特許第6444781号(P6444781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6444781-ガス検知装置およびその制御方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444781
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】ガス検知装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20181217BHJP
   G01N 27/16 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G01N27/12 A
   G01N27/12 B
   G01N27/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-47283(P2015-47283)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-166823(P2016-166823A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】久世 恭
(72)【発明者】
【氏名】中尾 茂
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004-61214(JP,A)
【文献】 特開2008-45917(JP,A)
【文献】 特開2009-103605(JP,A)
【文献】 特開昭57-74652(JP,A)
【文献】 特開2002-90328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低濃度における出力の変化が大きいため低濃度の被検知ガスを検出するのに適した低濃度側ガス検知部と、当該低濃度側ガス検知部よりも高濃度側の被検知ガスを検出するのに適した高濃度側ガス検知部と、を配設し、
前記低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度に応じて、前記低濃度側ガス検知部および前記高濃度側ガス検知部の何れの検知結果を表示するかを切り替え制御する制御部を備え、
当該制御部は、前記低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度が、
第一所定濃度未満の場合に前記低濃度側ガス検知部の検知結果を表示し、
当該第一所定濃度より高い第二所定濃度以上の場合に前記高濃度側ガス検知部の検知結果を表示し、さらに、
前記第一所定濃度以上かつ前記第二所定濃度未満の場合に、前記低濃度側ガス検知部の検知結果に第一所定割合を乗じた値と、前記高濃度側ガス検知部の検知結果に前記第一所定割合と合せて100%となる第二所定割合を乗じた値と、を合算した補正濃度値を表示するように制御するガス検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一所定濃度以上かつ前記第二所定濃度未満の場合に、
前記低濃度側ガス検知部の検知出力値に基づいて濃度換算した低濃度側換算濃度値に第一所定割合を乗じた値と、前記高濃度側ガス検知部の検知出力値に基づいて濃度換算した高濃度側換算濃度値に第二所定割合を乗じた値と、を合算した補正濃度値を表示するように制御する請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一所定濃度以上かつ前記第二所定濃度未満の場合に、
前記低濃度側ガス検知部の検知出力値に第一所定割合を乗じた値と、前記高濃度側ガス検知部の検知出力値に第二所定割合を乗じた値と、を合算した後に濃度換算した補正濃度値を表示するように制御する請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項4】
低濃度における出力の変化が大きいため低濃度の被検知ガスを検出するのに適した低濃度側ガス検知部と、当該低濃度側ガス検知部よりも高濃度側の被検知ガスを検出するのに適した高濃度側ガス検知部と、を配設し、
前記低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度に応じて、前記低濃度側ガス検知部および前記高濃度側ガス検知部の何れの検知結果を表示するかを切り替え制御するガス検知装置の制御方法であって、
前記低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度が、
