特許第6445481号(P6445481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445481
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】可動体用給電構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/02 20060101AFI20181217BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20181217BHJP
   B60J 7/057 20060101ALI20181217BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H02G11/02
   B60R16/02 620A
   B60J7/057 C
   B60N2/06
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-63415(P2016-63415)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-184303(P2017-184303A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】桂巻 隆彦
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−213399(JP,A)
【文献】 特開平09−259647(JP,A)
【文献】 実開昭60−142123(JP,U)
【文献】 特開平10−203735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/02
B60J 7/057
B60N 2/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に固定されたレール部材と、前記レール部材に沿って移動するスライダと、前記スライダに支持された可動体とを備え、前記固定部と前記可動体の一方から他方への給電を行う可動体用給電構造において、
一端が前記固定部側に接続され、他端が前記可動体側に接続された電線と、
前記電線の余長箇所を巻き取る余長吸収機構とを備え、
前記余長吸収機構は、前記レール部材に沿って移動自在に配置されていると共に、
前記余長吸収機構は、ケースと、前記ケース内に収容された回転体とを有し、
前記回転体は、前記ケースの内周壁に回転自在にガイドされる回転ガイド円周壁と、前記回転ガイド円周壁に連結された電線巻き取り部とを有し、
前記電線巻き取り部は、前記可動体側の前記電線と前記固定部側の前記電線を共に巻き取るよう構成され、
前記回転ガイド円周壁の内周スペースには、前記回転体を前記可動体側の前記電線と前記固定部側の前記電線を共に巻き付け方向に付勢する付勢手段が配置されていることを特徴とする可動体用給電構造。
【請求項2】
請求項1記載の可動体用給電構造であって、
前記電線巻き取り部には、前記可動体側の前記電線と前記固定部側の前記電線が180度対向位置で固定されていることを特徴とする可動体用給電構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の可動体用給電構造であって、
前記余長吸収機構は、前記ケースには前記レール部材に摺動する摺動部と、前記ケースから前記可動体側の前記電線を引き出す第1電線口と、前記ケースから前記固定部側の前記電線を引き出す第2電線口とが設けられ、
前記第1電線口と前記第2電線口が、前記摺動部に対して同じ高さ位置に配置されていることを特徴とする可動体用給電構造。
【請求項4】
請求項3に記載の可動体用給電構造であって、
前記第1電線口と前記第2電線口は、前記回転体の回転中心の高さ位置に配置されていることを特徴とする可動体用給電構造。
【請求項5】
請求項3に記載の可動体用給電構造であって、
前記第1電線口と前記第2電線口は、前記摺動部と同じ高さ位置に配置されていることを特徴とする可動体用給電構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の可動体用給電構造であって、
