(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[インクジェット用黒色遮蔽材]
本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材は、芳香環を有しないエポキシ化合物、光酸発生剤、カップリング剤、黒色顔料および希釈剤を含むことを特徴とする。
【0017】
インクジェット用黒色遮蔽材の25℃における粘度は、1〜50mPa・sであることが好ましく、5〜30mPa・sであることがより好ましい。インクジェット用黒色遮蔽材の粘度を上記数値範囲内とすることにより、インクジェット用黒色遮蔽材のインクジェット印刷適性を向上することができる。本発明において、インクジェット用黒色遮蔽材の粘度は、JIS K 2283に準拠して測定することができる。
【0018】
本発明のインクジェット用黒色遮蔽材を、インクジェット法、コーター法、ディスペンサー法、スプレー法またはグラビア印刷法等により、ガラス板、木材または紙等の上に、塗布し、塗膜を形成し、これに対し、活性エネルギー線を照射することにより、硬化させ、遮蔽部を形成することができる。遮蔽性という観点から、厚さ2μmの遮蔽部のOD値は、1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
なお、本発明においてOD値は、透過濃度計(X−Rite社製、361T)を用いて、透過光量を測定し、式OD値=−log
10(T/100)に基づいて算出することができる。
また、本発明において、活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線、マイクロ波、高周波等のラジカル性活性種を発生させうるものが挙げられる。
【0019】
以下、本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材に含まれる各種材料について説明する
【0020】
[エポキシ化合物]
本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材に含まれるエポキシ化合物は、芳香環を有しない、単官能および2官能以上のエポキシ化合物をそれぞれ含むことを特徴とする。インクジェット用黒色遮蔽材が、このような2種のエポキシ化合物を含むことにより、塗布ムラ防止性を向上できると共に、密着力低下防止性を顕著に改善することができる。
本発明において、芳香環とは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環のことをいう。
エポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、ノルボルネン型エポキシ化合物および水添ビスフェノール型化合物等が挙げられる。
インクジェット用黒色遮蔽材の変色防止性および密着力低下防止性という観点からは、芳香環を有しない、単環能のエポキシ化合物は、脂環式または脂肪族エポキシ化合物であることが好ましい。
インクジェット用黒色遮蔽材の変色防止性および密着力低下防止性という観点からは、芳香環を有しない2官能以上のエポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物であることが好ましい。
インクジェット用黒色遮蔽材は、単官能および2官能以上のエポキシ化合物をそれぞれ2種以上含んでいてもよい。
【0021】
脂環式エポキシ化合物は、芳香族性を有しない飽和または不飽和の炭素環を1以上有し、かつ芳香環を有しない化合物であり、例えば、シクロヘキセンオキサイド基を有する化合物が好ましい。
2官能以上の脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロへキシル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、および水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、単官能の脂環式エポキシ化合物としては、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0022】
脂肪族エポキシ化合物は、脂環構造を有しない、脂肪族エポキシ化合物であり、2官能以上の脂肪族エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリセリントリグリシジルエーテル等が例として挙げられる。また、単官能の脂肪族エポキシ化合物としては、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、等が挙げられる。
【0023】
芳香環を有しない、2官能以上の脂環式エポキシ化合物は、市販品のものであってもよく、例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド3000、セロキサイド8000、EHPE3150、サイクロマーM−100、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403(以上、株式会社ダイセル製)、YX−8000、およびYX−8034(三菱ケミカル株式会社製)サンソサイザーE−PS等を挙げることができる。
芳香環を有しない、単官能の脂環式エポキシ化合物はセロキサイド2000(株式会社ダイセル製)E0956(東京化成工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0024】
芳香環を有しない、2官能以上の脂肪族エポキシ化合物は、市販品のものであってもよく、例えば、エポライト40E、エポライト100E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P(共栄社化学株式会社製)等が挙げられる。