第一所定濃度未満の場合に前記低濃度側ガス検知部の検知結果を表示し、
第二所定濃度以上の場合に前記高濃度側ガス検知部の検知結果を表示し、さらに、
前記第一所定濃度以上かつ前記第二所定濃度未満の場合に、前記低濃度側ガス検知部の検知結果に第一所定割合を乗じた値と、前記高濃度側ガス検知部の検知結果に第一所定割合と合せて100%となる第二所定割合を乗じた値と、を合算した補正濃度値を表示するように制御するガス検知装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知ガスを導入するガス流路を設け、当該ガス流路に、ガス検知素子を備えたガス検知部を設け、被検知ガスをガス流路に流通させてガス検知素子に導くガス流通装置を設けたガス検知装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、このようなガス検知装置によって、低濃度から高濃度まで広い濃度領域において被検知ガスの濃度を測定したり、検知対象ガス中の微量成分ガスについてその種類を特定したりするために、特に低濃度ガスに対するガス検知性能の高いガス検知素子を用いることが考えられている。また、このようなガス検知素子は、一般に高濃度ガスに対する暴露によって被検知ガスを検知する検知精度が低下する場合があることが知られている。
【0003】
しかし、このような形態で上述したガス検知素子を用いると、検知対象ガス中に高濃度の被検知ガスが含まれる場合は、ガス検知素子は高濃度の被検知ガスに晒され、そのガス検知素子の精度が低下してガス検知素子が劣化する虞があった。
【0004】
特許文献1には、接触燃焼型ガスセンサを備えた低濃度側ガス検知部と、熱伝導型ガスセンサを備えた高濃度側ガス検知部とを切換手段により切り換えて可燃性ガスの濃度を測定するガス検出装置が記載してある。これにより、測定すべき可燃性ガスの濃度に対応したガス検知素子を自動的に選択することができるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3929845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のガス検知装置では、低濃度側ガス検知部および高濃度側ガス検知部の検知結果を切り替え制御する際に、急激に検知結果が上昇したり下降したりする場合があり、ガス濃度の検知結果がスムーズに変化しない可能性があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、低濃度側ガス検知部および高濃度側ガス検知部の検知結果を切り替え制御する際に、ガス濃度の検知結果が急激に変化しないように表示できるガス検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検知装置の第一特徴構成は、低濃度における出力の変化が大きいため低濃度の被検知ガスを検出するのに適した低濃度側ガス検知部と、当該低濃度側ガス検知部よりも高濃度側の被検知ガスを検出するのに適した高濃度側ガス検知部と、を配設し、前記低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度に応じて、前記低濃度側ガス検知部および前記高濃度側ガス検知部の何れの検知結果を表示するかを切り替え制御する制御部を備え、当該制御部は、前記低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度が、第一所定濃度未満の場合に前記低濃度側ガス検知部の検知結果を表示し、当該第一所定濃度より高い第二所定濃度以上の場合に前記高濃度側ガス検知部の検知結果を表示し、さらに、前記第一所定濃度以上かつ前記第二所定濃度未満の場合に、前記低濃度側ガス検知部の検知結果に第一所定割合を乗じた値と、前記高濃度側ガス検知部の検知結果に前記第一所定割合と合せて100%となる第二所定割合を乗じた値と、を合算した補正濃度値を表示するように制御する点にある。
【0009】
本構成によれば、低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度が第一所定濃度未満、第二所定濃度以上、および、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の三つの範囲において、各ガス検知部における検知結果の表示態様が異なるように制御部によって制御することができる。即ち、最も濃度が低い範囲である第一所定濃度未満の場合には低濃度側ガス検知部の検知結果をそのまま表示し、最も濃度が高い範囲である第二所定濃度以上の場合には高濃度側ガス検知部の検知結果をそのまま表示する。また、中間の濃度範囲である第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合には、補正濃度値を表示する。
