(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445350
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】自転車用発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 16/02 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
H02K16/02
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-35403(P2015-35403)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-158421(P2016-158421A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤原 岳志
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−169805(JP,A)
【文献】
米国特許第07812500(US,B1)
【文献】
特開2006−014525(JP,A)
【文献】
実開昭62−064182(JP,U)
【文献】
特開2009−240159(JP,A)
【文献】
特開2007−143358(JP,A)
【文献】
特開2013−046538(JP,A)
【文献】
特開2014−209832(JP,A)
【文献】
特開2008−113480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体に対して回転軸心回りに回転可能に設けられ、外部から回転が入力される回転体と、
前記支持体に支持されるコイルと、
前記支持体に支持されるヨークと、
前記回転体とともに前記回転軸心回りに回転可能な第1の磁石および第2の磁石とを備え、
前記ヨークは、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に配置される磁石対向部を含み、
前記第1の磁石は前記磁石対向部に対して径方向外側に配置され、
前記第2の磁石は前記磁石対向部に対して径方向内側に配置され、
前記第1の磁石と前記第2の磁石とは相対回転不能であり、
前記ヨークは、第1のヨークおよび第2のヨークを含み、
前記第1のヨークは、第1の磁石対向部を含み、
前記第2のヨークは、第2の磁石対向部を含み、
前記第1の磁石対向部および前記第2の磁石対向部は、前記磁石対向部を構成し、
前記第1のヨークは、複数の第1のヨーク片から構成され、
前記第2のヨークは、複数の第2のヨーク片から構成され、
前記第1のヨーク片は、U字形状の第1の本体部と、前記第1の本体部の前記U字形状の一端から前記U字形状の開口側に延出される部分である前記第1の磁石対向部とを備え、
前記第2のヨーク片は、U字形状の第2の本体部と、前記第2の本体部の前記U字形状の底部から前記U字形状の開口とは反対側に延出される部分である前記第2の磁石対向部とを備える、自転車用発電機。
【請求項2】
支持体と、
前記支持体に対して回転軸心回りに回転可能に設けられ、外部から回転が入力される回転体と、
前記支持体に支持されるコイルと、
前記支持体に支持されるヨークと、
前記回転体とともに前記回転軸心回りに回転可能な第1の磁石および第2の磁石とを備え、
前記ヨークは、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に配置される磁石対向部を含み、
前記第1の磁石は前記磁石対向部に対して径方向外側に配置され、
前記第2の磁石は前記磁石対向部に対して径方向内側に配置され、
前記第1の磁石と前記第2の磁石とは相対回転不能であり、
前記ヨークは、第1のヨークおよび第2のヨークを含み、
前記第1のヨークは、第1の磁石対向部を含み、
前記第2のヨークは、第2の磁石対向部を含み、
前記第1の磁石対向部および前記第2の磁石対向部は、前記磁石対向部を構成し、
前記第1のヨークは、複数の第1のヨーク片から構成され、
前記第2のヨークは、複数の第2のヨーク片から構成され、
前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片は、前記第1の磁石に対向する面と前記第2の磁石に対向する面とが前記支持体の周方向においてずれている、自転車用発電機。
【請求項3】
前記第1のヨーク片は、U字形状の第1の本体部と、前記第1の本体部の前記U字形状の一端から前記U字形状の開口側に延出される部分である前記第1の磁石対向部とを備え、
前記第2のヨーク片は、U字形状の第2の本体部と、前記第2の本体部の前記U字形状の底部から前記U字形状の開口とは反対側に延出される部分である前記第2の磁石対向部とを備える、請求項2に記載の自転車用発電機。
【請求項4】
前記回転軸心方向において、前記第1の磁石は前記第2の磁石よりも長い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項5】