芳香環を有しない、単官能のエポキシ化合物は、例えば、EX−111、EX−121、EX−171、EX−191(ナガセケムテックス株式会社製)等を挙げることができる。
【0025】
インクジェット用黒色遮蔽材中におけるエポキシ化合物の含有量は、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。これにより、インクジェット用黒色遮蔽材の変色防止性および密着力低下防止性をより向上することができる。
【0026】
また、単官能のエポキシ化合物と2官能以上のエポキシ化合物の比率は、質量基準で、1:99〜90:10であることが好ましく10:90〜50:50であることがより好ましい。これにより、インクジェット用黒色遮蔽材の変色防止性および密着力低下防止性をより向上することができる。
【0027】
[光酸発生剤]
光酸発生剤は、光吸収部であるカチオン部分と、酸発生部であるアニオン部分を有し、本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材に含まれる光酸発生剤は、カチオン部分がヨードニウムイオンである、ヨードニウム塩系の光酸発生剤であることを特徴とする。なお、本発明の特性を損なわない範囲において、インクジェット用黒色遮蔽材は、非ヨードニウム塩系の光酸発生剤を含んでいてもよい。
【0028】
光酸発生剤のアニオン部分は、PF
6−、BF
6−およびSbF
6−等が挙げられる。これらの中でも、密着力低下防止性という観点から、PF
6−が好ましい。
【0029】
したがって、光酸発生剤は、アニオン部分をPF
6−とする芳香族ヨードニウム塩であることが好ましく、例えば、4−イソブチルフェニル(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
インクジェット用黒色遮蔽材は、光酸発生剤を2種以上含んでいてもよい。
【0030】
光酸発生剤は、市販品のものであってもよく、例えば、Omnicat 250(IGM Resins社製)、B2380、D2238(以上、東京化成工業株式会社製)およびWPI−113、WPI−170(以上、和光純薬工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0031】
インクジェット用黒色遮蔽材中における光酸発生剤の含有量は、3〜15質量%であることが好ましく、4〜10質量%であることがより好ましい。これにより、本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材の変色防止性および密着力低下防止性をより向上することができる。
【0032】
[カップリング剤]
本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材は、カップリング剤を含む。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤およびアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、ガラス等との密着性という観点から、シランカップリング剤が好ましい。インクジェット用黒色遮蔽材は、カップリング剤を2種以上含んでいてもよい。
【0033】
カップリング剤は、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基およびイソシアネート基等の有機基を有していてもよく、これらの中でも、密着力低下防止性という観点から、エポキシ基を有することが好ましい。
【0034】
したがって、カップリング剤は、エポキシ基を有するシランカップリング剤であることが好ましく、例えば、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
カップリング剤は、市販品のものであってもよく、例えば、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402およびKBE−403(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
インクジェット用黒色遮蔽材中におけるカップリング剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、1〜4質量%であることがより好ましい。これにより、本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材の硬化性およびインクジェット適性を維持しつつ、密着力低下防止性を向上することができる。
【0037】
[黒色顔料]
黒色顔料は、無機顔料であっても、有機顔料であってもよく、例えば、カーボンブラック、四三酸化鉄、黒酸化チタン、銅マンガンブラック、銅クロムブラックおよびコバルトブラック等の無機顔料、並びにシアニンブラックおよびアニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。また、本発明においては、複数の色の顔料を混合し、黒色とした顔料混合物も黒色顔料に含まれる。
上記した中でも、密着力低下防止性という観点から、カーボンブラックが好ましい。また、カーボンブラックを使用することにより、すじやゆず肌状の模様が形成されていない、平滑性の高い遮蔽部を形成することができる。さらに、遮蔽部のOD値を向上することでき、遮蔽性をより高めることができる。
インクジェット用黒色遮蔽材は黒色顔料を2種以上含むことができる。
【0038】
