【実施例】
【0186】
実施例1
この実施例では、分取クロマトグラフィーによって生成されるプロポリス画分の抗胃腸癌活性の評価について説明する。この研究は、結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖アッセイを用いて行った。
【0187】
材料および方法
以下の表2に示す試験試料を、MTTアッセイによって評価されるように、ヒト結腸直腸腺癌細胞(DLD−1)の生存率および増殖を調節する能力について評価した。非補充細胞対照(陰性対照)に加えて、陽性対照の5−フルオロウラシル(5−FU)をこの試験に含めた。試験試料をプロポリスチンキの分画によって得た。
【0188】
カラムクロマトグラフィーによるプロポリスチンキ画分の生成
メタノール(MeOH、200mL)で洗浄し、20%EtOH水溶液(500mL)で平衡化したメルクリクロプレップ(Merck Lichroprep)CI8を充填したガラスカラムの逆相固定相(16×4cm)を用いて分画を行った。エタノール(EtOH、5mL)に溶解したプロポリス(5.446g)を、ピストンポンプを用いてカラムの頂部に装填した。溶出を、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%EtOH水溶液からなる階段状勾配(250mL)、その後、100%EtOHステップを2回、次いで、2−プロパノール(IPA)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、およびクロロホルム(CHCl
3)で行った。様々な画分の溶媒をロータリーエバポレーターで真空除去し、その後、一晩凍結乾燥した。2つの100%EtOH画分をプールし、比較的低い質量による残りの4つの非極性画分(IPA、EtOAc、アセトン、およびCHCl
3)も生物学的アッセイ作業のためにプールした。
【0189】
カラムからの溶出工程で使用されるエタノールの割合、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%EtOH水溶液、および100%EtOHに応じて、画分を表2に示す。
【0190】
DLD−1結腸癌抗増殖アッセイのための材料および方法
以下の表2に示す試験試料を、MTTアッセイによって評価されるように、ヒト結腸直腸腺癌細胞(DLD−1)の生存率および増殖を調節する能力について評価した。非補充細胞対照(陰性対照)に加えて、陽性対照の5−フルオロウラシル(5−FU)をこの試験に含めた。
【0191】
(表2)試験試料
【0192】
試験材料および試験方法の説明
ヒト結腸直腸腺癌上皮細胞株を凍結保存から元に戻し、試験試料および参照試料の存在下で培養した。細胞の培養条件は、細胞の供給業者(ATCC)によって記載されたものであった。その後、MTTアッセイを培養物で行い、細胞増殖に対する試料の効果を決定した。
【0193】
方法は、以下の報告された手順に基づいた。
【0194】
試料調製
作業溶液を、15%エタノール(ETOH)/HBSSに試験画分を2mg/mLの固形分濃度まで溶解することによって調製した。
【0195】
実験手順
試験システムの特徴づけ
1.ヒト結腸直腸腺癌細胞(ATCC CCl−221、DLD−1)
2.ペニシリン−ストレプトマイシン溶液:0.9%のNaCl(Sigma社、カタログ番号P−0781)中10000ユニット/mLのペニシリン、10mg/mLのストレプトマイシン。−20℃で保存した。
3.DMEM培地(Invitrogen社、カタログ番号12100−046)。−20℃で保存した。
4.トリプシン−EDTA溶液:0.25%トリプシン/EDTA、Invitrogen社、カタログ番号15400054(ストックでは10倍)
5.リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(TBLにより調製)
6.ハンクス平衡塩溶液(HBSS)(GIBCO社、カタログ番号14185−052)。4℃で保存した。
7.ウシ胎児血清(GIBCO社、カタログ番号10091−148)。−20℃で保存した。
8.MTT試薬:100mg/バイアル(SIGMA社、カタログ番号M−2128)を10mg/mLでPBSに溶解し、−20℃で保存した。5mg/mLのMTT溶液をPBSで調製し、作業溶液として4℃で保存した。
9.MTT溶解緩衝液:10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)/45%ジメチルホルムアミド(SDS20gを2回蒸留した水(DDW)100mLに溶解し、ジメチルホルムアミド90mLをSDS溶液に添加した)。pHを氷酢酸により4.7に調整し、DDWを200mLの最終容量まで添加した。
10.5−フルオロウラシル(5−FU)、(Sigma社、カタログ番号F−6627)。150ng/mLおよび75ng/mLの2つの作業溶液を調製し、15%エタノール/HBSSに溶解した。最終濃度は、7.50ng/mLおよび3.75ng/mLであった。
【0196】
培地の調製
結腸直腸腺癌(DLD−1)細胞の増殖のための培地は、ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(1リットルあたり10mL)を補充したDMEMであった。使用直前にFBSを添加し、10%w/vにした。
【0197】
細胞の培養
1.米国のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手したヒト結腸直腸腺癌細胞(DLD−1)を、凍結保存から元に戻した。
2.前述の培地(培地の調製参照)を使用して初期増殖させた後、培養物を以下のようにトリプシン−EDTAを用いて継代培養した。培地を除去し、5mLのトリプシン−EDTA溶液を添加し、5分間、37℃でまたは全ての細胞が剥離するまでインキュベートした。等量のDMEM培地を添加することによりトリプシンを中和し、培地を300g(1200rpm)で、5分間、4℃で遠心分離した。
3.上清をデカントし、細胞ペレットをDMEM培地、FBS(10%)、ペニシリン(100ユニット/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)中に再懸濁した。細胞を、5%CO
2/95%空気中37℃で培養した。
4.コンフルエンスに達した後、細胞をトリプシン−EDTAを用いて剥離し、上記2に記載したように遠心分離した。
5.上清を捨て、上記3に記載したように、1mLあたり1.0×10
4細胞でDMEMおよび補助剤中に細胞を再懸濁した。
6.3枚の96ウェルプレートの各ウェルに、180μlの細胞(1,800細胞/ウェル)または培地を添加した。これらのプレートを、細胞を付着させるのに十分な48時間、5%CO
2/95%空気中37℃でインキュベートした。
7.各ウェルに、試験試料または陽性対照それぞれを20μl加えた。「培地」または「細胞のみ」の対照については、20μlの15%ETOH/HBSSを各ウェルに加えた。各試料を6回の反復で評価し、3枚のプレートのそれぞれの対照は、9回の反復で(三つ組の組み合わせで)評価した。各ウェル中の試料の最終濃度は200μg/mLであった。
