(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化学吸着型消臭剤の組み合わせにおいて、2種の化学吸着型の質量比が20:80〜80:20である請求項1又は2に記載の空気清浄機又はエアコン用消臭フィルター。
前記化学吸着型消臭剤の含有割合が、前記消臭繊維層を構成する繊維の質量を100質量部とした場合に、2〜60質量部である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の空気清浄機又はエアコン用消臭フィルター。
前記化学吸着型消臭剤をレーザー回折式粒度分布測定機で測定したときのメジアン径が、0.05〜100μmである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の空気清浄機又はエアコン用消臭フィルター。
前記消臭繊維層において、前記化学吸着型消臭剤がバインダー樹脂により前記繊維に接合されている請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空気清浄機又はエアコン用消臭フィルター。
前記バインダー樹脂及び前記化学吸着型消臭剤の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、10〜90質量%及び10〜90質量%である請求項6に記載の空気清浄機又はエアコン用消臭フィルター。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の消臭フィルターは、繊維と、該繊維の表面に接合された化学吸着型消臭剤とを含む消臭繊維層を備え、消臭繊維層を挟んで、フィルターの1面側から他面側に通気性を有するフィルターである。そして、本発明の消臭フィルターは、
図1に示されるように、全体が消臭繊維層10である断面構造を備える消臭フィルター1であってよいし、
図2及び
図3に示されるように、一部が消臭繊維層10である断面構造を備える消臭フィルター1であってもよい。尚、消臭繊維層は、単層構造及び複層構造のいずれでもよい。本発明の消臭フィルターは、目的の大きさや形状(平面構造、プリーツ等の立体構造)に適応させて使用することができる。
【0016】
本発明の消臭フィルターを構成する消臭繊維層は、好ましくは、化学吸着型消臭剤が、表出するように、繊維の基部表面に埋設された複合繊維、及び、化学吸着型消臭剤が、接着層を介して繊維の表面に接合された複合繊維から選ばれた少なくとも1種を含む繊維集合体である。この繊維集合体は、化学吸着型消臭剤を備えない繊維を含んでもよい。尚、繊維集合体に含まれる複合繊維等の繊維の平均径は、通常、5〜30μmであり、好ましくは10〜25μmである。
また、この消臭繊維層(又は消臭フィルター)を構成する基材は、織布及び不織布のいずれからなるものであってもよいが、所望の厚さの設定が容易であり、製造コストが安価であり、通気性のコントロールがし易いことから、不織布からなることが好ましい。
【0017】
不織布に含まれる繊維を構成する樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリビニルエステル、ポリメタクリル酸エステル、レーヨン等が挙げられる。これらの樹脂のうち、化学吸着型消臭剤が、バインダー樹脂からなる接着層を介して繊維の表面に接合された態様とした場合に、化学吸着型消臭剤とバインダー樹脂との接着性並びに通気性が十分に得られることから、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びレーヨンが好ましい。尚、上記不織布は、1種のみの樹脂を含む繊維からなる不織布であってよいし、複数種類の樹脂繊維からなる不織布であってもよい。不織布は、ニードルパンチ法や水流絡合法等により交絡されている不織布、サーマルボンド法により製造された不織布及びスパンボンド法により製造された不織布が好ましい。
【0018】
また、悪臭ガス用の消臭剤には、本発明における化学吸着型消臭剤のように、化学吸着により悪臭成分を吸着したり、悪臭成分と化学結合を形成するタイプ以外に、活性炭のように、物理吸着により悪臭成分を吸着するタイプ、光触媒のように、悪臭成分を接触時に分解するタイプが一般的である。しかし、悪臭ガスを通気させるフィルターとして使用する場合、悪臭ガスが通過する短時間で悪臭成分を吸着する必要があり、継続使用により悪臭ガスが再放出されてしまう物理吸着タイプや、光を当てて分解させる分解タイプでは、十分な消臭効果が得られない。消臭フィルターを構成する消臭繊維層に用いる消臭剤としては、短時間で悪臭成分を吸着することが可能であり、消臭繊維層を通り抜ける際に十分な消臭効果を発揮し、消臭速度が速く、消臭容量が大きい化学吸着型消臭剤が最適である。尚、上記化学吸着型消臭剤における化学結合の形態は、特に限定されず、化学吸着型消臭剤に含まれる官能基、悪臭成分に含まれる官能基等に依存する場合がある。
【0019】
化学吸着型消臭剤が対象とする悪臭成分の具体例は、アンモニア、アミン等の塩基性化合物、酢酸、イソ吉草酸等の酸性化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノネナール等のアルデヒド類、硫化水素、メチルメルカプタン等の硫黄化合物等である。
これらの悪臭成分に対する化学吸着型消臭剤としては、無機系化学吸着型消臭剤及び有機系化学吸着型消臭剤が挙げられる。無機系化学吸着型消臭剤としては、具体的には、4価金属のリン酸塩、ゼオライト、非晶質複合酸化物、Ag、Cu、Zn及びMnから選ばれる原子の少なくとも1種を含有する複合物、水和酸化ジルコニウム及び酸化ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物、ハイドロタルサイト系化合物、非晶質活性化合物等が挙げられる。また、有機系化学吸着型消臭剤としては、アミン化合物等が挙げられる。安全性に優れ、変質しにくい消臭剤としては、水に対して不溶性又は難溶性の無機系の化学吸着型消臭剤が好ましい。
【0020】
