(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記研磨工程が、容器内に更に研磨石を収容せしめ、該容器の回転により又は該容器中の内容物の撹拌により、前記回収鋳物砂が研磨石により研磨されるようにした工程であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の回収鋳物砂の再生方法。
前記研磨工程が、容器内面に研磨材で形成された研磨層が設けられて、該容器の回転により又は該容器中の内容物の撹拌により、前記回収鋳物砂が該研磨層を形成する研磨材により研磨されるようにした工程であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の回収鋳物砂の再生方法。
前記研磨工程が、前記容器内に一対の研磨ローラが配置されて、該研磨ローラの回転により、前記回収鋳物砂が該研磨ローラで研磨されるようにした工程であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の回収鋳物砂の再生方法。
前記研磨工程の後、常圧又は減圧状態で、ろ過または遠心分離によって水分を除去する水分除去工程と、再生処理された鋳物砂を乾燥する乾燥工程とを、更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の回収鋳物砂の再生方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋳物砂に粘結剤として主にフェノール樹脂等の有機化合物が混練されてなる鋳物砂組成物を用いて鋳型を造型し、そしてその得られた鋳型にて鋳造を行った後、その使用後の鋳型を解砕(型ばらし)して得られる回収鋳物砂には、使用した粘結剤が付着しているところから、かかる回収鋳物砂に対して再生処理を施して、再利用されることがある。そして、そのような回収鋳物砂の再生方法には、古くより、湿式再生法、加熱式再生法、乾式再生法等、各種の方法が提案され、実施されてきている。
【0003】
而して、鋳物砂に混練される粘結剤が有機化合物であれば、鋳造時の熱履歴や焼成によって、回収鋳物砂の再生は比較的容易となるのに対して、特に水ガラス等の無機系の粘結剤を用いた場合に、有機化合物と同様には、回収鋳物砂の再生を行うことが出来ず、効果的な再生方法が確立されていないというのが、現状である。
【0004】
また、そのような粘結剤として水ガラスを用いた鋳型からの回収鋳物砂の再生処理の方法として、従来では、特許文献1に明らかにされているように、鋳物砂の粒子を590μ以下の大きさに揃えた後、高温炉に挿入して、砂粒をゆっくりと撹拌しながら昇温せしめて、900〜1100℃程度の温度で焼成することにより、ケイ酸ソーダを燃焼させて昇華した後、砂粒子に加水して濾過を行い、次いで砂粒のpH値が7程度となるように中和した後、砂粒子を乾燥する再生回収方法が、知られている。
【0005】
しかしながら、このような再生処理方法により得られる砂は、その表面から粘結剤として用いたケイ酸ソーダが除去されているところから、再生鋳物砂として、再度の使用が可能となるのであるが、かかる粘結剤の除去処理を行う前に、鋳型の解砕、分級といった粒度調整の作業が必要とされることに加えて、その後の粘結剤の除去処理も、高温加熱、冷却、洗浄、乾燥と多くの工程が必要とされている。そのため、エネルギーの消費量が非常に大きく、また再生にも時間がかかるようになるため、再生コストが高騰するという問題や、大がかりな再生プラントが必要となる等という問題があった。
【0006】
さらに、他の再生方法として、特許文献2に明らかにされている如き、研磨による再生方法もあり、そこでは、回収砂100質量部に対して、0.5〜20質量部の水を添加して、研磨処理を行う水添研磨処理を実施した後、更に乾式研磨処理を行うことによって、鋳物砂を再生する手法が、採用されている。なお、この方法は、回収砂に対して水を少量添加することにより、残留樹脂分を剥がれ易くして、効率良く除去できるようにすることを意図したものである。
【0007】
しかし、そのような水添研磨処理と乾式研磨処理とを組み合わせてなる鋳物砂の再生方法は、粘結剤として水溶性フェノール樹脂を用いて、それを有機エステル化合物で硬化させて造型される鋳型からの鋳物砂の回収を想定したものであるために、水ガラス等の無機系粘着剤を用いた場合においては、そのまま採用することは困難であった。けだし、そのような無機系粘結剤は、本来、水溶性ではあるものの、鋳造時の熱履歴や焼成作用によって、水に溶け難く、剥がれ難いものとなるために、上述の如き研磨による再生方法では、研磨によって砂表面の粘結剤を充分に研磨除去することが出来ず、回収鋳物砂の再生には不充分となるものであったのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、粘結剤や不純物の除去率が高く、鋳物品質及び鋳型強度を有利に向上せしめ得る、より簡易な回収鋳物砂の再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明者等が、回収鋳物砂の再生方法について鋭意検討を重ねた結果、以下に列挙せる如き各種の態様において、上述の如き課題が悉く解決され得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。なお、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0011】
(1)水溶性の粘結剤が付着した回収鋳物砂を再生する方法であって、容器内に前記回収 鋳物砂と水とを収容して、0.1MPa以上の圧力に加圧し、100℃以上の温度 に加熱した状態で、該回収鋳物砂を研磨する研磨工程を遂行することを特徴とする 回収鋳物砂の再生方法。
(2)前記回収鋳物砂の100質量部に対し、前記水の使用量が30〜200質量部の割 合であることを特徴とする前記態様(1)に記載の回収鋳物砂の再生方法。
(3)前記加熱温度が、100〜300℃の範囲内であることを特徴とする前記態様(1 )または前記態様(2)に記載の回収鋳物砂の再生方法。
(4)前記加圧圧力が、0.1〜10MPaの範囲内であることを特徴とする前記態様( 1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の回収鋳物砂の再生方法。
(5)前記粘結剤が、水溶性の無機粘結剤を主成分とする前記態様(1)乃至前記態様( 4)の何れか1つに記載の回収鋳物砂の再生方法。
