が運転する状態では、前記高揚力装置が停止した状態よりも前記中回転領域のトルクを増加させる特性の特性マップを使用する風力発電方法。
【請求項8】
気流を受けて回転する風車と、運転・停止可能に設けられ、運転時には風車に対して揚力を増大する高揚力装置と、前記風車の回転により発電し前記風車の回転を抑えるためのトルクを発生する発電機とを備えた風力発電システムにおける風力発電方法において、前記発電機の出力Pを前記発電機の回転数ωで除したP/ωと、前記発電機の回転数ωとの、所定の期間にわたって平均化された相関関係が、前記高揚力装置を停止した場合と前記高揚力装置を駆動させた場合で異なるように制御する風力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、風力発電システムおよび風力発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば日本などでは地理的制約が、風力発電が普及しない要因の一つになっている。
【0003】
地理的制約の一つとして、日本は山岳性気象であるため風速および風向がめまぐるしく変わり、風力発電システムの出力を安定して維持することが困難である。
【0004】
このことが風車1台あたりの発電効率を低下させ、結果的に風力発電システムの導入コストを押し上げている。
【0005】
この他、国土の狭隘な日本にあっては、風力発電の普及につれて、立地環境に対する問題が顕在化してきており、特に民家や集落の近くに立地しなければならない場合においては、騒音に関する各種トラブルが発生し易い。
【0006】
以上のような出力の安定化や騒音問題の解決策としては、例えば風車翼に電極を搭載しプラズマを発生させることにより気流を制御する高揚力装置を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2006−197986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように高揚力装置を用いる場合、風況のよい場合には必ずしも作動させる必要はなく、また既設風車に後から高揚力化装置を設置、いわゆる増設するような場合には、そもそもの風車の設計として高揚力装置がない場合に最大効率で発電できるようにされているため、高揚力装置を後付けしたとしても効率がそれほどよくならない場合がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、高揚力装置が搭載された風車発電システムの効率を向上し、さらには効率を最大化することができる風力発電システムおよび風力発電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の風力発電システムは、高揚力装置、記憶部、制御部を備える。高揚力装置は運転・停止可能に設けられており、運転時には風車の翼に対して揚力を増大させる。記憶部には風車の回転により発電し風車の回転を押さえる方向にトルクが発生する発電機の回転数に対して発電機に発生させるトルクの特性を示す複数の特性マップが記憶されている。制御部は高揚力装置の運転・停止の状態に応じて記憶部の複数の特性マップを切り替えて使用し発電機の電力量を制御する。制御部は発電機の回転数を低回転領域、中回転領域、高回転領域に分けた場合、高揚力装置が運転する状態では、高揚力装置が停止した状態よりも中回転領域のトルクを増加させる特性の特性マップを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一つの実施の形態の風車発電システムの外観斜視図である。
図2図1の風車発電システムの気流発生装置の構成を示す図である。
図3】実施形態の風車発電システムの制御系の構成を示す図である。
図4】実施形態の風車発電システムの発電機トルク特性(制御マップ)を示す図である。
図5】制御マップの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。図1は一つの実施の形態の風力発電システムの構成を示す図、図2図1の風車発電システムの気流発生装置の構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、この実施形態の風力発電システム10は、地面20に設置されたタワー30、タワー30の頂部に取り付けられたナセル35、ナセル35の上面に取り付けられた風向風速計36、前方からの風を受けて回転する風車として風車翼40などを備える。
【0014】
ナセル35には発電機150(図3参照)などが収容されている。発電機150にはナセル35から突出した回転軸が設けられており、この回転軸に風車翼40が支持されている。つまり風車翼40はナセル35から突出した発電機150の回転軸に支持されている。但し、この構成は風車が増速機を備えない場合の構成であり、風車が増速機を備える場合は、風車翼は増速機軸に支持される。