前記回転体は、前記支持体の外周に設けられる外周部分と、前記第2の磁石よりも前記回転軸心方向の外側に配置される壁部とを備え、
前記第1の磁石は、前記外周部分の内面に設けられ、
前記第2の磁石は、前記回転体の前記壁部から前記回転軸心方向の内側に向かって延びる支持部に設けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項6】
前記ヨークは、前記第1の磁石と前記コイルとの間に部分的に配置される本体部をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項7】
前記磁石対向部は、前記回転軸心方向と直交する方向から見て、前記コイルと重複していない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項8】
前記磁石対向部は、前記コイルよりも前記回転軸心方向外側に位置する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項9】
前記第1の磁石は、周方向に並ぶ複数の磁極を備え、
前記第2の磁石は、周方向に並ぶ複数の磁極を備え、
前記第1の磁石の磁極数と前記第2の磁石の磁極数とは同一であり、
前記第1の磁石の磁極の位相と前記第2の磁石の磁極の位相とは所定角度ずれている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項10】
前記所定角度は、前記第1の磁石および前記第2の磁石の1つの磁極の位相幅に対して15%〜30%の範囲内である、請求項9に記載の自転車用発電機。
【請求項11】
前記所定角度は、前記第1の磁石および前記第2の磁石の1つの磁極の位相幅に対して18%〜20%の範囲内である、請求項10に記載の自転車用発電機。
【請求項12】
前記第1の磁石は、周方向に並ぶ複数の磁極を備え、
前記第2の磁石は、周方向に並ぶ複数の磁極を備え、
前記第1の磁石の磁極数と前記第2の磁石の磁極数とは同一であり、
前記第1の磁石の磁極の位相と前記第2の磁石の磁極の位相とはほぼ一致している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項13】
前記第1の磁石および前記第2の磁石の前記回転体に対する位相を位置決めする位置決め機構をさらに備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項14】
支持体と、
前記支持体に対して回転軸心回りに回転可能に設けられ、外部から回転が入力される回転体と、
前記支持体に支持されるコイルと、
前記支持体に支持されるヨークと、
前記回転体とともに前記回転軸心回りに回転可能な第1の磁石および第2の磁石とを備え、
前記ヨークは、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に配置される磁石対向部を含み、
前記第1の磁石と前記第2の磁石とは相対回転不能であり、
前記ヨークは、第1のヨークおよび第2のヨークを含み、
前記第1のヨークは、第1の磁石対向部を含み、
前記第2のヨークは、第2の磁石対向部を含み、
前記第1の磁石対向部および前記第2の磁石対向部は、前記磁石対向部を構成し、
前記第1のヨークは、複数の第1のヨーク片から構成され、
前記第2のヨークは、複数の第2のヨーク片から構成され、
前記第1のヨーク片は、U字形状の第1の本体部と、前記第1の本体部の前記U字形状の一端から前記U字形状の開口側に延出される部分である前記第1の磁石対向部とを備え、
前記第2のヨーク片は、U字形状の第2の本体部と、前記第2の本体部の前記U字形状の底部から前記U字形状の開口とは反対側に延出される部分である前記第2の磁石対向部とを備える、自転車用発電機。
【請求項15】
支持体と、
前記支持体に対して回転軸心回りに回転可能に設けられ、外部から回転が入力される回転体と、
前記支持体に支持されるコイルと、
前記支持体に支持されるヨークと、
前記回転体とともに前記回転軸心回りに回転可能な第1の磁石および第2の磁石とを備え、
前記ヨークは、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に配置される磁石対向部を含み、
前記第1の磁石と前記第2の磁石とは相対回転不能であり、
前記ヨークは、第1のヨークおよび第2のヨークを含み、
前記第1のヨークは、第1の磁石対向部を含み、
前記第2のヨークは、第2の磁石対向部を含み、
前記第1の磁石対向部および前記第2の磁石対向部は、前記磁石対向部を構成し、
前記第1のヨークは、複数の第1のヨーク片から構成され、
前記第2のヨークは、複数の第2のヨーク片から構成され、
前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片は、前記第1の磁石に対向する面と前記第2の磁石に対向する面とが前記支持体の周方向においてずれている、自転車用発電機。
