特許第6444982号(P6444982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444982
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】脱水素反応器内の傾斜底板
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/02 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   B01J8/02 E
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-505540(P2016-505540)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公表番号】特表2016-517794(P2016-517794A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】US2014031804
(87)【国際公開番号】WO2014160743
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】13/852,110
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッター,マイケル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナマーシー,スジェイ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド,ローラ・イー
(72)【発明者】
【氏名】セクリスト,ポール・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ファーファロ,アンジェロ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,チュエン
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0164278(US,A1)
【文献】 特開昭57−099322(JP,A)
【文献】 特公昭49−039972(JP,B1)
【文献】 特開平11−192425(JP,A)
【文献】 米国特許第06090351(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0245561(US,A1)
【文献】 米国特許第04374094(US,A)
【文献】 米国特許第07776293(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜底板を備えるラジアル層反応器であって、
反応器本体と、
触媒層(20)を画定する内側孔あき円筒および外側孔あき円筒(30、35)であり、前記触媒層(20)が前記触媒層の上端に入口を有し、前記触媒層の下端に出口を有し、前記外側孔あき円筒(35)の第1の部分(A)が、前記内側孔あき円筒(30)の最下部よりも下方に延び、前記第1の部分(A)が無孔セクション(125)を有する内側孔あき円筒および外側孔あき円筒(30、35)と、
前記内側孔あき円筒(30)の前記最下部から前記外側孔あき円筒(35)の最下部に向かって延びる底板(65)であり、前記内側孔あき円筒に対して傾斜した底板(65)と、
少なくとも前記内側孔あき円筒(35)によって画定された分配空間(40)と、
前記外側孔あき円筒(35)および前記反応器本体によって画定された収集空間(45)と、
前記分配空間(40)へのフィード入口(55)と、
前記収集空間(45)からの生成物出口(60)と
を備える反応器。
【請求項2】
前記外側孔あき円筒(35)の前記第1の部分(a)が有孔セクション(130)をさらに含み、前記有孔セクション(130)が前記無孔セクション(125)の下方に配置された、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記内側孔あき円筒(30)が触媒層側にルーバ(70)をさらに備える、請求項1または2のいずれかに記載の反応器。
【請求項4】
前記無孔セクション(125)が、最も低いルーバ(70)の最下部よりも下方に延びる、請求項3に記載の反応器。
【請求項5】
前記底板(65)が、30°から85°の範囲の角度(a)で傾斜した、請求項1または2のいずれかに記載の反応器。
【請求項6】
前記内側孔あき円筒(30)の触媒層側に、前記内側孔あき円筒(30)に隣接したプロフィールワイヤスクリーンをさらに備える、請求項1または2のいずれかに記載の反応器。
【請求項7】
前記有孔セクション(130)の孔サイズもしくはオープンエリアの割合またはその両方が、前記外側孔あき円筒(35)の孔サイズもしくはオープンエリアの割合またはその両方とは異なる、請求項2に記載の反応器。
【請求項8】
前記外側孔あき円筒(35)の第2の部分が第1のセクション(B)および第2のセクション(C)を有し、前記第2の部分の前記第1のセクション(B)が前記第1の部分の前記無孔セクション(125)の上方にあり、前記第2の部分の前記第1のセクション(B)の孔サイズもしくはオープンエリアの割合またはその両方が、前記第2の部分の前記第2のセクション(C)の孔サイズもしくはオープンエリアの割合またはその両方よりも小さい、請求項1または2のいずれかに記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその内容の全体が本明細書に組み込まれる2013年3月28日に出願された米国特許出願第13/852,110号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
さまざまなプロセスが、流体と固体の間の接触を提供する十字流反応器を使用する。この固体は普通、触媒材料を含み、流体は、その触媒材料の表面で反応して生成物を形成する。これらのプロセスは、炭化水素の転化、気体処理および分離のための吸着を含むある範囲のプロセスを包含する。