前記可動体は、サンルーフであることを特徴とする可動体用給電構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部と可動体の一方から他方に給電を行う可動体用給電構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両には、車体に対して移動する部品(サンルーフ、サンシェード、サイドガラス、シート等の可動体)が搭載される。かかる可動体への電源供給については、種々の構造が従来より提案されている。特許文献1では、図16図19に示すように、フラット電線Wと、固定部側である車体側に固定された第1余長吸収ガイドケース100と、可動体側であるサンルーフ側に固定された第2余長吸収ガイドケース101とを備えている、フラット電線Wは、一端が車体側に接続され、他端がサンルーフ側に接続され、サンルーフの移動に追従できる長さを有する。フラット電線Wには、図19に示すように、曲げられると直線状に戻るように弾性部材102が配置されている。
【0003】
サンルーフの閉位置では、図16に示すように、第1余長吸収ガイドケース100と第2余長吸収ガイドケース101が折り重なる位置となる。この状態では、第1余長吸収ガイドケース100と第2余長吸収ガイドケース101内に、フラット電線Wが折り畳まれるようにして配策される。これによって、フラット電線Wの余長が吸収される。
【0004】
サンルーフの開位置では、図17に示すように、第1余長吸収ガイドケース100と第2余長吸収ガイドケース101が離間する位置となる。この状態では、フラット電線Wがその弾性部材102の直線状に戻る特性より直線状に配策される。
【0005】
サンルーフのチルトアップ位置では、図18に示すように、第2余長吸収ガイドケース101が一端側を持ち上げた状態で、第1余長吸収ガイドケース100と第2余長吸収ガイドケース101が折り重なり合う位置となる。この状態では、図18に示すように、第1余長吸収ガイドケース100と第2余長吸収ガイドケース101内に、フラット電線Wが緩い状態で折り畳まれるようにして配策される。これによって、フラット電線Wの余長が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−151906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来例の可動体用給電構造では、車体側に第1余長吸収ガイドケース100を取り付け、サンルーフ側に第2余長吸収ガイドケース101を取り付ける必要があるため、取り付け作業が面倒であり、構造も大型化するという問題があった。
【0008】
また、前記従来例とは異なり、弾性部材のない汎用性のある電線を使用する構造も考えられるが、更に構造が複雑化する。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、取り付けが簡単で、しかも、コンパクトに構成できる可動体用給電構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固定部に固定されたレール部材と、前記レール部材に沿って移動するスライダと、前記スライダに支持された可動体とを備え、前記固定部と前記可動体の一方から他方への給電を行う可動体用給電構造において、一端が前記固定部側に接続され、他端が前記可動体側に接続された電線と、前記電線の余長箇所を巻き取る余長吸収機構とを備え、前記余長吸収機構は、前記レール部材に沿って移動自在に配置されていると共に、前記余長吸収機構は、ケースと、前記ケース内に収容された回転体とを有し、前記回転体は、前記ケースの内周壁に回転自在にガイドされる回転ガイド円周壁と、前記回転ガイド円周壁に連結された電線巻き取り部とを有し、前記電線巻き取り部は、前記可動体側の前記電線と前記固定部側の前記電線を共に巻き取るよう構成され、前記回転ガイド円周壁の内周スペースには、前記回転体を前記可動体側の前記電線と前記固定部側の前記電線を共に巻き付け方向に付勢する付勢手段が配置されていることを特徴とする可動体用給電構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記可動体が前記余長吸収機構より離れる方向に移動すると、前記付勢手段の付勢力に抗して前記回転体が回転し、前記電線巻き取り部に巻き付けされた前記可動体側の前記電線と前記固定部側の前記電線を共に引き出しつつ前記余長吸収機構が前記可動体側に向かってレール部材に沿って移動し、前記可動体が前記余長吸収機構に近づく方向に移動すると、前記付勢手段の付勢力によって前記回転体が回転し、前記可動体側の前記電線と前記固定部側の前記電線を共に前記電線巻き取り部に巻き取りつつ前記余長吸収機構が前記可動体側から遠ざかろうとする方向にレール部材に沿って移動し、余長が吸収される。
