(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
耐熱製品は、高温でプロセスを実施することが必要である産業のすべての部門で使用されている。これは、例えば、金属採取および加工の部門において、ならびにセメント、石灰、石膏、ガラスおよびセラミック産業において当てはまる。
【0003】
最も重要な耐熱製品は、成形高密度製品(れんが、コンポーネント)、成形断熱製品(軽量耐火れんが)、非成形耐熱製品(耐熱コンクリート、ラミング組成物、スプレー組成物、タンピング組成物(tamping composition))、または完成部品(くり形、ブロック)である。
【0004】
現在のところ、約4150万メートルトン/年の耐熱製品が世界的に生産されている(Ted Dickson、TAK Industrial Mineral Consultancy;The Refractories Industry Worldwide 2012〜2017;A Market/Technology Report、1頁)。非成形耐熱製品の中で、耐熱コンクリートが非常に重要な位置を占める。全耐熱物生産のうちでこれらが構成する割合は、絶えず増大しており、いくつかの工業国では、重要なことに50%を超える。
【0005】
耐熱コンクリートでは、アルミン酸カルシウム(CA)セメントに基づく水硬結合が、非常に広まっている。特に、2つのタイプのセメントが、水硬性結合剤として一般に使用されており、第1に、40〜50重量%の酸化アルミニウム、38重量%の酸化カルシウム、および4〜15重量%の酸化鉄を含有するアルミナセメントである。第2に、70〜80重量%の酸化アルミニウムおよび20〜30重量%の酸化カルシウムを含有する高アルミナセメントに言及することができる。
【0006】
このようなCAセメントは、高温での焼結および溶融によって、酸化アルミニウム担体、例えばアルミナまたは水酸化アルミニウム、および酸化カルシウム担体、例えば炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムの混合物から、複雑でエネルギー集約的なプロセスで生産される。要求される結合活性を実現するために、クリンカーとして公知の焼結材料が引き続いて細かく粉砕されなければならない。必要な高温焼成のエネルギー消費の理論的検討では、全エネルギーの約50%が酸化アルミニウム成分を加工温度に加熱するためにもっぱら要求されることが示されている。
【0007】
CAセメントを使用することのさらに重大な不利点は、比較的高い酸化カルシウム含量であり、これは、耐熱コンクリートの耐食性、およびSiO
2と組み合わさって高温での強度を損ね得る。
【0008】
したがって、新しいセメントフリーコンクリートの必要性が継続している。
【0009】
セメントフリー結合剤系は既に知られている。
【0010】
第1に、コロイド状シリカによる結合に言及することができる。乾燥すると、SiO
2結合剤フレームワークが粒子の周囲に形成される。SiO
2結合は、低温で相対的に弱い。したがって、このような結合を有するコンクリートは、凝結中に型枠および加熱を必要とする。SiO
2成分は、耐熱コンクリートの耐食性および熱機械的性質に対して有害作用を有し得る。このタイプの結合のさらなる産業的に関連した不利点は、凍結への感受性であり、理由は、結合剤が凍結の作用によって破壊されるためである。
【0011】
セメントフリー結合のさらなる可能性は、水ガラスによる結合である。結合機構および結合性質は、コロイド状シリカのものと類似する。しかし、水ガラスに導入されるアルカリは、耐熱材料の熱機械的性質および耐食性を恒久的に損ねる。
【0012】
リン酸塩結合の場合では、リン酸またはそのアルミニウム塩が、ほとんどの場合、結合剤として利用される。十分な結合力は一般に、200℃超への加熱によって開始される重縮合反応によってのみ生じる。リン酸イオンの存在は、このタイプの結合の深刻な不利点であることが多い。
【0013】
さらに、マグネシア結合剤(例えば、ソレルセメントにおけるような)が使用されている。ここでは、塩化マグネシウム/硫酸マグネシウム溶液が酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムと反応して、オキシ塩化マグネシウム/オキシ硫酸マグネシウムとして公知の難溶性塩を形成する。しかし、これらの結合剤は、化学的結合剤の群に割り当てられ、したがって水硬性結合剤を代表しない。このようなマグネシア結合剤は、高温用途で高度に腐食性の蒸気(HCl/SO
2)を遊離する。
【0014】
セメントフリー結合のさらなる可能性は、水和性アルミナ、すなわちローアルミナの使用である。この結合剤も、室温で低強度しか有さない。ローアルミナが水硬性結合剤として使用される耐熱コンクリートの加工は、セメント結合コンクリートの加工よりクリティカルであり、理由は、化学的結合水が150℃付近の比較的非常に狭い温度範囲で遊離されるためである。脱水後、強度の大きな低下が約1000℃でさらに起こる。約1250℃超の温度のみ、アルミナ結合剤相の初期焼結の結果として強度が大いに増大する。ローアルミナは、酸化アルミニウムの転移改変体(transition modification)である。市販のローアルミナの比表面積は、200m
2/g超である。この高い比表面積は、分散を困難にし、したがって、結合剤としてローアルミナを含有する生コンクリートの加工性を損ねる。凝結機構は、室温で水と反応し、さらなる反応の過程にわたって固化する水酸化アルミニウムゲルを形成するローアルミナに基づく。例えば、微結晶として沈殿し、高浸透性のコンクリートを与えるセメントの水和物と対照的に、ローアルミナの固化したゲルは、高密度な構造を形成し、それは、コンクリートの乾燥を妨げる。ローアルミナのこの性質および耐熱コンクリートの200〜400℃の温度への急速加熱に対して注意が払われない場合、ローアルミナ結合コンクリートは、破裂する傾向がある。コンクリートが1000℃超の温度に最初に加熱されるとき、ローアルミナならびにそのすべての水和および脱水生成物は、アルファ−酸化アルミニウムに変換される。この相変態は、体積収縮と関連し、コンクリートの粒構造に応じて、成分もしくはライニングの巨視的な収縮、または多孔度の増大をもたらす。第1の効果は、ライニングの断裂またはさらには破損をもたらしうる一方、第2の効果は、耐食性の障害という結果となる。
