特許第6444811号(P6444811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧
特許6444811物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法
<>
  • 特許6444811-物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法 図000002
  • 特許6444811-物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444811
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20181217BHJP
   G06F 19/00 20180101ALI20181217BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20181217BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20181217BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   G06F19/00 110
   G06Q50/04
   B22D11/16 Z
   B65G61/00 320
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-115574(P2015-115574)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-4149(P2017-4149A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】梅田 豊裕
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 敏治
(72)【発明者】
【氏名】福島 高司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 宏明
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−280730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B22D 11/16
B65G 61/00
G06F 19/00
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して所定の処理を行う複数の処理設備を有し且つ前記複数の処理設備が1つの経路で連続的に繋がっている製造ラインにおいて、前記ワークの搬送状況をコンピュータ上でシミュレーションすることにより、前記ワークが滞留する根本的な原因を分析する方法であって、
前記処理設備に対する処理条件と設備条件との少なくとも1つを付与した上で、通常操業状態での前記製造ラインのシミュレーションを行った際に、前記製造ライン上にワークの滞留が発生した場合、
前記ワークの滞留の「根本原因」となる前記処理設備又は前記処理設備の状態を、前記コンピュータが分析するものであって、
前記ワークの滞留の「根本原因」を分析するに際しては、
第1の工程として、前記シミュレーションにおいて、前記製造ラインを複数のゾーンに区分けした上で、以下の(1−1)〜(1−3)の処理を行うことで、前記ワークに対してステイタスを設定し、
第2の工程として、前記ワークに対して設定された(1−1)〜(1−3)のステイタスを基に、以下の(2−1)〜(2−3)の処理を行うことで、前記ワークの滞留の「根本原因」を決定する
ことを特徴とする物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法。
(1−1)前記製造ラインにおいて、一のゾーンと前記一のゾーンの下流側1つ先のゾーンとにそれぞれワークが存在していて、前記一のゾーンに存在するワークを前記下流側1つ先のゾーンに進めることができない場合、前記一のゾーンに存在するワークに「滞留中(先行材あり)」というステイタスを設定する。
