(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445013
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】断熱性物品のための接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 131/04 20060101AFI20181217BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20181217BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20181217BHJP
C09J 5/08 20060101ALI20181217BHJP
D21H 21/56 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
C09J131/04
C09J123/08
C09J11/06
C09J5/08
D21H21/56
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-534705(P2016-534705)
(86)(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公表番号】特表2017-503039(P2017-503039A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014067408
(87)【国際公開番号】WO2015081097
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】61/909,723
(32)【優先日】2013年11月27日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】フアン、 テンジン
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、 クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ワスキ、 ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲッティー、 クリス
【審査官】
松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−022044(JP,A)
【文献】
特開2007−077369(JP,A)
【文献】
特開2006−199950(JP,A)
【文献】
米国特許第05264467(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0224395(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0139878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エマルジョン重合により調製された水系ポリマー、
(b)複数の膨張性マイクロスフェア、および
(c)任意に添加剤
を含有する水性系接着剤であって、水系ポリマーが、
(i)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.5MPaより大きい弾性率、(ii)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.05未満の絶対値log(E)/T勾配、および(iii)90℃で0.6未満のtan d値を有し、水系ポリマーが、
酢酸ビニルエチレン分散体、ポリ酢酸ビニルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー成分を含有するエマルジョン系ポリマーである水性系接着剤。
【請求項2】
添加剤が、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の水性系接着剤。
【請求項3】
さらに架橋剤、消泡剤、保存剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、充填剤、顔料、染料、安定剤、ポリビニルアルコール、保湿剤、およびこれらの混合物を含む、請求項1に記載の水性系接着剤。
【請求項4】
接着剤が、さらに、硝酸アルミニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される多価の水溶性塩である促進剤を含む、請求項1に記載の水性系接着剤。
【請求項5】
以下の工程、
(a)(1)(i)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.5MPaより大きい弾性率、(ii)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.05未満の絶対値log(E)/T勾配、および(iii)90℃で0.6未満のtan d値を有するエマルジョン重合により調製された水系ポリマー、および