【0003】
十字流反応器はしばしばラジアル流反応器(radial flow reactor)であり、反応器が環状構造を有し、環状の分配装置および環状の収集装置があるように構築される。これらの分配装置および収集装置は、スクリーンが形成されたあるタイプの表面を含む。スクリーンが形成されたこの表面は、触媒層を所定の位置に保持するため、および反応器のこの表面の全面に圧力を分布させるのを助けて触媒層を通過する半径方向流を促進するための表面である。このスクリーンは、ワイヤもしくは他の材料のメッシュ、またはパンチ孔があけられたプレートとすることができる。移動層に対しては、このスクリーンまたはメッシュが、固体触媒粒子の損失を防ぎ、同時にこの層を通り抜けて流体が流れることを可能にするバリアを提供する。固体触媒粒子は最上部から追加され、装置内を流下し、最下部から取り出される。その間に、固体触媒粒子は、触媒を横切って流体が流れることを許すスクリーンが形成されたエンクロージャ内を通過する。
【0004】
触媒が実質的に連続的に循環するラジアル層反応器(radial bed reactor)では、気体の流れによって触媒に加えられる力が、抑制されない触媒の移動を保証するとみなされなければならない。触媒層を通過する気体流の方向は概ね、この活性層内における所望の触媒移動方向に対して直角である。適切な条件下で、過大な気体速度は、固体の流れを滞留させることによってまたはボイド空間を生み出すことによって触媒の移動に影響を与えることがある。これらはともに、触媒の流れに対して不利な影響を与える望ましくない効果である。
【0005】
ラジアル流反応器を利用するプロセスの中で、炭化水素の脱水素は、重要な商業的炭化水素転化プロセスである。これは、界面活性剤、ハイオクタンガソリン、酸素添加ガソリン調合成分(oxygenated gasoline blending component)、医薬品、プラスチック、合成ゴム、当業技術者によく知られている他の製品などのさまざまな化学製品を製造するために、脱水素化炭化水素に対する需要があり、この需要が拡大し続けているためである。
【0006】
パラフィン系炭化水素の接触脱水素反応によるオレフィンの生成は、炭化水素転化処理分野の技術者によく知られている。例えば米国特許第4,430,517号(Imai他)など多くの特許が、一般的な炭化水素の脱水素について論じている。この特許は、脱水素プロセスおよび脱水素プロセスで使用する触媒について論じている。
【0007】
図1は、ラジアル層反応器の一型10を示す。層20の最下部から触媒移送ライン25を通して触媒が取り出されるにつれて、サージホッパ(surge hopper)15の最上部に触媒が入り、環状層20に流入する。孔があけられた内側円筒(以後、内側孔あき円筒)30および孔があけられた外側円筒(以後、外側孔あき円筒)35が、触媒を環状触媒層20内に保持し、内側孔あき円筒30および外側孔あき円筒35は、分配空間40と収集空間45の境界を少なくとも部分的に画定する。示されているとおり、任意選択の中心分配栓(central distributor plug)50があり、中心分配栓50は、内側孔あき円筒30によって取り囲まれた反応器10の中心部分を占有し、入来反応物を分配する役目を果たし、同時に分配空間40の体積を最小化する。反応物は、内側孔あき円筒30の最下部まで延びる閉導管セクション55を通って分配空間40に入る。外側孔あき円筒35の外側の収集空間45は、ノズル60を通して放出する反応器流出物を供給する収集ゾーンの役目を果たす。触媒層20の最下部の底板(base plate)65は水平である。
【0008】
しかしながら、ある種の条件下で、この配置は、この層の最下部に触媒が停滞することを許す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、改良された流動特性を有する反応器が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、傾斜した底板(以後、傾斜底板)を備えるラジアル層反応器である。一実施形態では、反応器が反応器本体を備える。内側孔あき円筒および外側孔あき円筒が触媒層を画定し、この触媒層は、上端に入口を有し、下端に出口を有する。外側孔あき円筒の第1の部分が、内側孔あき円筒の最下部よりも下方に延び、この第1の部分は無孔セクションを有する。内側孔あき円筒の最下部から外側孔あき円筒の最下部に向かって底板が延び、底板は、内側孔あき円筒に対して傾斜している。少なくとも内側孔あき円筒によって画定された分配空間と、外側孔あき円筒および反応器本体によって画定された収集空間とがある。分配空間はフィードの入口を有し、収集空間は生成物の出口を有する。
【0011】
傾斜した底板を備えるラジアル層反応器の他の実施形態は、中心分配栓を含む反応器本体を備える。内側孔あき円筒および外側孔あき円筒が触媒層を画定し、この触媒層は、上端に入口を有し、下端に出口を有する。外側孔あき円筒は、内側孔あき円筒の最下部よりも下方に延びる。内側孔あき円筒の最下部から外側孔あき円筒の最下部に向かって底板が延び、底板は、内側孔あき円筒に対して傾斜しており、少なくとも1つの有孔部分を有する。少なくとも内側孔あき円筒によって画定された分配空間と、外側孔あき円筒および反応器本体によって画定された収集空間とがある。分配空間はフィードの入口を有し、収集空間は生成物の出口を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】先行技術のラジアル層反応器の一実施形態を示す図である。
図2図1のラジアル層反応器の最下部の一部分を示す図である。
図3】傾斜底板を備えるラジアル層反応器の一部分を示す図である。
図4図4は、有孔セクションを有する傾斜底板の一実施形態を示す図である。図4Aは、有孔セクションを有する傾斜底板の一実施形態を示す図である。
図5】有孔セクションを有する傾斜底板の他の実施形態を示す図である。
