特許第6444786号(P6444786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444786
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   F04C18/02 311U
   F04C18/02 311Q
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-57645(P2015-57645)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-176416(P2016-176416A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】桑原 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勝博
(72)【発明者】
【氏名】萩田 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 真実
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 創
(72)【発明者】
【氏名】慶川 源太
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−85066(JP,A)
【文献】 特開2002−70769(JP,A)
【文献】 特開昭60−104788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、前記旋回スクロールを前記固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機において、
前記2つの吸入容積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートに近い側に形成される一方の前記吸入容積を、他方の前記吸入容積よりも大きくし
前記固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップの歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置に各々段部を設けた構成とし、
前記吸入ポートに近い側に形成される前記吸入容積の容積を、その吸入容積を形成する歯先面側の段部高さを他方の歯先面側の段部高さよりも高くすることにより大きくしたスクロール圧縮機。
【請求項2】
端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、前記旋回スクロールを前記固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機において、
前記2つの吸入容積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートに近い側に形成される一方の前記吸入容積を、他方の前記吸入容積よりも大きくし
前記固定スクロールおよび旋回スクロールの一方を前記渦巻き状ラップの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備え、他方を前記歯底面側の段部に対応した前記渦巻き状ラップの歯先面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備えた構成とし、
前記吸入ポートに近い側に形成される前記吸入容積を、その吸入容積内のみに前記歯先面側の段部で形成される容積を追加することにより大きくしたスクロール圧縮機。
【請求項3】
端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、前記旋回スクロールを前記固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機において、
前記固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップの歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置に各々段部を設けた構成とし、
前記2つの吸入容積を形成する両スクロールの表面積うち、ハウジングに設けられている吸入ポートから吸込まれる低温の冷媒ガスの吸入領域に面して配置される前記旋回スクロール側の端板の表面積を、前記旋回スクロール側の歯底面に設ける前記段部の高さを前記固定スクロール側の歯底面に設ける前記段部の高さよりも高くすることにより固定スクロール側の端板の表面積よりも大きくしたスクロール圧縮機。
【請求項4】
端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、前記旋回スクロールを前記固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機において、
前記固定スクロールおよび旋回スクロールの一方を前記渦巻き状ラップの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備え、他方を前記歯底面側の段部に対応した前記渦巻き状ラップの歯先面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備えた構成とし、
前記2つの吸入容積を形成する両スクロールの表面積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートから吸込まれる低温の冷媒ガスの吸入領域に面して配置される前記旋回スクロール側の端板の表面積を、前記旋回スクロール側の歯底面のみに前記段部を設けることにより固定スクロール側の端板の表面積よりも大きくしたスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積効率、冷凍能力をより大きくすることができるスクロール圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、旋回スクロールを固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を180度の位相差で形成し、その吸入容積を外周側から中心側へと容積を減少させながら移動させることによって、吸入容積内に吸込んだ低圧の冷媒ガスを高圧に圧縮して吐出する構成とされている。そして、一般的には、180度の位相差で形成される2つの吸入容積の内圧がアンバランスとならないように、その容積を同一容積としている。
【0003】