(6)前記無機粘結剤が、ケイ酸化合物である前記態様(5)に記載の回収鋳物砂の再生 方法。
(7)前記研磨工程が、容器内に更に研磨石を収容せしめ、該容器の回転により又は該容 器中の内容物の撹拌により、前記回収鋳物砂が研磨石により研磨されるようにした 工程であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記 載の回収鋳物砂の再生方法。
(8)前記研磨石の使用量が、前記回収鋳物砂の100質量部に対して、30〜300質 量部の割合であることを特徴とする前記態様(7)に記載の再生方法。
(9)前記研磨工程が、容器内面に研磨材で形成された研磨層が設けられて、該容器の回 転により又は該容器中の内容物の撹拌により、前記回収鋳物砂が該研磨層を形成す る研磨材により研磨されるようにした工程であることを特徴とする前記態様(1) 乃至前記態様(6)の何れか1つに記載の回収鋳物砂の再生方法。
(10)前記撹拌が、容器内で回転可能な撹拌翼またはドラム羽根を用いて実施されるこ とを特徴とする前記態様(7)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載の回収鋳物 砂の再生方法。
(11)前記研磨工程が、前記容器内に一対の研磨ローラが配置されて、該研磨ローラの 回転により、前記回収鋳物砂が該研磨ローラで研磨されるようにした工程であるこ とを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載の回収鋳物 砂の再生方法。
(12)前記回収鋳物砂が、ケイ酸ナトリウム系粘結剤を用いて造型された鋳型から回収 された回収鋳物砂であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(11)の 何れか1つに記載の回収鋳物砂の再生方法。
(13)前記研磨工程の後、前記容器中の内容物を中和する中和工程と、再生処理された 鋳物砂を乾燥する乾燥工程とを、更に有することを特徴とする前記態様(1)乃至 前記態様(12)の何れか1つに記載の回収鋳物砂の再生方法。
(14)前記研磨工程の後、常圧又は減圧状態で、ろ過または遠心分離によって水分を除 去する水分除去工程と、再生処理された鋳物砂を乾燥する乾燥工程とを、更に有す ることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(12)の何れか1つに記載の回 収鋳物砂の再生方法。
(15)前記乾燥工程の後、回収鋳物砂から剥がれた粘結剤の微粉を集じん機にて取り除 く微粉除去工程を、更に有することを特徴とする前記態様(13)または前記態様 (14)に記載の回収鋳物砂の再生処理方法。
(16)前記加熱及び加圧が、水蒸気の吹き込みによって行われることを特徴とする前記 態様(1)乃至前記態様(15)の何れか1つに記載の回収鋳物砂の再生方法。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に従う回収鋳物砂の再生方法にあっては、特定の加熱・加圧条件下において回収鋳物砂を水と接触させることにより、鋳物砂に付着せる粘結剤が水に溶解し易く且つ剥離し易い状態になるようにしたのであり、そしてその状態のまま研磨を行うことで、粘結剤を容易に除去せしめることが出来、以て効率の良い再生を行うことが出来るという効果を奏するのである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明に従う回収鋳物砂の再生方法において用いられる回収鋳物砂とは、鋳物砂に水溶性の粘結剤が混練されてなる鋳物砂組成物を用いて造型された鋳型を解砕(型ばらし)して得られる使用済の鋳物砂であって、その表面には、粘結剤が付着してなるものである。なお、この回収鋳物砂としては、金属溶湯を注湯して鋳物を鋳造した使用済の鋳型から得られたものの他、鋳造に供されることなく、造型された鋳型の段階で型ばらししたものや、未使用のまま鋳物砂組成物の状態で固化乃至は硬化したものをも対象とすることが出来、またそれらの何れかが混在するものであっても、何等差し支えない。ここで、上記の使用済の鋳物砂は、回収鋳物砂の5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上の割合で存在していることが望ましい。
【0015】
また、本発明において採用される研磨とは、研磨材との衝突や摩擦によって、回収鋳物砂から、その砂表面に付着する粘結剤が削られ、剥がされるようにする操作である。なお、研磨材の材質としては、回収鋳物砂を構成する骨材や粘結剤よりも硬質となるものであって、研磨によって研磨材自体が削られない材質が好ましく、特に、モース硬度が7以上のものが、好適に用いられることとなる。具体的には、石英、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素等の無機材質を挙げることが出来る。また、研磨材の形態としては、回収鋳物砂を研磨可能な構成のものであれば、特に限定されるものではなく、公知の形態のものが適宜に採用可能であって、例えば、研磨材で形成された所定の個体形状の研磨石、容器の内面を研磨材で形成した研磨層、円筒状の外周面が研磨材で形成された研磨ローラ等が、好適に用いられることとなる。
【0016】
ところで、本発明に係る再生処理方法において対象とされる回収鋳物砂に付着する粘結剤は、水溶性バインダーを主成分として含むものであって、水性溶液の形態において用いられるものであり、また、そのような水溶性バインダーでも、特に水溶性の無機バインダー、中でも水ガラス等に代表される水可溶性のケイ酸化合物が、本発明においては、好適に対象とされることとなる。なお、かかるケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム、コロイダルシリカ、アルキルシリケート等を挙げることが出来るが、特に、得られるコーテッドサンドがブロックし難く、吸湿劣化し難く、更に造型後の鋳型が吸湿劣化し難い特徴を有する、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)を粘結剤として用いて得られる回収鋳物砂に対して、本発明が、有利に適用されることとなる。
【0017】
そして、そのようなケイ酸ナトリウムは、通常、SiO
2/Na
2Oのモル比により、1号〜5号の種類に分類されて、用いられている。具体的には、ケイ酸ナトリウム1号は、SiO
2 /Na
2O のモル比が2.0〜2.3であるものであり、またケイ酸ナトリウム2号は、SiO
2/Na