図6】有孔セクションを有する傾斜底板の他の実施形態を示す図である。
図7】傾斜底板および無孔セクションを有する外側孔あき円筒の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ラジアル層反応器用の傾斜底板は、反応器の最下部からの固体の流れを改良する。通気底板(aerated baseplate)を利用することによって、または内側孔あき円筒の最下部の高さよりも低いエリアに外側孔あき円筒の無孔セクションを提供することによって、気体の流れを改良することができる。
【0014】
本明細書に記載されたプロセス機器は、ラジアル層反応器内で触媒を実質的に連続的に循環させることが利益となる任意のプロセスに対して有用である。このようなプロセスの例には、限定はされないが、パラフィンの脱水素、ナフサの改質、脱水素環状二量体化(dehydrocyclodimerization)などがある。
【0015】
図2は、水平な底板を有する触媒層の最下部におけるフィードの流動パターンを示す。フィードは分配空間40に入り、閉導管セクション55を通って上方へ流れ、ついには内側孔あき円筒30に達し、ここでフィードは外側へ流れ始め、この孔あき円筒を通り抜けて触媒層20に流入する。内側孔あき円筒30の触媒層側のルーバ(louver)70がフィードを下方へ偏向させる。ルーバの最下部に達すると、フィードは、触媒層20内を外側へ流れる。
【0016】
反応器の最下部における触媒の流動を改良するため、図3に示されているような傾斜底板が開発された。底板65のこの傾斜により、外側孔あき円筒35の長さは、最も低いルーバ70の最下部の高さから下方へ延びる距離Aだけ長くなっている。
【0017】
この傾斜底板は、触媒層の最下部からの固体の流出を改良した。勾配は通常、30°から85°、または40°から80°、または45°から75°、または50°から70°、または55°から65°の範囲にある。
【0018】
この傾斜底板は、固体の運動を改善し、固体が停滞する問題を排除した。しかしながら、反応器の下部における気体の流動パターンが負の影響を受け、このことが、ボイドブローイング(void blowing)および/または固体滞留の可能性を増大させることが分かった。この限局された蒸気流分布は傾斜底板の作用であり、対応する外側孔あき円筒はオープンエリア(open area)を拡張した。傾斜底板を有する下流の拡張されたオープンエリアは、触媒層の深さを横切る蒸気流の限局された拡張を可能にする。
【0019】
図3に示されているとおり、フィードは、上の説明と同様に、分布空間40に入り、上方へ流れ、内側孔あき円筒35を通り抜け、そこでルーバ70によって下方へ導かれる。外側孔あき円筒35は、傾斜底板65の高さである高さAだけ一番下のルーバの高さよりも下方に延びる。下流の拡張されたオープンエリアAおよび流れの拡張は、分配を推進する静圧差を満たすより多くの流れを局所的に可能にする。この限局された追加の蒸気流は、局所的な固体自由表面、固体層の外乱、および層の最下部における固体流動を妨害しうる。
【0020】
計算流体力学(computational fluid dynamics:CFD)を使用して、触媒層20を含む反応器構成要素を通過する蒸気流を調べることができる。これらの数値実験は、プロセス機器の構成が蒸気の流動パターンに影響を与え、その結果、大きな局所速度を有するゾーンが生じうることを明らかにした。本発明にとって特に興味深いのは、反応器の最下部および触媒取出し管25の近くの反応器機器の影響である。一例では、気体流がこの層を出る傾斜底板の高さAに対応する追加の出口エリアの結果として、内側孔あき円筒30の下部を通り抜ける蒸気の流量が平均よりも大きい。内側孔あき円筒の端部よりも下にあるこの底板/外側孔あき円筒構成は、内側孔あき円筒の最下部5%の蒸気流に対して最も重大な影響を有し、このセクションの局所的に大きな流量が、蒸気の半径方向速度がしきいボイド速度(threshold void velocity)を超える原因となることがある。
【0021】
この問題に対処するため、本発明の一実施形態は、固体流動を改善し、限局された蒸気流を液圧的に平衡させて、入口の流れを反応器の最下部に均一に分配する通気傾斜底板を提供することを含む。入口フィード流のスリップストリームの補足的な蒸気流は、一番下のルーバへの液圧分布を低減させる。別の実施形態は、外部から送られた水素を補足的な蒸気流として使用する。この配置は、反応器の傾いたセクション内の触媒から硫黄をHSとして放散させまたは部分的に放散させる追加された利益、および限局された蒸気流分布を液圧的に平衡させるという追加された利益を有する。その理由は、2012年3月20日に出願された「Proces for Managing Sulfur on Catalyst in a Light Paraffin Dehydrogenation Process」という名称の米国特許出願第13/424,874号に記載されている。この出願は参照によって本明細書に組み込まれる。これらのオプションはともに、一番下のルーバへのより少ない流れを可能にし、ラジアル触媒層を横切る分布を均一にして、反応器の最下部から流出する固体が負の影響を受けないようにする。
【0022】
図4〜4Aは、通気底板の一実施形態を示す。上の説明と同様に、フィードは、分布空間内を上方へ流れ、内側孔あき円筒30を通り抜け、そこでルーバ70によって下方へ偏向させられる。内側孔あき円筒30の下方に、開口85を有する延長板80がある。任意選択の支持板90が、延長板80を、傾斜底板65の最下部に接続する。示されているように、支持板90に開口部はないが、そうでなければならないというわけではない。
【0023】
フィードの一部分は、開口85および傾斜底板65の1つまたは複数の有孔部分95を通って流れる。示されているように、有孔部分95は、触媒を閉じ込めるためにプロフィールワイヤ(profile wire)、ワイヤメッシュ、溝孔があけられた材料などで覆われた孔である。
