特許第6444771号(P6444771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444771
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05D 13/00 20060101AFI20181217BHJP
   E06B 9/52 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   E05D13/00 A
   E06B9/52 A
   E06B9/52 B
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-39108(P2015-39108)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160621(P2016-160621A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】高山 幸久
(72)【発明者】
【氏名】河原 怜美
【審査官】 小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−095497(JP,U)
【文献】 実開平04−135698(JP,U)
【文献】 特開2009−228364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 13/00、15/00
E06B 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠にケンドン式で取り付けられる障子を備えた建具であって、
前記障子において縦枠の見付け面に対向する部位に下框の長手方向に沿って移動可能に配設したストッパ部材と、
前記ストッパ部材が前記障子から常時突出するように付勢する付勢部材と
を備え、前記ストッパ部材の先端部には、前記開口枠の外部から前記障子の下框を下枠の見込み面に対向させる過程で前記縦枠の縁部に当接し、かつ見込み方向に沿った外力が加えられた場合に前記付勢部材の付勢力に抗して前記ストッパ部材を退行させる装着用ガイド面を形成し、
一方、前記縦枠の見込み面には、前記ストッパ部材が退行可能な設置面を設けるとともに、前記設置面の下方において前記ストッパ部材の上面に対向し、前記開口枠に対する前記障子の上方への移動を阻止するストッパ面を設けたことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記縦枠の見込み面に切欠を有した係合板部材を配設し、前記切欠の上縁に位置する端面を前記ストッパ面として構成したことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記障子は、コーナー部品を介して前記下框と縦框とが接合されたものであり、
前記コーナー部品に前記ストッパ部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記コーナー部品の見付け面に前記下框の長手方向に沿って操作部材を移動可能に配設するとともに、前記操作部材と前記ストッパ部材とを互いに接続したことを特徴とする請求項3に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口枠に対してケンドン式で障子を装着するようにした建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
障子を開口枠に装着する方法としては、いわゆるケンドン式によるものが多く採用されている。このケンドン式の装着方法では、障子を斜めにした状態で先に上枠と上框との間を係合させるように障子を上方にスライドさせ、その後、障子を垂直の状態にした状態で下方に移動させることで上框と上枠との係合状態を維持した状態で下框と下枠との間を係合させることにより、開口枠に対する障子の見込み方向の移動を阻止するようにしたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のケンドン式による障子の装着方法では、開口枠に対して障子が上方に移動した場合、下框と下枠との係合状態が解除されるため、そのまま下框が見込み方向に移動すると開口枠から障子が脱落するおそれがある。このため従来では、障子にストッパ部材を出没可能となるように設けたものが提供されている。この建具によれば、開口枠に対して障子を装着した後にストッパ部材を突出させ、ストッパ部材を開口枠に係合させることによって障子の脱落を防止することができるようになる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−285603号公報
【特許文献2】特開2009−228364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したストッパ部材は、開口枠に障子を装着する際には障子から突出しない位置に維持する必要がある。このため、特許文献2では、ストッパ部材が突出しない状態に維持するための操作部材を設け、開口枠に障子を装着した後に操作部材を操作することでストッパ部材を突出させるようにしている。
【0006】
しかしながら、上記のような建具にあっても、操作部材の操作を忘れた場合、ストッパ部材が機能することはなく、障子の脱落を防止することができない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、開口枠に障子を装着した際に、障子の脱落を確実に防止することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、開口枠にケンドン式で取り付けられる障子を備えた建具であって、前記障子において縦枠の見付け面に対向する部位に下框の長手方向に沿って移動可能に配設したストッパ部材と、前記ストッパ部材が前記障子から常時突出するように付勢する付勢部材とを備え、前記ストッパ部材の先端部には、前記開口枠の外部から前記障子の下框を下枠の見込み面に対向させる過程で前記縦枠の縁部に当接し、かつ見込み方向に沿った外力が加えられた場合に前記付勢部材の付勢力に抗して前記ストッパ部材を退行させる装着用ガイド面を形成し、一方、前記縦枠の見込み面には、前記ストッパ部材が退行可能な設置面を設けるとともに、前記設置面の下方において前記ストッパ部材の上面に対向し、前記開口枠に対する前記障子の上方への移動を阻止するストッパ面を設けたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、障子の下框を下枠の見込み面に対向させる際にストッパ部材の装着用ガイド面が設置面に当接し、ストッパ部材が退行した位置に移動するため、そのまま障子を開口枠に装着することが可能となる。しかも、開口枠に障子を装着した状態においては、ストッパ部材の上面が縦枠に設けたストッパ面に対向した状態となるため、開口枠に対する障子の上方への移動を阻止することができ、障子が脱落する事態を防止することができる。
