【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例を示すエレベータ群管理システムの全体構成図である。
図1において、エレベータ群管理システムは、エレベータホールの入口やその近傍、またはビルの玄関口などで行先階を登録して、その行先階に応じてかごを割当てる行先階予約式群管理システムである。ここでは説明を簡単にするため、2台のエレベータに対する群管理の例を表し、エレベータ群管理システムは、2台のエレベータ乗りかご3A(A号機)、3B(B号機)、各エレベータ号機の制御装置2A(A号機の制御装置)、2B(B号機の制御装置)、2台のかごを統括管理する群管理制御装置1を有し、群管理制御装置1が、行先階登録装置5A、5Bに接続される。なお、
図1では、1階(ロビー階)のかご乗場の状況が示されている(その以外の階は省略している)。
【0013】
行先階登録装置5A、5Bは、1階に配置されており、利用者が行先階をテンキーなどによって登録してエレベータの呼びを作成する。即ち、行先階登録装置5A、5Bは、複数台のエレベータが配置されたエレベータホールに設置されて、利用者の操作に応答して、利用者の行先階を含む情報を行先階情報として登録すると共に、複数台のエレベータのうちいずれかのエレベータの乗りかごを特定する乗りかご情報(例えば、乗りかご名)を表示する。行先階登録装置行先階登録装置5A、5Bを用いたエレベータの利用法は以下の手順になる。
【0014】
(1)1階の利用者は行先階登録装置5Aまたは5Bで行先階を登録する。
(2)登録された行先階に対して、その行先階にサービスするかごが群管理制御装置1で割当てられる。
(3)割当てられたかごのかご名は行先階登録装置5Aまたは5B上に表示される。
(4)利用者はそれを見て、表示されたかごの場所へ行き、その前でかごの到着を待つ。
(5)かごが到着すると、そのかごには既に行先階が割当てられており、利用者はかご内で行先階を登録することなく目的の階へ到達できる。
【0015】
行先階予約式群管理システムでは、登録された行先階毎にかごを割当てることができるため、行先階に応じて複数のかごを割当てることができる。例えば、A号機に割当てられた利用者のグループ4A、B号機に割当てられた利用者のグループ4Bの2グループが、それぞれ2台のエレベータの前で待っている。
【0016】
以下、群管理制御装置1の詳細を説明する。群管理制御装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェース等の情報処理資源を備えたコンピュータ装置であり、メモリには、CPUのアクセス対象となる各種記憶部やCPUが起動する各種算出部等が保存される。この際、群管理制御装置1は、行先階登録装置5A又は5Bに登録された行先階情報を基に利用者に対して、複数台のエレベータの中のいずれかのエレベータの乗りかごを割当て、割当てられたエレベータの乗りかごを利用者のエレベータ乗場まで運転するための制御指令を生成し、生成した制御指令を各エレベータ号機の制御装置2A、2Bに出力する機能を有する。各エレベータ号機の制御装置2A、2Bは、制御指令に従って各エレベータの乗りかごの運転を制御すると共に、各エレベータの乗りかごの運転状態を示す状態情報(乗りかごの位置、方向、かご内乗り人数などの情報)を群管理制御装置1に出力するエレベータ制御装置として機能する。
【0017】
具体的には、データ入出力・記憶部101は、各かごの制御装置の情報、各階のかご乗場や各かごの情報が入力すると共に、各かごの制御装置に対する制御指令や乗場の各機器に対する情報を出力する。この際、データ入出力・記憶部101は、入力情報、出力情報の内、必要な情報を記憶する。
【0018】
各かご・各行先階呼びの状態情報記憶部102は、データ入出力・記憶部101からの情報を基に各かごの位置や方向、かご内乗り人数、割当て行先階、各行先階呼びの呼び数などを記憶する。
【0019】
到着予測時間算出部103は、各かご・各行先階呼びの状態情報記憶部102に記憶された情報のうち、各かごの位置や方向、割当て行先階の情報などから各階における各かごの到着予測時間を算出する。この際、到着予測時間算出部103は、各エレベータの状態情報を基に各エレベータの乗りかごが各エレベータの乗場に到着する到着予測時間を算出することになる。
【0020】
