特許第6445293号(P6445293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445293
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】バルブリフタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/14 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   F01L1/14 G
   F01L1/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-196218(P2014-196218)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-65533(P2016-65533A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(72)【発明者】
【氏名】桐生 悟
(72)【発明者】
【氏名】石橋 章義
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/081252(WO,A1)
【文献】 特開平03−199604(JP,A)
【文献】 特開2006−214313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00− 1/32
F01L 1/36− 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムの回転運動をバルブの往復運動に変換する内燃機関のバルブリフタであって、
前記バルブリフタはカップ形状を有し、
その内面側にバルブステムのステムエンドが当接するボス部を備え、
前記ボス部のショットピーニング処理を施した表面から2μmの範囲のマルテンス硬さHM(ISO 14577-1)が6000 N/mm2以上であり、
前記ボス部の粗さ曲線が0.24〜1μmのRk値(JIS B 0671-2:2002)及び-1.5〜-0.2のRsk値(JIS B 0601:2001)を有することを特徴とするバルブリフタ。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブリフタにおいて、前記バルブリフタがオイル供給孔を有しないことを特徴とするバルブリフタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバルブリフタにおいて、前記バルブリフタがクロムモリブデン鋼からなることを特徴とするバルブリフタ。
【請求項4】
カムの回転運動をバルブの往復運動に変換する内燃機関のバルブリフタの製造方法であって、
内面側にバルブステムのステムエンドが当接するボス部を備えたカップ形状のクロムモリブデン鋼又は合金工具鋼からなるバルブリフタを鍛造及び機械加工して成形し、浸炭及び焼入・焼戻処理を施した後
前記ボス部の表面の粗さ曲線が0.24μm未満のRk値となるように機械加工し、
前記ボス部の表面から2μmの範囲のマルテンス硬さHM(ISO 14577-1)が6000 N/mm2以上となるように前記ボス部にショットピーニング処理を施し、さらに
前記ボス部の表面の粗さ曲線が-1.5〜-0.2のRsk値となるように最表面の微小突起を除去する加工を行うことを特徴とするバルブリフタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の直打式動弁機構におけるバルブリフタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直打式動弁機構において、カムの回転運動をバルブの往復運動に変換する際、バルブリフタのボス部とバルブステムのステムエンドとの間には大きな繰り返し衝撃力と高面圧が発生し、さらにバルブリフタの回転により金属同士の微小滑りも伴うことから、バルブリフタのボス部は、摺動部として非常に厳しい疲労摩耗を受ける部位である。
【0003】
よって、例えば、特許文献1及び特許文献2は、バルブリフタのボス部とバルブステムエンドの摺動部を潤滑して摩耗の問題を解消するために、バルブリフタの中心にボス部を通りバルブステムエンドに向かって延びるオイル穴(通路)を設けたバルブリフタを開示している。
【0004】
また、バルブリフタが傾斜して配置されたエンジンでは、バルブスプリングの設置底面にオイルが溜まりにくいため、特許文献3及び特許文献4に開示されるように、バルブリフタの冠面に1又は複数のオイル(潤滑油)供給孔を設けて、ボス部とバルブステムエンドの摺動部へオイルを供給することが知られている。特許文献3では、カムの回転に基づいて発生するフリクションによりバルブリフタ自体が回転し、この回転により前記オイル通路の出口が回転するように構成されること、特許文献4では、カムがオイル供給孔を通過する際の面圧がオイル供給孔のない領域を通過する際の最大面圧を越えない位置に、オイル供給孔を形成することが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2のボス部を通るオイル穴ではバルブステムエンドとの接触面積の減少による面圧増加の問題や、特許文献4のカムの通過する際の面圧の影響によるオイル供給孔を起点とした摩耗や皮膜の剥離、又はオイル供給孔の追加加工によるコストアップの問題が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−167803号公報