【0015】
風向風速計36は風の風向や速度を計測しそれぞれの計測データを制御部110(図3参照)へ伝達する。風車翼40は、回転自在に支持されている。風車翼40は、気流を受けて回転する。
【0016】
風車翼40は、主に、3本の風車翼本体50と、各風車翼本体50に配設された気流発生装置60とで構成されている。この例では風車翼40を3本の翼で構成した例について説明するが、翼の数は2本でも4本でも5本以上でもよく、その数は限定されるものではない。
【0017】
風車翼本体50は、風車翼本体50の外形形状をなす誘電材料で構成されている。この誘電材料として、例えば、グラスファイバを合成樹脂により固形化したGFRP(グラスファイバ強化樹脂)などが挙げられるが、これに限られるものではなく、公知な風車翼本体を構成する誘電材料であればよい。回転自在に支持され、気流を受けて回転する。
【0018】
なお、風車翼本体50全体が誘電材料で構成されている必要はなく、少なくとも気流発生装置60を配設する部分が誘電材料で構成されていればよい。すなわち、気流発生装置60の電極どうし、および気流発生装置60の電極と風車翼本体50との間が導通しないように構成されていればよい。
【0019】
気流発生装置60は、オペレータによるスイッチ111のオン・オフ操作により運転・停止可能に設けられており、運転時には風車翼本体50に気流を定常的または非定常に発生させて風車翼本体50(風車翼40)に対して揚力を増大する高揚力装置として機能する。
【0020】
なお気流発生装置60の運転・停止の切り替え操作については発電機150の回転数の計測値が所定の回転数になったら切り替えてもよく、またタイマー制御や風力センサによる検知など、人手によらず自動で切り替えてもよい。
【0021】
気流発生装置60は、第1の電極61と、この第1の電極61と離間して配設された第2の電極62と、ケーブル配線64を介して第1の電極61と第2の電極62との間に電圧を印加する放電用電源63とから構成される。
【0022】
第1の電極61は、板状の平板電極であり、風車翼本体50内に埋設されている。なお、第1の電極61は、その一主面が風車翼本体50の翼上面50a、すなわち風車翼本体50の背側に、表面に露出されて外気に接するように設けられている。なお、第1の電極61は、風車翼本体50の腹側の表面に露出するように設けてもよい。また、第1の電極61の形状は、板状に限らず、例えば、断面が円、矩形などの棒状などであってもよい。
【0023】
第2の電極62は、板状の平板電極であり、第1の電極61よりも風車翼本体50の表面から深い位置、第1の電極61よりも気流の流れる方向にずらした位置に、第1の電極61と離間して配設されている。
【0024】
なおこの場合、第1の電極61よりも気流の流れる方向とは逆方向にずらした位置に第2の電極62を配置してもよい。また、第1の電極61の一主面が風車翼本体50の翼上面50aと同一面に露出されるように設けられる場合には、第2の電極62は、その一主面が風車翼本体50の翼上面50aと同一面に露出され、かつ第1の電極61よりも気流の流れる方向またはその逆方向にずらした位置に、第1の電極61と離間して配置されてもよい。
【0025】
また、第2の電極62の形状は、板状に限らず、例えば、断面が円、矩形などの棒状などであってもよい。なお第2の電極62は、第1の電極61と同じ形状であってもよい。
【0026】
放電用電源63は、電圧印加機構として機能し、第1の電極61と第2の電極62との間に電圧を印加するものである。この放電用電源63は、例えば、パルス状(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))や交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する電圧を出力する。
【0027】
ここで、風車翼40は、例えば次のように製作される。例えば、風車翼本体50を、プリプレグやレジントランスファ等の製法により、ガラス繊維を積層したものに樹脂を含浸して作製する際、繊維の間に金属箔帯や金属板を積層して、気流発生装置60の第1の電極61および第2の電極62を形成し、風車翼40が製造される。なお、風車翼40の製造方法は、これに限られるものではない。
【0028】
ここで、気流発生装置60によって気流が発生する原理について説明する。
放電用電源63から第1の電極61と第2の電極62との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極61と第2の電極62との間に放電が誘起される。
