(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445542
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】チタン−アルミニウム合金部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/14 20060101AFI20181217BHJP
C22C 14/00 20060101ALI20181217BHJP
B22F 1/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
B22F3/14 101B
C22C14/00 Z
B22F1/00 R
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-518568(P2016-518568)
(86)(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公表番号】特表2016-526602(P2016-526602A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】FR2014051419
(87)【国際公開番号】WO2014199082
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年5月22日
(31)【優先権主張番号】1355393
(32)【優先日】2013年6月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513015441
【氏名又は名称】サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック − セーエヌエールエス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE − CNRS
(73)【特許権者】
【識別番号】514167411
【氏名又は名称】オネラ(オフィス ナシオナル デチュドゥ エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】クレ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】モンシュー,ジーン−フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】トマ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴォワザン,トマ
【審査官】
坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−230568(JP,A)
【文献】
特開平08−092602(JP,A)
【文献】
特開平06−025774(JP,A)
【文献】
COURET Alain et al.,Microstructures and mechanical properties of TiAl alloys consolidated by spark plasma sintering,Intermetallics,2008年,Volume 16, Issue 9,P.1134-1141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 8/00
C22C 14/00
C22C 21/00
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子パーセントで、以下に示す割合の粉末成分材料を含む機材(equipment)への一軸圧力および電流の同時印加を含むことを特徴とする放電プラズマ焼結による合金部品(PF)の製造のための方法、
・アルミニウムが42%から49%、
・ホウ素が0.05%から1.5%、
・タングステン、レニウム、およびジルコニウムから少なくとも1つ選択される元素が少なくとも0.2%、
・必要に応じて、クロム、ニオブ、モリブデン、ケイ素、および炭素から選択される1または複数の元素が0%から5%、
・残部がチタンであり、アルミニウムおよびチタンを除く元素の合計が0.25%から12%。
【請求項2】
上記材料は、以下に示す元素のうち少なくとも1つを、以下に定義される割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の方法、
・0.2%から4%のタングステン、
・0.2%から4%のレニウム、
・0.2%から5%のジルコニウム、
・0%から3%のクロム、
・0%から5%のニオブ、
・0%から5%のモリブデン、
・0%から2%のケイ素、
・0%から1%の炭素。
【請求項3】
上記材料は、原子パーセントで、チタンが49.92%、アルミニウムが48.00%、タングステンが2.00%、ホウ素が0.08%、という割合であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(a)請求項1から3のいずれかにおいて定義された組成を選択するステップ、