乗場入口からの距離データ記憶部104は、各階における乗場入口、例えば、エレベータホール入口(行先階登録装置の設置場所近傍)から各かごの乗場までの距離を示す距離データを記憶する。例えば、1階(ロビー階)のA号機は、乗場入口からA号機の乗場までの距離を示す距離データが10mとして記憶し、B号機は、乗場入口からB号機の乗場までの距離を示す距離データが15mとして記憶する。尚、距離データは、必ずしも物理的な距離の値である必要はなく、乗場入口から各かごの乗場までの近さの順として記憶してもよい。これらのデータは群管理制御装置1の工場出荷時、ビルへの据付け時、エレベータ設備の本稼動前、稼動後のメンテナンスの時点などで設定される。
【0021】
乗車定員記憶部105は、各かごの乗車定員(例えば24人など)の情報を記憶する。尚、乗車定員は、積載容量を人間一人当たりの想定体重で除した値(例えば積載容量1600kgを一人当たりの想定体重65kgで除した24人)としても良いし、そこからさらに体積的な乗車の可否を考慮し、所定の比率を掛けた値(例えば上記24人に0.8を掛けた19人)としても良い。
【0022】
待ち人数許容値算出部106は、各階・各かごの乗場入口(行先階登録装置の設置位置)から各かごの乗場までの距離を示す距離データと、各かごの乗車定員とから、かご毎に待ち人数許容値を算出する。つまり、待ち人数許容値算出部106は、乗場及びかごの位置条件に応じてかご毎に待ち人数許容値を算出している。この際、待ち人数許容値算出部106は、エレベータ毎に設定される待ち人数許容値を各階毎に算出するに際して、各エレベータに対する待ち人数許容値を、行先階登録装置5A、5Bの設置位置から各エレベータのエレベータ乗場までの距離が近い程その値を小さくして算出する。これによって各かごの待ち人数を調整している。
【0023】
待ち人数許容値算出の詳細については、
図2を用いて後ほど詳しく説明する。待ち人数許容値の算出は、必ずしも定期的に行う必要はなく、群管理装置の工場出荷時,ビルへの据付け時,エレベータ設備の本稼動前,稼動後のメンテナンスの時点などで算出して、以後はその値を記憶して用いてもよい。
【0024】
待ち人数許容値見直し部107は、各階・各かごの待ち人数許容値と、各階・各かごの到着予測時間とから、待ち人数許容値の見直しを実施する。つまり、待ち人数許容値見直し部107は、乗場及びかごの位置条件に応じて設定されたかご毎の待ち人数許容値に対して、かごの到着予測時間を用いて見直しを実施する。
【0025】
待ち人数許容値の見直しは、定期的に実施される。その詳細については、
図3及び
図4を用いて後ほど詳しく説明する。
【0026】
待ち人数計数部108は、行先階呼びの登録回数と各行先階呼びの割当てかごの情報から、各階におけるかご毎の待ち人数をカウントする。行先階予約式群管理システムでは、割当て号機を確認するため、利用者各人が行先階を登録するようになっており、行先階の登録回数とその割当て号機の情報により、各かごの待ち人数が算出できる。この際、待ち人数計数部108は、行先階登録装置5A又は5Bに新規の利用者の行先階を含む情報が新規の行先階情報として登録された場合、新規の利用者による行先階の登録回数と新規の利用者の行先階に応じて割当てられるエレベータの乗りかご毎の割当て人数から各階におけるエレベータの乗りかご毎の待ち人数を計数する。
【0027】
割当て可能かご選択部109は、各かごの待ち人数許容値と各かごの待ち人数計数値から割当て可能なかごを選択する。例えば、待ち人数許容値よりも待ち人数計数値が小さいかごが割当て可能なかごとして選ばれる。これにより、既に許容値よりも待ち人数が多いかごは、割当て対象から外れるため、待ち人数許容値が見直されない限りはそれ以上待ち客が増えることはなく、乗場内では、そのかごの待ち客の集団によって、他のかごの利用者の動線が妨げられることを防止できる。
【0028】
新規呼びに対する各かごの割当て評価値算出部110は、割当て可能と判定された各かごに対して、新規に登録された行先階呼びへの割当てに対する評価値を計算する。割当て評価値は、各エレベータの位置や方向,かご内乗り人数,割当て行先階などの情報、各行先階呼びの呼び数や登録回数、到着予測時間などの情報から算出される。
【0029】
割当てかご選択部111は、算出された割当て評価値に基づいて最も評価値の良いかごを割当てかごとして選択する。この際、割当て可能かご選択部109又は割当てかご選択部111のうち少なくとも一方は、待ち人数計数部108の計数による待ち人数と待ち人数許容値算出部106の算出による待ち人数許容値とを比較し、この比較結果から割当て可能と判断した場合、新規の行先階情報(新規に登録された行先階を示す情報)を基に新規の利用者に割当てるべきエレベータの乗りかごを選択するかご選択部として機能する。
