(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を搬送する搬送手段と、該搬送手段で搬送された前記基板が導入される搬入ゾーンと、該搬入ゾーンの搬送方向下流側に設けられた、前記基板を予備加熱するプレヒートゾーンと、該プレヒートゾーンの搬送方向下流側に設けられた、基板を本加熱する加熱ゾーンと、該加熱ゾーンの搬送方向下流側に設けられた、本加熱された前記基板を冷却する冷却ゾーンと、該冷却ゾーンの搬送方向下流側に設けられた、前記基板が導出される搬出ゾーンと、を有するリフロー装置であって、
前記リフロー装置内の前記搬入ゾーン、前記冷却ゾーン及び前記搬出ゾーンのうちの少なくとも一つのゾーンに、連続気泡構造を有する樹脂製の発泡体であって、通気度が100cc/cm2・sec〜200cc/cm2・secである、液化したフラックスを吸収するための多孔質体が設けられていることを特徴とするリフロー装置。
前記多孔質体が、前記基板に冷風を吹き付けるための送風孔を有する吹出板であって、前記冷却ゾーンの前記搬送手段の上方に設けられた吹出板の表面部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリフロー装置。
【背景技術】
【0002】
現在、種々の電子部品が回路基板の表面に搭載されて半田付けされたSMD(Surface Mounted Device)が電子機器に広く用いられている。この半田付けは、半田ペーストを用いて行う。半田ペーストは、クリーム状のフラックスと粉末半田とを混合してペースト状にしたもので、印刷法またはディスペンサー法等により回路基板の半田付け部に塗布し、その上に電子部品を搭載させてからリフロー装置で加熱溶融させることにより、回路基板と電子部品を半田付けする。
【0003】
半田ペースト中に含まれるフラックスは、半田付けされる金属表面の酸化膜を除去し、半田付け中の加熱によって金属表面が再酸化されることを防止する。また、フラックスは、半田の表面張力を小さくして濡れ性をよくする塗布剤の働きもする。半田ペースト中に含まれるフラックスは、松脂、チキソ剤、活性剤等の固形成分を溶剤で溶解させたものである。このため、リフロー装置で半田ペーストを加熱溶融させる際に、これらの成分が気化し蒸気となって、雰囲気ガス中に放出される。気化した上記成分は、冷却ゾーン等、リフロー装置の温度の低い部位に接触して液化する。液化したフラックスは、回路基板上に付着して半田付け不良を起こしたり、プレヒートゾーン、加熱ゾーン及び冷却ゾーンに配置されているファンを回転させるためのモータ回転軸等の可動部分に付着してその動きを妨げたり、配管内壁に付着して配管を詰まらせてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、液化したフラックスの回路基板や可動部分への付着及び配管への付着を防止するために、半田ペーストの加熱溶融を行うにあたり、容器内を減圧部により減圧させることで、気化したフラックスが含まれた雰囲気ガスを強制的にリフロー炉内から容器内へ吸引し、この吸引された雰囲気ガスを冷却することでフラックスを液化し、雰囲気ガスからフラックスを回収するフラックス回収装置が、リフロー装置に設けられている(特許文献1)。
【0005】
しかし、リフロー装置内で半田ペーストを加熱溶融させている間は、フラックスが気化して雰囲気ガス中に放出され続けるので、特許文献1のように、雰囲気ガスをリフロー装置内からフラックス回収装置へ強制的に吸引しても、雰囲気ガス中のフラックス濃度の低減には限界があり、依然として、リフロー炉内に液化したフラックスが発生して、回路基板や可動部分へ付着することがあるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、フラックス回収装置による雰囲気ガス中の気化したフラックス濃度の低減が、不十分であっても、液化したフラックスが、基板や可動部分へ付着することを防止できるリフロー