【特許文献2】実開平1−119808号公報
【特許文献3】特開2001−342810号公報
【特許文献4】特開2006−57637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、内燃機関の直打式動弁機構におけるバルブリフタボス部とバルブステムエンドとの摺動において、疲労摩耗に強く、良好な潤滑を維持することが可能な表面構造をもつバルブリフタ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、バルブリフタボス部とバルブステムエンドとの摺動に関し、バルブリフタボス部の表面処理の影響について鋭意研究した結果、所定のショットピーニング処理が表面硬度を著しく向上し、且つ良好な潤滑を維持できる表面構造を生みだすことができることに想到した。
【0009】
すなわち、本発明のバルブリフタは、カムの回転運動をバルブの往復運動に変換する内燃機関のバルブリフタであって、前記バルブリフタはカップ形状を有し、その内面側にバルブステムのステムエンドが当接するボス部を備え、前記ボス部のショットピーニング処理を施した表面から2μmの範囲のマルテンス硬さHM(ISO 14577-1)が6000 N/mm2以上であり、前記ボス部の粗さ曲線が0.24〜1μmのRk値(JIS B 0671-2:2002)及び-1.5〜-0.2のRsk値(JIS B 0601:2001)を有することを特徴とする。
【0010】
それにより、本発明のバルブリフタはオイル供給孔を有する必要がない。
【0011】
前記バルブリフタは、クロムモリブデン鋼からなることが好ましい。
【0012】
また、本発明のバルブリフタの製造方法は、カムの回転運動をバルブの往復運動に変換する内燃機関のバルブリフタの製造方法であって、内面側にバルブステムのステムエンドが当接するボス部を備えたカップ形状のクロムモリブデン鋼又は合金工具鋼からなるバルブリフタを鍛造及び機械加工して成形し、浸炭及び焼入・焼戻処理を施した後前記ボス部の表面の粗さ曲線が0.24μm未満のRk値となるように機械加工し、前記ボス部の表面から2μmの範囲のマルテンス硬さHM(ISO 14577-1)が6000 N/mm2以上となるように前記ボス部にショットピーニング処理を施し、さらに前記ボス部の表面は粗さ曲線が-1.5〜-0.2のRsk値となるように最表面の微小突起を除去する加工を行うことを特徴とする
【発明の効果】
【0013】
本発明のバルブリフタは、ボス部表面が著しく硬化され、優れた耐ピッチング摩耗性を示す。また、その表面の粗さ曲線が所定のRk値とRsk値を有し、平滑で保油性に優れた表面構造を持つことによって、バルブリフタ内面に開口するオイル供給孔を有しなくても、バルブスプリングから跳ね上がる間接給油により十分な耐摩耗性を示すことができる。さらに、機械工業界で広く利用されているショットピーニング処理やラップ処理のような量産化の容易な手法により製造できるため、容易に実用化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態を示す内燃機関の直打式動弁系の断面図である。
図2】本発明のバルブリフタの一例を示す断面図である。
図3】実施例1及び比較例1のマルテンス硬さHMの表面から深さ30μmまでの分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のバルブリフタは、図1及び図2にその断面図を示すように、内燃機関の直打式動弁系に適用される。バルブリフタ(1)は、カム(2)とバルブ(3)の間に配置され、カム(2)の回転運動をバルブ(3)の往復運動に変換する機能を有している。バルブリフタ(1)は、スプリングリテーナ(4)を介したバルブスプリング(5)の反力により、ステムエンド(10)がバルブリフタのボス(9)に当接してカム(2)側に押しつけられ、カム(2)の回転と共に、カム(2)とバルブリフタの冠面(8)の間、シリンダガイド穴の側壁(ガイド穴の摺動面)(6)とバルブリフタの側面(7)との間、及びバルブリフタのボス(9)とバルブステムのステムエンド(10)との間で摺動する。バルブリフタ(1)にオイル供給孔がない場合は、ボス(9)とステムエンド(10)との間の潤滑が不足した厳しい摩擦環境下で、繰り返し応力を受ける摺動となるため、特にボス(9)には優れた摺動特性が求められている。ここで、バルブリフタ(1)はカム(2)の回転に基づくフリクションにより回転し、バルブ(2)も回転自在な状態にある。
【0016】
