特許第6444810号(P6444810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6444810洋上風車の設置方法およびトランジションピース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444810
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】洋上風車の設置方法およびトランジションピース
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20181217BHJP
   B63B 39/02 20060101ALI20181217BHJP
   B63B 27/00 20060101ALI20181217BHJP
   B63B 35/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F03D13/25
   B63B39/02
   B63B27/00 D
   B63B35/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-114999(P2015-114999)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2017-2751(P2017-2751A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591043477
【氏名又は名称】寄神建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 栄治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 忍
(72)【発明者】
【氏名】林田 宏二
(72)【発明者】
【氏名】上田 昭郎
(72)【発明者】
【氏名】西原 直
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/118186(WO,A1)
【文献】 特開2012−112239(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0314750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/25
B63B 39/02
B63B 27/00
B63B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が閉鎖された筒状体である杭カバーと、
上端付近が閉鎖された筒状体であり、前記杭カバーより大径で、内周面に環状にチューブが設けられた案内杭と、
からなるトランジションピースを用い、
前記案内杭は、洋上風車の下端に接合されており、
前記杭カバーを杭の上端に被せて、前記杭と一体化する工程aと、
前記チューブと、前記案内杭の内部の空間のそれぞれに空気を導入しつつ、前記杭カバーの外周面に前記チューブを接触させた状態で前記案内杭を下降させて、前記案内杭を前記杭カバーに被せる工程bと、
前記杭カバーと前記案内杭とを一体化する工程cと、
を具備することを特徴とする洋上風車の設置方法。
【請求項2】
前記工程bで、前記案内杭の内周面に設けられた軸方向の凹凸部である挿入ガイドを、前記杭カバーの外周面に設けられた軸方向の凹凸部に嵌合させることを特徴とする請求項1記載の洋上風車の設置方法。
【請求項3】
前記工程cで、前記杭カバーの外周面に設けられた第1のフランジと、前記案内杭の下端部に設けられた第2のフランジとを締結具で締結して、前記杭カバーと前記案内杭とを一体化することを特徴とする請求項1または請求項2記載の洋上風車の設置方法。
【請求項4】
前記洋上風車が、水上に浮遊する作業台上に設置されたクレーンのブームに保持されたリーダー装置に設けられた第1のキーパー装置および第2のキーパー装置を用いて把持され、前記リーダー装置は、動揺吸収装置を介して前記ブームに線状材で吊り下げられ、
前記工程bで、前記動揺吸収装置を用いて前記作業台の動揺を吸収することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の洋上風車の設置方法。
【請求項5】
前記動揺吸収装置が油圧シリンダであることを特徴とする請求項4記載の洋上風車の設置方法。
【請求項6】
