特許第6444802号(P6444802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444802
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】液体防腐剤組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/40 20060101AFI20181217BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20181217BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20181217BHJP
   A23L 3/3517 20060101ALI20181217BHJP
   A23L 3/349 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A01N37/40
   A01P3/00
   A01N25/02
   A61K8/37
   A61K8/34
   A61K8/86
   A61K47/14
   A61K47/10
   A61K47/34
   A23L3/3517
   A23L3/349
   A23L3/349 501
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-93006(P2015-93006)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-210697(P2016-210697A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】常松 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】小松 利豪
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103385241(CN,A)
【文献】 特表2012−504620(JP,A)
【文献】 特開2005−015401(JP,A)
【文献】 特開平7−216281(JP,A)
【文献】 特開2014−111575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/40
A01P 3/00
A23L 3/349
A23L 3/3517
A61K 8/34
A61K 8/37
A61K 8/86
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルおよび(B)水混和性有機溶剤を含有する液体防腐剤組成物であって、
(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルが、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラヒドロキシ安息香酸イソプロピル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル、パラヒドロキシ安息香酸イソブチルおよびパラヒドロキシ安息香酸ベンジルからなる群より選ばれる2種以上のエステルであり、
(B)水混和性有機溶剤が、(B−1)プロピレングリコール、ブチレングリコール、エタノールおよびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤と(B−2)2−フェノキシエタノールからなるものであり、
(A)と(B)の重量比が1:1〜1:3であり、且つ、(B−1)と(B−2)の重量比が1:1〜1:3である液体防腐剤組成物。
【請求項2】
液体防腐剤組成物全量に対する(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルの合計量が25〜50重量%であり、液体防腐剤組成物全量に対する(B)水混和性有機溶剤の合計量が50〜75重量%である請求項1に記載の液体防腐剤組成物。
【請求項3】
(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルが、パラヒドロキシ安息香酸メチルおよびパラヒドロキシ安息香酸エチルである請求項1または2に記載の液体防腐剤組成物。
【請求項4】
パラヒドロキシ安息香酸メチルとパラヒドロキシ安息香酸エチルの重量比が3:1〜1:3である請求項3に記載の液体防腐剤組成物。
【請求項5】
(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルが、パラヒドロキシ安息香酸プロピルおよびパラヒドロキシ安息香酸ブチルである請求項1または2に記載の液体防腐剤組成物。
【請求項6】
パラヒドロキシ安息香酸プロピルとパラヒドロキシ安息香酸ブチルの重量比が3:1〜1:3である請求項5に記載の液体防腐剤組成物。
【請求項7】
(B−1)の有機溶剤が、プロピレングリコールまたはブチレングリコールである請求項1〜6のいずれかに記載の液体防腐剤組成物。
【請求項8】
防腐対象が、化粧品、医薬品、食品、インク、金属加工油、接着剤、工業用水、塗料、保冷剤、防虫剤、芳香剤、消臭剤および不織布からなる群より選ばれるいずれかである請求項1〜7のいずれかに記載の液体防腐剤組成物。
【請求項9】
(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルを40〜80℃の温度において(B)水混和性有機溶剤に溶解させる工程を含む液体防腐剤組成物の製造方法であって、