【0012】
そして、余長吸収機構は、スライダが移動するレール部材に取り付ければ良く、余長吸収機構のために別途レール部材を設置する必要がないため、取り付けが簡単である。余長吸収機構には、電線を巻き取る回転体と、回転体を付勢する付勢手段とを設け、これらはいずれも回転中心を中心に配置する構成であるため、構造が簡単である。以上より、取り付けが簡単で、しかも、コンパクトに構成できる可動体用給電構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示し、サンルーフ装置の平面図である。
図2】本発明の一実施形態を示し、サンルーフ装置の要部斜視図である。
図3】本発明の一実施形態を示し、(a)はサンルーフが閉位置に位置する状態を示す概略側面図、(b)はサンルーフがチルトアップ位置に位置する状態を示す概略側面図、(c)はサンルーフが開位置に位置する状態を示す概略側面図である。
図4】本発明の一実施形態を示し、リアスライダとレール部材の断面図(図1のA−A線断面図に相当)である。
図5】本発明の一実施形態を示し、リアスライダとレール部材を上方から見た図である。
図6】本発明の一実施形態を示し、フロントスライダとレール部材を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態を示し、フロントスライダとレール部材の断面図(図1のB−B線断面図に相当)である。
図8】本発明の一実施形態を示し、可動体用給電構造の余長吸収機構の斜視図である。
図9】本発明の一実施形態を示し、余長吸収機構の摺動部の断面図である。
図10】本発明の一実施形態を示し、(a)は大部分の電線が引き出された状態(サンルーフが閉位置、チルト位置)の余長吸収機構の概略断面図、(b)は半分程度の電線が引き出された状態(サンルーフが閉位置と開位置の中間)の余長吸収機構の概略断面図、(c)は大部分の電線が巻き取られた状態(サンルーフが開位置)の余長吸収機構の概略断面図である。
図11】本発明の一実施形態を示し、(a)はレール部材に配置された余長吸収機構の斜視図、(b)はレール部材の最下方(車両後方側)に位置する余長吸収機構の斜視図である。
図12】(a)は余長吸収機構の摺動部の第1変形例を示す断面図、(b)は余長吸収機構の摺動部の第2変形例を示す断面図である。
図13】(a)は余長吸収機構の第1、第2電線口の第1変形例を示す断面図、(b)は余長吸収機構の第1、第2電線口の第2変形例を示す断面図である。
図14】電線の電線巻き取り部への固定位置の変形例を示す断面図である。
図15】(a)は余長吸収機構の第1、第2電線口に拭き取り部を付設した場合を示す平面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
図16】従来例を示し、サンルーフが開位置における、可動体用給電構造の斜視図である。
図17】従来例を示し、サンルーフが閉位置における、可動体用給電構造の斜視図である。
図18】従来例を示し、サンルーフがチルトアップ位置における、可動体用給電構造の斜視図である。
図19】従来例のフラット電線の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1図11には、本発明にかかる可動体用給電構造をサンルーフ装置に適用した一実施形態が示されている。以下、説明する。
【0016】
図3に示すように、固定体である車体1の天井パネル2には、開口部3が設けられている。この開口部3がサンルーフ装置10によって開閉される。
【0017】