(1−2)前記製造ラインにおいて、一のゾーンの下流側1つ先のゾーンが処理設備とされ、且つ前記処理設備が所定の処理を行っていて、一のゾーンに存在するワークを前記処理設備に進めることができない場合、一のゾーンに存在するワークに「滞留中(作業待ち)」というステイタスを設定する。
(1−3)前記ゾーン又は処理設備に位置するワークに対して所定の処理が行われている場合、当該ゾーン又は処理設備に存在するワークに「処理中」というステイタスを設定する。
(2−1)前記一のゾーンに存在するワークのステイタスが「滞留中(先行材あり)」である場合、前記一のゾーンの下流側のゾーンに向かって順次探索を行い、「滞留中(先行材あり)」以外のステイタスになっているワークが存在するゾーンを検出し、前記検出されたゾーンに存在するワークのステイタスが「滞留中(作業待ち)」の場合には、前記一のゾーンに存在するワークの滞留の根本原因を「滞留中(作業待ち)」とする。
(2−2)前記一のゾーンに存在するワークのステイタスが「滞留中(先行材あり)」である場合、前記一のゾーンの下流側のゾーンに向かって順次探索を行い、「滞留中(先行材あり)」以外のステイタスになっているワークが存在するゾーンを検出し、前記検出されたゾーンに存在するワークのステイタスが「処理中」の場合には、前記一のゾーンに存在するワークの滞留の根本原因を「処理中」とする。
(2−3)前記一のゾーンに存在するワークのステイタスが「滞留中(作業待ち)」である場合には、前記一のゾーンに存在するワークの滞留の根本原因を「滞留中(作業待ち)」とする。
【請求項2】
前記分析された「根本原因」に起因する、各ワークの滞留時間、及び前記処理設備でのワークの滞留数量を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法。
【請求項3】
前記ワークの滞留の「根本原因」、前記「根本原因」に起因する各ワークの滞留時間、前記「根本原因」に起因する処理設備でのワークの滞留数量の少なくとも1つ以上を、前記製造ラインのオペレータが目視可能な表示モニタに表示する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造ラインにおけるワークの滞留の根本原因を、物流シミュレーションを用いて分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄所内においては、連続鋳造機を用いて様々なユーザ向けの鋳片(ワーク)を製造している。この連続鋳造機で連続的に鋳造された鋳片に対しては、下工程において、冷却処理やクロップ切断など様々な処理が行われ、その後圧延工程にて圧延されて製品となり、ユーザ向けに出荷される。
このように、鋳片を幾つかの処理工程を経て、製品として納期内に出荷するためには、鋳造〜処理工程間の物流を含めた製造ラインの最適な設備設計や工程管理が重要である。このような製造ラインの最適な設計や既存の製造ラインの効率的な操業のために、製造ラインにおける鋳片の物流を分析し検討することが必要である。
【0003】
そこで、製造ラインにおけるワークの流れを、物流シミュレーションを用いてシミュレーションする物流シミュレーション方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、熱間圧延工場の各工程について、製造条件等から処理開始・終了時刻をシミュレートする熱間圧延工場の物流シミュレーション装置が開示されている。まず、ミルペーシン部で各圧延装置(粗圧延機、仕上圧延機、コイラ、その他)の処理時間を計算し、加熱炉燃焼制御部でスラブの装入・抽出の温度と時刻、加熱炉の温度等操業条件を計算する。そして、これらの計算結果に基づき、事象駆動型シミュレータでシミュレーションし、稼働率、置き場の滞留状況を出力するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−312206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製造される鋳片(ワーク)が搬送途中で、前を流れる別のワークを追い越すことができない製造ライン、すなわち、連続鋳造機に代表されるような、各工程が1つの経路で連続的に繋がり、製造されるワークが順に搬送される製造ラインにおいては、製造ライン上に複数の異なる処理工程が存在するため、ラインの途中でワークの滞留が発生することがある。あるワークの滞留は、そのワークの遅延を発生するだけでなく、それに続く複数のワークの滞留を招くこととなる。
