(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態に係る医用画像処理装置について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置200の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、医用画像診断装置200の一例として、PET(Positron Emission computed Tomography)装置の構成を示す。
【0011】
図1に示す医用画像診断装置200は、ガンマ線収集部10、再構成部20、スキャン制御部30、通信部40、入力部50、表示部60、記憶部70、医用画像処理部80およびシステム制御部90を備える。
【0012】
ガンマ線収集部10は、スキャン制御部30による制御に従って、被検体に投与されたポジトロン核種から放出されたガンマ線を収集する。ガンマ線収集部10は、ガンマ線検出機構であるガントリ11、前処理部16、エネルギー弁別部17および同時計数器18を有する。
【0013】
ガントリ11は、検出器リング12を有する。検出器リング12の開口部には、被検体Pを載置可能な天板が挿入される。天板は、検出器リング12の中心軸に沿って移動可能に寝台(図示せず)に支持される。ここで、天板に載置された被検体Pの体軸(Z軸)は、検出器リング12の中心軸に一致するものとする。典型的には、ガントリ11内は、Z軸に沿って複数の検出器リング12が配列される。検出器リング12は、Z軸回りに円周状に配列された複数のガンマ線検出器13を有する。
【0014】
複数のガンマ線検出器13は、被検体P内部に注入されたポジトロン核種から放出されるガンマ線を検出し、当該ガンマ線のエネルギーに応じた検出信号を発生する。複数のガンマ線検出器13は、被検体Pの体軸回りに円周状に配列されているため、複数の方向(立体角)において、ガンマ線を検出することが可能である。具体的には、ガンマ線検出器13は、複数のシンチレータ14と、複数の光電変換素子15とを有している。シンチレータ14は、ガンマ線が入射されると蛍光を発生する。蛍光は、ライトガイド(図示せず)を介して光電変換素子15に導かれる。光電変換素子15は、ライドガイドを介してシンチレータ14から蛍光を受波し、受波された蛍光の光量を増幅し、光量に応じた検出信号を発生する。光電変換素子15は、発生した検出信号を前処理部16およびエネルギー弁別部17へ出力する。
【0015】
ここで、PETでは、被検体に投与された1つのポジトロン核種から放出される陽電子と電子とが対消滅すると同時に180°反対方向にそれぞれ放出される、一対の消滅放射線を複数のガンマ線検出器13で検出する。なお、一対の消滅放射線の入射位置同士を結ぶ線は、LOR(Line of Response)と呼ばれている。PETは、この一対の消滅放射線を弁別して、ポジトロン核種の空間分布を発生する。
【0016】
前処理部16は、ガンマ線検出器13から出力された検出信号に基づいて、ガンマ線検出器13に入射されたガンマ線のエネルギー値を算出する。また、前処理部16は、ガンマ線検出器13から出力された検出信号に基づいて、ガンマ線検出器13に入射されたガンマ線の検出時刻を計測する。前処理部16は、ガンマ線検出器13から出力された一対の検出信号に基づいて、光電変換素子15にて受波された蛍光の光量の比により、蛍光を発生したシンチレータ14の位置情報、すなわち当該一対のガンマ線の入射位置を算出する
。前処理部16は、上記ガンマ線のエネルギー値情報、検出時刻情報および入射位置情報をエネルギー弁別部17へ出力する。
【0017】
エネルギー弁別部17は、前処理部16から出力されたエネルギー値情報に基づいて、ガンマ線検出器13から出力された検出信号を弁別する。具体的には、エネルギー弁別部17は、ガンマ線のエネルギーピーク511keVを中心とした、±20パーセント程度のエネルギーウィンドウ幅以内のエネルギー値を有する検出信号を弁別する。なお、エネルギーウィンドウ下限値(下限閾値、300〜400keV程度)よりもエネルギー値が低い場合、ガンマ線の散乱線成分とみなされる。また、エネルギーウィンドウ上限値(上限閾値、600〜850keV程度)よりもエネルギー値が高い場合、パイルアップとみなされる。パイルアップとは、同時あるいは非常に短い時間間隔で入力された信号がお互いに重なり合うことである。
【0018】
同時計数器18は、前処理部16から出力された検出時刻情報に基づいて、エネルギー弁別部17により弁別された一対の検出信号を、同時性により、計数する。具体的には、