(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルが、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラヒドロキシ安息香酸イソプロピル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル、パラヒドロキシ安息香酸イソブチルおよびパラヒドロキシ安息香酸ベンジルからなる群より選ばれる2種以上のエステルであり、
(B)水混和性有機溶剤が、(B−1)プロピレングリコール、ブチレングリコール、エタノールおよびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤と(B−2)2−フェノキシエタノールからなるものであり、
(A)と(B)の重量比が1:1〜1:3であり、且つ、(B−1)と(B−2)の重量比が1:1〜1:3である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラヒドロキシ安息香酸エステルを含有する液体防腐剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パラヒドロキシ安息香酸エステルは、抗菌力に優れる上、毒性が低く、低刺激であることから種々のエステル体が化粧品等に防腐剤として用いられている。しかしながら、パラヒドロキシ安息香酸エステルは水に対する溶解度が極めて低いため、添加量によっては、結晶が析出することがあった。したがって、パラヒドロキシ安息香酸エステルの防腐対象製品への添加に際しては、エタノール等のアルコール類を可溶化剤として用いた防腐剤組成物が汎用されている。
【0003】
しかしながら、可溶化剤を用いた防腐剤組成物であっても、低温保管時に結晶が析出することがあり、パラヒドロキシ安息香酸エステルを高濃度に含有させることができなかった。また、単一のパラヒドロキシ安息香酸エステルでは、十分な抗菌効果が得られない場合があり、抗菌効果を補うために複数のパラヒドロキシ安息香酸エステルが併用されることも多いが、このような防腐剤組成物では、低温保管時の結晶の析出がより顕著であり、取扱い難い製剤となっていた。
【0004】
上記のようなパラヒドロキシ安息香酸エステルの溶解性を改善するために、これまでにも種々の検討がなされている。
【0005】
特許文献1には、パラオキシ安息香酸エステル類の2種以上のものの共融混合物もしくは共融合物を主成分とすることを特徴とする防黴剤が記載されている。この防黴剤は、複数のパラオキシ安息香酸エステルを共融混合物もしくは共融合物とすることにより、水に対する溶解性が大幅に改善されるものの、再結晶化が起こりやすく、製剤を安定的に供給するためには乳化剤等を添加する必要があった。
【0006】
特許文献2には、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンと、パラヒドロキシ安息香酸の少なくとも1つのエステルとからなる相乗性組合せ抗微生物剤が記載されている。しかし、かかる抗微生物剤は価格が高価で、毒性や安全性データが不十分であった。
【0007】
特許文献3には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体含有水溶液からなるパラオキシ安息香酸類の溶解補助剤が記載されている。しかし、かかる共重合体を得るためには2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルを不活性ガスの雰囲気下でラジカル重合させる必要があるため、かかる溶解補助剤は製造がとても煩雑で、かつ価格が高価である。
【0008】
したがって、安価かつ安全で防腐効果に優れ、且つ、低温保管中のパラヒドロキシ安息香酸エステルの再結晶化が抑制された防腐剤組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭37−17994号公報
【特許文献2】特開平9−124414号公報
【特許文献3】特開2003−252799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、低温保管時における安定性が改善され、且つ、防腐性に優れた液体防腐剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のパラヒドロキシ安息香酸エステルと特定の有機溶剤を特定の比率で混合することにより、低温保管時におけるパラヒドロキシ安息香酸エステルの析出が防止されると共に、パラヒドロキシ安息香酸エステルを高濃度に含有する水溶液が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち本発明は、(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルおよび(B)水混和性有機溶剤を含有する液体防腐剤組成物であって、
(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルが、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラヒドロキシ安息香酸イソプロピル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル、パラヒドロキシ安息香酸イソブチルおよびパラヒドロキシ安息香酸ベンジルからなる群より選ばれる2種以上のエステルであり、
(B)水混和性有機溶剤が、(B−1)プロピレングリコール、ブチレングリコール、エタノールおよびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤と(B−2)2−フェノキシエタノールからなるものであり、