前記第2のキーパー装置が、2本の伸縮式のキャッチホークを介して前記クレーンに連結され、
前記工程bで、前記キャッチホークを用いて前記洋上風車の平面位置を補正することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の洋上風車の設置方法。
【請求項7】
上端が閉鎖された筒状体であり、杭の上端に被せられる杭カバーと、
上端付近が閉鎖された筒状体であり、前記杭カバーより大径で、内周面に環状にチューブが設けられ、洋上風車の下端に設置される案内杭と、
を具備し、
前記案内杭の内部および前記チューブには、空気を導入可能であり、
前記杭カバーの外周面に前記案内杭の前記チューブを接触させた状態で、前記チューブおよび前記案内杭の内部の空間のそれぞれに空気を導入しつつ前記案内杭を下降させて、前記案内杭を前記杭カバーに被せ、一体化することが可能であることを特徴とする洋上風車設置用のトランジションピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風車の設置方法およびトランジションピースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、洋上に風力発電用の風車を設置して、自然エネルギーを有効に利用する試みが注目されている。洋上に風車を設置する際、船体を固定する手段のないクレーン船等を使用して施工する場合には、通常、洋上風車の大きさに応じて定まる一般的な重量級よりも大型のクレーン船を選定することにより、波浪による揺れの影響を小さくする(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、自己昇降装置を有する船体を使用して施工する場合には、船体に設けられた保持手段で風車設備を保持した状態で船体を風車の基礎部に移動し、自己昇降装置により船体を固定した後、風車設備を吊り下げて杭に据付ける方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、作業船で洋上風車を運搬する際に吊り荷の揺れを低減する方法として、吊り荷をクレーンから吊るとともに、作業船の船体の左右方向を軸として回転可能な動揺防止枠桁で水平方向に支持する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
なお、洋上風車は、風車のタワーの下端部に接合されたトランジションピースに杭を挿入して、据え付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公報第4838885号
【特許文献2】特開2013−63767号公報
【特許文献3】特許公報第5306863号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
船体を固定する手段のないクレーン船等を使用する場合、波浪や風による揺れの影響で、洋上風車の下端に接合したトランジションピースと杭との位置合わせが困難であったり、トランジションピースと杭とが衝突して衝撃を受けたりするという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、洋上風車を杭に設置する際に、波浪や風で生じる揺れによる部材同士の衝突を防止し、衝撃を低減できる洋上風車の設置方法およびトランジションピースである。
【0008】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、上端が閉鎖された筒状体である杭カバーと、上端付近が閉鎖された筒状体であり、前記杭カバーより大径で、内周面に環状にチューブが設けられた案内杭と、からなるトランジションピースを用い、前記案内杭は、洋上風車の下端に接合されており、前記杭カバーを杭の上端に被せて、前記杭と一体化する工程aと、前記チューブと、前記案内杭の内部の空間のそれぞれに空気を導入しつつ、前記杭カバーの外周面に前記チューブを接触させた状態で前記案内杭を下降させて、前記案内杭を前記杭カバーに被せる工程bと、前記杭カバーと前記案内杭とを一体化する工程cと、を具備することを特徴とする洋上風車の設置方法である。
【0009】
第1の発明の洋上風車の設置方法では、チューブで杭カバーと案内杭との隙間を封じた状態で案内杭の内部の空間に空気を導入する。これにより、案内杭の部分がエアダンパーのような状態となり、洋上風車と杭との接合時に波浪や風で生じる揺れによる部材同士の衝突を防止し、衝撃を低減できる。