【0029】
この放電は、両電極が風車翼本体50の翼上面50aに露出している場合にはコロナ放電、一方、少なくとも一方の電極が風車翼本体50に埋設されている場合にはバリア放電とよばれ、低温プラズマが生成される。つまり気流発生装置60は放電プラズマの作用により気流を発生させる。
【0030】
これらの放電においては、気体中の電子のみにエネルギーを与えることができるため、気体をほとんど加熱せずに気体を電離して電子およびイオンを生成することができる。生成された電子やイオンは、電界によって駆動され、それらが気体分子と衝突することで運動量が気体分子に移行する。
【0031】
すなわち、放電を印加することで電極付近に気流AFを発生することができる。この気流AFの大きさや向きは、電極に印加する電圧、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性を変化させることで制御可能である。
【0032】
なお、ここでは、風車翼本体50の翼上面50aの前縁から後縁に沿う方向に気流AFを発生させるように、気流発生装置60が配設されているが、電極の設置方法によって気流の向きを変えることもできる。
【0033】
続いて、図3を参照してこの実施形態の風力発電システムの制御系について説明する。この実施形態の風力発電システムの制御系は、図3に示すように、放電用電源63、風速センサ100と、風向センサ101と、回転数センサ102と、表面圧力センサ103と、トルクセンサ104と、制御部110と、スイッチ111と、制御データベース120と、気流発生装置60と、ピッチ角度駆動機構130と、ヨー角度駆動機構140と、発電機150とを備える。
【0034】
発電機150は、風車翼本体50の回転により発電し風車翼40の回転を抑える方向にトルクを発生する。
【0035】
風速センサ100は、風車翼40に流入する風の速度を計測するセンサである。風向センサ101は、風車翼40に流入する風の風向を計測するセンサである。これらの風速センサ100や風向センサ101は、例えば図1に示したナセル35の上側面に設けられた風向風速計36などで構成される。
【0036】
回転数センサ102は、風車翼40の回転数を計測するセンサであり、例えばナセル35内に設けられる。
【0037】
表面圧力センサ103は、風車翼40の風車翼本体50における翼上面50aの圧力を計測するもので、例えば、翼上面50aに複数の半導体圧力センサを設けることで構成される。なお、この表面圧力センサ103を備えずに、風力発電システム10を構成することもできる。
【0038】
トルクセンサ104は、発電機150に設けられており、回転軸(風車翼40)の回転を抑制するための負荷となるトルク(風車側の回転トルクと異なるため、以下では「発電機トルク」称す)を計測する。トルクセンサ104は、トルクを直接的に計測するものでなくても、発電出力を角速度で割って算出する方式でもよい。
【0039】
制御データベース120は、風速、風向、回転数、表面圧力、発電機トルクなどの計測値に基づく、迎角、レイノルズ数、トルク、ヨー角度、ピッチ角度、表面圧力などのデータと、特性の異なる複数の制御マップ(図4の曲線41,42)を記憶している。つまり、制御データベース120は、発電機150の回転数に対して発電機150に発生させるトルクの特性を示す複数の特性マップが記憶された記憶部である。
【0040】
制御データベース120は、メモリ、ハードディスク装置などで構成される。また、制御データベース120には、図示しない、キーボード、マウス、外部入力インターフェースなどを介して、データの入力などが可能である。
【0041】
制御部110は、風速センサ100、風向センサ101、回転数センサ102、表面圧力センサ103、トルクセンサ104などの各センサから出力された情報および制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、迎角、レイノルズ数、風車側の回転トルク、ヨー角度、ピッチ角度、表面圧力などを算出する。
【0042】
また制御部110は、上記算出結果に基づいて、気流発生装置60、ピッチ角度駆動機構130、ヨー角度駆動機構140、発電機150および放電用電源63を制御する。この制御部110は、例えば、演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)などから主に構成されている。
【0043】
CPUでは、ROMやRAMに格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理を実行する。この制御部110が実行する処理は、例えばコンピュータ装置などで実現される。