これらの化学吸着型消臭剤は、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。消臭対象(悪臭成分)の異なる複数の化学吸着型消臭剤を用いることにより、相乗的な効果が得られることもある。例えば、アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン、二硫化ジメチル等を含む、排泄臭又は腐敗臭(生ごみ等の臭気)に対しては、塩基性ガス用化学吸着型消臭剤及び硫黄系ガス用化学吸着型消臭剤の組み合わせが好適であり、例えば、酢酸、イソ吉草酸等を含む、汗臭等の体臭に対しては、塩基性ガス用化学吸着型消臭剤及び酸性ガス用化学吸着型消臭剤の組み合わせが好適である。また、アセトアルデヒド、酢酸等を含むタバコ臭に対しては、塩基性ガス用化学吸着型消臭剤、酸性ガス用化学吸着型消臭剤、及びアルデヒドガス用化学吸着型消臭剤の組み合わせが適している。2種以上の化学吸着型消臭剤を組み合わせて用いる場合の使用量の割合は、用いる化学吸着型消臭剤の消臭容量や消臭速度等の消臭性能と、目的とする環境のガス濃度(悪臭成分の濃度)により選択することが好ましい。例えば、2種の化学吸着型消臭剤を使用して、複数の悪臭成分を含む悪臭ガスを消臭する場合、十分な消臭効果を得るための凡その質量比は、20:80〜80:20である。また、これら本発明における化学吸着型消臭剤と、活性炭のような物理吸着型消臭剤とを併用することもできる。尚、消臭容量とは、化学吸着型消臭剤1gが消臭可能な標準状態の悪臭成分の量(mL)を意味し、この値が大きいほど、消臭フィルターにおける消臭効果の持続性を得ることができる。
次に、本発明で用いる化学吸着型消臭剤を示す。
【0021】
(A)4価金属のリン酸塩
4価金属のリン酸塩は、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。この化合物は、水に対して不溶性又は難溶性であり、塩基性ガスに対する消臭効果に優れる。
H
aM
b(PO
4)
c・nH
2O (1)
(式中、Mは、4価の金属原子であり、a、b及びcは、式:a+4b=3cを満たす整数であり、nは0又は正の整数である。)
上記一般式(1)におけるMとしては、Zr、Hf、Ti、Sn等が挙げられる。
4価金属のリン酸塩の好ましい具体例としては、リン酸ジルコニウム(Zr(HPO
4)
2・H
2O)、リン酸ハフニウム、リン酸チタン、リン酸スズ等が挙げられる。これらの化合物には、α型結晶、β型結晶、γ型結晶等、種々の結晶系を有する結晶質のものと非晶質のものがあるが、いずれも好ましく用いることができる。
【0022】
(B)アミン化合物
アミン化合物は、好ましくは、ヒドラジン系化合物又はアミノグアニジン塩である。これらの化合物は、アルデヒド系ガスと反応することから、アルデヒド系ガスに対する消臭効果に優れる。ヒドラジン系化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジドが例示され、アミノグアニジン塩としては、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩、アミノグアニジン重炭酸塩等が例示される。尚、これらのアミン化合物は、担体に担持された消臭剤を構成することができる。この場合の担体は、通常、無機化合物であり、具体的には、後述されるゼオライト、非晶質複合酸化物や、シリカゲル等が例示される。尚、ゼオライト及び非晶質複合酸化物は、いずれも、塩基性ガスに対する消臭効果を有するので、これらを担体として用いた場合には、アルデヒド系ガス及び塩基性ガスの両方に対して有効である。
【0023】
(C)ゼオライト
ゼオライトは、好ましくは、合成ゼオライトである。上記ゼオライトは、水に対して不溶性又は難溶性であり、塩基性ガスに対する消臭効果に優れる。ゼオライトの構造は、多様であるが、公知のゼオライトは、いずれも使用でき、構造としては、A型、X型、Y型、α型、β型、ZSM−5、アモルファス等がある。
【0024】
(D)非晶質複合酸化物
非晶質複合酸化物は、上記ゼオライト以外の化合物であり、好ましくは、Al
2O
3、SiO
2、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、ZrO
2、TiO
2、WO
2、CeO
2、Li
2O、Na
2O、K
2O等から選ばれた少なくとも2種により構成される非晶質の複合酸化物である。この複合酸化物は、水に対して不溶性又は難溶性であり、塩基性ガスに対する消臭効果に優れる。X
2O−Al
2O
3−SiO
2(Xは、Na、K、及びLiから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子)で示される非晶質複合酸化物が、消臭性能に優れることから、特に好ましい。非晶質であることは、粉末X線回折測定を行ったときに、結晶面に基づく明らかな回折シグナルが認められないことを意味し、具体的には、横軸に回折角、縦軸に回折シグナル強度をプロットしたX線回折チャートに、尖度の高い(いわゆるシャープな)シグナルピークがほとんど現れないものである。
【0025】
(E)Ag、Cu、Zn及びMnから選ばれる原子の少なくとも1種を含有する複合物
この複合物は、水に対して不溶性又は難溶性の複合物であり、硫黄系ガスに対する消臭効果に優れる。この複合物は、Ag、Cu、Zn及びMnから選ばれる原子の少なくとも1種、並びに、該原子を含有する化合物、から選ばれた少なくとも1種と、他の材料とからなる複合材料である。Ag、Cu、Zn及びMnのうちの少なくとも1種の原子を含有する化合物は、好ましくは、酸化物、水酸化物、リン酸、硫酸等の無機酸の塩、酢酸、蓚酸、アクリル酸等の有機酸の塩である。従って、この消臭剤(E)として、Ag、Cu、Zn及びMnから選ばれた少なくとも1種の金属、又は、上記化合物を、他の材料としての無機化合物からなる担体に担持させた、水に不溶性の複合物を用いることができる。担体として好ましい無機化合物は、シリカ、4価金属のリン酸塩、ゼオライト等である。尚、4価金属のリン酸塩及びゼオライトは、塩基性ガスに対する消臭効果を有するので、4価金属のリン酸塩及びゼオライトを担体として用いた場合には、硫黄系ガス及び塩基性ガスの両方に対して有効である。
【0026】
(F)ジルコニウム化合物
ジルコニウム化合物は、水和酸化ジルコニウム及び酸化ジルコニウムであり、好ましくは、非晶質化合物である。これらの化合物は、水に対して不溶性又は難溶性であり、酸性ガスに対する消臭効果に優れる。水和酸化ジルコニウムは、オキシ水酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、含水酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム水和物と同義の化合物である。
【0027】
(G)ハイドロタルサイト系化合物