【0015】
それでもやはり、ローアルミナ結合を有するコンクリートは、セメント結合を有するものより耐食性および耐高温性の観点から優れている。これについての理由は、酸化カルシウムが存在しないことである。
【0016】
EP0839775A1には、ローアルミナおよび酸化マグネシウムの両方を含む水硬結合(凝結)酸化カルシウムフリー耐熱製品が記載されている。酸化マグネシウムは、DBM(死焼マグネシア)グレード(非反応性)として使用されている。コンクリート中の含量は、4〜16%である。ローアルミナを酸化マグネシウムと組み合わせると、純粋なローアルミナ結合を有するコンクリートと比較して、強度が改善され、凝結が加速され、水分要求量が増大するが、ローアルミナの使用に起因する不利点、例えば、低浸透性の理由による体積収縮および破裂への傾向が残っている。
【0017】
Souzaら、Systematic Analysis of MgO hydration effects on alumina−magnesia refractory catsables、Ceramic International、38、2012、3969〜3976には、DBM(「死焼マグネシア」)をドープした可塑化α−アルミナコンクリートの水硬性凝結が記載されており、この場合、酸化マグネシウムが水和すると、コンクリート中にクラック形成をもたらす。このクラック形成は、SiO
2混入酸化マグネシウムの使用またはマイクロシリカの添加によって防止される。
【0018】
Salamaoら、A Novel Magnesia Based Binder (MBB) for Refractory Castables、Ceramic Monographs 2.6.9、Supplement to Interceram、2011、1〜4にも同様に、耐熱性キャスティング組成物を生産するための、マグネシアに基づく結合剤が記載されている。この目的に関して、凝結を実現するために、比較的大量のマグネシアが必要とされる。凝結は、約50℃および約100%の相対大気湿度で起こる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
少量の少なくとも1種の成分Bを添加すると、少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAの水との凝結反応を誘発することが可能になることを、今般驚くべきことに見出した。さらに、凝結は、室温でさえ起こり得ることが見出された。凝結反応は、セメントを添加することなく起こる。さらに、凝結は、例えば、ローアルミナのような30m
2/g超の比表面積を有するか焼酸化アルミニウムを添加することなく起こる。
【0022】
したがって、本発明の水硬性結合剤系は、いずれのセメントも含有しない。30m
2/g超の比表面積を有するか焼酸化アルミニウムをまったく含有しない本発明の水硬性結合剤系も同様に好ましい。
【0023】
本発明の水硬性結合剤系を使用して生産される耐熱コンクリートは、先行技術による水硬性結合剤系、例えば、セメントまたはローアルミナを使用して生産される耐熱コンクリートと少なくとも同等の粘稠度、同等の凝結時間、同等の強度、および同等の耐高温性を有する。
【0024】
本発明の水硬性結合剤系を使用して生産される耐熱コンクリートは、特に、先行技術による水硬性結合剤系、例えば、セメントまたはローアルミナを使用して生産される耐熱コンクリートと比較してより低い焼成に対する収縮を有し得る。
【0025】
本発明の水硬性結合剤系を使用して生産される耐熱コンクリートは、先行技術による水硬性結合剤系、例えば、セメントまたはローアルミナを使用して生産される耐熱コンクリートと比較してより良好な乾燥挙動ならびにより良好な耐食性および耐浸潤性も示し得る。
【0026】
別段に明示的に示されていない限り、述べられる粒径は、平均粒径D
50である。示された値について、すべての粒子の50%がより大きく、すべての粒子の50%がより小さい。粒径の判定は、好ましくは、ISO13320に従ってレーザー粒度測定法によって実施される。
【0027】
比表面積の判定は、DIN ISO9277に従って窒素吸着(BET)によって実施された。
【0028】
か焼酸化アルミニウムA
本発明の水硬性結合剤系は、90.0〜99.99重量%、好ましくは95.0〜99.9重量%、好ましくは96.0〜99.8重量%、好ましくは97.0〜99.7重量%、好ましくは98.0〜99.5重量%の少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAを含有する。ここで、少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAは、0.3〜25.0μmの平均粒径および0.5〜30.0m
2/gのBET比表面積を有する。したがって本発明の水硬性結合剤系は、上記に示した性質を有する、正確には1、2、3、4種またはそれ超のか焼酸化アルミニウムAを有し得る。
【0029】
少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAは、当業者が精通している方法によって得ることができる。例えば、少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAは、熱処理(か焼)および後続の粉砕によってバイヤー法で生産される市販の水酸化アルミニウムから得ることができる。
【0030】
