特許第6445394号(P6445394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Ryuの特許一覧

<>
  • 特許6445394-石窯 図000002
  • 特許6445394-石窯 図000003
  • 特許6445394-石窯 図000004
  • 特許6445394-石窯 図000005
  • 特許6445394-石窯 図000006
  • 特許6445394-石窯 図000007
  • 特許6445394-石窯 図000008
  • 特許6445394-石窯 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445394
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】石窯
(51)【国際特許分類】
   A21B 3/02 20060101AFI20181217BHJP
   A21B 1/04 20060101ALI20181217BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A21B3/02
   A21B1/04
   A47J37/06 316
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-111291(P2015-111291)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-220631(P2016-220631A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】309039967
【氏名又は名称】株式会社Ryu
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕次郎
【審査官】 山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−078401(JP,A)
【文献】 特開2013−078286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21B 3/02
A21B 1/04
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を加熱調理するための調理空間を構成する石窯本体と、
前記石窯本体の側壁に設けられ、前記調理空間に食材を出し入れするための開口部と、
前記開口部に水平方向へ移動可能に配置される蓋部とを備え、
前記蓋部の外周面および前記開口部の内周面は、前記蓋部で前記開口部を閉じたときに互いに対向し、かつ、前記開口部において前記蓋部を奥方へ移動させるにつれて前記蓋部と前記開口部との間の隙間が徐々に拡大するように形成されている、石窯。
【請求項2】
前記石窯本体は下方に向けて開かれた半球状に形成されている、請求項1に記載の石窯。
【請求項3】
前記蓋部で前記開口部を閉じた状態において、前記蓋部の内壁面は前記石窯本体の内壁面と段差なく連続するように形成されており、かつ、前記蓋部の外壁面は前記石窯本体の外壁面と段差なく連続するように形成されており、
前記蓋部の外周面および前記開口部の内周面は、それらの幅が周方向において連続的に変化するように形成されている、請求項1または2に記載の石窯。
【請求項4】
前記蓋部および前記開口部のそれぞれは、下方に向かうにつれて厚さが薄くなるように形成されている、請求項3に記載の石窯。
【請求項5】
前記石窯本体の上面は平坦に形成されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の石窯。
【請求項6】
前記石窯本体が載置される板状の焼床を備えており、
前記焼床における前記開口部の下方に位置する部分に前記蓋部が載置される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の石窯。
【請求項7】
前記焼床を回転可能に支持するための回転台座を備える、請求項6に記載の石窯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪や木炭などで食材を加熱調理するための石窯に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の石窯の一例が記載されている。この石窯は、上部燃焼室を構成する石窯本体と、上部燃焼室に移動可能に設置された燃焼プレートとを備えており、石窯本体の前面には、開口部が設けられている。開口部には、密閉性の高い空間を作るために必要に応じて扉が設けられることがある。この石窯を用いて食材を加熱調理する際には、まず、燃焼プレートの上で薪や木炭が燃やされる。石窯本体の全体が加熱されると、薪や木炭が燃焼室外側に移動される。その後、開口部から上部燃焼室に食材が入れられて、燃焼プレートの上で食材が加熱調理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−78286号