ハイドロタルサイト系化合物は、ハイドロタルサイト構造を有し、好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物である。この化合物は、水に対して不溶性又は難溶性であり、酸性ガスに対する消臭効果に優れる。
M
1(1−x)M
2x(OH)
2A
n−(x/n)・mH
2O (2)
(式中、M
1は2価の金属原子であり、M
2は3価の金属原子であり、xは0より大きく0.5以下の数であり、A
n−は炭酸イオン、硫酸イオン等のn価の陰イオンであり、mは正の整数である。)
上記ハイドロタルサイト系化合物としては、マグネシウム−アルミニウムハイドロタルサイト、亜鉛−アルミニウムハイドロタルサイト等が挙げられる。これらのうち、酸性ガスに対して、より優れた消臭効果を有することから、マグネシウム−アルミニウムハイドロタルサイトが特に好ましい。尚、ハイドロタルサイトの焼成物、即ち、ハイドロタルサイト化合物を約500℃以上の温度で焼成し、炭酸根や水酸基が脱離することにより得られる化合物もハイドロタルサイト系化合物に含まれる。
【0028】
(H)非晶質活性酸化物
この非晶質活性酸化物は、上記非晶質複合酸化物を含まない化合物であり、好ましくは、水に対して不溶性又は難溶性であり、酸性ガス又は硫黄系ガスに対する消臭効果に優れる。非晶質活性酸化物としては、具体的には、Al
2O
3、SiO
2、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、CuO、MnO、ZrO
2、TiO
2、WO
2、CeO
2等が挙げられる。また、表面処理された活性酸化物を用いることもできる。表面処理物の具体例としては、オルガノポリシロキサンで表面処理した活性酸化物、アルミニウム、珪素、ジルコニウム又はスズの酸化物あるいは水酸化物で表面を被覆した活性酸化物が挙げられる。オルガノポリシロキサン等の有機系材料で表面処理する方が無機系材料で表面処理するよりも、消臭性能が高いので好ましい。
【0029】
本発明における化学吸着型消臭剤の形状は、特に限定されない。尚、化学吸着型消臭剤の大きさについては、これが粒状物の場合、レーザー回折式粒度分布測定機で測定したメジアン径は、消臭効率の観点から、好ましくは0.05〜100μm、より好ましくは0.1〜50μm、更に好ましくは0.2〜30μmである。化学吸着型消臭剤が大きすぎると、表出する化学吸着型消臭剤の単位質量あたりの表面積が小さく、十分な消臭効果が得られない場合や、所望の目付量を設定した際に十分な通気度が得られない場合がある。
また、化学吸着型消臭剤は、悪臭成分と接触する効率が高いほど、優れた消臭効果も得られることから、比表面積は、好ましくは10〜800m
2/g、より好ましくは30〜600m
2/gである。比表面積は、窒素吸着量から算出するBET法により測定することができる。
【0030】
本発明の消臭フィルターを構成する消臭繊維層において、単位面積あたりの化学吸着型消臭剤の含有量は、多い方が好ましい。しかし、含有量が多くなるにつれて、消臭フィルターの通気度が下がり、コストは上昇するため、通常、これを考慮して、含有量が決められる。化学吸着型消臭剤1種あたりの消臭繊維層における含有量は、好ましくは1g/m
2以上、より好ましくは3g/m
2以上、更に好ましくは5g/m
2以上である。また、2種以上の化学吸着型消臭剤を含む場合の合計含有量は、好ましくは2g/m
2以上、より好ましくは6g/m
2以上、更に好ましくは10g/m
2以上である。
【0031】
本発明において、優れた消臭効果が得られる消臭繊維層の好ましい態様は、この消臭繊維層を構成する繊維の質量を100質量部とした場合に、化学吸着型消臭剤の含有割合を、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜50質量部、更に好ましくは10〜40質量部とするものである。
【0032】
上記のように、消臭繊維層の構成は、化学吸着型消臭剤が繊維の表面に埋設されている態様であってよいし、繊維及び化学吸着型消臭剤が接着層を介して接合している態様であってもよい。後者の場合、接着層の構成材料(バインダー樹脂)としては、天然樹脂、天然樹脂誘導体、フェノール樹脂、キシレン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂、クマロン・インデン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、環化ゴム、塩素化ゴム、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、塩素化ポリプロピレン、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、セルロース誘導体等が挙げられる。これらのうち、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂及びポリビニルアルコールが好ましい。尚、上記バインダー樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
上記接着層を備える消臭フィルターにおいて、消臭効果を向上させるために、消臭繊維層における単位面積あたりの化学吸着型消臭剤量を増やすと、一般的に、化学吸着型消臭剤を接合するためのバインダー樹脂の使用量も増え、消臭繊維層を構成する繊維間に埋没し、消臭フィルターの通気性を低下させる。更に、バインダー樹脂に埋もれてしまう化学吸着型消臭剤の量が増えて悪臭ガスに含まれる悪臭成分と接触することができず、消臭剤の含有量の増加に伴い期待されるはずの消臭効果が得られない。そこで、通気性を低下させることなく、化学吸着型消臭剤による消臭効果を十分に発現させるために、本発明の消臭フィルターにおいては、消臭繊維層の厚さ及び目付量が特定の範囲にあり、消臭フィルターの通気度も特定の範囲にある。
【0034】
本発明の消臭フィルターにおける消臭繊維層の厚さは、0.3mm以上であれば、十分な消臭効果を得ることができるが、後述する分野における実用性の観点から、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.2mmである。この消臭繊維層の厚さは、後述する多層型消臭繊維層の場合も同じである。また、上記消臭繊維層の目付量は、十分な消臭効果及び通気性が得られることから、30〜100g/m
2であり、好ましくは35〜90g/m
2、より好ましくは40〜85g/m