2Oのモル比が2.4〜2.5であるものであり、更にケイ酸ナトリウム3号は、SiO
2/Na
2Oのモル比が3.1〜3.3であるものである。加えて、ケイ酸ナトリウム4号は、SiO
2/Na
2Oのモル比が3.3〜3.5であるものであり、またケイ酸ナトリウム5号は、SiO
2/Na
2Oのモル比が3.6〜3.8であるものである。これらの中で、ケイ酸ナトリウム1号〜3号は、JIS K1408にても規定されているものである。そして、これらのケイ酸ナトリウムは、単独での使用の他、混合して用いられても良く、また混合したり、水酸化ナトリウムなどの添加剤を添加したりすることで、SiO
2/Na
2Oのモル比を調整することも可能である。
【0018】
なお、粘結剤として用いられるケイ酸ナトリウムは、SiO
2/Na
2Oのモル比によって水への溶け易さが変化し、具体的には、かかるモル比が2.6以下であれば、水に溶け易く、また、2.6を超えたあたりからは、水への溶解性が低下するようになるために、2.0〜2.6の範囲内のモル比で使用したものであることがより望ましいのであるが、本発明に従う再生方法であれば、水への溶解性が低くなる2.6を超えた範囲のモル比であっても、再生は可能である。
【0019】
また、本発明において対象とされる回収鋳物砂を構成する耐火性骨材(鋳物砂)としては、鋳型の基材として機能する耐火性物質であって、従来から鋳型用として用いられている各種の耐火性粒状材料が何れも用いられ得、具体的には、ケイ砂や再生ケイ砂等の一般砂をはじめ、アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂や、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子、アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の球状又は多孔質粒子及びこれらの再生粒子;アルミナボール、マグネシアクリンカー等を挙げることが出来る。なお、これらの耐火性骨材は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として鋳型の造型に1回或いは複数回使用された再生砂又は回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて混合せしめてなる混合砂であっても、何等差支えない。そして、そのような耐火性骨材は、一般に、AFS指数で30〜110程度の粒度のものとして、好ましくは、60〜80程度以下の粒度のものとして、用いられることとなる。
【0020】
ところで、鋳型の造型に際して、従来の水溶性無機化合物等を必須の成分とする粘結剤には、必要に応じて、公知の各種の添加剤が含有せしめられる場合があり、具体的には、固形金属酸化物、塩、炭水化物、界面活性剤、カップリング剤、滑剤、離型剤等が適宜に添加されることとなるが、これらの添加剤を添加した場合に、回収鋳物砂の再生においては、鋳物砂に付着した粘結剤が水に溶け難くなって、鋳物砂から粘結剤が剥がれ難くさせるようになるところから、そのような添加剤の添加が、回収鋳物砂の再生を困難とさせる原因ともなっていたのであるが、本発明に従う再生方法によれば、そのような添加剤を添加した回収鋳物砂であっても、問題なく、再生を行うことが出来る特徴がある。
【0021】
また、本発明において、粘結剤と骨材とを混練して得られる鋳物砂組成物は、乾態のものとされる他、また湿態のものとしても何等差し支えなく、何れの鋳物砂組成物を用いてなる鋳型から得られる回収鋳物砂においても、本発明の再生方法により、再生することが可能である。なお、かかる鋳物砂組成物は、それが含有する水分量に従って、ここでは、0.5質量%未満の場合に乾態のものとして、また水分量が0.5質量%以上の場合には湿態のものとして、分類することとする。そして、乾態の場合には、鋳物砂組成物は、粘結剤が耐火性骨材(鋳物砂)を被覆してなるコーテッドサンドとして、用いられるものである。なお、この乾態の鋳物砂組成物は、それ自体に、粘着性がないものの、水蒸気等の通気によって、骨材表面上の被覆層を溶解させて、湿った鋳物砂組成物として、加熱乾燥により、固化乃至は硬化させることが出来るものである。また、湿態の鋳物砂組成物は、水分を含んだ粘着性のある砂形態のものであって、そのような状態の湿った鋳物砂組成物を造型して、加熱乾燥することにより、固化乃至は硬化させることが出来るのである。
【0022】
以下、本発明に従う回収鋳物砂の再生方法の第1の実施形態について、それを更に具体的に明らかにするために、その代表的な工程の形態について、
図1を参照しつつ、詳細に説明することとする。なお、図示の工程は一例であって、それに限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0023】
先ず、
図1において、容器1は、耐圧性のものであって、蓋1aを閉じると、容器1内が密封され得るようになっている。この容器1には、容器内部に連通する通気路2と排気路3とが、蓋1aを貫通するように設けられている。そこで、通気路2は、加圧空気を供給するポンプ4に接続されている一方、排気路3は、大気に開放されており、開閉弁5にて、通路の開閉が可能となっている。また、容器1の下部には、モーター6が配置され、そしてモーター6の回転軸6aは容器1内部へと密封状態で貫通されて、その回転軸6aに、撹拌翼7が取り付けられており、かかるモーター6の駆動により、容器1内部が撹拌可能となっている。そして、容器1には、内部を加熱可能なヒーター(図示せず)が設けられて、内部温度が調節可能となっており、更に内部温度を測定する温度計(図示せず)や圧力計(図示せず)が設けられて、容器内部の温度と圧力が測定可能となっている。なお、本実施形態においては、通気路2と排気路3とは別個に設けられているが、それらを一つにまとめて設けることも可能である。
【0024】
そして、かかる
図1に示される容器を用いた、本発明に従う回収鋳物砂の再生手順は、準備工程、加熱・加圧工程、研磨工程、冷却・減圧工程、水分除去工程、及び乾燥工程の順で行われることとなるのである。
【0025】
そこにおいて、最初の準備工程においては、容器1内に、所定量の回収鋳物砂8と水とがそれぞれ収容され、更に研磨石9としてのアルミナボールが収容されて、かかる容器1の蓋1aが、閉止される。このとき、排気路3の開閉弁5は、開状態のままにされる。ここで、容器1内での回収鋳物砂8と水の収容量は、容器1の容量に対して、20〜50%程度の割合とされることが、好ましい。
【0026】