か焼は、とりわけ、酸化アルミニウムるつぼまたはガス加熱回転炉内で1200〜1800℃の温度で実施することができる。後続の粉砕は、例えば、遊星ボールミルで実施することができるが、任意の他の工業用ミル、例えば、湿式および乾式ボールミル、撹拌およびアトライターミル、環状ギャップミル、またはジェットミルで実施することもできる。
【0031】
本発明の水硬性結合剤系中の少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAは、好ましくは、
a)1.8〜8.0μm、好ましくは1.9〜6.5μm、特に好ましくは2.0〜4.5μmの平均粒径、および0.5〜2.0m
2/g、好ましくは0.75〜1.5m
2/gのBET比表面積を有する少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムA1;または
b)0.3〜1.7μm、好ましくは0.5〜1.5μm、好ましくは0.6〜1.2μmの平均粒径、および2.0〜10.0m
2/g、好ましくは4.0〜8.0m
2/gのBET比表面積を有する少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムA2
である。
【0032】
好適な実施形態では、本発明は、少なくとも2種の異なるか焼酸化アルミニウムAを含有する水硬性結合剤系を提供する。正確に2種の異なるか焼酸化アルミニウムAが同様に存在し得る。
【0033】
特に、これらのか焼酸化アルミニウムは、上述した酸化アルミニウムA1およびA2である。したがって、水硬性結合剤系は、好ましくは、
a)1.8〜8.0μm、好ましくは1.9〜6.5μm、特に好ましくは2.0〜4.5μmの平均粒径、および0.5〜2.0m
2/g、好ましくは0.75〜1.5m
2/gのBET比表面積を有する少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムA1;
ならびに
b)0.3〜1.7μm、好ましくは0.5〜1.5μm、好ましくは0.6〜1.2μmの平均粒径、および2.0〜10.0m
2/g、好ましくは4.0〜8.0m
2/gのBET比表面積を有する少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムA2
を含有する。
【0034】
水硬性結合剤系中のか焼酸化アルミニウムA1およびA2の重量による割合の比は、好ましくは0.1:9〜9:0.1、好ましくは1:4〜4:1、好ましくは1:3〜3:1、特に好ましくは1:2〜2:1の範囲内である。
【0035】
さらに好適な実施形態では、水硬性結合剤系中のか焼酸化アルミニウムA1およびA2の重量による割合の比は、1:1である。
【0036】
少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAは、被覆された、または被覆されていない形態で存在し得る。
【0037】
好適な実施形態では、少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAは、被覆されている。複数の酸化アルミニウムが存在する場合、これらはそれぞれ互いに独立に、被覆されていない、または被覆されている場合がある。さらに、各酸化アルミニウムは、被覆形態と非被覆形態の両方で存在し得る。例えば、上記酸化アルミニウムA1およびA2などの2種の酸化アルミニウムが存在する場合、両方が被覆されている、または被覆されていない場合がある。さらに、1種のみの酸化アルミニウムが被覆されている場合がある。したがって、A1およびA2が被覆されていないことが可能である。A1が被覆され、A2が被覆されないことも可能である。さらに、A1が被覆されていない場合があり、A2が被覆されている場合がある。最後に、A1およびA2の両方が被覆されている場合がある。複数の酸化アルミニウムが存在する場合、これらは、好ましくはすべて被覆されている、または被覆されていない。
【0038】
適当な被覆剤は、例えば、リン酸およびその塩であり、被覆剤は、好ましくはリン酸である。少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAの表面を、被覆によってさらに活性化することができる。
【0039】
少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAの被覆は、好ましくは酸化アルミニウムを希薄なリン酸と混合し、引き続いて混合物を乾燥することによって実施され、この場合リン酸は、0.1〜1.0重量%、好ましくは0.3〜0.8重量%の濃度を有する。少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムおよび希薄なリン酸の量は、好ましくはリン酸0.0001〜0.003gが酸化アルミニウムAの1g当たりに使用されるように選択される。乾燥は、好ましくは100〜150℃の温度で実施される。
【0040】
好適な実施形態では、本発明の結合剤系は、好ましくはA1またはA2である少なくとも1種の被覆された酸化アルミニウムAを含有する。
【0041】
さらに好適な実施形態では、水硬性結合剤系は、少なくとも2種の被覆された酸化アルミニウムAを含有し、一方がA1であり、他方がA2であることが好ましい。
【0042】
さらに、水硬性結合剤系は、好ましくは、被覆されたおよび被覆されていない酸化アルミニウムA1、ならびに被覆されたおよび被覆されていない酸化アルミニウムA2を含有する。
【0043】
さらに、水硬性結合剤系は、好ましくは、被覆されたまたは被覆されていない酸化アルミニウムA1、および被覆されたまたは被覆されていない酸化アルミニウムA2を含有する。
【0044】
さらに、水硬性結合剤系は、好ましくは、被覆されたおよび被覆されていない酸化アルミニウムA1、ならびに被覆されたまたは被覆されていない酸化アルミニウムA2を含有する。
【0045】