【0010】
補正濃度値は、低濃度側ガス検知部の検知結果を第一所定割合だけ含み、高濃度側ガス検知部の検知結果を第二所定割合だけ含んだ濃度値であるため、低濃度側ガス検知部の検知結果および高濃度側ガス検知部の検知結果の間を繋ぐ濃度値として挿入した場合に、両者の検知結果を滑らかに繋ぐことができる。従って、本構成のガス検知装置では、低濃度側ガス検知部および高濃度側ガス検知部の検知結果を切り替え制御する際に、ガス濃度の検知結果が見かけ上、急激に変化しないように表示できる。
【0011】
本発明に係るガス検知装置の第二特徴構成は、前記制御部は、前記第一所定濃度以上かつ前記第二所定濃度未満の場合に、前記低濃度側ガス検知部の検知出力値に基づいて濃度換算した低濃度側換算濃度値に第一所定割合を乗じた値と、前記高濃度側ガス検知部の検知出力値に基づいて濃度換算した高濃度側換算濃度値に第二所定割合を乗じた値と、を合算した補正濃度値を表示するように制御する点にある。
【0012】
本構成によれば、本構成では、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合に、各ガス検知部で検知した生データである検知出力値に基づいて濃度換算した低濃度側換算濃度値および高濃度側換算濃度値に対して所定割合を乗じる上記演算を行い、補正濃度値を算出して表示することができる。
【0013】
本発明に係るガス検知装置の第三特徴構成は、前記制御部は、前記第一所定濃度以上かつ前記第二所定濃度未満の場合に、前記低濃度側ガス検知部の検知出力値に第一所定割合を乗じた値と、前記高濃度側ガス検知部の検知出力値に第二所定割合を乗じた値と、を合算した後に濃度換算した補正濃度値を表示するように制御する点にある。
【0014】
本構成によれば、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合に、各ガス検知部で検知した生データである検知出力値に対して所定割合を乗じる上記演算を行って合算した後に、濃度換算した補正濃度値を算出して表示することができる。
【0015】
本発明に係るガス検知装置の制御方法の特徴構成は、低濃度における出力の変化が大きいため低濃度の被検知ガスを検出するのに適した低濃度側ガス検知部と、当該低濃度側ガス検知部よりも高濃度側の被検知ガスを検出するのに適した高濃度側ガス検知部と、を配設し、前記低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度に応じて、前記低濃度側ガス検知部および前記高濃度側ガス検知部の何れの検知結果を表示するかを切り替え制御するガス検知装置の制御方法であって、前記低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度が、第一所定濃度未満の場合に前記低濃度側ガス検知部の検知結果を表示し、第二所定濃度以上の場合に前記高濃度側ガス検知部の検知結果を表示し、さらに、前記第一所定濃度以上かつ前記第二所定濃度未満の場合に、前記低濃度側ガス検知部の検知結果に第一所定割合を乗じた値と、前記高濃度側ガス検知部の検知結果に第一所定割合と合せて100%となる第二所定割合を乗じた値と、を合算した補正濃度値を表示するように制御する点にある。
【0016】
本構成によれば、低濃度側ガス検知部で検知した被検知ガスの濃度が第一所定濃度未満、第二所定濃度以上、および、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の三つの範囲において、各ガス検知部における検知結果の表示態様が異なるように制御することができる。即ち、最も濃度が低い範囲である第一所定濃度未満の場合には低濃度側ガス検知部の検知結果をそのまま表示し、最も濃度が高い範囲である第二所定濃度以上の場合には高濃度側ガス検知部の検知結果をそのまま表示する。また、中間の濃度範囲である第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合には、補正濃度値を表示する。
【0017】