次いで、加熱・加圧工程においては、容器1内を図示しないヒーターで所定の温度に加熱する一方、開閉弁5を閉状態にして、ポンプ4を作動させることにより、加圧空気が容器1内へ送り込まれるようにする。そして、ヒーターで容器1内が加熱されることで、容器1内部の圧力は更に上昇させられることとなる。容器1に取り付けた圧力計と温度計を確認しながら、容器1内を、設定値の温度:100℃以上、圧力(ゲージ圧):0.1MPa以上に調整して、モーター6を駆動させ、撹拌翼7を回転させることにより、内容物を撹拌混練させるのである。
【0027】
かかる内容物の撹拌混練によって惹起される研磨工程においては、設定された温度と圧力になった状態で、所定時間の間(例えば、30分間)、研磨処理が継続されることとなる。なお、本実施形態では、温度と圧力は、例えば180℃と1.0MPaで一定とされているが、加熱と加圧を制御して、かかる設定値以上の領域において、徐々に上昇させたり、段階的に上昇させたり、或いは、変動させたりするようにすることも、可能である。
【0028】
このような研磨工程において、上述の如き設定条件下での加熱・加圧状態下において、回収鋳物砂8が水と接触せしめられることにより、回収鋳物砂8に付着する粘結剤は、水に溶解し易くなって、剥がれ易い状態となるのである。そして、この状態で、撹拌翼7の回転により、回収鋳物砂8と研磨石9は撹拌混練され、回収鋳物砂8と研磨石9とが機械的な衝突や擦れ合いを繰り返すこととなる。このときの衝突エネルギーや擦れ合いの摩擦によって、回収鋳物砂8に対する有効な研磨が行なわれ得るのである。このように、回収鋳物砂8の粘結剤を剥がれ易くして、研磨を行うことにより、かかる回収鋳物砂8に付着した粘結剤は容易に剥がれ、更に所定の加熱・加圧状態下で、粘結剤が水に溶けるようになることにより、回収鋳物砂8から、粘結剤が効果的に取り除かれることとなる。このとき、所定の加熱・加圧状態下で粘結剤を水に溶かすことになるところから、鋳造によって高温の熱履歴を受けた場合や、添加剤の添加によって水に溶けにくくなっている場合、更には常温常圧では水に溶けにくい高モル比のケイ酸ナトリウムを用いた場合においても、粘結剤の除去が容易に行われ得ることとなり、以て、回収鋳物砂8からその表面の粘結剤が除去されてなる再生鋳物砂が、有利に得られることとなったのである。
【0029】
そして、その後の冷却・減圧工程においては、ヒーターによる加熱を停止して、開閉弁5を徐々に開放することにより、容器1の内部の冷却と減圧とが行われることとなる。なお、冷却に際しては、従来と同様な冷却手段を用いて、冷却を行っても良く、例えば容器1に冷却流路を配設して、冷却水等の適当な冷却媒体の流通によって、冷却を行っても、何等差し支えない。
【0030】
また、かかる冷却・減圧工程に続く水分除去工程においては、容器1から取り出された内容物が、ろ過によって、再生鋳物砂と処理液とに分離せしめられる。なお、ろ過の方法としては、特に、内容物の中で再生鋳物砂に対して水の量が少ない場合等、具体的には、再生鋳物砂100質量部に対して、水の割合が30〜80質量部であるときには、減圧作用を利用した吸引ろ過を行っても良く、この吸引ろ過操作を採用することで、水分が少なくても、ろ過によって容易に分離させることが出来ることとなる。勿論、水の量が多い場合にあっても、上述の如き減圧作用を利用した吸引ろ過操作にて、水分の除去を行うことは、可能である。また、この水分除去工程においては、ろ過の他には、遠心分離が好ましい方法として挙げられるが、再生鋳物砂と処理液とに分離可能であれば、その手段は、特に限定されるものではない。なお、この水分除去工程で得られた処理液は、廃液として処理されることとなるが、しかるべき処置を行って、再使用することも可能である。
【0031】
そして、最後の乾燥工程においては、上述の如き分離操作によって得られる、粘結剤を取り除いてなる再生鋳物砂に対して、乾燥空気や加熱乾燥空気等を用いて、乾燥操作が施される。この乾燥方法は、特に限定されないが、水分の蒸散は迅速に行われる必要があり、例えば再生鋳物砂に対して、加熱乾燥空気を送風すると同時に、混練を行う方法等が採用され、そこでは、5分以内、好ましくは3分以内に、含有水分を飛ばすようにすることが望ましい。なお、この乾燥工程においては、鋳物砂の100質量部に対して、水が0.5質量部以下の割合になるまで、乾燥が行われることが望ましい。以上の工程を経て、回収鋳物砂を再生してなる再生鋳物砂が得られることとなるのである。
【0032】
ところで、かくの如き第1の実施形態で用いられる研磨石9は、研磨可能な材質で形成された、回収鋳物砂8よりも大きな粒径の石であれば、その形状は特に限定されないが、撹拌混練時に衝撃で欠けたり、破損したりしないように、球形であることが望ましい。また、その大きさとしては、回収鋳物砂8よりも大きな、直径:1mm〜50mm程度の範囲のサイズであることが望ましい。具体的には、セラミックボール、石英ボール、アルミナボール、ジルコニアボール、窒化珪素ボール、炭化珪素ボール等が、好適なものとして挙げられる。
【0033】
また、かかる研磨石9の使用量は、少な過ぎると、研磨が充分に行われ難くなり、また多過ぎると、研磨石同士の衝突により、研磨石が破損するようになるため、回収鋳物砂8の100質量部に対して、30〜300質量部、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは80〜150質量部の割合が採用される。なお、研磨石9の使用量は、容器の回転や撹拌のスピードによって適量が異なり、スピードが早ければ少ない量であることが望ましく、遅ければ多い量が望ましい。
【0034】
さらに、本発明に従う研磨工程において採用される容器1内の加熱温度としては、100℃以上、一般には100〜300℃、好ましくは120〜200℃、更に好ましくは150〜180℃である。このように、100℃以上に加熱されることにより、回収鋳物砂8に付着した粘結剤は、水に溶け易くなるのである。なお、かかる加熱温度が高くなり過ぎると、エネルギーコストがかかる上に、密閉状態を維持するためのパッキン等に耐熱性が必要となることから、300℃以下が好ましい。また、加熱方法としては、容器1にヒーターを設置すること以外でも、容器1内を加熱することが出来れば、特に限定されず、オイルバスやマイクロ波等による加熱を行っても良い。
【0035】