8.各ウェルの総容積は200μlであった。
9.これらのプレートを、5%CO
2/95%空気中37℃で19時間インキュベートした。
【0198】
細胞増殖アッセイ
1.インキュベーション完了時に、20μlのMTT作業溶液(5mg/mL)を全てのウェルに加え、5%CO
2/95%空気中37℃で3〜4時間インキュベートした。
2.このインキュベーション期間中、細胞+試料のウェルと試料+培地ブランクウェルの両方の中の、いくつかの試料のいくつかのウェルに予期せぬ強い色が現れたことに留意されたい。この期間の終わりに、上清を各ウェルから除去し、各ウェルを穏やかにHBSSで2回洗浄し、紫の色を除去した後に、以下のステップ3に記載のMTT溶解緩衝液を添加した。
3.次いで、100μlのMTT溶解緩衝液を添加し、プレートを5%CO
2/95%空気中37℃で一晩インキュベートした。これらのプレートを10分間、1200rpmで遠心分離し、残りの不溶性物質をペレット化した。各ウェルから200μlのアリコートを新鮮な96ウェルプレートに移した。これらのプレートを570nmでVersaMaxマイクロプレートリーダーによって読み取った。
4.細胞のみの対照と比較した、試料の存在下で培養した細胞の増殖の割合として結果を表した。ブランクの読み取りを、バックグラウンドの読み取りとして全てのウェルから差し引いた。
【0199】
結果
細胞の増殖に対する対照および試験試料の影響の概要を以下の表3に示す。
・200μg/mLで、結腸癌細胞の増殖の最高の阻害は、プロポリス画分1(68.1%)、プロポリス画分2(72.8%)、プロポリス画分5(41.0%)およびプロポリス画分8(72.0%)であった。
・200μg/mLで、プロポリスチンキが結腸癌細胞の増殖を32.6%阻害した。
【0200】
(表3)DLD−1細胞の増殖に対する試験試料の影響
【0201】
さらなる研究を行い、最も活性のある画分に存在する化合物を決定した。これらの研究を実施例2に記載する。
【0202】
実施例2
この実施例では、純粋な化合物の標準物質と比較した本発明の組成物の抗胃腸癌活性の評価について説明する。実施例1に記載したように、この研究を、結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖アッセイを用いて行った。
【0203】
分取HPLC
実施例1のために生成した20%、30%、60%、および90%EtOH水溶液の溶出画分を、分取HPLCによってさらに分画した。乾燥させた20%および30%EtOH画分をEtOH/H
2O(1:1)に溶解し、60%および90%EtOH画分を薄めていないEtOHに溶解した。各溶液を、Gilson 321分取ポンプおよびAgilent社製1100シリーズダイオードアレイ検出器を使用して、Phenomenex Synergi 4μm−RP Max 80A 250×30mm C−12カラム上で分取HPLCによりクロマトグラフィーを行った。0.5〜1.5mLの注入体積を用いた。20mL/分の流量を用いた。20%、30%、および60%エタノール画分については、(0.1%トリフルオロ酢酸[TFA]体積/体積を含む)70%の水および(0.1%TFA体積/体積を含む)30%のMeOHの初期溶媒組成を用いた。溶媒組成を初期条件で10分間一定に保持し、その後、8分かけてMeOH濃度を40%まで直線的に増加させ、この組成で5分間保持し、その後、32分かけて80%まで増加させ、次いで、5分かけて100%まで増加させた。
【0204】
クロマトグラフィーを約18℃の室温で行った。画分を手動で収集し、オンライン検出を(フラボノイドについては)268nmおよび(カフェ酸誘導体については)327nmで行った。分析HPLCを回収した全画分にて行い、単一の化合物または高度に精製された化合物を示すものを、ロータリーエバポレーターにより真空下で溶媒除去し、秤量し、生物学的アッセイのために調製した。さらなるアッセイのために提示されていない20%および30%シリーズの画分を混合して生物学的アッセイのための「非ピーク」20%および30%画分を形成し、主要な活性が、選択した波長で観察されない任意の材料よりもむしろ観察されたピークに起因することを確認した。60%のEtOHのF8および60%EtOHのF9の60%画分の2つが、さらなるクロマトグラフィーに必要であった(以下のセファデックスLH20クロマトグラフィーを参照されたい)。90%エタノール画分をクロマトグラフィーにも供した。しかし、使用する溶媒および勾配プロファイルを、この画分のクロマトグラフィーのために改変した。ここで使用した溶媒は、(0.1%TFAを含む)80%MeOH水溶液およびEtOAc/MeOH(4:1体積/体積)であった。最初の溶離液組成物は80%メタノール水溶液からなっていた。溶媒組成物を5分間初期条件で保持し、EtOAc/MeOH溶媒濃度を35分かけて100%まで直線的に増加させた。分析HPLCによる90%EtOH画分の分析により、この画分の主要な成分が非常に非極性であり、クロマトグラムの後期に溶出することが示され、他のプロポリス画分での分析のために使用した波長、すなわち、268および327nmで最小のUV吸収が示された。しかし、蒸発光散乱検出(ELSD)は、成分の複雑な混合物を明らかにした。ELSDの破壊的な性質により、分取HPLC画分を手動で収集し、オンライン検出を210nmで行った。クロマトグラフィーは明確に分離したピークではなく、ベースラインの幅広い増減をもたらしたので、ラン中に4画分を収集し、全てを生物学的アッセイのために調製した。
【0205】
セファデックスLH20クロマトグラフィー
上記の分取HPLC作業由来の60%EtOH F8およびF9画分のHPLC分析により、これらの画分が近くで溶出するいくつかの化合物を含有することが示された。これらの画分を、以下のようにさらなるクロマトグラフィーに供した。
【0206】
これらの画分の各々を、予め(0.1%TFA体積/体積を含む)70%MeOH水溶液で平衡化したセファデックスLH20固定相(3×42cm)を含むガラスカラムの上部にアプライした。画分を、約7mLの個々の画分の容量で、フラクションコレクターを使用して時間ベースで収集した。画分を分析HPLCによって調べ、単一の化合物または高度に精製された化合物を含有するものを合わせて、生物学的アッセイのために調製した。各シリーズからの残りの画分を合わせ、「非ピーク」画分として生物学的アッセイのために調製した。
【0207】
DLD−1結腸癌抗増殖アッセイのための材料および方法
以下の表4に示す試験試料を、MTTアッセイによって評価されるように、ヒト結腸直腸腺癌細胞(DLD−1)の生存率および増殖を調節する能力について評価した。非補充細胞対照(陰性対照)に加えて、陽性対照の5−フルオロウラシル(5−FU)をこの試験に含めた。DLD−1抗増殖アッセイを実施例1に記載したように行った。
【0208】
(表4)試験試料
【0209】