さらに、水硬性結合剤系は、好ましくは、被覆されたまたは被覆されていない酸化アルミニウムA1、ならびに被覆されたおよび被覆されていない酸化アルミニウムA2を含有する。
【0046】
さらに好適な実施形態では、水硬性結合剤系は、被覆された/被覆されていないA1および/またはA2の上述した組合せに加えて、少なくとも1種のさらなるか焼酸化アルミニウムAを含有し、この場合、少なくとも1種のさらなる酸化アルミニウムAは、A1またはA2でなく、被覆されたまたは被覆されていないか焼酸化アルミニウムAである。
【0047】
成分B
本発明の水硬性結合剤系は、0.01〜10.0重量%、好ましくは0.05〜4.95重量%、好ましくは0.1〜3.9重量%、好ましくは0.15〜2.85重量%、特に好ましくは0.3〜1.8重量%の、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムおよびこれらの水和物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、ならびに酸化バリウムからなる群から選択される少なくとも1種の成分Bも含有する。
【0048】
水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、または水酸化バリウムの水和物が成分Bとして使用される場合、各場合における本発明の結合剤系中の少なくとも1種の成分Bについて示される重量による割合は、結合剤系中の対応する水和物フリー水酸化物の重量による割合に関係する。
【0049】
成分Bは、少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAが凝結反応を起こし、または少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAおよび水と一緒に水硬性反応を起こすのを誘導する成分である。
【0050】
少なくとも1種の成分Bは、好ましくは、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、これらの水和物、および酸化マグネシウムからなる群から選択される。
【0051】
さらに、少なくとも1種の成分Bは、好ましくは、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムの水和物、および水酸化バリウムの水和物からなる群から選択される。水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムの水和物は、好ましくは、水酸化ストロンチウム8水和物および水酸化バリウム8水和物である。
【0052】
成分Bは、1.0〜20.0μmの平均粒径、および0.5〜50.0m
2/g、好ましくは0.5〜25.0m
2/gのBET比表面積を好ましくは有する。
【0053】
好適な実施形態では、少なくとも1種の成分Bは、酸化マグネシウムである。酸化マグネシウムは、1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μm、好ましくは2.0〜5.0μmの平均粒径、および5.0〜20.0m
2/g、好ましくは10.0〜18.0m
2/g、好ましくは13.0〜17.0m
2/gのBET比表面積を好ましくは有する。
【0054】
さらに好適な実施形態では、少なくとも1種の成分Bは、水酸化カルシウムまたはその水和物、特に好ましくは水酸化カルシウムである。水酸化カルシウムは、1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μm、好ましくは2.0〜5.0μmの平均粒径、および5.0〜20.0m
2/g、好ましくは8.0〜18.0m
2/g、好ましくは11.0〜15.0m
2/gのBET比表面積を好ましくは有する。
【0055】
さらに好適な実施形態では、少なくとも1種の成分Bは、水酸化ストロンチウムまたはその水和物、特に好ましくはその水和物である。水酸化ストロンチウムまたはその水和物は、5.0〜20.0μm、好ましくは9.0〜17.0μm、好ましくは11.0〜15.0μmの平均粒径、および1.0〜13.0m
2/g、好ましくは2.0〜10.0m
2/g、好ましくは3.0〜7.0m
2/gのBET比表面積を好ましくは有する。
【0056】
さらに好適な実施形態では、少なくとも1種の成分Bは、水酸化バリウムまたはその水和物、特にその水和物である。水酸化バリウムまたはその水和物は、5.0〜20.0μm、好ましくは9.0〜17.0μm、好ましくは11.0〜14.0μmの平均粒径、および1.0〜15.0m
2/g、好ましくは2.0〜12.0m
2/g、好ましくは6.0〜10.0m
2/gのBET比表面積を好ましくは有する。
【0057】
可塑剤C
本発明の水硬性結合剤系は、0.05〜4.95重量%、好ましくは0.1〜3.9重量%、好ましくは0.15〜2.85重量%、特に好ましくは0.2〜1.7重量%の少なくとも1種の可塑剤Cも含有し得る。
【0058】
本発明の目的に関して、可塑剤は、本発明の水硬性結合剤系の加工性質を改善するように機能を果たすことができる物質である。このような物質はしばしば、表面活性な、またはpHに影響を与える性質を有する。
【0059】
可塑剤を添加すると、同じ含水量で加工性が改善され、かつ/または同じ加工性で使用される水の量が低減されることが可能になり、その結果として得られる耐熱材料の強度が増大する。
【0060】