加えて、本発明に従う研磨工程において採用される、容器1内の加圧圧力としては、ゲージ圧で、0.1MPa以上、一般には0.1〜10MPa、好ましくは0.3〜5MPa、より好ましくは0.5〜3MPaである。このように、容器1内を0.1MPa以上に加圧することにより、回収鋳物砂8に付着した粘結剤は、常圧下では水に溶けにくい状態であっても、加熱状態下での所定の加圧作用によって、水に溶け易くなるのである。なお、圧力は、密閉状態での加熱による内部圧力の上昇と、ポンプ4による加圧の両方によって、発現されることとなる。
【0036】
ここで、上述の如き研磨工程の時間は、加熱・加圧下で保持される時間が長い方が、再生効率は良くなるが、かかる研磨時間が長くなり過ぎると、骨材を傷つける恐れがあるところから、一般に、1〜10分程度、好ましくは4〜8分程度とされることとなる。
【0037】
また、本発明における回収鋳物砂8に対する水の添加量(使用量)に関し、回収鋳物砂8表面を濡らす程度の水の量は必要となるのであるが、その水の量が多過ぎると、廃液の処理量が多くなるところから、回収鋳物砂8の100質量部に対して、水は、一般に30〜200質量部程度の割合とするのが良く、中でも50〜150質量部が好ましく、特に80〜100質量部がより好ましい。また、最初に添加しておく水は、常温の水でも良いが、温水の使用が、より好ましい。
【0038】
さらに、前記した準備工程において、水の添加と共に、アルカリ性水溶液を添加することも可能である。特に、粘結剤がケイ酸ナトリウム系粘結剤である場合において、アルカリ性水溶液の添加により、同じアルカリであるケイ酸ナトリウムを溶解させ易くさせることとなるからである。このアルカリ性水溶液に用いられるアルカリ化合物としては、特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。更に、回収鋳物砂8に付着した粘結剤を剥がれ易くさせたり、粘結剤が水に溶け易くさせたりするために、準備工程で各種添加剤を添加しておいても良く、例えば界面活性剤の添加が挙げられる。この界面活性剤の添加により、粘結剤を剥がれ易くすると共に、その帯電防止効果により、剥がれた粘結剤の微粉が吸着するのを防ぐことが出来る。なお、界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムなどが挙げられる。
【0039】
次に、本発明に従う回収鋳物砂の再生方法の第2の実施形態について、それを更に具体的に明らかにするために、その代表的な工程の形態について、
図2〜
図3を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0040】
先ず、
図2において、外枠11は、ドラム20をその軸方向の両端部において保持するための支持枠12,12と、それら両支持枠12を連結する横枠13,13とによって、構成されている。また、両支持枠12の中央部には、それら支持枠12を各々貫通して配設された回転軸14が、軸受15を介在した状態で、回転可能に設けられている。そして、かかる回転軸14の一端部には、モーター16に取り付けられた駆動プーリー17にベルト18で連結される従動プーリー19が固設されており、モーター16の駆動によって、回転軸14が回転せしめられるようになっている。なお、駆動プーリー17と従動プーリー19には、回転軸14の回転速度を変更可能にするために、可変速プーリーを使用しても良く、またモーター16をサーボモーターにして、回転速度を可変にすることも可能である。
【0041】
また、外枠11で囲まれた内部には、円筒形状のドラム20が設置され、このドラム20の内周面には、研磨材で形成された研磨層21が所定厚さで設けられている。そして、このドラム20の軸方向両端部の中央部位には、前記した回転軸14が貫通しており、この回転軸14とドラム20とが固定されて、回転軸14の回転により、ドラム20が回転せしめられるようになっている。更に、ドラム20の一方の端面の縁部付近には、開閉可能な給排口(図示せず)が設けられ、その給排口から、回収鋳物砂8や水の供給や排出が行われるようになっている。更にまた、ドラム20には、内部を加熱可能なヒーター(図示せず)が設けられており、その内部温度が調節可能となっていると共に、内部温度を測定する温度計(図示せず)や圧力計(図示せず)も設けられて、内部の温度と圧力が測定可能となっている。
【0042】
そして、回転軸14の内部には、一端部から回転軸14中央付近まで延びる通気孔22が設けられており、更にこの通気孔22の奥部終端から回転軸14の表面に開口する連通孔23が設けられて、かかる通気孔22を通して、ドラム20内部への吸気と排気が可能となるように構成されている。なお、回転軸14の通気孔22が開口する端部には、通気孔22を外部からシールした状態で、連結管24が接続されており、更にその連結管24は2つに分岐せしめられて、一方が大気開放され、もう一方はポンプ25に接続されている。また、連通管24の分岐部分には、三方弁26が設けられ、大気開放側とポンプ25側とに通路が切り替え可能となっている。
【0043】
ところで、このような構造の装置を用いた第2の実施形態の研磨工程は、次のようにして進行せしめられるのである。
【0044】
すなわち、研磨工程においては、所定の加熱・加圧状態下において、回収鋳物砂8が水と接触せしめられることにより、前述せるように、粘結剤は水に溶解して剥がれ易い状態となる。そして、その状態で、
図3に示される如く、ドラム20が回転せしめられることにより、回収鋳物砂8は、ドラム20の内周壁の研磨層21に衝突し、このときの衝突エネルギーによって、付着している粘結剤の一部が、回収鋳物砂8から研磨、除去されることとなる。更に、回収鋳物砂8は、その自重によって、ドラム20内の下部に落下しようとする力と、ドラム20の回転の内周面に乗って回転しようとする遠心力とが同時に作用し、これによって、回収鋳物砂8は、ドラム20の内周面の高い位置から、ドラム20の内周面に沿って、撹拌されながら、徐々に滑り落ちることになる。この撹拌されながら滑り落ちる過程で、回収鋳物砂8はドラム20の内周面の研磨層21上を転がることにより、回収鋳物砂8が研磨層21との間で擦れ合う摩擦作用を受けて、研磨が行われることとなるのである。このように、回収鋳物砂8の粘結剤を剥がれ易くして、研磨を行うことにより、回収鋳物砂8に付着した粘結剤は容易に剥がれるようになる。更に、加熱・加圧状態下で粘結剤が水に溶けることにより、回収鋳物砂8から、粘結剤が効果的に取り除かれることとなるのである。
【0045】
その他の手順は、前記した第1の実施例と同様なので説明を省略するが、本実施形態における加圧時には、三方弁26をポンプ25側に切り替え、連結管24から通気孔22を通って、連通孔22からドラム20内部を加圧することが行われ、また減圧時には、三方弁26を大気開放側に切り替えることによって、減圧が行われることとなる。
