【実施例】
【0020】
(実施例1)
本発明に係るアッパーキャビネットの実施例1を、
図1〜
図3において説明する。実施例1のアッパーキャビネット1は、
図1に示すように、底板2、天板3、側板4および背板5から成り、前面が開放するように箱状に形成され、内部を収納空間8とする本体部9を備えている。
【0021】
また、アッパーキャビネット1は、
図1に示すように、本体部9の前面に取り付けられ、本体部9の天板3または側板4のいずれかに沿った軸を中心として回動するように開閉する前面扉10を備えている。このアッパーキャビネット1においては、本体部9の底板2の下面が前面扉10の下端と同一高さに揃えられている。
【0022】
底板2の前面の少なくとも横幅方向の一部が、本体部9の他の部分の前面よりも後退した位置に設けられている。
図2(a)は、底板2の前面13の横幅方向の全部が、側板4の前面14等、本体部9の他の部分の前面よりも後退した位置に設けられている構成例である。
【0023】
また、
図2(b)は、底板2の前面の少なくとも横幅方向の一部の前面15が、側板4の前面14や底板2の前面の他の部分等、本体部9の他の部分の前面よりも後退した位置に設けられている別の構成例である。
【0024】
底板2の後退した前面13、15の部分に、
図3(a)に示すように、前面扉10との隙間18を塞ぐための手掛かり部材19が取り付けられている。手掛かり部材19は、樹脂材を材料として、押し出し成形等によって一体に形成されており、閉止部22と固定部23とを備えている。
【0025】
閉止部22は、
図3(a)に示すように、その上面24が底板2の上面27と面一に形成され、前方に水平に延びるように形成されている。閉止部22の前面には、前面扉10を閉じた際に、前面扉10の後面(内面)26に当接するように、パッキン(防虫等のためのパッキン)28が形成されている。
【0026】
固定部23は、底板2の前面13、15を覆い、かつ底板2の前面13、15に固定するために設けられており、差し込み式の固定部材29によって、底板2の前面13、15に固定されている。閉止部22の下方かつ固定部23の前方には、前面扉10の後面26の下端部に手を掛けるように手を下方から差し込む手掛かりスペース32が形成される。
【0027】
本実施例では、差し込み式の固定部材としてタッカー33が使用され、固定部23は、
図3に示すように、タッカー33によって、底板2の前面に固定されている。タッカー33(針状の留め具)は、詳細は図示しないが、平面視でコの字型、U字型またはI型のいずれのものでもよい。固定部23におけるタッカー33で固定される部分の下方に係合用の窪み34が形成されている。
【0028】
また、固定部23は、タッカー33を覆うためのカバー部材37をさらに備えている。本実施例では、カバー部材37は、
図3(a)、(b)に示すように、閉止部22の下面から薄肉の折曲げ部38を介して下方に延び、タッカー33をカバーするように設けられている。
【0029】
カバー部材37の下端の後面(内面)には係合用の突起39が形成されており、係合用の窪み34内に嵌合して係合し、カバー部材37をタッカー33の前面に係止するように構成されている。
【0030】
固定部23の下端には、後方に向けて折曲げ片42が設けられている。この折曲げ片42は、
図3(a)に示すように、底板2の下面43の前端寄りの位置を覆うように形成されている。
【0031】
(作用)
以上の構成から成るアッパーキャビネット1の作用を説明する。手掛かり部材19を底板2の前面に取り付ける場合は、手掛かり部材19を底板2の前面に当接し、閉止部22の上面24と底板2の上面27を面一とし、折曲げ片42で底板2の下面43の前端寄りの位置を覆うようにする。
【0032】
この状態で、
図3(b)に2点鎖線(想像線)で示すように、カバー部材37を折曲げ部38を中心に前方に開いて、タッカー打ち込み機(図示せず)でタッカー33を固定部23を通して底板2の前面13、15に打ち込み、タッカー33によって固定部23を底板2の前面13、15に固定する。
【0033】
そして、カバー部材37を、折曲げ部38を中心に後方に閉じ、その係合用の突起39を固定部23の係合用の窪み34内に嵌合して係合し、カバー部材37を閉じた状態として、タッカー33をその前面側からカバーする。
【0034】
このようにすると、タッカー33は前方に露出しないので、意匠性が向上し、見栄えも良く、また施工者および使用者がタッカー33に直接触れることがないので、怪我の防止にもなる。カバー部材37は、その係合用の突起39を固定部23の係合用の窪み34内に嵌合して係合するので、使用中に、カバー部材37がめくれるようなこともない。
【0035】
使用者は、アッパーキャビネット1の使用に際して、前面扉10を開ける際は、閉止部22の下方かつ固定部23の前方の手掛かりスペース32に下方から手を差し込み、前面扉10の下端部の後面26に手を掛けて前方に引くことで、前面扉10を開くことが可能である。
【0036】