本発明の水硬性結合剤系の適当な可塑剤Cは一般に、当業者に公知である。適当な可塑剤は、とりわけ、リグノスルホン酸塩、リグノスルホン酸;ナフタレンスルホン酸塩、メラミン−ホルムアルデヒド硫酸塩;ポリカルボン酸、例えば、ポリアクリル酸ホモポリマー、ポリメタクリル酸ホモポリマー、ポリアクリル酸−ポリメタクリル酸コポリマー、またはポリアクリル酸−マレイン酸コポリマー、およびその塩;ポリアクリル酸エステル;変性ポリカルボン酸、例えば、CASTAMENT FS10(BASF SE)、CASTAMENT FS20(BASF SE)、VISCOCRETE 225P(Sika Deutschland GmbH)として入手可能な、短いまたな長い側鎖を有するポリカルボン酸エーテル(PCE)、ポリアクリル酸エーテル;スチレン−マレイン酸コポリマー;ヒドロキシカルボン酸、例えば、クエン酸または酒石酸およびそれらの塩;カルボン酸、例えば、シュウ酸、ギ酸または酢酸およびそれらの塩である。さらなる適当な可塑剤は、無機酸、例えば、ホウ酸、リン酸、アミドスルホン酸、ケイ酸、およびこれらの塩;ならびにポリ酸、例えば、シリケートまたはポリホスフェートである。もちろん、列挙した可塑剤Cの2種以上の混合物も可能である。
【0061】
少なくとも1種の可塑剤Cは、特に好ましくはクエン酸またはその塩である。クエン酸のアルカリ金属塩、より好ましくはクエン酸三リチウムまたはクエン酸三ナトリウムが好ましい。
【0062】
少なくとも1種の可塑剤Cは、特に好ましくはクエン酸三ナトリウムである。
【0063】
好適な実施形態では、本発明の水硬性結合剤は、1種を超える可塑剤Cを含有しない。
【0064】
さらに好適な実施形態では、本発明の結合剤系は、1種を超える可塑剤Cを含有する。1種を超える可塑剤Cが本発明の結合剤系中に存在する場合、クエン酸またはその塩、および変性ポリカルボン酸、好ましくはポリカルボン酸エーテル(PCE)、ならびに任意選択でさらなる可塑剤Cの組合せが好ましくは存在する。
【0065】
本発明の好適な実施形態では、水硬性結合剤系は、成分A、BおよびCのみからなる。
【0066】
本発明の水硬性結合剤系は、可塑剤Cに加えてさらなる添加剤を含有し得る。これらは、水硬性結合剤および結合剤含有組成物の当業者が精通している慣例的な添加剤、例えば、安定剤、空気孔形成剤、凝結促進剤、硬化促進剤、遅延剤、またはシーラントである。
【0067】
好適な実施形態では、本発明の水硬性結合剤系は、中に存在する成分の少なくとも部分的に予混合された形態で存在する。
【0068】
この脈絡において、表現「少なくとも部分的に」は、少なくとも2種であるがすべてでない水硬性結合剤系の成分が予混合された形態で提供され、かつ/または各場合において個々の成分の重量による特定の割合のみが予混合された形態で提供されることを意味する。
【0069】
しかし、水硬性結合剤系の少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムA、少なくとも1種の成分B、任意選択で少なくとも1種の可塑剤C、および任意選択でさらなる成分が別個に提供されることも可能である。
【0070】
しかし、結合剤系は、特に好ましくは、少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムA、少なくとも1種の成分B、任意選択で少なくとも1種の可塑剤C、および任意選択でさらなる成分の合計量を含有する混合物として提供される。
【0071】
水硬性結合剤系を製造するための方法
本発明はさらに、本発明の水硬性結合剤系を製造するための方法を提供する。
【0072】
したがって、本発明の水硬性結合剤系を製造するための方法であって、
a)
− 0.3〜25.0μmの平均粒径、および0.5〜30.0m
2/gのBET表面積を有する90.0〜99.99重量%の少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAを
− 水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムおよびこれらの水和物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、ならびに酸化バリウムからなる群から選択される0.01〜10.0重量%の少なくとも1種の成分B;
と混合するステップを含み、重量によるそれぞれの割合は水硬性結合剤系の合計量に基づく、方法が提供されている。
【0073】
水硬性結合剤系を製造するための方法に関して、本発明の水硬性結合剤系に関連して上述してきた好適な実施形態が適用される。
【0074】
好適な実施形態では、0.05〜4.95重量%の少なくとも1種の可塑剤Cが、この方法のステップa)の間または後に添加される。
【0075】
少なくとも1種の酸化アルミニウムAを少なくとも1種の成分Bおよび任意選択で少なくとも1種の可塑剤Cと混合することは、当業者に公知のすべての方法で実施することができ、成分A、B、および任意選択でCは、任意の順序で添加することができる。
【0076】
好適な実施形態では、ステップa)で少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAを少なくとも1種の成分Bと、かつ任意選択で少なくとも1種の可塑剤Cと混合することは、ジョイント粉砕(joint milling)(共粉砕(comilling))によって実施される。
【0077】
少なくとも1種の酸化アルミニウムAを少なくとも1種の成分Bと共粉砕すると、水硬性結合剤系の凝結時間を短縮し、その結合力に積極的に影響を与えることが可能になる。
【0078】
一実施形態では、少なくとも1種の可塑剤Cは、ステップa)の間に添加される。
【0079】
さらなる実施形態では、少なくとも1種の可塑剤Cは、ステップa)の後に添加される。
【0080】
少なくとも1種の酸化アルミニウムAの少なくとも1種の成分Bとの、かつ任意選択で少なくとも1種の可塑剤Cとの粉砕は、当業者に公知のすべての方法で、例えば、遊星ボールミル、ならびに他の工業用ミル、例えば、乾式ボールミル、撹拌およびアトライターミル、環状ギャップミル、またはジェットミルなどで実施することができる。個々の成分A、B、および任意選択でCの添加は、任意の順序で実施することができる。
【0081】
粉砕は、好ましくは、水の非存在下で実施される。
【0082】