【0046】
なお、このような第2の実施形態で用いられるドラム20の内周面に形成される研磨層21は、摩耗の少ない無機材質の研磨材で形成され、またそのような研磨層21は、ドラム20の内周面の全てに形成されても良く、或いは一部に形成されていても良い。また、ドラム20全体を研磨材で形成することも可能である。更に、研磨層21の表面は、回収鋳物砂との衝撃や摩擦を向上させるために、粗い状態や凹凸を設けた状態において形成されていることが、望ましい。
【0047】
また、かかる第2の実施形態では、ドラム20の内周面に研磨層21を設けて、ドラム20の回転により、研磨層21で回収鋳物砂を研磨する構成が、採用されているのであるが、前記した第1の実施形態で用いた研磨石を更にドラム20内に添加して、二つの研磨手段を併用した形態において、研磨を行うようにしても良い。このように、複数の研磨手段を併用することにより、研磨効果を更に向上させることが出来るのである。また、反対に、第1の実施形態における撹拌に際し、容器1の内周面に研磨層を形成して、研磨を行うようにすることも可能である。
【0048】
さらに、この第2の実施形態においては、
図4に示される如く、ドラム20の内部に、ドラム羽根27が、ドラム20内に回転可能に設けられていても良い。このドラム羽根27は、放射状に所要の中心角で配置した複数枚の区画板28をその両端部において回転軸14の軸方向両端に位置するドーナツ状の回転円板30にそれぞれ固定してなる水車状の部材にて、構成されている。そして、ドラム羽根27は、ドラム20に対して逆方向に回転可能とされている。また、このドラム羽根27の中心に位置するように、回転軸14に取り付けた円筒状の回転研磨材29が、ドラム羽根27に対して逆方向に回転可能に内装されている。このドラム羽根27の回転により、ドラム20内の内容物を掻き揚げながら撹拌させることができるため、ドラム羽根27と研磨層21とによる研磨と、回転研磨材29による研磨とで、研磨効果をより一層向上させることが出来る。
【0049】
さらに、本発明に従う回収鋳物砂の再生方法の第3の実施形態について、それを更に具体的に明らかにするために、その代表的な工程の形態について、
図5を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0050】
先ず、
図5において、容器31は、耐圧性の構造とされ、蓋31aを閉じることによって、容器31内が密封可能となっている。この容器31には、容器内部に連通する通気路32と排気路33とが設けられている。そこで、通気路32は、ポンプ34に接続されており、また排気路33は、大気開放されていると共に、開閉弁35にて開閉可能となっている。容器31の内部には、外周面が研磨材で形成されている一対の研磨ローラ36a,36bと、それら研磨ローラ36a,36bの回転軸に接続されたローラ駆動部37a,37bとが設けられ、そしてローラ駆動部37a,37bが支持アーム38で各々固定されて、研磨ローラ36a,36bが、容器31内で並列して相互に逆方向に回転せしめられ得るように構成されている。また、容器31の蓋31aの中央部には、モーター39が配置され、このモーター39の回転軸40が容器31内部へと密封状態で挿入されて、その端部に、支持アーム38の中央部が固定されると共に、一対の研磨ローラ36a,36bを保持した状態で、支持アーム38が回転可能となっている。更に、容器31には、内部を加熱可能なヒーター(図示せず)が設けられて、内部温度を調節可能となっており、また内部温度を測定する温度計(図示せず)や圧力計(図示せず)が設けられて、内部の温度と圧力が測定可能となっている。
【0051】
そして、このような構成の装置を用いた第3の実施形態に係る研磨工程は、以下のようにして実施されることとなるのである。
【0052】
すなわち、この第3の実施形態に係る研磨工程においても、所定の加熱・加圧状態下において、回収鋳物砂8が水と接触することにより、回収鋳物砂8に付着する粘結剤は、水に溶解して剥がれ易い状態となっているのである。そして、この状態で、一対の研磨ローラ36a,36bは互いに逆方向に回転させられ、更に支持アーム38を回転させることにより、容器31内で研磨ローラ36a,36bが公転させられるようになっている。このように、一対の研磨ローラ36a,36bが回転することにより、それら研磨ローラ36a,36b間の隙間や、研磨ローラ36a,36bと容器31内周面との隙間を、回収鋳物砂8が通り抜けることになり、そしてそれら研磨ローラ36a,36bや容器31内周面との間に押し付けられることにより生じる摩擦によって、研磨が行われることとなるのである。更に、研磨ローラ36a,36bが公転することで、容器31内の内容物を撹拌させて、それら研磨ローラ36a,36bの回転による遠心力の衝撃で研磨が行われ、以て研磨ローラ36a,36bによる研磨が繰り返されるのである。このようにして、回収鋳物砂8の粘結剤を剥がれ易くして、研磨を行うことにより、回収鋳物砂8に付着した粘結剤は容易に剥がされ、更に加熱・加圧状態下で粘結剤が水に溶けることにより、回収鋳物砂8から粘結剤が効果的に取り除かれることとなるのである。なお、その他の手順は、前記した第1の実施例と同様なので、説明を省略することとする。
【0053】
なお、かかる第3の実施形態で用いられる研磨ローラ36a,36bは、摩耗の少ない無機材質の研磨材で形成されることとなる。それら研磨ローラ36a,36bは、容器31内の撹拌効率を上げるために、互いに一定角度で傾斜した状態で配置したり、それら研磨ローラ36a,36bの側面に撹拌用の羽根を取り付けたり、研磨ローラ36a,36bを上下動可能に設けたりしても、何等差し支えない。また、研磨ローラ36a,36bは、ローラ駆動部37a,37bで各々回転させられるようになっているが、ローラ駆動部に37a,37bを設けずに、支持アーム38で固定し、研磨ローラを公転させずに、モーター39で回転させるのみとしても良い。更に、容器31には、前述の第2の実施形態のように、内周面に研磨層を設けても良く、そのように複数の研磨手段を併用することにより、研磨効果を更に向上させることが出来る。なお、本実施形態においては、前記した第1の実施形態における研磨石との併用は避けることが望ましい。
【0054】