試料は、15%EtOH/HBSS中1mg/mLであった試料#1を除いて、15%EtOHのHBSS溶液中2mg/mLで作業溶液として溶解させた。このアッセイでは、最終エタノール濃度が1.5%で、100μg/mLであった試料#1を除いて、試料の最終濃度は200μg/mLで、最終エタノール濃度が1.5%であった。
【0210】
結果および考察
概要
・試験した試料の大部分は、DLD−1結腸癌細胞増殖の阻害剤であった。
・試料のいずれも、刺激効果を有していなかった。
・プロポリス画分のうち、最も強力な阻害剤(括弧内に抑制性レベルを示す)は、以下のとおりであった。
#3・・・20% F8(95.2%)
#8・・・30% F8(96.1%)
#14・・・60% F8(27−30) (95.0%)
#17・・・60% F8(44−50) (90.4%)
#18・・・60% F8(52−53) (90.4%)
・いくつかの試料は、結腸癌の増殖に対して全くまたはほとんど影響を及ぼさなかった。これらには以下のものが含まれていた。
#1・・・20% F1(0.4%阻害)
#9・・・30% F10(3.2%刺激)
#10・・・30% F11(7.5%阻害)
#38・・・ピノセンブリン7−メチルエーテル(2.7%阻害)
【0211】
24時間のインキュベーション後の細胞増殖に対する陽性対照および試験試料の影響の概要を以下の表5に示す。
【0212】
(表5)DLD−1細胞の増殖に対する試験試料の影響
【0213】
化合物の同定
結腸癌細胞増殖の最も強力な阻害剤である画分をさらに分析して、これらの画分中に存在する化合物を同定した。活性画分で同定された化合物を表6に示す。各化合物を同定するために使用した方法を以下に詳述する。
【0214】
5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸
HPLCオンラインUV−可視吸収スペクトルおよび低解像度LCMS m/zデータは、ニュージーランド起源のプロポリスに存在すると以前に報告された5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸の構造(Markham et al,1996.HPLC and GC−MS identification of the major organic constituents in New Zealand propolis.Phytochemistry,42(1):205−211)と一致した。構造を、真の標準物質を用いたHPLCでの共クロマトグラフィーにより確認した。
【0215】
3−メチル−3−ブテニルカフェ酸
HPLCオンラインUV−可視吸収スペクトルおよび低解像度のLCMS m/zデータは、ニュージーランド起源のプロポリスに存在すると以前に報告された3−メチル−3−ブテニルカフェ酸の構造(Markhamら、1996)と一致した。さらに、HRMS、
1H−および
13C−NMRデータは、3−メチル−3−ブテニルカフェ酸について公表されたデータと一致する。
【0216】
1,1−ジメチルアリルカフェ酸
HPLCオンラインUV−可視吸収スペクトルおよび低解像度のLCMS m/zデータは、ニュージーランド起源のプロポリスに存在すると以前に報告された1,1−ジメチルアリルカフェ酸の構造(Markhamら、1996)と一致した。構造は、真の標準物質を用いたHPLCでの共クロマトグラフィーにより確認した。さらに、HRMS、
1H−および
13C−NMRデータは、1,1−ジメチルアリルカフェ酸について公表されたデータと一致する。
【0217】
ピノバンクシン−3−アセテート
HPLCオンラインUV−可視吸収スペクトルおよび低解像度のLCMS m/zデータは、ニュージーランド起源のプロポリスに存在すると以前に報告されたピノバンクシン−3−アセテートの構造(Markhamら、1996)と一致した。実験室での参照試料もまた比較のために利用可能であった。
【0218】
ピノストロビンカルコン
ピノストロビンカルコンを粗プロポリスから単離した。単離は、いくつかのクロマトグラフィー工程を含んでおり、シリカゲル上で2回行い、最終的なクリーンアップ工程にはセファデックスLH−20を使用した。この最終ステップからの主な黄色の化合物を収集し、NMRおよびUV可視分光データと文献値(Malek,S.N.A.;Phang,C.W.;Ibrahim,H.;Abdul Wahab,N.;Sim,K.S.Phytochemical and Cytotoxic Investigations of Alpinia mutica Rhizomes.Molecules 2011,16,583−589.)の比較によって、純粋なピノストロビンカルコンであることが示された。
【0219】
テクトクリシン
HPLCオンラインUV−可視吸収スペクトルおよび低解像度のLCMS m/zデータは、ニュージーランド起源のプロポリスに存在すると以前に報告されたテクトクリシンの構造(Markhamら、1996)と一致した。
【0220】
フェルラ酸ベンジルとイソフェルラ酸ベンジル
S#23の60%F9画分に存在するエステルを、フェルラ酸ベンジルとイソフェルラ酸ベンジルの混合物として同定した。ベンジルアルコールおよびフェルラ酸とイソフェルラ酸の混合物が得られた画分の小規模な加水分解に基づいて同定した。加水分解生成物を、参照化合物からのデータとHPLCデータ(保持時間およびオンラインUV−VISスペクトル)との比較から同定した。
【0221】
(表6)活性画分中で同定された化合物
【0222】
考察
これらのデータは、結腸直腸細胞増殖の増殖阻害における本発明の組成物の有効性を支持する。
【0223】
この実施例から最も生物活性のある化合物を選択し、精製し、合成し、または以下の実施例で純粋な標準物質として使用した。ピノセンブリンおよびp−クマル酸をまた、それぞれそれらの強力な活性および弱い活性に基づいて追加的な陽性対照ならびに陰性対照として試験した。
【0224】
実施例3
この実施例では、画分S#14 60%のF7(表6、実施例2)としてNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物の5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸の抗胃腸癌活性の評価について説明する。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株のDLD−1、ヒト結腸癌細胞株のHCT−116、ヒト胃癌細胞株のNCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株のKYSE−30の増殖アッセイを用いて行った。
【0225】
実施例3〜13に用いた一般的な方法を以下に示す。
【0226】
胃腸癌抗増殖アッセイのための材料および方法
