【文献】
近藤秀俊、鹿野直樹,シリコーンの増粘・ゲル化技術と化粧品への応用,FRAGRANCE JOURNAL,2007年 7月,pp.46-52
【文献】
SILICA SILYLATE AEROGEL FOR COSMETIC APPLICATIONS,IP.COM JOURNAL,米国,IP.COM INC.,2006年 1月30日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書の以下の文章で、「少なくとも1つ」という表現は、「1つ又は複数」と同等であり、別段の指定がない限り、値の範囲の上下値は、この範囲内に含まれる。
【0025】
生理学的に許容される媒体
用語「生理学的に許容される媒体」は、本発明の組成物を皮膚又は唇へ適用するのにとりわけ好適な媒体を示すことが企図される。
【0026】
生理学的に許容される媒体は、その上に組成物が適用されなければならない支持体の性質に、且つ更にそのもとで組成物がパッケージされなければならない外形にも、一般に適合される。
【0027】
本発明の組成物は、水を、組成物の総質量に対して5質量%未満含む。好ましくは、本発明の組成物は、水を、組成物の総質量に対して2質量%未満含む。特に好ましくは、本発明の組成物は、無水物である。用語「無水物」は、水が好ましくは組成物へ意図的に添加されないが、組成物中に用いられる種々の化合物中に微量で存在することもあることを特に意味する。
【0028】
脂肪相
直鎖状C
18〜C
24ヒドロキシル化脂肪酸
本発明の組成物は、好ましくは飽和である、少なくとも1種の直鎖状C
18〜C
24ヒドロキシル化脂肪酸を含む。好ましくは、直鎖状C
18〜C
24ヒドロキシル化脂肪酸は、12-ヒドロキシステアリン酸である。この化合物は、特にThai Kawaken社により参照名12-Hydroxystearic acid Premium Grade 12H-Pで販売されている。
【0029】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、直鎖状C
18〜C
24ヒドロキシル化脂肪酸の総含量を、組成物の総質量に対して0.1質量%〜5質量%、更に良好に好ましくは0.1質量%〜4質量%、好ましくは0.5質量%〜3質量%の範囲で含む。好ましくは、12-ヒドロキシステアリン酸は、組成物の総質量に対して0.1質量%から5質量%の間、好ましくは0.1質量%〜4質量%、好ましくは0.5質量%〜3質量%の含量で存在する。
【0030】
追加のワックス
本発明の組成物は、少なくとも1種の、直鎖状C
18〜C
24ヒドロキシル化脂肪酸以外の追加のワックスを含む。
【0031】
好ましい一実施形態によれば、追加のワックスの含量は、組成物の総質量に対して0.1質量%から10質量%の間、より特定すると0.5質量%から7質量%の間、更により好ましくは0.5質量%から5質量%の間である。
【0032】
有利には、ワックスの総含量は、組成物の総質量に対して12質量%以下、好ましくは10質量%以下、更により有利には7質量%以下である。より特定すると、ワックスの最少含量は、組成物の総質量に対して、好ましくは少なくとも0.2質量%、好ましくは少なくとも0.6質量%、更により有利には少なくとも1質量%である。
【0033】
本発明の関連で検討される「ワックス」という用語は、室温(25℃)で固体であり、固体/液体の可逆的な状態変化を伴い、融点が30℃以上であり、融点が200℃まで、特に120℃までであってもよい、親油性化合物を一般に意味する。
【0034】
本発明の目的では、融点は、ISO規格11357-3、1999年に記載されている熱分析(DSC)において観察された最も高い吸熱ピークの温度に相当する。ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えばTA Instruments社により名称MDSC 2920で販売されている熱量計を用いて測定することができる。
【0035】
測定プロトコルは、以下の通りである:
るつぼに入れたワックスの試料5mgに、-20℃〜100℃を範囲とする第1の温度上昇を加熱速度10℃/分で施し、次いで、100℃〜-20℃に冷却速度10℃/分で冷却し、最後に、-20℃〜100℃を範囲とする第2の温度上昇を加熱速度5℃/分で施す。第2の温度上昇中に、空のるつぼが吸収する力と、ワックスの試料を含有するるつぼが吸収する力との差の変化を、温度の関数として測定する。化合物の融点は、吸収された力の差の変化を温度の関数として示す曲線のピークの頂点に相当する温度値である。
【0036】
好ましくは、追加のワックスは、融点が60℃以上、好ましくは65℃以上のワックスから選択される。
【0037】
本発明の組成物中で使用できる追加のワックスは、動物、植物、鉱物又は合成起源の、室温で固体であるワックス、及びそれらの混合物から選択される。
【0038】
本発明の組成物は、少なくとも1種の追加の極性ワックス若しくは無極性ワックス、又はそれらの混合物を含むことができる。
【0039】
極性ワックス
本発明の第1の実施形態によれば、追加のワックスは、極性ワックスである。
【0040】
本発明の目的では、用語「極性ワックス」は、25℃でのその溶解度パラメータδ
aが0(J/cm
3)
1/2ではないワックスを意味する。加えて、前記極性ワックスは、固体/液体の可逆性の状態の変化を有し、且つ更に先に挙げた融点の特性を有する。
【0041】
詳細には、用語「極性ワックス」は、その化学構造が炭素原子及び水素原子から本質的に形成される又はそれらで構成されさえする、少なくとも1つの電気陰性度の高いヘテロ原子、例えば酸素原子、窒素原子、ケイ素原子又はリン原子を含むワックスを意味する。
【0042】
ハンセンの3次元溶解度空間における溶解度パラメータの定義及び計算は、C.M. Hansenによる論文、「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol.、第39巻、105頁(1967年)に記載されている。
【0043】
このハンセン空間によれば、
- δ
Dは、分子の衝突中に誘起される双極子の形成から生じるロンドン分散力を特徴とし、
- δ
pは、永久双極子間のデバイ相互作用力、及び更に誘起双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴とし、
- δ
hは、特定の相互作用力(例えば水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセプター等)を特徴とし、且つ
- δ
aは、方程式δ
a=(δ
p2+δ
h2)
1/2によって求められる。
【0044】
パラメータδ
p、δ
h、δ
D及びδ
aは、(J/cm
3)
1/2で表される。
【0045】
極性ワックスは、特に、炭化水素系ワックス、フルオロワックス又はシリコーンワックスであってもよい。
【0046】
用語「シリコーンワックス」は、少なくとも1つのケイ素原子を含み、特にSi-O基を含むワックスを意味する。
【0047】
用語「炭化水素系ワックス」は、炭素原子及び水素原子、並びに任意選択で酸素原子及び窒素原子から本質的に形成される又はそれらで構成されさえする、ケイ素原子又はフッ素原子を一切有していないワックスを意味すると企図される。炭化水素系ワックスは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミドの各基を含有しうる。
【0048】
好ましい第1の実施形態によれば、極性ワックスは、炭化水素系ワックスである。炭化水素系極性ワックスとして、エステルワックス及びアルコールワックスから選択されるワックスが、とりわけ好ましい。
【0049】
表現「エステルワックス」は、本発明によれば、少なくとも1つのエステル官能基を含むワックスを意味すると理解される。
【0050】
表現「アルコールワックス」は、本発明によれば、少なくとも1つのアルコール官能基を含む、即ち少なくとも1つの遊離ヒドロキシル(OH)基を含むワックスを意味すると理解される。
【0051】
第1の実施形態によれば、極性ワックスは、エステルワックス、アルコールワックス及びシリコーンワックスから選択される。
【0052】
好ましくは、エステルワックスは、以下から選択される:
i)式R
1COOR
2(式中、R
1及びR
2は、直鎖状、分枝状又は環状の脂肪族鎖を表し、その原子の数は10〜50個で様々であり、これはO、N又はP等のヘテロ原子を含有してもよい)のワックス。特に、エステルワックスとして使用できるのは、単独で又は混合物として、C
20〜C
40ステアリン酸アルキル(ヒドロキシステアリルオキシ)(アルキル基は20〜40個の炭素原子を含む)又はC
20〜C
40ステアリン酸アルキルである。こうしたワックスは、特にKoster Keunen社により名称Kester Wax K 82P(登録商標)、Hydroxypolyester K 82P(登録商標)、Kester Wax K 80P(登録商標)及びKester Wax K82Hで販売されている。
【0053】
モンタン酸グリコール及びモンタン酸ブチレングリコール、例えばClariant社により販売されているワックスLicowax KPS Flakes(INCI名:モンタン酸グリコール)もまた使用されてよい。
ii)Heterene社により名称Hest 2T-4S(登録商標)で販売されているテトラステアリン酸ビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)
iii)一般式R
3-(-OCO-R
4-COO-R
5)(式中、R