【0006】
特に、過度なワークの滞留発生は、製造ライン全体の生産性を低下させることになる。そのため、滞留ができるだけ発生しないように、製造ラインの新設時や設計変更時には、ワークの流れ方を分析して検討する必要がある。
そのワークの流れ方を分析し検討する際には、例えば、特許文献1の技術を用いて、ワークの滞留発生状況をシミュレーションすることが考えられる。
【0007】
特許文献1は、処理開始時間と処理終了時間の物流シミュレーションを行って、稼働率及び置き場での滞留状況の情報を出力することのできる技術である。この特許文献1の技術を用いた場合、製造ラインを流れる「どのワーク」が滞留しているかを知ることができるかもしれない。ワーク自体の滞留状況がわかれば、ワークの滞留時間をカウントしたり、滞留状況を表示モニタの画面上に色づけして表示することは当業者であれば可能である。
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、ワークの滞留を発生させている根本的な原因、例えば、滞留発生の原因となる場所(処理工程)を探ることは不可能である。ワーク自体の滞留情報から、その滞留の根本原因となる場所(処理工程)を分析するためには、熟練オペレータがワーク自体の滞留状況をガントチャートに展開するなどして、物流工程全体を精査する必要があり多大な時間が必要とされる。また、オペレータの経験度合いによっては、ワークの根本滞留原因を正しく分析することができないこともあった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点を鑑み、連続的に複数の処理工程を有する製造ラインにおけるワークの滞留の根本原因を、物流シミュレーションにて短時間で且つ正しく分析することができる物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法は、ワークに対して所定の処理を行う複数の処理設備を有し且つ前記複数の処理設備が1つの経路で連続的に繋がっている製造ラインにおいて、前記ワークの搬送状況をコンピュータ上でシミュレーションすることにより、前記ワークが滞留する根本的な原因を分析する方法であって、前記処理設備に対する処理条件と設備条件との少なくとも1つを付与した上で、通常操業状態での前記製造ラインのシミュレーションを行った際に、前記製造ライン上にワークの滞留が発生した場合、前記ワークの滞留の「根本原因」となる前記処理設備又は前記処理設備の状態を、前記コンピュータが分析するものであって、前記ワークの滞留の「根本原因」を分析するに際しては、第1の工程として、前記シミュレーションにおいて、前記製造ラインを複数のゾーンに区分けした上で、以下の(1−1)〜(1−3)の処理を行うことで、前記ワークに対してステイタスを設定し、第2の工程として、前記ワークに対して設定された(1−1)〜(1−3)のステイタスを基に、以下の(2−1)〜(2−3)の処理を行うことで、前記ワークの滞留の「根本原因」を決定することを特徴とする。
(1−1)前記製造ラインにおいて、一のゾーンと前記一のゾーンの下流側1つ先のゾーンとにそれぞれワークが存在していて、前記一のゾーンに存在するワークを前記下流側1つ先のゾーンに進めることができない場合、前記一のゾーンに存在するワークに「滞留中(先行材あり)」というステイタスを設定する。
(1−2)前記製造ラインにおいて、一のゾーンの下流側1つ先のゾーンが処理設備とされ、且つ前記処理設備が所定の処理を行っていて、一のゾーンに存在するワークを前記処理設備に進めることができない場合、一のゾーンに存在するワークに「滞留中(作業待ち)」というステイタスを設定する。
(1−3)前記ゾーン又は処理設備に位置するワークに対して所定の処理が行われている場合、当該ゾーン又は処理設備に存在するワークに「処理中」というステイタスを設定する。
(2−1)前記一のゾーンに存在するワークのステイタスが「滞留中(先行材あり)」である場合、前記一のゾーンの下流側のゾーンに向かって順次探索を行い、「滞留中(先行材あり)」以外のステイタスになっているワークが存在するゾーンを検出し、前記検出されたゾーンに存在するワークのステイタスが「滞留中(作業待ち)」の場合には、前記一のゾーンに存在するワークの滞留の根本原因を「滞留中(作業待ち)」とする。