補正濃度値は、低濃度側ガス検知部の検知結果を第一所定割合だけ含み、高濃度側ガス検知部の検知結果を第二所定割合だけ含んだ濃度値であるため、低濃度側ガス検知部の検知結果および高濃度側ガス検知部の検知結果の間を繋ぐ濃度値として挿入した場合に、両者の検知結果を滑らかに繋ぐことができる。従って、本構成のガス検知装置の制御方法では、低濃度側ガス検知部および高濃度側ガス検知部の検知結果を切り替え制御する際に、ガス濃度の検知結果が見かけ上、急激に変化しないように表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のガス検知装置を示す概略図である。
図2】都市ガスを0〜1000ppmまで徐々に濃度を上昇させた場合に、本発明のガス検知装置および従来のガス検知装置(補正濃度値を表示しない)によって都市ガスを検知したときの結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明のガス検知装置は、被検知ガスをサンプリングして当該被検知ガスの濃度を測定する。
【0020】
図1に示したように、本発明のガス検知装置Xは、低濃度における出力の変化が大きいため低濃度の被検知ガスを検出するのに適した低濃度側ガス検知部50と、低濃度側ガス検知部50よりも高濃度側の被検知ガスを検出するのに適した高濃度側ガス検知部30と、を配設し、低濃度側ガス検知部50で検知した被検知ガスの濃度に応じて、低濃度側ガス検知部50および高濃度側ガス検知部30の何れの検知結果を表示するかを切り替え制御する制御部60を備える。
【0021】
本実施形態では、ガスの流動遅延を生じさせる遅延部40を備え、遅延部40の下流側に低濃度側ガス検知部50、遅延部40の上流側に高濃度側ガス検知部30を配設してある場合について説明する。
【0022】
高濃度側ガス検知部30および低濃度側ガス検知部50は、被検知ガスを導入するガス流路10に配設してあり、低濃度側ガス検知部50の下流にはポンプPがガス流路10を介して接続されている。ポンプPの下流には、ガス流量を検知する流量検知部70が配設されている。ポンプPを作動することにより、雰囲気ガスおよび被検知ガスは吸引され、ガス入口部11、高濃度側ガス検知部30および低濃度側ガス検知部50などを経てガス排気口13から排出される。本実施形態では、高濃度側ガス検知部30の上流側に、サンプリングした被検知ガスを希釈する希釈部80を備えた場合について説明する。
【0023】
(高濃度側ガス検知部)
本実施形態における高濃度側ガス検知部30は、接触燃焼式ガス検知素子を使用した場合について説明するが、これに限定されるものではない。接触燃焼式ガス検知素子は、後述する半導体式ガス検知素子(低濃度側ガス検知部50)よりも高濃度側の被検知ガスを検出するのに適したガス検知性能を有する。
【0024】
接触燃焼式ガス検知素子は、アルミナ等の金属酸化物焼結体に白金等の貴金属触媒を担持したガス感応部としての燃焼触媒部を、白金等の貴金属線に設けてあり、燃焼触媒部において検知対象となる可燃性ガスを貴金属触媒と接触・燃焼させることで、燃焼の際に生じる温度変化を貴金属線の抵抗値の変化として検出する。可燃性ガスの燃焼熱は可燃性ガスの濃度に比例し、LELまでほぼ直線であり、貴金属線の抵抗値は燃焼熱に比例するため、可燃性ガスの燃焼による貴金属線の抵抗の変化値を測定することによって可燃性ガスの濃度を測定することができる。
【0025】
(遅延部)
ガスの流動遅延を生じさせる遅延部40は、本実施形態では、流動経路をコイル状に形成することによりガスの流動遅延を生じさせるものを説明するが、これに限られるものではない。例えば、コイル状の流動経路に替えて、流動経路に長尺部を備えるものであれば、被検知ガスが移動する距離を長くすることで遅延時間を確保することができる。この場合、長尺部の長さを変えることにより、容易に遅延時間を変更することができる。また、コイル状の流動経路に替えて、大径のバッファー部を備えるものであれば、バッファー部の容積を変えることにより、容積に対応した遅延時間を確保することができる。
【0026】
このように遅延部40を備えることにより、当該遅延部40を設けない場合に比べて被検知ガスが高濃度側ガス検知部30を通過してから低濃度側ガス検知部50に到達するまでの時間を意図的に遅らせることができる。
【0027】
(低濃度側ガス検知部)
本実施形態における低濃度側ガス検知部50は、熱線型半導体式ガス検知素子を使用した半導体式センサについて説明するが、これに限定されるものではなく、薄膜型半導体式センサを含む半導体式センサや、その他のセンサも用いることができる。
半導体式ガス検知素子は、金属酸化物半導体表面でのガス吸着による熱伝導変化及び電気伝導度変化を電極で検出するように構成され、例えば白金、パラジウム、白金−パラジウム合金等の貴金属線に、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物を主成分とする金属酸化物半導体を塗布、乾燥後焼結成型してあるガス感応部を備えている。