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、基板を搬送する搬送手段と、該搬送手段で搬送された前記基板が導入される搬入ゾーンと、該搬入ゾーンの搬送方向下流側に設けられた、前記基板を予備加熱するプレヒートゾーンと、該プレヒートゾーンの搬送方向下流側に設けられた、基板を本加熱する加熱ゾーンと、該加熱ゾーンの搬送方向下流側に設けられた、本加熱された前記基板を冷却する冷却ゾーンと、該冷却ゾーンの搬送方向下流側に設けられた、前記基板が導出される搬出ゾーンと、を有するリフロー装置であって、前記リフロー装置内の前記搬入ゾーン、前記冷却ゾーン及び前記搬出ゾーンのうちの少なくとも一つのゾーンに、多孔質体が設けられていることを特徴とするリフロー装置である。
【0009】
この態様では、リフロー装置の低温部に相当し雰囲気ガス中のフラックスが液化する、搬入ゾーン、冷却ゾーン及び搬出ゾーンのうち、少なくとも一つのゾーンに多孔質体が配置される。多孔質体の多孔質構造が、液化したフラックスを吸着する。なお、多孔質とは、微少孔を多数有する構造を意味する。
【0010】
本発明の態様は、前記多孔質体が、樹脂製であることを特徴とするリフロー装置である。
【0011】
本発明の態様は、前記多孔質体が、連続気泡構造を有する樹脂製の発泡体であって、通気度が100cc/cm
2・sec〜200cc/cm
2・secであることを特徴とするリフロー装置である。通気度はJIS L 1096に準拠して測定したものである。
【0012】
本発明の態様は、前記多孔質体が、連続気泡構造を有する樹脂製の発泡体であって、該連続気泡構造の平均発泡セル径が50μm〜500μmであることを特徴とするリフロー装置である。平均発泡セル径は、電子顕微鏡で観察した連続気泡構造を形成する各セルについてその径をメジャーにて測定し、相加平均したものである。
【0013】
本発明の態様は、前記多孔質体が、連続気泡構造を有する樹脂製の発泡体であり、密度が5.0Kg/m
3〜15.0Kg/m
3、25%圧縮硬さが3.0kPa〜10.0kPa、40%圧縮硬さが4.0kPa〜12.0kPaであることを特徴とするリフロー装置である。密度はJIS K 7222に、25%圧縮硬さはJIS K 6400−2 6.7 D法に、40%圧縮硬さはJIS K 6400−2 6.4 A法に、それぞれ準拠して測定したものである。
【0014】
本発明の態様は、前記多孔質体が、前記搬送手段で搬送される基板の上方に設けられていることを特徴とするリフロー装置である。本明細書中、「上」とは、リフロー装置内を搬送される基板からリフロー装置本体の設置面への方向とは反対の方向を意味する。従って、「下」とは、リフロー装置内を搬送される基板からリフロー装置本体の設置面への方向を意味する。
【0015】
本発明の態様は、前記多孔質体が、前記基板に冷風を吹き付けるための送風孔を有する吹出板であって、前記冷却ゾーンの前記搬送手段の上方に設けられた吹出板の表面部に配置されていることを特徴とするリフロー装置である。
【0016】
この態様では、多孔質体は、前記吹出板の表面部のうち、搬送手段と対向する側の表面部若しくは搬送手段と対向する側の表面部とは反対側の表面部、または前記吹出板の両表面部に配置されている。
【0017】
本発明の態様は、前記多孔質体が、前記送風孔の部位を避けて前記吹出板に配置されていることを特徴とするリフロー装置である。
【0018】
本発明の態様は、前記多孔質体が、複数の多孔質材が積層された構造を有し、積層された前記多孔質材の間に、中実の仕切り材が配置されていることを特徴とするリフロー装置である。
【0019】
本発明の態様は、前記多孔質体が、ロール形状であり、該多孔質体の表面部を前記吹出板表面に沿って案内する前記吹出板の縁部に設けられたガイド部材に、前記多孔質体の側端部が、回転移動自在に取り付けられていることを特徴とするリフロー装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、フラックスの液化現象が生じる搬入ゾーン、冷却ゾーン及び搬出ゾーンのうち少なくとも一つのゾーンに多孔質体が配置されるので、フラックス回収装置による雰囲気ガス中の気化したフラックス濃度の低減が不十分であり、液化したフラックスが生じても、多孔質体の多孔質構造が液化したフラックスを吸収する。液化したフラックスは多孔質体に吸収されるので、基板やリフロー装置の可動部分や配管部に液化したフラックスが付着することを防止できる。