本発明のバルブリフタのボス部は、表面から2μmの範囲でマルテンス硬さHMが6000 N/mm2以上であるものとする。マルテンス硬さは、ナノインデンテーション法を用いて、極表面の硬さを評価する指標として知られており、表面処理皮膜の評価等に用いられている。表面から2μmの範囲のマルテンス硬さHMが6000 N/mm2未満であると、ステムエンドと摺動するボス部の硬さが十分でなく、耐摩耗効果も十分でない。また、マルテンス硬さHMが6000 N/mm2以上の範囲が表面から2μm未満であっても、十分な耐摩耗性が得られない。マルテンス硬さHMが6000 N/mm2以上の領域は、表面から4μmの範囲であることが好ましく、6μmの範囲であることがより好ましい。マルテンス硬さHMは、表面から2μmの範囲で、6200 N/mm2以上がより好ましく、6500 N/mm2以上がより好ましい。一方、マルテンス硬さHMの上限は、7500 N/mm2未満であることが好ましい。
【0017】
また、本発明者らは、バルブリフタ冠面の表面性状を示す様々な粗さパラメータと動弁系のフリクショントルクデータ(カムの駆動トルクデータ)との相関について、多変量解析等の手段を用いて、鋭意研究した結果、Rk値(JIS B 0671-2:2002)とRsk値(JIS B 0601:2001)がフリクショントルクデータに有意であり、これらの粗さパラメータを所定の値に制御することにより、摩擦損失が少なく耐摩耗性に優れた摺動部材とすることができることに想到し、特願2013-71675として出願した。本発明は、ボス部においても、これらの粗さパラメータを所定の値に制御して、バルブリフタ内面に開口するオイル供給孔を有しなくても、バルブスプリングから跳ね上がる間接給油により、油膜厚さが十分確保できる表面性状とすることによって、十分な耐摩耗性を維持できることに想到したものである。
【0018】
すなわち、本発明のバルブリフタは、ボス部の粗さ曲線が0.24〜1μmのRk値(JIS B 0671-2:2002)及び-1.5〜-0.2のRsk値(JIS B 0601:2001)を有するものとする。Rk値は、粗さ曲線の突出山部高さと突出谷部深さの間のコア部のレベル差を意味しており、この値が大きくなれば凹部が深くなり保油性が向上すると考えられる。Rk値は0.31〜0.9μmがより好ましい。また、Rsk値は、粗さ曲線のスキューネス(skewness:ゆがみ度)を意味しており、粗さ曲線の平均線に対する非対称性の度合を示している。本発明のように表面が平滑であり、窪みのある状態でRsk値は負の値をとる。Rsk値は-1.5〜-0.5がより好ましく、-1.5〜-0.7がさらに好ましい。
【0019】
バルブリフタの材質は、特に限定されないが、クロムモリブデン鋼(JIS G4053、SCM材)、合金工具鋼(JIS G4404、SKD11及び相当材)が好ましく使用できる。クロムモリブデン鋼、合金工具鋼の棒材又は板材から、冷間鍛造によりバルブリフタを成形し、少なくとも前者は浸炭焼入、後者は焼入・焼戻を行って使用する。もちろん窒化処理を行うこともできる。さらに、バルブリフタの摺動面とその相手材の摺動面の一方又は両方に、低摩擦、耐摩耗をさらに向上させる目的で、DLC被膜、イオンプレーティング被膜、メッキ被膜などの表面処理を施してもよい。もちろん、それらの表面性状は本発明で規定する粗さ特性をもつことが好ましい。
【0020】
本発明のバルブリフタの製造方法は、内面側にバルブステムのステムエンドが当接するボス部を備えたカップ形状のクロムモリブデン鋼又は合金工具鋼からなるバルブリフタを鍛造及び機械加工して成形した後、浸炭及び焼入・焼戻処理を施し、前記ボス部の表面から2μmの範囲のマルテンス硬さHMが6000 N/mm2以上となるように、前記ボス部にショットピーニング処理を施すことを特徴とする。ショットピーニング処理は、ボス部表面に圧縮の残留応力を生じさせて、特に最表面の硬さを高め、疲労寿命を向上させるために行われ、また、表面に油溜りとして機能する微小の凹部を形成してRk値を増加し、保油性を向上させるために行われる。微小凹部を形成するという観点では、硬質の微小ショットを高速で吹き付ける公知の方法が使用できる。
【0021】
微小ショットによる高速ショットピーニングは、残留オーステナイトのマルテンサイトへの変態を誘起し、極表面に高い残留圧縮応力と高い硬さをもたらす。これらは、微小ショットの材質、噴射圧力、投射時間、等のショットピーニング条件に依存するが、特に高い生産性を維持する観点で、投射時間は20秒以内とすることが好ましく、10秒以内がより好ましく、5秒以内であればさらに好ましい。
【0022】
Rk値とRsk値をそれぞれ好ましい範囲の0.24〜1μmと-1.5〜-0.2に調整するために、ショットピーニング処理を施す前に、ボス部の表面の粗さ曲線が0.24μm未満のRk値となるように機械加工するものとする。さらに、ショットピーニング処理を施した後、ボス部の表面の粗さ曲線が-1.5〜-0.2のRsk値となるように最表面の微小突起を除去する加工を行うものとする。微小突起の除去には、ラップ処理や、比較的大きなショットで微小突起をつぶすようなショットピーニング処理を使用することができる。
【実施例】
【0023】
実施例1及び比較例1