サンルーフ装置10は、図1図3等に示すように、開口部3の車幅方向の両側部に配置された一対のレール部材11と、開口部3の車両前部側に配置され、一対のレール部材11の前端にそれぞれ連結された前方フレーム15と、一対のレール部材11に沿って移動する一対のフロントスライダ21、一対のリアスライダ23及び一対のミドルスライダ25と、一対のミドルスライダ25に支持された可動体であるサンルーフ30と、サンルーフ30に移動力を作用させる一対の駆動ベルト40と、駆動ベルト40の移動源であるアクチュエータ49と、ディフレクタ50と、水受け部材60とを備えている。
【0018】
図1図2図4等に示すように、各レール部材11は、例えばアルミニューム合金より形成されている。各レール部材11には、その幅方向にスライドガイド路12とベルトガイド路13と排水路14が配置されている。スライドガイド路12とベルトガイド路13と排水路14は、レール部材11の長手方向に沿って延設されている。
【0019】
車幅方向の左右に位置するベルトガイド路13は、スライドガイド路12の車幅方向の外側に位置する。車幅方向の左右に位置する排水路14は、ベルトガイド路13の車幅方向の外側に位置する。車幅方向の左右に位置する排水路14は、サンルーフ30の左右両側と天井パネル2との各隙間の真下に位置し、上記隙間から落下する水等を受ける。排水路14は、上面側が開放された凹溝形状である。各レール部材11の排水路14の車両後端位置には、排水キャップ18が取り付けられている(図1に示す)。排水キャップ18には、排水ホース(図示せず)が接続される。
【0020】
前方フレーム15は、例えば合成樹脂材より形成されている。前方フレーム15には、2本のベルト配策路16と左右一対の排水路17とが設けられている。各ベルト配策路16は、各レール部材11のベルトガイド路13に連続している。各排水路17は、各レール部材11の排水路14に連続している。前方フレーム15の各排水路17の車両前端位置には、排水キャップ(図示せず)が接続される。排水キャップには、排水ホース(図示せず)が接続される。
【0021】
図1図2図3等に示すように、一対のフロントスライダ21及び一対のリアスライダ23は、車両前後方向FRの同じ位置で左右のレール部材11のスライドガイド路12にスライド自在に配置されている。一対のミドルスライダ25は、その車両前端側に回転支持孔(特に、符号を付さず)を有すると共に長手方向に細長いカム孔25bを有している。各ミドルスライダ25の車両前端側の回転支持孔には、フロントスライダ21の回転ピン21aが挿入されている。各ミドルスライダ25の各細長いカム孔25bには、リアスライダ23のカムピン23aが挿入されている。一対のミドルスライダ25は、一対のフロントスライダ21に対して車両前後方向FRの移動では一体に移動し、一対のリアスライダ23に対してはカムピン23aのカム孔25b内での位置に応じて車両前後方向FR及び車両上下方向TBに移動する。このようなスライダ機構によって、サンルーフ30は、図3(a)に示すように開口部3を塞ぐ閉位置と、図3(b)に示すように開口部3の前方を閉じ、開口部3の後方を開くチルトアップ位置と、図3(c)に示すように開口部3を開放する開位置に変移できる。
【0022】
図1に示すように、サンルーフ30は、一対のミドルスライダ25に取り付けられている。サンルーフ30は、透明なガラス体と調光パネルが少なくとも積層された積層パネル体(特に、符号を付さず)を有する。調光パネルは、電圧が印加されない状態では不透明状態であり、電圧の印加時にはその印加電圧レベルに応じて透明度を可変させる。調光パネルには、車体1側から給電される。この給電構造については、下記で説明する。
【0023】
各駆動ベルト40は、合成樹脂製である。各駆動ベルト40は、長尺状で、断面形状が縦長の長方形である。各駆動ベルト40の一面には、長手方向に連続して歯部40aが設けられている。各駆動ベルト40は、前方フレーム15のベルト配策路16及び一対のレール部材11のベルトガイド路13に配置されている。各駆動ベルト40は、前方フレーム15のベルト配策路16の領域では、ベルトカバー46で、且つ、レール部材11のベルトガイド路13の領域では、ベルト包囲壁(特に、符号を付さず)で容易に座屈(撓み変形)しないように覆われている。これにより、一対の駆動ベルト40は、サンルーフ30を車両前方から後方に押し出すときでも、所定の軌跡でのみ移動するようになっている。
【0024】