【0010】
前記工程bでは、例えば、前記案内杭の内周面に設けられた軸方向の凹凸部である挿入ガイドを、前記杭カバーの外周面に設けられた軸方向の凹凸部に嵌合させる。これにより、案内杭の位置決めが容易となる。
【0011】
前記工程cでは、前記杭カバーの外周面に設けられた第1のフランジと、前記案内杭の下端部に設けられた第2のフランジとを締結具で締結して、前記杭カバーと前記案内杭とを一体化することが望ましい。これにより、杭カバーと案内杭とを容易に一体化できる。
【0012】
前記洋上風車は、例えば、水上に浮遊する作業台上に設置されたクレーンのブームに保持されたリーダー装置に設けられた第1のキーパー装置および第2のキーパー装置を用いて把持され、前記リーダー装置は、動揺吸収装置を介して前記ブームに線状材で吊り下げられ、前記工程bで、前記動揺吸収装置を用いて前記作業台の動揺を吸収する。これにより、波浪や風による作業台の動揺を吸収し、部材同士の衝突を防止することができる。
【0013】
前記動揺吸収装置は、例えば油圧シリンダである。動揺吸収装置を油圧シリンダとすれば、安価な装置で作業台の動揺を吸収できる。
【0014】
また、前記第2のキーパー装置が、2本の伸縮式のキャッチホークを介して前記クレーンに連結され、前記工程bで、前記キャッチホークを用いて前記洋上風車の平面位置を補正する場合もある。これにより、洋上風車の下端に一体化された案内杭の平面位置を容易に調整できる。
【0015】
第2の発明は、杭カバーと筒状体であり、前記杭カバーより大径で、内周面に環状にチューブが設けられ、洋上風車の下端に設置される案内杭と、を具備し、前記案内杭の内部および前記チューブには、空気を導入可能であり、前記杭カバーの外周面に前記案内杭の前記チューブを接触させた状態で、前記チューブおよび前記案内杭の内部の空間のそれぞれに空気を導入しつつ前記案内杭を下降させて、前記案内杭を前記杭カバーに被せ、一体化することが可能であることを特徴とする洋上風車設置用のトランジションピースである。
【0016】
第2の発明のトランジションピースでは、チューブで杭カバーと案内杭との隙間を封じた状態で案内杭の内部の空間に空気が導入される。これにより、案内杭の部分がエアダンパーのような状態となり、風車設置時に波浪や風で生じる揺れによる部材同士の衝突を防止し、衝撃を低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洋上風車を杭に設置する際に、波浪や風で生じる揺れによる部材同士の衝突を防止し、衝撃を低減できる洋上風車の設置方法およびトランジションピースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】洋上風車21の浜出しを行う工程を示す図
図2図1に示す矢印C−Cによる断面図
図3】洋上風車21と杭27とを接合する工程を示す図
図4】トランジションピース23付近の拡大図
図5】杭カバー29と案内杭41の断面を示す図
図6】案内杭41を杭カバー29に被せる工程を示す図
図7】杭カバー29と案内杭41とを一体化する工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、洋上風車21の浜出しを行う工程を示す図である。図2は、図1に示す矢印C−Cによる断面図である。
【0020】
図1図2に示すように、台船1は水上25を浮遊する作業台であり、台船1上にはクレーン3が設けられる。クレーン3のブーム5の上端には、リーダー保持部7が設けられる。リーダー保持部7は、平面視がコの字型の部材であり、コの字の中にリーダー装置15が保持される。クレーン3のブーム5の下端付近には、2本のキャッチホーク9の一端が連結される。2本のキャッチホーク9は伸縮式であり、図1に示す矢印Aの方向にそれぞれ独立して伸縮する。また、キャッチホーク9は、図1に示す矢印Bの方向に回転可能である。
【0021】
2本のキャッチホーク9の他端は、リーダー装置15の下端部付近に設けられた第2のキーパー装置13に連結される。リーダー保持部7は、線状材であるワイヤ17を用いて、動揺吸収装置である油圧シリンダ19を介してキーパー装置13と連結される。リーダー保持部7は、図示しないワイヤ17の巻取り・巻出し装置を有する。
【0022】
リーダー装置15は、リーダー保持部7とキーパー装置13とを連結するワイヤ17を巻取り・巻出しすることにより、上下方向にスライド可能である。キーパー装置13の把持部13aは、図2の点線に示すように、開閉可能である。リーダー装置15は、上端付近にキーパー装置11を有する。キーパー装置11の把持部11aも、把持部13aと同様に開閉可能である。