【0024】
別の実施形態が図5に示されている。傾斜板65は、有孔部分100と無孔部分105の1つまたは複数の交互配列を有する。有孔セクション100は、プロフィールワイヤ、ワイヤメッシュ、溝孔があけられた材料などでできた円筒形のセクションである。有孔セクションは、反応器の全周にわたって広がることが望ましいが、そうでなければならないというわけではない。
【0025】
フィードの一部分は、開口85および傾斜底板65の有孔セクション105を通って流れる。
図6は、別の実施形態を示す。延長板80に開口部はなく、支持板90に開口110がある。水素などの気体が、開口110および底板65の有孔部分115を通って流れる。底板の下方のプレナム(plenum)120は、反応器の全周にわたって気体を分配することができる。水素をこの気体として使用すると、硫黄をHSとして除去することができる。
【0026】
これらの実施形態は、一番下のルーバへ流れるフィードの流量をより小さくすること、およびラジアル触媒層を横切る分布を均一にすることを可能にし、この均一な分布は、反応器の最下部からの固体の流出に有害な影響を及ぼさない。
【0027】
この問題に対する別の解決策は、内側孔あき円筒の最下部の高さよりも下の外側孔あき円筒の少なくとも一部を無孔にすることである。いくつかの実施形態では、内側孔あき円筒の最下部の高さよりも下の部分全体が無孔である。しかしながら、このことは、固体流動の問題、および気体の上方への流れに起因する無孔部分の上縁における極端に大きな負の圧力勾配の原因となりうる。
【0028】
他の実施形態では、内側孔あき円筒の最下部の高さより下の外側孔あき円筒の一部分が有孔である。この部分は、外側孔あき円筒の最下部または最下部の近くにあることが望ましい。
【0029】
図7は、外側孔あき円筒の無孔セクションを有する一実施形態を示す。外側孔あき円筒は、内側孔あき円筒の最下部の高さよりも下の高さAの部分を有する。高さAは底板65の高さである。高さYの無孔セクション125および高さXの有孔セクション130があり、有孔セクション130は無孔セクション125の下方にある。
【0030】
有孔セクション130は、反応器の最下部セクションを通って気体が触媒層を出ることを可能にし、この層内における下方流動パターンを助長する。有孔セクション130の孔サイズおよびオープンエリアの割合は、無孔セクション125の上方の外側孔あき円筒の孔サイズおよびオープンエリアの割合と同じでもまたは異なっていてもよい。
【0031】
無孔セクション125は気体が通り抜けることを妨げる。このことは、反応器の下部の流動抵抗を増大させ、反応器の下部のルーバ70の下の開口を通り抜ける気体の流量が極端に大きくなることを防ぐ。
【0032】
いくつかの実施形態では、セクションAの上方に位置する外側孔あき円筒35のセクションBの孔あき円筒サイズおよび/または外側孔あき円筒のオープンエリアの割合が、セクションBの上方に位置するセクションCの孔あき円筒サイズおよび/または外側孔あき円筒のオープンエリアの割合に比べて小さい。セクションBの高さは通常、セクションBとCを合わせた全体の高さの5から10%である。
【0033】
ルーバを備えるこのセンターピースの設計は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,071,046号に記載されている。この設計では、反応器の中心に複数の円筒形セクションが積み重ねられて、開口を有する中心管を形成する。それらの円筒形セクションはそれぞれ上縁、下縁および円筒直径を有する。円筒形セクションを流体が通り抜けることを可能にするため、円筒形セクションの壁は、その壁の上に分布する開口を有する。円錐形の複数の切頭体(frustum)(ルーバ)があり、それらの切頭体はそれぞれ、上部直径を有する上縁と、下部直径を有する下縁とを有し、下部直径は上部直径よりも大きく、上部直径は、円筒直径に実質的に等しい。これらの切頭体は通常、中心線との間に5度から20度の間の角度を形成する。これらの切頭体は、切頭体の下縁が、その切頭体の下に配置された隣接する切頭体の上縁よりも下に延びるような態様で積み重ねられている。
【0034】
いくつかの実施形態では、図2〜7に示されたルーバの代わりに、内側孔あき円筒の触媒層側に、内側孔あき円筒に隣接してプロフィールワイヤスクリーンがある。プロフィールワイヤスクリーンでの流動パターンは、ルーバでの流動パターンとは同じでないと考えられるが、通気底板および/または外側孔あき管の無孔セクションを使用することができ、これらは同様の利益を提供する。
【0035】
この配置では、環状の内側孔あきプレートと環状の外側プロフィールワイヤスクリーンとからなる中心管がある。流体は、入口から流入し、中心管内を流れ、プレートの開口を通り抜け、スクリーンから出て、触媒と接触する。プロフィールワイヤスクリーンは、全体に垂直な環状反応器内において垂直に延びる、反応器の中心軸を中心とする全体に管形または円筒形の形状に形成される。このスクリーンは、ワイヤもしくは他の材料のメッシュ、またはパンチ孔があけられたプレートとすることができる。触媒粒子を層内に保持するために使用されるこれらのスクリーンまたはメッシュは、粒子が通り抜けることができない大きさの十分に小さな開孔を有するようにサイズ決めすることができる。
【0036】
通常は、外側孔あき円筒の触媒層側に、外側孔あき円筒に隣接してプロフィールワイヤスクリーンがある。