【0010】
また本発明は、上述した建具において、前記縦枠の見込み面に切欠を有した係合板部材を配設し、前記切欠の上縁に位置する端面を前記ストッパ面として構成したことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、係合板部材に設けた切欠をストッパ面として適用するため、縦枠に加工を施す必要がない。
【0012】
また本発明は、上述した建具において、前記障子は、コーナー部品を介して前記下框と縦框とが接合されたものであり、前記コーナー部品に前記ストッパ部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、障子の下框と縦框とを接合するためのコーナー部品にストッパ部材を設けるようにしているため、下框や縦框に加工を施す必要がない。また、サイズの異なる障子の間でコーナー部品を共用することが可能であるため、部品の共用化から製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
また本発明は、上述した建具において、前記コーナー部品の見付け面に前記下框の長手方向に沿って操作部材を移動可能に配設するとともに、前記操作部材と前記ストッパ部材とを互いに接続したことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、操作部材を操作することにより、ストッパ部材を退行した位置に移動することができるため、障子を取り外す作業を容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、障子の下框を下枠の見込み面に対向させる際にストッパ部材の装着用ガイド面が設置面に当接し、ストッパ部材が退行した位置に移動するため、そのまま障子を開口枠に装着することが可能となる。しかも、開口枠に障子を装着した状態においては、ストッパ部材の上面が縦枠に設けたストッパ面に対向した状態となるため、開口枠に対する障子の上方への移動を阻止することができ、障子が脱落する事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態である建具を室内側から見た図である。
図2図2は、図1に示した建具からガラス窓を取り外した状態を室外側から見た図である。
図3図3は、図1に示した建具の縦断面図である。
図4図4は、図1に示した建具の横断面図である。
図5図5は、図1に示した建具からガラス窓及び障子を取り外した状態を室内側から見た図である。
図6図6は、図1に示した建具に適用する縦枠部品を示したもので、(a)は係合板部を表面側から見た斜視図、(b)は係合板部を裏面側から見た斜視図である。
図7-1】図7−1は、図1に示した建具の開口枠のみを室外側から見た要部斜視図である。
図7-2】図7−2は、図7−1に示した開口枠の縦枠に縦枠部品を係止させた状態を室外側から見た要部斜視図である。
図7-3】図7−3は、図7−2に示した開口枠の下枠に取付部材を取り付けた状態を室外側から見た要部斜視図である。
図7-4】図7−4は、図7−3に示した開口枠に障子を装着した状態を室外側から見た要部斜視図である。
図7-5】図7−5は、図1に示した開口枠のみを室内側から見た要部斜視図である。
図7-6】図7−6は、図7−5に示した開口枠に障子を装着した状態を室内側から見た要部斜視図である。
図8-1】図8−1は、図1に示した建具に適用する障子を室内側から見た図である。
図8-2】図8−2は、図8−1に示した障子を室外側から見た図である。
図9-1】図9−1は、図8−1に示した障子に適用する上方コーナー部品を室外側から見た図である。
図9-2】図9−2は、図9−1に示した上方コーナー部品を室内側から見た図である。
図9-3】図9−3は、図9−2におけるA−A線断面図である。
図9-4】図9−4は、図9−2におけるB−B線断面図である。
図9-5】図9−5は、図9−1に示した上方コーナー部品を室外側から見た断面図である。
図10-1】図10−1は、図8−1に示した障子に適用する下方コーナー部品の斜視図である。
図10-2】図10−2は、図10−1に示した下方コーナー部品を室内側から見た図である。
図10-3】図10−3は、図10−1に示した下方コーナー部品を室外側から見た図である。
図10-4】図10−4は、図10−2におけるC−C線断面図である。
図10-5】図10−5は、下方コーナー部品のストッパ部材が退行した状態の断面図である。
図11-1】図11−1は、図1に示した建具の上枠と縦枠との入隅部分を室外側から見た要部斜視図である。
図11-2】図11−2は、図1に示した建具の上枠と縦枠との入隅部分を室外側から見た図である。
図12-1】図12−1は、図1に示した建具に適用する挿入突片部の斜視図である。
図12-2】図12−2は、図12−1に示した挿入突片部を室内側から見た図である。
図12-3】図12−3は、図12−1に示した挿入突片部を下方から見た図である。
図12-4】図12−4は、図12−2におけるD−D線断面図である。
図13図13は、図1に示した建具の要部を示したもので、(a)は開口枠と、開口枠に装着された障子との係合部分を示す要部縦断面図、(b)は開口枠に対して障子を装着する過程の状態を示す要部断面図である。
図14-1】図14−1は、図1に示した建具の開口枠に障子を装着する直前の状態を示す要部拡大横断面図である。
図14-2】図14−2は、図14−1に示す状態から開口枠に障子を装着した状態を示す要部拡大横断面図である。
図14-3】図14−3は、図14−2に示す状態からストッパ部材を退行させた状態の要部拡大横断面図である。
図15-1】図15−1は、図1に示した建具の下枠に取り付けた取付部材と縦枠との隙間に縦枠部品を配設した状態の要部拡大横断面図である。