【0004】
従来の石窯では、開口部に扉が設けられることがあるが、その場合には、ヒンジ等の部品が必要になるため、製造コストが高くなるという問題があった。また、扉では、開口部から取り込む空気量を調整することが困難であった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、製造コストを低減できるとともに、開口部から取り込む空気量を簡単に調整できる、石窯を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る石窯の特徴は、食材を加熱調理するための調理空間を構成する石窯本体と、前記石窯本体の側壁に設けられ、前記調理空間に食材を出し入れするための開口部と、前記開口部に水平方向へ移動可能に配置される蓋部とを備え、前記蓋部の外周面および前記開口部の内周面は、前記蓋部で前記開口部を閉じたときに互いに対向し、かつ、前記開口部において前記蓋部を奥方へ移動させるにつれて前記蓋部と前記開口部との間の隙間が徐々に拡大するように形成されていることにある。
【0007】
この構成では、開口部に蓋部を配置するために特別な部品は不要であり、製造コストを抑えることができる。また、開口部において蓋部を水平方向へ移動させるだけで、蓋部と開口部との間の隙間から取り込まれる空気量を簡単に調整できる。
【0008】
本発明の他の特徴は、前記石窯本体は下方に向けて開かれた半球状に形成されていることにある。
【0009】
この構成によれば、調理空間で加熱された空気を石窯本体の内壁面に沿わせて効率よく対流させることができる。
【0010】
本発明の他の特徴は、前記蓋部で前記開口部を閉じた状態において、前記蓋部の内壁面は前記石窯本体の内壁面と段差なく連続するように形成されており、かつ、前記蓋部の外壁面は前記石窯本体の外壁面と段差なく連続するように形成されており、前記蓋部の外周面および前記開口部の内周面は、それらの幅が周方向において連続的に変化するように形成されていることにある。
【0011】
この構成では、例えば、石窯本体と蓋部とを含む一体物を耐火コンクリートなどで成形し、この一体物から蓋部を切り出すことで石窯本体と蓋部とを簡単に製造できる。また、蓋部を開口部において水平方向に移動させるだけで蓋部と開口部との間の隙間の大きさを調整できるので、当該隙間から調理空間に取り込まれる空気量を簡単に調整できる。
【0012】
本発明の他の特徴は、前記蓋部および前記開口部のそれぞれは、下方に向かうにつれて厚さが薄くなるように形成されていることにある。
【0013】
この構成によれば、蓋部の外周面および開口部の内周面のそれぞれの幅が下方に向かうにつれて狭くなるので、蓋部を開口部の奥方へ移動させていくと、まず、蓋部の下部と開口部の下部との間に隙間が生じ、その隙間が上方に向けて拡大されていく。したがって、当該隙間から調理空間の下部に空気を取り込んで、この空気を効率よく対流させることができる。
【0014】
本発明の他の特徴は、前記石窯本体の上面は平坦に形成されていることにある。
【0015】
この構成によれば、石窯本体の上面にポットや鍋などを載置して、石窯本体の熱で湯や料理を保温することができる。
【0016】
本発明の他の特徴は、前記石窯本体が載置される板状の焼床を備えており、前記焼床における前記開口部の下方に位置する部分に前記蓋部が載置されることにある。
【0017】
この構成では、焼床の上方に調理空間を構成することができるので、焼床の上で食材を加熱調理することができる。また、焼床の上面で蓋部を滑らせることができるので、蓋部を移動させるときの作業性を高めることができる。
【0018】
本発明の他の特徴は、前記焼床を回転可能に支持するための回転台座を備えることにある。
【0019】
この構成では、焼床および石窯本体を回転させることができるので、開口部を任意の方向に向けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る石窯の使用状態を示す断面図である。
図2】石窯の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
図3】開口部および蓋部の構成を示す断面図である。
図4】開口部および蓋部を同時に形成する方法を示す図である。
図5】開口部から空気を取り込むときの蓋部の状態を示す断面図である。
図6】開口部から調理空間に取り込まれた空気の一部の流れを示す平面図である。
図7】支持台に載置された回転台座に焼床および石窯本体を載置した状態を示す正面図である。