【請求項16】
前記第1のヨーク片は、U字形状の第1の本体部と、前記第1の本体部の前記U字形状の一端から前記U字形状の開口側に延出される部分である前記第1の磁石対向部とを備え、
前記第2のヨーク片は、U字形状の第2の本体部と、前記第2の本体部の前記U字形状の底部から前記U字形状の開口とは反対側に延出される部分である前記第2の磁石対向部とを備える、請求項15に記載の自転車用発電機。
【請求項17】
前記第1のヨーク片と前記第2のヨーク片とは、前記第1の本体部および前記第2の本体部の前記U字形状の開口の前記回転軸心方向における向きが反対になるように配置される、請求項1、請求項3、請求項1もしくは3を直接的もしくは間接的に引用する請求項4〜13のいずれか一項、請求項14、または、請求項16に記載の自転車用発電機。
【請求項18】
前記コイルは、前記第1の本体部の前記U字形状の内部、かつ、前記第2の本体部の前記U字形状の内部に配置され、
前記第1の本体部および前記第2の本体部のうちの前記コイルと前記支持体との間の部分は、互いに磁気的に接続される、請求項1、請求項3、請求項1もしくは3を直接的もしくは間接的に引用する請求項4〜13のいずれか一項、請求項14、請求項16、または、請求項17に記載の自転車用発電機。
【請求項19】
前記第1のヨーク片と前記第2のヨーク片とが周方向において交互に並べられ、
前記第1の磁石対向部と前記第2の磁石対向部とが周方向において交互に配置される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項20】
前記第1の磁石の磁極数は、前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片の総数と等しく、
前記第2の磁石の磁極数は、前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片の総数と等しい、請求項1〜19のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項21】
前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片は、前記支持体の周方向に板状の磁性体が積層されて形成されている、請求項1〜20のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【請求項22】
前記自転車用発電機は、ハブダイナモである、請求項1〜21のいずれか一項に記載の自転車用発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自転車用発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自転車に搭載されて自転車の駆動にともなって発電する自転車用発電機が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5357937号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自転車用発電機は、自転車の軽量化の要望、または、自転車のコンポーネントの電動化に基づく消費電力の増加のため、発電効率の向上が求められる。
本発明の目的は、発電効率を向上できる自転車用発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕本発明に従う自転車用発電機の一形態は、支持体と、前記支持体に対して回転軸心回りに回転可能に設けられ、外部から回転が入力される回転体と、前記支持体に支持されるコイルと、前記支持体に支持されるヨークと、前記回転体とともに前記回転軸心回りに回転可能な第1の磁石および第2の磁石とを備え、前記ヨークは、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に配置される磁石対向部を含む。
【0006】
〔2〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1の磁石と前記第2の磁石とは相対回転不能である。
〔3〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記ヨークは、前記第1の磁石と前記コイルとの間に部分的に配置される本体部をさらに含む。
【0007】
〔4〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記磁石対向部は、前記回転軸心方向と直交する方向から見て前記コイルと重複していない。
〔5〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記磁石対向部は、前記コイルよりも前記回転軸心方向外側に位置する。
【0008】