3及びR
5は、同一であり又は異なり、好ましくは同一であり、C
4〜C
30アルキル基を表し、R
4は、1つ又は複数の不飽和を含んでも含まなくてもよく、且つ好ましくは直鎖状で不飽和である、直鎖状又は分枝状のC
4〜C
30脂肪族基を表す)の二カルボン酸のジエステルワックス
iv)飽和の、任意選択でグリセロールで水素化されたC
16〜C
30カルボン酸の、部分的な又は全体的なエステル、好ましくは全体的なエステルに相当するワックス。用語「全体的なエステル」は、グリセロールのヒドロキシル基の全てがエステル化されていることを意味する。
【0054】
例を介せば、単独で又は混合物としての、トリヒドロキシステアリン(又はトリヒドロキシステアリン酸グリセリル)、トリステアリン(又はトリステアリン酸グリセリル)及びトリベヘニン(又はトリベヘン酸グリセリル)を挙げることができる。
v)更に挙げることができるのは、直鎖状又は分枝状のC
8〜C
32脂肪鎖を有する動物油又は植物油の触媒水素化により得られるワックス、例えば水添ホホバ油、水添ヒマワリ油、水添ヒマシ油、水添ココナツ油、及び更にセチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化により得られるワックス、例えばSophim社により名称Phytowax Ricin 16L64(登録商標)及び22L73(登録商標)で販売されているものである。こうしたワックスは、仏国特許出願A-2792190に記載されており、該ワックスは、名称Phytowax Olive 18L57で販売されているもの等の、ステアリルアルコールでエステル化されたオリーブオイルの水素化により得られる。
又は他に、
vi)ビーズワックス、合成ビーズワックス、ポリグリセロール化ビーズワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、オキシプロピレン化ラノリンワックス、米ぬかワックス、オーリクリーワックス、エスパルトグラスワックス、コルク繊維ワックス、サトウキビワックス、はぜろう、スマクワックス;モンタンワックス、オレンジワックス、ラウレルワックス及び水添ホホバワックス
vii)それらの混合物。
【0055】
別の実施形態によれば、極性ワックスは、アルコールワックスであってもよい。より詳細には、これらのワックスは、好ましくは直鎖状の、好ましくは飽和のC
16〜C
50及び有利にはC
16〜C
40脂肪アルコールであり、少なくとも1種の遊離ヒドロキシルを任意選択で含む。前記ワックスはまた、ポリオキシエチレン化されていてもよい。挙げることができるアルコールワックスには、例えばNew Phase Technologies社からのワックスPerformacol 550-L Alcohol、ステアリルアルコール及びセチルアルコールがある。
【0056】
第2の実施形態によれば、極性ワックスは、シリコーンワックス、例としてはシリコーン処理されたビーズワックスであってもよい。
【0057】
好ましくは、追加のワックスは、飽和の、任意選択でグリセロールでヒドロキシル化されたC
16〜C
30カルボン酸の全体的なエステルに相当するワックス、例えば、単独で又は混合物として、トリヒドロキシステアリン;ビーズワックス;合成ビーズワックス;ポリグリセロール化ビーズワックス;カルナウバワックス;キャンデリラワックス;オキシプロピレン化ラノリンワックス;米ぬかワックス;オーリクリーワックス;エスパルトグラスワックス;コルク繊維ワックス;サトウキビワックス;はぜろう;スマクワックス;モンタンワックス;オレンジワックス;ラウレルワックス;水添ホホバワックスから選択される極性ワックスである。
【0058】
無極性ワックス
別の実施形態によれば、追加のワックスは、無極性ワックスである。
【0059】
本発明の目的では、用語「無極性ワックス」は、以下に定義する25℃でのその溶解度パラメータδ
aが0(J/cm
3)
1/2に等しいワックスを意味する。加えて、前記無極性ワックスは、固体/液体の可逆性の状態の変化を有し、且つ更に先に挙げた融点の特性を有する。
【0060】
無極性ワックスは、詳細には、炭素原子及び水素原子のみで構成されていて、N、O、Si及びP等のヘテロ原子を含まない炭化水素系ワックスである。
【0061】
具体的には、表現「無極性ワックス」は、無極性ワックスのみから構成されていて、無極性ワックスでない他のタイプのワックスをも含む混合物からは構成されないワックスを意味すると理解される。
【0062】
本発明における使用に好適である無極性ワックスの例証として特に挙げることができるのは、炭化水素系ワックス、例としては微結晶ワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、ポリメチレンワックス及びポリエチレンワックスである。
【0063】
挙げることができるポリエチレンワックスには、New Phase Technologies社により販売されているPerformalene 500-L Polyethylene及びPerformalene 400 Polyethyleneがある。
【0064】
挙げることができるポリメチレンワックスは、Cirebelle社により販売されているCirebelle 108である。
【0065】
挙げることができるオゾケライトは、Ozokerite Wax SP 1020Pである。
【0066】
使用できる微結晶ワックスとして挙げることができるのは、Sonneborn社により販売されているMultiwax W 445(登録商標)、並びにParamelt社により販売されているMicrowax HW(登録商標)及びBase Wax 30540(登録商標)である。
【0067】
本発明の組成物中で無極性ワックスとして使用できる微結晶ワックスとして、Micro Powders社により名称Micropoly 200(登録商標)、220(登録商標)、220L(登録商標)及び250S(登録商標)で販売されているもの等のポリエチレン微結晶ワックスを挙げることができる。
【0068】
好ましい一実施形態によれば、本発明の組成物は、無極性ワックスから選択される少なくとも1種の追加のワックスを含む。
【0069】
好ましくは、追加の無極性ワックスは、単独で又は混合物として、ポリエチレンワックス、オゾケライト、微結晶ワックス及びポリメチレンワックスから選択される。
【0070】
油
本発明の組成物は、少なくとも1種の不揮発性油を含む。
【0071】
用語「油」は、室温(25℃)及び大気圧(760mmHg)で液体である、水と非混和性の非水性化合物を意味する。
【0072】
詳細には、油は、炭化水素系油、シリコーン油及び/又はフルオロ油、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0073】
優先的には、不揮発性油は、炭化水素系油及び/又はシリコーン油から選択することができる。
【0074】
不揮発性油
用語「不揮発性」油は、室温及び大気圧での蒸気圧が、非ゼロ及び0.02mmHg(2.66Pa)未満であり、更に良好には10
-3mmHg(0.13Pa)未満である油を指す。
【0075】
不揮発性油は、特に植物起源の、炭化水素系油、合成起源又は鉱物起源の油、シリコーン油、フルオロ油、又はそれらの混合物とすることができる。
【0076】
無極性油
第1の実施形態によれば、前記不揮発性油は、無極性油、好ましくは無極性炭化水素系油であってもよい。
【0077】
これらの油は、植物、鉱物、又は合成起源とすることができる。
【0078】
本発明の目的では、用語「無極性油」は、25℃でのその溶解度パラメータδ
aが0(J/cm
3)
1/2に等しい油を意味すると企図される。
【0079】
ハンセンの3次元溶解度空間における溶解度パラメータの定義及び計算は、C.M. Hansenによる論文「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol.、第39巻、105頁(1967年)に記載されている。
【0080】
このハンセン空間によれば、
- δ
Dは、分子の衝突中に誘起される双極子の形成から生じるロンドン分散力を特徴とし、
- δ
pは、永久双極子間のデバイ相互作用力、及び更に誘起双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴とし、
- δ
hは、特定の相互作用力(例えば水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセプター等)を特徴とし、且つ
- δ
aは、式δ
a=(δ
p2+δ
h2)
1/2によって求められる。
【0081】
パラメータδ
p、δ
h、δ
D及びδ
aは、(J/cm
3)
1/2で表される。
【0082】
用語「炭化水素系油」は、炭素原子及び水素原子、並びに任意選択で酸素原子及び窒素原子から本質的に形成される又はこれらで構成されさえする、ケイ素原子又はフッ素原子を一切含有しない油を意味する。それは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含有してもよい。
【0083】
好ましくは、不揮発性無極性炭化水素系油は、鉱物又は合成起源の、直鎖状又は分枝状の炭化水素から選択されることが可能であり、例えば以下のものである:
- 液体パラフィン又はその誘導体
- スクワラン
- イソエイコサン
- ナフタレン油
- ポリブチレン、例えばAmoco社により販売又は製造されているIndopol H-100(モル質量又はMW=965g/mol)、Indopol H-300(MW=1340g/mol)及びIndopol H-1500(MW=2160g/mol)