【0030】
また、データ入出力・記憶部101は、かご選択部により選択されたエレベータの乗りかごの状態情報を各エレベータ号機の制御装置2A、2Bから入力し、入力した状態情報を基に選択されたエレベータの乗りかごを新規の利用者のエレベータ乗場まで運転するための制御指令を生成し、生成した制御指令を各エレベータ号機の制御装置2A、2Bに出力する制御指令生成部として機能すると共に、かご選択部により選択されたエレベータの乗りかごを特定する情報を、新規の利用者に割当てられるエレベータの乗りかごを特定する乗りかご情報(例えば、乗りかご名)として生成し、生成した乗りかご情報を行先階登録装置5A又は5Bに出力する情報生成部として機能する。これにより、新規の利用者は、行先階登録装置5A又は5Bに表示された乗りかご情報(乗りかご名)を見て、表示されたかごの場所へ行き、その前でかごの到着を待つことができる。
【0031】
図2は、エレベータホール内の待ち人数許容値の設定を領域の面積で説明するための模式図である。
図2は、6台のエレベータ(A号機〜F号機)による群管理の例であって、6台の乗りかごが、それぞれ3台ずつ互いに向かい合わせとなる対面配置となっている。
【0032】
図2では、エレベータホールとその入口周辺および各エレベータの昇降路を水平に切った断面を表している。A号機の昇降路は、領域A01となり、同様にB号機からF号機までの昇降路の領域が時計回りに配置されている。エレベータホールは、領域A02全体であり、実施例では通常に比べてホール面積が狭い状況を想定している。行先階登録装置5A、5Bは、エレベータホール入口の左右両側にそれぞれ分かれて設定されている。
【0033】
エレベータの利用者は、エレベータホール入口の行先階登録装置5Aまたは5Bで自分の行先階(例えば12階とする)を登録して、そこで表示された割当て号機(例えばD号機とする)を確認後、エレベータホールの領域A02内に入って、割当てられたD号機の前で乗りかごの到着を待つ。
【0034】
エレベータホール面積が狭いケースの場合、既にF号機に割当てられた利用者が多数待っていれば、D号機に割当てられた利用者はこれを迂回する必要がある。出勤ピーク時のように非常に混雑している場合には、さらにA号機やB号機にも待ち客が多数存在し、D号機に割当てられた利用者はこれらの待ち客をよけながら時間をかけてようやくそこへ到達することになる。したがって、この間にD号機が到着して出発してしまうと、この利用者は改めて行先階を再登録して、そこで新たに割当てられた号機の前に行かねばならず、エレベータ乗車までに長い時間を要する。群管理制御装置1にとっても、本来D号機で運べた利用者に対して、改めて別のエレベータを割当てねばならず、ビル全体の輸送効率が悪化する。最悪のケースは、A号機とF号機の待ち客が共に満員で待っている場合で、この場合、エレベータホールの入口がふさがれてしまうため、その奥の号機(B、C、D、E号機)に割当てられた利用者はそこまでたどり着くことができず、非常に多くの利用者が入口付近にたまってしまう恐れがある。
【0035】
図2において、各エレベータの待ち人数許容値は、各エレベータ号機前の実線で囲まれた四角形領域の面積により模式的に表されている。A号機の待ち人数許容値は領域A03の面積として表され、同様にB号機は領域A04、C号機は領域A05、D号機は領域A06、E号機は領域A07、F号機は領域A08の面積として表される。また一点鎖線で囲まれた領域A09の面積は各エレベータの乗車定員を模式的に表している。
【0036】
実線の領域A03〜A08で表されている各号機の待ち人数許容値は、エレベータホール入口から各号機の乗場までの距離が近いほどその値が小さくなるように設定されている(一点鎖線で表された乗車定員の領域A09に比べて実線領域が小さくなっている)。
【0037】
点線X、Yは、待ち人数許容値に対する設定の特性を表している。即ち、領域A03〜A05と領域A08〜A06の面積がエレベータホール入口から離れる程小さくなるので、点線X、Yは、エレベータホール入口から離れるに従って互いに近づき、領域A02の隅で交点を結ぶ特性を示す。点線X、Yの特性から、エレベータホール入口に近いエレベータほど(例えばA号機)、その待ち人数を抑えるようになり、エレベータホール奥のエレベータ(例えば、C号機とD号機)に割当てられた利用者に対する動線を確実に確保することが可能となる。その結果、混雑時においても、利用者各人は割当てられたエレベータ号機の場所に速やかに移動することができる。