一方、特許文献1には、ハウジング内に設置される一対の固定スクロールおよび旋回スクロールの渦巻き状ラップの巻き終り端をできるだけ上方に位置させ、油溜りの油や液冷媒を吸込まないようにするため、一方のスクロールの巻き終り端を巻き始め側の中心部よりも上方位置に配設し、他方のスクロールの巻き終り端を一方のスクロールの巻き終り端に向って延長させたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、固定スクロールをハウジング側と一体に形成し、その渦巻き状ラップの巻き終り端に連通するように吸入ポートを開口するとともに、固定スクロールと噛み合わされる旋回スクロールの巻き終り端を略同一位置に位置させた構成とし、吸入ポートから吸込んだ低温の冷媒ガスを順次2つの吸入容積に直接吸入させることによって、吸入冷媒ガスの過熱度および比容積の増大を抑制し、性能向上を図ったものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−330863号公報(特許第2874514号公報)
【特許文献2】特開平11−82326号公報(特許第3869082号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の如く、2つの吸入容積を180度の位相差で形成するスクロール圧縮機では、ハウジング側に設けられる吸入ポートの位置によっては、一方の吸入容積に吸入される冷媒ガスの温度が、他方の吸入容積に吸入される冷媒ガスの温度よりも高くなる場合がある。これは、ハウジング内での冷媒ガスの吸入経路が長くなり、その間に冷媒ガスが軸受や旋回駆動部等のメカ部と接触して加熱されるためであり、メカ部を冷却および潤滑できる反面、吸入過熱により他方の吸入容積に吸入される冷媒の密度が低下し、体積効率および冷凍能力が低下される等の課題があった。
【0007】
また、特許文献1に示すものは、一方の渦巻き状ラップの巻き終り端を延長して巻き数を増やしているが、吸入ポートから遠い方の渦巻き状ラップの巻き終り端を延長したものであり、この場合、油や液冷媒を吸込むことによる液圧縮を防止し得るものの、体積効率や冷凍能力の向上を期待し得るものではなかった。また、特許文献2に示すものは、固定スクロール側の渦巻き状ラップの巻き終り端を延長することにより冷媒ガスの過熱度や比容積の増大を防止し、性能向上を図ったものであり、体積効率や冷凍能力の向上を期待し得る反面、低温の冷媒ガスやその冷媒中に含まれる油分によるメカ部の冷却や潤滑効果を期待できないため、別途潤滑対策を講じ、機器類の寿命を確保する必要があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保しながら、押しのけ量を増大して体積効率および冷凍能力を向上することで、その効果を両立し得るスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明のスクロール圧縮機は、以下の手段を採用している。
すなわち、本発明にかかるスクロール圧縮機は、端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、前記旋回スクロールを前記固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機において、前記2つの吸入容積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートに近い側に形成される一方の前記吸入容積を、他方の前記吸入容積よりも大きくし、前記固定スクロールおよび旋回スクロールの一方を前記渦巻き状ラップの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備え、他方を前記歯底面側の段部に対応した前記渦巻き状ラップの歯先面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備えた構成とし、前記吸入ポートに近い側に形成される前記吸入容積を、その吸入容積内のみに前記歯先面側の段部で形成される容積を追加することにより大きくしたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを噛み合せることにより2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機にあって、2つの吸入容積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートに近い側に形成される一方の吸入容積を、他方の吸入容積よりも大きくしているため、吸入ポート近くのより低温で密度の高い冷媒を効率よく吸入でき、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。従って、その分だけ押しのけ量を増大し、かつ圧縮機の体積効率および冷凍能力を大きくすることができる。また、吸入ポートから遠い側の吸入容積(圧縮室)に吸入される冷媒ガスにより軸受部等のメカ部を冷却および潤滑し、その冷却・潤滑性を確保することができるため、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化を両立することができる。
【0012】
本発明によれば、吸入ポートに近い側に形成される前記吸入容積を、一方のスクロールの渦巻き状ラップの巻き数を増やすことにより大きくしているため、吸入ポート近くのより低温で密度の高い冷媒を効率よく吸入でき、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。従って、その分だけ押しのけ量を増大し、かつ圧縮機の体積効率および冷凍能力を一方のスクロールの渦巻き状ラップの巻き数を増やすだけで簡易に大きくすることができる。しかも吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保することで、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化を両立することができる。
【0014】
本発明によれば、固定スクロールおよび旋回スクロールを、渦巻き状ラップの歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置に各々段部を設けた構成とし、吸入ポートに近い側に形成される吸入容積を、その吸入容積を形成する歯先面側の段部高さを他方の歯先面側の段部高さよりも高くすることにより大きくしているため、いわゆる両側段付きスクロールにあって、吸入ポート近くのより低温で密度の高い冷媒を効率よく吸入でき、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。従って、その分だけ押しのけ量を増大し、かつ圧縮機の体積効率および冷凍能力を一方のスクロールの歯先面側の段部高さを高くするだけで簡易に大きくすることができる。しかも吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保することで、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化を両立することができる。