- ポリイソブテン
- 水素化ポリイソブチレン、例えば日油株式会社により販売されているParleam(登録商標)、Amoco社により販売又は製造されているPanalane H-300 E(MW=1340g/mol)、Synteal社により販売又は製造されているViseal 20000(MW=6000g/mol)及びWitco社により販売又は製造されているRewopal PIB 1000(MW=1000g/mol)、又は代わりにNOF Corporation社により販売されているParleam Lite
- デセン/ブテンコポリマー、ポリブテン/ポリイソブテンコポリマー、特にIndopol L-14
- ポリデセン及び水添ポリデセン、例えばMobil Chemicals社により販売又は製造されているPuresyn 10(MW=723g/mol)及びPuresyn 150(MW=9200g/mol)、又は代わりにExxonMobil Chemical社により販売されているPuresyn 6
- 並びにそれらの混合物。
【0084】
好ましくは、本発明の組成物は、ポリブテン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリデセン及び/又は水添ポリデセン、並びにそれらの混合物から好ましくは選択される少なくとも1種の無極性油を含む。
【0085】
好ましい一実施形態によれば、本発明の組成物は、水添ポリイソブチレン及び水添ポリデセンから好ましくは選択される少なくとも1種の無極性炭化水素系油を含む。
【0086】
好ましくは、組成物中の無極性揮発性油の含量は、組成物が任意の無極性揮発性油を含む場合、組成物の総質量に対して5質量%〜60質量%、例えば10質量%〜45質量%を範囲とする。
【0087】
極性油:
別の特定の実施形態によれば、組成物は、少なくとも1種の不揮発性極性油を含む。前記油は、炭化水素系油、シリコーン油又はフルオロ油とすることができる。
【0088】
優先的には、前記不揮発性油は、極性炭化水素系油である。
【0089】
用語「シリコーン油」は、少なくとも1個のケイ素原子を含有し、特にSi-O基を含有する油を意味する。
【0090】
用語「フルオロ油」は、少なくとも1個のフッ素原子を含有する油を意味する。
【0091】
これらの油は、植物、鉱物、又は合成起源とすることができる。
【0092】
用語「炭化水素系油」は、炭素原子及び水素原子、並びに場合によって酸素原子及び窒素原子から本質的に形成され、又はこれらによって構成されさえする、ケイ素原子又はフッ素原子を一切含有しない油を意味すると企図される。それは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含有することができる。
【0093】
本発明の目的では、用語「極性油」は、25℃でのその溶解性パラメータδ
aが0(J/cm
3)
1/2以外である油を意味する。
【0094】
具体的には、炭化水素系不揮発性極性油は、以下の油の列挙、及びそれらの混合物から選択することができる:
- 炭化水素系植物油、例えば、4〜10個の炭素原子を含有する脂肪酸の液状トリグリセリド、例えば、ヘプタン酸若しくはオクタン酸トリグリセリド、又はホホバオイル
- 好ましくは以下から選択される、エステル油:
- 脂肪酸エステル、特に4〜22個の炭素原子のもの、特にオクタン酸の、ヘプタン酸の、ラノリン酸の、オレイン酸の、ラウリン酸の又はステアリン酸のもの、例えばジオクタン酸プロピレングリコール、モノイソステアリン酸プロピレングリコール又はジヘプタノン酸ネオペンチルグリコール
- 合成エステル、例えば式R
1COOR
2(式中、R
1は、4〜40個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状の脂肪酸残基を表し、且つR
2は、4〜40個の炭素原子を含有する特に分枝状である炭化水素系鎖を表し、但し、R
1+R
2≧16という条件がある)の油、例えばパーセリン油(オクタン酸セトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、C
12〜C
15安息香酸アルキル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、エルカ酸オレイル、イソステアリン酸イソステアリル、安息香酸2-オクチルドデシル、オクタン酸アルコール又はポリアルコール、デカン酸エステル又はリシノール酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル又はコハク酸2-ジエチルヘキシル;好ましくは、好ましい合成エステルR
1COOR
2(式中、R
1は、4〜40個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状の脂肪酸残基を表し、且つR
2は、4〜40個の炭素原子を含有する特に分枝状である炭化水素系鎖を表し、但し、R
1、R
2≧20という条件がある)
- 総炭素数が35〜70を範囲とする直鎖状脂肪酸エステル、例えばテトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル(MW=697g/mol)
- ヒドロキシル化エステル、好ましくは総炭素数が35〜70を範囲とするもの、例えばトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(MW=965g/mol)、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ステアリン酸グリセリル;ジイソノナン酸ジエチレングリコール
- 芳香族の酸と、4〜22個の炭素原子を含むアルコールとのエステル、例えばトリデシルトリメリテート(MW=757g/mol)
- 分枝状脂肪アルコール又は脂肪酸のC
24〜C
28エステル、例えば特許出願EP-A-0955039に記載のもの、特にクエン酸トリイソアラキジル(MW=1033.76g/mol)、テトライソノナン酸ペンタエリスリチル(MW=697g/mol)、トリイソステアリン酸グリセリル(MM=891g/mol)、トリス(2-デシル)テトラデカン酸グリセリル(MW=1143g/mol)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(MW=1202g/mol)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(MW=1232g/mol)、又はテトラキス(2-デシル)テトラデカン酸ペンタエリスリチル(MW=1538g/mol)
- 少なくとも1つのヒドロキシル化カルボン酸トリグリセリドを、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸でエステル化することによって得られる、任意選択で不飽和のポリエステル、例えばZenitech社により参照名Zeniglossで販売されているコハク酸及びイソステアリン酸ヒマシ油
- ジオールダイマーと二酸ダイマーとのエステルで、一般式HO-R
1-(-OCO-R
2-COO-R
1-)
h-OH
(式中、
R
1は、ジリノレン二酸の水素化によって得られるジオールダイマー残基を表し、
R
2は、水素化されたジリノレン二酸残基を表し、且つ
hは、1〜9を範囲とする整数を表す)
のもの、
特に、日本精化株式会社により商品名Lusplan DD-DA5(登録商標)及びDD-DA7(登録商標)で販売されているジリノール酸二酸とジリノレイルジオールダイマーとのエステル、及び
- 不飽和脂肪酸ダイマー及び/又はトリマーと、ジオールとの縮合によって得られるポリエステル、例えば特許出願FR-0853634に記載のもの、特に例えばジリノール酸と、1,4-ブタンジオールの縮合によって得られるポリエステル。この点に関して、Biosynthis社により名称Viscoplast 14436Hで販売されているポリマー(INCI名:ジリノール酸/ブタンジオールコポリマー)、又はポリオールと二酸ダイマーとのコポリマー、及びそれらのエステル、例えばHailuscent ISDAを特に挙げることができる
- 12〜26個の炭素原子を含有し、好ましくは分枝状である脂肪アルコール、例えばオクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール及びオレイルアルコール
- C
12〜C
26脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸、並びにそれらの混合物
- 植物起源の油、例えばゴマ油(820.6g/mol);及びC18-36酸トリグリセリド(Stearineries Dubois社からのDub TGI 24)
- 2つのアルキル鎖が場合によって同一であり又は異なる、炭酸ジアルキル、例えばCognis社により名称Cetiol CC(登録商標)で販売されている炭酸ジカプリリル、及び
【0095】
好ましくは、極性不揮発性炭化水素系油は、植物からの又は植物起源の炭化水素系油、エステル油、12〜26個の炭素原子を含有する脂肪アルコール、及び12〜26個の炭素原子を含有する脂肪酸、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0096】
好ましくは、本発明の組成物は、式R
1COOR
2(式中、R
1は、4〜40個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の脂肪酸残基を表し、R