図15-2】図15−2は、図1に示した建具の下枠に取り付けた取付部材と縦枠との隙間の縦枠部品を省略した状態の要部拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1図4は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、図3及び図4に示すように、枠体10及びガラス窓20を備え、枠体10に設けたオペレータハンドル30の操作により、枠体10に対してガラス窓20が開閉可能となるように構成したものである。枠体10は、上枠11、下枠12、左右の縦枠13を四周枠組みすることによって構成したものである。ガラス窓20は、矩形状を成すガラス板21の四周に上窓框22、下窓框23、左右の縦窓框24を装着することによって構成したものである。
【0020】
枠体10を構成する枠11,12,13は、それぞれ樹脂によって成形した押し出し形材であり、互いに同じ断面形状を有するように構成してある。それぞれの枠11,12,13は、図1及び図2に示すように、両端面が45°の傾斜面となるように形成してあり、これらの傾斜面を互いに接合することによって枠体10を構成している。枠11,12,13の端面間は、例えば熱溶着することによって互いに接合してある。図3及び図4からも明らかなように、本実施の形態で適用する枠11,12,13には、見込み面において室内側に位置する縁部に突条部11a,12a,13aが設けてある。突条部11a,12a,13aは、見込み方向に沿った幅寸法及び見込み面からの突出量が小さい突出部であり、それぞれの枠11,12,13の長手方向に沿った全長にわたる部位から突出している。
【0021】
ガラス窓20を構成する窓框22,23,24は、図には明示していないが、枠体10の枠11,12,13と同様、それぞれ樹脂によって成形した押し出し形材であり、互いに同じ断面形状を有し、45°の傾斜する端面を互いに熱溶着することによって相互に接合してある。
【0022】
枠体10とガラス窓20との間には、図3に示すように、上枠11と上窓框22との間及び下枠12と下窓框23との間に、それぞれ縦すべり窓を構成するための支持リンク機構25が設けてある。すなわち、支持リンク機構25は、図4において左側に位置する縦窓框(以下、「戸尻窓框24」という)の長手方向を中心として、右側に位置する縦窓框(以下、「戸先窓框24」という)が回転可能、かつ戸尻窓框24が上枠11及び下枠12に沿って左右にスライド可能となるように枠体10に対してガラス窓20を支持するものである。
【0023】
この支持リンク機構25によれば、図4において戸先窓框24を枠体10の左方に位置する縦枠13に重ね合わせて配置した場合、窓框22,23,24の四周をそれぞれ枠体10に当接させることにより、枠体10を閉じることができる。この状態から戸尻窓框24を中心として戸先窓框24が室外側に突出するようにガラス窓20を回転させるとともに、戸尻窓框24を右方にスライドさせれば、図4中の二点鎖線で示すように、ガラス窓20が見込み方向に沿って室外側に突出した状態となり、枠体10を開放することが可能となる。枠体10が開放した状態から戸先窓框24が室内側に向けて移動するようにガラス窓20を回転させるとともに、戸尻窓框24を左方にスライドさせれば、再び枠体10を閉じた状態に復帰させることができる。
【0024】
オペレータハンドル30は、回転操作した場合にガラス窓20の下窓框23との間に設けた開閉機構31を動作させ、ガラス窓20の戸先窓框24と枠体10との間隔を拡縮させるものである。本実施の形態のオペレータハンドル30は、下枠12に設けた取付部材40の室内側に臨む見付け面から突出する状態で取付部材40に取り付けてある。取付部材40は、図5に示すように、左右の縦枠13の下端部間に下枠12の長手方向に沿って延在するものであり、左右の縦枠13の互いに対向する見込み面の相互間隔よりも短い長さに構成してある。取付部材40の長手方向に沿った寸法を縦枠13の見込み面の相互間隔よりも短く構成しているのは、取付部材40に取り付けられたオペレータハンドル30を左右方向に沿って移動することにより、ガラス窓20の下窓框23との間に設けた開閉機構31との位置合わせや調整を容易に行うためである。また、取付部材40の長手方向に沿った寸法を縦枠13の見込み面の相互間隔よりも短く構成しておけば、樹脂によって成形した枠体10や後述するカバープレート43が熱延びした場合にも相互の干渉を未然に防止することが可能となる。図3に示すように、本実施の形態では、基準プレート41、補強プレート42及びカバープレート43を備えて取付部材40が構成してある。
【0025】
基準プレート41は、基準ベース部41a、基準取付壁部41b、基準カバー壁部41cを有したもので、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって一体に成形してある。基準ベース部41aは、下枠12の上面に対向して配置される板状部分であり、下枠12の上面に対向する部位に2条の支持リブ41dを有している。支持リブ41dは、室内側に位置するものの突出量が室外側に位置するものよりも大きく設定してある。これらの支持リブ41dを介して下枠12の上面に基準ベース部41aを配置した場合には、下枠12の上面との間隔が室内側に向けて漸次増大するように基準ベース部41aが傾斜することになる。基準取付壁部41bは、基準ベース部41aを下枠12の上面に配置した場合に基準ベース部41aの室内側に位置する縁部から鉛直上方に向けて延在した板状部分である。基準カバー壁部41cは、基準取付壁部41bの上端部から室外側に向けて略水平に屈曲して延在する板状部分である。
【0026】
補強プレート42は、基準プレート41を補強するためのもので、基準プレート41よりも板厚の大きな鋼材等、基準プレート41よりも剛性の大きな材質によって成形してある。補強プレート42には、基準ベース部41aの上面に重ね合わされる下方補強部42aと、基準取付壁部41bの室外側に臨む見付け面に重ね合わされる上方補強部42bとが一体に設けてある。
【0027】
カバープレート43は、基準プレート41の外表面を覆うためのもので、樹脂によって成形してある。カバープレート43には、側方カバー部43a、上方カバー部43b及び下方係合ヒレ部43cが一体に設けてある。側方カバー部43aは、基準取付壁部41bの室内側に臨む見付け面を覆うものであり、上方カバー部43bは、基準カバー壁部41cの上面を覆うものである。下方係合ヒレ部43cは、上方カバー部43bの見込み面において室内側に位置する縁部から上方に突出したもので、カバープレート43の長手方向に沿った全長にわたる部位から見付け方向に沿って上方に突出している。