水硬性結合剤系の使用
本発明の水硬性結合剤系は、耐熱材料およびファインセラミック材料を生産するのに特に適している。
【0083】
水硬性結合剤系は、好ましくは耐熱材料を生産するのに使用される。これらは、例えば、タンピング組成物、振動コンクリート、または自己流動コンクリートであり得る。
【0084】
ここで、耐熱材料は、耐熱材料の全成分の和に基づいて5〜70重量%、好ましくは15〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%の本発明の水硬性結合剤系を含有する。
【0085】
本発明の水硬性結合剤系は、細粒酸化アルミニウムから構成される任意選択の耐熱性セラミック物体、または緒割合の酸化アルミニウムを有する任意選択の耐熱性ファインセラミック材料を生産するのにも適しており、スリップキャスティングまたは射出成形による成形が特に有用である。
【0086】
ここで、セラミック物体またはファインセラミック材料は、水硬性結合剤系のみからなることもできる。
【0087】
セラミック物体またはファインセラミック材料は、好ましくは耐熱性である。
【0088】
耐熱材料は、当業者が精通しているすべての方法によって生産することができる。
【0089】
例えば、耐熱性組成物の粗構成要素を、最初に水と撹拌することができ、本発明の水硬性結合剤を、予混合形態で引き続いて添加することができる。さらに、均質な組成物を、予混合形態での水硬性結合剤系および水から最初に生成することができ、これを、それぞれの粗構成要素と引き続いて混合することができる。
【0090】
水硬性結合剤系の成分A、B、任意選択でC、および任意選択でさらなる成分を、耐熱性組成物の粗構成要素に個々に添加することも可能である。
【0091】
例えば、水を少なくとも1種の可塑剤Cと任意選択で最初に混合し、成分AおよびB、ならびに粗構成要素の混合物に引き続いて添加することができる。成分A、B、および粗構成要素は、好ましくは、少なくとも1種の可塑剤Cを任意選択で含有する水を添加する前に、互いに乾燥予混合される。
【0092】
さらに、少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムAおよび任意選択で少なくとも1種の可塑剤Cを水と最初に混合し、この混合物を粗構成要素に添加し、少なくとも1種の成分Bを引き続いて添加することが可能である。
【0093】
しかし、水硬性結合剤系の個々の成分は、好ましくは、少なくとも1種のか焼酸化アルミニウムA、少なくとも1種の成分B、任意選択で少なくとも1種の可塑剤C、および任意選択でさらなる成分の合計量を含有する予混合形態で使用される。
【0094】
耐熱性組成物の凝結時間は、それぞれの成分A、B、および任意選択でCを選択することによって制御することができる。これにより、1分〜20時間の範囲内の凝結時間を実現することが可能になる。
【0095】
以下の実施例は、本発明を例示するものである。
【0096】
別段に明示的に示されていない限り、述べられる粒径は、平均粒径D
50である。示された値について、すべての粒子の50%がより大きく、すべての粒子の50%がより小さい。粒径の判定は、ISO13320に従ってレーザー粒度測定法によって実施した。
【0097】
比表面積の判定は、DIN ISO9277に従って窒素吸着(BET)によって実施した。
【0098】
凝結時間は、EN196(Vicat試験)に従って判定し、冷間圧縮強度の判定は、EN1402に従って実施した。
【0099】
A)出発材料の生成
出発材料AO1〜AO3は、80μmの平均粒径およびAl(OH)
3>99%の工業純度を有する市販のバイヤー法水酸化アルミニウム(例えば、Aluminiumoxid Stade、Stade)から入手可能から生成した。
【0100】
1.酸化アルミニウムAO1の生成
か焼:
水酸化アルミニウムの熱処理は、か焼容器として約2lの体積を有する酸化アルミニウムるつぼを使用して、Nabertherm製電気加熱炉内で実施した。か焼は、1300℃の温度で4時間実施した。
【0101】
粉砕:
か焼物の粉砕は、Retsch製遊星ボールミルPM100で実施した。ここで、か焼材料60gを、酸化アルミニウム粉砕ボール(直径0.5〜1cm)200gを使用して20分間粉砕した。
【0102】
得られた酸化アルミニウムは、7.0m
2/gのBET比表面積および0.8μmの平均粒径を有していた。純度は、99.6%のAl
2O
3であった。α−アルミナ含量は、90%超であった。
【0103】
2.酸化アルミニウムAO2の生成
か焼:
水酸化アルミニウムの熱処理は、か焼容器として約2lの体積を有する酸化アルミニウムるつぼを使用して、Nabertherm製電気加熱炉内で実施した。か焼は、1650℃のか焼温度で4時間実施した。
【0104】
粉砕:
か焼物の粉砕は、Retsch製遊星ボールミルPM100で実施した。ここで、か焼材料60gを、酸化アルミニウム粉砕ボール(直径0.5〜1cm)200gを使用して5分間粉砕した。
【0105】
得られた酸化アルミニウムは、1.0m
2/gのBET比表面積および4.0μmの平均粒径を有していた。純度は、99.6%のAl
2O
3であった。α−アルミナ含量は、90%超であった。
【0106】
3.酸化アルミニウムAO3の生成
か焼:
水酸化アルミニウムの熱処理は、か焼容器として約2lの体積を有する酸化アルミニウムるつぼを使用して、Nabertherm製電気加熱炉内で実施した。か焼は、1650℃のか焼温度で4時間実施した。
【0107】
粉砕:
か焼物の粉砕は、Retsch製遊星ボールミルPM100で実施した。ここで、か焼材料60gを、酸化アルミニウム粉砕ボール(直径0.5〜1cm)200gを使用して10分間粉砕した。
【0108】
得られた酸化アルミニウムは、1.7m
2/gのBET比表面積および2.0μmの平均粒径を有していた。純度は、99.6%のAl
2O