2は、4〜40個の炭素原子を含む特に分枝状である炭化水素系鎖を表し、但し、R
1+R
2≧16である)の合成エステルから選択される少なくとも1種の不揮発性油を含む。
【0097】
好ましくは、本発明の組成物は、パーセリン油(オクタン酸セトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、C
12〜C
15安息香酸アルキル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ネオピペンタン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、エルカ酸オレイル、イソステアリン酸イソステアリル、安息香酸2-オクチルドデシル、オクタン酸アルコール又はポリアルコール、デカノン酸エステル又はリシノール酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、及びコハク酸2-ジエチルヘキシルから選択される少なくとも1種の不揮発性エステル油を含む。
【0098】
好ましくは、本発明の組成物は、ネオペンタン酸エステル、好ましくはネオペンタン酸オクチルドデシルから、及びパルミチン酸エステル、好ましくはパルミチン酸イソプロピルから選択される少なくとも1種の極性不揮発性油を含む。
【0099】
本発明の組成物は、不揮発性油の総含量を、組成物の総質量に対して15質量%〜90質量%、特定すると25質量%〜80質量%、好ましくは35質量%〜70質量%の範囲で含むことができる。
【0100】
別の実施形態によれば、極性不揮発性油は、フルオロ油であってもよい。
【0101】
用語「フルオロ油」は、少なくとも1個のフッ素原子を含む油を意味する。
【0102】
本発明で使用できるフルオロ油は、フルオロシリコーン油、フルオロポリエーテル、及びEP-A-847752の特許文献中に記載のフルオロシリコーン、及びペルフルオロ化合物から選択することができる。
【0103】
本発明によれば、用語「ペルフルオロ化合物」は、そこで全ての水素原子がフッ素原子で置換されている化合物を意味すると企図される。
【0104】
好ましい一実施形態によれば、本発明のフルオロ油は、ペルフルオロ油から選択される。
【0105】
本発明で使用できるペルフルオロ油の例として、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロペルヒドロフェナントレンを挙げることができる。
【0106】
好ましい一実施形態によれば、フルオロ油は、ペルフルオロペルヒドロフェナントレン、特にCreations Couleurs社により販売されているFiflow(登録商標)製品から選択される。特に、INCI名がペルフルオロペルヒドロフェナントレンであり、F2 Chemicals社により参照名Fiflow 220で販売されているフルオロ油を使用することができる。
【0107】
別の実施形態によれば、極性不揮発性油は、シリコーン油であってもよい。
【0108】
本発明で使用できる不揮発性シリコーン油は、特に粘度が25℃で9センチストーク(cSt)(9×10
-6m
2/s)以上で800000cSt未満、好ましくは50cStから600000cStの間、好ましくは100cStから500000cStの間であるシリコーン油から特に選択することができる。このシリコーンの粘度は、ASTM D-445規格に従って測定することができる。
【0109】
具体的には、不揮発性シリコーン油は、以下から選択することができる:
- 直鎖状又は分枝状の、不揮発性ポリジメチルシロキサン(PDMS)
- ペンダントであり又はシリコーン鎖の末端にあり、それぞれが2〜24個の炭素原子を含有する、アルキル、アルコキシ又はフェニル基を含むポリジメチルシロキサン
- フェニルシリコーン油、具体的には以下から選択されるもの:
- フェニルトリメチコン、特に例えば、特に参照名Dow Corning 556 Cosmetic Grade Fluidで販売されているフェニルトリメチルシロキシトリシロキサン
- フェニルジメチコン
- フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン
- ジフェニルジメチコン
- ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン
- 2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート、及び
- トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、特に例えばDow Corning社により参照名PH-1555 HRI又はDow Corning 555 Cosmetic Fluid (化学名:1,3,5-トリメチル-1,1,3,5,5-ペンタフェニルトリシロキサン、INCI名:トリメチルペンタフェニルトリシロキサン)で販売されているシリコーン油、及び
- トリメチルシロキシフェニルジメチコン、特に例えばWacker社により参照名Belsil PDM 1000で販売されている製品。
【0110】
好ましくは、組成物が不揮発性シリコーン油を含むとき、それは、非フェニル化シリコーン油から選択される。
【0111】
好ましくは、不揮発性シリコーン油は、INCI名がジメチコーンの、非フェニル化シリコーン油である。
【0112】
具体的には、不揮発性非フェニル化シリコーン油は、以下から選択することができる:
- 直鎖状又は分枝状の不揮発性ポリジメチルシロキサン(PDMS)
- ペンダントである又はシリコーン鎖の末端にある、それぞれが2〜24個の炭素原子を有する、アルキル、アルコキシ又はフェニルの各基を含むポリジメチルシロキサン。
【0113】
本発明の組成物は、不揮発性シリコーン油の総含量が、組成物の総質量に対して15質量%〜90質量%、特定すると25質量%〜80質量%、好ましくは35質量%〜70質量%を範囲として含むことができる。
【0114】
好ましくは、不揮発性油は、以下から選択される:
- ポリブテン、ポリイソブテン、水素化ポリイソブテン、ポリデセン及び/又は水素化ポリデセン、並びにそれらの混合物等の無極性炭化水素系油から好ましくは選択される無極性炭化水素系油
- 植物からの又は植物起源の炭化水素系油、エステル油、12〜26個の炭素原子を有する脂肪アルコール、及び12〜26個の炭素原子を有する脂肪酸、並びにそれらの混合物から好ましくは選択される極性炭化水素系油
- INCI名がジメチコーンである非フェニル化シリコーン油から好ましくは選択されるシリコーン油
- 並びにそれらの混合物。
【0115】
好ましくは、組成物が任意の極性揮発性油を含有する場合、極性揮発性油、好ましくは炭化水素系油及び/又はシリコーン油の含量は、組成物の総質量に対して15質量%〜90質量%、特定すると25質量%〜80質量%、好ましくは35質量%〜70質量%を範囲とする。
【0116】
特に有利な一実施形態によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種の無極性不揮発性油、及び少なくとも1種の極性不揮発性油を含む。
【0117】
揮発性油
別の実施形態によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種の揮発性油を含んでもよい。
【0118】
本発明の目的では、用語「揮発性油」は、室温及び大気圧(760mmHg)でケラチン物質と接触させると1時間未満の内に蒸発することができる油を意味する。本発明の揮発性有機溶媒及び揮発性油は、室温で液体である揮発性有機溶媒及び化粧用油であり、蒸気圧が、室温及び大気圧で非ゼロであり、特に0.13Pa〜40000Pa(10
-3〜300mmHg)、特に1.3Pa〜13000Pa(0.01〜100mmHg)、より特定すると1.3Pa〜1300Pa(0.01〜10mmHg)を範囲とする。
【0119】
これらの油は、炭化水素系油、シリコーン油若しくはフルオロ油、又はこれらの混合物とすることができる。
【0120】
特に、挙げることができる揮発性油には、揮発性炭化水素系油、とりわけ引火点(引火点は、具体的にはISO規格3679に従って測定される)が80℃以下である揮発性炭化水素系油、例えば8〜14個の炭素原子を含有する炭化水素系油であり、具体的には以下のものがある:
- 分枝状C
8〜C
14アルカン、例えば石油起源のC
8〜C
14イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、例えばイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られる)、イソデカン、及び例えば商品名Isopar又はPermethylで販売されている油
- 直鎖状のアルカン、例えば、Sasol社によりそれぞれの参照名Parafol 12-97及びParafol 14-97で販売されているn-ドデカン(C12)及びn-テトラデカン(C14)、及び更にそれらの混合物、特許出願WO2008/155059の実施例1及び2において得られるCognis社からのn-ウンデカン(C11)とn-トリデカン(C13)との混合物、並びにそれらの混合物。
【0121】
揮発性溶媒は、8〜14個の炭素原子を含有する揮発性炭化水素系油、及びそれらの混合物から好ましくは選択される。
【0122】