同時計数器18は、ガンマ線検出器13に入射されたガンマ線から、その検出時刻差が2nsec〜5nsecのタイムウィンドウ幅以内となる、一対の検出信号を上記LORごとに計数する。本実施形態では、弁別された一対の検出信号を上記LORごとに計数した値を、同時計数情報と定義する。同時計数情報には、シンチレータ14にガンマ線が入射する事象を表すイベントごとに発生した、一対のガンマ線各々の入射位置および入射時間を関連付けたデータセット(イベントデータ)が含まれる。ここで、同時計数器18は、複数の医用画像各々の同時計数のカウント数を求める。すなわち、同時計数器18は、上記イベントごとに発生したイベントデータのカウント数を求める。本実施形態では、イベントごとに発生したイベントデータのカウント数をイベント数と記載する。同時計数器18は、上記弁別された一対の検出信号の計数処理を繰り返し実行することで、複数の方向(立体角)における同時計数情報およびイベント数情報を取得する。同時計数器18は、当該複数の方向における同時計数情報を再構成部20および後述する記憶部70へ出力する。同時計数情報は、後述する再構成部20により再構成されたPET画像に関連付けられて、記憶部70に記憶される。また、同時計数器18は、当該イベント数情報を後述する記憶部70へ出力する。イベント数情報は、後述する再構成部20により再構成されたPET画像に関連付けられて、記憶部70に記憶される。
【0019】
再構成部20は、同時計数器18から出力された複数の方向における同時計数情報に含まれるイベントデータを用いて、複数のPET画像を再構成する。PET画像とは、被検体に投与されたポジトロン核種から放出されたガンマ線に関する同時計数情報から発生される、ポジトロン核種の空間的な集積分布である。具体的には、再構成部20は、フィルタ補正逆投影法(FBP:Filtered Back Projection)または逐次近似再構成法等を適用して演算処理を実行し、上記同時計数情報からPET画像を再構成する。再構成された複数のPET画像のデータは、当該複数の方向における同時計数情報と関連付けられて、後述する記憶部70に記憶される。
【0020】
スキャン制御部30は、所定のスキャンシーケンスに従ってガンマ線収集を行うように、ガンマ線収集部10を制御する。スキャンシーケンスは、ガンマ線の収集タイミング等を規定している。
【0021】
通信部40は、有線あるいは無線にて外部装置と通信する。外部装置は、例えば、X線CT装置等のモダリティ、PACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等である。
【0022】
入力部50は、ユーザの操作に応じたコマンド等を入力するインターフェイスであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボールおよび各種ボタン等を含む。
【0023】
表示部60は、PET画像等を表示デバイスに表示する。表示デバイスとしては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic ElectroLuminescence Display)あるいはプラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0024】
記憶部70は、比較的大容量のデータを記憶可能なHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。記憶部70は、再構成部20で再構成された複数のPET画像のデータと、同時計数器18から出力された複数の方向における同時計数情報と、当該イベント数情報とをそれぞれ関連付けて記憶する。また、記憶部70は、PET画像発生のための専用プログラムを記憶する。なお、記憶部70は、HDD等の磁気ディスク以外にも、光磁気ディスクやCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標) Disc)等の光ディスクを利用してもよい。
【0025】
医用画像処理部80は、抽出処理部1、ゼロ値化処理部2、規格化係数算出部4、規格化処理部3および差分処理部5を有する。
【0026】
抽出処理部1は、記憶部70から入力される複数のPET画像から、閾値処理により空間や寝台等の被検体以外を示す領域を抽出する。本実施形態では、抽出処理部1により抽出された空間や寝台等の被検体以外を示す領域を背景領域と呼称する。
【0027】
ゼロ値化処理部2は、複数のPET画像に対して、抽出処理部1により抽出された当該背景領域の画素値をゼロ値に置き換えるゼロ値化処理を実行する。ゼロ値化処理部2は、背景領域をゼロ値化した複数のPET画像を規格化係数算出部4へ出力する。
【0028】
規格化処理部3は、当該複数の
PET画像各々の画素値を規格化する規格化処理を実行する。規格化処理部3は、規格化係数算出部4を有する。
【0029】
規格化係数算出部4は、ゼロ値化処理部2から出力された複数のPET画像にそれぞれ関連付けられたイベント数情報から、当該複数のPET画像それぞれに対する規格化係数を算出する。