5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸を、MTTアッセイによって評価されるように、ヒト結腸直腸腺癌細胞(DLD−1)、ヒト結腸癌細胞株(HCT−116)、ヒト胃癌細胞株(NCI−N87)、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株(KYSE−30)の生存率および増殖を調節するその能力について評価した。本研究の陰性対照として非補充細胞対照に加えて、陽性対照の5−フルオロウラシル(5−FU)を3種類の濃度で含めた。5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸は、NMRおよびMSにより確認した化学構造を有する純粋な標準物質であった。
【0227】
試験材料および試験方法
4種類のヒト胃腸癌細胞株を凍結保存から元に戻し、試験試料および参照試料の存在下で培養した。次いで、MTTアッセイを培養物にて行い、細胞の生存率および増殖に対する試料の影響を決定した。
【0228】
方法は、以下の参考文献に報告されている手順に基づく。
【0229】
細胞の培養条件は、細胞の供給者(ATCCおよびECACC)によって提供されたものである。
【0230】
試料調製
試験試料5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸、および実施例4〜12の他の全ての試験試料(テクトクリシンを除く)を、最初に、約13.35mg/mlの濃度まで純エタノールに溶解した。テクトクリシンを、最初に、同じ濃度までトリエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解した。次いで、作業溶液を2mg/mLの固形分濃度まで15%のエタノール/ハンクス平衡塩溶液(EtOH)/HBSSに希釈することによってストック溶液から調製した。このアッセイでは、試料の最終濃度は200μg/mlであり、最終EtOH濃度は1.5%であった。上記のように調製した試験化合物およびプロポリスの最終濃度は、実施例3に記載したとおりである。
【0231】
実験手順
試験システムの特徴付け
1.ヒト結腸直腸腺癌細胞(ATCC CCl−221、DLD−1)(ATCC、米国メリーランド州ベセスダ)
2.ヒト胃癌細胞(ATCC CRL−5822、NCI−N87)(ATCC、米国メリーランド州ベセスダ)
3.ヒト食道扁平上皮癌(ECACC、KYSE−30)(Sigma社 Aldrich社、オークランド、ニュージーランド)
4.ヒト結腸癌細胞(ECACC HCT−116)(Sigma社 Aldrich社、オークランド、ニュージーランド)
5.ペニシリン−ストレプトマイシン溶液:0.9%NaCl中10000ユニット/mlのペニシリン、10mg/mlのストレプトマイシン(Sigma社カタログ番号P−0781)。−20℃で保存した。
6.DLD−1細胞については、DMEM培地(Invitrogen社カタログ番号12100−046)。4℃で保存した。
7.NCI−N87細胞については、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、4500mg/Lのグルコース、および1500mg/Lの重炭酸ナトリウム(Sigma社 R6504)を含むように改変したRPMI−1640培地。4℃で保存した。
8.KYSE−410細胞については、2mMのL−グルタミンを含むように改変したRPMI−1640培地(Sigma社 R6504)。4℃で保存した。
9.HCT−116細胞については、2mMのL−グルタミンを含むように改変したマッコイ5A培地(Sigma社 M48792)。4℃で保存した。
10.トリプシン−EDTA溶液:0.25%トリプシン/EDTA、Invitrogen社カタログ番号15400054(ストックでは10倍)
11.リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(TBLにより調製)
12.ハンクス平衡塩溶液(HBSS)。(GIBCO社カタログ番号14185−052)。4℃で保存した。
13.ウシ胎児血清(GIBCO社カタログ番号10091−148)。−20℃で保存。
14.MTT試薬:100mg/バイアル(SIGMA社カタログ番号M−2128)を10mg/mlでPBSに溶解し、−20℃で保存した。5mg/mlのMTT溶液をPBSで調製し、作業溶液として4℃で保存した。
15.MTT溶解緩衝液:10%ナトリウムドデシル硫酸ナトリウム(SDS)/45%ジメチルホルムアミド(SDS20gを2回蒸留した水(DDW)100mlに溶解し、ジメチルホルムアミド90mlをSDS溶液に添加する)。pHを氷酢酸により4.7に調整し、DDWを200mLの最終体積まで添加した。
16.5−フルオロウラシル(5−FU)、(Sigma社カタログ番号F−6627)。3種類の作業溶液を、15%エタノール/HBSSに溶解した19.5μg/ml、6.5μg/mlおよび1.95μg/mlで調製する。最終濃度は、1.95μg/ml(15μΜ)、0.65μg/ml(5μΜ)および0.195μg/ml(1.5μΜ)である。
【0232】
培地調製
細胞株のそれぞれの増殖のための培地は上記の通りである。各培地を、ATCC/ECACCの指示に従って調製し、ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(1リットル当たり10ml)を補充した。FBS(10%)を使用直前に添加した。
【0233】
細胞の培養
1.米国のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションまたは細胞培養物欧州コレクション(the European Collection of Cell Cultures)のいずれかから入手した細胞株のそれぞれを凍結保存から元に戻した。
2.上記の培地(試験システムの特徴づけおよび培地調製を参照されたい)を使用した初期増殖後、培養物をトリプシン−EDTAを用いて継代培養した。培地を除去し、トリプシン−EDTA溶液5mlを添加し、37℃で5分間かまたは全ての細胞が剥離するまでインキュベートした。等量の関連培地を添加することによってトリプシンを中和し、4℃で5分間、300g(1200rpm)で懸濁液を遠心分離した。
3.上清をデカントし、細胞ペレットをFBS(10%)、ペニシリン(100ユニット/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)を含む関連培地に再懸濁した。
4.コンフルエンスに達した後、上記2に記載したようにトリプシン−EDTAを用いて細胞を剥離し、遠心分離した。
5.上清を廃棄し、上記3に記載したように関連培地および補充剤中に1ml当たり1.0×10
4細胞で再懸濁した。各細胞懸濁液は総容量で約54ml必要であった。
6.6枚の96ウェルプレートの各ウェルに、細胞(1,800細胞/ウェル)または培地180μlを予め決定したプレートのレイアウトに従って添加した。プレートを5%CO
2/95%空気中37℃で約48時間インキュベートし、細胞を接着させた。
7.各ウェルに、試験化合物または5−FUのそれぞれ20μlをプレートレイアウトに示すように添加した。「培地」または「細胞のみ」と表示した陰性対照ウェルについては、15%ETOH/HBSS20μlを添加した。それぞれの試料または対照を3回または6回の反復で評価した。