【0015】
さらに、本発明のスクロール圧縮機は、端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、前記旋回スクロールを前記固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機において、前記2つの吸入容積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートに近い側に形成される一方の前記吸入容積を、他方の前記吸入容積よりも大きくし、前記固定スクロールおよび旋回スクロールの一方を前記渦巻き状ラップの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備え、他方を前記歯底面側の段部に対応した前記渦巻き状ラップの歯先面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備えた構成とし、前記吸入ポートに近い側に形成される前記吸入容積を、その吸入容積内のみに前記歯先面側の段部で形成される容積を追加することにより大きくしたことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、固定スクロールおよび旋回スクロールの一方を渦巻き状ラップの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備え、他方を歯底面側の段部に対応した渦巻き状ラップの歯先面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備えた構成とし、吸入ポートに近い側に形成される吸入容積を、その吸入容積を形成する歯先面側のみに段部を配置することにより大きくしているため、いわゆる片側段付きスクロールにあって、吸入ポート近くのより低温で密度の高い冷媒を効率よく吸入でき、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。従って、その分だけ押しのけ量を増大し、かつ圧縮機の体積効率および冷凍能力を一方の吸入容積を形成する歯先面側のみに段部を配置するだけで簡易に大きくすることができる。しかも吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保することで、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化とを両立することができる。
【0017】
また、本発明にかかるスクロール圧縮機は、端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、前記旋回スクロールを前記固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機において、前記固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップの歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置に各々段部を設けた構成とし、前記2つの吸入容積を形成する両スクロールの表面積うち、ハウジングに設けられている吸入ポートから吸込まれる低温の冷媒ガスの吸入領域に面して配置される前記旋回スクロール側の端板の表面積を、前記旋回スクロール側の歯底面に設ける前記段部の高さを前記固定スクロール側の歯底面に設ける前記段部の高さよりも高くすることにより固定スクロール側の端板の表面積よりも大きくしたことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを噛み合せることにより2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機にあって、2つの吸入容積を形成する両スクロールの端板の表面積うち、ハウジングに設けられている吸入ポートから吸込まれる低温の冷媒ガスの吸入領域に面して配置される旋回スクロール側の端板の表面積を、固定スクロール側の端板の表面積よりも大きくしているため、その伝熱作用により、吸入容積内の温度をより低温度に維持して吸入効率を向上し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。従って、その分だけ押しのけ量を増大し、圧縮機の体積効率および冷凍能力を大きくすることができる。また、吸入ポートから遠い側の吸入容積に吸入される冷媒ガスで軸受部等のメカ部を冷却および潤滑し、その冷却・潤滑性を確保することができるため、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化を両立することができる。
【0020】
本発明によれば、固定スクロールおよび旋回スクロールを、渦巻き状ラップの歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置に各々段部を設けた構成とし、吸入容積を形成する両スクロールの端板の表面積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートから吸込まれる低温の冷媒ガスの吸入領域に面して配置される旋回スクロール側の端板の表面積を、旋回スクロール側の歯底面に設ける段部の高さを固定スクロール側の歯底面に設ける段部の高さよりも高くすることにより大きくしているため、いわゆる両側段付きスクロールにあって、その伝熱作用により吸入容積内の温度をより低温度に維持して吸入効率を向上し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。これによって、その分だけ圧縮機の体積効率および冷凍能力を旋回スクロールの端板に設ける段部高さを高くして表面積を大きくするだけで簡易に大きくすることができる。しかも吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保することで、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化を両立することができる。
【0021】