(2−2)前記一のゾーンに存在するワークのステイタスが「滞留中(先行材あり)」である場合、前記一のゾーンの下流側のゾーンに向かって順次探索を行い、「滞留中(先行材あり)」以外のステイタスになっているワークが存在するゾーンを検出し、前記検出されたゾーンに存在するワークのステイタスが「処理中」の場合には、前記一のゾーンに存在するワークの滞留の根本原因を「処理中」とする。
(2−3)前記一のゾーンに存在するワークのステイタスが「滞留中(作業待ち)」である場合には、前記一のゾーンに存在するワークの滞留の根本原因を「滞留中(作業待ち)」とする。
【0011】
好ましくは、前記分析された「根本原因」に起因する、各ワークの滞留時間、及び前記処理設備でのワークの滞留数量を算出するとよい。
【0015】
ましくは、前記ワークの滞留の「根本原因」、前記「根本原因」に起因する各ワークの滞留時間、前記「根本原因」に起因する処理設備でのワークの滞留数量の少なくとも1つ以上を、前記製造ラインのオペレータが目視可能な表示モニタに表示するとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、連続的に複数の処理工程を有する製造工場の物流ラインにおけるワークの滞留の根本原因を、物流シミュレーションを用いて短時間で且つ正しく分析することで、その分析結果を様々な製品を製造する製造工場の設計に反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】連続鋳造設備における鋳片の物流の概略を示す図である。
図2】本発明にかかる物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因を分析する方法を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる物流シミュレーションを用いたワークの滞留の根本原因分析方法(以下、単にワーク13の滞留の根本原因分析方法と呼ぶこともある。)の実施の形態を、図を基に説明する。
本発明のワーク13の滞留の根本原因分析方法は、様々なワーク13を処理する複数の処理工程を有すると共に、各ワーク13が順番に処理工程に導入され処理されてゆく製造ライン2(シーケンシャル処理を行うライン)に適用可能なものであり、製造ライン2内において様々な製品を製造・搬送するに際し、その物流過程に伴う製品の搬送作業を円滑に行うために、通常操業において発生するワーク13の滞留原因を物流シミュレーションを用いて短時間に且つ正しく分析・検討して、その製造ライン2の設計(処理設備3の新設、既存の処理設備3の設備的変更、処理条件の変更、及び物流の変更など)に反映するものである。
【0019】
なお、本発明のワーク13の滞留の根本原因分析方法の適用対象は、例えば様々な鋳片13を連続的に製造する連続鋳造設備1や、鋳片13を所定の形状及び寸法に圧延する圧延設備などの製鉄所内の各種製造ラインが考えられる。
以下、本実施形態におけるワーク13の滞留の根本原因分析方法について、説明する。適用される製造ライン2としては、製鉄所内における連続鋳造設備1、すなわち連続鋳造機4及びその下流側に配設された付帯処理設備(下流側付帯処理設備)を例に挙げる。
【0020】
図1は、連続鋳造設備1における鋳片13の物流の概略を示す図である。この図に示すように、下流側付帯処理設備としては、連続鋳造機4で鋳造された鋳片13を第1段階の所定の温度域になるまで冷却する第1冷却帯5と、冷却された鋳片13のうち、クロップ(鋳片13同士の接続部分で成分が規定値を満たさず廃棄せざるを得ない部分、すなわち前チャージと後チャージとの接続部分)を有する鋳片13をピックアップして、そのクロップ部分を切断するクロップ切断装置6と、クロップ部分が切断された鋳片13及びクロップ切断装置6を通過した鋳片13を第2段階の所定温度域になるまで冷却する第2冷却帯7と、第2冷却帯7にて冷却された鋳片13をパレット9に積載して下工程(例えば、保管設備など)に搬送するパレットエリア8とを有する。
【0021】
連続鋳造機4は、例えば、垂直曲げ型のブルーム連続鋳造機であり、溶鋼を一時的に蓄え鋳型へ注入するタンディッシュと、鋳造する鋳型と、鋳型から出たブルーム等の鋳片13を支えつつ下流側へ移送する複数のサポートロールを有している。この連続鋳造機4の鋳型で鋳造された鋳片13は、下流側に備えられたガス切断機により所定長さの鋳片13に切断される。