【0044】
制御部110は、スイッチ111、風速センサ100、風向センサ101、回転数センサ102、表面圧力センサ103、トルクセンサ104、制御データベース120、気流発生装置60、ピッチ角度駆動機構130、ヨー角度駆動機構140、発電機150および放電用電源63の各機器と電気信号の出入力が可能に接続されている。
【0045】
気流発生装置60は、スイッチ111のオン操作より、前述したように、制御部110により制御された放電用電源63から第1の電極61と第2の電極62との間に電圧を印加し、運転状態となり、翼上面50aの前縁から後縁に沿う方向に気流を発生させ、高揚力の状態となる。
【0046】
また気流発生装置60は、スイッチ111のオフ操作より、制御部110により制御された放電用電源63から第1の電極61と第2の電極62との間の電圧の印加が停止され、運転が停止した状態となり、翼上面50aの前縁から後縁に沿う方向に気流の発生がなくなる。
【0047】
制御部110は、気流発生装置60の運転・停止の状態に合わせて制御データベース120の複数の特性マップ(図4の曲線41,42)を切り替えて使用し発電機150の発電量を制御する。
【0048】
制御部110は、例えば、各気流発生装置60毎に、電極に印加する電圧、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性などを制御する。
【0049】
ピッチ角度駆動機構130は、制御部110からの情報に基づいて、風車翼40の回転数に応じて、風車翼40の風車翼本体50の角度を制御するものである。
【0050】
ヨー角度駆動機構140は、制御部110からの情報に基づいて、風車ロータを風向に合わせるために、ナセル35を旋回(回転)させるものである。
【0051】
以下、図4を参照してこの実施形態の動作を説明する。図4はこの実施形態の風車発電システムの回転数―トルク曲線を示す図である。
【0052】
通常、風力発電システムは、摩擦等を無視すれば、次の(式1)で決まる回転数と発電量で運転される。
I(dω/dt)=TW−TM ・・・(式1)
【0053】
ここで、Iは風車の慣性モーメント、ωは風車の角速度、TWは風車のトルク、TMは発電機のトルクである。風車トルクに関しては、風と翼の性能で決定され、その時の風況によって決まる量である。
【0054】
発電機トルクは、発電機の発電量と関係するので、発電量をコントロールすることにより発電機トルクを自由にコントロールすることができる。例えばまったく発電をしない、すなわち発電機の出力端を開放にしておけば、摩擦を無視すれば、理論上、発電機トルクは0となり、風が吹けば風車の回転数は際限なく増加していく。
【0055】
換言すると、出力インピーダンスを調整すれば、すなわちどれくらい発電するかを調整することで発電機トルクTMは制御可能である。
【0056】
気流発生装置60を備えていない一般的な風車発電システムは、予め回転数に応じて、図4に示すような曲線41でトルクを変化させる制御マップを有しており、発生トルク、すなわち発電機150の発電量を制御している。
【0057】
この回転数―トルクの制御マップは、風力エネルギーを最大限に取り出せるようにするため、通常、風車の周速比が「5」〜「7」、好ましくは「6」になるように設定されている。
しかし、気流発生装置60が働くと、風車トルクTWが、気流発生装置60が働いていないときに比べて大きくなるため、従来の回転数―発電機トルク特性、つまり制御マップをそのまま用いると、回転数が大きくなり、結果として風車の周速比が最適値からずれ、効率が悪化するという問題があった。
【0058】
そこで、この実施形態の風車発電システムでは、図4に示すように、制御データベース120に複数の制御マップとしての2つの曲線41、42を有する。曲線41は気流発生装置60を働かせないとき(停止時)の回転数とトルクとの関係を示す曲線(特性、関数)である。曲線42は気流発生装置60を働かせたとき(運転時)の回転数とトルクとの関係を示す曲線(特性、関数)である。符号a,bは発電機150の回転を制御すべき対象範囲を示す。
【0059】
符号a,bの範囲で発電機150の回転数を低回転領域(以下「低回転域」と称す)、中回転領域(以下「中回転域」と称す)、高回転領域(以下「高回転域」と称す)に分けた場合、例えば気流発生装置60が運転する状態では、制御部110は、気流発生装置60が停止した状態よりも中回転域のトルクを増加させる特性の特性マップ(曲線42)を使用する。
【0060】
停止時の曲線41では、一定回転数以下ではトルクを発生しないようにし、定格回転数以上では、それ以上回転数が増加し破損するのを防ぐために、トルクを極端に大きくするようになっている。中回転域では、トルクと回転数がほぼ一次関数のような形状(直線的な形状)で前2者とつながっている。