図8】石窯本体の他の使用例を示す図であり、(A)は逆さにした石窯本体の内側に燃料を配置した状態を示す図、(B)は逆さにした石窯本体の内側にガスコンロを配置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る石窯について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る石窯10の使用状態を示す断面図である。図2は、石窯10の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。図3は、開口部18および蓋部20の構成を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、石窯10は、肉、魚、ピザ、パンなどの食材12を加熱調理したり、ポット14の湯などを保温したりするためのものであり、石窯本体16と、石窯本体16の側壁16aに設けられた開口部18と、開口部18に配置される蓋部20と、焼床22とを備えている。本実施形態では、石窯本体16、蓋部20および焼床22が耐火コンクリートで形成されており、少なくとも石窯本体16には、補強のためにステンレス筋が埋め込まれている。
【0024】
図1に示すように、石窯本体16は、食材12を加熱調理するための調理空間Sを構成する部分であり、下方に向けて開かれた半球状(すなわちドーム状)に形成されている。石窯本体16の内面は、下方に向かうにつれて外側に大きく拡がっており、これにより、石窯本体16の側壁16aおよび開口部18は、下方に向かうにつれて厚さが薄くなっている。また、石窯本体16の天井部は平らに形成されており、球面に形成する場合に比べて天井高が低くなり熱気を食材12に近づけることができる。また、石窯本体16の上面16dは、ポット14や鍋(図示省略)などを載置できるように平坦に形成されている。さらに、石窯本体16の下面16eは、焼床22の上面に当接するように平坦に形成されている。調理空間Sで薪や木炭などの燃料24が燃やされると、その熱で石窯本体16、蓋部20および焼床22が高温に加熱され、調理空間Sの食材12が遠赤外線や輻射熱で加熱調理される。
【0025】
図2(A)〜(C)に示すように、石窯本体16の外面には、水平方向および上下方向に延びるように刻まれた複数の溝26によって煉瓦の模様が描かれている。なお、この模様は、専ら装飾目的で描かれたものであり、他の模様に変更されてもよいし、省略されてもよい。
【0026】
図1に示すように、開口部18は、調理空間Sに食材12を出し入れするための孔Mを構成する部分である。つまり、石窯本体16の側壁16aには、孔Mが形成されており、孔Mの周辺部が開口部18となっている。図3に示すように、開口部18には、後述する蓋部20が水平方向へ移動可能に配置される。
【0027】
図4は、開口部18および蓋部20を同時に形成する方法を示す図である。図1に示す開口部18は、石窯本体16および蓋部20のそれぞれに対応する部分を含む半球状(すなわちドーム状)の一体物28(図4)から蓋部20を切り出すことによって形成される。図4に示す一体物28は、金型に耐火コンクリートを打設した後、これを固化させることによって製造される。一体物28における少なくとも石窯本体16に対応する部分には、ステンレス筋が埋め込まれる。
【0028】
図4に示すように、一体物28から蓋部20(図1)を切り出す際には、まず、一体物28が固定台30に固定される。続いて、一体物28の側壁28aにコンクリートコアードリル32のドリルビット32aが水平方向から押し当てられ、側壁28aが水平方向に真っ直ぐに延びる切断面で円弧状に切断される。図3に示すように、この切断作業で切り出された部分が蓋部20となり、残された部分が石窯本体16となる。また、石窯本体16における蓋部20に対応する部分が開口部18となる。図2(A)〜(C)に示す溝26は、この切断作業の後にエアー工具等を用いて刻まれる。
【0029】
図3に示すように、蓋部20は、開口部18の内側に配置されて開口部18を開閉するためのものである。蓋部20の外壁面20cには、ホールインアンカー(図示省略)が打ち込まれており、このホールインアンカーには、アイボルト等からなる持ち手34が接続されている。上述のように、蓋部20は、図4に示す一体物28から切り出されることによって、開口部18と同時に形成されるので、蓋部20の外周面20aおよび開口部18の内周面18aは、蓋部20で開口部18を閉じたときに互いに対向する。また、蓋部20で開口部18を閉じた状態において、蓋部20の内壁面20bは石窯本体16の内壁面16bと段差なく連続し、かつ、蓋部20の外壁面20cは石窯本体16の外壁面16cと段差なく連続するので、蓋部20の外周面20aと開口部18の内周面18aとは、同じ幅で互いに対向する。
【0030】
図5は、開口部18から空気を取り込むときの蓋部20の状態を示す断面図である。図5に示すように、蓋部20の外周面20aおよび開口部18の内周面18aは、それらの幅が周方向において連続的に変化するように形成されている。具体的には、石窯本体16の側壁16a、開口部18および蓋部20は、下方に向かうにつれて厚さが薄くなるように形成されており、これにより蓋部20の外周面20aおよび開口部18の内周面18aは、それらの幅が下方に向かうにつれて連続的に狭くなるように形成されている。