さらに、本発明のスクロール圧縮機は、端板上に渦巻き状ラップを立設した一対の固定スクロールおよび旋回スクロールを、前記渦巻き状ラップ同士を対向させて噛み合せし、前記旋回スクロールを前記固定スクロール周りに公転旋回駆動することにより、2つの吸入容積を形成するスクロール圧縮機において、前記固定スクロールおよび旋回スクロールの一方を前記渦巻き状ラップの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備え、他方を前記歯底面側の段部に対応した前記渦巻き状ラップの歯先面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備えた構成とし、前記2つの吸入容積を形成する両スクロールの表面積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートから吸込まれる低温の冷媒ガスの吸入領域に面して配置される前記旋回スクロール側の端板の表面積を、前記旋回スクロール側の歯底面のみに前記段部を設けることにより固定スクロール側の端板の表面積よりも大きくしたことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、固定スクロールおよび旋回スクロールの一方を渦巻き状ラップの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備え、他方を歯底面側の段部に対応した渦巻き状ラップの歯先面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部を備えた構成とし、吸入容積を形成する両スクロールの端板の表面積のうち、ハウジングに設けられている吸入ポートから吸込まれる低温の冷媒ガスの吸入領域に面して配置される旋回スクロール側の端板の表面積を、旋回スクロール側の歯底面のみに段部を設けることによって大きくしているため、いわゆる片側段付きスクロールにあって、その伝熱作用により吸入容積内の温度をより低温度に維持して吸入効率を向上し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。従って、その分だけ圧縮機の体積効率および冷凍能力を旋回スクロールの端板側のみに段部を設けて表面積を大きくするだけで簡易に大きくすることができる。しかも吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保し、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化を両立することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、吸入ポートに近く、より低温の冷媒ガスを吸入することができる一方の吸入容積を、他方の吸入容積よりも大きくしたことによって、低温でより密度の高い冷媒を効率よく吸入し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができるため、その分だけ押しのけ量を増大し、かつ圧縮機の体積効率および冷凍能力を大きくすることができる。また、吸入ポートから遠い側の吸入容積に吸入される冷媒ガスにより軸受部等のメカ部を冷却および潤滑し、その冷却・潤滑性を確保することができるため、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化とを両立することができる。
【0024】
また、本発明によると、2つの吸入容積を形成する両スクロールの端板の表面積うち、低温の冷媒ガスが吸込まれる吸入領域に面して配置される旋回スクロール側の端板の表面積を、固定スクロール側の端板の表面積よりも大きくしたことにより、吸入容積内の温度をより低温度に維持して吸入効率を向上し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができるため、その分だけ圧縮機の体積効率および冷凍能力を大きくすることができる。また、吸入ポートから遠い側の吸入容積に吸入される冷媒ガスで軸受部等のメカ部を冷却および潤滑し、その冷却・潤滑性を確保することができるため、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機の高性能化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
図2図1のA−A断面相当図である。
図3】上記スクロール圧縮機の固定スクロールと旋回スクロールの噛み合い状態の説明図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るスクロール圧縮機の図1のA−A断面相当図(B)と、その2つの吸入容積の容積を示す模式図(A),(C)である。縦断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るスクロール圧縮機の旋回スクロール端板の吸入容積を形成する表面積を示す模式図(A),(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図3を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態にかかるスクロール圧縮機の縦断面図が示され、図2には、そのA−A断面相当図、図3には、その固定スクロールと旋回スクロールの噛み合い状態の説明図が示されている。
スクロール圧縮機1は、外殻を構成する円筒状のハウジング2を備えている。ここでのハウジング2は、フロントハウジング3とリアハウジング4とを図示省略のボルト等を介して一体に締め付け固定したものとされている。
【0027】
ハウジング2内部のフロントハウジング3側には、クランク軸5がメイン軸受6およびサブ軸受(図示省略)を介してその軸線回りに回転自在に支持されている。クランク軸5の一端側(図1において左側)は、フロントハウジング3を貫通して図1の左側に突出されており、その突出部位には、公知の如く動力を受ける電磁クラッチ7およびプーリ8が設けられ、エンジン等の駆動源からベルトを介して動力が入力可能とされている。メイン軸受7とサブ軸受との間には、メカニカルシールまたはリップシールが設置され、ハウジング2内と大気間がシールされている。
【0028】
クランク軸5の他端側(図1において右側)には、その軸線に対して所定寸法だけ偏心したクランクピン9が一体に設けられている。このクランクピン9は、ドライブブッシュ10およびドライブ軸受11を介して後述する旋回スクロール15に連結されており、クランク軸5が回転駆動されることによって、旋回スクロール15を旋回駆動する構成とされている。
【0029】
ドライブブッシュ10には、旋回スクロール15が旋回駆動されることにより発生するアンバランス荷重を除去するためのバランスウェイト12が一体に形成されており、旋回スクロール15の旋回駆動と共に旋回されるようになっている。また、ドライブブッシュ10とクランクピン9との間には、旋回スクロール15の旋回半径を可変とする公知の従動クランク機構が設けられている。
【0030】