このように構成された半導体式ガス検知素子は、低濃度における出力の変化が大きく高感度であり、可燃性ガスのうち分子量が大きいガス成分ほど高感度を示すものとなる。
【0028】
尚、本実施形態では、高濃度側ガス検知部30として接触燃焼式ガス検知素子を使用し、低濃度側ガス検知部50として熱線型半導体式ガス検知素子を使用した場合について説明したが、これらガス検知素子は、互いの被検知ガス検出特性の一部が重なる。このようなガス検知素子のセットを適用することで、高濃度から低濃度に至る被検知ガスを確実に検知できるガス検知装置を供することができる。
【0029】
(制御部)
制御部60は、低濃度側ガス検知部50で検知した被検知ガスの濃度に応じて、低濃度側ガス検知部50および高濃度側ガス検知部30の何れの検知結果を表示するかを切り替え制御する。当該検知結果の表示は、デジタル式やアナログ式等の表示部90によって行うことができる。
【0030】
具体的には、制御部60は、低濃度側ガス検知部50で検知した被検知ガスの濃度が、第一所定濃度未満の場合に低濃度側ガス検知部50の検知結果を表示し、当該第一所定濃度より高い第二所定濃度以上の場合に高濃度側ガス検知部30の検知結果を表示し、さらに、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合に、低濃度側ガス検知部50の検知結果に第一所定割合を乗じた値と、高濃度側ガス検知部30の検知結果に第一所定割合と合せて100%となる第二所定割合を乗じた値と、を合算した補正濃度値を表示するように制御する。
【0031】
第一所定割合および第二所定割合は、これらの合計が100%となるように種々設定することが可能である。例えば第一所定割合が20%の場合に第二所定割合は80%となり、第一所定割合が60%の場合に第二所定割合は40%となる。このように本発明の「補正濃度値」は、複数のガス検知部によって実際に測定された検知出力値に基づいて算出(合成)された濃度値である。
【0032】
本構成では、低濃度側ガス検知部50で検知した被検知ガスの濃度が第一所定濃度未満、第二所定濃度以上、および、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の三つの範囲において、各ガス検知部における検知結果の表示態様が異なるように制御部60によって制御することができる。即ち、最も濃度が低い範囲である第一所定濃度未満の場合には低濃度側ガス検知部50の検知結果をそのまま表示し、最も濃度が高い範囲である第二所定濃度以上の場合には高濃度側ガス検知部30の検知結果をそのまま表示する。また、中間の濃度範囲である第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合には、補正濃度値を表示する。
【0033】
高濃度側ガス検知部30および低濃度側ガス検知部50は、互いの被検知ガス検出特性の一部が重なるため、中間の濃度範囲である第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合には、高濃度側ガス検知部30および低濃度側ガス検知部50の両者において、検知出力を得ることができる。
【0034】
補正濃度値は、低濃度側ガス検知部50の検知結果を第一所定割合だけ含み、高濃度側ガス検知部30の検知結果を第二所定割合だけ含んだ濃度値であるため、低濃度側ガス検知部50の検知結果および高濃度側ガス検知部30の検知結果の間を繋ぐ濃度値として挿入した場合に、両者の検知結果を滑らかに繋ぐことができる。従って、本構成では、低濃度側ガス検知部50および高濃度側ガス検知部30の検知結果を切り替え制御する際に、ガス濃度の検知結果が見かけ上、急激に変化しないように表示できる。
【0035】
尚、第一所定濃度未満の場合に低濃度側ガス検知部50の検知結果を表示するとき、高濃度側ガス検知部30は活性化させた状態とすることができる。また、第二所定濃度以上の場合に高濃度側ガス検知部30の検知結果を表示するとき、低濃度側ガス検知部50は不活性化した状態とするのがよい。不活性化した状態とは、低濃度側ガス検知部50に供する電源をオフにするか、低濃度側ガス検知部50に供する電圧を低下させるとよい。
【0036】
上述したように、制御部60は、低濃度側ガス検知部50で検知した被検知ガスの濃度に応じて、高濃度側ガス検知部30および低濃度側ガス検知部50の何れの検知結果を表示するかを切り替え制御するため、被検知ガスの濃度に応じて低濃度側ガス検知部50および高濃度側ガス検知部30に対して何れかの検知結果を取得できるマイコン等の態様とすればよい。