【0031】
したがって、開口部18において蓋部20を奥方へ移動させていくと、まず、蓋部20の下部と開口部18の下部との間に隙間Wが生じ、さらに移動させていくと、その隙間Wが上方に向けて拡大されていく。これにより、調理空間Sに取り込まれる空気量が徐々に増大する。なお、図5では、蓋部20の外側の外周縁20dと開口部18の内側の内周縁18dとで囲まれた三角形の領域が隙間Wとなっている。このように、石窯10は、隙間Wが蓋部20の両側下部にそれぞれ形成されるため、調理空間Sに取り込まれた空気を効率よく対流させることができる(後述する図6参照)。また、石窯10は、2つの隙間Wが蓋部20の奥側への移動に伴って調理空間Sの下部から上方に向けて拡大されていくので、出入りする空気の量を調節することを介して火力を調節することができる。
【0032】
図1に示すように、焼床22は、石窯本体16が載置される板状の部分であり、本実施形態では、平面視で円形に形成されている。焼床22の直径は、石窯本体16の直径とほぼ同じサイズに定められており、焼床22における開口部18の下方に位置する部分には、蓋部20が載置される蓋載置部22aが設けられている。焼床22に石窯本体16が載置された状態において、焼床22の上方に調理空間Sが構成されるので、焼床22の上で食材12を加熱調理することができる。板状の焼床22の上面は、平坦に形成されているので、蓋載置部22aにおいて蓋部20を水平方向へ滑らせることができ、開口部18から調理空間Sに取り込む空気量を調整するための作業を簡単に行うことができる。
【0033】
図1に示す石窯10を使用する際には、例えば、縦置きにされた1本のワイン樽(図示省略)や半切りにされたワイン樽(図示省略)の上面に石窯10が載置される。これらのワイン樽の上部外周には、食器や食材を置くための環状のテーブルが設けられていてもよい。
【0034】
図1に示すように、石窯10を用いて食材12を加熱調理する際には、まず、蓋部20を取り外して開口部18を開放し、この開口部18から調理空間Sに燃料24を挿入する。続いて、この燃料24に着火して、石窯本体16および焼床22を高温に加熱する。石窯本体16および焼床22の加熱が完了すると、開口部18から調理空間Sに食材12を挿入し、遠赤外線や輻射熱で食材12を加熱調理する。また、湯や料理を保温する場合には、石窯本体16の上面16dにポット14や鍋が載置される。本実施形態においては、石窯本体16の内部は概ね350℃に加熱できるとともに上面16dを概ね70℃程度に加熱することができる。
【0035】
図5に示すように、石窯本体16および焼床22を加熱するときや、食材12を加熱調理するときには、調理空間Sの熱を閉じ込めるために、開口部18に蓋部20が配置される。このとき、蓋部20は、開口部18を完全に閉じる位置(図3)よりも奥方に配置され、蓋部20と開口部18との間に空気を取り込むための隙間Wが確保される。上述のように、隙間Wは、開口部18において蓋部20を奥方へ移動させるにつれて大きくなるように構成されており、隙間Wが大きくなるほど調理空間Sに取り込まれる空気量が多くなって火力が強くなる。この場合、調理空間S内においては、後述する図6に示すように、燃料24に近い側(図6において左側)の隙間Wから空気が流入して燃料24から遠い側(図6において右側)の隙間Wから調理空間S内の空気が排出される。すなわち、石窯10は、調理空間S内における燃料24の配置位置によって空気の出入りのし易さをコントロールして火力を調節することができる。
【0036】
図6は、開口部18から調理空間Sに取り込まれた空気の一部の流れを示す平面図である。図6中の矢印は、空気の一部の流れを示している。図6に示すように、蓋部20と開口部18との間の隙間Wから調理空間Sに空気が取り込まれると、この空気は、燃料24の熱で加熱され、石窯本体16の半球状の内壁面16bに沿って対流する。食材12は、対流する高温空気や、燃料24が発する遠赤外線や、内壁面16bで反射した輻射熱によって加熱調理される。調理空間Sの空気は、隙間Wから外部に出ることができるので、新たな空気を隙間Wから取り込むことができ、燃料24の燃焼を持続させることができる。
【0037】
図1に示す食材12は、調理器具36に載置されている。調理器具36は、鉄製のトレー36aと、トレー36aに載置された網36bとを有しており、食材12は、網36bの上で加熱調理される。この調理器具36の使用により、健康に配慮したヘルシーな料理を簡単に作ることができる。例えば、食材12が肉や魚の場合には、加熱調理しながら余分な脂を落とすことができる。揚げ物を作る場合には、油を用いることなく高温の空気だけで食材12を揚げることができる。また、この調理器具36を用いた調理において、隙間W(図5)を調理に必要な火力を維持できる範囲でできるだけ小さくすると、調理空間S内を高温に維持できるとともに燃料24を構成する炭の消臭効果も相まって調理中に発生する煙や臭いを抑制でき、屋外は元より屋内での使用も可能になる。なお、調理器具36は、トレー36aと網36bとで構成されているが、これに限られず、トレー36aのみ、または網36bのみで構成することができるほか、鍋であってもよい。すなわち、調理器具36は、調理内容(焼く、蒸す、煮る、燻すなど)に応じて適宜選定される。また、ピザなどを調理する際には、焼床22上に直接ピザ生地を載置して調理することもできる。