【0021】
本発明によれば、多孔質体が樹脂製であることにより、多孔質体の成形加工が容易となるので、多孔質体の配置場所に応じて、多孔質体を所望の形状に成形できる。
【0022】
本発明の態様によれば、多孔質体が、通気度100cc/cm
2・sec〜200cc/cm
2・secの連続気泡構造を有する樹脂製発泡体であることにより、優れた毛細管現象が生じるので、多孔質体のフラックス吸収、浸透効果がより向上する。また、優れた毛細管現象により、多孔質体に吸収、浸透したフラックスが、再度、多孔質体から放出されるのを抑制できる。
【0023】
本発明の態様によれば、多孔質体が、平均発泡セル径が50μm〜500μmの連続気泡構造を有する樹脂製の発泡体であることにより、特に高粘度のフラックスに対しても良好な毛細管現象が多孔質体に生じるので、多孔質体のフラックス吸収、浸透効果がより向上する。
【0024】
本発明によれば、多孔質体が、連続気泡構造を有する樹脂製の発泡体であって、密度が5.0Kg/m
3〜15.0Kg/m
3、25%圧縮硬さが3.0kPa〜10.0kPa、40%圧縮硬さが4.0kPa〜12.0kPaなので、使用性に優れている。
【0025】
本発明の態様によれば、液化したフラックスは基板の位置よりも上方部に付着しやすく、また基板の位置よりも上方部に付着すると、液化したフラックスが基板に落下、付着しやすくなるので、多孔質体が基板よりも上方に設けられることにより、液化したフラックスが基板へ付着することを確実に防止できる。
【0026】
本発明の態様によれば、液化したフラックスは冷風を吹き出す吹出板に生じやすいので、多孔質体が、吹出板の表面部に位置することにより、フラックスが基板や可動部分へ付着することを確実に防止できる。
【0027】
本発明の態様によれば、多孔質体が、吹出板の送風孔の位置には配置されていないので、冷風の流れ、すなわち、基板の冷却効果を損なうことなく、フラックスを吸収できる。
【0028】
本発明の態様によれば、多孔質体が、多孔質材間に中実の仕切り材が挿入された積層構造であると、多孔質体の両表面を片面ずつ使用することで、多孔質体内部まで有効にフラックスを浸透させることができるので、同じ多孔質体の体積でも、より多量のフラックスを吸収できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の多孔質体を備えたリフロー装置について、図面を用いながら説明する。
【0031】
まず、本発明の第1実施形態例に係るリフロー装置について説明する。本発明の第1実施形態例に係るリフロー装置1は、
図1に示すように、基板を搬送する搬送手段10と、該搬送手段10で搬送された前記基板が導入される搬入ゾーン20と、該搬入ゾーン20の基板の搬送方向下流側に設けられた、基板を予備加熱するプレヒートゾーン30と、該プレヒートゾーン30の搬送方向下流側に設けられた、基板を本加熱する加熱ゾーン40と、該加熱ゾーン40の搬送方向下流側に設けられた、本加熱された基板を冷却する冷却ゾーン50と、該冷却ゾーン50の搬送方向下流側に設けられた、基板が導出される搬出ゾーン60と、を有する。また、リフロー炉内における雰囲気ガス中のフラックス濃度を抑えるために、冷却ゾーン50に関連してフラックス回収装置70と強制冷却ユニット71が設置されている。
【0032】
被加熱物である基板としては、例えば、表面に電子部品が搭載されたプリント配線基板等の回路基板が挙げられる。搬送手段10には、例えば、搬送用ローラチェーンを備えた搬送コンベヤが挙げられる。搬送手段10が、搬送コンベア上に置かれた被加熱物である基板を、搬入ゾーン20からリフロー装置1の炉内へ搬入し、搬出ゾーン60からリフロー装置1の炉外へ搬出する。
