【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る油圧機械は、
ラジアルピストン式の油圧機械であって、
前記油圧機械の軸方向に延在する回転軸と、
前記油圧機械の周方向に延在し、前記回転軸とともに回転するように構成されたリングカムと、
前記リングカムの回転に連動して往復運動するように構成されたピストンアセンブリと、を備え、
前記リングカムは、前記周方向に配列される複数のカムセグメントを含み、
前記複数のカムセグメントのうち、隣り合うカムセグメントの少なくとも1組は、先行セグメントと、前記リングカムの回転方向において前記先行セグメントに後続する後行セグメントとを含み、
前記先行セグメントは、前記先行セグメントの後縁端部において前記後行セグメント側に向かって突出する第1係合部を有し、
前記後行セグメントは、前記後行セグメントの前縁端部において前記先行セグメント側に向かって突出し、前記先行セグメントの前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有し、
前記先行セグメントの前記後縁端部における前記第1係合部の前記ピストンアセンブリに対向する第1カム面は、前記後行セグメントの前記前縁端部における前記第2係合部の前記ピストンアセンブリに対向する第2カム面の前方端において、該第2カム面よりも前記油圧機械の半径方向に関して前記ピストンアセンブリ側に位置し、
前記第1カム面と前記第2カム面とは、前記第1係合部と前記第2係合部との係合領域内において、互いに交差する。
【0007】
上記(1)の構成では、先行セグメントの第1係合部の第1カム面は、第1係合部に係合する後行セグメントの第2係合部の第2カム面の前方端において、第2カム面よりも油圧機械の半径方向に関してピストンアセンブリ側に位置し、第1カム面と第2カム面とは、第1係合部と第2係合部との係合領域内において、互いに交差する。すなわち、回転軸の回転に伴い、ピストンアセンブリがカム面上をリングカムの回転方向の上流側に向かって移動するに際し、ピストンアセンブリは、係合領域の開始点(即ち周方向における第2カム面の前方端の位置)から、係合領域内において第1係合部と第2係合部とが互いに交差する交差点までは第1カム面と当接し、該交差点からは第2カム面と当接する。したがって、上記(1)の構成によれば、先行セグメントと後行セグメントとの間で、ピストンアセンブリが滑らかに移行できる。
なお、上記(1)の構成において、係合領域は、回転軸の周方向において長さを有するため、第1係合部と第2係合部の周方向又は半径方向における相対的な位置がずれたとしても、第1カム面と第2カム面とが交差する位置がその分周方向又は半径方向にずれるものの、カムセグメント間におけるピストンアセンブリの移行の滑らかさが受ける影響は小さい。したがって、上記(1)の構成によれば、カムセグメントの加工公差を大きくとることができ、これによりリングカムの加工が容易となる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記第2カム面は、前記第1カム面の後方端において、前記第1カム面よりも前記油圧機械の半径方向に関して前記ピストンアセンブリ側に位置する。
上記(2)の構成では、ピストンアセンブリは、第1係合部と第2係合部との交差点から係合領域の終了点(すなわち周方向における第1カム面の後方端の位置)まで、第2カム面を追従するように当接し、そのまま後行セグメントのうち第2係合部よりも後方の部位のカム面を追従する。したがって、上記(1)の構成によれば、先行セグメントと後行セグメントとの間で、ピストンアセンブリが滑らかに移行できる。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記第1カム面および前記第2カム面は、前記ピストンアセンブリに向かって隆起する凸曲面を有する。
上記(3)の構成によれば、第1カム面及び第2カム面は、ピストンアセンブリに向かって隆起する凸曲面を有するので、第1カム面及び第2カム面が平面により構成される場合に比べて、先行セグメントと後行セグメントとの間におけるピストンアセンブリのより滑らかな移行が可能となる。
【0010】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記第1カム面と前記第2カム面とが交差する位置P
0における前記第1カム面の接線を第1接線L
1とし、前記位置P
0における前記第2カム面の接線を第2接線L
2としたとき、前記位置P
0よりも前記リングカムの回転方向下流側において、前記第1接線L