(b)30MPa以上の圧力をかけ、温度を1200℃から1400℃の間の目標温度に連続的に上昇させるステップ、
(c)上記目標温度を少なくとも1分間維持するステップ、
(d)温度および圧力を周囲条件に戻すステップ、を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記(b)のステップの間に80MPaから120MPaの間の圧力がかけられることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記(b)のステップの間において、5分未満の期間で連続的に圧力が増加することを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
上記(b)のステップの間において、10℃/分から40℃/分の範囲で温度の上昇速度が減少する、上記目標温度に到達する前の最後の3分間を除いて、温度の上昇速度が80℃/分から120℃/分の範囲であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記(c)のステップの間、上記温度は、上記目標温度で2分間維持されることを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
タービン羽根の製造のための、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法の利用。
【請求項10】
内部燃焼エンジンのバルブの製造のための、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法の利用。
【請求項11】
ターボチャージャーのタービンホイールの製造のための、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法の利用。
【請求項12】
ピストンピンの製造のための、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品製造のための構造材料としての使用を見込んだ、チタン−アルミニウム(TiAl)合金の製造に関し、例えば、航空学の分野において飛行機またはヘリコプターのエンジンのタービン羽根の製造のために使用されたり、自動車の分野においてバルブの製造に使用されたりする。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプの産業、特に、超高温および超高圧に曝される部品の製造における問題は、使用される材料の質と関係している。
【0003】
1980年代から、TiAl合金は、タービン羽根に50年以上使用されていた単結晶ニッケル系超合金に取って代わるための多大な研究努力の対象とされてきた。TiAl合金は、超合金の半分の密度であるという利点を有する。TiAl合金の使用は、エンジンの効率を向上させ、構造を分かり易くし、燃料を節約し、騒音および温室効果ガスの排出を減少させる。今日、ほとんどのエンジンの製造業者は、最新の飛行機のエンジンにTiAl合金のタービン羽根を組み込んでいる。今日まで、これらのタービン羽根のすべてが、GEタイプの化学的組成(46から48%のアルミニウム、2%のニオブ、2%のクロム、残りがチタン)を有し、鋳造プロセスと、それに続く熱処理とによって開発されていた。
【0004】
GEタイプの合金の鋳造は、飛行機のエンジンの低圧段階のタービン羽根の製造を可能とする。GEタイプの合金は、大部分、または全体的に層状の微細構造が存在するために、高いクリープ性能を有する。それゆえに、より高圧および高温に耐えるエンジンのエンジン段階への組み込みは、より高い性能の材料、特に、より抗酸化性能の高い材料から作られるタービン羽根の製造を意味する。それゆえに、ニオブのような元素、および/または、タングステンのような耐火性元素の量が増えることとなる。このような耐火性元素をドープした合金は、鋳造によって、高抵抗に起因する低延性という特徴を備えるため、現時点で、飛行機のエンジンの他のステージのタービン羽根への使用ができない。
【0005】
比較的複雑な平衡状態図のために、特性に重要な役割を果たすTiAl合金の微細構造は、合金が受けた熱履歴、および、使用した開発方法に大きく依存する。熱処理の温度の上昇のために、二元状態図によって説明される従来の組成として、二層性(γ+α
2)微細構造、二重(γ+層状)微細構造、および層状微細構造が得られる。γ相は、二次のL1
0構造であり、α相は不規則な六方晶系DO
19構造であり、α
2相は規則的な六方晶系DO
19構造である。層状構造は、α結晶粒の冷却中に得られる。
【0006】
鋳造または指向性凝固のような凝固プロセスは、結晶粒の縦軸に対して垂直な界面を有する、長形かつ層状の結晶粒が形成された円柱構造の形成を可能にする。研究は、最も有効な微細構造が、結晶学的な結晶粒が数ダースミクロンのサイズを有し、層状の結晶粒が排他的に形成される、または、層状の結晶粒が高比率で形成される微細構造であることを示す。また、一連の熱処理によって得られる小さい結晶粒を有する層状の微細構造が、極めて珍しい、高い力学的強度および約5%の延性を有することが明らかとなっている。