【0033】
搬入ゾーン20と搬出ゾーン60には、炉内の雰囲気ガスが炉外に流出するのを防止するために、それぞれ、ガスシャッター部21、61が設けられている。ガスシャッター部21、61は、搬送コンベアの上側に位置する上側ガスシャッター部22、62と搬送コンベアの下側に位置する下側ガスシャッター部23、63を備えている。ガスシャッター部21、61は、可撓性を有する樹脂製シートが基板の搬送方向に複数並べられた構成となっている。
【0034】
第1実施形態例に係るリフロー装置1の内部は、Z1〜Z10の10個のゾーンに分割されている。各ゾーンは、直線上に、基板の搬送方向に対して平行方向に、順次配列されている。搬入ゾーン20の、基板の搬送方向下流側に隣接した位置には、Z1〜Z5と5個のゾーンからなるプレヒートゾーン30が設けられている。プレヒートゾーン30の、基板の搬送方向下流側には、Z6〜Z8と3個のゾーンからなる加熱ゾーン40が設けられている。加熱ゾーン40の、基板の搬送方向下流側には、Z9〜Z10と2個のゾーンからなる冷却ゾーン50が設けられている。冷却ゾーン50の、基板の搬送方向下流側に隣接して、搬出ゾーン60が設けられている。
【0035】
冷却ゾーン50は、ファンと、ファンの送風経路に設けられた冷却コイルと、冷却コイルで冷却された送風(冷風)を基板へ向けて基板の上方から吹き出す吹出板51とを備えている。冷却コイルで冷却された冷風は、吹出板51の送風孔52を通過して基板に吹き付けられる。冷却ゾーン50に搬送された基板は、冷風が吹き付けられることにより冷却される。
【0036】
第1実施形態例に係るリフロー装置1では、
図2に示すように、冷却ゾーン50における基板の冷却効果を均質化するために、吹出板51の送風孔52は複数設けられ、それぞれの送風孔52は、基板の搬送方向に対しても、搬送方向と直交する方向に対しても平行に、かつ等間隔に並べられている。
【0037】
また、吹出板51の表面は、搬送される基板と対向するように配置されている。さらに、吹出板51は、基板の搬送方向と直交する方向の中央部74が上方に突起した形状となっている。つまり、吹出板51の上方に突起した中央部74は、基板の搬送方向に対して平行となっている。この形状により、吹出板51表面に付着したフラックスは、山形となっている吹出板51の傾斜に沿って搬送コンベアの側部方向に移動する。よって、この形状により、吹出板51表面に付着したフラックスが、基板へ滴下するのを抑制できる。
【0038】
第1実施形態例に係るリフロー装置1では、
図1、2に示すように、プレヒートゾーン30内及び加熱ゾーン40内よりも温度が低く液化したフラックスが発生しやすい冷却ゾーン50に、多孔質体53が設けられている。この第1実施形態例に係るリフロー装置1では、多孔質体53は矩形の板状体である。また、多孔質体53は、液化したフラックスの特に発生しやすい吹出板51の基板側表面を覆うように設置されている。従って、多孔質体53は、搬送される基板の上方に設けられている状態となっている。また、第1実施形態例に係るリフロー装置1では、多孔質体53には、吹出板51の送風孔52の位置に対応した位置に開口部54が形成されている。従って、送風孔52を介した冷風の吹き出しが多孔質体53に阻害されるのを防止できる。
【0039】
冷却ゾーン50に設置された多孔質体53は、多数の微細孔構造により、吹出板51と搬送コンベアとの間に存在する気化したフラックスや、吹出板51から吹き出される冷風によって冷却されて吹出板51に発生した液化したフラックス等を捕捉して吸収する。よって、多孔質体53は、液化したフラックスが、基板やリフロー装置1内部に付着することを防止する。さらに、多孔質体53は液化したフラックスのリフロー装置1内部への付着を防止できるので、リフロー装置1の耐用年数が延長し、リフロー装置1のメンテナンスも容易となる。
【0040】
