特許第6445327号(P6445327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6445327-車両の差動ブレーキの方法および装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445327
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】車両の差動ブレーキの方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 23/04 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   B60K23/04 E
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-537612(P2014-537612)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2014-534116(P2014-534116A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012071146
(87)【国際公開番号】WO2013060775
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年9月29日
【審判番号】不服2017-13280(P2017-13280/J1)
【審判請求日】2017年9月7日
(31)【優先権主張番号】1150987-4
(32)【優先日】2011年10月25日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】593118656
【氏名又は名称】ボルグワーナー スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ヴェスタールント ニコラス
【合議体】
【審判長】 大町 真義
【審判官】 尾崎 和寛
【審判官】 内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−281117(JP,A)
【文献】 特開平7−96765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 23/04
F16H 48/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧制御リミテッドスリップクラッチ(7)を有する差動ブレーキが設けられる差動装置(6)を介して、2つの駆動輪(1)への駆動トルクの配分を制御するための、車両の動力伝達装置における方法であって、
前記車両のブレーキペダルがリリースされた後、特定の時間の間、または急なカーブを通り抜ける間に前記車両が加速しているとき、または高速走行中に前記車両のハンドルが回されるときに、低い予備的油圧が前記クラッチ(7)に適用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記予備的油圧は、前記クラッチ(7)のクラッチ板(8)を互いに接触するようにもたらすが、車両の推進力に影響しない大きさである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予備的油圧は、前記車両のブレーキペダルがリリースされた後、特定の時間適用される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記予備的油圧は、急なカーブを通り抜ける間に前記車両が加速しているときに、適用される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記予備的油圧は、高速走行中に前記車両のハンドルが回されるときに、適用される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
2つの駆動輪(1)に駆動トルクを配分するための差動装置(6)、および油圧制御リミテッドスリップクラッチ(7)を有する差動ブレーキ、を備える車両の動力伝達装置であって、
前記車両のブレーキペダルがリリースされた後、特定の時間の間、または急なカーブを通り抜ける間に前記車両が加速しているとき、または高速走行中に前記車両のハンドルが回されるときに、前記クラッチ(7)への予備的油圧の適用を制御するための応答システムによって特徴づけられる、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御リミテッドスリップクラッチを有する差動ブレーキを備える差動装置を介して2つの駆動輪への駆動トルクの配分を制御するための車両(好ましくは前輪駆動車)の動力伝達装置における方法に関する。それは、この方法を実行するための装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチを介して電子制御される差動ブレーキは、特定のドライビング状況でだけ使われる。そしてそれは、その2つの連続する動作の間の通常のドライビング状況下でこのように数分またはそれ以上かかる場合がある。クラッチが「アイドリング」(そのクラッチ板が互いから完全に切り離される)状態に戻ってもよいことを、そして、制御トルクがクラッチにおいて必要であるときに、応答時間が長くてもよいことを、これは、意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/043722号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の主要な目的は、特定の状況において長い応答時間を有する欠点を解消することである。特定の予め決められたドライビング状況のうちのいずれか1つの発生で低い予備的油圧がクラッチに適用されるという点で、これは、本発明によって達成される。
【0005】
この予備的油圧は、好ましくは、クラッチのクラッチ板を互いに接触するようにもたらすが、車両の推進力に影響しない大きさである。そして、クラッチの制御動作がまもなく想定されるかもしれない状況において適用されてよい。
【0006】
予備的油圧は、例えば、車両のブレーキペダルがリリースされた後、特定の時間、または、急なカーブを通り抜ける間に車両が加速しているときに、または、高速走行中に車両のハンドルが回されるときに、適用されてよい。
【0007】
本発明は、添付図面を参照して以下でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、前輪駆動(FWD)路上走行車のための動力伝達装置のレイアウトの概略図である。
図2図2は、図1の動力伝達装置におけるリミテッドクラッチの制御システムの例示的な油圧構成である。