8.各ウェルの総容積は200μlであった。
9.これらのプレートを24時間、5%CO
2/95%空気中37℃でインキュベートした。
【0234】
細胞増殖アッセイ
1.インキュベーションの完了時に、MTT作業溶液20μl(5mg/ml)を全てのウェルに加え、5%CO
2/95%空気中37℃で3〜4時間インキュベートした。これらのプレートを、30〜60分毎に監視し、いくつかの細胞が結晶の存在を示した場合、溶解緩衝液を、以下のステップ2のように添加した。
2.次いで、MTT溶解緩衝液100μlを添加し、プレートを5%CO
2/95%空気中37℃で一晩インキュベートした。これらのプレートを10分間、1200rpmで遠心分離して、残りの不溶性物質をペレット化した。各ウェルから200μlを新鮮な96ウェルプレートに移した。次いで、これらのプレートを550nmでVersaMaxマイクロプレートリーダーにて読み取った。
3.ブランクの読み取りを、バックグラウンドの読み取りとして全てのウェルから差し引いた。結果を、細胞のみの対照に対する、試料の存在下で培養した細胞の増殖の割合として表した。
4.VersaMax96ウェルプレートリーダーを用いて、(550nmで)細胞の増殖を比色測定で評価した。
5.平均の標準誤差の割合を評価し、SEM%が15を超える場合、極端な異常値を除去する。予備的な統計的有意性を、(異常値の有無に関わらず)α≦0.05で独立したスチューデントt−検定を用いて評価する。
【0235】
試験方法に関する観察
様々な試験調製物および5−FUの存在下でいくつかの癌細胞の培養を、24時間後のDLD−1およびNCI−N87の陰性対照の細胞密度の目視のように48時間行うと、増殖が予想されるほど急速ではなかったことが示唆された。一貫性のために、他の培養時間を同じように設定した。
【0236】
平均の標準誤差(SEM)の割合が15%を上回る場合、研究計画は、反復間の異常値を計算から削除する必要があった。試料が強いアンタゴニストである場合には、吸光度の値は小さい。その結果、これらの間の小さな変化は、阻害が低い試料と比較した場合、パーセンテージとして表した平均からの分散が比較的大きいことを意味する。これは、実質的に完全な阻害が発生し、分析から除外されるいくつかの異常値をもたらした。
【0237】
結果
5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸ための細胞増殖アッセイの結果を、3つの濃度の陽性対照5−フルオロウラシル(5−FU)および陰性対照(試験化合物または陽性対照を含まず、培地のみを有する細胞)の結果と共に表7に示す。表において、ODは570nmで測定した光学密度である。SEMは、測定された平均光学密度値に関する標準誤差である。pは、測定がスチューデントt検定を用いて統計的に有意である確率値であり、本明細書では<0.05とする。刺激(%)は、陰性対照(不活性な試験化合物)と比較した増殖刺激の割合である。阻害(%)は、陰性対照と比較した増殖の低下の割合であり、大きな数は、試験化合物が抗癌増殖能を有することを示す。
【0238】
(表7)4種類の胃腸細胞株に対する5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸の抗増殖活性
【0239】
考察
5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸は4種類全ての癌細胞株に対して活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を43.5%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を36.4%阻害し、ヒト胃癌細胞株NCI−N87の増殖を42.56%阻害し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖を37.6%阻害した。阻害の程度は、既知の抗癌剤5−フルオロウラシル(5−FU)を使用して達成されるのと類似しており、実際、NCI−N87細胞については上回った。
【0240】
実施例4
この実施例では、画分S#14 60% F8(27−30)中のNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物である1,1−ジメチルアリルカフェ酸の抗胃腸癌活性の評価について説明する(表6、実施例2)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−3についての増殖アッセイを用いて行った。
【0241】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用した1,1−ジメチルアリルカフェ酸は、純粋な標準物質であった。実施例3に詳細に示されるのと同じ試験手順を実施例4にも使用した。
【0242】
結果
1,1−ジメチルアリルカフェ酸についての細胞増殖アッセイの結果を表8に示す。細胞のみ(陰性対照)の結果および5−FU陽性対照の結果は実施例3と同じであるので、表8には含めない。
【0243】
(表8)4種類の胃腸細胞株に対する1,1−ジメチルアリルカフェ酸の抗増殖活性
【0244】
考察
1,1−ジメチルアリルカフェ酸は4種類全ての癌細胞株に対して非常に活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を93.2%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を86.7%阻害し、ヒト胃癌細胞NCI−N87の増殖を86.7%阻害し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖を97.8%阻害した。
【0245】
阻害の程度は、既知の抗癌剤の5−フルオロウラシルを使用して達成した程度より実質的に優れており、外れ値の結果も含めた場合、NCI−N87を除く全ての細胞株はほぼ完全に死滅した。結果はまた、主として1,1−ジメチルアリルカフェ酸を含む画分S#14の60% F8(27−30)がDLD−1の増殖を実質的に阻害することが示された実施例2の結果を再確認する。
【0246】
実施例5
この実施例では、画分S#15 60% F8(35−40)中のNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物である3−メチル−3−ブテニルカフェ酸の抗胃腸癌活性の評価について説明する(表6、実施例2)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30についての増殖アッセイを用いて行った。
【0247】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用した3−メチル−3−ブテニルカフェ酸は、化学的に合成し、同一性をNMRおよびMSにより確認した。実施例3に詳細に示したのと同じ試験手順を実施例5にも使用した。