〔6〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1の磁石は、周方向に並ぶ複数の磁極を備え、前記第2の磁石は、周方向に並ぶ複数の磁極を備え、前記第1の磁石の磁極数と前記第2の磁石の磁極数とは同一であり、前記第1の磁石の磁極の位相と前記第2の磁石の磁極の位相とは所定角度ずれている。
【0009】
〔7〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記所定角度は、前記第1の磁石および前記第2の磁石の1つの磁極の位相幅に対して15%〜30%の範囲内である。
〔8〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記所定角度は、前記第1の磁石および前記第2の磁石の1つの磁極の位相幅に対して18%〜20%の範囲内である。
【0010】
〔9〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1の磁石は、周方向に並ぶ複数の磁極を備え、前記第2の磁石は、周方向に並ぶ複数の磁極を備え、前記第1の磁石の磁極数と前記第2の磁石の磁極数とは同一であり、前記第1の磁石の磁極の位相と前記第2の磁石の磁極の位相とはほぼ一致している。
【0011】
〔10〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1の磁石および前記第2の磁石の前記回転体に対する位相を位置決めする位置決め機構をさらに備える。
〔11〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記ヨークは、第1のヨークおよび第2のヨークを含み、前記第1のヨークは、第1の磁石対向部を含み、前記第2のヨークは、第2の磁石対向部を含み、前記第1の磁石対向部および前記第2の磁石対向部は、前記磁石対向部を構成する。
【0012】
〔12〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1のヨークは、複数の第1のヨーク片から構成され、前記第2のヨークは、複数の第2のヨーク片から構成される。
〔13〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1のヨーク片と前記第2のヨーク片とが周方向において交互に並べられ、前記第1の磁石対向部と前記第2の磁石対向部とが周方向において交互に配置される。
【0013】
〔14〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1のヨーク片は、U字形状の第1の本体部と、前記第1の本体部の前記U字形状の一端から前記U字形状の開口側に延出される部分である前記第1の磁石対向部とを備え、前記第2のヨーク片は、U字形状の第2の本体部と、前記第2の本体部の前記U字形状の底部から前記U字形状の開口とは反対側に延出される部分である前記第2の磁石対向部とを備える。
【0014】
〔15〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1のヨーク片と前記第2のヨーク片とは、前記第1の本体部および前記第2の本体部の前記U字形状の開口の前記回転軸心方向における向きが反対になるように配置される。
【0015】
〔16〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記コイルは、前記第1の本体部の前記U字形状の内部、かつ、前記第2の本体部の前記U字形状の内部に配置され、前記第1の本体部および前記第2の本体部のうちの前記コイルと前記支持体との間の部分は、互いに磁気的に接続される。
【0016】
〔17〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1の磁石の磁極数は、前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片の総数と等しく、前記第2の磁石の磁極数は、前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片の総数と等しい。
【0017】
〔18〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片は、前記第1の磁石に対向する面と前記第2の磁石に対向する面とが前記支持体の周方向においてずれている。
【0018】
〔19〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1のヨーク片および前記第2のヨーク片は、前記支持体の周方向に板状の磁性体が積層されて形成されている。
〔20〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記第1の磁石は前記磁石対向部に対して径方向外側に配置され、前記第2の磁石は前記磁石対向部に対して径方向内側に配置される。
【0019】
〔21〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記回転軸心方向において、前記第1の磁石は前記第2の磁石よりも長い。