パラフィン系炭化水素の脱水素は、炭化水素処理分野の技術者によく知られている。脱水素プロセスでは、新たな炭化水素フィードが、再循環水素および転化していない炭化水素と結合される。脱水素可能な炭化水素は、3つまたは5つの炭素原子を有するイソアルカンを含むことが好ましい。脱水素可能な炭化水素の適当なフィードはしばしば、反応の目的で汚染物の役目を果たす軽質炭化水素(すなわち1次フィード成分よりも少数の炭素原子を有する炭化水素)を含む。多くのオレフィン転化プロセスで不必要な副生物を生成するジエンの形成を防ぐため、ほとんどの場合、オレフィンは、脱水素ゾーン再循環から排除される。脱水素可能な炭化水素に加えて、脱水素ゾーンへのフィードは、Hに富むストリーム、好ましくはHを少なくとも75モル%含むストリームを含む。このHは、より典型的にはコークスとして知られている炭化水素質付着物が触媒の表面に形成されることを抑制する働きをし、望ましくない熱分解を抑制する働きをすることができる。脱水素反応ではHが生成され、そのHは流出物の一部分を構成するため、反応ゾーンに導入されるHに富むストリームは一般に、脱水素ゾーン流出物の分離から得られた再循環Hを含む。あるいは、脱水素ゾーン流出物以外の適当な源からHを供給してもよい。
【0037】
この水素と炭化水素の結合ストリームを、温度、圧力、空間速度(space velocity)などの脱水素条件が適切に維持された適当な脱水素触媒層に通し、触媒反応ゾーンからの流出物をさらに処理して、オレフィン系炭化水素のストリームを生み出す。
【0038】
脱水素反応は、通常は(大気圧に近い)低圧条件で達成される非常に吸熱性の高い反応である。脱水素反応ゾーンで使用される正確な脱水素温度および圧力は、パラフィン系炭化水素フィードストックの組成、選択された触媒の活性、炭化水素転化率などのさまざまな因子に依存する。一般に、脱水素条件は、0MPa(0バール)から3.5MPa(35バール)の圧力、および480℃(900°F)から760℃(1400°F)の温度を含む。適当な炭化水素フィードストックを1から10のLHSVで反応ゾーンに充填し、反応ゾーン内に含まれる触媒と接触させる。水素、主に再循環水素が、炭化水素フィードストックと0.1から10のモル比で適当に混合される。好ましい脱水素条件、特にC〜Cパラフィン系炭化水素フィードストックに対して好ましい脱水素条件は、0MPa(0バール)から0.5MPa(5バール)の圧力、540℃(1000°F)から705℃(1300°F)の温度、0.1から2の水素−炭化水素モル比、および4未満のLHSVを含む。
【0039】
脱水素ゾーンは、適当な任意の脱水素触媒を使用することができる。好ましい適当な触媒は一般に、VIII族貴金属成分(例えば白金、イリジウム、ロジウムおよびパラジウム)、アルカリ金属成分および多孔質無機担体材料を含む。この触媒はさらに、触媒の性能を有利に向上させる助触媒金属を含むことができる。多孔質担体材料は、反応ゾーンで利用される条件に対して比較的に耐熱性(refractory)であるべきであり、二元機能炭化水素転化触媒中で伝統的に利用されている担体材料の中から選択することができる。好ましい多孔質担体材料は耐熱性無機酸化物であり、最も好ましい多孔質担体材料はアルミナ担体材料である。それらの粒子は普通、球形であり、1.6から3.2mm(1/16から1/8インチ)の直径を有するが、6.4mm(1/4インチ)の大きな粒子であってもよい。
【0040】
脱水素ゾーンの稼働は、水素および炭化水素の混合物を生成する。普通は、この炭化水素の一部分が、所望のオレフィンとそのアルカン前駆物質の平衡混合物を含む。脱水素反応セクションからの流出物は水素回収セクションへ移動する。脱水素反応セクションへ再循環させるため、この分離セクションは、流出物から水素を取り出し、その水素を高い純度で回収する。水素を取り出す分離ステップは普通、冷却および圧縮、ならびに分離容器内でのその後の冷却およびフラッシング(flashing)を含む。水素および軽い気体を分離するこのような方法は、当業技術者によく知られている。
【0041】
典型的な脱水素プロセスは、炭化水素と水素の結合フィードを複数の反応器に通す。反応器と反応器の間では段間加熱(interstage heating)にかける。フィード炭化水素および水素は最初に、脱水素ゾーンからの流出物との間接的な熱交換によって加熱される。加熱に続いて、フィード混合物を普通はヒータに通して、フィード成分の温度をさらに高めてから、脱水素反応器に入れ、そこで脱水素触媒と接触させる。この吸熱反応は反応物の温度を低下させる。反応物は次いで段間加熱にかけられ、その後に次の反応器に入る。最後の脱水素ゾーン流出物からの流出物は、フィードとの熱交換の後、生成物分離施設へ移動する。
【0042】
ラジアル層反応器を利用する他のプロセスは接触改質である。接触改質では通常、フィードストックを、水素を含む再循環ストリームと混合し、反応ゾーンで触媒と接触させる。接触改質のための通常のフィードストックは、ナフサとして知られている、80℃(180°F)の初留点および205℃(400°F)の終点を有する石油留分である。反応器の入口温度は、450℃から560℃(840°Fから1040°F)の範囲とすることができる。この接触改質プロセスは特に、脱水素反応および/または環化反応を介した芳香族化にかけることができる、比較的に高濃度のナフテン系炭化水素および実質的に直鎖状のパラフィン系炭化水素からなる直留ガソリンの処理に対して適用可能でありえる。
【0043】
改質は、芳香族炭化水素を生み出すためのシクロヘキサンの脱水素およびアルキルシクロペンタンの脱水素異性化(dehydroisomerization)、オレフィンを生み出すためのパラフィンの脱水素、芳香族炭化水素を生み出すためのパラフィンおよびオレフィンの脱水素環化、n−パラフィンの異性化、シクロヘキサンを生み出すためのアルキルシクロパラフィンの異性化、置換芳香族炭化水素の異性化、ならびにパラフィンの水素化分解と定義することができる。改質は一般に吸熱プロセスであり、したがって、一実施形態では、炭化水素ストリームが、一連の反応ゾーンに通され、さらに反応熱を提供するために段間ヒータに通される。改質プロセスに関する追加の情報は、例えば米国特許第4,409,095号(Peters)に出ている。
【0044】