ハウジング2の内部には、一対の固定スクロール14および旋回スクロール15によって構成されるスクロール圧縮機構13が組み込まれている。固定スクロール14は、端板14Aと該端板14Aから立設された渦巻き状ラップ14Bとから構成され、旋回スクロール15は、端板15Aと該端板15Aから立設された渦巻き状ラップ15Bとから構成されている。
【0031】
ここでの固定スクロール14および旋回スクロール15は、図2および図3に示されるように、渦巻き状ラップ14B,15Bの歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置に、各々段部14C,15Cおよび14D,15Dを備えた構成とされており、この段部14C,15Cおよび14D,15Dを境に、ラップ歯先面側では、旋回軸線方向に外周側の歯先面が高く、内周側の歯先面が低くされ、また、歯底面では、旋回軸線方向に外周側の歯底面が低く、内周側の歯底面が高くされている。これによって、渦巻き状ラップ14B,15Bは、その外周側におけるラップ高さが内周側のラップ高さよりも高くされた構成とされている。
【0032】
固定スクロール14および旋回スクロール15は、その中心を旋回半径分離し、渦巻き状ラップ14B,15B同士を対向させ、更に位相を180度ずらして噛み合せし、渦巻き状ラップ14B,15Bの歯先面と歯底面間に常温で僅かなクリアランス(数十〜数百ミクロン)を有するように組み付けられている。これによって、両スクロール14,15間に、端板14A,15Aと渦巻き状ラップ14B,15Bとにより限界される一対の吸入容積(圧縮室)16がスクロール中心に対して180度の位相差で形成されるようになっている。
【0033】
上記吸入容積(圧縮室)16は、渦巻き状ラップ14B,15Bの旋回軸線方向の高さが外周側において内周側の高さよりも高くされており、渦巻き状ラップ14B,15Bの周方向およびラップ高さ方向の双方にガスを圧縮する三次元圧縮が可能なスクロール圧縮機構13を構成するものである。なお、圧縮機構13は、上記の如く段部14C,15Cおよび14D,15Dを備えた、いわゆる両側段付きスクロール圧縮機構13とされているが、段部を有しない、二次元圧縮タイプのコンベンショナルなスクロール圧縮機構であってもよいことはもちろんである。
【0034】
固定スクロール14は、リアハウジング4の内面に図示省略のボルト等を介して固定設置されており、また、旋回スクロール15は、端板15Aの背面に設けられている軸受ボス部に対して、上述の通りクランク軸5の一端側に設けられているクランクピン9がドライブブッシュ10およびドライブ軸受11を介して連結されることにより、旋回駆動可能とされている。更に、旋回スクロール15は、フロントハウジング3のスラスト軸受面3Aに端板15Aの背面が支持され、そのスラスト軸受面3Aと端板15Aの背面との間に設けられる図示省略の自転阻止機構を介して、自転が阻止されながら固定スクロール14の周りに公転旋回駆動されるようになっている。
【0035】
固定スクロール14には、端板14Aの中央部位に圧縮された冷媒ガスを吐出する吐出ポート17が開口されており、この吐出ポート17には、リテーナ18を介して吐出リード弁19が設置されている。また、固定スクロール14の端板14Aの外周側背面とリアハウジング4の内面との間にOリング等のシール材が介装されており、そのシール材の内周側空間がハウジング2の内部空間から区画された吐出チャンバー20とされ、吐出ポート17を介して高温高圧の圧縮ガスが吐出されるようになっている。更に、そのシール材による区画によって、ハウジング2の内部空間が吐出チャンバー20と、その他の吸入領域21とに区画されている。
【0036】
ハウジング2内の吸入領域21には、フロントハウジング3の上方部に設けられている吸入ポート22が開口され、冷凍サイクル側から低温低圧の冷媒ガスが吸込まれるようになっている。この吸入領域21に吸込まれた低温低圧の冷媒ガスは、旋回スクロール15の旋回駆動によって固定スクロール14との間に180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16に吸入され、圧縮されるようになっている。
【0037】
かかるスクロール圧縮機1において、スクロール圧縮機構13を構成する固定スクロール14と旋回スクロール15の渦巻き状ラップ14B,15Bの巻き終り端は、上下方向に配置され、固定スクロール14の渦巻き状ラップ14Bの巻き終り端は上方位置、旋回スクロール15の渦巻き状ラップ15Bの巻き終り端は下方位置にそれぞれ鉛直方向位置から所定角度傾いた位置に配置されている。
【0038】
従って、このスクロール圧縮機1では、固定スクロール14の渦巻き状ラップ14Bの巻き終り端により吸入締め切りされる吸入容積16Aに対する吸込み位置P1の方が、旋回スクロール15の渦巻き状ラップ15Bの巻き終り端により吸入締め切りされる吸入容積16Bに対する吸込み位置P2よりも吸入ポート22に近い位置に配置されることになり、吸入ポート22から吸入領域21に吸込まれた低温の冷媒ガスは、吸入容積16Aには直接的に吸入される一方、吸入容積16Aには、軸受6,11やドライブブッシュ10等のメカ部に接触しながら、180度反対位置に回り込んで吸入されるようになる。
【0039】
つまり、吸入ポート22に近い側の吸入容積16Aに対して、吸入ポート22から吸込まれた低温の冷媒ガスは、矢印aの如く、直接的に吸入されることになる一方、吸入ポート22から遠い側の吸入容積16Bに対しては、吸入ポート22から吸入領域21に吸込まれた後、矢印bの如く、軸受6,11やドライブブッシュ10等と接触する吸入経路を経て回り込んで吸入されることになり、その間、低温の冷媒ガスやそのガス中に含まれる油滴により、軸受6,11やドライブブッシュ10等のメカ部の冷却や潤滑に供されるようになっている。
【0040】
本実施形態においては、吸入ポート22に近い吸入容積16A、すなわち渦巻き状ラップ14B,15Bの歯丈方向中央断面(図2)において、吸込み位置P1迄の直線距離が吸入ポート22に近い側の吸入容積16Aが、低温で高密度の冷媒をより多く吸入できるようにするため、180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16のうち、吸入ポート22に近い側に形成される一方の吸入容積16Aの容積を、他方の吸入容積16Bの容積よりも大きくすべく、固定スクロール14の渦巻き状ラップ14Bの巻き終り端に対し、図3に網掛けで表示した巻き数増加部分(巻き終り端を延長した部分)23を設けた構成としている。
【0041】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
外部駆動源からの回転駆動力をプーリ8および電磁クラッチ7を介してクランク軸5に入力し、クランク軸5を回転すると、そのクランクピン9にドライブブッシュ10およびドライブ軸受11を介して旋回半径が可変に連結されている旋回スクロール15が、自転阻止機構(図示省略)により自転を阻止されながら、固定スクロール14の周りに或る旋回半径で公転旋回駆動される。