【0007】
層状の微細構造を得ることの困難さの1つは、α領域に入っている間に交差すると推定される平衡状態図のα変態点(約1325〜1350℃、合金の化学的組成に依存する)が、100ミクロンを超える非常に速い結晶粒の拡張を引き起こす、という事実に起因する。
【0008】
温度制御(700〜800℃)下でのTiAl合金のクリープの安定性に関して、拡散が上昇メカニズムによる転位(dislocations)の移動における重要な役割を果たすこと、これにより、超高比率の結晶粒の境界(boundaries)または界面(interfaces)が、ギャップの存在によって拡散を促進するために、この境界または界面が、クリープの安定性に対して有害であることが明らかとなっている。
【0009】
1990年代から、様々な実行プロセスによって開発された、様々な化学的組成のTiAl合金の非常に多くの研究が発表されている。しばしば、いくつかの開発されたルート(製錬、鋳造、鍛造、粉末冶金(PM))が、これらのグレードのいくつかに応用されている(Microstructure and deformation of two-phase γ-titanium aluminides, APPEL F, WAGNER R, Mar. Sci. Eng., R22, 5, 1998)。表1は、このレビューにて引用された合金の機械的特性を比較している。数字は、室温での強度および延性を示している。クリープの安定性は、700〜750℃の温度範囲のものである。この表において、YSの列の値は、0.2%の変形での降伏強度(MPa)を示し、RMの列の値は抗張力(MPa)を示し、Aの列の値は、試験中の材料の破裂における伸びである。
【0010】
【表1】
【0011】
以下の、チタンおよびアルミニウムのみを含む二元合金の予備的な研究において、社会(the community)は、アルミニウムを46〜48原子%含み、さらに2%のニオブと2%のクロムを含むことによって特徴付けられる、GEタイプのグレードに、その努力を集中させた。研究は、加工された疑似層構造(textured quasi-lamellar)および二重の微細構造をそれぞれが有する2つの粉末鋳造および冶金の方法を比較することによって、このGEタイプの合金に対して行われる。表1の最初の2つの行は、これらの合金の特性を要約している。これら2つの合金の延性は低く、鋳造によって開発された合金のみが十分なクリープの安定性を有していることが確認されている。
【0012】
その後、ニオブを含む合金(TNB:Ti−45Al−(5−10)Nbと呼称する)が、薄膜の製造のために、鍛造方法との組み合わせで開発された。固体材料において、最良のクリープの結果が炭素を含む押し出し合金で得られた。例えば、クリープ速度は、700℃、500MPaの条件で6×10
−9s
−1であるが、これらの合金の延性は平均で0.69%であり、ひずみが0.34%である脆いサンプルを有する(Strength properties of a precipitation hardened high niobium containing titanium aluminide alloy, PAUL J, OEHRING M, HOPPE R, APPEL F, Gamma Titanium Aluminides 2003, 403, TMS, 2003)。この最後の文献において、鋳造方法に固有の特性である強い散乱を示す33のサンプルの張力曲線が報告された。同じグループによって、粉末冶金によって得られた、巻き上げたシート状のTNB合金の興味深い特性、すなわち、700℃、225MPaの条件下で、延性が2.5%、クリープ速度が4.2×10
−8S
−1であることが測定されている(表1の4行目)。これらの良好な特性は、小さいサイズ(5μm)のγ結晶粒が形成された微細構造に関係する。
【0013】
2つのアイデア、すなわち、結晶粒のサイズを減少させ得るとともに、転位を有する重金属元素の相互作用によって、高温転位の流動性を減少させるβ凝固に基づく研究が、重金属を含む合金に集中している。これは、ABBタイプの合金(米国特許第5,286,443号明細書、および米国特許5,207,982号明細書)およびG4合金(フランス特許第2732038号明細書)のケースである。ABBタイプの合金は、2原子%のタングステン、および、0.5原子%未満のケイ素およびホウ素を含む。
【0014】