【0028】
上述の構成を有する取付部材40は、カバープレート43において側方カバー部43aの外表面が下枠12の突条部12aよりも室外側に位置した状態で、基準プレート41の基準ベース部41aを介して下枠12の上面に配置し、補強プレート42の下方補強部42a及び基準プレート41の基準ベース部41aを介して下枠12にネジ(図示せず)を螺合することにより、下枠12に固定される。下枠12に螺合したネジ(図示せず)は、先端部が下枠12の中空内部に設けた鋼製の下枠補強材12Aに達しており、取付部材40の補強プレート42と下枠補強材12Aとが連結した状態となる。また、オペレータハンドル30は、ハンドルベース32を介してカバープレート43の側方カバー部43a、基準プレート41の基準取付壁部41b及び補強プレート42の上方補強部42bにネジを螺合することにより、取付部材40を介して下枠12の下枠補強材12Aに連結されることになる。
【0029】
上述したように、オペレータハンドル30の取付対象となる取付部材40は、室内側に臨む見付け面が下枠12の突条部12aよりも室外側となる状態で下枠12に取り付けたものである。従って、下枠12を大型化することなくオペレータハンドル30を取り付けることが可能となり、樹脂によって枠体10を構成する場合にも、建具の意匠性を何ら損なうことがない。ガラス窓20を開閉する際には、オペレータハンドル30を操作すれば良いため、その開閉操作を容易に行うことが可能となる。
【0030】
一方、枠体10の左右の縦枠13には、取付部材40の両端に対応する部位にそれぞれ縦枠部品50が設けてある。縦枠部品50は、図6の(a)及び図6の(b)に示すように、矩形の平板状を成す係合板部(係合板部材)51と、係合板部51の縁部において表面から屈曲して延在する挟持片部52及び支持カバー部53と、係合板部51の裏面に設けたフック部54とを有したもので、樹脂によって一体に成形してある。図7−3に示すように、係合板部51は、下端面を下枠12の見込み面に当接した場合に取付部材40よりも上方に突出する長さを有するように構成してある。係合板部51の板厚は、縦枠13の見込み面から突出する突条部13aの突出高さとほぼ同一である。挟持片部52は、図6の(a)及び図7−2に示すように、係合板部51の表面において下縁となる部位から屈曲して延在した部分であり、下縁のほぼ中央となる部位に設けてある。支持カバー部53は、係合板部51の一側縁となる部位から挟持片部52と同じ方向に向けて略直角に屈曲して延在した薄板状部分であり、取付部材40と縦枠13との隙間よりも大きな幅寸法を有するように構成してある。この支持カバー部53は、図5図7−2、図7−3、図7−5に示すように、係合板部51の下端面を下枠12の見込み面に当接した場合に、係合板部51の下端から取付部材40の上面を越えて上方に突出する位置までの間にわたって設けてある。フック部54は、係合板部51の裏面においてほぼ中央となる部位から水平方向に沿って略直角に突出した平板状部分である。このフック部54は、係合板部51との連結部となるフック基部54aが狭幅で、突出端部54bが幅広となるように構成してある。
【0031】
上記の縦枠部品50は、下枠12に取付部材40を取り付ける以前に予め以下のような手順で縦枠13に取り付けておく。すなわち、まず、縦枠13の見込み面に形成したフック孔13Aにフック部54を挿通させた状態で係合板部51の裏面を縦枠13の見込み面に当接させ、かつ係合板部51の下端面を下枠12の見込み面に当接させる。縦枠13のフック孔13Aは、図7−1に示すように、上半部13Aaがフック部54の突出端部54bを挿通可能とする幅を有するとともに、下半部13Abがフック部54のフック基部54aを挿通可能、かつ突出端部54bを挿通不可とする幅を有するように形成してある。従って、フック孔13Aの上半部13Aaにフック部54の突出端部54bを挿通させた後、フック基部54aがフック孔13Aの下半部13Abに位置するように縦枠部品50を下方に移動させれば、フック部54の突出端部54bが縦枠13の裏面に係止され、縦枠13の見込み面から離隔する移動及び見込み面に沿った左右方向への移動が規制されることになる。
【0032】
左右の縦枠13に縦枠部品50を係止させた後においては、下枠12の上面に取付部材40を取り付ければ、係合板部51から突出する挟持片部52が下枠12の上面と基準プレート41の基準ベース部41aとの間に挟持されるため、縦枠13に対する縦枠部品50の上方への移動が阻止される。従って、ネジ等の部品を要することなく縦枠部品50を縦枠13に取り付けることが可能となる。
【0033】
縦枠13に縦枠部品50を係止させた状態で下枠12に取付部材40を取り付ける場合には、室内側となる面を下方に向けて枠体10を平置きすることにより、取付部材40の取付作業を容易化することができる。すなわち、縦枠部品50を縦枠13に係止させた状態においては、縦枠部品50の支持カバー部53がそれぞれ内方に突出した状態となる。上述したように、縦枠13に係止させた状態においても縦枠部品50は、縦枠13の見込み面から離隔する移動及び見込み面に沿った左右方向への移動が規制されている。従って、左右の縦枠13の互いに対向する見込み面の相互間隔よりも短い長さを有するように構成した取付部材40にあっても、その両端部を支持カバー部53に載置させることで取付部材40から両手を放すことができ、ネジの螺合作業を容易化することが可能となる。さらに、下枠12に取付部材40を取り付けた後においては、縦枠部品50の支持カバー部53が取付部材40の室内側に臨む見付け面を覆った状態となる。従って、縦枠13と取付部材40との間の隙間から外部の光が漏れて室内に進入するおそれもない。
【0034】
図3図5に示すように、取付部材40を取り付けた建具には、取付部材40、上枠11及び左右の縦枠13によってガラス窓20よりも室内側となる部位に室内側開口枠10Aが構成されることになる。この室内側開口枠10Aには、図8−1及び図8−2に示すような固定網戸(障子)60が装着してある。固定網戸60は、四周框組みした上固定框61、下固定框(下框)62及び左右の縦固定框(縦框)63の内部にシート状の網64を張ることによって構成したものである。
【0035】