【0042】
この旋回スクロール15の公転旋回駆動によって、半径方向の最外周に180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16内に、吸入ポート22から吸入領域21に吸込まれた低温の冷媒ガスが吸入される。この吸入容積(圧縮室)16は、所定の旋回角で吸入締め切りされた後、容積が周方向およびラップ高さ方向に減少されながら中心側へと移動されることにより冷媒ガスを圧縮する。一対の吸入容積(圧縮室)16が中心部位において合流し、吐出ポート17に連通する位置に達すると、吐出リード弁19を押し開く結果、圧縮された高温高圧のガスは、吐出チャンバー20内に吐出され、そこからスクロール圧縮機1の外部、すなわち冷凍サイクル側へと送出される。
【0043】
吸入ポート22から吸入領域21に吸込まれた低温の冷媒ガスは、吸入ポート22に近い側の吸入容積(圧縮室)16Aには矢印aで示されるように、直接的に吸入されることになるため、低温で高密度のまま吸入されることになる。一方、吸入ポート22から遠い側の吸入容積(圧縮室)16Bには矢印bで示されるように、軸受6,11やドライブブッシュ10等のメカ部に接触する長い吸入経路を経て吸入されることになるため、その間加熱され、過熱度が高くなって密度が低下した状態で吸入されることになるが、その間に接触するメカ部を冷媒ガスやそのガス中に含まれる油滴で冷却および潤滑し、それら機器類の製品寿命の確保に寄与する。
【0044】
また、180度の位相差で形成されている2つの吸入容積(圧縮室)16のうち、ハウジング2に設けられている吸入ポート22に近い側の一方の吸入容積16Aの容積を、遠い側の他方の吸入容積16Bの容積よりも大きくしている。つまり、固定スクロール14の渦巻き状ラップ14Bの巻き終り端に、図3に示されるように、巻き数増加部分23を設けることにより、吸入ポート22に近い側の吸入容積16Aの容積を増大し、他方の吸入容積(圧縮室)16Bの容積よりも大きくしているため、低温でより密度の高い冷媒を効率よく吸入し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。
【0045】
これによって、冷媒の吸入量を増大した分だけ圧縮機の押しのけ量を増大し、かつスクロール圧縮機1の体積効率および冷凍能力を一方の固定スクロール14の渦巻き状ラップ14Bの巻き数を増やすだけで簡易に大きくすることができる。また、吸入ポート22から遠い側の吸入容積(圧縮室)16Bに吸入される低温の冷媒ガスにより軸受6,11やドライブブッシュ10等のメカ部を冷却および潤滑することができるため、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機1の高性能化を両立することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、固定スクロール14および旋回スクロール15の渦巻き状ラップ14B,15Bの歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置に段部14C,15Cおよび14D,15Dを設けた、いわゆる両側段付きスクールに適用した例について説明したが、段部14C,15Cおよび14D,15Dを備えていないスクロール圧縮機において、吸入ポート22に近い側に形成される一方の吸入容積16Aの容積を、一方のスクロールの渦巻き状ラップの巻き数を増やして大きくすることにより、同様の効果が得られることはもちろんであり、かかるスクロール圧縮機も本発明に包含されることは云うまでもない。
【0047】
また、本実施形態では、吸入ポート22をハウジング2の外周の上方部位に設けたものについて説明したが、吸入ポート22の位置は、それに限らず、図2において、スクロールの中心と各渦巻き状ラップ14B,15Bの巻き終り端とを結ぶ直線に対し直交する直線上よりも上側でハウジング2の外周に設けられておればよく、その範囲であれば、吸入ポート22から吸込み位置迄の直線距離は、吸入容積16A側迄の距離の方が吸入容積16B側迄の距離よりも近くなる。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図4を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、吸入ポート22に近い側の吸入容積16Aの容積を、その吸入容積16Aを形成する、いわゆる両側段付きスクールの歯先面側の段部高さを他方の歯先面側の段部高さよりも高くすることにより大きくしたものである点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0049】
いわゆる両側段付きスクール圧縮機1の構成は、図1および図2に示されている通りである。また、図4は、180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16の容積を模式的に分解して示したものであり、(B)は、図2に相当する両側段付きスクール圧縮機1の断面図、(A)は、吸入ポート22から遠い側に形成される吸入容積16Bの容積の分解図、(C)は、吸入ポート22に近い側に形成される吸入容積16Aの容積の分解図である。
【0050】
このように、両側段付きスクール圧縮機1において、180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16A,16Bの容積は、図4(A)および(C)に示されるように、それぞれベースとなる容積部分A1,A2に対して、歯先面側段部14C,15Cにより形成される容積部分B1,B2と、歯底面側段部14D,15Dにより形成される容積部分C1,C2とを加えた容積となっている。
【0051】
このため、「吸入容積16A>吸入容積16B」とするには、容積部分C1,C2よりも大きい歯先面側段部14C,15Cで形成される容積部分B1,B2のうち、吸入容積16A側の容積部分B1の高さ方向寸法L1を、他方の容積部分B2の高さ方向寸法L2よりも高くし、「L1>L2」とすることにより、2つの吸入容積(圧縮室)16A,16Bの容積を効果的に「吸入容積16A>吸入容積16B」とすることができる。つまり、吸入ポート22に近い側に形成される吸入容積16Aを形成する歯先面側の段部14Cの高さを、他方の吸入容積16Bを形成する歯先面側の段部15Cの高さよりも高くすることによって、「吸入容積16A>吸入容積16B」とすることができる。
【0052】