(2)複数の膨張性マイクロスフェアを含有する組成物を調製する、
(b)紙、板紙または木材である基材上に組成物を適用する、
(c)実質的に水を除去するために組成物を乾燥する、および
(d)組成物を膨張させる、
を含み、水系ポリマーが、酢酸ビニルエチレン分散体、ポリ酢酸ビニルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー成分を含有するエマルジョン系ポリマーである、物品を形成する方法。
【請求項6】
組成物が、パターンで適用され、パターンが、一連の点、ストライプ、波模様、市松模様、または実質的にフラットな底面を有する多面体の形状である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
セルロース基材および
(a)(i)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.5MPaより大きい弾性率、(ii)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.05未満の絶対値log(E)/T勾配、および(iii)90℃で0.6未満のtan d値を有するエマルジョン重合により調製された水系ポリマー、および
(b)複数の膨張性マイクロスフェア
を含有し、水系ポリマーが、酢酸ビニルエチレン分散体、ポリ酢酸ビニルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー成分を含有するエマルジョン系ポリマーである組成物を含む物品。
【請求項8】
カップ、食品容器、ケース、ボール箱、バッグ、箱、蓋、封筒、ラップまたはクラムシェルである請求項7に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性物品用の接着剤組成物に関する。特に、本発明は、断熱性と構造的完全性を提供するための接着剤を含む接着剤組成物および物品を含む。
【背景技術】
【0002】
伝統的で広く使用されている使い捨ての食品パッケージおよび容器は、クローズドセル押出ポリスチレンフォームから作られている。それらが完全にプラスチックから作られているため、生分解せず、環境に悪影響を与える。いくつかの規制は、環境上の理由から、そのようなパッケージや容器の使用を禁止してきた。
【0003】
より環境に優しい代替食品パッケージは、接着剤で互いに接着したセルロースシート、例えば、板紙、段ボール、紙、コート紙、フィルム等、多くの再生可能な基材から製造される。代替的なパッケージは、典型的には、2つの基材の間に介在する空隙を有する少なくとも二つのセルロース基材を含む。パッケージが扱われ、曲げられるとき、2つの基材間の空隙は、圧縮され、断熱は、これらの圧縮された領域で減少する。パッケージの断熱特性を改善するために、仕切り(divider)(例えば、中芯)を、支持構造体として2つの基材の間に配置することができるか、より高い坪量の基材または非リサイクル板紙を基材として使用してもよい。しかし、上記解決策は、コストを増加させ、また、二酸化炭素排出量を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、セルロースシートに断熱特性および構造的完全性を付加する接着剤組成物を使用することにより、断熱セルロースシートの断熱性を改善することを目的とする。本発明は、断熱性と構造的完全性を提供する、環境的および経済的に健全なパッケージを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、接着剤が、セルロース基材に適用されたときに、断熱性および構造的完全性を提供する接着剤組成物に関する。さらに、本発明は、基材との間に介在する接着剤を含む多層基材の物品を提供する。接着剤は、物品に断熱特性および構造的完全性を提供する。
【0006】
一実施形態では、(a)エマルジョン重合により調製された水系ポリマー;(b)複数の膨張性マイクロスフェア;および(c)任意に添加剤を含有する接着剤組成物を提供する。水系ポリマーは、(i)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.5MPaより大きい弾性率;(ii)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.05未満の絶対値log(E)/T勾配(absolute log(E)/T slope);および(iii)90℃で0.6未満のtan d値を有する。
【0007】
別の実施形態は、以下の工程、
(1)エマルジョン重合により調製された水系ポリマーおよび複数の膨張性マイクロスフェアを含有する組成物を調製する;(2)紙、板紙、木材、箔、プラスチックまたはプラスチックフィルムである基材上に組成物を適用する;(3)実質的に水を除去するために組成物を乾燥する;および(4)組成物を膨張させる、を含む、物品を形成する方法を提供する。水系ポリマーは、(i)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.5MPaより大きい弾性率;(ii)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.05未満の絶対値log(E)/T勾配;および(iii)90℃で0.6未満のtan d値を有する。