【0023】
図1に示すように、洋上風車21の浜出しを行う際には、リーダー装置15に設けられた第1のキーパー装置11の把持部11aで、洋上風車21のタワーの上端部付近を把持する。また、リーダー装置15に設けられた第2のキーパー装置13の把持部13aで、洋上風車21の下端部に設けられたトランジションピース23を把持する。そして、図示しない巻取り・巻出し装置を用いてワイヤ17を巻取るとともに、キャッチホーク9を図1の矢印A、矢印Bに示す方向に適宜伸縮・回転させて、洋上風車21を所定の位置まで持ち上げる。そして、台船1を航行させ、洋上風車21およびトランジションピース23を杭27の上方まで運搬する。
【0024】
図3は、洋上風車21と杭27とを接合する工程を示す図である。図3(a)は、洋上風車21を側方から見た図、図3(b)は、洋上風車21を正面から見た図である。図3(a)に示すように、洋上風車21と杭27とを接合する際には、台船1の安定性を保つため、洋上風車21を台船1の側方に配置することが望ましい。
【0025】
図4は、トランジションピース23付近の拡大図、すなわち図3に示す範囲Dの拡大図である。図4では、キーパー装置13の図示を省略している。図5は、杭カバー29と案内杭41の断面を示す図である。図5(a)は、図4に示す矢印E−Eによる断面図、図5(b)は、図4に示す矢印F−Fによる断面図である。トランジションピース23は、図4図5に示す杭カバー29と案内杭41とからなる。
【0026】
図4に示すように、杭カバー29は、上端が閉鎖された筒状体であり、頂部が円錐形状である。杭カバー29は、杭27の上端に被せられる。杭カバー29の内周面31には、アングル材33が設けられる。杭カバー29に杭27を挿入する際には、杭カバー29の内周面31のアングル材33が杭27の上端に接することにより、杭カバー29の設置高さが決定される。
【0027】
杭カバー29の内周面31と杭27の外周面との間には、隙間35が設けられる。杭カバー29を杭27に挿入する際には、隙間35を用いて杭カバー29の設置角度の微調整を行って傾斜を補正する。その後、隙間35に図示しないグラウト材を充填することにより、杭27と杭カバー29とを一体化する。
【0028】
杭カバー29は、図4に示すように、外周面37に第1のフランジであるフランジ39が設けられる。また、図5(b)に示すように、外周面37に2条のガイド溝57が設けられる。ガイド溝57は、杭カバー29の軸方向に設けられた凹条である。
【0029】
図4に示すように、案内杭41は、上端付近が閉鎖された筒状体であり、洋上風車21のタワー55の下端に固定される。案内杭41は、杭カバー29より大径で、内周面43の下端付近に環状にエアチューブ45が設けられる。案内杭41は、エアチューブ45に空気を注入するためのエアチューブ用ホース51を有する。また、案内杭41の内部に空気を注入するための圧気用ホース53を有する。
【0030】
案内杭41は、図4に示すように、下端部に第2のフランジであるフランジ49が設けられる。また、図4および図5(a)に示すように、内周面43に2条の挿入ガイド47が設けられる。挿入ガイド47は、案内杭41の軸方向に設けられた凸条であり、杭カバー29のガイド溝57に対応する位置に設けられる。
【0031】
図6は、案内杭41を杭カバー29に被せる工程を示す図である。案内杭41を杭カバー29に被せる際には、図示しない巻取り・巻出し装置を用いて図3等に示すワイヤ17を巻出すとともに、キャッチホーク9を適宜回転・伸縮させて、洋上風車21を杭27の位置まで吊り下げる。そして、図6に示すように、案内杭41の内周面43に設けられた軸方向の挿入ガイド47を、杭カバー29の外周面37に設けられた軸方向のガイド溝57に嵌合させる。このとき、必要に応じて、2本のキャッチホーク9を適宜伸縮させて、案内杭41が接合された洋上風車21の平面位置を補正する。
【0032】
案内杭41を杭カバー29に被せる際には、エアチューブ用ホース51を用いて、エアチューブ45に空気を導入し、杭カバー29の外周面37に案内杭41のエアチューブ45を接触させる。そして、杭カバー29の外周面37と案内杭41の内周面43との隙間を封じた状態で、圧気用ホース53を用いて、案内杭41の内部の空間59に空気を導入しつつ、洋上風車21の重量によって案内杭41を杭カバー29に沿って滑らせて下降させて、案内杭41を杭カバー29に被せる。