ところで、上記した本発明に従う第1乃至第3の実施形態において、撹拌翼7、ドラム20、及び研磨ローラ36a,36bの回転数は、一般に100〜3000rpm程度、好ましくは500〜1500rpm程度とされることが望ましい。この回転数が100rpmよりも低くなると、研磨石、研磨層、又は研磨ローラによる衝突や摩擦によるエネルギーが低下し、研磨が十分に行われ難くなるからであり、また回転数が3000rpmよりも高くなると、回転の勢いにより、研磨石、研磨層、又は研磨ローラによる衝撃や摩擦の負荷が掛かり過ぎて、回収鋳物砂が破損する恐れがある。
【0055】
また、本発明に採用される研磨工程より後は、冷却・減圧工程、水分除去工程、及び乾燥工程の順の第1の実施形態以外にも、濃縮工程、中和工程、及び乾燥工程を経た手順であっても、何等差し支えない。これらの手順は、何れを用いても良いが、主に研磨工程が完了した時点の水分の量によって選ばれることとなる。例えば、水分が多いとき、具体的には回収鋳物砂の100質量部に対して、水の割合が50〜200質量部、好ましくは80〜150質量部となる場合に、冷却・減圧工程、水分除去工程、乾燥工程の順で行われることが好ましい。一方、水分が少ないとき、具体的には回収鋳物砂の100質量部に対して、水の割合が30〜80質量部、好ましくは30〜50質量部となる場合には、濃縮工程、中和工程、乾燥工程の順で行われることが好ましい。そして、水分量が50〜80質量部となる場合には、何れの方法でも、好適に実施されることとなる。
【0056】
それらの工程のうち、濃縮工程においては、
図1において開閉弁5を徐々に開放することにより、容器1の内部の減圧を徐々に行って常圧にした状態で、そのまま、ヒーターによる加熱を続け、容器1内の水分が或る程度少なくなる量、具体的には回収鋳物砂の100質量部に対して水が50質量部以下になるまで水分を蒸発させる。その後、ヒーターによる加熱を停止して、容器1内部の冷却を行う。なお、容器1内の水分が、研磨工程を終えた時点で或る程度少ない量であるならば、濃縮工程を行わずに、中和工程を行っても、何等差し支えない。
【0057】
また、中和工程において、容器1の内容物には、粘結剤であるケイ酸ナトリウム等が溶け出しており、アルカリ性が強い状態であるときには、酸性水溶液を添加して、中性になるように、pH調整を行うことが望ましい。この溶け出したケイ酸ナトリウム等が中性に処理されることにより、内容物を乾燥しても、得られる再生鋳物砂の粒子表面が中性となり、例えば再生鋳物砂を湿態系の鋳型の造型に使用した際の可使時間が短くなることを防ぐことが出来、問題なく、再生鋳物砂として使用することが出来るのである。なお、酸性水溶液として用いられる酸性化合物としては、特に限定されるものではないが、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸等の無機酸等が、好ましい。この後、第1の実施形態と同様に、乾燥工程によって乾燥することで、再生鋳物砂が得られることとなる。
【0058】
なお、これらの再生手順において、粘結剤は水に溶解して研磨によって骨材表面より剥がれて除去出来れば、粘結剤が水に全て溶ける必要はなく、また乾燥工程の後、回収鋳物砂から剥がれた粘結剤が微粉の状態で残った場合には、送風によって微粉を飛散させ、その飛散した微粉を集塵機に吸わせることで取り除く微粉除去工程を行うことが出来る。また、この微粉除去工程は、乾燥工程と同時に行っても、何等差し支えない。
【0059】
さらに、本発明に従う研磨処理の工程における加圧に際しては、ポンプによるガス加圧の代わりに、ガスボンベを用いて加圧しても良く、好ましくは水蒸気を用いても良い。そして、そのような水蒸気は、100℃以上、好ましくは120〜200℃程度、より好ましくは150〜200℃程度であり、且つ水蒸気の圧力が0.1〜2.0MPa、好ましくは0.2〜1.5MPaであるものを用いることが、有効である。このように、水蒸気を用いることにより、容器やドラム内の加熱と加圧が同時に行われ、更に内部の加熱効率が良いため、加熱と加圧に要する時間が短時間で行うことができ、特に工場内で大きな再生設備を備えた場合など、再生に要する時間の短縮化が可能となる利点がある。なお、水蒸気は、飽和水蒸気、過熱水蒸気の何れを用いることも可能である。
【実施例】
【0060】
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明は、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。なお、以下の実施例や比較例において、部及び百分率は、特に断りのない限りにおいて、何れも、質量基準にて示されている。また、実施例や比較例で行われた、再生鋳物砂より得られた鋳型の抗折強度の測定、及び残留Na量の測定は、それぞれ、以下のようにして実施した。
【0061】
−抗折強度(N/cm
2 )の測定−
各再生鋳物砂に、市販の3号ケイ酸ナトリウム(鈴川化学工業株式会社製、商品名:珪酸ソーダ3号)を、再生鋳物砂100部に対して1.5部の割合で、また炭酸亜鉛(正同化学工業株式会社製)を再生鋳物砂100部に対して0.1部の割合でそれぞれ加え、品川式万能攪拌機(5DM−r型)(株式会社ダルトン製)にて混練した後、150℃の温度の金型にブロー充填せしめて、1分間保持し、その後抜型して得られた、幅:10mm×高さ:10mm×長さ:80mmの大きさの試験片について、その破壊荷重を、測定器(高千穂精機株式会社製:デジタル鋳物砂強度試験機)を用いて、測定する。そして、この測定された破壊荷重を用いて、抗折強度を、下記の式により、算出する。
抗折強度=1.5×LW/ab
2
[但し、L:支点間距離(cm)、W:破壊荷重(N)、a:試験片の幅(cm)、
b:試験片の厚み(cm)]
【0062】
−残留Na量の測定−
再生処理後の骨材(再生鋳物砂)を、ICP発光分光分析法(ICP−AES)にて測定した。この測定は、液状試料の状態で行われるため、前処理として再生処理後の骨材にフッ酸を加えて酸分解し、溶液化することにより、溶液状の試料を準備した。その後、かかる試料と共に、Na濃度既知の水溶液を測定し、検量線法を用いて定量を行った。
【0063】
−回収鋳物砂の製造例1−
鋳物砂として、ルナモス#50(真球人工砂、商品名:花王クエーカー(株)製)を準備すると共に、粘結剤として、市販のケイ酸ナトリウム3号(商品名:鈴川化学工業株式会社製)を水で希釈し、不揮発分(ケイ酸ナトリウム水溶液から水分量を除いた割合)を27.7質量%、SiO
2/Na
2Oのモル比を3.17としてなるケイ酸ナトリウム水溶液を準備した。更に、添加剤として、炭酸亜鉛(正同化学工業株式会社製)を準備した。
【0064】