組成がTi−47Al−2W−0.5SiであるABBファミリーの合金は、詳細に研究されている。この組成は、層状の結晶粒、羽毛状の構造、およびγ領域が形成された、優れた微細構造を有し、さらに、傑出したクリープの安定性を有するが、延性は非常に限定される。G4タイプの合金は、1原子%のタングステン、1原子%のレニウム、および0.2原子%のケイ素を含む。これらの合金は、傑出したクリープ性能をもたらし、同様に、20℃で1.2%という妥当な延性をもたらす。これらのG4合金の非常に興味深い点は、ABBタイプの合金と異なり、機械的特性が、超高温の均質化処理を伴わない単純構造状態において最上であるという事実からもたらされる。いくらかの屈曲性、特に、多数の樹枝状結晶の織合わせを有する鋳造構造によって、機械的特性の際立った増進が得られるということが分かる。凝固中において、レニウムは樹枝状結晶間領域中に発せられる一方、タングステンは樹枝状結晶中に隔離されるので、レニウムおよびタングステンの比率は、同程度とすることが望ましい。
【0015】
或る合金は例外的な特性をもたらすが、これらを得るための方法は複雑であり、コスト競争のために産業化することが困難である。表1の7行目は、指向性凝固によって得られた合金の特性を示している。これらの微細構造は、凝固の方向に沿って伸張された層状の結晶粒が形成されている。Ti−46Al−1Mo−0.5Siの組成の合金は、室温で25%以上の破断点伸びを示し、クリープ強さが750℃、240MPaで3.5×10
−10s
−1である。
【0016】
最後に、別の粉末冶金の方法が近年研究されている。ARCAMと呼ばれる方法は、SPS(Spark Plasma Sintering、放電プラズマ焼結)のような、部分的に複雑な形状を与える技術である電子ビームによる粉末の溶解を含む。この方法で高密度にしたGEタイプの合金の張力テストの結果は、延性が約1.2%であり、降伏強度が約350MPaである。この方法における欠点の1つは、アルミニウムを濃化する製錬中における、特性において非常に重大なアルミニウムの減損(一般的に2原子%)である。また、この方法の実行には、高い製造コストを伴う真空室が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような従来技術の欠点を軽減することを目的とする。特に、本発明は、興味深い機械的特性をもたらす部品を製造するための手段、特に、室温において、0.2%での約400MPaの降伏強度、約1.5%の破断点伸び、700℃、300MPa下、および、750℃、200MPa下でのクリープ、並びに、少なくとも400時間の破断前時間(a time before rupture)という条件を満たす、飛行機のエンジン製造のニーズを提供することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、特に、室温での延性および熱抵抗の点で傑出した特性を有する部品を提供することにある。
【0018】
本発明において、「部品」とは、機械的な部品(タービン羽根、バルブなど)、機械的な部品の一部(バルブの頭部など)、またはその他のいくつかの機械的な部品(いくつかのタービン羽根、バルブ、または機械的部品の組み立て品(特に、複雑な機械的部品)の製品)といった、機械的部品のための半製品としてその後に使用されることが意図される、本発明によって得られるすべての製造品を示す。ここで、機械的な構成部品を機械加工するために使用され得る円盤、ブロック、棒などの基本要素もまた、部品であるとみなされる。
【0019】
また、本発明に係る方法は、微細構造の高レベルな均質性をもたらす部品を得て、傑出した機械的特性の再現性を得ることを目的とする。
【0020】
本発明によれば、低コスト、および、方法の実行によって可能となる手段の信頼性を特徴とする方法を提供することに好都合である。
【0021】
また、本発明に係る方法は、製造速度を速めることに好都合であり、次の熱処理をすることなく部品の製造を可能とする。これにより、タービン羽根の予備的形成品を直接製造することができるので、機械加工を制限することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的のために、本発明に係る、放電プラズマ焼結による合金部品(PF)の製造のための方法は、原子パーセントで、以下に示す割合の粉末成分材料を含む機材(equipment)への一軸圧力および電流の同時印加を含む、
・アルミニウムが42%から49%、
・ホウ素が0.05%から1.5%、
・タングステン、レニウム、およびジルコニウムから少なくとも1つ選択される元素が少なくとも0.2%、
・必要に応じて、クロム、ニオブ、モリブデン、ケイ素、および炭素から選択される1または複数の元素が0%から5%、
・残部がチタンであり、アルミニウムおよびチタンを除く元素の合計が0.25%から12%。
【0023】
これにより、本発明は、真にオリジナルな方法で、特有の化学的組成をもたらすチタンおよびアルミニウム系合金と放電プラズマ焼結(SPS)を用いた製造方法とを結びつける。驚くべきことに、上記の方法は、航空エンジンの製造業者の要求に十分に応える機械的な特性を有する部品を得ることができる。
【0024】
本発明に係る方法を用いる材料の化学的組成は、タングステンのような、比較的低コストの元素に基づく。
【0025】