1の方が前記第2接線L
2よりも前記ピストンアセンブリ側に位置する。
上記(4)の構成によれば、
第1カム面と第2カム面とが交差する位置P
0よりもリングカムの回転方向下流側において、第1カム面の第1接線L
1の方が第2カム面の第2接線L
2よりもピストンアセンブリ側に位置するので、先行セグメントと後行セグメントとの間におけるピストンアセンブリのより滑らかな移行が可能となる。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記第1カム面は、前記先行セグメントのうち前記第1係合部よりも前方の部位のカム面とともに連続した曲面を形成する。
上記(5)の構成によれば、第1カム面は、先行セグメントのうち第1係合部よりも前方の部位のカム面とともに連続した曲面を形成するので、第1カム面を含む先行セグメントのカム面をピストンアセンブリが滑らかに追従することができる。
【0012】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の何れかの構成において、
前記第2カム面は、前記後行セグメントのうち前記第2係合部よりも後方の部位のカム面とともに連続した曲面を形成する。
上記(6)の構成によれば、第2カム面は、後行セグメントのうち第2係合部よりも後方の部位のカム面とともに連続した曲面を形成するので、第2カム面を含む後行セグメントのカム面をピストンアセンブリが滑らかに追従することができる。
【0013】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の何れかの構成において、
前記第1係合部の周方向長さL
1としたとき、前記第1カム面の前記後方端を基準として0.3L
1〜0.7L
1の範囲内において、前記第1カム面と前記第2カム面とが互いに交差する。
上記(7)の構成によれば、第1カム面と第2カム面とは、第1係合部の周方向における中央に近い位置で交差するため、第1係合部と第2係合部の周方向又は半径方向における相対的な位置のずれの大きさの許容範囲を大きくすることができる。よって、カムセグメントの加工公差をより大きくすることができ、これによりリングカムの加工がより容易となる。
【0014】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の何れかの構成において、
前記第2係合部の周方向長さL
2としたとき、前記第2カム面の前記前方端を基準として0.3L
2〜0.7L
2の範囲内において、前記第1カム面と前記第2カム面とが互いに交差する。
上記(8)の構成によれば、第1カム面と第2カム面とは、第2係合部の周方向における中央に近い位置で交差するため、第1係合部と第2係合部の周方向又は半径方向における相対的な位置のずれの大きさの許容範囲を大きくすることができる。よって、カムセグメントの加工公差をより大きくすることができ、これによりリングカムの加工がより容易となる。
【0015】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の何れかの構成において、
前記ピストンアセンブリのピストンとともに作動室を形成するシリンダをさらに含み、
前記リングカムの前記ピストンアセンブリに対向するカム面は、前記作動室の圧力が高圧のときに前記ピストンアセンブリと当接するワーキング面と、前記作動室の圧力が低圧のときに前記ピストンアセンブリと当接するブリージング面と、を含み、
前記先行セグメントの前記第1係合部と、前記後行セグメントの前記第2係合部との係合領域は、前記ブリージング面の延在範囲内に含まれる。
上記(9)の構成によれば、第1係合部と第2係合部との係合領域がブリージング面の延在範囲内に含まれるため、作動室の圧力が低圧のときに、第1係合部の第1カム面から第2係合部の第2カム面へとピストンアセンブリが移行する。よって、ピストンアセンブリのカムセグメント間移行時における、ピストンアセンブリとカムセグメントとの間の衝突による衝撃を比較的小さくすることができ、カムセグメントの寿命を比較的長くすることができる。
【0016】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記リングカムの前記カム面は、前記半径方向に関して前記ピストンアセンブリ側に最も近い複数の頂点と、前記半径方向に関して前記ピストンアセンブリから最も離れた複数の底点と、を含み、前記頂点と前記底点とは前記周方向に関して交互に並んでおり、