インクジェット用黒色遮蔽材中における黒色顔料の含有量は、5〜10質量%であることが好ましく、6〜8質量%であることがより好ましい。これにより、本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材のインクジェット適性を維持しつつ、形成される遮蔽部の遮蔽性をより向上することができる。
【0039】
[希釈剤]
本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材は、希釈剤を含み、これにより、インクジェット用黒色遮蔽材の粘度を調整することができ、インクジェット印刷適性を向上することができる。インクジェット用黒色遮蔽材は、希釈剤を2種以上含むことができる。
【0040】
希釈剤としては、重合反応に関与する反応性希釈剤であっても、重合反応に関与しない非反応性希釈剤であっても良いが、インクジェット塗布性の観点から非反応性希釈剤が好ましい。
【0041】
非反応性希釈剤としては、公知慣用のものを使用することができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサン等を挙げることができる。
上記した希釈剤の中でも、アセテート系希釈剤が好ましく、沸点が100℃超のアセテート系希釈剤がより好ましく、130℃超のアセテート系希釈剤がさらに好ましい。これにより、形成される遮蔽部の平滑性をより向上することができる。すなわち、上記した希釈剤の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび酢酸ブチルが好ましい。
さらに、これらの中でも、インクジェット印刷適性という観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートおよびカルビトールアセテートが好ましい。
なお、沸点が100℃超の希釈剤と、沸点が100以下の希釈剤を併用してもよい。
【0042】
反応性希釈剤としては、公知慣用のものを使用することができ、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
インクジェット用黒色遮蔽材中における希釈剤の含有量は、特に限定されるものではなく、インクジェット用黒色遮蔽材に含まれる各種構成材料に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、10〜30質量%とすることができる。
【0044】
[顔料分散剤]
本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材は、顔料分散剤を含むことができる。これにより、インクジェット用黒色遮蔽材のインクジェット印刷適性を向上することができる。顔料分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベへニルエーテル、ポリイソベーとおよびオレイン酸デカグリセル等が挙げられる。インクジェット用黒色遮蔽材は、顔料分散剤を2種以上含むことができる。
【0045】
インクジェット用黒色遮蔽材中における顔料分散剤の含有量は、0.1〜3質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがより好ましい。これにより、インクジェット用黒色遮蔽材のインクジェット適性をより向上することができる。
【0046】
[添加剤]
インクジェット用黒色遮蔽材は、本発明の特性を損なわない範囲において、顔料分散剤、酸素除去剤、蛍光増白剤、界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、耐電防止剤および抗菌剤等の添加剤を含むことができる。
【0047】
本発明のインクジェット用黒色遮蔽材は、薄膜化および基板の外郭に位置した回路配線の隠蔽性との両立の観点から、ディスプレイ機器における薄膜形態のベゼルパターン形成用として好適に用いられる。塗布方法はインクジェット法を用いて塗布されることが好ましい。この理由として、フォトリソグラフィー方法の場合に比べ、パターン形成のための製造コストが低廉で済み、工程が複雑とならない点と、スクリーン印刷方法に比べ、制約なく微細なパターン形成が可能である点が挙げられる。
【実施例】
【0048】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1〜10および比較例1〜4)
[インクジェット用黒色遮蔽材の調製]
下記表1に記載の各成分を配合・撹拌し、インクジェット用黒色遮蔽材を得た。なお、表中の数値は、質量%を表す。
【0050】
(塗布ムラ防止性)
富士グローバルグラフィックシステムズ株式会社製のマテリアルプリンターDMP−2831を用い、実施例および比較例のインクジェット用黒色遮蔽材を、化学強化ガラス板上に塗膜を形成した後、直後に高圧水銀灯(ORS社製、HMW−713)を用いて、活性エネルギー線を照射し、該塗膜を硬化させ、厚さ2μmの遮蔽部を形成させた。このとき、積算照射量は、1000mJ/cm
2とした。
遮蔽部の外観を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
<評価基準>
○:遮蔽部表面にすじやゆず肌状の模様が形成されていなかった。
△:遮蔽部表面に多少のすじやゆず肌状の模様が形成されていたが、実用上問題なかった。
×:遮蔽部表面にすじやゆず肌状の模様が多く形成されていた。
【0051】
(変色防止性評価)
外観評価と同様にして、化学強化ガラス板上に、遮蔽部を形成させた。遮蔽部の色度([L
*(1)、a
*(1)、b
*(1)])を、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM−2600d)により測定した。
遮蔽部に対し、スーパーキセノンウェザーメーターSX75により、以下の条件で光を照射した。