図3図3は、本発明を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、前輪駆動(FWD)路上走行車のための動力伝達装置(driveline)のレイアウトの概略図である。車両は、車台において、2つの被駆動前輪1および2つの非被駆動後輪2を有する。いかなる当業者にも周知なように、前輪1は、ギヤボックス4および2本のハーフ車軸5を介してエンジン3によって駆動される。2本のハーフ車軸5は、例えば、曲線通り抜けにおいて異なる速度で回転してよい2本のハーフ車軸5に対してトルクを伝達することができる通常の差動装置6によって、互いに接続される。
【0010】
特定の状況において、1つの駆動輪1についての接地グリップは、部分的にまたは全体に失われてよい。そして、車輪のスリップおよび他の駆動輪についてのトルク伝達または静止摩擦の損失に結果としてなる。通常の差動装置のこの望ましくない結果は、2本のハーフ車軸5を互いに接続することによって差動装置を部分的にまたは全体に「短絡させる」効果を有する差動ブレーキの供給によって、知られるように未然に防止される。油圧で制御される(hydraulically controlled)リミテッドスリップクラッチ7の形の差動ブレーキは、図1に示される。このクラッチ7を係合することによって、2本のハーフ車軸間の速度差およびトルク配分は、制御されてよい。
【0011】
図2は、油圧制御システム(hydraulic control system)を示す。そしてそれは、リミテッドスリップクラッチ7の制御用マルチディスクまたはディスクパッケージ8のために用いることができるシステムの実施例である。ディスク8が油圧シリンダ9によって互いの係合にもたらされるときに、クラッチ7は、係合する。この油圧制御システムは、参照がなされる特許文献1において以前に詳細に図示されかつ記載された。モータ11によって駆動される油圧ポンプ10の存在に言及することは、本明細書において十分でもよい。ポンプ10と同じ軸上に、圧力オーバフローバルブ13の位置を制御する遠心調節装置12がある。システムはまた、リリーフバルブ14を含む。
【0012】
モータ11は常に回転している。しかし、その回転速度は、シリンダ9への油圧を増加させるために、したがってクラッチ7のマルチディスク8を係合させるために、増加する。クラッチ7は、常に回転しているモータ11のせいで、大きな精度を有して、そしてかなり短い応答時間を有するシステムによって制御されることができる。システムの最大油圧は、例えば、40バールに設定されてよい。
【0013】
すでに述べたように、クラッチ7の形の差動ブレーキは、以下で論じられる特定の状況下でのみ作動される。この種の状況は、むしろ長い時間間隔(例えば数分以上)でのみ発生する場合がある。これは、油圧制御システムが「アイドリング」であり、そしてそこにおける油圧が無に落ち、その結果クラッチ7のマルチディスク8が互いから最大距離であることを意味する。
【0014】
クラッチ7を係合する必要があるときに、油圧系統(hydraulic system)を加圧してマルチディスク8を圧縮するための時間は、250msを超えるオーダーであってよい。そしてそれは、差動ブレーキを制御するためのこの使用においてあまりに長くてもよい。
【0015】
あまりに長い応答時間を有する問題の解決法は、本発明によれば、特定の予め決められた駆動状況が発生するときに、シリンダ9において特定の低い予備的油圧を適用することでもよい。この種の駆動状況は、車両の既存の手段によって検出されてよい。そして、この圧力を適用するための処理は、差動ブレーキのための通常の電子制御システムによって扱われてよい。
【0016】
予備的油圧は、車両の推進力が影響されないように低いが、しかしマルチディスク8のディスクを互いに適用するためには、換言すればディスクパッケージについての「キスポイント」に到達するためには、まだ十分に高い。システムの最大油圧40バールにおいて、予備的油圧は、例えば1バールのオーダーであってよい。予備的油圧の使用は、「アイドリング」間隔後の応答時間を大幅に改良してよい。
【0017】
差動ブレーキのための電子制御システムのソフトウェアは、1つのバージョンに3つのメイン領域(予圧、スリップ規制および偏揺れ減衰)を含んでよい。
【0018】
車両が停止からスタートするときに、ソフトウェアの予圧領域は、クラッチ7を係合または係止してよい。これは、駆動輪のいずれかについてのグリップを緩めることを、そして他方に比べてより弱い接地グリップを有することを回避する予防手段である。
【0019】
スリップ規制は、動作の間、駆動輪のうちの1つについての減少したグリップの発生で、クラッチ7上にトルクを適用する。
【0020】
偏揺れ減衰は、車両のオーバーステアリングが発生して、車両を元に戻すかまたは安定させる傾向があるときに、クラッチ7上にトルクを適用する。
【0021】
この環境において、そして使用の実施例としてみられるだけのために、予備的油圧は、予備的油圧なしで提供される場合よりもより速い応答時間を必要としている以下のドライビング状況において、電子反応システムによって適用されてもよい。
−車両は赤ランプで保持して、ドライバは適用された足ブレーキを有する。ブレーキペダルがリリースされるときに、予圧がおそらく来る応答時間を改良するための例えば2秒間、予備的油圧は、適用される。予圧がこの時間間隔の範囲内で用いられない場合には、予備的油圧が必要でないと仮定されなければならない。それというのも、ドライバは、急速発進を計画しなかったからである。
−加速中に、鋭いカーブは通り抜けられる。高い横方向の加速と共同するガスペダル位置は、内側駆動輪がそのグリップを緩めてよく、そしてスピンし始めてよいことを示す。スリップ規制トルクについて必要とされる場合、予備的油圧は、応答時間を減少させるために適用される。
−車両が高速走行しているときに、ハンドルはいくぶん回される。これは、偏揺れ減衰が必要かもしれないことを示す。そして、予備的油圧は、適用される。
【0022】
クラッチ7の速い反応が必要かもしれない他のドライビング状況が可能である点に注意される。また、本発明が図示されかつ記載されたクラッチのその利用、およびその制御システムに制限されない点に注意することは、重要である。
【0023】
図3は、本発明を示すブロック線図である。最新の車両のデータバスは、ドライビングの間、車両およびその挙動についての詳細な情報を含む。車両の状態は、このように常に算出される。クラッチ7からの迅速な応答を必要としている予め決められたドライビング状況が発生する場合、応答システムは、ディスクパッケージ8を「キスポイント」に係合するための予備的油圧の適用を制御する。
【0024】
本発明は、前輪駆動車のためのその使用において図示されかつ記載された。しかし、その基本的な着想は、後輪駆動車に対して等しく適用可能である。
【0025】
変更態様は、添付の請求の範囲の範囲内で可能である。
図1
図2
図3