2である。この消臭繊維層の目付量は、後述する多層型消臭繊維層の場合も同じである。上記消臭繊維層の厚さが0.3〜1.5mmであり、目付量が30〜100g/m
2である場合、高い通気性を有する一方で、悪臭成分が化学吸着型消臭剤に十分に吸着され、悪臭ガスに対する優れた消臭性能を得ることができる。
消臭フィルターに高い通気性を備え、且つ、高い消臭性能を発現させるためには、消臭繊維層の厚さ及び目付量のバランスが重要であり、このようなバランスは、本発明により、初めて達成されたものである。
上記消臭繊維層の通気度は、効率よい消臭効果が得られることから、好ましくは50〜350cm
3/(cm
2・s)、より好ましくは100〜350cm
3/(cm
2・s)、更に好ましくは170〜300cm
3/(cm
2・s)である。
本発明において、厚さが0.3mm未満の消臭繊維層では、十分な消臭効果が得られない。
【0035】
また、消臭繊維層の目付量が30g/m
2以下の場合、消臭繊維層の通気度が高くなりすぎるため、悪臭ガス中の悪臭成分が化学吸着型消臭剤と接触せず、悪臭ガスの大部分が消臭繊維層を通過してしまい、消臭効果は低下する。一方、目付量が100g/m
2以上では、消臭繊維層の通気度が大きく低下し、気体が、消臭フィルターの1面側から他面側に対して円滑に流れなくなる。
【0036】
本発明の消臭フィルターは、
図1、
図2又は
図3で表される断面構造を備えることができる。消臭繊維層は、1種又は2種以上の化学吸着型消臭剤を含む複合繊維を含む繊維集合体からなる単層であってよいし、該繊維集合体の2以上を用いた複層であってもよい。また、1の化学吸着型消臭剤を含む複合繊維と、他の(1種又は2種以上の)化学吸着型消臭剤を含む(1種又は2種以上の)複合繊維とを含む繊維集合体からなる層であってもよい。尚、図示していないが、各図で表される消臭繊維層10は、1の化学吸着型消臭剤を含む繊維層と、他の化学吸着型消臭剤を含む繊維層とからなる多層型消臭繊維層であってもよい。また、
図2及び
図3に示されるように、一部が消臭繊維層10である断面構造を備える消臭フィルターは、消臭繊維層10と、必要により消臭以外の機能(防塵、消臭繊維層の保護等)を有する繊維層(消臭繊維層10を構成する繊維と同一又は異なる繊維を含み、1面側から他面側に通気性を有する繊維層であり、以下、「他の繊維層」という)との積層型消臭フィルターとすることができる。他の繊維層は、織布及び不織布のいずれからなるものであってもよい。また、他の繊維層の目付量は、特に限定されない。他の繊維層の通気度は、好ましくは、消臭繊維層10のそれより高いことである。尚、他の繊維層の数は、1又は2以上とすることができる。他の繊維層の厚さは、特に限定されない。
【0037】
本発明の消臭フィルターに係る通気性については、通気度が低い場合に、悪臭ガスに含まれる悪臭成分と、消臭繊維層に含まれる化学吸着型消臭剤との接触効率が高くなる傾向にあるため、高い消臭効果が得られやすくなるが、フィルターの性能としては通気度が高い方が好ましい。しかしながら、通気度が高すぎると、悪臭ガスが消臭繊維層における空隙を通り抜けて、化学吸着型消臭剤が悪臭成分を効率よく吸着できず、消臭性能が低下する。従って、高い消臭効果を発現させるための消臭フィルターの通気度は、50〜350cm
3/(cm
2・s)であり、好ましくは100〜350cm
3/(cm
2・s)、より好ましくは170〜300cm
3/(cm
2・s)である。
【0038】
本発明の消臭フィルターは、上記構成を形成すべく、様々な方法により製造することができ、以下に、例示される。
(1)化学吸着型消臭剤を含まない繊維からなる織布又は不織布の全体に、化学吸着型消臭剤とバインダー樹脂とを含む消臭剤組成物を塗布(浸漬、スプレー、パディング等)した後、乾燥し、織布又は不織布を構成する繊維の表面に、化学吸着型消臭剤を接着させ、実質的に、消臭繊維層からなる消臭フィルターを製造する方法
(2)化学吸着型消臭剤を含まない繊維からなる織布又は不織布の全体に、化学吸着型消臭剤とバインダー樹脂とを含む消臭剤組成物を塗布(浸漬、スプレー、パディング等)した後、乾燥し、織布又は不織布を構成する繊維の表面に、化学吸着型消臭剤を接着させ、消臭繊維層用のシートを作製し、このシートと、化学吸着型消臭剤を含まない他の繊維からなる織布又は不織布とを接合(バインダー樹脂の利用、交絡処理等)して、消臭繊維層と他の繊維層とからなる多層型消臭フィルターを製造する方法
(3)化学吸着型消臭剤を含まない繊維からなる織布又は不織布の断面の一部(1面側表層又は内部のみ)に、化学吸着型消臭剤とバインダー樹脂とを含む消臭剤組成物を塗布(浸漬、スプレー、パディング等)した後、乾燥し、織布又は不織布を構成する繊維の表面に、化学吸着型消臭剤を接着させ、消臭繊維層と、化学吸着型消臭剤を含まない繊維層とからなる消臭フィルターを製造する方法
(4)化学吸着型消臭剤が、表出するように、繊維の基部表面に埋設された複合繊維からなる織布又は不織布を用いて、必要により、交絡処理(ニードルパンチ法等)に供して、実質的に、消臭繊維層からなる消臭フィルターを製造する方法
(5)化学吸着型消臭剤が、表出するように、繊維の基部表面に埋設された複合繊維からなる織布又は不織布と、化学吸着型消臭剤を含まない他の繊維からなる織布又は不織布とを接合(バインダー樹脂の利用、交絡処理等)して、消臭繊維層と他の繊維層とからなる多層型消臭フィルターを製造する方法
(6)化学吸着型消臭剤を含まない繊維からなる織布又は不織布の該繊維に、化学吸着型消臭剤を接触させた状態で、熱処理又は化学処理を行い、化学吸着型消臭剤を繊維の表面に定着させ、実質的に、消臭繊維層からなる消臭フィルターを製造する方法
本発明においては、(1)の展着加工法が特に好ましい。
【0039】
上記方法(1)等における消臭剤組成物に含まれる化学吸着型消臭剤及びバインダー樹脂は、既述の通りである。特に、上記消臭剤組成物に含まれる化学吸着型消臭剤のメジアン径は、円滑な展着加工ができることから、好ましくは0.05〜100μmである。尚、メジアン径が小さいほど、単位質量あたりの表面積が大きくなり、消臭効率に優れ、展着加工がしやすく、更に加工後の脱落等も発生し難いため好ましいが、メジアン径が0.05μm未満の化学吸着型消臭剤を用いると、化学吸着型消臭剤が接着層の内部に埋もれて、表出しない不具合や、展着加工の際に化学吸着型消臭剤が二次凝集を起こし、織布又は不織布の表面でダマが形成され、加工後に脱落する不具合を招く。尚、化学吸着型消臭剤のメジアン径は、より好ましくは0.1〜50μm、更に好ましくは0.2〜30μmである。
【0040】