多孔質体53の材料は、特に限定されず、例えば、成形加工性と軽量さによる取り扱い性とに優れる点から樹脂製が好ましい。また、樹脂の種類は、特に限定されないが、加熱ゾーン40やプレヒートゾーン30等の高温領域の近傍でも設置可能である点から、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル、セルロース、メラミン等、耐熱性(高温(例えば、140℃)の使用温度でも、使用期間中に物性が有意に変化しない特性)を有する樹脂が好ましい。この第1実施形態例に係るリフロー装置1では、多孔質53体はメラミン樹脂の発泡体であり、連続気泡構造、つまり、内部に多数の微細孔を有している。従って、多孔質体53はスポンジ状となっている。
【0041】
メラミン樹脂の発泡体である多孔質体53の通気度は、特に限定されないが、その下限値は、毛細管現象とフラックス吸収量の向上の点から100cc/cm
2・secが好ましく、発泡体を所望の形状に加工する点から120cc/cm
2・secが特に好ましい。一方、通気度の上限値は、毛細管現象の低下を防止する点から200cc/cm
2・secが好ましく、冷却ゾーン設置後における発泡体の形状維持の点から180cc/cm
2・secが特に好ましい。また、メラミン樹脂の発泡体である多孔質体53の平均発泡セル径は、特に限定されないが、その下限値は、液化したフラックスに対する優れた毛細管現象を得る点から50μmが好ましく、高粘度の液化したフラックスでも多孔質体53内部への吸収と浸透を確実に得る点から100μmが特に好ましい。一方、平均発泡セル径の上限値は、液化したフラックスに対する毛細管現象の低下を防止して優れたフラックス吸収能を得る点から500μmが好ましく、いったん吸収されたフラックスが再度放出されるのを確実に防止する点から350μmが特に好ましい。
【0042】
メラミン樹脂の発泡体である多孔質体53の密度は特に限定されないが、その下限値は、冷却ゾーン設置後における発泡体の形状維持の点から5.0Kg/m
3が好ましく、6.0Kg/m
3が特に好ましい。一方、密度の上限値は、発泡体を所望の形状に加工する点から15.0Kg/m
3が好ましく、10.0Kg/m
3が特に好ましい。また、メラミン樹脂の発泡体である多孔質体53の圧縮硬さは特に限定されないが、25%圧縮硬さは発泡体の形状維持の点から3.0kPa〜10.0kPaが好ましい。また、40%圧縮硬さは発泡体の形状維持の点から4.0kPa〜12.0kPaが好ましい。
【0043】
多孔質体53の吹出板51への取り付け方法は特に限定されず、例えば、耐熱性のマジックテープ、耐熱性の両面テープ、ボルト等、公知の取り付け方法を使用することができる。
【0044】
多孔質体53の吹出板51への設置態様は、特に限定されず、例えば、上記した、吹出板51の送風孔52の位置に対応した位置に開口部54が形成された板状体の多孔質体53に代えて、
図3に示すように、短手方向の長さが、送風孔52と送風孔52の間の幅と同等またはそれ以下であり、長手方向の長さが、吹出板51の基板搬送方向の幅寸法に対応する長さである帯状の多孔質体53’を、複数用いてもよい。この帯状の多孔質体53’は、その長手方向が吹出板51の傾斜に対して直交するように、すなわち、帯状の多孔質体53’の長手方向が、基板の搬送方向に対して平行方向かつ中央部74に対して平行方向となるように、吹出板51の送風孔52と送風孔52の間の位置に取り付ける。すると、吹出板51に発生した液化したフラックスが、吹出板51の傾斜に沿って移動するので、確実に帯状の多孔質体53’に接触、吸収される。また、帯状の多孔質体53’の短手方向の長さは、送風孔52と送風孔52の間の幅と同等以下なので、送風孔52の位置を避けて帯状の多孔質体53’を取り付けることができ、送風孔52を介した冷風の吹き出しが帯状の多孔質体53’に阻害されるのを防止できる。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態例に係るリフロー装置2を説明する。上記第1実施形態例に係るリフロー装置1では、冷却ゾーン50の吹出板51の基板側表面に多孔質体53、53’が設置されていたが、これに代えて、