【0008】
さらに別の実施形態では、セルロース基材およびエマルジョン重合により調製された水系ポリマーおよび複数の膨張性マイクロスフェアを含有する組成物を含む物品を対象とする。ポリマーは、(i)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.5MPaより大きい弾性率;(ii)70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.05未満の絶対値log(E)/T勾配;および(iii)90℃で0.6未満のtan d値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、2つの複合材の時間対温度のプロットであり、本発明の接着剤を有する複合材(太線)および本発明の接着剤を有さない複合材(細線)である。
【
図2】
図2は、191°F、2psiの力で2分間、複合材を圧縮したときの時間に対する%圧縮プロットである。
【0010】
本発明は、加熱または放射線を照射する際に接着剤に断熱性と構造的完全性を提供する接着剤組成物を提供する。接着剤および接着剤で製造された物品は、従来のクローズドセル押出ポリスチレン容器よりもより環境に優しい(例えば、生分解性)。
【0011】
本発明は、エマルジョン重合により調製される水系ポリマーおよび複数の膨張性マイクロスフェアを含む接着剤組成物が、改善された構造的完全性及び断熱性を提供することを見出したことに基づく。本明細書に記載の接着剤組成物は、多層基材、特にセルロース基材において有用であり得る。本発明の接着剤組成物の使用により、高い断熱空間を、接着点で結合されている二枚の基材の間に提供することができる。多層基材を含むこのような物品は、仕切りの必要性を回避し、したがって、それは、より環境に配慮した製品である。本明細書に記載の有用な断熱製品は、ホット飲料カップや蓋、冷たい飲料カップや蓋、熱い食品用容器や蓋、冷たい食品用容器や蓋、冷凍カートンやケースなどのような消費者用紙製品が挙げられる。
【0012】
接着剤組成物は、任意の数の材料から作られてよい。望ましくは、接着剤組成物は、エマルジョンポリマー成分、複数のマイクロスフェア、および任意に、可塑剤及び水を含む。接着剤組成物は、さらに、1つまたは複数の保存剤、粘着付与剤又は充填剤を含むことができる。所望により接着剤及び接着剤組成物の断熱性に悪影響を与えない他の材料を使用することができる。
【0013】
接着剤組成物はエマルジョン重合により調製される水系ポリマーを含む。エマルジョンポリマーは任意の量で接着剤組成物中に存在してもよく、望ましくは、組成物の硬化前の接着剤組成物の約50〜約99.5重量%で、好ましくは、約50〜約70重量%で存在してもよい。エマルジョンポリマーに応じて、固体レベルは、エマルジョンポリマーに基づいて、約40重量%〜約60重量%まで変化する。
【0014】
水により高度に可塑化できるように、水系ポリマーを選択することができる。これは、加熱中のマイクロスフェアの効率的な膨張を可能にする。好ましくは、エマルションポリマーは、親水性保護コロイドによって安定化される。エマルジョン重合によって調製される水系ポリマーは、単一グレードまたは合成エマルジョンポリマーまたは天然起源のポリマーの混合物であってもよい。エマルジョン重合によって調製される水系ポリマーは、酢酸ビニルエチレン分散体、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルポリビニルアルコール、デキストリン安定化ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル−エチレンコポリマー、ビニルアクリル酸、スチレンアクリル酸、アクリル酸、スチレンブチルゴム、ポリウレタンおよびこれらの混合物を含む任意の所望のポリマー成分を含んでもよい。
【0015】
一実施形態では、水系ポリマーは、70℃〜110℃の範囲の温度範囲で0.5MPaより高い弾性率を有する。すべての報告された弾性率の測定は、特に断らない限り、ASTM D5026に従って行った。別の実施形態では、水系ポリマーは、85℃〜100℃の範囲の温度範囲で5MPaよりも高い弾性率を有する。さらに別の実施形態において、水系ポリマーは、70℃〜110℃の範囲の温度範囲において0.05未満の絶対値log(E)/T勾配を有する。別の実施形態では、水系ポリマーは、85℃〜100℃の範囲の温度範囲で0.008未満の絶対値log(E)/T勾配を有する。さらに別の実施形態において、水系ポリマーは、90℃で0.6未満のtan d値を有する。
【0016】