〔22〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記回転体は、前記支持体の外周に設けられる外周部分と、前記第2の磁石よりも前記回転軸心方向の外側に配置される壁部とを備え、前記第1の磁石は、前記外周部分の内面に設けられ、前記第2の磁石は、前記回転体の前記壁部から前記回転軸心方向の内側に向かって延びる支持部に設けられる。
【0020】
〔23〕前記自転車用発電機の一形態によれば、前記自転車用発電機は、ハブダイナモである。
【発明の効果】
【0021】
上記自転車用発電機は、発電効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】
図3の4−4線に沿う自転車用発電機の断面図。
【
図5】
図4の第1の磁石と第2の磁石との関係を示す断面図。
【
図6】
図1の自転車用発電機のトルクリップルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照して、自転車用発電機であるハブダイナモについて説明する。
ハブダイナモ10は、いわゆるクローポール型の発電機であり、支持体12、回転体14、コイル16、第1の磁石18、第2の磁石20、および、ヨーク22を備えている。
【0024】
支持体12は、前輪のハブ軸を含み、両端部が自転車BのフロントフォークFに回転不能に支持される。
回転体14は、ハブシェルを含み、支持体12の外周において支持体12の中心軸である回転軸心C回りに回転可能に設けられる。したがって回転体14は支持体12に対して回転可能に設けられる。回転体14は、回転軸心C方向の一方の端部が開口した本体部24、および、本体部24の開口にねじ込まれる蓋部26を備えている。本体部24は、円筒形状の外周部分28、外周部分28の回転軸心C方向の開口とは反対側に設けられる壁部30、および、外周部分28の軸方向の両端部において外周部分28よりも回転体14の径方向の外側に突出するフランジ部32を備えている。
【0025】
壁部30の内周および蓋部26は、ベアリング34を介して支持体12に回転可能に支持されている。回転体14は、支持体12と外周部分28との間において、壁部30から回転軸心Cに沿った方向かつ回転軸心Cの中央側(以下、「回転軸心Cの軸方向の内側」)に延びる円筒状の支持部30Aを備えている。フランジ部32は、図示しない前輪のスポークに取り付けるためのボルト孔32Aを備えている。なお、支持部30Aは、壁部30と一体的に形成されているが、壁部30に対して別体かつ回転不能に固定されていてもよい。また、支持部30Aは、蓋部26から回転軸心Cに沿った方向かつ回転軸心Cの中央側に延びるように設けてもよい。ただしその場合、第1の磁石18と第2の磁石20との周方向の相対位置を位置決めするために蓋部26と本体部24との位置決め機構が必要になるので、支持部30Aは本体部24と一体的に形成された壁部30に設けることが好ましい。
【0026】
コイル16は、回転体14の径方向において支持体12と外周部分28との間に配置されている。コイル16は、
図2に示すボビン36に巻き掛けられている。コイル16は、ボビン36を介して支持体12に回転不能に支持されている。なお、
図2のボビン36は、回転軸心C方向の両端部のティース部分を省略している。
【0027】
図1に示す第1の磁石18は、回転体14とともに回転軸心C回りに回転可能である。第1の磁石18は、円筒形状を有する第1の保持部材38の内周面に取り付けられている。
図2に示されるように、第1の磁石18は、周方向に並ぶ複数の磁極18Aを備えている。複数の磁極18Aの数は、例えば32である。
【0028】
図3に示されるように、第1の磁石18は、第1の保持部材38を介して外周部分28の内面28Aに取り付けられている。第1の保持部材38および第1の磁石18は、外周部分28に対して回転不能に支持されている。したがって、第1の磁石18は、回転体14と一体的に回転可能である。第1の保持部材38は、例えば外周部分28に圧入されている。第1の保持部材38の外周には、回転軸心C方向に延びる凸部38Aが形成されている。凸部38Aは、内面28Aに形成される回転軸心C方向に延びる凹部28Bに嵌め込まれている。凸部38Aおよび凹部28Bは、第1の磁石18の回転体14に対して周方向に位置決めする位置決め機構を構成する。なお、第1の保持部材38に凹部を形成し、内面28Aに該凹部と係合する凸部を形成して前記位置決め機構を構成してもよい。
【0029】
第2の磁石20は、回転体14とともに回転軸心C回りに回転可能である。第2の磁石20は、円筒形状を有する第2の保持部材40の外周面に取り付けられている。
図2に示されるように、第2の磁石20は、周方向に並ぶ複数の磁極20Aを備えている。複数の磁極20Aの数は、例えば32である。複数の磁極20Aの数は、第1の磁石18の磁極18Aの数と同一である。
【0030】