一対の駆動ベルト40は、その一端側が一対のリアスライダ23に固定され(一方の駆動ベルト40は、一方のリアスライダ23に、他方の駆動ベルト40は、他方のリアスライダ23に固定され)、その他端側が何の部材にも固定されていない。つまり、自由端とされている。
【0025】
アクチュエータ49(図1に示す)は、前方フレーム15の車両幅方向のほぼ中央位置に固定されている。アクチュエータ49の一対の出力ギア部(図示せず)が一対の駆動ベルト40の歯部40aにそれぞれ噛み合っている。一対の出力ギア部は、互いに逆方向で回転する。これにより、一対の駆動ベルト40は、互いに逆方向に移動し、一対のリアスライダ23は、車両前後方向FRの同位置を同期して移動する。
【0026】
ディフレクタ50は、ディフレクタ本体51とこのディフレクタ本体51の左右両端に回転自在に支持された一対の揺動アーム52とを備えている。ディフレクタ本体51は、天井パネル2の開口部3の前方端で、開口部3の車体幅方向の全域に亘って配置されている。ディフレクタ本体51は、前端側が円弧状に形成されている。これにより、開口部3の開口時にあって、外部からの強い風が開口部3より車室内に直接入り込まないようになっている。
【0027】
一対の揺動アーム52は、一対のレール部材11に回転自在に支持されている。ディフレクタ本体51は、一対の揺動アーム52の移動によって、天井パネル2の開口部3より下方に位置する待機位置(図3(a)、(b)の位置)と開口部3より天井パネル2上に突出する風避け位置(図3(c)の位置)の間で変移自在であり、ねじりバネ53のバネ力によって風避け位置側に付勢されている。ディフレクタ本体51は、フロントスライダ21のスライド軌跡上に位置し、フロントスライダ21が図3(a)の閉位置及び図3(b)のチルトアップ位置では、一対の揺動アーム52がフロントスライダ21からの押圧力を受けてねじりバネ53のバネ力に抗して待機位置に位置する。ディフレクタ本体51は、フロントスライダ21が図3(c)の開位置では、一対の揺動アーム52がフロントスライダ21からの押圧力を受けずにねじりバネ53のバネ力によって風避け位置に位置する。
【0028】
水受け部材60は、開口部3の後端側で、開口部3の車体幅方向の全域に亘って配置されている。水受け部材60は、一対のレール部材11にスライド自在に支持されたスライド部(図示せず)と、このスライド部に支持され、水受け溝(図示せず)を有する水受け本体62と、水受け本体62の車幅方向の両端に固定された一対のアーム部63とを有する。水受け本体62の水受け溝(図示せず)には、一対のレール部材11の排水路14の真上位置に排水口62a(図1に示す)がそれぞれ形成されている。一対のアーム部63の先端は、ミドルスライダ25に回転自在に支持されている。水受け部材60は、ミドルスライダ25の車両前後方向FRの移動及びミドルスライダ25の後端の上下動に追従して移動する。
【0029】
水受け部材60の水受け本体62は、サンルーフ30が図3(a)の閉位置では、開口部3の後端位置に位置し、サンルーフ30と天井パネル2との隙間から落下する水等を受ける。水受け本体62は、サンルーフ30が図3(b)のチルトアップ位置では、開口部3の後端位置に位置し、開口部3より落下する水等を受ける。水受け本体62は、サンルーフ30が図3(c)の開位置の位置では、天井パネル2の内側の退避位置に位置する。水受け本体62で受けた水等は、排水口(図示せず)よりレール部材11の排水路14に落下し、レール部材11の排水路14をその前端又は後端へと流れ、排水キャップ18、(図示せず)を介して排水ホース(図示せず)によって外部に排水される。
【0030】
次に、駆動ベルト40とリアスライダ23の固定構造について説明する。図4図5に詳しく示すように、リアスライダ23は、樹脂ブロック26とこれに嵌合された絶縁製の金属ブラケット27とにより構成されている。樹脂ブロック26の箇所がスライドガイド路12に配置されている。樹脂ブロック26には嵌合突部26aが1箇所、金属ブラケット27には嵌合突部27aが2箇所設けられている。金属ブラケット27の2つの嵌合突部27aは、樹脂ブロック26の嵌合突部26aの車両前後方向FRの両側位置に配置されている。駆動ベルト40の一端側には、各嵌合突部26a,27aに対応する位置に嵌合孔44が開口されている。樹脂ブロック26と金属ブラケット27の嵌合突部26a,27aが駆動ベルト40の各嵌合孔44に嵌合されることによって、駆動ベルト40とリアスライダ23が連結されている。