【0248】
結果
3−メチル−3−ブテニルカフェ酸についての細胞増殖アッセイの結果を表9に示す。細胞のみ(陰性対照)の結果および5−FU陽性対照の結果は実施例3と同じであるので、表9には含めない。
【0249】
(表9)4種類の胃腸細胞株に対する3−メチル−3−ブテニルカフェ酸の抗増殖活性
【0250】
考察
3−メチル−3−ブテニルカフェ酸は4種類全ての癌細胞株に対して非常に活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を91.6%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を96.0%阻害し、ヒト胃癌細胞NCI−N87の増殖を84.5%阻害し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖を96.3%阻害した。
【0251】
阻害の程度は、既知の抗癌剤5−フルオロウラシルを使用して達成された程度よりも実質的に優れており、HCT−116およびKYSE−30細胞をほぼ完全に死滅したことが観察された。結果はまた、画分S#15の60%F8(35−40)中の不純な3−メチル−3−ブテニルカフェ酸がDLD−1の増殖を実質的に阻害することが示された実施例2の結果を再確認する。
【0252】
実施例6
この実施例では、画分S#24 60% F9(54−57)中のNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物であるピノストロビンカルコンの抗胃腸癌活性の評価について説明する(表6、実施例2)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30についての増殖アッセイを用いて行った。
【0253】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用したピノストロビンカルコンは、粗プロポリスから単離し、大規模に精製した。その同一性をNMRおよびMSにより確認した。実施例3に詳細に示したのと同じ試験手順を実施例6にも使用した。
【0254】
結果
ピノストロビンカルコンについての抗増殖アッセイの結果を表10に示す。細胞のみの結果(陰性対照)、および5−FU陽性対照の結果は実施例3と同じであるので、表10には含めない。
【0255】
(表10)4種類の胃腸細胞株に対するピノストロビンカルコンの抗増殖活性
【0256】
考察
ピノストロビンカルコンは4種類の癌細胞株のうちの3種類に対して高度から中程度の活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を83.3%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を51.2%阻害し、およびヒト食道扁平上皮細胞癌細胞株KYSE−30の増殖を45.0%阻害した。
【0257】
しかし、ピノストロビンカルコンは、ヒト胃癌細胞株NCI−N87に対して活性はなかった。驚くべきことに、ピノストロビンカルコンはこの細胞株の増殖についてわずかであるが、統計的に有意ではない刺激性があった。他の3種類の細胞株に対する阻害の程度は、既知の抗癌剤の5−フルオロウラシルを使用して達成した程度と同じであるか、またはそれよりも実質的に優れていた。結果はまた、画分S#24 60% F9(54−57)中の不純なピノストロビンカルコンがDLD−1の増殖を実質的に阻害することが示された実施例2の結果を再確認する。
【0258】
実施例7
この実施例では、画分S#16 60%のF8(41−43)中のNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物であるピノバンクシン3−O−アセテートの抗胃腸癌活性の評価について説明する(表6、実施例2)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30についての増殖アッセイを用いて行った。
【0259】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用したピノバンクシン3−O−アセテートは純粋な実験室の標準物質であり、同一性をNMRおよびMSにより確認した。実施例3に詳細に示したのと同じ試験手順を実施例7にも使用した。
【0260】
結果
ピノバンクシン3−O−アセテートについての抗増殖アッセイの結果を表11に示す。細胞のみ(陰性対照)の結果および5−FU陽性対照の結果は実施例3と同じであるので、表11には含めない。
【0261】
(表11)4種類の胃腸細胞株に対するピノバンクシン3−O−アセテートの抗増殖活性
【0262】
考察
ピノバンクシン3−O−アセテートは4種類全ての癌細胞株に対して高度から中程度の活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を75.4%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を90.6%阻害し、ヒト胃癌細胞株NCI−N87の増殖を48.2%阻害し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖を68.0%阻害した。
【0263】
阻害の程度は、既知の抗癌剤の5−フルオロウラシルを使用して達成された程度よりも実質的に優れていた。結果はまた、画分S#16の60% F8(41−43)中の不純な3ピノバンクシン3−O−アセテートは、DLD−1の増殖を実質的に阻害することが示された実施例2の結果を再確認する。
【0264】
実施例8
この実施例では、画分S#18 60% F8(52−53)中のNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物であるピノセンブリンの抗胃腸癌活性の評価について説明し、標準物質としてS#37を使用した(表6、実施例2)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30についての増殖アッセイを用いて行った。
【0265】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用したピノセンブリンは、純粋な標準物質であった。実施例3に詳細に示されるのと同じ試験手順を実施例8にも使用した。
【0266】
結果
ピノセンブリンについての抗増殖アッセイの結果を表12に示す。細胞のみ(陰性対照)の結果および5−FU陽性対照の結果は実施例3と同じであるので、表12には含めない。
【0267】
(表12)4種類の胃腸細胞株に対するピノセンブリンの抗増殖活性
【0268】
考察
ピノセンブリンは4種類全ての癌細胞株に対して非常に活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を91.7%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を99.1%阻害し、ヒト胃癌細胞株NCI−N87の増殖を72.5%阻害し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖を96.3%阻害した。