図3に示されるように、第2の磁石20は、第2の保持部材40を介して支持部30Aの外面30Bに取り付けられている。第2の保持部材40および第2の磁石20は、支持部30Aに対して回転不能に支持されている。したがって、第2の磁石20は、回転体14と一体的に回転可能である。第2の保持部材40は、例えば支持部30Aに圧入されている。第2の保持部材40の外周には、回転軸心C方向に延びる凹部40Aが形成されている。凹部40Aは、外面30Bに形成される回転軸心C方向に延びる凸部30Cに嵌め込まれている。凹部40Aおよび凸部30Cは、第2の磁石20の回転体14に対して周方向に位置決めする位置決め機構を構成する。なお、第2の保持部材40に凸部を形成し、外面30Bに該凸部と係合する凹部を形成して前記位置決め機構を構成してもよい。これにより、第1の磁石と第2の磁石の周方向における相対位置を容易に位置決めすることができる。
【0031】
図1に示されるように、回転軸心C方向において、第1の磁石18は第2の磁石20よりも長い。第1の磁石18の回転軸心C方向における壁部30側の端部の位置と、第2の磁石20の回転軸心C方向における壁部30側の端部の位置とは略一致している。第1の磁石18の回転軸心C方向における蓋部26側の端部の位置は、第2の磁石20の回転軸心C方向における蓋部26側の端部の位置よりも蓋部26側に位置する。
【0032】
第1の磁石18および第2の磁石20は、ともに回転体14に対して回転不能に支持されている。このため、第1の磁石18と第2の磁石20とは、相対回転不能である。すなわち、第1の磁石18と第2の磁石20とは、回転体14とともに支持体12に対して一体的に回転可能に支持されている。
図5に示されるように、第1の磁石18の磁極18Aの回転軸心C周りの位相と、第2の磁石20の磁極20Aの回転軸心C周りの位相とは所定角度Dずれている。所定角度Dは、好ましくは第1の磁石18および第2の磁石20の1つの磁極18A,20Aの位相幅Hに対して15%〜30%の範囲内であり、さらに好ましくは18%〜20%の範囲内である。
【0033】
図3に示されるように、ヨーク22は、回転体14の径方向において支持体12と外周部分28との間に配置されている。ヨーク22は、支持体12に回転不能に支持されている。ヨーク22の回転軸心C方向の両端部には、円環形状の位置決め部材12Aが配置されている。位置決め部材12Aは、支持体12の外周に取り付けられている。ヨーク22は、2つの位置決め部材12Aにより回転軸心C方向の移動が規制されている。ヨーク22は、支持体12の径方向においてコイル16と対向する本体部42と、磁石18,20と対向する磁石対向部44とを備えている。磁石対向部44は、回転軸心C方向と直交する方向(例えば、
図3の縦方向)から見てコイル16と重複しない位置に配置されている。磁石対向部44は、コイル16よりも回転軸心C方向の外側(壁部30側)に位置している。
【0034】
図2に示されるように、ヨーク22は、第1のヨーク46および第2のヨーク48を含む。
第1のヨーク46は、複数の第1のヨーク片50により構成されている。
図3に示されるように、第1のヨーク片50は、U字形状の第1の本体部52と、第1の磁石対向部54とを備えている。第1の磁石対向部54は、第1の本体部52の一端からU字形状の開口56側に延出される部分である。第1のヨーク片50は、支持体12の周方向に板状の磁性体が積層されて形成されている。
【0035】
第1の本体部52は、第1の磁石18とコイル16との間に部分的に配置される。第1の磁石対向部54は、第1の磁石18と第2の磁石20との間に配置される。第1の磁石対向部54は、回転軸心C方向と直交する方向(例えば、
図3の縦方向)から見てコイル16と重複しない位置に配置されている。第1の磁石対向部54は、コイル16よりも回転軸心C方向の外側(壁部30側)に位置している。
【0036】
図2に示されるように、第2のヨーク48は、複数の第2のヨーク片58により構成されている。
図3に示されるように、第2のヨーク片58は、U字形状の第2の本体部60と、第2の磁石対向部62とを備えている。第2の磁石対向部62は、第2の本体部60の底部からU字形状の開口64とは反対側に延出される部分である。第2のヨーク片58は、支持体12の周方向に板状の磁性体が積層されて形成されている。
【0037】
第2の本体部60は、第1の磁石18とコイル16との間に部分的に配置される。第2の磁石対向部62は、第1の磁石18と第2の磁石20との間に配置される。第2の磁石対向部62は、回転軸心C方向と直交する方向から見てコイル16と重複しない位置に配置されている。第2の磁石対向部62は、コイル16よりも回転軸心C方向の外側(壁部30側)に位置している。すなわち、第2の磁石対向部62は、コイル16に対して、回転軸心C方向に関して第1の磁石対向部54と同じ側に配置されている。
【0038】
第1の磁石18は、磁石対向部54,62に対して支持体12の径方向の外側に配置される。第2の磁石20は、磁石対向部54,62に対して支持体12の径方向の内側に配置される。
【0039】