【0030】
規格化処理部3は、規格化係数算出部4で算出された規格化係数を用いて、ゼロ値化処理された複数のPET画像それぞれに対して規格化処理を実行する。これにより、規格化処理部3は、ゼロ値化された複数のPET画像それぞれの画素値を補正する。規格化処理部3は、規格化された複数のPET画像を差分処理部5へ出力する。
【0031】
差分処理部5は、規格化処理部3から出力された複数のPET画像に対して差分処理を実行する。これにより、差分処理部5は、規格化された複数のPET画像間の差分画像を発生する。差分処理部5は、発生された差分画像を表示部60へ出力する。これにより、差分処理部5にて発生された差分画像は、表示部60に表示される。
【0032】
システム制御部90は、ガンマ線収集部10、再構成部20、スキャン制御部30、通信部40、入力部50、表示部60、記憶部70および医用画像処理部80の動作を制御する。
【0033】
ここで、本実施形態に係る医用画像診断装置200による画像処理の流れについて、具体例を挙げて説明する。
【0034】
図2は、
図1に示す医用画像処理部80による画像処理の流れを示すフローチャートである。
図3は、
図1に示す記憶部70に記憶されるPET画像、ゼロ値化処理部2から出力されたPET画像および規格化処理部3から出力されたPET画像の一例を示す図である。
【0035】
図2に示すように、記憶部70に記憶された複数のPET画像および当該複数のPET画像にそれぞれ関連付けられたイベント数情報が、抽出処理部1へ入力される(ステップST1)。
図3に示すように、例えば、同一の被検体に関する、異なる撮像日に撮像された複数のPET画像が抽出処理部1に入力される。なお、
図3(a)に示す、撮像日が新しいPET画像を第1のPET画像とする。また、
図3(b)に示す、
図3(a)のPET画像よりも撮像日が古いPET画像を第2のPET画像とする。
【0036】
医用画像処理部80では、抽出処理部1により、入力された複数のPET画像から、閾値処理により背景領域が抽出される(ステップST2)。具体的には、抽出処理部1は、当該PET画像を、複数の領域(例えば、PET画像の画素ごと)に分割する。抽出処理部1は、分割した複数の領域それぞれの体積分率(例えば、ポジトロン核種の体積含有率等)を判別する。抽出処理部1は、体積分率が所定の閾値以下である領域を背景領域として抽出する。例えば、抽出処理部1は、ポジトロン核種の体積含有率がゼロである領域を背景領域として抽出する。抽出処理部1により背景領域が抽出された複数のPET画像は、ゼロ値化処理部2へ出力される。
【0037】
医用画像処理部80では、ゼロ値化処理部2により、抽出処理部1から出力された複数のPET画像に対して、当該背景領域の画素値をゼロ値に置き換えるゼロ値化処理が実行される(ステップST3)。これにより、医用画像処理部80は、PET画像上における被検体領域を明確に描出することが可能になる。
図3(c)および
図3(d)に、ゼロ値化された第1のPET画像およびゼロ値化された第2のPET画像の一例を示す。ゼロ値化された複数のPET画像は、規格化係数算出部4へ出力される。
【0038】
医用画像処理部80では、規格化係数算出部4により、ゼロ値化処理部2から出力された複数のPET画像に対する規格化係数が、入力されたイベント数情報から算出される(ステップST4)。
【0039】
医用画像処理部80では、規格化処理部3により、規格化係数算出部4にて算出された規格化係数を用いて、ゼロ値化処理部2から出力された複数のPET画像それぞれに対して規格化処理が実行される(ステップST5)。
【0040】
規格化処理とは、上記イベント数から算出された規格化係数を各PET画像の各画素値に乗算することである。ここで、第1のPET画像に関連付けられたイベント数を300とし、第2のPET画像に関連付けられたイベント数を150とする。また、第1のPET画像および第2のPET画像それぞれのイベント数を100にする規格化処理を実行する場合について示す。
【0041】
規格化係数算出部4は、第1のPET画像に関連付けられたイベント数300から第1のPET画像に対する規格化係数100/300=1/3を算出する。また、規格化係数算出部4は、第2のPET画像に関連付けられたイベント数150から、第2のPET画像に対する規格化係数100/150=2/3を算出する。
【0042】
規格化処理部3は、当該規格化係数1/3を、第1のPET画像の各画素値に乗算する。また、規格化処理部3は、当該規格化係数2/3を、第2のPET画像の各画素値に乗算する。なお、画素値は、被検体に投与されたポジトロン核種の各画素における集積度を表している。
【0043】
これにより、医用画像処理部80は、
図3(e)に示す規格化された第1のPET画像および