【0038】
A号機は乗車定員よりも少ない人数を運ぶため、輸送効率が下がるように見えるが、エレベータホールが狭いようなケースでは、乗り込めずに新たな号機で運ばなければならない方が、効率の点で悪くなる。つまり、乗り込めなかったため、最初のかごは無駄な停止が生じ、新たな号機を再度サービスさせる必要があり、さらに利用者は2度行先階を登録しなければならない。
【0039】
また、エレベータホールの形状,エレベータの配置は、様々であるが、待ち人数許容値の決定は、エレベータホール内のエレベータの位置条件に応じて決定すれば良く、複数台のエレベータのうち少なくともいずれか一つは他と異なるようにするだけで、混雑による運行効率への影響は改善される。
【0040】
待ち人数許容値の算出方法としては、各エレベータ号機のエレベータホール入口からの距離によって直接に許容値を求める方法や、次式のような距離に応じた係数を用いて求める方法を採用することができる。
待ち人数許容値=距離係数(L)×乗車定員 (1)
ここで、距離係数は、エレベータホール入口とエレベータ号機との距離Lによって決まるもので、0以上,1以下の値を取る。また、必ずしも物理的な距離から求める必要はなく、距離の2乗値や距離で決まる順位でもよい。例えば、順位(N)によってあらかじめ係数の値を定めておき、下記のような順位係数によって許容値を求めることでもよい。
待ち人数許容値=当該エレベータの順位係数(N)×乗車定員 (2)
【0041】
いずれの場合にしても、各エレベータ号機のエレベータホール入口からの距離またはその位置条件に関連してエレベータの待ち人数許容値を定めることで、それに応じて各エレベータの待ち人数を制限することができる。
【0042】
さらに、階床によってエレベータホール入口の配置が変わるような場合は、各エレベータ号機とエレベータホール入口との距離が階床によって変わるため、階床に応じて各エレベータのエレベータホール入口からの距離に基づいて、待ち人数許容値を決定すればよい。
【0043】
図3は、エレベータホール内の待ち人数許容値の見直しを領域の面積で説明するための模式図である。
図3において、エレベータホール面積が狭いケースの場合、待ち人数許容値が、点線X、Yに沿って設定されると、エレベータホール入口に近いエレベータ号機ほど、その待ち人数を抑えるようになり、エレベータホール奥のエレベータ号機に割当てられた利用者に対する動線を確実に確保することが可能となる。その結果、混雑時においても利用者各人は割当てられたエレベータ号機の場所に速やかに移動することができる。
【0044】
しかし、エレベータホール入口に近いエレベータ号機、例えば、F号機は、待ち客数を抑えるために、領域A08のように、待ち人数許容値が、乗車定員の領域A09よりも少なくなる。この結果、F号機は、乗りかごの乗車可能人数に対して少ない人数で出発することとなり、輸送効率が低下する。
【0045】
これに対して、輸送効率を高めるために、エレベータホール入口に近いエレベータ号機、例えば、F号機の到着までの時間が短いことを条件に、F号機に対する待ち人数許容値を、領域A08から領域A10(乗車定員に相当する領域)に設定すると、待ち客により、エレベータホール入口付近の動線を妨げる状況が発生し得る。しかし、F号機の到着までの時間が短いならば、動線の妨げは一時的なものであり、エレベータ(F号機)が到着して待ち客が乗車を開始すれば、この動線の妨げは解消される。
【0046】
図4は、待ち人数許容値見直し部の処理を説明するためのフローチャートである。
図4において、待ち人数許容値見直し部107は、前回の処理から所定時間が経過したか否かを判定する(ST101)。ステップST101で否定の判定結果を得た場合、待ち人数許容値見直し部107は、所定時間が経過するまでこの処理を繰り返す。ステップST101で肯定の判定結果を得た場合、即ち、所定時間が経過した場合、待ち人数許容値見直し部107は、各エレベータ号機毎の待ち人数許容値を見直すためのループ処理を実行する(ST102)。このループ処理は、kの値を変えて先頭号機から最終号機まで順に全ての号機に対して実行する。
【0047】