【0038】
図3に示すように、蓋部20を手前に引いて開口部18を閉じると、隙間W(図5)からの空気流入がなくなって酸素が薄くなり、燃料24(図1)の火力が弱められる。この状態においても、蓋部20と開口部18との間には僅かな隙間(1〜3mm程度)があるため、開口部18を閉じる前に新しい燃料24(図1)を入れておくことで、燃料24を種火の状態で8〜10時間程度維持することができ、キャンプなどで翌朝の火起しを容易にすることができる。
【0039】
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、図1に示すように、開口部18に蓋部20を配置するために特別な部品はいらないため、製造コストを抑えることができる。また、図5に示すように、開口部18において蓋部20を水平方向へ移動させるだけで蓋部20と開口部18との間の隙間Wの大きさを調整でき、隙間Wから調理空間Sに取り込まれる空気量を簡単に調整できる。
【0040】
図1に示すように、石窯本体16は下方に向けて開かれた半球状(すなわちドーム状)に形成されているので、調理空間Sで加熱された空気を石窯本体16の内壁面16bに沿わせて効率よく対流させることができる。
【0041】
図4に示すように、一体物28を耐火コンクリートなどで成形し、この一体物28から蓋部20(図1)を切り出すようにしているので、図1に示す石窯本体16および蓋部20を簡単に製造できる。
【0042】
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、図7に示す他の実施形態の石窯40のように、焼床22を回転可能に支持するための回転台座42をさらに備えていてもよい。回転台座42は、ステンレスやその他の鉄材などの各種金属材料からなる下側板部42aおよび上側板部42bと、これらを回転可能に連結するための回転軸42cとを有している。
【0043】
図7に示すように、石窯40を使用する際には、回転台座42の下側板部42aが支持台44に載置され、回転台座42の上側板部42bに焼床22が載置される。なお、図7に示す実施形態では、支持台44として半切りにされたワイン樽を使用するとともに、ワイン樽の上部外周に環状のテーブル46を設けているが、1本のワイン樽がそのまま使用されてもよいし、テーブル46は省略されてもよい。また、回転台座42は、支持台44上またはテーブル46上に固定的に取り付けてもよいし、互いに分離可能(つまり、単に載置された状態)に構成されていてもよい。
【0044】
また、上述の各実施形態では、石窯10,40が焼床22を備えているが、石窯本体16が地面上(平面状の土の上やコンクリート面など)に直接載置されるような場合には、焼床22は省略されてもよい。
【0045】
さらに、上述の各実施形態では、蓋部20で開口部18を閉じた状態(図3)において、蓋部20と開口部18との間に1〜3mm程度の隙間があるが、この隙間がより小さくなるように蓋部20および開口部18を形成することで、燃料24(図1)の火を直ちに消火できるようにしてもよい。
【0046】
図8は、石窯本体16の他の使用例を示す図であり、(A)は逆さにした石窯本体16の内側に燃料50を配置した状態を示す図、(B)は逆さにした石窯本体16の内側にガスコンロ52を配置した状態を示す図である。図1に示す石窯本体16の上面16dおよび下面16eは平坦に形成されており、石窯本体16の側壁16aは下方に向かうにつれて薄くなるように形成されている。したがって、図8(A),(B)に示すように、石窯本体16を逆さにしたときには、石窯本体16を支持台(図示省略)などに安定して置くことができ、石窯本体16の内側で薪や炭などの燃料50を燃焼させたり、ガスコンロ52を使用したりすることができる。また、逆さにした石窯本体16の上端面(下面16e)に網や鉄板などの調理器具54を載置して、調理器具54の上で食材(図示省略)を加熱調理することができる。この場合、石窯本体16は、開口部18を燃料50をくべるためや、ガスコンロ52の配管を通すための切欠き部として利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
S…調理空間、W…隙間、10…石窯、12…食材、16…石窯本体、16a…側壁、
18…開口部、18a…内周面、20…蓋部、20a…外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8