接着剤組成物は、さらに複数の予め膨張させたまたは膨張性のマイクロスフェアを含む。予め膨張させたマイクロスフェアは、完全に膨張しており、さらなる膨張を受ける必要はない。本発明で有用な膨張性マイクロスフェアは、熱および/または放射線エネルギー(例えば、マイクロ波、赤外線、高周波、および/または超音波エネルギーを含む)の存在下で、サイズの膨張が可能であるべきである。本発明で有用なマイクロスフェアには、例えば、炭化水素コアおよびポリアクリロニトリルシェルを有するもの(商標名DUALITE(登録商標)として販売されているもの等)を含む熱膨張性ポリマーマイクロスフェア、および他の類似のマイクロスフェア(商標名EXPANCEL(登録商標)として販売されているもの等)が含まれる。膨張性マイクロスフェアは、直径約12ミクロンから約30ミクロンを含めて、任意の未膨張のサイズを有していてもよい。熱の存在下で、本発明の膨張性マイクロスフェアは、直径を約3倍から約10倍増加させることが可能であり得る。接着剤組成物中でマイクロスフェアの膨張の際、接着剤組成物は気泡様の材料になり、これが断熱性を改良する。以下で説明するように、マイクロスフェアの膨張は、部分的に固化された接着剤組成物中で行われることが望ましいことがある。
【0017】
膨張性マイクロスフェアは、これらが膨張を開始する特定の温度、およびこれらが最大の膨張に達する第2の温度を有する。異なるグレードのマイクロスフェアは、異なる膨張温度(Texp)および最大膨張温度(Tmax)を有する。例えば、1つの特に有用なマイクロスフェアは、約80℃〜約100℃のTexpを有する。いずれの特定グレードのマイクロスフェアを本発明に用いてもよいが、マイクロスフェアのTexpおよびTmaxは、配合時および処理時に考慮しなければならない。マイクロスフェアが最大膨張に達する温度(Tmax)は、望ましくは、約120℃から約130℃である。
【0018】
特定のマイクロスフェアおよびその個々のTexpおよびTmaxの選択は、本発明に対して重大な意味は持たないが、これらの温度に応じて、処理温度を変更することができる。接着剤組成物が完全に乾燥される前に、これらのマイクロスフェアは、組成物中で移動することができ、膨張することができる。しかし、接着剤組成物が完全に乾燥すると、マイクロスフェアは同じ場所に実質的に固定されて、その膨張を、不可能ではないにしても困難にする。
【0019】
好ましい実施形態では、膨張性マイクロスフェアは、組成物の硬化前の接着剤組成物の約0.1重量%〜約10重量%、より望ましくは組成物の硬化前の接着剤組成物の約0.5重量%〜約7重量%、最も望ましくは、組成物の硬化前の接着剤組成物の約1重量%〜約5重量%の量で接着剤組成物中に存在するのが望ましい。膨張性マイクロスフェアの膨張比およびマイクロスフェアのローディングレベルは、相互に関連する。
【0020】
マイクロスフェアの完全に膨張するサイズに応じて、接着剤中の膨張性マイクロスフェアの量を調整することができる。組成物中に使用される特定の膨張性マイクロスフェアに応じて、組成物中のマイクロスフェアの所望の量を変更することができる。典型的には、接着剤組成物が、非常に高い濃度の膨張性マイクロスフェアを含む場合、マイクロスフェアの膨張時の不十分な接着および強度があり得、それによって複合材の構造的完全性を弱める。
【0021】
硬化前の接着剤組成物の約0.1%〜約10重量%の膨張性マイクロスフェアの添加が、改善された構造的完全性を可能にする。膨張した接着剤は、湿式または部分的に乾燥した接着剤コーティングの総体積の150%より大きい、好ましくは200%より大きい。
図2に示すように、接着剤は、191°F、2psiの力で2分間、圧縮したときですら複合材の約75%の高さの離脱(height separation)(接着剤とともに紙基材が保持される)を提供する。したがって、加熱圧縮への曝露後であっても、接着剤は、多層基材への構造的完全性を提供する。
【0022】
接着剤組成物は、任意に可塑剤を含む。例示的な可塑剤は、ジエチレングリコールジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアートなどのBENZOFLEX(登録商標)として入手可能なジベンゾアートである。
【0023】
接着剤組成物は、任意の極性溶媒、特に水を配合物中に場合によって含んでいてもよい。
【0024】
接着剤組成物は、任意の粘着性付与剤、保湿剤、架橋剤、保存剤、例えば、酸化防止剤、殺生物剤;充填剤、顔料、染料、安定剤、レオロジー調整剤、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物を場合によってさらに含む。これらの成分は、組成物を固化する前の接着剤組成物の約0.05重量%から約15重量%の量で含めることができる。例示的な保存剤には、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが含まれる。典型的には、保存剤は、組成物を固化する前の接着剤組成物の約0.05重量%から約0.5重量%の量で使用してもよい。
【0025】
架橋剤の添加は、マイクロスフェアが膨張した後の接着剤の構造的完全性をさらに増加させる。
【0026】