図4に示すように、搬入ゾーン20に、矩形の板状体である多孔質体53が設置されてもよい。搬入ゾーン20には炉内を加熱するための装置が設けられておらず、プレヒートゾーン30内及び加熱ゾーン40内よりも温度が低い。また、炉内の圧力が高くなると、気化したフラックスを含んだ雰囲気ガスが搬入ゾーン20に流出する。従って、温度の低い搬入ゾーン20の、例えば内壁面等、特に基板よりも上部に位置する内壁面に、気化したフラックスが接触して、液化したフラックスが生成しやすい。
【0046】
そこで、相対的に温度の低い搬入ゾーン20に多孔質体53を配置することで、搬入ゾーン20の内壁面等に発生した液化したフラックスが、基板へ付着することを防止できる。
【0047】
図4では、液化したフラックスが特に生成しやすい位置である搬送手段10の上方に、多孔質体53が設置されている。具体的には、上側ガスシャッター部22の、搬送コンベア側とは反対側の部位、つまり、搬入ゾーン20の筐体と上側ガスシャッター部22との間に板状体の多孔質体53が設置されている。基板よりも上部の筐体内壁面部に多孔質体53を配置することにより、液化したフラックスを効率よく吸収できる。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態例について説明する。上記第1実施形態例に係るリフロー装置1では、多孔質体53、53’は吹出板51の基板側表面に設置されていたが、これに代えて、基板側とは反対側の吹出板51表面に設置してもよく、吹出板51の両側表面に設置してもよい。また、上記第1実施形態例係るリフロー装置1では、多孔質体53、53’は、冷却ゾーン50の吹出板51に設置されていたが、多孔質体53、53’の設置箇所は特に限定されず、例えば、冷却ゾーン50の筐体内壁面や配管の内壁部等、プレヒートゾーン30や加熱ゾーン40よりも雰囲気温度が低く液化したフラックスが付着しやすい箇所に、適宜、設置してもよい。
【0049】
上記第2実施形態例に係るリフロー装置2では、矩形の板状体である多孔質体53は、搬入ゾーン20の上側ガスシャッター部22と筐体との間に設置されていたが、これに代えて、またはこれとともに、搬入ゾーン20の筐体側面の内壁部に設置してもよく、リフロー装置の配管の内壁部等、雰囲気温度が低下して液化したフラックスが付着しやすい箇所に、適宜、設置してもよい。また、上記第2実施形態例に係るリフロー装置2では、多孔質体53は搬入ゾーン20に設置されていたが、これに代えて、またはこれとともに、搬出ゾーン60(例えば、搬出ゾーン60の上側ガスシャッター部62と筐体との間)に設置してもよい。つまり、本発明では、多孔質体は、冷却ゾーン50、搬入ゾーン20及び搬出ゾーン60のいずれか1種または2種のゾーンに設置してもよく、3種のゾーン全てに設置してもよい。
【0050】
上記第1実施形態例に係るリフロー装置1では、吹出板51に設置された多孔質体53、53’は、板状体または帯状体の単層構造であったが、これに代えて、
図5に示すように、板状体の多孔質材56が複数(
図5では、2つ)積層され、この積層された多孔質材56の間に、中実の仕切り材57が挿入されている構造としてもよい。この積層構造の多孔質体55とすることで、基板と対向した一方の多孔質材56が液化したフラックスを吸収した結果、該一方の多孔質材56の吸収能が低下しても、積層構造の多孔質体55を裏返して他方の多孔質材56を基板と対向させることで、積層構造の多孔質体55は、引き続き、液化したフラックスの吸収作用を発揮する。従って、積層構造の多孔質体55は、単層構造の多孔質体と比較して、より多量のフラックスを吸収できるとともに、多孔質体の取り替え作業も簡便となる。
【0051】