【0031】
次に、車体1側からサンルーフ30への給電構造について説明する。図1図8等に示すように、可動体用給電構造は、レール部材11に沿って配策されたフラット電線Wと、フラット電線Wの配策経路の途中に配置され、フラット電線Wの余長部分を吸収する余長吸収機構70とを備えている。
【0032】
フラット電線Wは、その一端側のコネクタC1が車体1側のコネクタ(図示せず)に、他端側のコネクタC2がサンルーフ側のコネクタ(図示せず)にそれぞれ接続されている。フラット電線Wは、フレキシブルなフラットケーブルである。フラット電線Wは、絶縁層の外周が更に保護層(図示せず)で被覆されている。
【0033】
余長吸収機構70は、図11に詳しく示すように、各スライダ21,23,25と同様に、一方のレール部材11にスライド自在に配置されている。スライド構造については、下記に説明する。
【0034】
余長吸収機構70は、ケース71と、ケース71内に収容された回転体80と、ケース71内に収容された付勢手段である渦巻きバネ90とを有する。
【0035】
ケース71は、両側面が閉側された大略円筒形であり、互いに組み付けされた2つの分割ケース体72,73より構成されている。分割ケース体72,73は、電線巻き取りケース部74と一対の摺動部75とを有する。分割ケース体72の電線巻き取りケース部74の外周壁には、第1電線口76が設けられている。分割ケース体72の摺動部75には、第2電線口77が設けられている。第1電線口76は、摺動部75に対して高い位置に、第2電線口77は、摺動部75と同じ高さに配置されている。
【0036】
一対の各摺動部75は、図9に詳しく示すように、レール部材11の一対のスライドガイド路12内にそれぞれ配置されている。摺動部75は、レール部材11の長手方向に沿って延びる摺動用突起部75aをそれぞれ有する。この上下の摺動用突起部75aがスライドガイド路12の上下内面が当接している。従って、余長吸収機構70は、レール部材11に対して線接触で摺動する。このように接触面積が小さいために、余長吸収機構70は、レール部材11との間の摺動抵抗が小さくなっている。
【0037】
回転体80は、一体部材により形成されている。回転体80は、分割ケース体72の内周径より若干だけ小さい円周状の回転ガイド円周壁81と、この回転ガイド円周壁81に対して軸方向にシフトした位置に設けられた電線巻き取り部82と、回転ガイド円周壁81と電線巻き取り部82を連結する側壁83とを有する。回転体80は、回転ガイド円周壁85が分割ケース体72の内周壁にガイドされることによって、ケース71(分割ケース体72,73)に回転自在に収容されている。
【0038】
電線巻き取り部82には、電線巻き取り部82の回転中心を通るスリット84が開口している。スリット84は、電線巻き取り部82の180度対向位置に開口している。
【0039】
フラット電線Wは、長さ方向の丁度中間位置でスリット84に挿入され、ここで回転体80に固定されている。スリット84の一方の開口より電線巻き取り部82の外周に導かれたフラット電線Wは、電線巻き取り部82に巻き付け可能とされた状態で第1電線口76よりケース外に引き出されている。第1電線口76よりケース外に引き出されたフラット電線Wは、その端部のコネクタC2が一方側である可動体(サンルーフ)側に接続されている。
【0040】
スリット84の他方の開口より電線巻き取り部82の外周に導かれたフラット電線Wは、電線巻き取り部82に巻き付け可能とされた状態で第2電線口77よりケース外に引き出されている。第2電線口77よりケース外に引き出されたフラット電線Wは、その端部のコネクタC1が車体1(固定部)側に接続されている。
【0041】
渦巻きバネ90は、回転ガイド円周壁81の内周スペースに配置されている。渦巻きバネ90は、その外周端90aが回転体80に掛止され、その内周端90bがケース71に掛止されている。渦巻きバネ90は、サンルーフ(可動体)30側と車体(固定部)1側の双方のフラット電線Wを共に巻き取る方向(図10(a)、(b)のR矢印方向)に回転体80を付勢している。