固定網戸60を構成するそれぞれの固定框61,62,63は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材である。上固定框61及び左右の縦固定框63は、同じ断面形状を有するように構成してある。具体的には、図3及び図4に示すように、中空の角筒状を成す框基部61a,63aと、框基部61a,63aの室内側に臨む見付け面から固定框61,63の外周側に向けて延在するカバーヒレ部61b,63bとを有して上固定框61及び左右の縦固定框63が構成してある。これに対して下固定框62は、外周側となる部位の見込み寸法が内周側となる部位よりも小さい異形の中空状を成すものである。下固定框62において外周側の見込み面には、取付部材40の下方係合ヒレ部43cを収容することのできる幅の係合溝62aが長手方向に沿って形成してある。下固定框62の内周側となる中空部62bは、縦固定框63の框基部63aとほぼ同じ断面を有するように構成したものである。固定網戸60を構成するそれぞれの固定框61,62,63には、室外側に臨む見付け面にビート装着溝61c,62c,63cが形成してある。ビート装着溝61c,62c,63cは、ゴム等の弾性を有したビート65と共に網64の周縁部を圧入するためのものである。
【0036】
図8−1及び図8−2に示すように、固定框61,62,63は、それぞれの端面が長手方向に対して直交するように形成してあり、互いの間がコーナー部品70を介して相互に接合してある。コーナー部品70は、図9−1〜図9−5及び図10−1〜図10−5に示すように、正方形状を成すベースプレート71と、ベースプレート71の隣設する2辺からそれぞれ直角方向に延在した圧入部72とを有したもので、樹脂によって一体に成形してある。
【0037】
ベースプレート71において室外側に臨む見付け面には、固定框61,62,63のビート装着溝61c,62c,63cに対応する部位にコーナー装着溝73が形成してある。コーナー装着溝73は、直線状に延在する中継溝部73aと、中継溝部73aの両端からそれぞれ屈曲して延在した2つの連続溝部73bとを有したものである。2つの連続溝部73bは、コーナー部品70によって固定框61,62,63を接合した場合に、それぞれの固定框61,62,63のビート装着溝61c,62c,63cに連続するように設けたもので、互いの延長線が略90°で交差するように延在している。連続溝部73bと中継溝部73aとの屈曲角度は、それぞれ入隅側が135°となるように設定してある。
【0038】
上記のようなコーナー装着溝73によって固定框61,62,63のビート装着溝61c,62c,63cを連続させるようにした固定網戸60によれば、固定框61,62,63に網64を張る際の作業を容易化することができる。すなわち、固定網戸60においては、固定框61,62,63よりも外形寸法の大きな網64を用意し、網64の四周をビート65と共にビート装着溝61c,62c,63c及びコーナー装着溝73に圧入することによって固定框61,62,63に網64が張られることになる。ビート装着溝61c,62c,63c及びコーナー装着溝73よりも外周側にはみ出た余分な網64は、ビート装着溝61c,62c,63c及びコーナー装着溝73に沿ってカッター等の切断工具を走行させることによって切除するようにしている。ここで、コーナー部品70のコーナー装着溝73が90°以下の角度で屈曲する場合には、コーナー装着溝73に沿って切断工具を正確に走行させることができず、網64を切断することも困難となる。しかしながら、上記のようにコーナー装着溝73が鈍角(135°)で屈曲するように構成した場合には、コーナー装着溝73に沿って正確に切断工具を走行させることも容易となり、はみ出た網64を確実に切断することが可能になる。
【0039】
コーナー部品70の圧入部72は、それぞれウェブ72aの両端にフランジ72bを有したH型を成すもので、固定框61,62,63の中空部に隙間を持って挿入することのできる外形寸法に形成してある。フランジ72bの延在端部には、それぞれ固定框61,62,63の中空部へ挿入する際のガイドとなる面取り部が設けてある。
【0040】
圧入部72のフランジ72bには、互いに対となる位置決め用突起74及び圧着用突起75が設けてある。位置決め用突起74及び圧着用突起75は、それぞれ圧入部72の延在方向に沿って形成した突出部であり、フランジ72bの互いに表裏となる面に対応して形成してある。位置決め用突起74は、固定框61,62,63の中空部に挿入した場合に固定框61,62,63の内面に対向する部分が平坦で固定框61,62,63の内面に平行な平面(以下、「位置決め面」という)となるように構成してある。それぞれの位置決め用突起74は、圧入部72の延在端部から圧入部72の過半部分を越えた位置まで連続して設けてある。これに対して圧着用突起75は、固定框61,62,63の中空部に挿入した場合に固定框61,62,63の内面に対向する部分が半円柱の外周面(以下、「圧着部」という)となるように構成してある。それぞれの圧着用突起75は、圧入部72を固定框61,62,63の中空部に挿入した際に位置決め用突起74よりも後の段階で固定框61,62,63の内面に当接するように、圧入部72の中間部分に2つずつ設けてある。位置決め用突起74の位置決め面から対となる圧着用突起75の圧着部までの距離は、固定框61,62,63の中空部において互いに対向する内面の相互間距離よりもわずかに大きくなるように設定してある。位置決め用突起74及び圧着用突起75のそれぞれに対しても延在端部側となる部位には、固定框61,62,63の中空部への挿入ガイドとなる面取り部が設けてある。
【0041】
上記のように構成したコーナー部品70を固定框61,62,63の中空部に挿入した場合には、挿入当初から平坦な位置決め面を有した位置決め用突起74のみが固定框61,62,63の内面に当接することになる。従って、コーナー部品70の圧入部72は、位置決め面によって位置決めされた状態で固定框61,62,63の中空部に順次挿入されることになる。
【0042】
固定框61,62,63の中空部に対する圧入部72の挿入が進行すると、やがて固定框61,62,63の内面に圧着用突起75が到達する。上述したように、位置決め用突起74の位置決め面から対となる圧着用突起75の圧着部までの距離は、固定框61,62,63の中空部における内面の相互間距離よりもわずかに大きくなるように設定してある。このため、圧着用突起75が固定框61,62,63の内面に到達した以降については、いずれかの突起74,75が変形しながら圧入部72が固定框61,62,63の中空部に挿入されることになる。