第1のヨーク片50の数と第2のヨーク片58の数とは等しいことが好ましい。第1のヨーク片50の数と第2のヨーク片58の数とは同数である。第1のヨーク片50および第2のヨーク片58の総数と第1の磁石18の磁極18Aの数とは等しいことが好ましい。第1のヨーク片50および第2のヨーク片58の総数と第2の磁石20の磁極20Aの数とは等しいことが好ましい。
【0040】
図2に示されるように、ヨーク22は、第1のヨーク片50と第2のヨーク片58とが周方向において交互に並べられて構成されている。
図3に示されるように、第1のヨーク片50と第2のヨーク片58とは、第1の本体部52および第2の本体部60のU字形状の開口64の回転軸心C方向における向きが反対になるように配置される。第1の本体部52および第2の本体部60により、本体部42が構成される。
図4に示されるように、第1の磁石対向部54と第2の磁石対向部62とは周方向に交互に配置される。第1の磁石対向部54および第2の磁石対向部62により、磁石対向部44が構成される。
【0041】
第1の本体部52のU字形状の内部、かつ、第2の本体部60のU字形状の内部には、コイル16が配置される。第1の本体部52および第2の本体部60のうちのコイル16と支持体12との間の部分は、互いに磁気的に接続される。なお、磁気的に接続とは、第1の本体部52と第2の本体部60とが直接的に接触している状態、および、第1の本体部52と第2の本体部60との間に形成されるエアギャップが十分に小さい状態を含む。
【0042】
ハブダイナモ10の作用について説明する。
図1に示す自転車Bが駆動するとき、回転体14の回転にともなって第1の磁石18が磁石対向部54,62の外周を回転する。また、回転体14の回転にともなって第2の磁石20が磁石対向部54,62の内周を回転する。第1の磁石18および第2の磁石20が磁石対向部54,62に対して回転することにより、磁石対向部54,62により磁力の高められた磁束がコイル16を通過し、コイル16に電流が流れる。ハブダイナモ10は、第1の磁石18および第2の磁石20の両方の磁束が磁石対向部54,62に影響するため、一方のみを備える場合と比較してコイル16を通過する磁力を大きくすることができる。さらに、回転体14の回転にともなって第1の磁石18が本体部42に対して回転することにより、本体部42を介しても第1の磁石18からの磁束がコイル16を通過する。
【0043】
図6の二点鎖線L1で示すように、第1の磁石18の磁極18Aの位相と第2の磁石20の磁極20Aの位相とを一致させたハブダイナモの場合、第1の磁石18のみを備える場合(
図6の実線L4)および第2の磁石20のみを備える場合(
図6の一点鎖線L3)と比較して、トルクリップルが大きくなる。
【0044】
ハブダイナモ10は、第1の磁石18の磁極18Aの位相と第2の磁石20の磁極20Aの位相とが所定角度Dずれている。このため、第1の磁石18および第2の磁石20に起因するコギングトルクの波形にずれが生じる。このため、
図6の破線L2で示すように、
図6の二点鎖線L1で示す第1の磁石18の磁極18Aの位相と第2の磁石20の磁極20Aの位相とを一致させたハブダイナモ、および、実線L4で示す第1の磁石18のみを備えるハブダイナモと比較して、トルクリップルを小さくすることができる。
【0045】
ハブダイナモ10は、以下の作用および効果を奏する。
(1)ハブダイナモ10は、ヨーク22の磁石対向部54,62を挟んで配置される第1の磁石18と第2の磁石20とを備えている。このため、2つの磁石18,20の磁束をヨーク22が受けることができるため、発電効率を向上できる。
【0046】
(2)第1の磁石18の磁極18Aの位相と第2の磁石20の磁極20Aの位相とが所定角度Dずれている。このため、第1の磁石18の磁極18Aの位相と第2の磁石20の磁極20Aの位相とを一致させたハブダイナモと比較して、トルクリップルを小さくすることができる。
【0047】
(3)ハブダイナモ10は、第1の磁石18の回転体14に対する位相を位置決めする凹部28Bおよび凸部38Aと、第2の磁石20の回転体14に対する位相を位置決めする凸部30Cおよび凹部40Aとを備えている。このため、磁石18,20を回転体14に取り付けるときの位相決めを簡便に行うことができる。また、第1の磁石18の磁極18Aの位相と第2の磁石20の磁極20Aの位相とがずれ難くなる。
【0048】
(4)第1の本体部52および第2の本体部60のうちのコイル16と支持体12との間の部分は、互いに磁気的に接続される。このため、例えば、第1の本体部52と第2の本体部60との間に大きなエアギャップが形成される場合と比較して、コイル16に与える磁力が大きくなるため、発電効率を高くできる。
【0049】
(5)第1のヨーク片50および第2のヨーク片58は、支持体12の周方向に板状の磁性体が積層されて形成されている。このため、プレス等を用いて単一の材料を成形したヨーク片を用いる場合と比較して、ヨーク片50,58内部の渦電流の発生を抑制することができる。このため、渦電流により発電効率が低下することを抑制できる。