接触改質反応は普通、アルミナなどの多孔質担体と結合された、1種または数種のVIII族貴金属(例えば白金、イリジウム、ロジウムおよびパラジウム)およびハロゲンからなる触媒粒子の存在下で達成される。これらの粒子は普通、球形であり、1.6から3.2mm(1/16から1/8インチ)の直径を有するが、6.4mm(1/4インチ)の大きな粒子であってもよい。例示的な触媒が米国特許第6,034,018号(Sechrist他)に開示されている。改質反応の過程で、粒子へのコークスの付着などの機構の結果として、触媒粒子が非活性化されることがある。すなわち、ある使用時間の後、改質反応を促進する触媒粒子の能力が、触媒がもはや役立たない点まで低下することがある。改質プロセスで再利用することができるようにするためには、その触媒を再コンディショニングしまたは再生しなければならない。
【0045】
好ましい一形態では、この改質装置が、移動層反応ゾーンおよび再生ゾーンを使用する。一般に、反応ゾーンに新たな触媒粒子が供給され、それらの粒子は、重力によって支援された移送によってゾーン内を流れる。この反応ゾーンはいくつかのサブゾーンからなることができる。反応ゾーンの最下部から触媒を取り出し、再生ゾーンへ運び、そこで多段階再生プロセスを使用してコークス付着物を除去し、触媒を再コンディショニングして、触媒の反応促進能力を回復させることができる。一般に、再生ゾーンは酸素を含み、一般に370℃から538℃(700°Fから1000°F)の温度で稼働する。触媒は通常、重力によって支援された移送によってさまざまな再生段階を通過し、次いで、普通は200℃(400°F)以下の温度で再生ゾーンから取り出され、反応ゾーンに供給される。再生ゾーンから取り出された触媒は再生済み触媒と呼ぶことができる。このゾーン内の触媒の移動はしばしば連続的と言われるが、実際には半連続であることがある。半連続移動は、短い時間間隔で繰り返される比較的に少量の触媒の移送を意味することができる。一例として、反応ゾーンの最下部から毎分1バッチが取り出され、この取り出しに1/2分がかかる。すなわち、触媒は、1/2分の間、流れる。反応ゾーン内の存在量が大きい場合には、触媒層を連続移動層とみなすことができる。移動層システムは、触媒の取り出しまたは交換の間も生産を維持するという利点を有しうる。
【0046】
ラジアル層反応器を使用する他のプロセスは、脱水素環状二量体化である。脱水素環状二量体化反応ゾーンでは、C〜C脂肪族炭化水素が芳香族炭化水素に転化する。C〜Cパラフィンおよびオレフィンの芳香族炭化水素への転化(脱水素環状二量体化)は、脱水素反応、オリゴマー化反応および芳香族化反応を含む3段階プロセスとして表現することができる。これらの反応段階は逐次的に起こるものとして説明されるが、これらの3つの反応は全て、脱水素環状二量体化反応ゾーン内で同時に起こることが理解される。最初の反応段階は、オレフィンを形成するパラフィンの脱水素を含む。オレフィンは、対応するオレフィンおよび水素を形成するパラフィンの直接脱水素によって、またはより低級のアルカンおよびオレフィンを生成する炭素−炭素分裂(fission)によって、パラフィンから得ることができる。脱水素を熱力学的に促進する温度(すなわち500℃〜700℃の温度)で、直接脱水素反応は炭素−炭素分裂反応と競合する。脱水素触媒がない場合、これらの温度では、優勢な機構が、炭素−水素結合(C−H)よりも低い結合エネルギーを有する炭素−炭素結合(C−C)の分裂である。アルカンが高級であるほど、炭素−炭素分裂に向かう傾向が大きくなる。プロパンの場合には2つの分解反応が可能であり、一方の分解反応はプロピレンおよび遊離水素を生成し、もう一方の分解反応はエチレンおよびメタンを生成する。後者の分解反応がわずかに優勢である。ブタンガスの場合には、優勢な反応が、プロピレンおよびメタンを生成する炭素鎖の末端における分裂であり、次に優勢な反応が、エタンおよびエチレンを生成する内部炭素原子の分裂である。ブテンおよび遊離水素を生成する直接脱水素は少しだけしか起こらない。
【0047】
エチレン、エタンおよびメタンは、炭素分裂反応の最も望ましくない生成物である。メタンは、耐熱性生成物として反応器システム内に残る。所望の反応では、より大きな炭化水素にオリゴマー化する前に、エタンを脱水素してエチレンにすることができる。しかしながら、この反応はゆっくりと起こり、この速度および望ましくないエチレン水素化反応の頻発のため、この脱水素反応は、反応混合物中のエタン濃度を実質的に変化させない。実際、エチレンオリゴマー化反応またはエタン脱水素反応に比べてエチレン水素化反応の方が優勢であるため、反応混合物中のエタン濃度は、反応器滞留時間の増大とともに増大する。前に説明したエチレン炭素融合反応生成物は、水素化されてエタンになるか、またはオリゴマー化される。
【0048】
この転化プロセスの第2段階では、このオレフィンをオリゴマー化にかけて、環状ナフテンを生成する。次いで、この転化プロセスの第3段階でナフテンを脱水素して、対応する芳香族化合物を生成する。この環状ナフテンは、飽和シクロアルカンおよび不飽和脂環式化合物を含み、普通は前者が優勢である。第2段階で生成される優勢な環状ナフテンは、合計1から12個の炭素原子を含む1つまたは複数のアルキル基で置換された6員環である。これらの環状ナフテンを脱水素して、対応する芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンおよび他のアルキルトルエンを生成する。
【0049】
脱水素環状二量体化反応ゾーン内で使用される稼働条件は、当然ながら、フィードストックの組成、所望の転化などの因子によって変化する。C〜C脂肪族炭化水素の芳香族炭化水素への脱水素環状二量体化のための条件の所望の範囲は、350℃から650℃の温度、10.1kPa(0.1気圧)から2.0MPa(20気圧)の圧力、および0.2から10時間−1の液空間速度を含む。好ましいプロセス条件は、400℃から600℃の範囲の温度、25kPa(0.25気圧)から1.0MPa(10気圧)の範囲の圧力、および0.5から5時間−1の間の液空間速度である。フィードの平均炭素数が増加すると、最適な性能のために温度範囲の下端の温度が必要となり、反対に、フィードの平均炭素数が減少すると、必要な反応温度はより高くなることが理解される。
【0050】