【0269】
阻害の程度は、既知の抗癌剤5−フルオロウラシルを使用して達成された程度よりも実質的に優れており、KYSE−30およびHCT−116については、ほとんど全ての細胞が死滅した。結果はまた、画分S#18 60% F8(52−53)中の不純なピノセンブリンおよびピノセンブリン標準物質S#37の両方がDLD−1の増殖をほぼ完全に阻害することが示された実施例2の結果を再確認する。
【0270】
実施例9
この実施例では、画分S#23 60% F9(49−51)中のNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物であるフェルラ酸ベンジルの抗胃腸癌活性の評価について説明する(表6、実施例2)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30についての増殖アッセイを用いて行った。
【0271】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用したフェルラ酸ベンジルは、化学的に合成し、その同一性をNMR、MSにより確認し、次いで、NZプロポリスから単離したエステルを親酸およびアルコールに加水分解することにより、それらを真の標準化合物と比較して同定した。実施例3に詳細に示されるのと同じ試験手順を実施例9にも使用した。
【0272】
結果
フェルラ酸ベンジル用抗増殖アッセイの結果を表13に示す。細胞のみ(陰性対照)の結果および5−FU陽性対照の結果は実施例3と同じであるので、表13には含めない。
【0273】
(表13)4種類の胃腸細胞株に対するフェルラ酸ベンジルの抗増殖活性
【0274】
考察
フェルラ酸ベンジルは4種類全ての癌細胞株に対して非常に活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を86.0%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を95.9%阻害し、ヒト胃癌細胞株NCI−N87の増殖を87.0%阻害し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖を98.6%阻害した。
【0275】
阻害の程度は、既知の抗癌剤5−フルオロウラシルを使用して達成された程度よりも実質的に優れており、KYSE−30およびHCT−116については、ほとんど全ての細胞が死滅した。結果はまた、画分S#23 60% F9(49−51)中のフェルラ酸ベンジルおよびイソフェルラ酸ベンジルの不純な混合物がDLD−1の増殖を実質的に阻害することが示された実施例2の結果を再確認する。
【0276】
実施例10
この実施例では、画分S#23 60% F9(49−51)中のNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物であるイソフェルラ酸ベンジルの抗胃腸癌活性の評価について説明する(表6、実施例2)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖アッセイを用いて行った。
【0277】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用したイソフェルラ酸ベンジルは、化学的に合成し、その同一性をNMR、MSにより確認し、次いで、NZプロポリスから単離したエステルを親の酸およびアルコールに加水分解することにより、それらを真の標準化合物と比較して同定した。実施例3に詳細に示されるのと同じ試験手順を実施例10にも使用した。
【0278】
結果
イソフェルラ酸ベンジルについての抗増殖アッセイの結果を表14に示す。細胞のみ(陰性対照)および5−FU陽性対照の結果は、実施例3と同じであるので、表14には含めない。
【0279】
(表14)4種類の胃腸細胞株に対するイソフェルラ酸ベンジルの抗増殖活性
【0280】
考察
イソフェルラ酸ベンジルは4種類全ての癌細胞株に対して非常に活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を90.8%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を94.8%阻害し、ヒト胃癌細胞株NCI−N87の増殖を80.0%阻害し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖を95.8%阻害した。
【0281】
阻害の程度は、既知の抗癌剤5−フルオロウラシルを使用して達成された程度よりも実質的に優れており、構造異性体フェルラ酸ベンジルで達成された阻害の程度とほぼ同じであり、KYSE−30およびHCT−116については、ほとんど全ての細胞が死滅した。結果はまた、画分S#23 60% F9(49−51)中のフェルラ酸ベンジルおよびイソフェルラ酸ベンジルの不純な混合物がDLD−1の増殖を実質的に阻害することが示された実施例2の結果を再確認する。
【0282】
実施例11
この実施例では、画分S#27 60% F10中のNZ起源ヨーロッパ型プロポリスから単離した化合物であるクリシン−7−メチルエーテルとしても知られているテクトクリシンの抗胃腸癌活性の評価について説明し、比較標準物質としてS#35を使用した(表6、実施例2)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖アッセイを用いて行った。
【0283】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用したテクトクリシンは真の標準物質であった。実施例2の試料S#35のように適切に溶解していなかったので、テクトクリシンをトリエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解したことを除いて、実施例3に詳細に示したのと同じ試験手順を実施例11にも使用した。
【0284】
結果
テクトクリシンについての抗増殖アッセイの結果を表15に示す。細胞のみ(陰性対照)の結果および5−FU陽性対照の結果は実施例3と同じであるので、表15には含めない。
【0285】
(表15)4種類の胃腸細胞株に対するピノバンクシン3−O−アセテートの抗増殖活性
【0286】
考察
テクトクリシンは4種類全ての癌細胞株に対して、高度から中程度の活性があり、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1の増殖を92.8%阻害し、ヒト結腸癌細胞株HCT−116の増殖を90.1%阻害し、ヒト胃癌細胞株NCI−N87の増殖を54.0%阻害し、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖を87.6%阻害した。