図3(f)に示す規格化された第2のPET画像を発生することが可能になる。規格化された第1および第2のPET画像は、差分処理部5へ出力される。
【0044】
ここで、上記イベント数は、PET画像から推定される場合もある。医用画像処理部80は、例えば、PET画像から同時計数情報を推定し、さらに、推定された同時計数情報から特定の撮像範囲内のイベント数を推定する推定部を設けてもよい。実施形態では、規格化の方法として、表示されている画素ごとの画素値を推定されたイベント数から算出された規格化係数により規格化する方法がある。
【0045】
医用画像処理部80では、差分処理部5により、規格化処理部3から出力された複数のPET画像に対して差分処理を実行される(ステップST6)。
図4は、
図1に示す差分処理部5に入力されたPET画像および当該PET画像から発生する差分画像の一例を示す図である。差分処理部5は、
図4(a)に示す規格化された第1のPET画像と、
図4(b)に示す規格化された第2のPET画像とを差分する。これにより、差分処理部5は、
図4(c)に示す差分画像を発生する。発生した差分画像は、表示部60へ出力される。これにより、例えば、腫瘍等の病変部を明確に描出する差分画像が表示部60に表示される。
【0046】
上記構成によれば、本実施形態に係る医用画像処理部80では、規格化係数算出部4は、第1のPET画像および第2のPET画像にそれぞれ関連付けられたイベント数から、第1のPET画像および第2のPET画像それぞれの規格化係数を算出する。規格化処理部3は、算出された規格化係数を用いて第1のPET画像および第2のPET画像それぞれに対して規格化処理を実行する。差分処理部5は、規格化された第1のPET画像と、規格化された第2のPET画像とに対して差分処理を実行する。
【0047】
ここで、本実施形態に係る医用画像処理装置で画像同士を差分する場合と、従来の医用画像処理装置で画像同士を差分する場合とを比較する。
【0048】
図5は、従来のPET画像および当該PET画像から発生された差分画像の一例を示す図である。
図5に示すように、従来の医用画像処理装置は、PET画像間でガンマ線の入射回数が大きく異なる複数のPET画像同士を差分する場合、被検体に含まれる病変部を描出することが困難である。
【0049】
一方、本実施形態に係る医用画像処理部80では、規格化係数算出部4により、複数のPET画像にそれぞれ関連付けられたイベント数から、当該複数のPET画像それぞれに対する規格化係数を算出する。医用画像処理部80では、規格化処理部3により、算出された当該複数のPET画像それぞれに対する規格化係数を用いて、複数のPET画像に対して規格化処理を実行する。これにより、差分処理部5は、被検体に含まれる病変部が精度よく描出された差分画像を出力することが可能になる。
【0050】
したがって、医用画像処理部80は、被検体に含まれる病変部の描出能を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態では、医用画像診断装置200として、PET装置の構成を示したが、これに限らない。本実施形態に係る医用画像診断装置200の医用画像処理部80は、PET−CT装置、SPECT装置およびガンマカメラ等にも適用可能である。
【0052】
なお、本実施形態では、同時計数器18において上記イベント数を求め、イベント数情報がPET画像に関連付けられて記憶部70に記憶されているが、これに限らない。本実施形態では、例えば、規格化係数算出部4において、記憶部70に記憶された同時計数情報から、イベント数を求めてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、医用画像診断装置200の再構成部20におけるPET画像を再構成する方法として、フィルタ補正逆投影法または逐次近似再構成法を適用する場合について示したが、これに限らない。医用画像診断装置200は、上記LORで結ばれる一対の入射位置における一対のガンマ線の検出時刻差から、一対のガンマ線の発生点を推定する。再構成部20は、一対のガンマ線の発生点を推定する処理を繰り返し実行することで、ポジトロン核種の空間的な集積分布、すなわち、PET画像を再構成してもよい。上記一対のガンマ線の検出時刻差から、一対のガンマ線の発生点を推定する方法は、TOF(Time of Flight)と呼ばれている。
【0054】
また、規格化処理部3は、当該複数のPET画像にそれぞれ関連付けられたイベント数情報、または当該複数のPET画像から推定されたイベント数情報を用いて、画素値を規格化する規格化処理を実行しているが、これに限らない。規格化処理部3は、当該複数のPET画像各々の合計画素値情報を用いて、複数の医用画像各々の各画素値を規格化する規格化処理を実行してもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。