【0050】
(6)第1の磁石18は、第2の磁石20よりも長い。このため、第1の磁石18の一部を支持体12の径方向においてコイル16と一致する位置に配置することができ、第1の磁石18とヨーク22とが対向する部分を大きくできる。このため、第1の磁石18が第2の磁石20よりも短い場合と比較して、発電効率を高くできる。
【0051】
(7)蓋部26は、本体部24にねじ込まれる。このため、蓋部26と本体部24との位相はずれやすい。磁石18,20は、回転軸心C方向において壁部30側に位置し、外周部分28と壁部30から延びる支持部30Aに位置決め機構が形成されている。このため、第1の磁石18と第2の磁石20との位相のずれが生じにくい。
【0052】
自転車用発電機が取り得る具体的な形態は、上記実施形態に例示された形態に限定されない。自転車用発電機は、上記実施形態とは異なる各種の形態を取り得る。以下に示される上記実施形態の変形例は、自転車用発電機が取り得る各種の形態の一例である。
【0053】
・第1の磁石18の磁極18Aの位相と第2の磁石20の磁極20Aの位相とをほぼ一致させることもできる。
・
図7に示すように、第1の磁石18に対向する面66D,68Dと第2の磁石20に対向する面66E,68Eとが30支持体の周方向においてずれる第1のヨーク片66および第2のヨーク片68にすることもできる。第1のヨーク片66および第2のヨーク片68は、この場合、各ヨーク片66,68と磁石18,20との位相の関係が異なるため、トルクリップルを抑制することができる。なお、この変形例においては、
図7に示すように、第1の磁石18の磁極18Aの位相と第2の磁石20の磁極20Aの位相とをほぼ一致させることが好ましい。
【0054】
・回転軸心C方向における第1の磁石18の長さを第2の磁石20の長さとほぼ一致させることもできる。この場合、
図8に示されるように、第1の本体部52および第2の本体部60の外周をより回転体14の内面28Aに近付ける形状に変更することもできる。これにより、第1の本体部52のU字形状の内部および第2の本体部60のU字形状の内部を大きくとることができるため、コイル16の巻数を大きくすることができるようになる。
【0055】
・第1のヨーク片50および第2のヨーク片58をプレス加工等により成形することもできる。
・第1の磁石18の回転体14に対する位置決め機構を、スプラインにより構成することもできる。要するに、第1の磁石18の回転体14に対する位相を位置決めできる機構であれば、いずれの構成を採用することもできる。なお、位置決め機構を省略し、製造時に目視等により第1の磁石18の回転体14に対する位相を決定することもできる。
【0056】
・第2の磁石20の回転体14に対する位置決め機構を、スプラインにより構成することもできる。要するに、第2の磁石20の回転体14に対する位相を位置決めできる機構であれば、いずれの構成を採用することもできる。なお、位置決め機構を省略し、製造時に目視等により第2の磁石20の回転体14に対する位相を決定することもできる。
【0057】
・第1の磁石18および第2の磁石20の少なくとも一方を、保持部材38,40または回転体に着磁することにより構成することもできる。
・第1の磁石18の磁極18Aの数と、第2の磁石20の磁極20Aの数とを異ならせることもできる。
【0058】
・第1のヨーク46および第2のヨーク48の一方の磁石対向部54,62を省略することもできる。
・第1の磁石18の回転軸心C方向における壁部30側の端部の位置と、第2の磁石20の回転軸心C方向における壁部30側の端部の位置とを異ならせることもできる。この場合、ヨーク22のうちの径方向において第1の磁石18と第2の磁石20との間に配置される部分が磁石対向部44である。
【0059】
・円筒形状の支持体12の内周に回転体14が配置される自転車用発電機に本発明を適用することもできる。この場合、自転車用発電機としては、例えば、タイヤまたは車輪のリムとの接触により回転体14が回転するローラ発電機が挙げられる。また、クランク軸まわりに取り付けられて、回転体としてのクランク軸の回転により発電する自転車用発電機に本発明を適用することもできる。また、リアディレーラの回転体としてのガイドプーリの回転により発電する自転車用発電機に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
B 自転車
10 ハブダイナモ
12 支持体
14 回転体
16 コイル
18 第1の磁石
18A 磁極
20 第2の磁石
20A 磁極
22 ヨーク
28 外周部分
28A 内面
28B 凹部(位置決め機構)
30 壁部
30A 支持部
30B 外面
30C 凸部(位置決め機構)
38A 凸部(位置決め機構)
40A 凹部(位置決め機構)
42 本体部
44 磁石対向部
46 第1のヨーク
48 第2のヨーク
50 第1のヨーク片
52 第1の本体部
54 第1の磁石対向部
56 開口
58 第2のヨーク片
60 第2の本体部
62 第2の磁石対向部
64 開口