接着剤組成物はさらに促進剤を含むことができる。促進剤は、一般的に入手可能な硝酸アルミニウム(A1(NO
3)
3)などの水溶性塩、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム(ジルコニウムケミカルズからBacote 20として入手可能)を含む水溶性塩からの多価カチオンである。多価の水溶性塩の添加は、接着剤組成物の膨張時の放射に必要な時間を短縮する。添加された場合、接着剤組成物の総重量に基づいて約0.05〜約1、好ましくは約0.1〜0.3重量%使用してもよい。
【0027】
接着剤は、室温で合体を開始することができるが、接着剤組成物は、依然として高い含水量を有していることもあり、実質的に流体である。膨張性マイクロスフェアを有する接着剤に対して、ある形態のエネルギーが接着剤に導入されて、接着剤を完全に乾燥する前に、マイクロスフェアを膨張させる。エネルギーの形態は、典型的には伝導、誘導または放射線からの熱である。予め膨張させたマイクロスフェアを含有する接着剤に対しては、追加の形態のエネルギーは必要ない。
【0028】
膨張性および予め膨張させたマイクロスフェアの両方を含有する接着剤に対して、接着剤の乾燥を助けるために、ヒーターおよびファンを使用して過剰な水を除去してもよい。製品の製造の特に望ましい実施形態において、接着剤組成物は、基材の表面(または表面(複数))に適用され、接着剤を合体するのに十分な熱に当てられる。接着剤の合体の開始時において、かつ接着剤がまだ実質的に流体様である間、接着剤は、接着剤およびマイクロスフェアを同じ場所に保持するのを助けることができるが、マイクロスフェアに膨張する自由を与える。一実施形態では、マイクロスフェアを膨張させるのに十分な温度まで熱を上昇させてもよい。ヒーターに対して、マイクロスフェアのTexpとTmaxの間の温度範囲に設定することが好ましい。最後に、接着剤組成物から水を完全に追い出すのに十分な温度まで再度温度を上昇させる。オーブン中でまたは熱ローラーの使用を介することを含めて、熱を任意の所望の方法によって適用してもよい。様々な段階(固化の開始、マイクロスフェアの膨張、および接着剤の完全な乾燥)は、直接の熱の代替として、またはそれに加えて、放射線エネルギーによって達成されてもよいことに留意するべきである。即ち、例えば、様々な段階は、マイクロ波または高周波放射線の使用によって達成してもよい。他に伝導、誘導加熱の方法を工程に用いてもよい。さらに、この工程は、熱の適用と放射線の適用の任意の組合せを含んでいてもよい。例えば、接着剤の合体の開始は、直接加熱によって達成されてもよく、一方、マイクロスフェアの膨張は、放射線エネルギーの適用によって達成されてもよい。
【0029】
接着剤の合体を向上させるために、組成物中に他の添加剤が含まれていてもよく、望ましい。
【0030】
本発明の接着剤は、典型的には、高温および/または低温での使用を対象とし、断熱性を必要とする断熱性のパッケージに特に適する。
【0031】
別の実施形態は、以下の工程を含む、改善された構造的完全性及び断熱特性を有する物品の製造方法を提供する:(a)第1の面及び第2の面を有する第1の基材を提供する;(b)第1の面及び第2の面を有する第2の基材を提供する;(c)接着剤を形成するために(i)酢酸ビニルエチレン分散体、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルポリビニルアルコール、デキストリン安定化ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル−エチレンコポリマー、ビニルアクリル酸、スチレンアクリル酸、アクリル酸、スチレンブチルゴム、ポリウレタンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるエマルジョン系ポリマー;(ii)複数の膨張性マイクロスフェア、および任意に(iii)可塑剤および(iv)水を組み合わせることにより、接着剤組成物を調製する;(d)(i)第1の基材の第1の面の表面、(ii)第2の基材の第2の面の表面または(iii)第1の基材の第1の面の表面および第2の基材の第2の面の表面の両方のいずれかに接着剤を適用する;(e)第1の基材および第2の基材をともに接触させ、適用した接着剤を複合構造を形成するために2枚の基材間に介在させる;および(f)第1および第2の基材を共に接着する結合を形成する膨張性マイクロスフェアを膨張させるために、熱及び/又は放射線を適用する。マイクロスフェアを含む接着剤を有する得られた多層基材は、改善された構造的完全性と断熱性を有する。
【0032】
接着剤は、基材上に適用する直前に形成されるか、または事前に予め作成され、必要なときまで貯蔵してもよい。
【0033】
別の実施形態は、断熱パッケージおよび断熱パッケージを形成する方法を対象とする。該パッケージには、カップ、食品容器、ケース、ボール箱、バッグ、蓋、箱、封筒、ラップ、クラムシェル等が含まれる。パッケージの基材は、同様のパッケージに使用される従来の基材に比較して、低減された坪量、厚さおよび繊維含量を有することが特に好ましい。
【0034】