鋳造によって従来のように製造されたTiAl合金は、延性/クリープの安定性の折衷(compromise)、および、微細構造の再現性に関して、本発明に係る方法によって得られた合金に比べて有効でない。加えて、この方法(鋳造)は、SPSを用いる方法に比べて、熱処理、および、材料へのより多くの機械加工を合金に加える必要がある。
【0026】
ここで、放電プラズマ焼結を用いる方法と結びつけられる粉末冶金(PMを用いる方法)の利用によって、本発明によって選択される合金の微細構造を精製および均質化することができ、該微細構造に対して、より高度な温度制御を実行することができる。電流は、粉末材料および/または機材(equipment)中に直接流れ、これにより、材料の温度が上昇する。
【0027】
鍛造および電子ビームによる粉末溶解といった、考えられる他の方法は、当分の間、本発明に係る方法から得られるものと同程度の高さの性能を有するタービン羽根の製造、および、合金の結合生産にはつながらない。
【0028】
本発明に係る方法から得られる合金部品(PF)は、5原子%未満の量の重元素と、ごく微量(0.05原子%から1.5原子%)のホウ素を含む。これにより、クリープ抵抗、および、結晶粒の小さい層状の微細構造につながる。本発明のさらに別の利点として、本発明に係る方法から得られた合金は、該結晶粒を有する良質な微細構造を得るためにホウ素を含むため、低グレードのアルミニウムの系統的な探索、例えば、β凝固の促進が不要であるということがある。既存の合金と比較されるオリジナルの特徴は、延性および酸化抵抗に関して興味深い特性を有する、高グレードのアルミニウムを提供することができる。
【0029】
化学的組成−発明に係る放電プラズマ焼結結合による高密度化は、例外的な機械的特性を有する、特徴的な微細構造を合金にもたらすことができる。周辺のγ領域によって取り囲まれた小さい層状の結晶粒が形成される。クレームされた化学的組成を有するこの方法の組み合わせによって、従来技術による合金部品より高品質な部品を得ることができる。実際、クレームされた方法と同じ化学的組成を有する部品であって、従来の熱間静水圧プレス(HIP)と結び付けられる粉末冶金(PM)を用いた方法によって開発された部品は、例外的な特性をもたらさないので、該特性が、本発明に係る方法によって得られたオリジナルの特性であることは確かである。
【0030】
良質の層状の微細構造を得る本発明に係る方法は、結晶粒の拡張を制限し、室温において、本質的に熱耐性があるγ相を有し、室温での延性および高温でのクリープの安定性の間の良好な折衷と同様に、良好な機械的特性の再現性を有する。
【0031】
好ましくは、本発明に係る方法において使用される材料は、以下に示す元素のうち少なくとも1つを、以下に定義される割合で含む、
・0.2%から4%のタングステン、
・0.2%から4%のレニウム、
・0.2%から5%のジルコニウム、
・0%から3%のクロム、
・0%から5%のニオブ、
・0%から5%のモリブデン、
・0%から2%のケイ素、
・0%から1%の炭素。
【0032】
或る実施形態において、本発明に係る方法において使用される材料は、原子パーセントで、チタンが49.92%、アルミニウムが48.00%、タングステンが2.00%、ホウ素が0.08%、という割合である。
【0033】
好ましくは、本発明に係る方法は、以下に示すステップを含む、
(a)本発明において上記のように定義された複数の組成から選ばれる組成を選択するステップ、
(b)30MPa以上の圧力をかけ、温度を1200℃から1400℃の間の目標温度に連続的に上昇させるステップ、
(c)上記目標温度を少なくとも1分間維持するステップ、
(d)温度および圧力を周囲条件に戻すステップ。
【0034】
本発明に係る方法の或る実施形態において、ステップ(b)の間に80MPaから120MPaの間の圧力がかけられる。好ましくは、ステップ(b)の間において、5分未満の期間で連続的に圧力が増加する。
【0035】
本発明に係る方法のさらに別の実施形態において、ステップ(b)の間、温度が80℃/分から120℃/分の範囲で上昇する。
【0036】
好ましくは、ステップ(c)において、対象物の温度は2分間維持される。
【0037】
本発明に係る方法は、タービン羽根の予備的形成品、および/または、ターボチャージャーのタービンホイール、および/または、バルブ(または、少なくともバルブの頭部)、および/または、ピストンピンの製造のために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の他の特徴および利点は、これ以降の記載を読むことで現れるだろう。該記載は単なる例証であり、本発明に係る方法を特徴付ける
図1から
図7に関して解釈されるべきである。
【
図1】
図1は、本発明において実行されるSPSサイクルにおいて時間毎に測定された圧力および温度の変化を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る方法によって得られる部品の微細構造のSEM(Scanning Electron Microscopyの頭字語化、走査電子顕微鏡法)によって得られた画像を、異なる拡大率で示す図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る方法によって得られる部品の、SEMおよびTEM(Transmission Electron Microscopyの頭字語化、透過型電子顕微鏡法)によって得られた広範囲の微細構造を示す図である。