また、上記のように、この積層構造の多孔質体55には、中実の仕切り材57が、多孔質材56と多孔質材56の間に配置されている。よって、基板と対向した側の一方の多孔質材56により捕捉されたフラックスが毛細管現象により内部へ浸透していっても、仕切り材57によって、他方の多孔質材56内部へフラックスが浸透することを防止できる。このように、一方の多孔質材56に吸収されたフラックスは他方の多孔質材56まで浸透しないので、他方の多孔質材56は、フラックス吸収能を維持できる。さらに、一方の多孔質材56の使用後に、積層構造の多孔質体55を裏返して他方の多孔質材56を基板と対向させることで積層構造の多孔質体55の使用を継続する場合に、中実の仕切り材57は、一方の多孔質材56の吸収したフラックスが、自重で他方の多孔質材56を通過し、基板に滴下するのを防止できる。
【0052】
図5では、中実の仕切り材57は板状であり、耐熱性の両面テープにて多孔質材56に取り付けられている。中実の仕切り板57の材質は特に限定されないが、例えば、耐熱性とフラックス移動の遮断性の点から、金属が用いられるのが好ましい。
図5では、SUS304が用いられている。
【0053】
なお、多孔質体のフラックス吸収量を増大させればよい場合には、多孔質材56と多孔質材56の間に中実の仕切り材57を設けずに、積層された多孔質材56を相互に直接接合した積層構造としてもよい。
【0054】
また、上記第1実施形態例に係るリフロー装置1では、多孔質体53、53’の形状は板状体または帯状体であったが、これに代えて、
図6に示すように、ロール形状の多孔質体58としてもよい。この態様では、ロール形状の多孔質体58の周面部72が吹出板51の基板側表面と当接している。ロール形状の多孔質体58が吹出板51の基板側表面を転がりながら移動することによって、吹出板51表面の液化したフラックスを拭き取ることができる。ロール形状の多孔質体58は、ロール形状の両端面から凸部59が延びており、この凸部59が、吹出板51の縁部に設けられたガイド部材73に保持されている。また、吹出板51の基板側表面に沿ってロール形状の多孔質体58を転がしながら移動させるために、ロール形状の多孔質体58は、駆動装置を備えた多孔質体移動手段(図示せず)と接続されている。
【0055】
ガイド部材73は吹出板51表面に沿って付設され、凸部59はロール形状の中心軸上に形成されている。従って、円柱形の多孔質体58は、凸部59を中心軸に回動しながらガイド部材73によって吹出板51表面に沿って案内されることで、吹出板51の基板側表面を転動する。
【0056】
ロール形状の多孔質体58が吹出板51表面のフラックスを拭き取るタイミングとしては、例えば、冷却ゾーン50に基板が搬送されていない時点が挙げられる。冷却ゾーン50に基板が搬送されていないタイミングは、例えば、搬入ゾーン20に設置した基板検出センサの作動時刻と基板の搬送速度とに基づいて基板位置検出手段にて検出できる。冷却ゾーン50に基板が搬送されていないタイミングを基板位置検出手段が検出すると、基板位置検出手段から起動信号が多孔質体移動手段へ送信され、この起動信号を多孔質体移動手段が受信すると、多孔質体移動手段の駆動装置が起動し、ロール形状の多孔質体58を転動させる。また、リフロー装置の立ち上げ時や立ち下げ時に、ロール形状の多孔質体58を動かして液化したフラックスを拭き取ってもよい。特に、リフロー装置の立ち下げ時は、依然として炉内温度が高い状態なので、液化したフラックスの拭き取りが容易である。
【実施例】
【0057】
次に、本発明のリフロー装置に設置する多孔質体の吸収特性の実施例について説明する。
【0058】
多孔質体として連続気泡構造を有する3種類のメラミン樹脂発泡体(サンプル1、2及び3)と、不織布である2種類のフィルター(サンプル4、5)を使用した。
・サンプル1:「バソテクトV−3012」、(株)イノアックコーポレーション製;40%圧縮硬さ(試験方法JIS K 6400−2 6.4 A法)8.2KPa、25%圧縮硬さ(試験方法JIS K 6400−2 6.7 D法)6.7KPa、連続気泡構造の平均発泡セル径(電子顕微鏡によるメジャーを用いての測定)250〜300μm。