他の揮発性炭化水素系油として、とりわけ引火点が80℃以下である揮発性炭化水素系油として、室温で液体であるケトン、例えばメチルエチルケトン又はアセトン;短鎖エステル(合計で3〜8個の炭素原子を含有する)、例えば酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル又は酢酸n-ブチル;室温で液体であるエーテル、例えばジエチルエーテル、ジメチルエーテル又はジクロロジエチルエーテル;アルコール、特に2〜5個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の低級モノアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール又はn-プロパノールも挙げることができる。
【0123】
引火点が80℃超の揮発性炭化水素系油として、イソヘキサデカンを挙げることができる。
【0124】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、揮発性油を含まない。
【0125】
ペースト状脂肪物質
本発明の組成物は、少なくとも1種のペースト状脂肪物質を好ましくは含む。
【0126】
本発明の目的では、用語「ペースト状脂肪物質」は、可逆的な固体/液体の状態変化を受け、固体状態で異方性の結晶組織を示し、温度23℃で液体画分及び固体画分を含む、親油性脂肪化合物を示すと企図される。
【0127】
換言すれば、ペースト状脂肪物質の出発融点は、23℃未満とすることができる。23℃で測定したペースト状脂肪物質の液体画分は、ペースト状脂肪物質の9質量%〜97質量%を占めることができる。この液体画分は、23℃で、好ましくは15質量%から85質量%の間、より好ましくは40質量%から85質量%の間を占める。
【0128】
本発明の意味の中では、融点は、ISO規格11357-3、1999年に記載されている熱分析(DSC)において観察された最も高い吸熱ピークの温度に相当する。ペースト状脂肪物質の融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えばTA Instruments社製の名称MDSC 2920で販売されている熱量計を用いて測定することができる。
【0129】
測定プロトコルは、以下の通りである:
るつぼに入れたペースト状脂肪物質の試料5mgに、-20℃〜100℃を範囲とする第1の温度上昇を加熱速度10℃/分で施し、次いで、100℃〜-20℃に冷却速度10℃/分で冷却し、最後に、-20℃〜100℃を範囲とする第2の温度上昇を加熱速度5℃/分で施す。第2の温度上昇中に、空のるつぼが吸収する力と、ペースト状脂肪物質の試料を含有するるつぼが吸収する力との差の変化を、温度の関数として測定する。ペースト状脂肪物質の融点は、吸収された力の差の変化を温度の関数として表す曲線のピークの先端に相当する温度値である。
【0130】
23℃でのペースト状脂肪物質の質量による液体画分は、23℃で消費される融解熱の、ペースト状脂肪物質の融解熱に対する比に等しい。
【0131】
ペースト状脂肪物質の融解熱は、固体状態から液体状態へ転移するためにペースト状脂肪物質によって消費される熱である。ペースト状脂肪物質は、その質量の全てが結晶性固体形態であるときに、固体状態であると言われる。ペースト状脂肪物質は、その質量の全てが液体形態であるときに、液体状態であると言われる。
【0132】
ペースト状脂肪物質の融解熱は、TA Instruments社により名称MDSC 2920で販売されている熱量計等の示差走査熱量計(DSC)を用いて、ISO規格11357-3、1999年に従って、1分当たり5℃又は10℃の温度上昇をして得られたサーモグラムの曲線下面積に等しい。
【0133】
ペースト状脂肪物質の融解熱は、ペースト状脂肪物質を固体状態から液体状態へ変化させるために必要とされるエネルギーの量である。それは、J/gで表される。
【0134】
23℃で消費される融解熱は、固体状態から、23℃で試料が有する、液体画分及び固体画分からなる状態へ変化するために試料が吸収するエネルギーの量である。
【0135】
32℃で測定されるペースト状脂肪物質の液体画分は、ペースト状脂肪物質の30質量%〜100質量%を好ましくは占め、好ましくはペースト状脂肪物質の50質量%〜100質量%、より好ましくは60質量%〜100質量%を占める。32℃で測定されるペースト状脂肪物質の液体画分が100%に等しいとき、ペースト状脂肪物質の融解範囲の終点温度は、32℃以下である。
【0136】
32℃で測定されるペースト状脂肪物質の液体画分は、32℃で消費される融解熱の、ペースト状脂肪物質の融解熱に対する比に等しい。32℃で消費される融解熱は、23℃で消費される融解熱と同じ方法で算出される。
【0137】
ペースト状脂肪物質は、詳細には、合成脂肪物質、及び植物起源の脂肪物質から選択することができる。ペースト状脂肪物質は、植物起源の出発物質からの合成によって得ることができる。
【0138】
ペースト状脂肪物質は、以下から選択することができる:
- ラノリン及びその誘導体
- ワセリン(petroleum jelly)[ワセリン(petrolatum)としても知られる]
- ポリアルキレングリコールペンタエリスリトールエーテル、糖の脂肪アルキルエーテル及びそれらの混合物から選択されるポリオールエーテルで、5つのオキシエチレン(5 OE)単位を含むポリエチレングリコールペンタエリスリトールエーテル(CTFA名:PPG-5ペンタエリスリチルエーテル)、5つのオキシプロピレンレン(5 OP)単位を含むポリプロピレングリコールペンタエリスリチルエーテル(CTFA名:PEG-5ペンタエリスリチルエーテル)及びそれらの混合物、より特にPEG-5ペンタエリスリチルエーテル、Vevy社により名称Lanolideで販売されているPPG-5ペンタエリスリチルエーテルとダイズ油との混合物であり、構成要素が46/46/8の質量比にあり、46%のPEG-5ペンタエリスリチルエーテル、46%のPPG-5ペンタエリスリチルエーテル、及び8%のダイズ油の混合物
- ポリマー又は非ポリマーのシリコーン化合物
- ポリマー又は非ポリマーのフッ素化化合物
- ビニルポリマー、特に以下のもの:
・オレフィンホモポリマー及びコポリマー
・水素化ジエンホモポリマー及びコポリマー
・好ましくはC
8〜C
30アルキル基を含有する、(メタ)アクリル酸アルキルのホモポリマー又はコポリマーである、直鎖状又は分枝状のオリゴマー
・C
8〜C
30アルキル基を含有するビニルエステルのホモポリマー及びコポリマーであるオリゴマー
・C
8〜C
30アルキル基を含有するビニルエーテルのホモポリマー及びコポリマーであるオリゴマー
- 1種又は複数のC
2〜C
100及び好ましくはC
2〜C
50ジオール間のポリエーテル化から得られる脂溶性ポリエーテル
- エステル
- 並びに/又はそれらの混合物。
【0139】
脂溶性ポリエーテルの中で特に検討されるのは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとC
6〜C
30長鎖アルキレンオキシドとのコポリマーであり、より好ましくは、コポリマー中で、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの、アルキレンオキシドに対する質量比が5:95〜70:30であるものである。このファミリーにおいて、特に、長鎖アルキレンオキシドが、平均分子量1000〜10000を有するブロック状に配列されるようなコポリマー、例えばAkzo Nobel社により商品名Elfacos ST9で販売されているドデカンジオール(22mol)とポリエチレングリコール(45OE)とのエーテル等のポリオキシエチレン/ポリドデシルグリコールブロックコポリマーを挙げることができる。
【0140】
エステルの中で、以下が特に検討される:
- グリセロールオリゴマーのエステル、特にジグリセロールエステル、具体的にはアジピン酸とグリセロールとの縮合物(そこでグリセロールのヒドロキシル基の幾つかは、ステアリン酸、カプリン酸及びイソステアリン酸並びに12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸の混合物と反応している)、例えばSasol社により参照名Softisan649(登録商標)で販売されているポリアシルアジピン酸-2-ビス-ジグリセリル
- C
8〜C
30アルキル基を有するビニルエステルホモポリマー、例えばラウリン酸ポリビニル(特にChimex社により参照名Mexomer PPで販売されている)
- Alzo社により商品名Waxenol 801で販売されているプロピオン酸アラキジル
- フィトステロールエステル
- 脂肪酸トリグリセリド及びそれらの誘導体
- ペンタエリスリトールエステル
- 必要に応じてそれらの遊離のアルコール官能基又は酸官能基が、酸基又はアルコール基でエステル化された、ジオールダイマーと二酸ダイマーとのエステル、特にダイマージリノール酸エステル:こうしたエステルは、以下のINCI名を有するエステルから特に選択されうる:ビス-ベヘニル/イソステリル/ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルフィトステリル(Plandool G)、フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ダイマージリノール酸ベヘニル(Plandool H又はPlandool S)及びそれらの混合物
- マンゴー脂、例えば、AarhusKarlshamn社により参照名Lipex 203で販売されている製品
- 水添ダイズ油、水添ココナツオイル、水添アブラナ種子油、水添植物油の混合物、例えば、水添の、ダイズ、ココナツ、パーム及びアブラナの植物油の混合物、例えばAarhusKarlshamn社により参照名Akogel(登録商標)で販売されている混合物(INCI名:水添植物油)