(A)と(B)の重量比が1:1〜1:3であり、且つ、(B−1)と(B−2)の重量比が1:1〜1:3である液体防腐剤組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルを40〜80℃の温度において(B)水混和性有機溶剤に溶解させる工程を含む液体防腐剤組成物の製造方法であって、
(A)パラヒドロキシ安息香酸エステルが、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラヒドロキシ安息香酸イソプロピル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル、パラヒドロキシ安息香酸イソブチルおよびパラヒドロキシ安息香酸ベンジルからなる群より選ばれる2種以上のエステルであり、
(B)水混和性有機溶剤が、(B−1)プロピレングリコール、ブチレングリコール、エタノールおよびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤と(B−2)2−フェノキシエタノールからなるものであり、
(A)と(B)の重量比が1:1〜1:3であり、且つ、(B−1)と(B−2)の重量比が1:1〜1:3である方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の液体防腐剤組成物に用いるパラヒドロキシ安息香酸エステルは、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラヒドロキシ安息香酸イソプロピル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル、パラヒドロキシ安息香酸イソブチルおよびパラヒドロキシ安息香酸ベンジルからなる群より選ばれる2種以上のエステルであればいずれの組み合わせでも良い。一つの態様において、パラヒドロキシ安息香酸エステルは、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピルおよびパラヒドロキシ安息香酸ブチルからなる群より選ばれる2種以上、好ましくは2種のエステルである。また、水への溶解性および防腐効果の点で、パラヒドロキシ安息香酸メチルとパラヒドロキシ安息香酸エチルの組み合わせ、パラヒドロキシ安息香酸プロピルとパラヒドロキシ安息香酸ブチルの組み合わせ、およびパラヒドロキシ安息香酸メチルとパラヒドロキシ安息香酸プロピルの組み合わせが好ましい。
【0015】
パラヒドロキシ安息香酸エステルの配合比は、選択するエステルの種類および数によって異なり得るが、例えば、パラヒドロキシ安息香酸メチルとパラヒドロキシ安息香酸エチルを選択した場合は、3:1〜1:3であるのが好ましく、2:1〜1:2であるのがより好ましく、1:0.7〜1:1.5であるのがさらに好ましい。
また、パラヒドロキシ安息香酸プロピルとパラヒドロキシ安息香酸ブチルを選択した場合は、重量比が3:1〜1:3であるのが好ましく、2:1〜1:2であるのがより好ましく、1:0.7〜1:1.5であるのがさらに好ましい。
パラヒドロキシ安息香酸メチルとパラヒドロキシ安息香酸プロピルを選択した場合は、重量比が3:1〜1:3であるのが好ましく、2:1〜1:2であるのがより好ましく、1:0.7〜1:1.5であるのがさらに好ましい。
【0016】
本発明の液体防腐剤組成物におけるパラヒドロキシ安息香酸エステルの割合は、低温保管時に析出が生じない量であれば特に制限はないが、液体防腐剤組成物全量に対するパラヒドロキシ安息香酸エステルの合計量が25〜50重量%であるのが好ましく、30〜45重量%であるのがより好ましく、33〜42重量%であるのがさらに好ましい。パラヒドロキシ安息香酸エステルの合計量が液体防腐剤組成物全量に対し25重量%未満である場合、防腐効果が不十分となる傾向があり、液体防腐剤組成物全量に対し50重量%を超える場合、低温保管時に析出が生じやすい傾向がある。
【0017】
また、本発明に用いる水混和性有機溶剤は、第一および第二の有機溶剤からなる混合溶剤である。第一の有機溶剤(B−1)は、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エタノールおよびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤であり、パラヒドロキシ安息香酸エステルの溶解性の点でプロピレングリコール(例えば1,2−プロパンジオールもしくは1,3−プロパンジオール)またはブチレングリコール(例えば1,3−ブタンジオールもしくは1,4−ブタンジオール)が好ましい。第二の有機溶剤(B−2)は、2−フェノキシエタノールである。
【0018】
水混和性有機溶剤における有機溶剤(B−1)と有機溶剤(B−2)の重量比は、1:1〜1:3であれば良い。有機溶剤(B−1)と有機溶剤(B−2)の重量比は、1:1.5〜1:2.5であるのが好ましく、1:1.8〜1:2.2であるのがより好ましい。有機溶剤(B−1)に対して有機溶剤(B−2)の重量が等倍量未満である場合は、低温時にパラヒドロキシ安息香酸エステルが析出する傾向があり、3倍量を超える場合は、パラヒドロキシ安息香酸エステルの水溶性が低くなる傾向がある。
【0019】
本発明の液体防腐剤組成物における水混和性有機溶剤の割合は、パラヒドロキシ安息香酸エステルを溶解可能な量であれば特に制限はないが、液体防腐剤組成物全量に対する水混和性有機溶剤の合計量が50〜75重量%であるのが好ましく、55〜70重量%であるのがより好ましく、58〜67重量%であるのがより好ましい。水混和性有機溶剤の合計量が液体防腐剤組成物全量に対し50重量%未満である場合、低温保管時にパラヒドロキシ安息香酸エステルの析出が生じやすい傾向があり、液体防腐剤組成物全量に対し75重量%を超える場合、防腐効果が不十分となる傾向がある。
【0020】