<条件>
・照度:180W/m
2(300〜400nm)
・照射時間:1000時間
・フィルター:インナー;石英、アウター;#275
・BPT:83℃
・湿度:80%
・降雨:なし
【0052】
光照射後の遮蔽部の色度([L
*(2)、a
*(2)、b
*(2)])を上記同様測定し、計算式√((L
*(2)−L
*(1))2+(a
*(2)−a
*(1))2+(b
*(2)−b
*(1))2)により色差ΔEabを求め、以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
<評価基準>
○:ΔEabが5以下
△:ΔEabが5超、10以下
×:ΔEabが10超
【0053】
(密着力低下防止性評価)
変色防止性試験と同様にして、化学強化ガラス板上に、遮蔽部を形成させた後、光を照射した。光照射後、遮蔽部に対し、JIS D 0202試験法に従い、1mm間隔に切れ目を、縦横共に5本入れ、マス目を25個形成させた。次いで、粘着テープを強く貼り付け、90°方向へ剥離した。インクジェット用黒色遮蔽材の密着力低下防止性を以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
◎:マス目を形成させた領域(25mm
2)における遮蔽部の剥離面積の割合が5%未満であった。
○:遮蔽部の剥離面積の割合が5%以上、15%未満であった。
△:遮蔽部の剥離面積の割合が、15%以上、35%未満であった。
×:遮蔽部の剥離面積の割合が、35%以上であった。
【0054】
(遮蔽性評価(OD値))
外観評価と同様にして、化学強化ガラス板上に、遮蔽部を形成させた。透過濃度計(X−Rite社製、361T)により、遮蔽部のOD値を測定した。測定結果を表1にまとめた。
OD値=−log
10(T/100)
【0055】
【表1】
【0056】
なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
芳香環を有しない、2官能のエポキシ化合物
・セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、3’,4’−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
【化1】
・セロキサイド3000:株式会社ダイセル製、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン
【化2】
・セロキサイド8000:株式会社ダイセル製、(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロへキシル
【化3】
芳香環を有しない、単官能のエポキシ化合物
・EX−121:ナガセケムテックス製、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル
芳香環を有するエポキシ化合物
・JER−828:三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物
ヨードニウム塩系光重合開始剤
・Omnicat 250:IGM Resins社製、4−イソブチルフェニル(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート
【化4】
・B2380:東京化成工業株式会社製、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート
【化5】
・B5276:東京化成工業株式会社製、ビス(4−フルオロフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート
【化6】
・D2238:東京化成工業株式会社製
【化7】
非ヨードニウム塩系光重合開始剤
・CPI−101A:サンアプロ株式会社製
【化8】
・DETX:日本化薬株式会社製、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン
【化9】
カップリング剤
・KBM−403:信越化学工業株式会社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【化10】
・KBM−502:信越化学工業株式会社製、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン
【化11】
・KBM−573:信越化学工業株式会社製、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
【化12】
顔料
・カーボンブラックMA−100:三菱ケミカル株式会社製
希釈剤
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:沸点146℃、非反応性
・エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:沸点192℃、非反応性
・カルビトールアセテート:沸点218℃、非反応性
・2−ブトキシエタノール:沸点170℃、非反応性
・メチルエチルケトン:沸点79.64℃、非反応性
【0057】
以上の結果からも明らかなように、本発明のインクジェット用黒色遮蔽材は、外観評価および濃度評価から塗布ムラが無く高いOD値を維持しつつ、高い変色防止性および密着力低下防止性を有していることがわかる。
【解決手段】本発明によるインクジェット用黒色遮蔽材は、芳香環を有しないエポキシ化合物、光酸発生剤、カップリング剤、黒色顔料および希釈剤を含み、光酸発生剤が、ヨードニウム塩であり、エポキシ化合物として、単官能および2官能以上のエポキシ化合物を含むことを特徴とするものである。