尚、化学吸着型消臭剤の種類によっては、消臭繊維層において近接併存することで消臭効果が低減することもあるため、複数の化学吸着型消臭剤を定着させる場合には、複数の化学吸着型消臭剤を含む消臭剤組成物を調製した後、そのまま、展着加工に用いるか、1種のみの化学吸着型消臭剤を含有する消臭剤組成物を、複数調製した後、別々に用いて、展着加工するか、を選択して行う必要がある。また、化学吸着型消臭剤と、活性炭のような物理吸着型消臭剤とを含有する消臭剤組成物を用いて、展着加工することもできる。
【0041】
バインダー樹脂と化学吸着型消臭剤とを配合した消臭剤組成物を用いる場合、化学吸着型消臭剤に対するバインダー樹脂の比率が高いほど、化学吸着型消臭剤の固定力が高まって化学吸着型消臭剤の脱落が抑制される点では好ましい。その一方で、バインダー樹脂の比率が低いほど、化学吸着型消臭剤を表出させやすく、その結果、化学吸着型消臭剤が悪臭ガスに含まれる悪臭成分と接触しやすくなり、優れた消臭効果が得られる。従って、化学吸着型消臭剤を効率よく表出させて、優れた消臭効果を得るために、バインダー樹脂及び化学吸着型消臭剤の含有割合は、バインダー樹脂及び化学吸着型消臭剤の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%の範囲であり、より好ましくは20〜50質量%及び50〜80質量%の範囲である。
【0042】
上記消臭剤組成物には、バインダー樹脂の種類に応じた添加剤を加えることにより、消臭性能以外の作用を付与させたり、展着加工性の向上等を図ることができる。添加剤としては、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、界面活性剤、顔料、染料、芳香剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、化学吸着型消臭剤の消臭効果の低下や消臭不織布の通気性に影響を及ぼさないように、適宜、選択する必要がある。
【0043】
上記消臭剤組成物を調製する場合には、無機粉末等の一般的な分散方法を適用することができる。例えば、バインダー樹脂のエマルションに分散剤等のバインダー樹脂用の添加剤を加え、更に化学吸着型消臭剤を添加し、サンドミル、ディスパー、ボールミル等を用いて攪拌し、混合・分散させればよい。この調製方法であれば、消臭剤組成物中の化学吸着型消臭剤の固形分濃度が高いほど、バインダー組成物の粘度が上がってハンドリングは難しくなる一方、塗膜の乾燥を効率的に進めることができる。そのため、消臭剤組成物中の化学吸着型消臭剤の固形分濃度としては5〜30質量%が好ましい。消臭剤組成物の粘度を調節するために、消臭性能に影響を与えない範囲で、粘度調整剤等を用いることもできる。
【0044】
化学吸着型消臭剤を含有する消臭剤組成物による、基材(織布又は不織布)への展着加工方法は、上記の通りである。浸漬法の例としては、室温静置法、加熱撹拌法等が挙げられる。パディング法としては、パッドドライ法、パッドスチーム法等が挙げられる。得られた塗膜付き基材は、乾燥して、消臭剤組成物の媒体を適宜除去することにより、バインダー樹脂が機能を発揮して、化学吸着型消臭剤が基材を構成する繊維の表面に接着される。この時の乾燥温度は、特に制限はないが、消臭剤組成物が、例えば、エマルション組成物である場合には、好ましくは50℃〜150℃程度、より好ましくは80℃〜130℃程度とする。好ましい乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、2分〜12時間、より好ましくは5分〜2時間である。このような条件で乾燥することによって、表出した化学吸着型消臭剤を、基材を構成する繊維の表面に効率よく定着させることができる。
【0045】
消臭剤組成物を用いて、本発明の消臭フィルターを製造する場合には、化学吸着型消臭剤を、均一に基材を構成する繊維の表面に接合させるため、また、通気性と厚みの設定を容易とするために、基材として、ニードルパンチ法により製造された不織布、サーマルボンド法により製造された不織布又はスパンボンド法により製造された不織布を用いることが好ましい。
【0046】
また、多層型消臭繊維層を備える消臭フィルターは、複数の基材のそれぞれに対して消臭剤組成物の塗布及び乾燥を行った後、積層して一体化させることにより、製造することができる。この場合、それぞれの基材に、異なる化学吸着型消臭剤を加工しても良い。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0048】
化学吸着型消臭剤のメジアン径は、レーザー回折式粒度分布を用いて体積基準により測定した。消臭フィルターの通気度は、JIS L1096:2010に規定されたフラジール形法により測定した。単位はcm
3/(cm
2・s)である。消臭フィルターの厚さは、JIS L1096:2010に規定された方法により、尾崎製作所社製膜厚計「ピーコックNo.25」(商品名)にて測定した。単位はmmである。消臭フィルターの目付量は、標準状態における1m
2あたりの質量(g/m
2)で表し、JIS L1096:2010に規定された方法により測定した。
【0049】
消臭試験は、予め、所定の濃度の悪臭成分を含むように調製した悪臭ガスを、消臭フィルターの1面側から他面側へ通過させることにより実施した。具体的には、袋に収容した悪臭ガスを、ガステック社製気体採取器「MODEL GV−100」(型式名)を用いて吸引させつつ、経路にて面積5cm
2の消臭フィルターを通過させた後、気体検知管により通過ガス中の悪臭成分の濃度を測定した。
悪臭ガスとして、6段階臭気強度表示法に基づく臭気強度5に相当する、アンモニア(40ppm)、酢酸(1.9ppm)又はアセトアルデヒド(10ppm)を含むガス、並びに、臭気強度5の20倍に相当するメチルメルカプタン(4ppm)を含むガスを通気させた。そして、通気後、それぞれの悪臭成分に対応するガス検知管(アンモニア用気体検知管:No.3L、酢酸用気体検知管:No.81L、アセトアルデヒド用気体検知管:No.92L、メチルメルカプタン用気体検知管:No.70L)を用いて通過ガス中の各悪臭成分の濃度を測定し、以下の式により悪臭成分低減率を求めた。
悪臭成分低減率=[(通気前悪臭成分濃度−通気後悪臭成分濃度)/通気前悪臭成分濃度]×100
【0050】
尚、以下の実施例及び比較例で用いた消臭剤(化学吸着型消臭剤等)は、表1に示されるが、各消臭剤の消臭容量を算出するための試験方法は、以下の通りである。