【0033】
杭カバー29の外周面37に案内杭41のエアチューブ45を接触させた状態で案内杭41の内部の空間59に空気を導入することにより、空間59内の気圧が高まり、案内杭41の部分がエアダンパーのような状態となり、波浪や風で生じる揺れによる杭カバー29と案内杭41との衝突を防止できる。
【0034】
洋上風車21を杭カバー29の上方に吊り降ろす際や、案内杭41を杭カバー29に被せる際には、センサ等で台船1の動揺を検知し、図3等に示すワイヤ17に設けられた油圧シリンダ19を伸縮させて、波浪や風による台船1の動揺を吸収し、部材同士の衝突を防止する。案内杭41を杭カバー29に被せた後は、必要に応じて、把持部11a、把持部13aを洋上風車21から取り外し、台船1を退避させる。
【0035】
図7は、杭カバー29と案内杭41とを一体化する工程を示す図である。案内杭41を杭カバー29に被せた後、図7に示すように、杭カバー29の外周面37に設けられたフランジ39と、案内杭41の下端部に設けられたフランジ49とを締結具61で締結する。締結具61は、例えば、ボルトおよびナットである。その後、杭カバー29の外周面37と案内杭41の内周面43との間の隙間に図示しないグラウト材を注入し、杭カバー29と案内杭41とを一体化する。
【0036】
このように、本実施の形態では、トランジションピース23を杭カバー29と案内杭41とで構成し、案内杭41の内周面43に環状に設けたエアチューブ45と、案内杭41の内部の空間59のそれぞれに空気を導入しつつ、杭27の上端と一体化した杭カバー29の外周面37にエアチューブ45を接触させた状態で案内杭41を下降させて、案内杭41を杭カバー29に被せる。これにより、案内杭41の部分がエアダンパーのような状態となり、洋上風車21と杭27との接合時に、波浪や風で生じる揺れによる案内杭41と杭カバー29との衝突を防止し、衝撃を低減できる。
【0037】
案内杭41を杭カバー29に被せる際、案内杭41の内周面43に設けられた軸方向の挿入ガイド47を、杭カバー29の外周面37に設けられた軸方向ガイド溝57に嵌合させれば、案内杭41の位置決めが容易となる。
また、杭カバー29の外周面37に設けられたフランジ39と、案内杭41の下端部に設けられたフランジ49とを締結具61で締結すれば、杭カバー29と案内杭41とを容易に一体化できる。
【0038】
さらに、水上25に浮遊する台船1に設置されたクレーン3を用いて洋上風車21を運搬、設置する際に、洋上風車21の把持に用いるリーダー装置15を、動揺吸収装置である油圧シリンダ19を介してクレーン3のブーム5にワイヤ17で吊り下げることにより、油圧シリンダ19を用いて波浪や風による台船1の動揺を吸収することができる。動揺吸収装置を油圧シリンダ19とすれば、安価な装置で台船の動揺を吸収できる。
【0039】
洋上風車21を把持するキーパー装置13が、2本の伸縮式のキャッチホーク9を介してクレーン3に連結されれば、案内杭41を杭カバー29に被せる際に、キャッチホーク9を用いて洋上風車21の平面位置を容易に補正できる。
【0040】
なお、本実施の形態では、杭カバー29にガイド溝57を、案内杭41に挿入ガイド47を設けたが、ガイドとして杭カバー29に凸条を、案内杭41に凹条を設けてもよい。杭カバー29と案内杭41に設ける凹凸部の数は、2ヶ所に限らない。また、動揺吸収装置は油圧シリンダ19に限らず、設置場所もワイヤ17部分に限らない。クレーン3に動揺吸収装置を設けてもよい。
【0041】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0042】
1………台船
3………クレーン
5………ブーム
7………リーダー保持部
9………キャッチホーク
11、13………キーパー装置
11a、13a………把持部
15………リーダー装置
17………ワイヤ
19………油圧シリンダ
21………洋上風車
23………トランジションピース
27………杭
29………杭カバー
31、43………内周面
35………隙間
37………外周面
39、49………フランジ
41………案内杭
45………エアチューブ
47………挿入ガイド
51………エアチューブ用ホース
53………圧気用ホース
57………ガイド溝
59………空間
61………締結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7