本発明の液体防腐剤組成物におけるパラヒドロキシ安息香酸エステルと水混和性有機溶剤の重量比は、1:1〜1:3であればよく、1:1.2〜1:2であることが好ましく、1:1.4〜1:1.8であることがより好ましい。パラヒドロキシ安息香酸エステルに対して水混和性有機溶剤の重量が等倍量未満である場合は、低温保管時にパラヒドロキシ安息香酸エステルの析出が生じやすい傾向があり、3倍量を超える場合は、防腐効果が不十分となる傾向がある。
【0021】
本発明の液体防腐剤組成物は、パラヒドロキシ安息香酸エステルと水混和性有機溶剤を1:1〜1:3の重量比で混合し、40〜80℃の温度においてパラヒドロキシ安息香酸エステルを溶解させることによって製造することができる。パラヒドロキシ安息香酸エステルを溶解させる際の温度は、45〜75℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。
【0022】
このようにして得られた液体防腐剤組成物は、室温にて冷却後、防腐を必要とする種々の対象物に用いることができる。防腐対象物への適用方法については、得られた液体防腐剤組成物を対象物へ直接添加してもよいし、あるいは必要に応じて該組成物を水溶液とした後に対象物へ添加してもよい。また、対象物への適用方法としては、添加、混合、塗布、浸漬等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
具体的な防腐対象物としては、化粧品、医薬品、食品、インク、金属加工油、接着剤、水、塗料、保冷剤、防虫剤、芳香剤、消臭剤、不織布等が例示される。
【0024】
液体防腐剤組成物は、防腐対象物の全重量に対するパラヒドロキシ安息香酸エステルの割合が0.01〜5重量%となるように該対象物に含有させることが好ましく、該割合が0.02〜1重量%となるように含有させることがより好ましく、該割合が0.05〜0.5重量%となるように含有させることがさらに好ましい。
【0025】
また、本発明の液体防腐剤組成物には、低温保管時の安定性および防腐性に影響を与えない範囲で、副成分を含有させてもよい。副成分としては、例えば、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤、香料等が例示される。これら副成分の割合は、組成物全量に対し0.01〜1重量%であるのが好ましい。
【0026】
以下、実施例により本発明を更に説明する。
【実施例】
【0027】
実施例1〜7および比較例1〜20
液体防腐剤組成物の製造
表1に示すパラヒドロキシ安息香酸エステル(A)を、同表に示す予め混合しておいた水混和性有機溶剤(B)に添加し、約60℃に加温しながら溶解させて液体防腐剤組成物を製造した。
【0028】
【表1-1】
【0029】
【表1-2】
【0030】
【表1-3】
【0031】
安定性試験
上記の通り製造された各液体防腐剤組成物5mLを50mL容のバイアル瓶に入れ、密栓した後、4℃の冷蔵庫内に保管し、7日間経過後の外観を観察した。
【0032】
本発明の液体防腐剤組成物(実施例1〜7)は、析出等が観察されず、安定していた。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
抗菌力試験1
上記安定性試験において、パラヒドロキシ安息香酸メチルを含有し、析出が生じず安定していた実施例1、3および4ならびに比較例3、6および17の各組成物について、日本化学療法学会標準法(微量液体希釈法)に準じ、最小発育阻止濃度(MIC)の測定を行った。
【0035】
各組成物を滅菌水で希釈し、該組成物濃度0.003〜0.4重量%の薬液を調製し、指定濃度の2倍濃度に調整したSCDブイヨン培地(日本製薬株式会社製)を薬液と同量添加し、撹拌後、マイクロタイタープレート(96ウェル)に170μL/ウェルずつ分注した。次に下記供試菌をSCD培地にて30℃で20時間培養した菌液を10cfu/mlとなるように生理食塩水で希釈した後、上記の通り作製した培地注入済みのマイクロタイタープレートに10μL/ウェルずつ接種した。これを30℃の恒温器内で48時間培養し、目視にて菌の生育の有無を確認し、MICを測定した。結果を表3に示す。

供試菌1:Escherichia coli NIHJ-JC2(大腸菌)
供試菌2:Staphylococcus aureus IFO13276(黄色ブドウ球菌)
供試菌3:Pseudomonas aeruginosa ATCC13736(緑膿菌)
供試菌4:Candida albicans FDA2138(酵母様真菌)
供試菌5:Aspergillus niger ATCC16404(黒麹カビ)
【0036】
【表3】
【0037】
抗菌力試験2
上記安定性試験において、パラヒドロキシ安息香酸ブチルを含有し、析出が生じず安定していた実施例2および5〜7、ならびに比較例8、10および19の各組成物について、抗菌力試験1と同様の方法、同様の供試菌にてMICを測定した。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
水に対する溶解性試験
上記安定性試験において、パラヒドロキシ安息香酸メチルを含有し、析出が生じず安定していた実施例1、3および4、ならびに比較例3、6および17の各組成物を用いて飽和水溶液100mLを調製し(パラヒドロキシ安息香酸エステルが析出した時点で飽和に達したものと判断した)、水溶液中のパラヒドロキシ安息香酸エステルの総量を比較した。また、パラヒドロキシ安息香酸ブチルを含有し、析出が生じず安定していた実施例2および5〜7、比較例8、10および19の各組成物についても同様に比較した。
【0040】
本発明の液体防腐剤組成物を用いた水溶液は、比較例の水溶液に比べ、パラヒドロキシ安息香酸エステルを高濃度に含有していた。結果を表5および6に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】