【
図4】
図4は、TEMによって観測される、本発明に係る方法によって得られる部品の微細構造の、層状の結晶粒間に凝結しているB2相を含む周辺のγ領域を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る方法によって得られる部品の、EDS−SEM(Energy Dispersive X-Ray Spectroscopy - Scanning Electron Microscopyの略、エネルギー分散型X線分析−走査電子顕微鏡法)による局所的な化学分析を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る方法によって得られた合金の2つのサンプルで得られた、環境温度での張力曲線を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る方法によって得られた合金の2つのサンプルで得られた、環境温度でのクリープ曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、SPS(Spark Plasma Sintering、放電プラズマ焼結、フランス語でfrittage flash)の名前で知られる方法による、粉末材料からのチタンおよびアルミニウム系合金の部品の製造において、オリジナルの方法を提案する。利用される合金は、原子パーセントで、以下の割合を有する、
・アルミニウムが42%から49%、
・ホウ素が0.05%から1.5%、
・タングステン、レニウム、およびジルコニウムから少なくとも1つ選択される元素が少なくとも0.2%、
・必要に応じて、クロム、ニオブ、モリブデン、ケイ素、および炭素から選択される1または複数の元素が0%から5%、残部がチタンであり、アルミニウムおよびチタンを除く元素の合計が0.25%から12%。
【0040】
この材料は、5原子%未満の量の重元素と、ごく微量(0.05原子%から1.5原子%)のホウ素を含む。好ましくは、該材料は、チタン、アルミニウム、およびホウ素に加えて、以下に示す元素の少なくとも1つを、以下に定義される割合で含む、
・0.2%から4%のタングステン、
・0.2%から4%のレニウム、
・0.2%から5%のジルコニウム、
・0%から3%のクロム、
・0%から5%のニオブ、
・0%から5%のモリブデン、
・0%から2%のケイ素、
・0%から1%の炭素。
【0041】
さらに好ましくは、組成はTi
49.92Al
48W
2B
0.08である。
【0042】
小さい結晶粒を有する層状構造の合金は、本発明に係る単純なSPSサイクルによって得られる。本発明において使用される該SPSサイクルでは、国際出願WO2012/131625に記載されている方法に基づき、互いに金型(die)の内側に向かってスライドする少なくとも2つのピストン(P1,P2)によって、一軸圧力が直接または力伝達部品を介して加えられる。上記ピストンおよび/または上記力伝達部品は、材料に接触する軸受け面をもたらし、製造される部品の形状を定義するために互いに連携する。より具体的には、本書面の
図3、
図4、および
図6に示すものと同程度に複雑な部品を作るために動作する装置に関する上記国際出願(10頁12行目から12頁4行目)の記載を参考とする。この先行国際出願の
図1は、上記装置によって得ることができる部品を示す。
【0043】
この装置は、複雑な形状を有する金属部品の製造を可能とするという利点をもたらす。しかしながら、本発明を実行するためのSPSを用いた方法について、異なる装置を用いることが想定される。
【0044】
単純または複雑な外面的形態を有する部品のためのSPSを用いた方法は、今まで、上記のように定義された組成の材料を使用していなかった。製造方法と特徴的な合金との組み合わせは、以降に示すような例外的な機械的特性を有する合金部品を提供する。
【0045】
WO2011/131625に記載およびクレームされた装置には、
図1に示すサイクルに係るSPSを用いた方法が使用される。この図面において、t=0の時間において、100MPaの圧力が装置に挿入された合金に対して急速に加えられ、該合金が加圧された後で、温度の上昇が始まる。該圧力の上昇は約2分間続く。該温度の上昇は、約100℃/分の基準速度で、対応する装置に電流を流すことによって得られる。ただし、組み立て部品の熱慣性を考慮し、基準温度を超えることを避けるために、基準速度が25℃/分に減少する、目標に到達する前の最後の3分間を除く。該温度の上昇は、粉末材料に電流を直接流すことによって、または、粉末材料と熱交換を行う金型に電流を流すことによって得ることができる。約2分間の目標温度(1355℃)の維持の後、加圧および加熱が停止される。30分未満のうちに、高密度化のテストが終了し、サンプルが利用可能となる。なお、