3であった。α−アルミナ含量は、90%超であった。
【実施例1】
【0110】
か焼アルミナから構成される細粒ベース組成物の凝結挙動
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
実験手順
か焼アルミナを、酸化マグネシウム、可塑剤系、および水を添加し、強力に混合することによってスリップに変換した。仕上げた混合物をプラスチック用金型中に注ぎ、室温で27時間、密閉容器内で貯蔵した。混合物の凝結時間をVicat試験によって判定した。見掛け密度(試験片の重量および体積からの)ならびに冷間圧縮強度を、凝結し離型した試験片(46×46mm)で判定した。得られた結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
離型した試験片を1625℃で3時間焼成した。表4は、焼結した酸化アルミニウムセラミックの性質を示す。
【0116】
【表4】
【実施例2】
【0117】
α−アルミナコンクリートの凝結に対する酸化マグネシウムの量の影響
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
実験手順
可塑剤系およびメイクアップ水を添加し、強力に混合することによって均質なスリップをか焼アルミナから最初に生成した。このスリップを焼結α−アルミナ粒子と引き続いて混合した。酸化マグネシウムを引き続いて添加した。仕上げたコンクリート混合物をプラスチック用金型中に注ぎ、室温で27時間、密閉容器内で貯蔵した。混合物の凝結時間をVicat試験によって判定した。冷間圧縮強度を、凝結し離型した試験片(46×46mm)で判定した。結果を表7に示す。
【0121】
【表7】
【0122】
少量でさえ酸化マグネシウムを添加すると、α−アルミナコンクリートの凝結が引き起こされることを示すことができた。さらに、凝結時間および凝結した試験片の冷間圧縮強度は、添加される量を介して設定することができることを示すことができた。
【実施例3】
【0123】
α−アルミナコンクリートの凝結に対する酸化マグネシウムのBET表面積の影響
【0124】
【表8】
【0125】
【表9】
【0126】
600℃および1000℃で加熱された未処理酸化マグネシウムを含有するα−アルミナコンクリートを検査した。反応性の尺度として、比表面積をBET法によって判定した。
【0127】
【表10】
【0128】
実験手順
透明溶液を可塑剤系およびメイクアップ水から生成した。配合物の他の構成要素を1分間最初に乾燥予混合し、水/可塑剤混合物の2/3を引き続いて添加し、混合物を3分間混合した。最後に、水/可塑剤混合物の残りを添加し、混合物を、組成物が流動性を有する状態になるまで混合した(約2分)。
【0129】
このように調製したコンクリート混合物をプラスチック用金型中に注ぎ、室温で24時間、密閉容器内で貯蔵した。コンクリート混合物の凝結時間をVicat試験によって判定した。試験片を110℃で24時間乾燥させた。見掛け密度(試験片の重量および体積からの)ならびに冷間圧縮強度を、凝結し乾燥した試験片(46×46mm)で判定した。結果を表11に示す。
【0130】
【表11】
【0131】
自己流動α−アルミナコンクリートの凝結時間は、酸化マグネシウムのBET表面積を増大させることによって短縮されることを示すことができた。
【実施例4】
【0132】
α−アルミナコンクリートの凝結に対する様々なアルカリ土類金属酸化物/水酸化物の影響
a)酸化マグネシウム
【0133】
【表12】
【0134】
【表13】
【0135】
b)水酸化カルシウム
【0136】
【表14】
【0137】
【表15】
【0138】
c)水酸化ストロンチウム
【0139】
【表16】
【0140】
【表17】
【0141】
d) 水酸化バリウム
【0142】
【表18】
【0143】
【表19】
【0144】
実験手順
可塑剤系およびメイクアップ水を添加し、強力に混合することによって均質なスリップをか焼アルミナから最初に生成した。このスリップを焼結α−アルミナ粒子と引き続いて混合した。アルカリ土類金属成分を引き続いて添加した。試験目的のために、活性剤を添加しない混合物も生成した。仕上げたコンクリート混合物をプラスチック用金型中に注ぎ、室温で24時間、密閉容器内で貯蔵した。混合物の凝結時間をVicat試験によって判定した。見掛け密度(試験片の重量および体積からの)ならびに冷間圧縮強度を、凝結し離型した試験片(46×46mm)で判定した。得られた結果を表20に要約する。
【0145】
【表20】
【0146】
α−アルミナコンクリートの凝結は、活性剤を添加しないと起こらないが、凝結は、活性剤を添加したあらゆる場合において起こることを示すことができた。ここで、酸化マグネシウムは、最大の結合力(最大の圧縮強度)を生じさせた。結合力の低減および凝結時間の延長は、酸化物/水酸化物の漸増する溶解性と関連した。
【実施例5】
【0147】
α−アルミナコンクリートの凝結挙動に対する水酸化カルシウムの量の影響
【0148】
【表21】
【0149】
【表22】
【0150】
実験手順
可塑剤系およびメイクアップ水を添加し、強力に混合することによって均質なスリップをか焼アルミナから最初に生成した。このスリップを焼結α−アルミナ粒子と引き続いて混合した。Ca(OH)
2活性剤を引き続いて添加した。仕上げたコンクリート混合物をプラスチック用金型中に注ぎ、室温で24時間、密閉容器内で貯蔵した。混合物の凝結時間をVicat試験によって判定した。見掛け密度(試験片の重量および体積からの)ならびに冷間圧縮強度を、凝結し離型した試験片(46×46mm)で判定した。結果を表23に示す。
【0151】
【表23】
【0152】
少量のCa(OH)
2さえもα−アルミナコンクリートの固化を引き起こすことを示すことができた。凝結時間および凝結した試験片の強度は、添加される量を介して設定することができた。
【実施例6】
【0153】
か焼アルミナの被覆の影響