【0022】
そして、切断された鋳片13は、下流側に配備された付帯処理設備の1つである第1冷却帯5に搬送される。
第1冷却帯5では、鋳片13の鋼種に応じて適切な冷却条件が設定されており、その適切な冷却条件によって鋳片13が均一に冷却される。
冷却された鋳片13は、第1冷却帯5の下流側に位置するクロップ切断装置6に搬送される。
【0023】
クロップ切断装置6では、冷却された鋳片13のうち、クロップを有する鋳片13をピックアップして、そのクロップ部分をガス切断機などにより切断する。このとき、クロップ切断装置6では、予め編成されている生産スケジュールに格納されている鋼種ごとの鋳片13のデータ、例えば、前後のチャージ、連々パターン、クロップ量などに基づいて、クロップ部分を切断している。
【0024】
クロップが切断された鋳片13は、クロップ切断装置6の下流側に位置する第2冷却帯7へと搬送される。一方で、クロップを有さない鋳片13は、クロップ切断装置6を通過して第2冷却帯7へと搬送される。
第2冷却帯7では、搬送された鋳片13をその鋼種に応じて事前に設定された第2の温度域まで第1冷却帯とは異なる冷却条件で冷却する。このように複数の処理工程を経た鋳片13は、パレットエリア8に搬送される。
【0025】
パレットエリア8では、複数の処理工程を経た鋳片13がパレット9に積載されて、保管設備(ヤード)に搬送される。保管設備に搬送された鋳片13は、後処理工程(圧延工程)に搬送される順番(鋳片13の処理の順番)が来るまで、一時的にストックされる。
このように、本実施形態に用いられる連続鋳造設備1は、連続鋳造機4→第1冷却帯5→クロップ切断装置6→第2冷却帯7→パレットエリア8の順に連続的に搬送しつつ生産を進め、ユーザごとに異なる鋳片13を製造してゆくものである。
【0026】
さて、上記した連続鋳造設備1で鋳片13を連続的に製造するにあたって、鋳片13は生産スケジュールに沿って製造されているが、通常操業状態の連続鋳造設備1において、鋳片13(ワーク13)の滞留が発生することがある。
連続鋳造設備1内にて鋳片13の滞留が発生してしまうと、その滞留箇所を起点に上工程から流れてくる鋳片13が大量に堰き止められるようになり、過度の滞留を生じさせてしまう虞がある。それ故、鋳片13の生産を停滞させる、すなわち鋳片13の生産効率を低下させてしまう。
【0027】
そこで、本実施形態においては、通常操業状態の連続鋳造設備1において発生する鋳片13の滞留の根本原因を、以下に説明する物流シミュレーションを用いて正しく分析するようにしている。
以下、本実施形態の鋳片13(ワーク13)の滞留の根本原因分析方法を、図を基に説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態の鋳片13の滞留の根本原因分析方法は、鋳片13に対して所定の処理を行う複数の処理設備3を有し且つ複数の処理設備3が1つの経路で連続的に繋がっている製造ライン2において、鋳片13の搬送状況をシミュレーションすることにより、鋳片13が滞留する根本的な原因を分析する方法であって、処理設備3に対する処理条件と設備条件との少なくとも1つを付与した上で、通常操業状態での製造ライン2のシミュレーションを行った際に、製造ライン2上に鋳片13の滞留が発生した場合、鋳片13の滞留の「根本原因」となる処理設備3又は処理設備3の状態を探索するものである。
【0029】
そして、物流過程に伴う製品の搬送作業を円滑に行うために、その物流シミュレーションの結果に基づいて、連続鋳造設備1の設計(処理設備3の新設、処理条件・設備的条件の変更、物流ラインの搬送条件の変更など)することが可能である。
好ましくは、本実施形態の滞留の根本原因分析方法においては、探索された「根本原因」に起因する、各鋳片13の滞留時間、及び処理設備3での鋳片13の滞留数量を算出するとよい。
【0030】
図2に示すように、本実施形態で用いられる物流シミュレーションは、コンピュータ10上で実行されるプログラムの形で実現されている。