待ち人数許容値見直し部107は、待ち人数許容値を見直すために、各k号機に対して、k号機の呼び発生階への到着予測時間と、予め定めた閾値Tthとを比較し、k号機の呼び発生階への到着予測時間が閾値Tthよりも小さいか否かを判定し(ST103)、ステップST103で、k号機の呼び発生階への到着予測時間の方が閾値Tthよりも小さい(短い)と判定した場合、呼び発生階でのk号機の待ち人数許容値を見直し、k号機の乗車定員を待ち人数許容値とし(ST104)、その後、ステップST105の処理に移行し、一方、ステップST103で、k号機の呼び発生階への到着予測時間の方が閾値Tthよりも大きい(長い)と判定した場合、k号機の待ち人数許容値を見直すことなく、ステップST105の処理に移行する。
【0048】
次に、待ち人数許容値見直し部107は、号機のループ処理が終了したか否かを判定し(ST105)、ループ処理が終了していない場合、kの値を変えて、最終号機まで順に全ての号機に対して、ステップST103からST105の処理を繰り返し(ST106)、全てのエレベータ号機に対するループ処理が完了した場合、このルーチンでの処理を終了する。
【0049】
なお、ステップST104では、待ち人数許容値見直し部107は、到着予測時間算出部103の算出結果を基に各エレベータが各エレベータの乗場に近づくことを条件に、待ち人数許容値算出部106の算出による待ち人数許容値を大きい値(例えば、乗車定員)に補正し、補正された待ち人数許容値を割当て可能かご選択部109に出力することになる。割当て可能かご選択部109は、待ち人数許容値見直し部107により補正された待ち人数許容値と待ち人数計数部108の計数による待ち人数とを比較することになる。この際、例えば、
図3に示すように、F号機の到着までの時間が短いことを条件に、F号機に対する待ち人数許容値を、領域A08から領域A10(乗車定員に相当する領域)に補正することができる。この場合、F号機の到着までの時間が短いので、動線の妨げは一時的なものとなり、エレベータ(F号機)が到着して待ち客が乗車を開始すれば、この動線の妨げは解消され、エレベータ(F号機)の運行効率を高めることができる。
【0050】
ここで、
図4では各エレベータ号機について、呼び発生階への到着予測時間と予め定めた閾値Tthとの比較を一度だけ実施しているが、閾値Tthを複数設定して、段階的な待ち人数許容値の見直しを実施するようにしても良い。この場合は、呼び発生階への到着予測時間が短くなるに従って、待ち人数許容値が多くなるように設定する。
【0051】
図5は、割当て処理を説明するためのフローチャートである。
図5において、群管理制御装置1全体を統括制御するCPUは、行先階登録装置5A、5Bからの情報を基に新規に行先階呼びが登録されたか否かを判定する(ST201)。ステップST201で否定の判定結果を得た場合、CPUは、新規に行先階呼びが登録されるまでこの処理を繰り返し、ステップST201で肯定の判定結果を得た場合、各エレベータ号機が割当て可能か否かを判定し、可能である場合は評価値Φ(k)を計算するためのループ処理を開始する(ST202)。このループ処理は、kの値を変えて先頭号機から最終号機まで順に全ての号機に対して実行する。
【0052】
CPUは、各k号機に対して、呼び発生階でのk号機の待ち人数と呼び発生階でのk号機の待ち人数許容値とを比較し、呼び発生階でのk号機の待ち人数が、呼び発生階でのk号機の待ち人数許容値以上であるか否かを判定し(ST203)、ステップST203で肯定の判定結果を得た場合、即ち、待ち人数が待ち人数許容値よりも大きい場合、k号機は割当て不可と判定する(ST204)。割当て不可と判定した場合、CPUは、その号機(k号機)の評価値は計算せず、k号機を新規呼びに対する割当て対象から外す。これにより、各号機の最大待ち人数は許容値以下に制限されて、
図2や
図3の実線の領域A03〜A08に示されたような待ち客の状況に制御されるようになる。尚、各号機の各階での待ち人数は行先階登録の回数より推定される。
【0053】
一方、ステップST203で否定の判定結果を得た場合、即ち、待ち人数が待ち人数許容値よりも小さい場合、CPUは、k号機に新規行先階呼びを仮割当てし(ST205)、k号機に対する割当て評価値Φ(k)を計算する(ST206)。
【0054】
次に、CPUは、号機のループ処理が終了したか否かを判定し(ST207)、ループ処理が終了していない場合、kの値を変えて、最終号機まで順に全ての号機に対して、ステップST203からST207の処理を繰り返し(ST208)、全てのエレベータ号機に対するループ処理が完了した場合、割当評価値Φ(k)が最小となるエレベータ号機を新規行先階呼びの割当て号機に決定し(ST209)、このルーチンでの処理を終了する。