SCM420材から、冷間鍛造、浸炭焼入、研磨加工等の工程を経て、図2に示す形状のバルブリフタを作製した。冠面及びボス部表面の粗さ曲線はRk値が0.15μmであった。実施例1は、このようにして得られたバルブリフタの冠面及びボス部表面に、平均粒径30μmのスチール微小ショットを0.45 MPaの噴射圧力で約5秒投射するショットピーニング処理を行った。また、ショットピーニング未処理のものを比較例1とした。実施例1及び比較例1について、ボス部のマルテンス硬さHM及び表面粗さパラメータ(Rk値、Rsk値)を測定し、さらに耐久摩耗試験を行った。
【0024】
[1] マルテンス硬さHMの測定
実施例1及び比較例1のマルテンス硬さHMは、ISO 14577-1(計装化押込み硬さ試験)に準拠し、ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製DUH-211)を用い、鏡面研磨した断面の表面下2μm、4μm、6μm、8μm、10μm、20μm、30μmの位置に相当する箇所について測定した。試験条件は、
ダイヤモンド圧子:115°三角錐圧子
試験モード:負荷-除荷試験
試験力F:10 mN
負荷除荷速度:0.4877 mN/sec
負荷保持時間:5 sec
除荷保持時間:5 sec
Cf-Ap補正:あり
とした。マルテンス硬さHMは、
HM=1000F/26.43h2 (N/mm2)
ここで、hはインデンテーション深さ(μm)である。
測定結果としては、各3点測定し、平均値を採用した。実施例1及び比較例1のマルテンス硬さHMの表面から深さ30μmまでの値を表1に、その分布を図3に示す。
【0025】
実施例1の表面近傍10μmの範囲でマルテンス硬さHMは、表面に近づくほど高くなっており、表面から2μmの深さで6162 N/mm2を示した。一方、比較例1では、表面から30μm程度まで約5000 N/mm2とほぼ一定のマルテンス硬さを示していた。
【0026】
[2] 表面粗さパラメータ(Rk値、Rsk値)の測定
また、バルブリフタボス部表面について、触針式表面粗さ試験機を用いて、Rk値とRsk値を測定した。バルブリフタ12個分の平均値として、実施例1のRk値は0.51μm、Rsk値は-0.45、比較例1のRk値は0.15μm、Rsk値は-0.28であった。
【0027】
[3] 耐久摩耗試験
ボス部の耐久摩耗試験は、実機(2.0L、DOHC直列4気筒16バルブ)のシリンダヘッドアッシーを用いて、実施例1のバルブリフタを4個、比較例1のバルブリフタを4個組み込み、排気側のカムシャフトのみをモーターで駆動させることによって行った。運転条件は、カム回転数300 rpm、油種0W-20、油温120℃、油圧0.1MPa、500時間とした。また、バルブのステムエンドの表面粗さはRaで0.13μmであった。ボス部の摩耗量は、触針式表面粗さ試験機を用いてボス部のプロファイルを45°間隔に8ケ所測定し、最大深さにより評価した。摩耗量(最大深さ)はバルブステムとの接触部の中心ではなく周辺部で観察され、実施例1の摩耗量は0.3μm、比較例1の摩耗量は2.4μmであった。
【0028】
上記の実施例1及び比較例1について、表面粗さパラメータのRk値及びRsK値並びに耐久摩耗試験の摩耗量をマルテンス硬さHMの結果とともに表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例2及び実施例3
実施例2及び実施例3のバルブリフタは、ショットピーニング処理の投射時間を、実施例2で10秒間、実施例3で20秒間とした以外は、実施例1と同様にして作製した。実施例1と同様にして、マルテンス硬さHM115、表面粗さパラメータ(Rk値、Rsk値)を測定し、耐久摩耗試験を行った。その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例2及び実施例3の結果から、ショットピーニング処理の投射時間を増加すると、マルテンス硬さHMが増加し、硬化深さも少し増加する傾向を示し、実施例2では4μmの範囲、実施例3では6μmの範囲までマルテンス硬さHMが6000 N/mm2以上となった。
【0033】
実施例4及び実施例5
実施例4及び実施例5のバルブリフタは、ショットピーニング処理の噴射圧力を、実施例4で0.5 MPa、実施例5で0.55 MPaとした以外は、実施例1と同様にして作製した。ショットピーニング処理した後、さらに、冠面にはフィルムラップ処理、ボス部にはバフ研磨処理を施した。実施例1と同様にして、マルテンス硬さHM115、表面粗さパラメータ(Rk値、Rsk値)を測定し、耐久摩耗試験を行った。その結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
実施例4及び実施例5の結果から、ショットピーニング処理の噴射圧力を上げることによっても、マルテンス硬さHMが増加し、硬化深さも少し増加する傾向を示した。特に、わずか5秒間の投射時間で表面から4μmの範囲までマルテンス硬さHMが6000 N/mm2以上となり、優れた生産性を示すことが期待された。また、ショットピーニング後の研磨処理により、負の値を示すRsk値がさらに負側に変化することも確認された。
【符号の説明】
【0036】
1 バルブリフタ
2 カム
3 バルブ
4 スプリングリテーナ
5 バルブスプリング
6 シリンダガイド穴側壁
7 バルブリフタの側面
8 冠面
9 ボス
10 ステムエンド
図1
図2
図3