このプログラム(物流シミュレーションプログラム)においては、製造ライン2が仮想的に構築されており、連続鋳造機4、第1冷却帯5、クロップ切断装置6、第2冷却帯7、パレットエリア8の処理設備3が設定されている。コンピュータ10上に仮想的に構築された処理設備3においては、鋳片13に対する各種処理が実施される時間などがシミュレートされるようになっている。加えて、各処理設備3を繋ぐ搬送ラインが設けられており、この搬送ラインは複数のゾーン(例えば、ゾーンa〜ゾーンj)に区分けされ、各ゾーンに対する鋳片13の通過時刻などがシミュレートされる。なお、処理設備3も1つのゾーンとして設定される。
【0031】
加えて、物流シミュレーションプログラムにおいては、各ゾーンに存在する鋳片13に対して、上記したシミュレーション結果に応じて、ステイタス(滞留状態を表すステイタス)が紐付けられるものとなっている。このステイタスをもとに、連続鋳造設備1で、鋳片13の滞留が発生したとされた場合、当該鋳片13の滞留発生の根本原因となっている処理設備3(場所)、若しくはその処理設備3の状態を分析するようにしている。
【0032】
本発明の鋳片13の滞留の根本原因分析方法においては、以下のようにシミュレーションを行う。
まず、鋳片13の滞留の「根本原因」を探索するに際しては、第1の工程として、シミュレーションにおいて、製造ライン2を複数のゾーンに区分けした上で、以下の(1−1)〜(1−3)の処理を行うことで、鋳片13に対してステイタスを設定する。
【0033】
(1−1)製造ライン2において、一のゾーンと一のゾーンの下流側1つ先のゾーンとにそれぞれ鋳片13が存在していて、一のゾーンに存在する鋳片13を下流側1つ先のゾーンに進めることができない場合、一のゾーンに存在する鋳片13に「滞留中(先行材あり)」というステイタスを設定する。
例えば、図1、2に示すように、連続鋳造機4(ゾーンa)から搬出され且つゾーンcに移送された鋳片(N)13が、本来であればゾーンdへ移送可能にも拘わらず、ゾーンdに鋳片(N+1)13が存在したままであって進むことができない場合、鋳片(N)13に「滞留中(先行材あり)」というステイタスを設定する。
【0034】
(1−2)製造ライン2において、一のゾーンの下流側1つ先のゾーンが処理設備3とされ、且つ処理設備3が所定の処理を行っていて、一のゾーンに存在する鋳片13を処理設備3に進めることができない場合、一のゾーンに存在する鋳片13に「滞留中(作業待ち)」というステイタスを設定する。
具体的には、処理設備3が第1冷却帯で冷却を行っている場合は「滞留中(第1冷却待ち)」と設定され、処理設備3が第2冷却帯で処理を行っている場合は「滞留中(第2冷却待ち)」と設定され、処理設備3がクロップ切断処理を行っている場合は「滞留中(クロップ切断作業待ち)」と設定される。なお、「作業待ち」というステイタスに関しては、「滞留中(パレット待ち)」、設備がある処理を行うための段取りを行っている「滞留中(段取り待ち)」、設備に対する修理が行われている「滞留中(修理待ち)」などもある。
【0035】
例えば、図1、2において、ゾーンfに存在する鋳片(N−3)13に着目した場合、ゾーンg(クロップ切断装置6)へ移動可能であるものの、ゾーンgでは鋳片(N−4)13に対するクロップ切断処理が実施中であり、ゾーンfに存在する鋳片(N−3)13はゾーンgへと進むことができず待ちの状態となっている。この場合、鋳片(Nー3)13に「滞留中(クロップ切断作業待ち)」というステイタスを設定する。
【0036】
(1−3)ゾーン又は処理設備3に位置する鋳片13に対して所定の処理が行われている場合、当該ゾーン又は処理設備3に存在する鋳片13に「処理中」というステイタスを設定する。
具体的には、第1冷却帯で処理が行われている場合は「処理中(第1冷却帯作業中)」と設定され、第2冷却帯で処理が行われている場合は「処理中(第2冷却帯作業中)」と設定され、クロップ切断処理が行われている場合は「処理中(クロップ切断作業中)」と設定される。なお、「処理中」というステイタスに関しては、ゾーン間を搬送中の鋳片13に対しても、「搬送中」というステイタスが設定される。
【0037】
例えば、図1、2において、鋳片(N−4)13は、クロップ切断装置6においてクロップ切断処理が行われている。その場合、鋳片(N−4)13に「処理中(クロップ切断作業中)」というステイタスを設定する。