- シアバター、特にINCI名がシアバター(Butyrospermum Parkii Butter)である製品、例えばAarhusKarlshamn社により参照名Sheasoft(登録商標)で販売されている製品
- 並びにそれらの混合物。
【0141】
好ましい一実施形態によれば、ペースト状脂肪物質は、エステル、特にジグリセロールエステル、及びそれらの混合物から選択される。
【0142】
ペースト状化合物の中で、ビス-ベヘニル/イソステアリル/ダイマージノレイルフィトステアリル、ビス(ジグリセリル)ポリ(2-アシルアジペート)、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、例えば高級アルコール工業株式会社により販売されているRisocast DA-L、及びイソステアリン酸水添ヒマシ油、例えば日清オイリオグループ株式会社により販売されているSalacos HCIS (V-L)、ラウリン酸ポリビニル、マンゴーバター、シアバター、水添ダイズ油、水添ココナツオイル、及び水添菜種油、又はそれらの混合物が、好ましくは選択されることになる。
【0143】
好ましくは、本発明の組成物は、ペースト状脂肪物質の総含量を、組成物の総質量に対して、0.1質量%〜50質量%を範囲とし、特定すると1質量%〜45質量%を範囲とし、特に5質量%〜40質量%を範囲として含む。
【0144】
疎水性シリカエアロゲル
本発明の組成物は、少なくともシリカエアロゲル粒子を含む。
【0145】
シリカエアロゲルは、シリカゲルの液体構成成分を空気と置き換えることによって(乾燥することによって)得られる多孔質材料である。
【0146】
それらは、液状媒体中でゾル-ゲル法を介して一般に合成され、次いで通常は超臨界流体(最もよく使用されるのは超臨界CO
2)で抽出することによって乾燥される。このタイプの乾燥は、孔及び材料の収縮を回避させることができる。ゾル-ゲル法及び種々の乾燥操作は、Brinker C.J.及びScherer G.W.、Sol-Gel Science、New York、Academic Press、1990年に詳細に記載されている。
【0147】
本発明で使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、1質量単位当たりの比表面積(S
M)を、500〜1500m
2/g、好ましくは600〜1200m
2/g、更に良好には600〜800m
2/gを範囲として有し、体積平均径(D[0.5])として表されるサイズを、1〜1500μm、更に良好には1〜1000μm、好ましくは1〜100μm、より特定すると1〜30μm、より好ましくは5〜25μm、更に良好には5〜20μm、なおも更に良好には5〜15μmを範囲として有する。
【0148】
一実施形態によれば、本発明で使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、体積平均径(D[0.5])で表されるサイズが、1〜30μm、好ましくは5〜25μm、更に良好には5〜20μm、なおも更に良好には5〜15μmを範囲とする。
【0149】
1単位質量当たりの比表面積は、国際基準ISO 5794/1(付録D)に対応するThe Journal of the American Chemical Society、第60巻、309頁、1938年2月に記載されているBET(ブルナウアー-エネット-テラー)法として知られる窒素吸収法によって求めることができる。BET比表面積は、検討中の粒子の合計比表面積に相当する。
【0150】
シリカエアロゲル粒子のサイズは、静的光散乱により、Malvern社からのMasterSizer 2000型等の市販の粒径アナライザを用いて測定することができる。データは、ミー散乱理論に基づいて処理される。この理論は、等方性粒子について厳密であり、非球形粒子の事例において「有効な」粒径を求めることを可能にする。この理論は、詳細には、Van de Hulst, H. C.、「Light Scattering by Small Particles」、第9章及び第10章、Wiley、New York、1957年の刊行物に記載されている。
【0151】
有利な一実施形態によれば、本発明で使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、1質量単位当たりの比表面積(S
M)が、600〜800m
2/gを範囲とし、体積平均径(D[0.5])として表されるサイズが、5〜20μm、なおも更に良好には5〜15μmを範囲とする。
【0152】
本発明で使用されるシリカエアロゲル粒子は、有利には、タップ密度ρが、0.02g/cm
3〜0.10g/cm
3、好ましくは0.03g/cm
3〜0.08g/cm
3、好ましくは0.05g/cm
3〜0.08g/cm
3を範囲とすることができる。
【0153】
本発明の関連では、タップ密度として知られるこの密度は、以下のプロトコルに従って評価することができる:
粉末40gをメスシリンダーに注入し、次いでメスシリンダーをStampf Volumeter社製のStav 2003装置の上に置き、次いでメスシリンダーを2500回の連続充填動作にかけ(この操作は2つの連続した試験間の体積差が2%未満になるまで繰り返す)、次いで充填した粉末の最終体積Vfを直接メスシリンダー上で測定する。タップ密度は、m/Vf比によって求められ、この場合、40/Vfである(Vfはcm
3で表され、mはgで表される)。
【0154】
好ましい一実施形態によれば、本発明で使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、1単位体積当たりの比表面積S
Vが、5〜60m
2/cm
3、好ましくは10〜50m
2/cm
3、更に良好には15〜40m
2/cm
3を範囲とする。
【0155】
1単位体積当たりの比表面積は、関係式S
v=S
M×ρ(式中、上で定義した通り、ρは、g/cm
3で表されるタップ密度であり、S
Mは、m
2/gで表される1単位質量当たりの比表面積である)によって得られる。
【0156】
好ましくは、本発明の疎水性シリカエアロゲル粒子は、湿潤点で測定される吸油能が、5〜18ml/g、好ましくは6〜15ml/g、更に良好には8〜12ml/gを範囲とする。
【0157】
湿潤点で測定される吸油能は、Wpと記され、均質なペーストを得るために粒子100gに加える必要のある油の量に相当する。
【0158】
これは、「湿潤点」法、又は標準的なNF T 30-022に記載されている、油の粉末取込み量を求める方法に従って測定される。これは、粉末の利用可能な表面上へ吸収される油の量に、及び/又は粉末により吸収される油の量に相当し、以下に説明する湿潤点の測定による:
【0159】
m=2gの量の粉末をガラスプレート上に置き、次いで油(イソノナノン酸イソノニル)を滴下で加える。4〜5滴の油を粉体へ加えた後、スパチュラを用いて混合し、油と粉体との集成体が形成されるまで油の添加を続ける。形成された時点から、油を1回に1滴の割合で加え、続いて該混合物をスパチュラで磨りつぶす。硬く滑らかなペーストが得られたら、油の添加を中止する。このペーストは、ひび割れることなしに又は塊を形成することなしに、ガラスプレート上に広がらなければならない。次いで、使用した油の体積Vs(mlで表される)を書き留める。油取込み量は、Vs/m比に相当する。
【0160】
本発明で使用されるエアロゲルは、好ましくはシリル化シリカの、疎水性シリカエアロゲル(INCI名:シリル化シリカ)である。
【0161】
用語「疎水性シリカ」は、OH基がシリル基Si-Rn、例えばトリメチルシリル基で官能化されるように、その表面が、シリル化剤、例えばハロゲン化シラン、例えばアルキルクロロシラン、シロキサン、詳細にはジメチルシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン又はシラザンで処理された任意のシリカを意味すると理解される。
【0162】
表面がシリル化によって改質された疎水性シリカエアロゲル粒子の調製に関しては、米国特許第7470725号を参照されたい。
【0163】
好ましくは、トリメチルシリル基で表面改質された疎水性シリカエアロゲル粒子が使用されることになる。
【0164】
本発明で使用できる疎水性シリカエアロゲルとして挙げることができる例には、Dow Corning社により名称VM-2260(INCI名:シリル化シリカ)で販売されているエアロゲルがあり、その粒子は、平均サイズが約1000ミクロンであり、1質量単位当たりの比表面積が600〜800m
2/gを範囲とする。
【0165】
Cabot社により参照名Aerogel TLD 201、Aerogel OGD 201、Aerogel TLD 203、Enova(登録商標)Aerogel MT 1100及びEnova Aerogel MT 1200で販売されているエアロゲルもまた挙げることができる。
【0166】
Dow Corning社により名称VM-2270(INCI名:シリル化シリカ)で販売されているエアロゲルが、好ましくは使用されることになり、その粒子は、平均サイズが5〜15ミクロンを範囲とし、1質量単位当たりの比表面積が600〜800m
2/gを範囲とする。
【0167】
好ましくは、疎水性シリカエアロゲル粒子は、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して0.1質量%〜15質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%を範囲とする活性物質含量で存在する。