【0042】
上記構成において、アクチュエータ49が駆動すると、一対の駆動ベルト40がその一端側では車両前後方向FRの同じ位置となるよう移動し、図3に示すような3パターンの位置にサンルーフ30を変移させることができる。
【0043】
サンルーフ30が余長吸収機構70より離れる方向(図11(b)のB矢印方向)に移動すると、前記渦巻きバネ90のバネ力に抗して回転体80が回転し、電線巻き取り部82に巻き付けされたサンルーフ30側のフラット電線Wと車体1側のフラット電線Wを共に引き出しつつ(図10(a)から図10(b)、図10(b)から図10(c)の状態)、余長吸収機構70がサンルーフ30側に向かってレール部材11を移動する。余長吸収機構70は、サンルーフ30側のフラット電線Wと車体1側のフラット電線Wとを同量長さ引き出しつつサンルーフ30の半分の速度で移動する。
【0044】
サンルーフ30が余長吸収機構70に近づく方向(図11(a)のA矢印方向)に移動すると、渦巻きバネ90のバネ力によって回転体80が回転し、図10(b)、(c)のD矢印で示すように、サンルーフ30側のフラット電線Wと車体1側のフラット電線Wを共に電線巻き取り部82に巻き取りつつ(図10(c)から図10(b)、図10(b)から図10(a)の状態)、余長吸収機構70がサンルーフ30側から遠ざかろうとする方向にレール部材11を移動する。これにより余長が吸収される。余長吸収機構70は、サンルーフ30側のフラット電線Wと車体1側のフラット電線Wとを同量長さ巻き取りつつサンルーフ30の半分の速度で移動する。
【0045】
このようにして、3パターンのサンルーフ30の変移にあって、車体1側の電源からは、フラット電線Wを介してサンルーフ30に常に給電される。
【0046】
以上説明したように、固定部である車体1側に固定されたレール部材11と、レール部材11に沿って移動するスライダ21、23、25と、スライダ21、23、25に支持された可動体であるサンルーフ30とを備え、車体1からサンルーフ30に給電を行う可動体用給電構造において、フラット電線Wと、フラット電線Wの余長箇所を巻き取る余長吸収機構70とを備え、余長吸収機構70は、レール部材11に沿って移動自在に配置されていると共に、余長吸収機構70は、サンルーフ30側のフラット電線Wと車体1側のフラット電線Wを共に巻き取る電線巻き取り部82を有する回転体80と、回転体80をサンルーフ30側のフラット電線Wと車体1側のフラット電線Wを共に巻き付け方向に付勢する付勢手段である渦巻きバネ90とを有する。このような構成であるため、余長吸収機構70は、スライダ21、23,25が移動するレール部材11に取り付ければ良く、余長吸収機構70のために別途レール部材を設置する必要がないため、取り付けが簡単である。余長吸収機構70には、フラット電線Wを巻き取る回転体80と、回転体80を付勢する付勢手段である渦巻きバネ90とを設け、これらはいずれも回転中心を中心に配置する構成であるため、構造が簡単である。以上より、取り付けが簡単で、しかも、コンパクトに構成できる可動体用給電構造を提供できる。
【0047】
電線巻き取り部82には、サンルーフ30側のフラット電線Wと車体1側のフラット電線Wが180度対向位置で固定されている。従って、電線巻き取り部82にはサンルーフ30側のフラット電線Wからの張力と車体1側のフラット電線Wからの張力が作用するが、2つの張力が偏荷重として作用しない。
【0048】
フラット電線Wは、レール部材11に沿って配策され、余長吸収機構70は、スライダ21,23,25が移動する方向でレール部材11の端に配置されている。従って、スライダ21,23,25が移動するレール部材11のスペースをフラット電線Wの配策スペースとして利用でき、フラット電線Wを配策するためのスペースを別途確保する必要がない。
【0049】
(摺動部等の変形例)
図12(a)には、第1変形例の摺動部75Aが示されている。第1変形例の摺動部75Aは、板バネ形状であり、バネ力によってレール部材11の上下内面に接触している。
【0050】
図12(b)には、第2変形例の摺動部75Bが示されている。第2変形例の摺動部75Bは、回転体であり、回転しつつレール部材11に沿って移動する。
【0051】