前記先行セグメント及び前記後行セグメントは、それぞれ、少なくとも一つの前記頂点と少なくとも一つの前記底点とを含む。
上記(10)の構成によれば、先行セグメント及び後行セグメントをそれぞれ1以上の頂点と1以上の底点とを含むように構成したので、リングカムの分割数(=カムセグメント数)を減少可能であるとともに、上記(9)で述べたようなブリージング面に先行セグメント−後行セグメント間の係合領域を形成することができる。
【0017】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係るリングカムは、上記(1)〜(10)の何れかに記載の油圧機械に用いられるリングカムであって、
前記周方向に配列される複数のカムセグメントを備え、
前記複数のカムセグメントのうち、隣り合うカムセグメントの少なくとも1組は、前記先行セグメントと、前記リングカムの回転方向において前記先行セグメントに後続する前記後行セグメントとを含む。
【0018】
上記(11)の構成では、先行セグメントの第1係合部の第1カム面は、第1係合部に係合する後行セグメントの第2係合部の第2カム面の前方端において、第2カム面よりも油圧機械の半径方向に関してピストンアセンブリ側に位置し、第1カム面と第2カム面とは、第1係合部と第2係合部との係合領域内において、互いに交差する。すなわち、回転軸の回転に伴い、ピストンアセンブリがカム面上をリングカムの回転方向の上流側に向かって移動するに際し、ピストンアセンブリは、係合領域の開始点(即ち周方向における第2カム面の前方端の位置)から、係合領域内において第1係合部と第2係合部とが互いに交差する交差点までは第1カム面と当接し、該交差点からは第2カム面と当接する。したがって、上記(11)の構成によれば、先行セグメントと後行セグメントとの間で、ピストンアセンブリが滑らかに移行できる。
なお、上記(11)の構成において、係合領域は、回転軸の周方向において長さを有するため、第1係合部と第2係合部の周方向又は半径方向における相対的な位置がずれたとしても、第1カム面と第2カム面とが交差する位置がその分周方向又は半径方向にずれるものの、カムセグメント間におけるピストンアセンブリの移行の滑らかさが受ける影響は小さい。したがって、上記(11)の構成によれば、カムセグメントの加工公差を大きくとることができ、これによりリングカムの加工が容易となる。
【0019】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る再生可能エネルギー型発電装置は、
再生可能エネルギーを受け取って回転するように構成されたロータと、
前記ロータによって駆動されて作動油を昇圧するように構成された油圧ポンプと、
前記作動油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備え、
前記油圧ポンプ又は油圧モータの少なくとも一方は、上記(1)〜(10)の何れかに記載の油圧機械である。
【0020】
上記(12)の構成では、先行セグメントの第1係合部の第1カム面は、第1係合部に係合する後行セグメントの第2係合部の第2カム面の前方端において、第2カム面よりも油圧機械の半径方向に関してピストンアセンブリ側に位置し、第1カム面と第2カム面とは、第1係合部と第2係合部との係合領域内において、互いに交差する。すなわち、回転軸の回転に伴い、ピストンアセンブリがカム面上をリングカムの回転方向の上流側に向かって移動するに際し、ピストンアセンブリは、係合領域の開始点(即ち周方向における第2カム面の前方端の位置)から、係合領域内において第1係合部と第2係合部とが互いに交差する交差点までは第1カム面と当接し、該交差点からは第2カム面と当接する。したがって、上記(12)の構成によれば、先行セグメントと後行セグメントとの間で、ピストンアセンブリが滑らかに移行できる。
なお、上記(12)の構成において、係合領域は、回転軸の周方向において長さを有するため、第1係合部と第2係合部の周方向又は半径方向における相対的な位置がずれたとしても、第1カム面と第2カム面とが交差する位置がその分周方向又は半径方向にずれるものの、カムセグメント間におけるピストンアセンブリの移行の滑らかさが受ける影響は小さい。したがって、上記(12)の構成によれば、カムセグメントの加工公差を大きくとることができ、これによりリングカムの加工が容易となる。
【0021】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記再生可能エネルギー発電装置は、前記再生可能エネルギーとして風エネルギーを利用して発電を行うように構成された風力発電装置である。