【0168】
好ましくは、疎水性シリカエアロゲル粒子は、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して0.1質量%〜6質量%、より好ましくは0.2質量%〜4質量%を範囲とする活性物質含量で存在する。
【0169】
疎水性シリカエアロゲル粒子は、特に本発明の組成物の関連では、特にリップグロス組成物中で、例えばナノシリカ粒子[例えばそのINCI名がジメチルシリル化シリカであり、特にEvonik Degussa社により参照名Aerosil(登録商標)R 972で販売されている化合物]等の従来技術で使用される充填剤について用いられる含量よりも少ない含量範囲で使用できる。具体的には、ナノシリカ粒子は、従来技術では、組成物の総質量に対して2質量%から7質量%の間の質量含量で使用される。
【0170】
このことは、特にグロスのある堆積物を得られることが重要である組成物の場合において、具体的にはリップグロス(又は固体組成物のスティック)等のリップ組成物の場合において有利であると判明されうる。具体的には、充填剤が、組成物で得られた堆積物の上にマット効果を有するため、得られた堆積物のグロスのある性質がそれによって影響されることなく、又はできるだけ影響が少なく、配合物を十分に増粘化する及び/又はゲル化することができると有利である。
【0171】
好ましくは、本発明の組成物は、ナノメートルサイズのシリカを含まず、好ましくは組成物は疎水性処理されたヒュームドシリカ、具体的には例えばそのINCI名がジメチルシリル化シリカである化合物を含まない。
【0172】
ビニルピロリドン/オレフィンコポリマー
先に述べたとおり、本発明の組成物は、少なくとも1種のビニルピロリドン/α-オレフィンコポリマーを含む。有利には、α-オレフィンは、2〜40個の炭素原子、より特定すると10〜40個の炭素原子を含む。
【0173】
そのため、本発明の関連において使用されるポリマーは、ビニルピロリドン誘導体、より正確にはポリビニルピロリドンとα-オレフィンとのコポリマーであるか、又はポリビニルピロリドンアルキル誘導体であるか、のいずれかであると定義されてもよい。
【0175】
それらは、特に、以下の式で表される単位を含む:
【0177】
(式中、
R
1基からR
12基は、互いに独立して、飽和の直鎖又は分枝鎖のC
10〜C
40アルキル基、又は水素原子を表し、前記R
1基からR
12基のうちの少なくとも1つは水素原子以外である。
値Yは、0に等しくてもよく、Xは、強制的に非ゼロである)
【0178】
10〜40個の炭素原子、より特定すると14〜32個の炭素原子、優先的には28〜32個の炭素原子を含むアルキル基の中で、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ドコシル及びトリアコンチルの各基を挙げることができる。
【0179】
有利には、本発明のポリマーの質量平均分子量は、5000から30000g/molの間、特定すると6000から20000g/molの間であり、XとYの係数は、関数において選択される。
【0180】
好ましくは、Yは、非ゼロである。R
1基からR
9基、並びにR
11基及びR
12基は、好ましくは水素を表す。好ましくは、R
10は14〜32個の炭素原子を含み、X/Yの比は、好ましくは1/5から5/1の間である。
【0181】
この実施形態に相当するポリマーの中で、PVP/ヘキサデセンコポリマー(CTFA名)又はPVP/エイコセンコポリマー(CTFA名)を挙げることができる。
【0182】
市販製品の中で、分子量が7300である、約15〜23%のピロリドン単位を含むPVP/ヘキサデセンコポリマーである、GAF社により名称Antaron V-216で販売されている製品、又は約20〜28質量%のピロリドン単位を含んで質量平均分子量が8600であるPVP/エイコセンコポリマーである、名称Antaron V-220で販売されている製品を挙げることができる。
【0183】
本発明のポリマーは、アルキル鎖の長さに応じて、室温で多少なりとも粘性である稠度を有する。そのため、それは、室温(25℃)で約40〜55ポアズ(4〜5.5Pa.s)の粘度を有する液体形態にあってもよく、ワックスの稠度に近い、よりペースト状の形態又は固体の形態にさえあってもよい。
【0184】
好ましくは、ビニルピロリドン/α-オレフィンポリマーは、PVP/ヘキサデセンコポリマー(CTFA名)及びPVP/エイコセンコポリマー(CTFA名)、又はそれらの混合物から選択される。
【0185】
有利には、本発明の組成物は、ビニルピロリドンとC
2〜C
40α-オレフィンとのコポリマーの含量が、組成物の総質量に対して2質量%から8質量%の間であり、好ましくは組成物の総質量に対して2.5質量%から7質量%の間である。
【0186】
別の実施形態によれば、組成物は、ペースト状脂肪性物質を含まない。
【0187】
炭化水素系樹脂
好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも1種の炭化水素系樹脂を含む。
【0188】
好ましくは、炭化水素系樹脂(粘着化樹脂としても知られる)は、数平均分子量が、10000g/mol以下であり、特に250〜5000g/molを範囲とし、更に良好には2000g/mol以下であり、特に250〜2000g/molを範囲とする。
【0189】
数平均分子量(Mn)は、ゲル透過液体クロマトグラフィー(THF溶媒、直鎖状ポリスチレン標準液によって作成された検量線、屈折率検出器)によって求められる。
【0190】
本発明の組成物の樹脂は、有利には、粘着化樹脂として知られる。こうした樹脂は、特に、Handbook of Pressure Sensitive Adhesive、Donatas Satas編、第3版、1989年、609〜619頁に記載されている。
【0191】
好ましくは、炭化水素系樹脂は、それらが含んでいるモノマーのタイプに応じて以下のように分類できる低分子量のポリマーから選択される:
- インデン炭化水素系樹脂、好ましくは例えば、主な比率のインデンモノマーと、少ない比率の、スチレン、メチルインデン及びメチルスチレン並びにそれらの混合物から選択されるモノマーとの重合から誘導される樹脂。これらの樹脂は、任意選択で水素化されてもよい。これらの樹脂は、分子量が、290〜1150g/molを範囲とすることができる。
挙げることができるインデン樹脂の例には、Exxon Chem.社により参照名Escorez 7105で、Neville Chem.社によりNevchem 100及びNevex 100で、Sartomer社によりNorsolene S105で、Hercules社によりPicco 6100で、並びにResinall Corp.社によりResinallで販売されているもの、又はEastman Chemical社により名称「Regalite」で販売されている水素化インデン/メチルスチレン/スチレンコポリマー、具体的にはRegalite R 1100、Regalite R 1090、Regalite R-7100、Regalite R1010 Hydrocarbon Resin及びRegalite R1125 Hydrocarbon Resinがある。
- 脂肪族ペンタジエン樹脂、例えば、1,3-ペンタンジエン(トランス-又はシス-ピペリレン)の主なモノマーと、イソプレン、ブテン、2-メチル-2-ブテン、ペンテン及び1,4-ペンタンジエン、並びにそれらの混合物から選択される少ないモノマーとの重合から誘導されるもの。これらの樹脂は、分子量が、1000〜2500g/molを範囲とすることができる。
こうした1,3-ペンタンジエン樹脂は、例えばEastman Chemical社により参照名Piccotac 95で、Exxon Chemicals社によりEscorez 1304で、Neville Chem.社によりNevtac 100で、又はGoodyear社によりWingtack 95で販売されている。
- ペンタンジエンとインデンとの混合樹脂、これは、上記のもの等のペンタンジエンモノマーとインデンモノマーとの混合物の重合から誘導され、例えばExxon Chemicals社により参照名Escorez 2101で、Neville Chem.社によりNevpene 9500で、Hercules社によりHercotac 1148で、Sartomer社によりNorsolene A 100で、並びにGoodyear社によりWingtack 86、Wingtack Extra及びWingtack Plusで販売されている樹脂
- シクロペンタンジエンダイマーのジエン樹脂、例えば、インデン及びスチレンから選択される第1のモノマーと、ジシクロペンタンジエン、メチルジシクロペンタンジエン及び他のペンタジエンダイマー等のシクロペンタンジエンダイマー、並びにそれらの混合物から選択される第2のモノマーとの重合から誘導されるもの。これらの樹脂は、一般に、分子量が500〜800g/molを範囲とし、例えば、Arizona Chemical Co.社により参照名Betaprene BR 100で、Neville Chem.社によりNeville LX-685-125及びNeville LX-1000で、Hercules社によりPiccodiene 2215で、Lawter社によりPetro-Rez 200で、又はResinall Corp.社によりResinall 760で販売されている