【0043】
ここで、本実施の形態においては、位置決め用突起74の位置決め面が平坦に構成してあるのに対し、圧着用突起75の圧着部が円柱の外周面となるように構成してある。従って、位置決め面に作用する圧力に比べて圧着部に作用する圧力が大となり、専ら圧着部が変形することで圧入部72の挿入が進行するようになる。すなわち、圧入部72が固定框61,62,63の内面に到達した以降においても、挿入当初と同様、位置決め用突起74の位置決め面が継続してガイドとして機能し、圧入部72が固定框61,62,63の中空部に挿入されることになる。これにより、固定框61,62,63とコーナー部品70とを正確に位置決めした状態で、換言すれば、四周の固定框61,62,63を正確に位置決めした状態で相互に接合することが可能となる。図8−1及び図8−2に示すように、本実施の形態では、上固定框61及び縦固定框63の間に設けるコーナー部品70と、下固定框62及び縦固定框63の間に設けるコーナー部品70とが個別に用意してある。以下においては便宜上、上固定框61及び縦固定框63の間に設けるものを上方コーナー部品70Uと称し、下固定框62及び縦固定框63の間に設けるものを下方コーナー部品70Lと称して説明を行う。
【0044】
上方コーナー部品70Uは、後述する枠体10の挿入突片部80との協働により、室内側開口枠10Aに固定網戸60を装着した場合に、固定網戸60のガタ付きを防止するためのものである。図9−1〜図11−2に示すように、上方コーナー部品70Uは、ベースプレート71の室外側に臨む面に押圧突片部76及び位置決めガイド部材77を有している。
【0045】
押圧突片部76は、ベースプレート71において2つの圧入部72の入隅となる部分に設けた板状部分であり、両側縁及び下縁をそれぞれ連結壁部78によってベースプレート71に連結することにより、ベースプレート71と平行となるように構成してある。この押圧突片部76には、押圧部76a及び一対の支持部76bが設けてある。押圧部76a及び一対の支持部76bは、押圧突片部76の上端から下方に向けて一対のスリット76cを平行に形成することによって構成したものである。すなわち、押圧部76aは、スリット76cの間に構成された狭幅部分であり、支持部76bは、押圧部76aの両側に位置する幅広部分である。図9−3に示すように、支持部76bについては、比較的大きな剛性を有するように連結壁部78と同等に厚肉に構成してある一方、押圧部76aについては、弾性的に変形することが容易となるように薄板状に構成してある。押圧突片部76においてベースプレート71に対向する内表面は、押圧部76aと支持部76bとで同一の平面上に位置するように構成してある。これに対して押圧突片部76の外部に露出する外表面については、支持部76bに対して押圧部76aが凹状となるように形成してある。
【0046】
位置決めガイド部材77は、押圧突片部76とベースプレート71との間を連結する連結壁部78の出隅側面から水平方向に沿って突出した部分であり、突出端部に位置決めガイド面77aを有している。位置決めガイド面77aは、押圧突片部76からベースプレート71に向かうに従って漸次連結壁部78から離隔するように傾斜した平面である。この位置決めガイド部材77は、上方コーナー部品70Uを上固定框61の両端部に設けた場合に突出端面間の距離が縦枠13の見込み面の相互間距離よりもわずかに小さくなるように構成してある。
【0047】
図5図11−1、図11−2に示すように、上枠11の見込み面において固定網戸60の上方コーナー部品70Uに対応する部位には、挿入突片部80が設けてある。挿入突片部80は、上方コーナー部品70Uのベースプレート71と押圧突片部76との間に挿入可能となる外形寸法を有したもので、上枠11の見込み面から下方に向けて突出した状態で取付基板81を介して上枠11に取り付けてある。この挿入突片部80には、押圧突片部76の押圧部76aに対向する部位に当接リブ82が設けてある。当接リブ82は、図12−1〜図12−4に示すように、挿入突片部80において押圧突片部76に対向する支持面80aから室外側に向けて突出したもので、挿入突片部80の上端から下端にわたる全長に設けてある。挿入突片部80の突出端部及び当接リブ82の下端部には、それぞれ挿入ガイドとなる面取り部が設けてある。尚、実施の形態の挿入突片部80には、ベースプレート71に対向する面にも当接リブ82が設けてある。このベースプレート71に対向する面の当接リブ82は、左右で部品を共用化するために設けたものであり、左右を個別部品として構成する場合には必要でない。
【0048】
図13の(a)に示すように、挿入突片部80は、室内側開口枠10Aに固定網戸60を装着した場合に、ベースプレート71の室外側に臨む見付け面が上枠11の室内側に臨む見付け面に当接した状態で当接リブ82が押圧突片部76の押圧部76aに当接するように構成してある。
【0049】
下方コーナー部品70Lは、縦枠13に設けた縦枠部品50との協働により、室内側開口枠10Aに装着した固定網戸60の脱落を防止するためのものである。図7−6、図10−1〜図10−5に示すように、下方コーナー部品70Lは、ストッパ部材90及び操作部材91を有している。
【0050】
ストッパ部材90は、ベースプレート71の室外側に臨む見付け面に設けた収容部79に下固定框62の長手方向に沿って移動可能に配設したものである。収容部79は、固定網戸60を室内側開口枠10Aに装着した場合に縦枠13の見込み面に対向する部位にのみ開口したものである。ストッパ部材90は、収容部79の内端面との間に突出用コイルスプリング(付勢部材)92を介在させた状態で収容部79に配設してあり、突出用コイルスプリング92の付勢力によって常時突出する方向に付勢された状態にある。
【0051】
操作部材91は、直方体状を成す操作部91aと、操作部91aから突出した接続部91bとを有したもので、操作部91aをベースプレート71の室内側に臨む見付け面に配設し、かつベースプレート71に形成した切欠溝71aを介して接続部91bをストッパ部材90に接続した状態でベースプレート71に配設してある。接続部91bが通過するベースプレート71の切欠溝71aは、下固定框62の長手方向に沿って形成したものであり、ストッパ部材90とともに操作部材91を下固定框62の長手方向に移動することが可能である。操作部材91の接続部91bが通過する切欠溝71aの端面は、ベースプレート71に対してストッパ部材90及び操作部材91を移動させた場合に接続部91bに当接することにより、ストッパ部材90の突出位置を規定する機能を有している。