【0287】
阻害の程度は、既知の抗癌剤5−フルオロウラシルを使用して達成された程度よりも実質的に優れていた。結果はまた、不純なテクトクリシンがDLD−1の増殖を実質的に阻害することが示されたS#27 60% F10についての実施例2の結果を再確認するが、今回は試料が試験媒体中に完全に溶解したので、実施例2のS#35と異なる。
【0288】
実施例12
この実施例では、ヨーロッパ型プロポリスと広く関連し、NZプロポリスから単離された場合にはDLD−1に対して不活性であることが示されている化合物で、p−クマル酸としても知られているパラ−クマル酸の抗胃腸癌活性の評価について説明する(実施例2にはデータ示さず)。この研究は、ヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、ヒト結腸癌細胞株HCT−116、ヒト胃癌細胞株NCI−N87、およびヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30の増殖アッセイを用いて行った。
【0289】
200μg/mlの濃度でアッセイに使用したp−クマル酸は、真の標準物質であった。
【0290】
結果
p−クマル酸抗増殖アッセイの結果を表16に示す。細胞のみ(陰性対照)の結果および5−FU陽性対照の結果は、実施例3と同じであるので、表16には含めない。
【0291】
(表16)4種類の胃腸細胞株に対するp−クマル酸の抗増殖活性
【0292】
考察
p−クマル酸は、ヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30に対して中程度の活性を示し、46.1%阻害する。しかし、増殖を14.3%阻害するヒト結腸腺癌細胞株DLD−1、および増殖を17.3%阻害するヒト胃癌細胞株NCI−N87に対しては、統計的に有意ではないがあまり活性はなかった。p−クマル酸は、ヒト結腸癌細胞株HCT−116に対して不活性であるが、統計的に有意ではないが、増殖をわずか2.6%刺激した。
【0293】
したがって、この化合物は、扁平上皮癌細胞株KYSE−30に対して活性があるとみなすことができる。ピノセンブリンおよびp−クマル酸を、それぞれ、それらの強力な活性および弱い活性に基づいて正および負の対照として選択した。
【0294】
実施例13
この実施例では、200μg/mlの濃度で実施例4、5、8および9で試験し、示されたNZ型およびポーランドポプラ型のプロポリスならびにプロポリスから単離された最も生物活性がある化合物の抗食道癌活性の詳細な評価を提供する。この研究は、実施例3に概説した一般的な方法を用いるヒト食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30についての増殖アッセイを用いて行った。試験化合物は、100μg/mlのピノセンブリン、100μg/mlのジメチルアリルカフェ酸、10μg/mlの3−メチル−3−ブテニルカフェ酸、50μg/mlのフェルラ酸ベンジルであった。2種類のプロポリス試料は、ピノセンブリンおよびピノバンクシン3−O−アセテートが濃縮されたNZプロポリスチンキ、p−クマル酸が濃縮されたポーランドプロポリスチンキであった。両方の試料を蒸発乾固させた後、試験溶液に溶解し、最終濃度を50μg/mlにした。蒸発乾固させた後の2種類のプロポリスチンキ試料の組成を、乾燥固体1グラムあたりの化合物(mg)で表17および18に示す。
【0295】
(表17)蒸発乾固させたプロポリスチンキのフラボノイド組成(mg/g乾燥固体)
P−3−O−A=ピノバンクシン3−O−アセテート;ピノ−7−me=ピノセンブリン−7−メチルエーテル
【0296】
(表18)蒸発乾固させたプロポリスチンキのフェノール酸およびエステル組成(mg/g乾燥固体)
CAPE=カフェ酸フェネチルエステル、ベンジルf&iso−f=フェルラ酸ベンジルおよびイソフェルラ酸ベンジル、3M3Bカフェ酸=3−メチル−3−ブテニルカフェ酸、DMAカフェ酸=ジメチルアリルカフェ酸
【0297】
NZプロポリスは、ポーランドプロポリスよりも実質的に高いレベルのフラボノイドのピノセンブリンおよびピノバンクシン3−O−アセテートを有する。ジメチルアリルカフェ酸および3−メチル−3−ブテニルカフェ酸の含有量はまた実質的に高く、一緒に定量したフェルラ酸ベンジルおよびイソフェルラ酸ベンジルの合計レベルも実質的に高かった。ポーランドプロポリスは、実質的に高いレベルのp−クマル酸、および中程度に高いレベルのCAPEを有する。
【0298】
試験した化合物およびプロポリスチンキ試料についてのKYSE−30細胞増殖アッセイの結果を、3種類の濃度での陽性対照5−フルオロウラシル(5−FU)および陰性対照(試験化合物または陽性対照を含まず、培地のみを有する細胞)の結果と共に表19に示す。この表において、nは反復回数であり(n<6は、増殖の100%阻害を与えたいくつかの反復を示す)、ODは570nmで測定した光学密度であり、SEMは測定された平均光学密度値に付随する標準誤差であり、pは、測定がスチューデントt検定を用いて統計的に有意である確率の値であり、本明細書では<0.05とされ(NS=有意ではない)、%阻害は、陰性対照と比較した増殖の低下の割合であり、大きい数字は試験化合物が抗癌増殖能を有することを示す。
【0299】
(表19)食道扁平上皮癌細胞株KYSE−30に対する試験化合物の抗増殖活性
【0300】
考察
この実施例は、プロポリスから単離した化合物がプロポリスよりKYSE−30の増殖阻害においてより効果的であり、医薬製剤に適する候補分子であることを示す。この実施例はまた、ピノセンブリン、ジメチルアリルカフェ酸、フェルラ酸ベンジル、3−メチル−3−ブテニルカフェ酸のための用量反応の指標も提供する。ジメチルアリルカフェ酸およびフェルラ酸ベンジルの両方は、それぞれ実施例4および9で使用した濃度の半分ならびに1/4であっても非常に高い活性があることが示されている。ジメチルアリルカフェ酸についての6回の反復のうち3回の反復のみが100%未満の増殖阻害を与えた。フェルラ酸ベンジルについての6回の反復のうち5回の反復のみが100%未満のKYSE−30の増殖阻害を与えた。3−メチル−3−ブテニルカフェ酸もまた、実施例5で使用した濃度のわずか5%である10μg/mlでまだ中程度の活性(39.3%阻害)を示したので、増殖の非常に強力な阻害剤である。ピノセンブリンは、100μg/mlでまだ高い活性(50.3%阻害)を示した。増殖を50.3%阻害するNZプロポリスは、29.6%阻害するポーランドプロポリスよりも効果的であり、高レベルで高活性のジヒドロフラボノイドのピノセンブリンおよびピノバンクシン−3−O−アセテートならびに低レベルで中程度の活性を示すp−クマル酸を有する利点を反映する。
【0301】
産業上の利用可能性
プロポリスから誘導される化合物またはその画分を含む本発明の抗胃腸癌組成物は、食品および飲料、医療機器、医薬品、機能性食品および医薬品を含む消費財に使用できる。例えば、胃腸癌およびその症状の治療におけるそのような組成物を使用する方法は、医療分野に適用される。