【0154】
【表24】
【0155】
【表25】
【0156】
実験手順
16.5:33.5の重量比のAO1およびAO2の混合物を、0.74%の濃度を有する希薄な工業グレードリン酸とともに室温で均質に混合した。希薄H
3PO
4の量は、H
3PO
40.002gがAl
2O
31g当たりに使用されるように選択した。混合物を110℃で引き続いて乾燥させ、コンクリート試験片を生成するのに使用した。
【0157】
可塑剤系およびメイクアップ水を添加し、強力に混合することによって均質なスリップを被覆されたか焼アルミナ混合物から最初に生成した。このスリップを焼結α−アルミナ粒子と引き続いて混合した。酸化マグネシウムを引き続いて添加した。仕上げたコンクリート混合物をプラスチック用金型中に注ぎ、室温で27時間、密閉容器内で貯蔵した。混合物の凝結時間をVicat試験によって判定した。見掛け密度(試験片の重量および体積からの)ならびに冷間圧縮強度を、凝結し離型した試験片(46×46mm)で判定した。比較のために、対応する未被覆アルミナから作製したα−アルミナコンクリートを検査した。得られた結果を表26に示す。
【0158】
【表26】
【0159】
被覆したか焼アルミナを使用すると、結合力がかなり改善されることを示すことができた。これは、30%超の凝結したコンクリートの冷間圧縮強度の増大から明らかになる。コンクリートの凝結時間は、被覆したアルミナを使用することによって明らかに増大することを示すこともできた。
【実施例7】
【0160】
本発明の結合剤系の、それから生産されるα−アルミナコンクリートの使用特性の観点からの特徴付け
【0161】
【表27】
【0162】
【表28】
【0163】
【表29】
【0164】
【表30】
【0165】
実験手順
水は別として配合物のすべての構成要素を、1分間最初に乾燥予混合し、水の2/3を引き続いて添加し、混合物を3分間混合した。最後に、水の残りを添加し、混合物を、組成物が流動性を有する状態になるまで混合した(約2分)。
【0166】
粘稠度および凝結時間:
このように調製した振動コンクリートの粘稠度を、スランプフロー(DIN EN1402−4)によって判定した。粘稠度を判定した後、コンクリートを取り上げ、密閉プラスチック容器内に貯蔵した。粘稠度の判定を、コンクリートが凝結するまで30分毎に繰り返した。
【0167】
【表31】
【0168】
表31から分かるように、α−アルミナコンクリートは、これらが本発明の水硬性結合剤系を使用して生産されるとき、実行可能な加工特性を示す。
【0169】
乾燥挙動:
生コンクリート1kgを各場合においてプラスチックバケツ中に入れ、空気を除外して室温で24時間硬化させた。次いでバケツを開き、乾燥器内で110℃にて一定の重量まで乾燥させた。この間、コンクリート試料の質量を定期的に判定した。
【0170】
【表32】
【0171】
本発明の結合剤系は、セメントが結合するより、水和物中の有意により少ない水に結合する。
本発明の新規水硬性結合剤系は、高浸透性の微細構造を有するコンクリートをもたらす。乾燥は、わずか24時間の後に完結した。本発明の結合剤系のこの性質は、完成した耐熱コンクリート部分についての短い製造サイクル、およびモノリシック耐熱ライニングの場合における急速な昇温曲線を可能にする。
【0172】
密度および強度:
さらに、このように調製されたコンクリート混合物をプラスチック用金型中に注ぎ、室温で24時間、密閉容器内で貯蔵した。試験片を110℃で24時間乾燥させた。次いで試験片の一部を1000℃または1500℃で3時間焼成した。見掛け密度(試験片の重量および体積からの)、収縮および冷間圧縮強度を、乾燥し、焼成した試験片(46×46mm)で判定した。
【0173】
【表33】
【0174】
【表34】
【0175】
【表35】
【0176】
本発明の結合剤系を含有するコンクリートの見掛け密度は、先行技術による他のα−アルミナコンクリートのレベルにおけるものである。乾燥収縮は、最小限である。高含量のローアルミナで起こるような水和に起因する成長は、本発明の結合剤系の場合において起こらない。本発明の水硬性結合剤系を使用して生産されるコンクリートの強度は、低い実行可能な範囲内である。1000℃または1500℃で焼成した後、本発明の水硬性結合剤系を使用して生産されるコンクリートの強度は、先行技術による結合剤を使用して生産されるコンクリートの強度と同等である。焼成収縮が小さいことは、耐熱ライニングの安定性に対してプラス効果を有し、理由は、クラックが過剰な焼成収縮によって引き起こされる場合があるためである。
【0177】
高温度強度:
熱間圧縮強度を判定するために、25mmのエッジ長を有するテストキューブを、ダイヤモンドソーを使用して、1500℃で焼成した試験片から調製した。熱間圧縮強度は、1450℃で判定した。
【0178】
【表36】
【0179】
すべてのコンクリートの熱間圧縮強度は、非常に高いレベルにおけるものである。
【0180】
耐食性:
さらに、このように調製されたコンクリート混合物を、50mmの直径および65mmの高さを有する円筒状るつぼ型中に注いだ。るつぼ中の円筒状のくぼみは、23mmの直径および35mmの深さを有していた。るつぼを室温で24時間硬化させ、110℃で24時間乾燥させ、1500℃で3時間焼成した。次いでるつぼをスラグ17gで満たし、再び、1500℃で3時間維持した。るつぼを、ダイヤモンドソーによって引き続いて切り開き、切断面を評価した。耐熱材料中へのスラグの腐食深さおよび浸潤深さを8カ所で測定し、算術平均を行った。
【0181】
【表37】
【0182】
【表38】
【0183】
本発明の結合剤系を含有するるつぼは、これらのコンクリートがセメントを含有せず、したがって酸化カルシウムを含有しないので、スラグとほとんど反応を示さない。スラグの体積は、るつぼ内で実質的に完全なままであり、耐熱材料中に貫入していなかった。浸潤深さは非常に小さく、腐食は事実上起こっていなかった。