前記基材には、ファイバーボード、チップボード、段ボール、ダンボール中芯、ソリッド漂白ボード(SBB)、ソリッド漂白亜硫酸塩ボード(SBS)、ソリッド無漂白ボード(SLB)、裏白チップボード(WLC)、クラフト紙、クラフトボード、コート紙、バインダーボード、および低減された坪量の基材が含まれる。
【0035】
一実施形態において、第1の面および第2の面を有する実質的にフラットな紙を含む断熱シートを提供する。紙の第1の面は、それに固定された接着剤組成物中の複数の膨張性マイクロスフェアを含み、ここにおいて、複数の膨張性マイクロスフェアはすでに膨張しており、該接着剤組成物は乾燥されている。したがって、該製品は、その第1の面上に、接着された気泡様の組成物を有する紙を含む。膨張性マイクロスフェアには、上記のものが含まれ、接着剤組成物は、エマルジョンポリマー、および任意選択の極性溶媒、可塑剤、保湿剤、保存剤、または充填剤を含めた、上記の成分を含む。
【0036】
接着剤組成物は、一連の点、ストライプ、波模様、市松模様、実質的にフラットな底面を有する任意の一般的な多面体の形状、およびこれらの組合せを含めて、所望の任意の配置で、紙の第1の表面に適用されてもよい。これらのパターンの適用は、パッケージ中の接着剤の量を低下させる。さらに、接着剤組成物は、一連の円筒で第1の表面に適用されてもよい。さらに、所望により、接着剤組成物は、第1の表面全体を覆う(全面的積層)または第1の表面の一部を覆う、接着剤の実質的にフラットなシートとして第1の表面に適用されてもよい。接着剤組成物は、所望により、熱の存在下で適用されてもよい;しかし、適用における熱は、膨張性マイクロスフェアが膨張する前に接着剤組成物を完全に固化させるほど高くないことが重要である。当業者であれば、必要以上の実験をしなくとも、圧力のこの量を決定することができる。場合によって、第2の紙を、接着剤組成物の上面に適用して、第1の紙−膨張性マイクロスフェアを有する接着剤−第2の紙のサンドウィッチ構造を形成してもよい。
【0037】
接着剤組成物が紙の第1の面に適用された後、1つの選択肢は、湿性の接着剤をその上に有する紙を、熱および/または放射線エネルギーに暴露して、接着剤組成物を合体させ始めてもよい。したがって、該接着剤組成物は、複数のマイクロスフェアを含む成分を同じ場所に固定し、紙の表面にそれらを接着させる。接着剤組成物を、組成物が成分を固定し、それらが紙の表面に固着するのを維持するが、完全に乾燥していない点まで部分的にのみ乾燥させることが望ましくなり得る。当業者であれば、必要以上の実験をしなくとも状態を決定することができる。上記で説明したように、接着剤組成物を部分的にのみ乾燥させること(即ち、接着剤中により多くの水分、少なくとも10%の含水量を残すこと)は、膨張性マイクロスフェアが膨張することを可能にする。
【0038】
接着剤が合体を開始した後、次いで、紙を、複数のマイクロスフェアを膨張させるのに十分な熱および/または放射線エネルギーに暴露させる。一実施形態において、湿性の接着剤をその上に有する紙を、TexpとTmaxの範囲の間の、マイクロスフェアの少なくとも大多数を膨張させるのに十分な温度の熱に暴露する。別の実施形態において、湿性の接着剤をその上に有する紙を、膨張性マイクロスフェアの少なくとも大多数を膨張させるのに十分なマイクロ波または赤外線エネルギーに暴露する。得られた生成物は、膨張したマイクロスフェアをその中に有する接着剤を有する紙である。次いで、接着剤組成物は、接着剤組成物を完全に固化させるのに十分な熱および/または放射線エネルギーに暴露してもよい。
【0039】
所望により、紙の第1の面に接着剤組成物を適用後、第1の面および第2の面を有する第2の紙準備し、第2の紙の第1の面を、適用された接着剤組成物の表面に適用して、サンドイッチ構造を形成してもよい。その後、上記で説明したように、マイクロスフェアの膨張および接着剤の固化が起こり得る。
【0040】
マイクロスフェアを含有する本発明の接着剤で形成される多層基材パッケージは、高温および/または低温における一定の応力下のひずみに耐えるパッケージの能力を改善する。当業者には、高温においてマイクロスフェアの添加により接着剤のひずみが、増加することが予想される。本発明の接着剤は、典型的には、高温での使用を対象とする消費者パッケージに特に適する。本発明の接着剤は、パッケージの紙ボード間の構造的な支持を提供し、これにより、パッケージの構造的完全性を保持し、およびそれによってパッケージの断熱性が改善される。
【0041】
一実施形態では、任意のさらなる基材、例えば、仕切りを有することなく、2枚の基材と接着剤を含有する多層基材が提供される。これまでは、仕切り層を含むことなく、必要な断熱性および構造的完全性を有する生成物を得ることは困難であった。接着剤は完全に2つの基材に被覆または選択されたまたはランダムなパターンで適用されてもよい。パターン化された接着剤を有する断熱性物品は、2つの基材内の隙間を可能にする。
【0042】