・サンプル2:「バソテクトTG」、(株)イノアックコーポレーション製;40%圧縮硬さ(試験方法JIS K 6400−2 6.4 A法)5.4KPa、25%圧縮硬さ(試験方法JIS K 6400−2 6.7 D法)4.0KPa、連続気泡構造の平均発泡セル径(電子顕微鏡によるメジャーを用いての測定)250〜300μm。
・サンプル3:「バソテクトUL」、(株)イノアックコーポレーション製;40%圧縮硬さ(試験方法JIS K 6400−2 6.4 A法)4.1KPa、25%圧縮硬さ(試験方法JIS K 6400−2 6.7 D法)3.2KPa、連続気泡構造の平均発泡セル径(電子顕微鏡によるメジャーを用いての測定)250〜300μm。
・サンプル4:「FS6200」、日本バイリーン社製、ポリエステル/モダアクリル。
・サンプル5:「AE−100」、日本バイリーン社製、芳香族ポリアミド。
【0059】
連続気泡構造を有するメラミン樹脂発泡体(サンプル1、2及び3)と不織布であるフィルター(サンプル4、5)の密度と通気度は、下記表1の通りである。なお、密度は、JIS K 7222に準拠して測定し、通気度は、厚さ10mmにて、JIS L 1096に準拠して測定した。
【0060】
【表1】
【0061】
多孔質体の吸収特性試験方法について
45mm×30mm×5mmのサンプル1〜5の質量を、それぞれ計測した。その後、液体を20cc注入したビーカー中に、サンプル1〜5をそれぞれ入れて、サンプルの一部を液体に浸漬させた状態で室温にて6時間放置した。なお、1つのビーカーにサンプルを1つ入れて試験を行った。その後、サンプル1〜5をビーカーから取り出し、その質量を計測し、質量の増加量をサンプル1〜5のそれぞれの液体吸収量として吸収特性を評価した。なお、サンプル1〜5を浸漬させる液体としては、低粘度の液体として、ヘキシルジグリコール(化合物名 ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、日本乳化剤(株)製)と、高粘度の液体として、下記のように作製した加熱後のフラックスの2種類を使用した。
加熱後のフラックスの製造方法
まず、半田ペーストに使用するフラックス成分を加熱溶解して、以下の組成のフラックス成分を得た。
・水添加ロジン(ロジン系樹脂) 51質量%
・ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩(活性剤) 1質量%
・アジピン酸(活性剤) 1質量%
・エチルヘキシルジグリコール(溶剤) 39質量%
・水添ヒマシ油(チクソ剤) 8質量%
次に、加熱溶解した上記フラックス成分をビーカーに入れ、150℃設定のホットプレートにて1日あたり8時間の加熱を3日間(計24時間)行い、本実験用である加熱後のフラックスとした。
【0062】
ヘキシルジグリコールを使用した場合のサンプル1〜5の質量の増加量(g)の結果を表2に、加熱後のフラックスを使用した場合のサンプル1〜5の質量の増加量(g)の結果を表3示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表2に示すように、連続気泡構造を有するメラミン樹脂発泡体(通気度120〜
174cc/cm
2・sec)の方が、不織布であるフィルター(通気度385〜480cc/cm
2・sec)よりもヘキシルジグリコールの吸収量が25質量%以上多く、メラミン樹脂発泡体は、より吸収特性に優れていた。これは、連続気泡構造を有するメラミン樹脂発泡体は、毛細管現象によって低粘度の液体であるグリコールエーテルを内部まで浸透させることができるためと考えられる。
【0066】
表3に示すように、連続気泡構造を有するメラミン樹脂発泡体(通気度120〜
174cc/cm
2・sec)の方が、不織布であるフィルター(通気度385〜480cc/cm
2・sec)よりも加熱後のフラックスの吸収量が20質量%以上多く、メラミン樹脂発泡体は、高粘度の液体であっても吸収特性に優れていた。これは、連続気泡構造を有するメラミン樹脂発泡体は、高粘度の液体であっても毛細管現象によって内部まで浸透させることができるためと考えられる。