【0037】
また、制御部60は、高濃度側ガス検知部30および低濃度側ガス検知部50で検知した検知出力値に基づき、被検知ガス濃度を算出する濃度算出部を備えるとよい。このとき算出された濃度値が換算濃度値となる。尚、制御部60は、高濃度側ガス検知部30が警報レベル以上の被検知ガスを継続して検知した場合、警報信号を警報手段(図外)に送って当該警報手段により警報を発するように制御することも可能である。さらに、制御部60は、高濃度側ガス検知部30で検知した出力に基づき、希釈部80の動作および分岐手段21,22の開閉を制御するとよい(後述)。
【0038】
本実施形態における各ガス検知部の「検知結果」とは、「各ガス検知部で検知した検知出力値に基づいて濃度換算した換算濃度値」とする場合について説明する。即ち、制御部60は、低濃度側ガス検知部50で検知した被検知ガスの濃度が、第一所定濃度未満の場合に低濃度側ガス検知部50の検知出力値に基づいて濃度換算した値(換算濃度値)を表示し、第二所定濃度以上の場合に高濃度側ガス検知部30の検知出力値に基づいて濃度換算した値(換算濃度値)を表示する。
【0039】
さらに、制御部60は、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合に、低濃度側ガス検知部50の検知出力値に基づいて濃度換算した低濃度側換算濃度値に第一所定割合を乗じた値と、高濃度側ガス検知部30の検知出力値に基づいて濃度換算した高濃度側換算濃度値に第二所定割合を乗じた値と、を合算した補正濃度値を表示するように制御する。
【0040】
本構成では、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合に、各ガス検知部で検知した生データである検知出力値に基づいて濃度換算した低濃度側換算濃度値および高濃度側換算濃度値に対して所定割合を乗じる上記演算を行い、補正濃度値を算出して表示することができる。
【0041】
被検知ガスの希釈は、希釈部80により行うことができる。即ち、制御部60は、接触燃焼式ガス検知素子で検知した被検知ガスの濃度に応じて、希釈部80の動作を制御する。
【0042】
当該希釈部80は、被検知ガスを希釈する希釈用ガスを供することができるように構成すればよい。具体的には、希釈部80は、ガス流路10を分岐する分岐手段20(21,22)によって分岐した分岐流路10aにオリフィス部81を設け、その下流側にエア導入部12を備えたエア導入配管10bを接続し、エア導入遮断を切り替え自在に構成してある。尚、希釈部80には余剰となるエアを排出する排出路を設けてもよい。分岐手段20は、例えば三方弁を使用することができるが、このような態様に限定されるものではない。
【0043】
希釈部80における被検知ガスの希釈率は適宜設定できるが、制御部60によって予め希釈部80のガス希釈率を定めておいて、希釈後の被検知ガス濃度を求められるように構成してあれば、希釈後の測定被検知ガス濃度を基に、被検知ガス濃度を求めることが可能となる。例えば希釈率を20倍に設定しておけば、5vol%程度が検知限界となる接触燃焼式ガス検知素子は、100vol%までの検知が行える。
【0044】
〔別実施の形態1〕
上述した実施形態では、「検知結果」を「各ガス検知部で検知した検知出力値に基づいて濃度換算した換算濃度値」とした。しかし、このような態様に限らず、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合における「検知結果」を、「各ガス検知部で検知した検知出力値」としてもよい。
【0045】
即ち、本実施形態では、制御部60は、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合に、低濃度側ガス検知部50の検知出力値に第一所定割合を乗じた値と、高濃度側ガス検知部30の検知出力値に第二所定割合を乗じた値とを合算した後に濃度換算した補正濃度値を表示するように制御する。
【0046】
本構成では、第一所定濃度以上かつ第二所定濃度未満の場合に、各ガス検知部で検知した生データである検知出力値に対して所定割合を乗じる上記演算を行って合算した後に、濃度換算した補正濃度値を算出して表示することができる。
【0047】
〔別実施の形態2〕