【0055】
この際、新規呼びに対する各かごの割当て評価値算出部110と割当てかご選択部111は、待ち人数計数部108の計数による待ち人数が待ち人数許容値算出部106の算出による待ち人数許容値よりも小さい場合、各エレベータについてその評価値を算出し、各算出した評価値のうちその値が最小となるエレベータの乗りかごを新規の利用者に割当てるべきエレベータの乗りかごとして選択するかご選択部として機能する。
【0056】
以上のような処理により、各エレベータの待ち人数は、
図2および
図3のような特性X、Yで定められるような待ち人数許容値を満たすように調整・制御され、かつその条件の中で評価値の最も良いエレベータが割当てられることになる。
【0057】
さらに、乗りかご内の既に乗車している人数を考慮し、実際に乗りかご内に乗り込める人数を「乗り込み可能人数」とすると、待ち人数の上限値は、待ち人数許容値と乗り込み可能人数の内の小さい方に定めればよい。これは次の式で表すことができる。
待ち人数上限値=MIN{待ち人数許容値,乗り込み可能人数} (3)
【0058】
ここで、MINは括弧内の最小値を選ぶ演算である。これにより、乗りかご内とホールの待ち状況の両方を考慮して、より適切な待ち人数の制御が可能となる。ただし、出勤混雑時の場合は、ロビー階からの乗り込みが主体となるので、待ち人数許容値によって待ち人数の上限を決めれば良い。
【0059】
図5のフローチャートにおいて、全てのエレベータ号機の待ち人数が待ち人数許容値以上の場合は、エレベータの輸送能力限界に近い非常に厳しい混雑状況(このようなケースはほとんどない)であり、その場合は、待ち人数許容値の制約を外して、割当て評価値の良い号機に割当てるようにすればよい。
【0060】
上述したような実施例によれば、待ち人数許容値に基づいて割当てを実施することによりエレベータホールが乗客で混雑している場合にも、乗客の動線を確保することができる。即ち、乗場混雑時の乗客の動線を点線X、Yに沿って確保することができる。また、エレベータの乗場への到着時間に基づいて待ち人数許容値を見直すことによりエレベータが少人数で出発することを防ぐため、エレベータの運行効率を高めることができる。さらに、待ち人数許容値に従って割当てるエレベータを選択するとともに、エレベータの乗場までの到着時間が近づくと、待ち人数許容値による割当ての制限を緩和することで、乗客の動線を確保と高い運行効率を両立することができる。
【0061】
なお、
図5では、待ち人数と待ち人数許容値の比較のみで割当て不可を判定しているが、待ち人数許容値見直し部107により待ち人数許容値が変更となった場合は、当該乗りかごが既に受持っている行先階呼びと同一の行先階呼びのみを割当て可能とするようにしても良い。この際、割当て可能かご選択部109又は割当てかご選択部111は、待ち人数許容値見直し部107により補正された待ち人数許容値と待ち人数計数部108の計数による待ち人数との比較結果から、新規の利用者に割当てるべきエレベータの乗りかごを選択した後、行先階登録装置5Aまたは5Bにその後の新規の利用者による行先階が登録された場合、選択した乗りかごの行先階とその後の新規の利用者の行先階が同一であることを条件に、その後の新規の利用者に対して、選択した乗りかごを割当てるかご選択部として機能する。この場合、当該乗りかごに新たに行先階が増えることがなくなるため、さらに高い運行効率を維持する事ができる。
【0062】
また、1巡目で運びきれないほどの利用者が発生した場合、2巡目用の待ちスペースを設け、2巡目用の待ちスペースから乗り場までの動線を確保できるように、乗りかごを割当てることで、将来、予想を上回る交通需要が発生したとしても、スムーズな流動を実現できる。
【0063】
さらに、セキュリティーゲートなど、乗り場から離れた位置に行先階登録装置が設置されていても、歩行時間を考慮した乗り場の待ち人数予測を行うことで、無駄のない、スムーズな流動を実現できる。
【0064】
また、車いす利用者など、空間的な占有率を考慮することで、様々な利用者が混在するビルにおいても、より有用性を発揮できる。
【0065】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0066】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に記録して置くことができる。