さらに別の実施形態では、断熱性物品は、実質的に平坦な基材と、平坦でない、丸い基材を含む。接着剤は、断熱性物品を形成するために、実質的に平坦な基材、平坦でない基材、あるいは両方の基材のいずれかに適用される。接着剤が基材(複数を含む)の表面を完全に被覆または基材(複数を含む)の表面を選択的に被覆するために適用することができる。パターンはランダムまたは種々の規則的なデザインであることができる。したがって、得られた物品は、ライナー表面間の断熱空間を有する。パターン化された接着剤を有する物品は、2枚の基材間に介在する仕切りを模倣する。両基材間の空間は、接着剤によって生成され、維持される。
【0043】
別の典型的な消費者のパッケージは、より低い坪量の基材及びより低い坪量の仕切りで形成された段ボール箱のパッケージである。基材と仕切りは、従来の断熱段ボールと比較して減少した坪量を有する紙で作られている。
【0044】
本発明は、以下の実施例の分析を通してより良く理解することができるが、それらは非限定的であり、本発明の説明を助けることのみが意図されている。
【実施例】
【0045】
例1−水系樹脂エマルジョンの弾性率、絶対値(log(E)/T)勾配およびタンデルタ
【0046】
すべての報告された測定値は、ASTM D5026に従って行った。
【0047】
【表1】
【0048】
例1−接着剤の形成
【0049】
以下の組成を有する接着剤組成物を調製した。
【0050】
【表2】
【0051】
上記の成分を容器中で混合した後、サンプルAを複合材カップを形成するために0.1g/ftの薄いビーズストライプとして2つの紙基材の間に適用した。ビーズストライプは、マイクロ波加熱により膨張した。比較の複合材を同じ方法によって作製し、同じフライ分離(fly separation)を維持するが、支持体としての接着性ストライプは何ら有さなかった。
【0052】
例2−断熱特性
接着剤サンプルAを有する複合材カップの断熱特性について試験した。オープンリング上に2つの熱電対(Digi−Sense,Type J)を、両側に配置し、2つの熱電対のみがカップの上面に置かれるようにカップをリング状に構成した。二つの圧縮可能な発泡体もまた、接触点での圧力を模倣するために、熱電対の他方に配置した。190.25°Fの水を複合材カップに注ぎ、熱電対の温度を記録した。5秒間隔での熱電対測定値の平均を、表2に示し、時間に対する全体の温度プロットを
図1に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表2および
図1に示すように、複合材カップは、比較複合材温度より低い温度を有し、複合材カップでは熱を良好に断熱したことを示す。約50秒の時点およびその後、測定された複合材温度は比較複合体の温度よりも14〜15°F低く安定化した。
【0055】
例3−構造的完全性
膨張した接着剤は、高温圧縮試験中の複合材の構造的完全性を提供した。サンプルAの3ビーズ(大きさ直径2.4mm)を、2つの基材の間に適用し、マイクロ波加熱により膨張した。ASTM法D5024に従って、複合材は、その後、191°F、2psiの力で2分間圧縮した。圧縮%の結果を表3及び
図2に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
接着剤を有する複合材は、70%より大きく維持することができ、熱圧縮試験時の元の高さの75%よりも大きい(離脱)。さらに、接着剤は、全体の2分間に亘って、複合材のこの構造的完全性を提供することができる。
【0058】
例4−ホットクリープ試験
ホットクリープ試験をサンプルAの接着剤と2つの基材で作られた複合材で行った。固体漂白亜硫酸ボード上に、サンプルAの5つの1/2”アレイドットを配置し、第2の固体漂白亜硫酸ボードで覆った。この複合材は、次いで、TAインスツルメンツDMA Q−800に入れ、191°F(88.3℃)に設定したホットプレートで加熱し、その後ASTM D5024(0.25inch
2)に従って試験した。300gの力に到達した時点で、歪み率を測定した(時間0とする)。同じホットクリープ試験を、比較接着剤および同じ基材で作られた複合材を用いて行い、歪み率を表4に記載する。
【0059】
【表5】
【0060】
表4に示すように、接着剤Aで作られた複合材は、比較接着剤で作られた複合材よりも高温クリープ試験中、全体的に低い歪み率を有していた。接着剤Aは、全体的に低い歪み率を維持し、120秒でさえ元の構造の高さの75%を維持することができた。
【0061】
例5−促進剤の効果
【0062】
サンプル接着剤A(促進剤無し)及びB(促進剤あり)をマイクロ波中で膨張させた。マイクロ波膨張のために、サンプルのウェットドットを基材上に配置し、その後同じ時間マイクロ波中で膨張させた。サンプルのウェット対するドライおよびドライに対するドライの膨張比を表5に記載する。
【0063】
【表6】
【0064】
表5に示すように、サンプルB(促進剤あり)は、ドライ/ウェット及びドライ/ドライの両方でサンプルAより高い体積膨張率を有していた。サンプルBが、サンプルAよりもマイクロ波で先に、膨張することが観察された。また、サンプルBは、マイクロ波中で同じ体積膨張に到達するには、サンプルAよりも少ない時間を必要とすることが観察された。