【0052】
ストッパ部材90の先端部には、装着用ガイド面90a、解除用ガイド面90b及び誤装着検知用隙間90cが設けてある。装着用ガイド面90aは、ストッパ部材90の室外側となる部分に設けた平面であり、ベースプレート71に向かうに従って漸次外方(図10−4において左方)に突出するように傾斜している。解除用ガイド面90bは、ストッパ部材90の室内側となる部分に設けた平面であり、ベースプレート71に向かうに従って漸次内方(図10−4において右方)に退行するように傾斜している。誤装着検知用隙間90cは、解除用ガイド面90bにおいて最も内方に位置する部分からベースプレート71に向けてほぼ直角に延在した平面であり、縦枠13に設けた突条部13aの板厚よりも大きな寸法に形成してある。このストッパ部材90は、下方コーナー部品70Lを下固定框62の両端部に設けた場合にそれぞれの装着用ガイド面90aが縦枠13の見付け面に対向するように構成してあるとともに、突出用コイルスプリング92の付勢力に抗して収容部79の内部に移動させた場合にはそれぞれの突出端面間の距離が縦枠13の見込み面の相互間距離よりも小さくなるように構成してある。
【0053】
図7−3、図14−1に示すように、縦枠13の見込み面に取り付けた縦枠部品50には、係合板部51において下方コーナー部品70Lのストッパ部材90に対向する部位に切欠55及び設置面56が設けてある。縦枠部品50の切欠55は、室内側に位置する部分が開放された矩形状を成すもので、ストッパ部材90の先端部を収容することのできる大きさに形成してある。この縦枠部品50の切欠55は、上縁を構成する端面がストッパ面55aを構成している。ストッパ面55aは、水平方向に沿って延在した下方に臨む平面であり、図7−4に示すように、固定網戸60の下固定框62に設けた係合溝62aに取付部材40の下方係合ヒレ部43cを収容させた場合にストッパ部材90の上面よりもわずかに上方においてストッパ部材90の上面に対向するように形成してある。設置面56は、切欠55よりも上方に確保した見込み面に平行となる平面であり、固定網戸60を装着した際にストッパ部材90の先端部が当接することのできる面積を有している。
【0054】
上記のように構成した固定網戸60を室内側開口枠10Aに装着するには、まず、室内側開口枠10Aに対して上固定框61が近接するように固定網戸60を斜めの姿勢とし、この状態から上枠11の挿入突片部80をそれぞれ上方コーナー部品70Uのベースプレート71と押圧突片部76との間に挿入する。
【0055】
このとき、上方コーナー部品70Uに位置決めガイド面77aを有した位置決めガイド部材77が設けてあるため、室内側開口枠10Aに対して固定網戸60の位置が左右方向に沿ってずれていた場合にも、位置決めガイド面77aが縦枠13に当接することよって固定網戸60の位置ずれが修正されることになる。従って、固定網戸60の上端部を室内側開口枠10Aに対してラフに装着した場合にも、上枠11の挿入突片部80を確実に上方コーナー部品70Uのベースプレート71と押圧突片部76との間に案内することができるようになる。しかも、図13の(b)に示すように、押圧部76aが挿入突片部80の当接リブ82に当接した場合には、ベースプレート71とのクリアランスを拡大するようにする押圧部76aが弾性的に変形するため、挿入突片部80を挿入する際の作業を容易に行うことが可能となる。
【0056】
上枠11の挿入突片部80が上方コーナー部品70Uのベースプレート71と押圧突片部76との間に挿入された後においては、上固定框61の高さ位置を維持した状態で下固定框62を室内側開口枠10Aに近接するように移動させ、固定網戸60を垂直の姿勢とする。その間、下方コーナー部品70Lに設けたストッパ部材90は、図14−1に示すように、装着用ガイド面90aがそれぞれ縦枠13の見付け面に当接し、突出用コイルスプリング92の付勢力に抗して退行するため、縦枠13の突条部13aを乗り越えて縦枠部品50の切欠55よりも上方の設置面56に当接した状態となる。
【0057】
最後に、室内側開口枠10Aに対して固定網戸60を下方に移動させ、下固定框62の係合溝62aに取付部材40の下方係合ヒレ部43cを収容させれば、室内側開口枠10Aに固定網戸60を装着することができる。この状態においては、図14−2に示すように、ストッパ部材90が縦枠部品50の切欠55に対向した時点で突出用コイルスプリング92の付勢力により、ストッパ部材90の先端部が切欠溝71aの内部に突出し、その上面がストッパ面55aに対向した位置となる。従って、室内側開口枠10Aに対して固定網戸60を上方へ移動させるような外力が加えられた場合にも、ストッパ部材90の上面がストッパ面55aに当接するため、固定網戸60が室内側開口枠10Aに対して上方へ移動することはない。これにより、固定網戸60が不用意に室内側開口枠10Aから脱落する事態を防止することができるようになる。
【0058】
さらに、上記のようにして室内側開口枠10Aに装着された固定網戸60は、常に押圧部76aが挿入突片部80の当接リブ82を介して相対的に上枠11の室内側に臨む見付け面をベースプレート71の室外側に臨む見付け面に当接させるように機能する。従って、室内側開口枠10Aに装着した固定網戸60がガタ付く事態を招来するおそれもない。また、固定網戸60に大きな外力が加えられて上固定框61の見付け面からベースプレート71の見付け面が離隔した場合には、挿入突片部80の支持面80aと押圧突片部76の支持部76bとが互いに当接することになる。従って、押圧部76aが弾性限界を超えて変形することはなく、押圧部76aの損傷に起因して固定網戸60がガタ付いたり、脱落する事態を招来するおそれもない。固定網戸60に加えられていた外力が除去された場合には、押圧部76aの弾性復元力によって再び上枠11の室内側に臨む見付け面がベースプレート71の室外側に臨む見付け面に当接された状態に復帰するため、固定網戸60がガタ付く事態が防止されることになる。
【0059】