【0061】
これに対して、気流発生装置60を働かせた場合(運転時)の曲線42では、一定回転数以下、定格回転数以上では曲線41と同じであるものの、中回転域では、低回転域側でのトルクを大きくし、回転数が変化してもほぼ一定の(同じ)トルクをかけて徐々に曲線41に漸近するような曲線としている。
【0062】
特に低回転域で発電機トルクを大きくする理由は、低回転側ほど気流発生装置60によって風車トルクの増大率が大きいため、曲線41では気流発生装置60がない場合よりも回転数が早くなる。
【0063】
これは周速比が設計値より大きくなることに対応するので、風車の発電効率が悪くなることになる。風車翼40の回転数が高回転になると、高揚力装置による風車翼40のトルク増大率は小さくなり、もとの気流発生装置60がない場合の特性と変わらなくなってくるので、曲線42を曲線41に漸近させている。
【0064】
また気流発生装置60はいくらかのエネルギーを消費し、また、故障する場合もあり得るので、風況等によっては装置を働かさずに運転する場合も考えられる。
【0065】
このため、制御情報として2つの制御マップ41,42を制御データベース120に設定(記憶しておくものと)する。制御部110は気流発生装置60の運転(動作スイッチがオン操作されたこと)または停止(動作スイッチがオフ操作されたこと)に連動して、制御データベース120の制御マップ41,42を切り替えて利用し、発電機150の発電量を制御する。
【0066】
このようにこの実施の形態によれば、気流発生装置60などの高揚力装置の運転または停止に連動して、利用する制御マップ41,42(制御条件、制御情報、制御関数、制御曲線などともいう)を切り替えることで、気流発生装置60を働かせる必要のないような風況の良い場合と、気流発生装置60を働かせる必要のある風況の悪い場合との両者について周速比を「6」付近に保つ運転ができるようになり、風車発電システム10の発電効率を向上し、さらには発電効率を最大化することができ、この結果、発電量を増大させることができる。
【0067】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0068】
上記実施形態では、高揚力装置として、放電プラズマの作用により気流を発生させる気流発生装置60を設けた例について説明したが、この他、例えばMEMS素子を用いたシンセティックジェットを用いてもよく、またフラップなどを用いてもよい。MEMS素子を用いたシンセティックジェットとは、翼に孔を設け、孔の中に設置したMEMS素子を駆動することで、孔から空気を噴出、吸入することのできるものである。
【0069】
また上記実施形態では、中回転域において回転数が変化してもほぼ一定の(同じ)トルクをかけて徐々に曲線41に漸近するような曲線42としたが、この他、図5に示すように、停止時の曲線41をそのまま上へ平行に移動した曲線を運転時の曲線43(発電機トルクを停止時の曲線41よりも全体的に高めた特性マップ)としてもよい。
【0070】
上記実施形態では、制御データベース120に異なる2つの特性の制御マップ41、42を記憶しておき、制御部110が運転状況に応じて2つの制御マップ41、42を切り替えるようにしたが、制御データベース120を用いずに、例えば発電機150の出力Pを発電機150の回転数ωで除したP/ωと、発電機150の回転数ωとの、所定の期間にわたって平均化された相関関係が、気流発生装置60を停止した場合と気流発生装置60を駆動させた場合で異なるように制御してもよい。
【0071】
つまり、気流発生装置60を停止した場合と気流発生装置60を駆動させた場合で、発電機150の回転数と発電機150に発生させるトルクとの関係を示す制御特性が異なるように発電機150の発電量を制御部110が制御してもよい。
【0072】
また上記実施形態に示した制御系の各構成要素の一部を、コンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。
【0073】
電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…風力発電システム、20…地面、30…タワー、35…ナセル、36…風向風速計、40…風車翼、50…風車翼本体、50a…翼上面、60…気流発生装置、61…第1の電極、62…第2の電極、63…放電用電源、64…ケーブル配線、100…風速センサ、101…風向センサ、102…回転数センサ、103…表面圧力センサ、104…トルクセンサ、110…制御部、111…スイッチ、120…制御データベース、150…発電機、AF…気流。
図1
図2
図3
図4
図5