上述した実施形態では、二つのガス検知部を設けて高濃度側ガス検知部30を低濃度側ガス検知部50よりも高濃度側の被検知ガスを検出するのに適した態様としたが、さらに、高濃度側ガス検知部30よりもさらに高濃度側の被検知ガスを検出するのに適した追加の検知部を設けた態様としてもよい(図示しない)。この場合においても濃度範囲によって、何れの検知部の検知結果に基づいて濃度表示を行うか、また各検知部の検知結果に乗じる割合をそれぞれ変更して補正濃度値を算出することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
このような追加の検知部として、例えば気体熱伝導式ガス検知素子を使用することができるが、これに限定されるものではない。このように検知部を三つ設けた場合には、低濃度(低濃度側ガス検知部50)、高濃度(高濃度側ガス検知部30)、さらに高濃度(追加の検知部)の被検知ガスを検知させることができる。この場合も遅延部40を設けた制御を行うことができる。
【0049】
追加の検知部は、例えば遅延部および低濃度側ガス検知部50の間に接続した追加の流路に配設することが可能である。この場合、制御部60は、高濃度側ガス検知部30で検知した被検知ガスの濃度に応じて、低濃度側ガス検知部50および追加の検知部の何れかにサンプリングした被検知ガスを流下させるように制御することができる。
【0050】
上述した三つの検知部は、追加の検知部および高濃度側ガス検知部30はそれぞれの検出可能範囲が一部重複し、高濃度側ガス検知部30および低濃度側ガス検知部50はそれぞれの検出可能範囲が一部重複するように、互いの被検知ガス検出特性の一部が重なるものを選択すればよい。
【実施例】
【0051】
〔実施例1〕
本発明の実施例について説明する。
本発明のガス検知装置Xにおいて、上流側ガス検知部30として接触燃焼式ガス検知素子を使用し、下流側ガス検知部50として熱線型半導体式ガス検知素子を使用した。
接触燃焼式ガス検知素子は、1000ppm〜5vol%(50000ppm)程度の可燃性ガス(例えば都市ガス)を検知するのに適している。一方、熱線型半導体式ガス検知素子は、10〜1000ppm程度の可燃性ガスを検知するのに適している。
【0052】
本実施例では、都市ガスを0〜1000ppmまで徐々に濃度を上昇させた場合に、本発明のガス検知装置Xおよび従来のガス検知装置(補正濃度値を表示しない)によって都市ガスを検知した。都市ガスの濃度は22秒付近から上昇させ、40秒付近で1000ppmとなるように流量を調節した。
【0053】
本発明のガス検知装置Xにおいて、制御部60は、低濃度側ガス検知部50で検知した被検知ガスの濃度が、第一所定濃度(400ppm)以上かつ第二所定濃度(900ppm)未満の場合に、低濃度側ガス検知部50の検知出力値に基づいて濃度換算した低濃度側換算濃度値に第一所定割合を乗じた値と、高濃度側ガス検知部30の検知出力値に基づいた高濃度側換算濃度値に第二所定割合を乗じた値とを合算した補正濃度値を表示するように制御した。第一所定割合および第二所定割合は、表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
結果を図2に示した。従来のガス検知装置では、低濃度側ガス検知部50の検知出力値が800ppm未満の場合は、低濃度側ガス検知部50の検知出力値を表示し、800ppm以上では、高濃度側ガス検知部30の検知出力値を表示した。その結果、低濃度側ガス検知部50および高濃度側ガス検知部30の検知結果を切り替え制御する31〜35秒付近においては、ガス濃度の検知結果は、上昇傾向から略一定の濃度値に急激に変化したと認められた。
【0056】
一方、本発明のガス検知装置Xでは、第一所定濃度(400ppm)以上かつ第二所定濃度(900ppm)未満の場合に補正濃度値を表示するように制御したところ、低濃度側ガス検知部50および高濃度側ガス検知部30の検知結果を切り替え制御する31〜35秒付近においては、ガス濃度の検知結果は緩やかな上昇カーブで表示することができ、急激に変化しなかったと認められた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、所謂ワイドレンジな検知を行うことができ、検知するガス種は特に制限がないガス検知装置であって、被検知ガスを導入するガス流路を設け、当該ガス流路に、ガス検知素子を備えたガス検知部を設け、被検知ガスをガス流路に流通させてガス検知素子に導くガス流通装置を設けたガス検知装置およびその制御方法に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
X ガス検知装置
30 高濃度側ガス検知部
50 低濃度側ガス検知部
60 制御部
図1
図2