言い換えると、旋回スクロール15の端板15A側に設ける段部15Dの高さを、固定スクロール14の端板14A側に設ける段部14D高さよりも高くし、旋回スクロール15の渦巻き状ラップ15B側に設ける段部15Cの高さを、固定スクロール14の渦巻き状ラップ14B側に設ける段部14Cの高さよりも低くした段部高さの異なる両側段付きスクール圧縮機1とすることによって、「吸入容積16A>吸入容積16B」とすることができる。
【0053】
固定スクロール14および旋回スクロール15の歯先面側の段部14C,15Cと、歯底面側の段部14D,15Dとは、固定スクロール14の歯先面側段部14Cと旋回スクロール15の歯底面側段部15Dとが噛み合い、固定スクロール14の歯底面側段部14Dと旋回スクロール15の歯先面側段部15Cとが噛み合うことになるため、旋回スクロール15の端板15A側に設ける段部15Dの高さをL1、固定スクロール14の端板14A側に設ける段部14Dの高さをL2とし、それを「L1>L2」とすればよいことになる。
【0054】
以上に説明の如く、いわゆる両側段付きスクール圧縮機1にあっては、吸入ポート22に近く、より低温の冷媒ガスを吸入することができる吸入容積(圧縮室)16Aを形成する歯先面側の段部14Cの高さを他方の歯先面側段部15Cの高さよりも高くすることによって、その容積を「吸入容積16A>吸入容積16B」とし、吸入ポート22に近い側に形成される吸入容積(圧縮室)16Aに対して、低温で密度の高い冷媒を効率よく吸入し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。
【0055】
従って、その分だけ圧縮機の押しのけ量を増大し、スクロール圧縮機1の体積効率および冷凍能力を一方の旋回スクロール15の歯底面側段部15Dおよび固定スクロール14の歯先面側段部14Cの高さを高くするだけで簡易に大きくすることができる。しかも低温の吸入冷媒ガスによる軸受6,11やドライブブッシュ10等のメカ部の冷却・潤滑性を確保することで、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機1の高性能化を両立することができる。
【0056】
つまり、図4(C)に示す吸入容積16Aの分解図において、三日月形状(ベース容積部分と同じ形状)の容積部分B1と、半三日月形状(三日月が途中で切れた形状)の容積部分C1があり、段部高さを高くした場合により容積が大きくなるのは、面積の大きい三日月形状の容積部分B1となる。よって、結果的には吸入容積16A内に位置する歯底面側の段部高さ14D(=15C=L2)を、他方の段部高さ15D(=14C=L1)よりも低くすることによって、「吸入容積16A>吸入容積16B」とすることができる。
このように、2つの吸入容積16のうち、三日月形状の容積部分B1(L1)と、容積部分B2(L2)とを比較して、容積を大きくしたい方の高さをたかくすればよい。
[変形例]
上記第2実施形態は、以下のような変形例としてもよい。
第2実施形態は、一対の固定スクロール14および旋回スクロール15の渦巻き状ラップ14B,15Bの歯先面および歯底面に各々段部14C,15Cおよび14D,15Dを設けて構成した、いわゆる両側段付きスクロール圧縮機1にあって、互いに噛み合う段部14Cおよび15Dと、段部14Dおよび15Cの高さを異なる高さとして、2つの吸入容積16の容積を「吸入容積16A>吸入容積16B」としたものであるが、いわゆる片側段付きスクール圧縮機1とすることによっても、上記形態と同様「吸入容積16A>吸入容積16B」とすることができる。
【0057】
つまり、一対の固定スクロール14および旋回スクロール15の一方を渦巻き状ラップ14Bまたは15Bの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部14Dまたは15Dを備えたスクロール、他方を歯底面側の段部14Dまたは15Dに対応した渦巻き状ラップ14Bまたは15Bの歯先面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部14Cまたは15Cを備えたスクロールとすることにより、一方のスクロールの端板のみに段部を設けた片側段付きスクール圧縮機1となし、180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16のうち、吸入ポート22に近い側に形成される吸入容積16Aの容積のみに歯先面側段部14Cまたは15Cで形成される容積を追加することにより、「吸入容積16A>吸入容積16B」としたものである。
【0058】
かかる構成とすることによっても、180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16のうち、吸入ポート22に近い側に形成される吸入容積16Aの容積を、「吸入容積16A>吸入容積16B」とし、吸入ポート22に近い吸入容積(圧縮室)16Aに対して、低温で密度の高い冷媒を効率よく吸入し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。従って、その分だけ圧縮機の押しのけ量を増大し、スクロール圧縮機1の体積効率および冷凍能力を簡易に大きくすることができるとともに、吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保することで、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機1の高性能化を両立することができる。
【0059】
なお、ここでの片側段付きスクロール圧縮機1の場合、180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16A,16Bのうち、吸入ポート22から遠い側に形成される吸入容積16Bは、図4(A)に示される吸入容積16Bおいて、歯先面側の段部15Cにより形成される容積部分B2が省略されたものと同等の構成とされることになる。
【0060】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図5を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1および第2実施形態に対し、180度の位相差で形成される2つの吸入容積(圧縮室)16(16A,16B)を形成する固定および旋回スクロール14,15の表面積うち、吸入ポート22から吸込まれる低温低圧の冷媒ガスの吸入領域21に面して配置される旋回スクロール15側の端板15Aの表面積を、固定スクロール14側の端板15の表面積よりも大きくしたものである点が異なる。その他の点については、第1および第2実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0061】