図1は、材料の中心温度よりも低い測定温度を示しているが、測定温度と材料中の温度との間の温度差は既知であるため、較正可能である。
【0046】
得られる部品を構成する合金は、走査電子顕微鏡法による画像を異なる拡大率で提供する
図2に示される微細構造を有する。強い白のコントラストで示される、B2相の凝結を含む周辺のγ領域によって取り囲まれた層状の結晶粒が形成される。層状の結晶粒は平均して30μmのサイズを有する。周辺のγ領域は、細長い形状(数マイクロm)である。層状領域において、ホウ化物である低コントラストのバンドが確認される(
図2dのBO)。
【0047】
図3は、走査電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡によって得られる同じ領域を示す。一般的に、層状領域はありきたりの外観を有する。すなわち、平均して0.15μmの幅を有するラメラが形成され、極めて真っ直ぐな界面によって分離される。該層状領域のα
2相の割合は約10%である。γ相の拡張が層状の結晶粒の間の境界において確認される周辺領域は
図4において詳細に示される。
【0048】
図5はEDS−SEMによる化学的組成の局所的分析を示す。タングステンは、B2相およびα
2相においてより高い割合で存在すべきであるにもかかわらず、すべての相に明瞭かつ均等に存在している。
【0049】
該微細構造の形成メカニズムは、該組成に対応する平衡状態図が完全に知られているわけではないため、完全には明らかになっていない。該形成メカニズムに関する研究は進行中である。しかしながら、1355℃への温度上昇は、α変態点の交差を可能とするとみなされている。しかしながら、このα単相領域が存在しない、または、変態の反応速度が遅すぎるために、1355℃において、α結晶粒の周囲にβ領域が維持されることは確実であると考えられる。α結晶粒の拡張の制限は、ホウ素だけでなく、おそらくこの残りの相の存在のために起こる。冷却中に、2つの変態が起こる。すなわち、ホウ化物の存在によって促進される層状変態と、γ+B2におけるβ周辺領域の変態である。
【0050】
図6および
図7は、室温での張力曲線、および、700℃、300MPa下でのクリープ曲線を示すことによる、該合金の例外的な機械的特性を示す図である。これらの場合において、異なるSPSディスクから引き抜かれたサンプルにおいて得られた2つの曲線が記載されている。第2のクリープテストは、電子顕微鏡法による微細構造の変形を検出可能とするために、および、良好なクリープの性質の説明を試みるために、1.5%で中断された。部分的に重なる曲線は、SPSを用いた方法によって得られたサンプルの機械的特性の高い再現性を示す。室温での張力曲線は、1.6%の破断点伸び、496MPaの降伏強度、および646MPaの抗張力を与える。700℃、300MPa下でのクリープにおいて、二次速度(secondary rate)は3.7×10
−9s
−1であり、破断前時間は、異例の4076時間である。加えて、750℃でのクリープ速度が測定された。該クリープ速度は、120MPa下で2.3×10
−9s
−1であり、200MPa下で5.8×10
−9s
−1であり、これらは、本発明に係る部品の傑出したクリープの安定性を示す値である。
【0051】
以下に示す表は、Ti
49.92Al
48W
2B
0.08の組成を有する本発明によって得られる張力およびクリープの結果をまとめたものである。
【0054】
これらの傑出した結果は、本発明の分野の当業者に対して、高温に適した本発明の興味深い点をよく理解させることができる。
【0055】
得られた延性は、(i)実質的な変形量を受け入れる周辺のγ領域の存在、(ii)変形可能でもある層状領域(ラメラのサイズより相当に広い)の特性、(iii)破断による内部圧力を生み出すパイル(piles)の形成を制限する層状の結晶粒のサイズの減少、によって説明可能である。例外的なクリープの安定性は、層状構造の強度、および、変形するγ金型(die)におけるタングステンの良好な散乱によって説明可能である。以下に示す本発明に係る方法によって得られる微細構造の特徴的な寸法、すなわち、結晶粒のサイズおよびラメラの幅は、散乱の影響、および、十分な結晶粒の界面によって転位が容易でないため、並びに、境界が転位による移動を妨げるため、理想に近いものとなる。
【0056】
以下に示す本発明に係る方法によって、合金部品が製造され得る。この部品は、飛行機のエンジンのタービン羽根のための上述した必要性に対応する特性を上回る特性をもたらし(室温において、0.2%での約400MPaの降伏強度、約1.5%の破断点伸び、700℃、300MPa下、および、750℃、200MPa下でのクリープ、並びに、少なくとも400時間の破断前時間)、さらに、必要な特性のすべてを容易に満たすだろう。
【0057】
本発明は、当然、限定しない例として上述した実施形態における好ましい形状、および、言及した実施形態に限定されない。また、本発明は、特許請求の範囲の記載から当業者が想到できるすべての実施形態に関する。