本明細書では、脱水素環状二量体化プロセスへのフィードストリームを、脱水素環状二量体化反応ゾーンに導入されるストリームであって、前述の3つの脱水素環状二量体化反応のための反応物を提供するストリームと定義する。このフィードストリームにはC〜C脂肪族炭化水素が含まれる。C〜C脂肪族炭化水素は、フィードストリームが、1分子につき2つから6つの炭素原子を有する1種または数種の開鎖、直鎖または枝分れ鎖異性体を含むことがあることを意味する。さらに、このフィードストック中の炭化水素は飽和炭化水素または不飽和炭化水素であることがある。Cおよび/またはCの炭化水素は、イソブタン、直鎖ブタン、イソブテン、直鎖ブテン、プロパンおよびプロピレンの中から選択されることが好ましい。事実上耐熱性または反応物である希釈剤がフィードストリームに含まれることもある。このような希釈剤の例には、水素、窒素、ヘリウム、メタン、アルゴン、ネオン、CO、CO、HOまたはその前駆物質が含まれる。水前駆物質は、脱水素環状二量体化反応温度に加熱されたときにHOを遊離する化合物と定義される。メタンおよびC脂肪族炭化水素よりも大きな炭化水素も、本発明のフィードストックの成分であることができる。メタン成分は一般に耐熱性反応物だが、常にそうであるとは限らない。反応に関与するこれらのC6+脂肪族成分は、改質によってより効率的に取り扱われる。いずれにしても、フィードにこのような成分が含まれることは、脱水素環状二量体化反応の反応機構に有害な影響を及ぼすと予想される。
【0051】
このC〜C脂肪族炭化水素フィードストリームを、脱水素環状二量体化条件に維持された脱水素環状二量体化反応ゾーン内の触媒複合材料と接触させる。この接触は、固定層システム、移動層システムもしくは流動層システム内でまたはバッチ型操作で触媒複合材料を使用することによって実施することができる。しかしながら、貴重な触媒の摩損はできるだけ低く抑えられるべきであること、およびよく知られたオペレーショナルアドバンテージ(operational advantage)を考慮すれば、固定層触媒システム、または米国特許第3,725,249号に示されているものなどの濃厚相(dense phase)移動層システムを使用することが好ましい。濃厚相移動層システムでは、フィードストリームを適当な加熱手段によって所望の反応温度に予熱し、次いで、本発明の触媒複合材料層を含む脱水素環状二量体化ゾーンに通す。脱水素環状二量体化ゾーンは、それぞれの反応器の入口において所望の転化温度が維持されることを保証する適当な手段を反応器間に備える1つまたは複数の別個の反応器とすることができることが当然ながら理解される。反応物は、触媒と接触するときに、液相、液−蒸気混合相または蒸気相であることができ、最も良い結果は蒸気相で得られる。この脱水素環状二量体化システムは、脱水素環状二量体化触媒複合材料の1つまたは複数の濃厚相移動層を含む脱水素環状二量体化ゾーンを備えることが好ましい。
【0052】
多層システムでは、脱水素環状二量体化ゾーンを、それぞれの触媒層内で遭遇する熱損失を補償する適当な加熱手段を反応器間に備える1つまたは複数の別個の反応器とすることができる。濃厚相移動層システムについて言えば、反応ゾーンの最下部から触媒を取り出し、当技術分野で知られている従来の手段によってその触媒を再生させ、次いで反応ゾーンの最上部に触媒を戻すことが一般的なプラクティスである。
【0053】
このプロセスにおいて有用な脱水素環状二量体化触媒が、軽質脂肪族炭化水素を芳香族炭化水素に転化させる能力を有することが知られている先行技術の任意の触媒であることがある。このような触媒の例は、米国特許第6,617,275号、4,654,455号、4,746,763号、4,499,315号および4,720,602号に開示されている。これらの特許は参照によって本明細書に組み込まれる。さらに、脱水素環状二量体化プロセスは、単一の反応ゾーンで実施される必要はなく、その代わりに、米国特許第4,705,908またはカナダ特許第1,237,447号に開示されているプロセスなど、軽質脂肪族炭化水素生成物から芳香族炭化水素を含む炭化水素生成物を生成することができる任意の結合プロセスを使用することができることにも留意すべきである。しかしながら、単一の脱水素環状二量体化触媒を含む単一の反応系が好ましい。
【0054】
このプロセスの脱水素環状二量体化反応ゾーン内で有用な好ましい触媒は、リンを含むアルミナ、元素周期表のIIB、IIIBまたはIVB族金属成分、特にガリウム成分、および最低でも12のシリカ−アルミナ比を有する結晶性アルミノケイ酸ゼオライトを含む。好ましい触媒はさらに、この結晶性アルミノケイ酸塩がZSM−5であること、およびこの結晶性アルミノケイ酸塩が35から59.9重量%の範囲で存在することを特徴とする。さらに、最も好ましい触媒は、ガリウムを0.1から5重量%、リンを含むアルミナ成分を40から60重量%含む。このような触媒は米国特許第4,636,483号に記載されている。この特許は参照によって本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態
以下の説明は特定の実施形態に関するが、この説明は例示的であることが意図されており、この説明が、上記の説明および添付の特許請求項の範囲を限定することは意図されていないことが理解される。
【0055】