以上のように、本発明の鋳片(ワーク)13の滞留の根本原因分析方法においては、まず、物流シミュレーションにおいて、処理設備3の条件の変更(例えば、ある処理設備3を使用するか否か、使用する場合、処理設備3の処理条件の設定)を行ったり、鋳片13の搬送速度の変更などを行い、鋳片13の搬送状況や、滞留状況などをシミュレートする。
【0038】
また、物流シミュレーションにおいて、ゾーン間を搬送中の鋳片13すべてに対して「ステイタス」を設定する。その上で、以下のロジックにより、鋳片13の滞留の根本原因となっている場所やその場所での状況(根本滞留原因)を推定する。
具体的には、物流シミュレーションプログラムにおいて、連続鋳造機4、第1冷却帯5、クロップ切断装置6、第2冷却帯7、パレットエリア8などの処理設備3において、鋳片13に対する処理が実施される時間などがシミュレートされる。また、鋳片13が各処理設備3間(製造ライン2)を搬送される状況、例えば、各ゾーンに対する鋳片13の通過時刻などがシミュレートされる。
【0039】
このようなシミュレーションの過程において、あるゾーンで鋳片13が滞留状態となったとき、その鋳片13の根本滞留原因を以下のようにして推定する。
具体的には、根本滞留原因を推定する第2の工程として、鋳片13に対して設定された(1−1)〜(1−3)のステイタスを基に、以下の(2−1)〜(2−3)の処理を行うことで、鋳片13の滞留の「根本原因」を決定する。
【0040】
(2−1)一のゾーンに存在する鋳片13のステイタスが「滞留中(先行材あり)」である場合、一のゾーンの下流側のゾーンに向かって順次探索を行い、「滞留中(先行材あり)」以外のステイタスになっている鋳片13が存在するゾーンを検出し、検出されたゾーンに存在する鋳片13のステイタスが「滞留中(作業待ち)」の場合には、一のゾーンに存在する鋳片13の滞留の根本原因を「滞留中(作業待ち)」とする。
【0041】
例えば、ある鋳片13(例えば、ゾーンcにある鋳片(N)13)が予定の時刻になったとしても下流側のゾーン(ゾーンdの第1冷却帯5)に搬送されず、滞留状態であると判定されたとする。図1、2から明らかなように、この場合、鋳片(N)13のステイタスが「滞留中(先行材あり)」となる。
その際に、鋳片(N)13が位置するゾーンの下流側を参照し、1つ先に位置する鋳片13(先行する鋳片(N−1)13)のステイタスを参照する。この鋳片(N−1)13のステイタスが「滞留中(先行材あり)」の場合、さらに1つ先の鋳片13(鋳片(N−2)13)のステイタスを参照する。
【0042】
このように先行する鋳片13(鋳片13(N−1)、鋳片(N−2)13、鋳片(N−3)13・・・)の探索を行い、先行する鋳片13のステイタスが「滞留中(作業待ち)」となった場合、探索スタートとなった鋳片13(鋳片(N)13)の根本滞留原因を「滞留中(作業待ち)」とする。
図2に示すように、例えば、鋳片(N−1)13、鋳片(N−2)13のステイタスが「滞留中(先行材あり)」であって、鋳片(N−3)13のステイタスが「滞留中(クロップ切断作業待ち)」の場合、鋳片(N)13の根本滞留原因は、クロップ処理装置における作業が立て込んでいて、鋳片(N)13の作業待ちが発生していると推定する。
【0043】
(2−2)一のゾーンに存在する鋳片13のステイタスが「滞留中(先行材あり)」である場合、一のゾーンの下流側のゾーンに向かって順次探索を行い、「滞留中(先行材あり)」以外のステイタスになっている鋳片13が存在するゾーンを検出し、検出されたゾーンに存在する鋳片13のステイタスが「処理中」の場合には、一のゾーンに存在する鋳片13の滞留の根本原因を「処理中」とする。
【0044】
例えば、ある鋳片13(例えば、ゾーンhの鋳片(Nー5)13)が滞留状態であると判定されたとする。その際に、上記と同じように下流側のゾーン(ゾーンi以降)を順次探索して行き、先行する鋳片(N−6)13・・・のいずれかのステイタスが「処理中(第2冷却帯作業中)」となった場合、探索スタートとなった鋳片13(鋳片(N−5)13)の根本滞留原因を「処理中(第2冷却帯作業中)」とする。
【0045】
すなわち、鋳片(N−5)13のステイタスが「滞留中(先行材あり)」であって、鋳片(N−6)13より下流側に位置する、ある鋳片13のステイタスが「処理中(第2冷却帯作業中)」の場合、鋳片(Nー5)13の根本滞留原因は、第2冷却帯7における冷却作業自体であると推定する。