このアッパーキャビネット1は、手掛かり部材19が、その閉止部22の上面24と底板2の上面27が面一になるように、底板2の前面に固定されており、底板2の上面27には被らず、底板2の上ではビス止めもしないので、従来のアッパーキャビネットのように段差が発生することがない。従って、段差による底板2上の収納物の出し入れを阻害することがない。
【0037】
また、折曲げ片42で底板2の下面の前端寄りの位置を覆うように構成されているので、底板2の前面13、15と下面43との角部に直接手が触れることがないので、手に傷がつくようなこともない。
【0038】
底板2の前面13、15や下面43には、通常は化粧テープ等が貼着されているが、折曲げ片42でこれらの化粧テープの端部を抑えることができるので、化粧テープが剥がれにくくなるという効果も得られる。
【0039】
なお、手掛かり部材19の閉止部22を収納物の出し入れの阻害とならない程度に、
図3(c)に変形例を示すように、手掛かり部材19の閉止部22の上面からに、僅かに後方に向けて突出部44を設ける構成とすれば、タッカー33を打ち込む際に、突出部44と折曲げ片42によって上下から底板2を挟み込むようにすることで、仮止めでき、上下方向の取付位置のぶれもなく作業性がよくなる。
【0040】
本発明のアッパーキャビネット1によれば、従来のアッパーキャビネットのように、キャビネットの本体部9の上下方向の長さを短くする必要はない。具体的には、側板4及び背板5の下端を前面扉より上方の位置になるように短くする(例えば、標準の700mmの長さのところ685mmとする)ような必要がない。
【0041】
そのため、アッパーキャビネット1を取り付ける背後の室内の壁面の壁板を、本体部9の標準の長さ(例えば側板の長さ700mm)に対応した寸法のものを使用することができるので、現場の壁仕上げの際のミスを防止することができる。
【0042】
本発明のアッパーキャビネット1によれば、従来の取手レスのアッパーキャビネットのように、キャビネット本体部の側板、背板等の上下方向の寸法を短くすることなく、底板2の前面13またはその一部である前面15を後退させ、前後方向の寸法を短くし、その底板2の前面13、15に手掛かり部材19を取り付けた構成とすればよいので、製作も比較的に容易である。
【0043】
しかも手掛かり部材19は、従来の樹脂材による底板の前面のパッキン仕上げと同等の仕様であるから、前面扉10を開けた際に、従来と素材感において異なるようなことは比較的ない。
【0044】
(実施例2)
本発明に係るアッパーキャビネットの実施例2を、
図4において説明する。実施例2のアッパーキャビネット51は、実施例1のアッパーキャビネット1とほぼ同じ構成であり、同じ構成の部分は、同じ符号を使用し、以下、異なる構成について説明する。
【0045】
実施例2のアッパーキャビネット51においては、カバー部材52は、
図4(a)、(b)に示すように、固定部23の下半部53から、薄肉の折曲げ部56を介して上方に延び、タッカー33の前方においてタッカー33をカバーする構成を特徴とする。
【0046】
カバー部材52の上端には、略球状の係合用の突起57が形成されている。閉止部22におけるカバー部材52に対応する下面には、係合用の窪み58が形成されている。タッカー33で固定部23を固定する際には、
図4(b)に示すように、カバー部材52を折曲げ部56を中心に前方に開いた状態として、タッカー33を打ち込んで固定部23を底板2に固定する。
【0047】
その後、カバー部材52を折曲げ部56を中心に後方に押し込んで閉じ、係合用の突起57を係合用の窪み58内に嵌合して係止し、カバー部材52を閉じた状態に維持し、タッカー33が前方に露出しないようにカバーする。
【0048】
(実施例3)
本発明に係るアッパーキャビネットの実施例3を、
図5において説明する。実施例3のアッパーキャビネット61は、実施例1のアッパーキャビネット1とほぼ同じ構成であり、同じ構成の部分は、同じ符号を使用し、以下、異なる構成について説明する。
【0049】
実施例3のアッパーキャビネット61においては、カバー部材62は、
図5(a)、(b)に示すように、固定部23の下端に形成された軟質部63を介して上方に延び、タッカー33の前方においてタッカー33をカバーする構成を特徴とする。
【0050】
閉止部22におけるカバー部材62に対応する下面には、係合用の孔66が形成されている。タッカー33で固定部23を固定する際には、
図5(b)に示すように、カバー部材62を軟質部63を中心に前方に開いた状態として、タッカー33を打ち込んで固定部23を底板2の前面部13、15に固定する。
【0051】
その後、カバー部材62を軟質部63を中心に後方に押し込んで閉じ、カバー部材62の上端を係合用の孔66内に嵌合して係止し、カバー部材62を閉じた状態に維持し、タッカー33が前方に露出しないようにカバーする。
【0052】
軟質部63は、押し出し成形等において、一体成形される手掛かり部材19のうち、他の部分より軟質の材料が注入されて形成される部分である。なお、軟質部63に換えて、実施例1および実施例2のように薄肉の折曲げ部38、56を備えた構成としてもよい。
【0053】
以上、本発明に係るアッパーキャビネットを実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。