消臭剤0.01gをテドラーバッグに入れ、密封後、臭気強度5の濃度の200倍に相当する、アンモニア(8000ppm)、メチルメルカプタン(40ppm)、酢酸(380ppm)又はアセトアルデヒド(2000ppm)を含むガス2Lを封入し、その24時間後に各悪臭成分の濃度(残存ガス成分濃度)をガス検知管で測定し、以下の式により消臭容量(mL/g)を得た。
消臭容量(mL/g)=[2000(mL)×(初期悪臭ガス成分濃度(ppm)−残存ガス成分濃度(ppm))×10
−6]/0.01(g)
【0051】
【表1】
【0052】
また、以下の実施例及び比較例で製造する消臭フィルター用の基材として、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂を含む不織布がニードルパンチ法により交絡処理された不織布シート1、又は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む不織布がサーマルボンド法により製造された不織布シート2を用いた。
【0053】
実施例1(消臭フィルターF1の製造及び評価)
表1に示した、リン酸ジルコニウム、及び、CuO・SiO
2複合物からなる消臭剤と、不織布シート1とを用いた。一方、これらの消臭剤を展着させるため、リン酸ジルコニウムが6部、CuO・SiO
2複合物が6部、及びポリエステル系バインダーの樹脂固形分が6部の質量比率になるように、リン酸ジルコニウム粉末、CuO・SiO
2複合物粉末及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W1を調製した。この消臭剤含有加工液W1を、不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が6g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が6g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF1を作製した。次いで、この消臭フィルターF1の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0054】
実施例2(消臭フィルターF2の製造及び評価)
実施例1で示した消臭剤含有加工液W1を、不織布シート2に、リン酸ジルコニウムの展着量が3g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が3g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターを2枚準備し、これらを積層して消臭フィルターF2を作製した。次いで、この消臭フィルターF2の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0055】
実施例3(消臭フィルターF3の製造及び評価)
実施例1で示した消臭剤含有加工液W1を、実施例1及び2と異なる目付量、厚さの不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が3g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が3g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF3を作製した。次いで、この消臭フィルターF3の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0056】
実施例4(消臭フィルターF4の製造及び評価)
実施例1で示した消臭剤含有加工液W1を、実施例1〜3と異なる目付量、厚さの不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が8g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が8g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF4を作製した。次いで、この消臭フィルターF4の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0057】
実施例5(消臭フィルターF5の製造及び評価)
表1に示した、ケイ酸アルミニウム、及び、含水酸化ジルコニウムからなる消臭剤と、不織布シート1とを用いた。一方、これらの消臭剤を展着させるため、ケイ酸アルミニウムが6部、含水酸化ジルコニウムが5部、及びポリエステル系バインダーの樹脂固形分が5.5部の質量比率になるように、ケイ酸アルミニウム粉末、含水酸化ジルコニウム粉末及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W2を調製した。この消臭剤含有加工液W2を、不織布シート1に、ケイ酸アルミニウムの展着量が6g/m
2、含水酸化ジルコニウムの展着量が5g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF5を作製した。次いで、この消臭フィルターF5の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0058】
実施例6(消臭フィルターF6の製造及び評価)
表1に示した、リン酸ジルコニウム、CuO・SiO
2複合物、及び、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルからなる消臭剤と、不織布シート1とを用いた。一方、これらの消臭剤を展着させるため、リン酸ジルコニウムが6部、CuO・SiO
2複合物が6部、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルが4部、及びポリエステル系バインダーの樹脂固形分が8部の質量比率になるように、リン酸ジルコニウム粉末、CuO・SiO
2複合物粉末、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲル粉末、及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W3を調製した。この消臭剤含有加工液W3を、不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が6g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が6g/m