図13(a)には、第1変形例の第1電線口76と第2電線口77が示されている。第1変形例の第1電線口76と第2電線口77は、摺動部75に対して同じ高さ位置に配置されている。更に詳しくは、第1電線口76と第2電線口77は、回転体80の回転中心の高さ位置に配置されている。
【0052】
ケース71には、サンルーフ30側のフラット電線Wからの外力と車体1側のフラット電線Wからの外力が作用するが、2つの外力による回転力が相殺されるため、ケース71には回転力が作用しない。これにより、余長吸収機構70がスムーズに摺動する。
【0053】
図13(b)には、第2変形例の第1電線口76と第2電線口77が示されている。第2変形例の第1電線口76と第2電線口77は、第1変形例と同様に、摺動部75に対して同じ高さ位置に配置されている。しかし、第1変形例と異なり、第1電線口76と第2電線口77は、摺動部75と同じ高さ位置に配置されている。
【0054】
この第2変形例でも、第1変形例と同様に2つの外力による回転力が相殺されるため、ケース71には回転力が作用しない。その上、何らかの理由によって2つの外力が異なる大きさとなった場合には、ケース71には大きな回転力となって作用しない。
【0055】
図14には、電線巻き取り部82のスリット84の変形例が示されている。この変形例のスリット84は、2つの開口位置が90度回転位置に形成されている。スリット84の2つの開口位置は、どの位置でも良く、同じ位置であっても良い。しかし、前記実施形態で説明したように、180度対向位置であれば、サンルーフ30側のフラット電線Wからの張力と車体1側のフラット電線Wからの張力が電線巻き取り部82に対して偏荷重として作用しない。
【0056】
図15(a)、(b)には、変形例の第1電線口76(及び/又は第2電線口77)が示されている。変形例の第1電線口76の先端部位は、テーパ部78に形成されている。第1電線口76には、拭き取り部材(スポンジ材)79が配置されている。フラット電線Wは、テーパ部78及び拭き取り部材79を摺動しつつ、余長吸収機構70のケース71内に巻き込まれる。フラット電線Wに付着した水、塵埃等は、テーパ部78で払い落とされ、拭き取り部材79で拭き取られる。このようにして、フラット電線Wに付着した水、塵埃等がケース71内に入り込むことを防止(防水・防塵)できる。
【0057】
(本発明の適用例など)
前記実施形態では、サンルーフ30が調光パネルを有し、調光パネルに給電する場合を説明したが、サンルーフ30への挟み込みを防止するため、サンルーフ30にタッチセンサを設け、このタッチセンサに給電する場合にも本発明は適用できる。タッチセンサが物等を検出した場合には、サンルーフ30の駆動モータを反転させる制御を行う。可動体側の給電対象としては、サンルーフ30に搭載された照明(LED照明)も考えられる。
【0058】
前記した実施形態では、可動体がサンルーフ30であり、サンルーフ30への給電構造について説明したが、車体1に対して移動する可動体、例えばサンシェード、サイドガラス、シート等への給電構造に適用できる。また、車両以外の可動体への給電構造にも適用できる。
【0059】
前記実施形態では、電線は、フラット電線Wであるため、巻き取りや渦巻き形態の形成が容易である。しかし、電線は、その形態を問わず、断面が丸側のケーブルであっても良い。
【0060】
前記実施形態では、余長吸収機構70は、回転軸方向が水平方向で、フラット電線Wのフラット面が水平向き(横向き)に引き出されているが、回転軸方向が垂直方向で、フラット電線Wのフラット面が垂直向き(縦向き)に引き出されるようにしても良く、それ以外の向きであっても良い。
【0061】
本発明は、可動ガラスに替わりソーラーパネルを採用した場合、ソーラーパネル(可動体)から車体1側への給電にも利用できる。
【符号の説明】
【0062】
W フラット電線(電線)
1 車体(固定部)
11 レール部材
30 サンルーフ(可動体)
70 余長吸収機構
71 ケース
76 第1電線口
77 第2電線口
80 回転体
82 電線巻き取り部
84 スリット
90 渦巻きバネ(付勢手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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