尚、上枠11の挿入突片部80が上方コーナー部品70Uのベースプレート71と押圧突片部76との間に挿入されずに、ストッパ部材90が縦枠部品50の切欠55に配置された場合(誤装着)には、拘束されていない固定網戸60の上端部が室内側に向けて移動するため、室内側開口枠10Aに対して固定網戸60が傾斜することになる。特に、本実施の形態においては、ストッパ部材90の先端部に突条部13aの板厚より大きな寸法の誤装着検知用隙間90cが設けてあるため、固定網戸60の下端部が隙間分だけ室内側に移動することになる。このため、固定網戸60の上端部が室内側に向けてより大きく傾斜することになり、固定網戸60が正確に装着されていないことを確実に認識することができるようになる。
【0060】
ところで、上述した建具においては、図7−2及び図15−2に示すように、縦枠13の室内側に臨む見付け面に対して取付部材40の室内側に臨む見付け面が下枠12の突条部12aの分だけ室外側に位置している。このため、室内側開口枠10Aに固定網戸60が装着された場合にも、下方コーナー部品70Lのベースプレート71は、縦枠13の室内側に臨む見付け面に当接するのみであり、取付部材40の室内側に臨む見付け面との間に隙間が構成されることになる。
【0061】
下方コーナー部品70Lから上方に延在する縦固定框63において框基部63aが配置された部分については、框基部63aが上方に連続するため、上述の隙間が問題となることはない。しかしながら、縦固定框63においてカバーヒレ部63bが配置される部分については、室外側に取付部材40が位置するのみであるため、上述の隙間が室内側から室外側に向けて斜め上方に貫通する場合があり、外部の光が斜めに進行して室内に到達するおそれがある。
【0062】
このため、本実施の形態の建具においては、図15−1に示すように、取付部材40の両端部を覆う縦枠部品50の支持カバー部53を取付部材40の上面を越えて突出するように設けてある。従って、この支持カバー部53の突出高さを適宜調整することにより、外部の光が室内に進入する事態を確実に防止することができるようになる。
【0063】
室内側開口枠10Aから固定網戸60を取り外す場合には、操作部材91を操作することにより、図14−3に示すように、突出用コイルスプリング92の付勢力に抗してストッパ部材90を収容部79の内部に移動させ、この状態から室内側開口枠10Aに対して固定網戸60を上方に移動させれば、下固定框62の係合溝62aから取付部材40の下方係合ヒレ部43cが逸脱し、かつストッパ部材90の先端部が縦枠部品50の係合板部51に当接した状態となる。従って、この状態においては、操作部材91から手を放した状態においても、室内側開口枠10Aに対して下固定框62を室内側に移動させることが可能となり、さらに固定網戸60を下方に移動させることによって上枠11の挿入突片部80を上方コーナー部品70Uのベースプレート71と押圧突片部76との間から逸脱させれば、室内側開口枠10Aから固定網戸60を取り外すことができる。
【0064】
図には明示していないが、下方コーナー部品70Lのベースプレート71において操作部材91の周囲となる部位に操作部材91よりも高さの大きなガイドリブを設ければ、固定框61,62,63に網64を張る際の作業を容易化することができる。すなわち、網64を張る場合には、固定框61,62,63のビート装着溝61c,62c,63cが上方に開口するように固定框61,62,63を平置きし、ローラ状の工具を用いてビート装着溝61c,62c,63cに順次網64とビート65とを圧入する。この場合、上述の固定網戸60では、固定框61,62,63を平置きする載置台に下方コーナー部品70Lの操作部材91が接触することになる。
【0065】
このため、ビート65及び網64をビート装着溝61c,62c,63cに圧入すべく工具を介して固定框61,62,63に力を加えると、操作部材91が不用意に移動し、固定框61,62,63の位置がずれる等の問題を来すおそれがある。上述のガイドリブを設けた場合には、固定框61,62,63を平置きした際にも操作部材91が載置台に接触することがない。従って、工具を介して固定框61,62,63に力を加えた場合にも固定框61,62,63の位置ずれが発生することはなく、ビート65及び網64をビート装着溝61c,62c,63cに圧入する作業を容易に行うことが可能となる。加えて、操作部材91が載置台と接触しないため、操作部材91の表面に傷がつく等、外観品質の問題を招来するおそれもなくなる。
【0066】
尚、上述した実施の形態では、ガラス窓20を備えた枠体10の室内側に室内側開口枠10Aを構成し、この室内側開口枠10Aに固定網戸60を装着した建具を例示しているが、本発明はこれらに限定されない。すなわち、本発明では必ずしもガラス窓20が設けられている必要はなく、障子も網戸に限らない。
【0067】
また、上述した実施の形態では、縦枠13に取り付けた縦枠部品50の係合板部51に切欠55を形成することによってストッパ部材90の上面が当接するストッパ面55aを構成するようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、縦枠の見込み面に直接孔を形成することによってストッパ面を構成しても良いし、縦枠の見込み面にストッパ部材の上面が当接する部材を取り付けることによってストッパ面を構成しても構わない。
【0068】
さらに、ストッパ部材90を障子60から突出する方向に付勢する付勢部材としてコイルスプリング92を例示しているが、ストッパ部材を付勢することができるものであれば、その他の形式のバネを適用しても良い。
【符号の説明】
【0069】
10A 室内側開口枠、11 上枠、12 下枠、13 縦枠、50 縦枠部品、51 係合板部、55 切欠、55a ストッパ面、56 設置面、60 固定網戸、62 下固定框、63 縦固定框、70L 下方コーナー部品、71a 切欠溝、79 収容部、90 ストッパ部材、90a 装着用ガイド面、91 操作部材、91a 操作部、91b 接続部、92 突出用コイルスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図7-5】
図7-6】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図9-5】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図10-5】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図15-1】
図15-2】