2、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルの展着量が4g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF6を作製した。次いで、この消臭フィルターF6の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0059】
実施例7(消臭フィルターF7の製造及び評価)
表1に示した、ケイ酸アルミニウム、及び、活性酸化亜鉛からなる消臭剤と、不織布シート1とを用いた。一方、これらの消臭剤を展着させるため、ケイ酸アルミニウムが6部、活性酸化亜鉛が5部、及びポリエステル系バインダーの樹脂固形分が5.5部の質量比率になるように、ケイ酸アルミニウム粉末、活性酸化亜鉛粉末及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W4を調製した。この消臭剤含有加工液W4を、不織布シート1に、ケイ酸アルミニウムの展着量が6g/m
2、活性酸化亜鉛の展着量が5g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF7を作製した。次いで、この消臭フィルターF7の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0060】
参考例
1(消臭フィルターF8の製造及び評価)
表1に示した、含水酸化ジルコニウム、及び、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルからなる消臭剤と、不織布シート1とを用いた。一方、これらの消臭剤を展着させるため、含水酸化ジルコニウムが5部、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルが4部、及びポリエステル系バインダーの樹脂固形分が4.5部の質量比率になるように、含水酸化ジルコニウム粉末、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲル粉末及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W5を調製した。この消臭剤含有加工液W5を、不織布シート1に、含水酸化ジルコニウムの展着量が5g/m
2、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルの展着量が4g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF8を作製した。次いで、この消臭フィルターF8の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0061】
実施例9(消臭フィルターF9の製造及び評価)
表1に示した、アモルファスゼオライト、及び、ハイドロタルサイトからなる消臭剤と、不織布シート1とを用いた。一方、これらの消臭剤を展着させるため、アモルファスゼオライトが6部、ハイドロタルサイトが5部、及びポリエステル系バインダーの樹脂固形分が5.5部の質量比率になるように、アモルファスゼオライト粉末、ハイドロタルサイト粉末及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W6を調製した。この消臭剤含有加工液W6を、不織布シート1に、アモルファスゼオライトの展着量が6g/m
2、ハイドロタルサイトの展着量が5g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF9を作製した。次いで、この消臭フィルターF9の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0062】
実施例10(消臭フィルターF10の製造及び評価)
表1に示した、リン酸ジルコニウム、CuO・SiO
2複合物、及び、含水酸化ジルコニウムからなる消臭剤と、不織布シート1とを用いた。一方、これらの消臭剤を展着させるため、リン酸ジルコニウムの含有量が6部、CuO・SiO
2複合物が6部、含水酸化ジルコニウムが5部、及びポリエステル系バインダーの樹脂固形分が8.5部の質量比率になるように、リン酸ジルコニウム粉末、CuO・SiO
2複合物粉末、含水酸化ジルコニウム粉末、及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W7を調製した。この消臭剤含有加工液W7を、不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が6g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が6g/m
2、含水酸化ジルコニウムの展着量が5g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF10を作製した。次いで、この消臭フィルターF10の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0063】
実施例11(消臭フィルターF11の製造及び評価)
表1に示した、ケイ酸アルミニウム、活性酸化亜鉛、及び、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルからなる消臭剤と、不織布シート1とを用いた。一方、これらの消臭剤を展着させるため、ケイ酸アルミニウムが6部、活性酸化亜鉛が5部、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルが4部、及びポリエステル系バインダーの樹脂固形分が7.5部の質量比率になるように、ケイ酸アルミニウム粉末、活性酸化亜鉛粉末、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲル粉末、及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W8を調製した。この消臭剤含有加工液W8を、不織布シート1に、ケイ酸アルミニウムの展着量が6g/m
2、活性酸化亜鉛の展着量が5g/m
2、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルの展着量が4g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF11を作製した。次いで、この消臭フィルターF11の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表2に記載した。