(2−3)一のゾーンに存在する鋳片13のステイタスが「滞留中(作業待ち)」である場合には、一のゾーンに存在する鋳片13の滞留の根本原因を「滞留中(作業待ち)」とする。
【0046】
一方で、例えばある鋳片13が滞留状態であると判定され、その鋳片13のステイタスが「滞留中(作業待ち)」となっているとする。その場合、ある鋳片13の根本滞留原因は「滞留中(作業待ち)」とする。
例えば、図1において、鋳片(N−3)13に滞留が発生し、その鋳片(N−3)13はその1つ先のクロップ切断装置6においてクロップ切断処理が行われているのを待っている状況であるとする。その場合、鋳片(N−3)13は「滞留中(クロップ切断作業待ち)」というステイタスが紐付けられており、ひいては、鋳片(Nー3)13の根本滞留原因は「滞留中(クロップ切断作業待ち)」となる。
【0047】
このように、物流シミュレーション過程で分析された鋳片13の滞留の「根本原因」、その「根本原因」に起因する各鋳片13の滞留時間(作業待ち時間など)、「根本原因」に起因する処理設備3での鋳片13の滞留数量(鋳片13の本数など)の少なくとも1つ以上を、製造ライン2のオペレータ12が目視可能な表示モニタ11に表示するとよい。合わせて、連続鋳造設備1内の鋳片13すべての滞留状況を原因別に累積の時間として表示するとよい。また、その滞留原因をファイルに出力してもよい。
【0048】
なお、鋳片13の滞留の「根本原因」は、全ての鋳片13に対して特定されていて、各「根本原因」毎に集計されている。
次に、本実施形態のワーク13の滞留の根本原因分析方法の作動態様について、詳細に説明する。
図2に示すように、物流シミュレーションを行った結果、連続鋳造設備1内のあるゾーンで鋳片13が滞留したと分析されると、そのステイタスを基にして得られた根本滞留原因が表示モニタ11に表示されるようになる。
【0049】
そこで、連続鋳造設備1を設計するオペレータ12は、その表示モニタ11に表示された鋳片13の根本滞留原因を参照して、連続鋳造設備1の検討を行う。この連続鋳造設備1が新設の場合、設備の設計に反映されることとなる。
図2に示すように、例えば表示モニタ11に「クロップ切断作業待ち」、「第1冷却作業待ち」、「第2冷却作業待ち」、「パレット待ち」のそれぞれの根本滞留原因が表示されている場合、そのうちで最も過度に滞留しているものから参照して、例えば、設備設計へ反映してゆく。
【0050】
ここで、図2に示す表示モニタ11には、「クロップ切断作業待ち」の待ち時間が245秒で、待ちの本数は15本と表示されていて、最も過度に鋳片13が滞留していることがわかる。そこで、設計オペレータ12は、クロップ切断装置6を処理能力の高いものに変更することや、連続鋳造機4の処理条件(鋳造速度など)の変更などといった設計の変更を行う。
【0051】
このように、本実施形態の鋳片13の滞留の根本原因分析方法で得られた滞留原因のステイタス及び根本滞留原因に基づいて、処理設備3の処理条件の変更、処理設備3の設備的条件の変更、処理設備3の新設、物流ラインの搬送条件の変更などの連続鋳造設備1の設計を行う。
以上述べたように、本発明の鋳片13(ワーク)の滞留の根本原因分析方法は、鋳片13の滞留の根本原因を、物流シミュレーションを行っている過程でリアルタイムに表示し、かつ、滞留原因毎の頻度を自動集計してコンピュータ10などに保存する。さらに、本発明においては、連続鋳造設備1内において、ある鋳片13が滞留している状態においても、そのさらに先行するワーク13の滞留の根本原因を探索することで、トリガーとなる根本滞留原因を特定することができる。このように探索することで、鋳片13の根本滞留原因を容易に分析することができる。
【0052】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0053】
例えば、本発明は、連続鋳造設備1に適用させて説明したが、圧延工程や溶銑処理設備などにも採用可能である。また、本発明は、宅配便などにおける配送全般の物流に対して
も適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 連続鋳造設備
2 製造ライン
3 処理設備
4 連続鋳造機
5 第1冷却帯
6 クロップ切断装置
7 第2冷却帯
8 パレットエリア
9 パレット
10 コンピュータ
11 表示モニタ(表示器)
12 オペレータ
13 鋳片(ワーク)
図1
図2