次いで、20℃の温度のルナモス#50を、品川式万能攪拌機(5DM−r型)(株式会社ダルトン製)に投入した後、上記のケイ酸ナトリウム水溶液を、ルナモス#50の100部に対して、不揮発分のみとして考えた場合の固形分換算にて、1.0部の割合で添加せしめ、更に炭酸亜鉛を、ケイ酸ナトリウム水溶液の固形分の100部に対して、10部の割合で添加して、30秒間の混練を行ない、攪拌混合せしめた後に取り出すことにより、常温で自由流動性のある湿態の鋳物砂組成物を得た。
【0065】
その後、かかる20℃の温度の鋳物砂組成物を、150℃に加熱した乾燥機内で15分間加熱することによって、鋳物砂組成物を硬化させ、更に鋳造によって高温の熱履歴を受けた場合を想定して、700℃に加熱した焼成炉内で、30分間の加熱を実施した。そして、その後、かかる得られた鋳物砂組成物の硬化した塊を、100℃以下に冷却した後、品川式万能攪拌機(5DM−r型)(株式会社ダルトン製)で解砕し、20メッシュの篩を通過させることにより、回収鋳物砂を作製した。
【0066】
−実施例1(回収鋳物砂の再生例1)−
図1に示される容器1内に、回収鋳物砂の100部、水の100部、及び直径20mmのアルミナボール(研磨石)の100部を投入し、開閉弁5を閉止して、ヒーターで加熱すると共に、ポンプ4で加圧を行い、容器1内部の温度及び圧力が120℃及び0.2MPaとなった時点を研磨工程開始とし、回転数800rpmで、撹拌翼7により内容物の撹拌を行うと共に、ヒーターで加熱を続け、5分間、その状態を保持した。なお、温度は±5℃、圧力は±0.02MPaの範囲内で、調整を行った。その後、開閉弁5を徐々に開放して、常圧まで減圧すると共に、容器1内を常温まで冷却し、内容物をろ過することで得られた砂に、150℃の熱風を吹き込んで乾燥することにより、再生鋳物砂を作製した。かくして得られた再生鋳物砂について、その物性を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0067】
−実施例2〜4(回収鋳物砂の再生例2〜4)−
実施例1において、容器1内部の温度及び圧力がそれぞれ150℃及び0.5MPa、180℃及び1.0MPa、又は200℃及び1.5MPaとなった時点を研磨工程開始としたこと以外は、実施例1と同様にして、再生鋳物砂を作製した。そして、その得られた再生鋳物砂について、その物性測定結果を、下記表1に示した。
【0068】
−実施例5(回収鋳物砂の再生例5)−
実施例3において、水の使用量を50部としたこと以外は、実施例3と同様にして、再生鋳物砂を作製した。そして、その得られた再生鋳物砂の物性測定結果を、下記表1に示した。
【0069】
−実施例6(回収鋳物砂の再生例6)−
回収鋳物砂100部、水50部、及び研磨石100部を投入し、開閉弁5を開放したまま、ヒーターで加熱すると共に、120℃で0.2MPaの飽和水蒸気を吹き込み、容器1内が110℃以上となった後、開閉弁5を閉止して、容器1内部の温度及び圧力が120℃及び0.2MPaとなった時点を研磨工程開始とし、撹拌翼7で内容物の撹拌を行うと共に、ヒーターで加熱を続け、5分間、その状態を保持すること以外は、実施例1と同様にして、再生鋳物砂を作製した。なお、水蒸気の吹き込みは、容器1内に水分として吹き込んだ量が50部となった時点(質量の増加分で測定)で吹き込みを停止するようにした。かくして得られた再生鋳物砂の物性測定結果を、下記表1に示した。
【0070】
−実施例7(回収鋳物砂の再生例7)−
実施例6において、180℃で1.0MPaの飽和水蒸気を吹き込む一方、容器1内の温度が170℃以上となった後、開閉弁5を閉止して、容器1内部の温度及び圧力が180℃及び1.0MPaとなった時点を研磨工程開始としたこと以外は、実施例6と同様にして、再生鋳物砂を作製した。そして、その得られた再生鋳物砂の物性測定結果を、下記表1に示した。
【0071】
−比較例1(回収鋳物砂の再生例8)−
実施例1において、容器1の開閉弁5を開放したままで、ヒーターで加熱すると共に、加圧を行うことなく、容器1内部を常圧で100℃(常圧下であるため、100℃以上には加熱されない)を保持させたこと以外は、実施例1と同様にして、再生鋳物砂を作製した。かくして得られた再生鋳物砂の物性測定結果を、下記表1に示した。
【0072】
−比較例2(回収鋳物砂の再生例9)−
比較例1において、研磨時間を10分としたこと以外は、比較例1と同様にして、再生鋳物砂を作製した。そして、その得られた再生鋳物砂の物性測定結果を、下記表1に示した。
【0073】
−比較例3(回収鋳物砂の再生例10)−
実施例3において、水を添加することなく、実施例3と同様な条件下で、研磨処理を行った。水は添加されていないため、ろ過、乾燥は行わず、剥がれた粘結剤の微粉を集じん機にて取り除いて、再生鋳物砂を作製した。そして、その得られた再生鋳物砂の物性測定結果を、下記表1に示した。
【0074】
−比較例4(回収鋳物砂の再生例11)−
実施例1において、研磨石を投入せず、撹拌翼7で撹拌を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、再生鋳物砂を作製した。そして、その得られた再生鋳物砂の物性測定結果を、下記表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
かかる表1の結果より明らかな如く、実施例1〜5では、何れも、残留Na量が低下した再生鋳物砂が得られている共に、そのような再生鋳物砂を用いて、高い鋳型強度を得ることが出来ていることが判る。また、水が添加された所定の加熱・加圧状態下で、湿態の状態で、研磨が行われることにより、粘結剤の水による溶解が促進されることから、回収鋳物砂から粘結剤が効率よく研磨・除去されていることが認められるのである。更に、実施例6〜7では、水蒸気の吹き込みにより、加熱及び加圧が促進されるため、研磨効率は更に良くなっているのである。しかも、所定の加熱温度と加圧圧力に調製する時間が、短時間で行うことが出来るのである。
【0077】
これに対して、比較例1〜2の如く、加圧を行わずに加熱のみの場合や、比較例3の如く、水を添加せずに乾態の状態で研磨した場合においても、残留Na量は、未処理の場合で2100ppm程度であるため、残留Na量はあまり低下しておらず、水を添加して温度を高くした研磨や、乾態で加圧した状態で研磨しただけでは、研磨が充分に行われ得なかったことが理解される。特に、比較例2では、研磨時間を2倍にしても、あまり研磨の効果は出ていないことが認められる。また、比較例4では、加圧・加熱状態下での粘結剤の水への溶解により、残留Na量の低下に僅かな効果が認められるものの、研磨した場合に比べると、残留Na量の低下は充分に得られていない。