つまり、本実施形態では、いわゆる両側段付きスクール圧縮機1にあって、端板の反渦巻き状ラップ側の面が高温高圧のガスが吐出される吐出チャンパー20に面して配置される固定スクロール14に対して、低温低圧の吸入領域21に面して配置される旋回スクロール15の端板15Aに設けられる段部15Dの高さを、固定スクロール14側に設けられる段部14Dの高さよりも高くし、吸入容積(圧縮室)16を形成する旋回スクロール15側の表面積S1を大きくすることにより、吸入容積内の温度をより低温化して吸入効率を向上し、冷媒の吸入量を効果的に増大するようにしたものである。
【0062】
図5には、旋回スクロール15の端板15Aが一方の吸入容積(圧縮室)16を形成する際の表面積S1,S2がハッチングで示されている。(A)は、端板15Aに段部15Dを設けた場合のもの、(B)は、段部15Dを設けない場合のもので、これから、段部15Dを設けない場合の表面積S2に比べ、段部15Dを設けた場合の表面積S1の方が吸入容積16を形成する端板15A側の表面積を大きく(S1>S2)できること、両スクロール14,15の端板14A,15Aに段部14D,15Dを設けた場合、旋回スクロール15の端板15Aに設ける段部15Dの高さを固定スクロール14側の段部14Dの高さよりも高くした方が、吸入容積16を形成する端板15A側の表面積を大きくできることが解る。
【0063】
本実施形態は、上記の知見に基づいて、
(1)固定スクロール14および旋回スクロール15の渦巻き状ラップ14B,15Bの歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置に、各々段部14C,15Cおよび14D,15Dを設けて圧縮機構13を構成した、いわゆる両側段付きスクロール圧縮機1の場合は、吸入容積16を形成する旋回スクロール15側の端板15Aの表面積S1を、旋回スクロール15側の歯底面に設ける段部15Dの高さを固定スクロール14側の歯底面に設ける段部14Dの高さよりも高くすることによって大きくした構成としたものである。
【0064】
(2)また、固定スクロール14および旋回スクロール15の一方を渦巻き状ラップ14B,15Bの歯底面の渦巻き方向に沿う所定位置のみに段部14D,15Dを設け、他方を歯底面側の段部14D,15Dに対応した渦巻き状ラップ14B,15Bの歯先面の渦巻き方向に沿う位置のみに段部14C,15Cを設けて圧縮機構13を構成した、いわゆる片側段付きスクロール圧縮機1の場合は、吸入容積16を形成する旋回スクロール15側の端板15Bの表面積S1を、旋回スクロール15側の歯底面のみに段部15Dを設けることにより大きくした構成としたものである。
【0065】
以上に説明の構成としたことにより、上記(1)の場合は、いわゆる両側段付きスクロールにあって、2つの吸入容積16(16A,16B)を形成する両スクロール14,15の端板14A,15Aの表面積うち、低温の冷媒ガスが吸込まれる吸入領域21に面して配置される旋回スクロール15側の端板15Aの表面積S1を、その歯底面の段部15Dの高さを固定スクロール14側の段部14Dの高さよりも高くして大きくしたことによって、吸入容積16内の温度をより低温に維持して吸入効率を向上し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。
【0066】
従って、その分だけスクロール圧縮機1の体積効率および冷凍能力を、旋回スクロール15の端板15Aに設ける段部15Dの高さを高くして表面積S1を大きくするだけで簡易に大きくすることができる。しかも吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保することで、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機1の高性能化を両立することができる。
【0067】
また、上記(2)の場合は、いわゆる片側段付きスクロールにあって、2つの吸入容積16(16A,16B)を形成する両スクロール14,15の端板14A,15Aの表面積うち、低温の冷媒ガスが吸込まれる吸入領域21に面して配置される旋回スクロール15側の端板15Aの表面積S1を、その歯底面のみに段部15Dを設けて大きくしたことによって、吸入容積16内の温度をより低温度に維持して吸入効率を向上し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができる。
【0068】
これによって、その分だけスクロール圧縮機1の体積効率および冷凍能力を、旋回スクロール15の端板15A側のみに段部15Dを設けて表面積S1を大きくするだけで簡易に大きくすることができる。しかも吸入冷媒ガスによるメカ部の冷却・潤滑性を確保し、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機1の高性能化を両立することができる。
【0069】
斯くして、本実施形態の如く、2つの吸入容積(圧縮室)16を形成する両スクロール14,15の端板14A,15Aの表面積うち、低温低圧側の吸入領域21に面して配置される旋回スクロール15側の端板15Aの表面積S1を、固定スクロール14側の端板14Aの表面積よりも大きくすることにより、吸入容積16内の温度をより低温に維持して吸入効率を向上し、冷媒の吸入量を効果的に増大することができるため、その分だけスクロール圧縮機1の体積効率および冷凍能力を大きくすることができる。
【0070】
また、吸入ポート22から遠い側の吸入容積(圧縮室)16Bに吸入される低温の冷媒ガスで軸受部等のメカ部を冷却および潤滑することができるため、それら機器類の寿命確保と体積効率の向上による圧縮機1の高性能化を両立することができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、固定スクロール14の巻き終り端を上方部位に配置し、旋回スクロール15の巻き終り端を下方部位に配置したものについて説明したが、逆の場合であってもよく、この場合、各々の段部14C,15Cおよび14D,15Dの配置が逆になることはもちろんである。
【0072】
また、上記実施形態では、横型のスクロール圧縮機に適用した例について説明したが、縦型のスクロール圧縮機や密閉型のスクロール圧縮機等にも同様に適用できることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 スクロール圧縮機
14 固定スクロール
15 旋回スクロール
14A,15A 端板
14B,15B 渦巻き状ラップ
14C,15C 歯先面側の段部
14D,15D 歯底面側の段部
16,16A,16B 吸入容積(圧縮室)
21 吸入領域
22 吸入ポート
23 巻き数増加部分
A1,A2 ベース容積部分
B1,B2 歯先面側段部による容積部分
C1,C2 歯底面側段部による容積部分
L1,L2 段部の高さ
S1,S2 吸入容積を形成する表面積
図1
図2
図3
図4
図5