本発明の第1の実施形態は、傾斜底板を備えるラジアル層反応器であって、反応器本体と、触媒層を画定する内側孔あき円筒および外側孔あき円筒であり、この触媒層が触媒層の上端に入口を有し、触媒層の下端に出口を有し、外側孔あき円筒の第1の部分が、内側孔あき円筒の最下部よりも下方に延び、第1の部分が無孔セクションを有する内側孔あき円筒および外側孔あき円筒と、内側孔あき円筒の最下部から外側孔あき円筒の最下部に向かって延びる底板であり、内側孔あき円筒に対して傾斜した底板と、少なくとも内側孔あき円筒によって画定された分配空間と、外側孔あき円筒および反応器本体によって画定された収集空間と、分配空間へのフィード入口と、収集空間からの生成物出口とを備える反応器である。本発明の一実施形態は、外側孔あき円筒の第1の部分が有孔セクションをさらに含み、この有孔セクションが無孔セクションの下方に配置された、この段落の第1の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、内側孔あき円筒が触媒層側にルーバをさらに備える、この段落の第1の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、無孔セクションが、最も低いルーバの最下部よりも下方に延びる、この段落の第1の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、有孔セクションの孔サイズもしくはオープンエリアの割合またはその両方が、外側孔あき円筒の孔サイズもしくはオープンエリアの割合またはその両方とは異なる、この段落の第1の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、外側孔あき円筒の第2の部分が第1のセクションおよび第2のセクションを有し、第2の部分の第1のセクションが第1の部分の無孔セクションの上方にあり、第2の部分の第1のセクションの孔サイズもしくはオープンエリアの割合またはその両方が、第2の部分の第2のセクションの孔サイズもしくはオープンエリアの割合またはその両方よりも小さい、この段落の第1の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、内側孔あき円筒が触媒層側にルーバをさらに備え、第2の部分の第1のセクションが、第2の部分の第1のセクションおよび第2のセクションの高さの5〜10%の距離だけ上方へ延びる、この段落の第1の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、底板が30°から85°の範囲の角度で傾斜した、この段落の第1の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、内側孔あき円筒の触媒層側に、内側孔あき円筒に隣接したプロフィールワイヤスクリーンをさらに備える、この段落の第1の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。
【0056】
本発明の第2の実施形態は、傾斜底板を備えるラジアル層反応器であって、反応器本体と、触媒層を画定する内側孔あき円筒および外側孔あき円筒であり、この触媒層が触媒層の上端に入口を有し、外側孔あき円筒が、内側孔あき円筒の最下部よりも下方に延びる内側孔あき円筒および外側孔あき円筒と、内側孔あき円筒の最下部から外側孔あき円筒の最下部に向かって延びる底板であり、内側孔あき円筒に対して傾斜しており、少なくとも1つの有孔部分を有する底板と、少なくとも内側孔あき円筒によって画定された分配空間と、外側孔あき円筒および反応器本体によって画定された収集空間と、分配空間へのフィード入口と、収集空間からの生成物出口とを備える反応器である。本発明の一実施形態は、内側孔あき円筒が触媒層側にルーバを有する、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、内側孔あき円筒の最下部の延長板と、延長板を貫通したフィード入口とをさらに備える、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、前記少なくとも1つの有孔部分が少なくとも1つの孔を備え、この少なくとも1つの孔が、プロフィールワイヤ、ワイヤメッシュまたは孔があけられた材料で覆われた、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、前記少なくとも1つの有孔部分が、少なくとも1つの周囲プロフィールワイヤ、ワイヤメッシュセクションまたは孔あき材料セクションを含み、底板が、無孔セクションと有孔セクションの交互配列を含む、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、内側孔あき円筒の最下部の延長板と、延長板から底板まで延びる支持板と、支持板を貫通したプロセスガス入口とをさらに備える、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、前記少なくとも1つの有孔部分が少なくとも1つの孔を備え、この少なくとも1つの孔が、プロフィールワイヤ、ワイヤメッシュまたは孔があけられた材料で覆われた、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、前記少なくとも1つの有孔部分が少なくとも1つのワイヤメッシュセクションを含み、底板が、無孔セクションとワイヤメッシュセクションの交互配列を含む、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、底板が30°から85°の範囲の角度で傾斜した、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。本発明の一実施形態は、内側孔あき円筒の触媒層側に、内側孔あき円筒に隣接したプロフィールワイヤスクリーンをさらに備える、この段落の第2の実施形態まで遡るこの段落の先行する実施形態のうちのいずれか1つまたは全ての実施形態である。
【0057】
本発明の以上の詳細な説明では、少なくとも1つの例示的な実施形態を提示したが、膨大な数の変形実施形態が存在することを理解すべきである。それらの1つまたは複数の例示的な実施形態は単なる例であり、それらの実施形態が、いかなる形であれ、本発明の範囲、適用可能性または構成を限定することは意図されていないことも理解すべきである。以上の詳細な説明はむしろ、本発明の例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱することなく、例示的な実施形態に記載された要素の機能および配置にさまざまな変更を加えることができることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6
図7