【0064】
比較例1(消臭フィルターF21の製造及び評価)
実施例1で示した消臭剤含有加工液W1を、実施例1〜4と異なる目付量、厚さの不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が6g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が6g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF21を作製した。次いで、この消臭フィルターF21の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表3に記載した。
【0065】
比較例2(消臭フィルターF22の製造及び評価)
実施例1で示した消臭剤含有加工液W1を、実施例1〜4及び比較例1と異なる目付量、厚さの不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が6g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が6g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF22を作製した。次いで、この消臭フィルターF22の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表3に記載した。
【0066】
比較例3(消臭フィルターF23の製造及び評価)
実施例6で示した消臭剤含有加工液W3を、実施例6と異なる目付量、厚さの、不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が6g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が6g/m
2、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルの展着量が4g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF23を作製した。次いで、この消臭フィルターF23の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表3に記載した。
【0067】
比較例4(消臭フィルターF24の製造及び評価)
実施例6で示した消臭剤含有加工液W3を、実施例6及び比較例3と異なる目付量、厚さの不織布シート1に、リン酸ジルコニウムの展着量が6g/m
2、CuO・SiO
2複合物の展着量が6g/m
2、アジピン酸ジヒドラジド30%担持シリカゲルの展着量が4g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF24を作製した。次いで、この消臭フィルターF24の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表3に記載した。
【0068】
比較例5(消臭フィルターF25の製造及び評価)
実施例9で示した消臭剤含有加工液W6を、不織布シート1に、アモルファスゼオライトの展着量が6g/m
2、ハイドロタルサイトの展着量が5g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF25を作製した。次いで、この消臭フィルターF25の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表3に記載した。
【0069】
比較例6(消臭フィルターF26の製造及び評価)
活性炭と、不織布シート1とを用いた。一方、この活性炭を展着させるため、活性炭が12部、ポリエステル系バインダーの樹脂固形分が6部の質量比率になるように、活性炭粉末及びポリエステル系バインダー分散液を用いて、固形分濃度が10%の消臭剤含有加工液W9を調製した。この消臭剤含有加工液W9を、不織布シート1に、活性炭の展着量が12g/m
2となるように、均一に塗布した後、乾燥して、消臭剤が1面側から他面側に均一に接着された消臭フィルターF26を作製した。次いで、この消臭フィルターF26の悪臭成分低減率、目付量、厚さ及び通気度を測定し、その結果を表3に記載した。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
表2及び表3から、以下のことが分かる。実施例1〜11のすべてにおいて、悪臭成分低減率90%以上の高い消臭性能を示した。一方、比較例1は、消臭フィルターの通気度が高すぎる例であり、消臭性能が劣る。また、比較例2は、消臭フィルターの通気度が低すぎ、且つ、消臭繊維層(消臭フィルター)の厚さが薄すぎる例であり、消臭性能が劣る。比較例3は、消臭繊維層(消臭フィルター)の厚さが薄すぎる例であり、消臭性能が劣る。比較例4は、消臭フィルターの目付量が高すぎ、且つ、通気度が低すぎる例であり、消臭性能が十分ではなく、通気度が低すぎるため、フィルターとして機能を果たさない。比較例5は、消臭フィルターの目付量が低すぎ、且つ、通気度が高すぎる例であり、消臭性能が劣る。比較例6は化学吸着型消臭剤ではなく、物理吸着型消臭剤を加工した消臭フィルターの例であり、消臭性能は劣る。以上より、高い消臭性能を得るためには、特定の厚さ及び目付量を有する消臭繊維層に化学吸着型消臭剤を用い、消臭フィルターが特定の通気度を備えることが必要となる。
【0073】
以下の実施例12及び比較例7では、10ppmのメチルメルカプタンガスを用いて、消臭フィルターの消臭効果の持続性を評価した。
【0074】
実施例12
実施例1で製造した消臭フィルターF1に、2分おきに上記メチルメルカプタンガスを通気させ、上記と同様にして、通気後の各回における悪臭成分低減率を算出して、消臭効果の持続性を評価した。その結果を
図4に記載した。
【0075】
比較例7
消臭フィルターF1に代えて、比較例6で製造した消臭フィルターF26を用いた以外は、実施例12と同様にして評価した。その結果を
図4に記載した。
【0076】
図4から明らかなように、消臭フィルターF26を用いた比較例7では、15回の繰り返し試験後に、悪臭成分低減率が0%になったのに対して、消臭フィルターF1を用いた実施例12では、28回の繰り返し試験まで悪臭成分低減率80%以上を維持し、消臭効果の高い持続性を示した。