- イソプレンダイマーのジエン樹脂、例えばα-ピネン、β-ピネン及びリモネン、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーの重合から誘導されるテルペン系樹脂。これらの樹脂は、分子量が、300〜2000g/molを範囲とすることができる。こうした樹脂は、Hercules社により名称Piccolyte A115及びS125で、又はArizona Chem.社により名称Zonarez 7100若しくはZonatac 105 Liteで販売されている。
【0192】
更に挙げることができるのは、修飾された特定の樹脂、例えば水素化された樹脂、例えばEastman Chemical Co.社により販売されている名称Eastotac C6-C20 Polyolefin、Exxon Chemicals社により販売されている参照名Escorez 5300、又はNeville Chem.社により販売されている樹脂Nevillac Hard若しくはNevroz、Hercules社により販売されている樹脂Piccofyn A-100、Piccotex 100若しくはPiccovar AP25、又はSchenectady Chemical Co.社により販売されている樹脂SP-553である。
【0193】
好ましい一実施形態によれば、炭化水素系樹脂は、インデン炭化水素系樹脂、脂肪族ペンタジエン樹脂、ペンタンジエンとインデンとの混合樹脂、シクロペンタンジエンダイマーのジエン樹脂、及びイソプレンダイマーのジエン樹脂、又はそれらの混合物から選択される。
【0194】
好ましくは、組成物は、前述した炭化水素系樹脂、特にインデン炭化水素系樹脂、及び脂肪族ペンタジエン樹脂、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む。好ましい一実施形態によれば、炭化水素系樹脂は、インデン炭化水素系樹脂から選択される。
【0195】
好ましい一実施形態によれば、樹脂は、水素化インデン/メチルスチレン/スチレンコポリマーから選択される。
【0196】
具体的には、水素化インデン/メチルスチレン/スチレンコポリマー、例えば、Eastman Chemical社により名称Regaliteで販売されているもの、例えばRegalite R 1100、Regalite R 1090、Regalite R-7100、Regalite R 1010 Hydrocarbon Resin及びRegalite R 1125 Hydrocarbon Resinが使用できる。
【0197】
好ましくは、炭化水素系樹脂は、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して1質量%〜45質量%を範囲とする、好ましくは3質量%〜30質量%を範囲とする、より優先的には5質量%〜25質量%を範囲とする含量で存在する。
【0198】
炭化水素系ブロックコポリマー
好ましくは、本発明の組成物は、炭化水素系ブロックコポリマーを含んでもよく、好ましくは先に定義した、液体脂肪相に溶解性又は分散性であるブロックコポリマーを含んでもよい。
【0199】
こうした化合物は、組成物の有機相を増粘化する又はゲル化することが可能である。好ましくは、炭化水素系ブロックコポリマーは、非晶質コポリマーであり、これは、結晶形態をもたないポリマーを意味する。こうした化合物は、皮膜形成の性質を有し、即ちそれは、皮膚へ適用されるときに皮膜を形成することが可能である。
【0200】
炭化水素系ブロックコポリマーは、特に、ジブロック、トリブロック、マルチブロック、放射状若しくは星型のコポリマー、又はそれらの混合形とすることができる。
【0201】
こうした炭化水素系ブロックコポリマーは、米国特許第A-2002/005562号及び米国特許第A-5221534号に記載されている。
【0202】
好ましくは、炭化水素系ブロックコポリマーは、少なくとも1種のスチレンモノマーから得られる。
【0203】
該コポリマーは、そのガラス転移温度が好ましくは20℃未満、好ましくは0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下である、少なくとも1つのブロックを含有することができる。前記ブロックのガラス転移温度は、-150℃から20℃の間、特に-100℃から0℃の間とすることができる。
【0204】
本発明の組成物中に存在する炭化水素系ブロックコポリマーは、オレフィンの重合により形成された非晶質コポリマーである。オレフィンは、特に、エラストマーのエチレン性不飽和モノマーであってもよい。
【0205】
挙げることができるオレフィンの例には、特に、1つ又は2つのエチレン性不飽和を含有し、2〜5個の炭素原子を含有するエチレン性カーバイドモノマーがあり、例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン又はペンタジエンである。
【0206】
有利には、炭化水素系ブロックコポリマーは、スチレン及びオレフィンの、非晶質ブロックコポリマーである。
【0207】
少なくとも1つのスチレンブロック、並びにブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン及びイソプレン又はそれらの混合物から選択される単位を含んだ少なくとも1つのブロックを含むブロックコポリマーが、特に好ましい。
【0208】
好ましい一実施形態によれば、炭化水素系ブロックコポリマーは、モノマーの重合後に残っているエチレン性不飽和を減らすために水素化される。
【0209】
詳細には、炭化水素系ブロックコポリマーは、任意選択で水素化された、スチレンブロック及びエチレン/C3〜C4アルキレンブロックを含有するコポリマーである。
【0210】
好ましい一実施形態によれば、本発明の組成物は、好ましくは水素化された、スチレン-エチレン/プロピレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブタジエンコポリマー、及びスチレン-エチレン/ブチレンコポリマーから好ましくは選択される、少なくとも1種のジブロックコポリマーを含む。ジブロックポリマーは、特にKraton Polymers社により名称Kraton(登録商標)G1701Eで販売されている。
【0211】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、好ましくは水素化された、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、及びスチレン-ブタジエン-スチレンコポリマーから好ましくは選択される少なくとも1種のトリブロックコポリマーを含む。トリブロックポリマーは、特にKraton Polymers社により名称Kraton(登録商標)G1650、Kraton(登録商標)G1652、Kraton(登録商標)D1101、Kraton(登録商標)D1102及びKraton(登録商標)D1160で販売されている。
【0212】
本発明の一実施形態によれば、炭化水素系ブロックコポリマーは、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロックコポリマーである。
【0213】
本発明の好ましい一実施形態によれば、スチレン-ブチレン/エチレン-スチレントリブロックコポリマーと、スチレン-エチレン/ブチレンジブロックコポリマーとの混合物、特にKraton Polymers社により名称Kraton(登録商標)G1657Mで販売されている製品を使用することが特に可能である。
【0214】
好ましい別の実施形態によれば、本発明の組成物は、スチレン-ブチレン/エチレン-スチレン水素化トリブロックコポリマーと、エチレン-プロピレン-スチレン水素化星型ポリマーとの混合物を含み、こうした混合物は、場合によって特にイソデカンの中に、又は別の油の中にある。こうした混合物は、例えばPenreco社により商品名Versagel(登録商標)M5960及びVersagel(登録商標)M5670で販売されている。
【0215】
有利には、前述のもの等のジブロックコポリマーは、ポリマー性ゲル化剤として使用され、具体的には、前述したように、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマー、又はジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーとの混合物である。
【0216】
炭化水素系ブロックコポリマー(又は炭化水素系ブロックコポリマーの混合物)は、組成物の総質量に対して0.1質量%〜15質量%を範囲とする、好ましくは0.5質量%〜10質量%を範囲とする含量で存在することができる。
【0217】
好ましくは、組成物が固体形態にあるとき、炭化水素系ブロックコポリマーは、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して0.1〜10質量%、より優先的には1質量%〜5質量%を範囲とする含量で存在する。
【0218】
好ましくは、組成物が液体形態にあるとき、炭化水素系ブロックコポリマーは、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して3質量%〜15質量%を範囲とする、より優先的には5質量%〜10質量%を範囲とする含量で存在する。
【0219】
好ましくは、炭化水素系樹脂の、炭化水素系ブロックコポリマーに対する質量比は、1から10の間である。
【0220】
より好ましくは、炭化水素系樹脂の、炭化水素系ブロックコポリマーに対する質量比は、1から8の間である。
【0221】
より好ましくは、炭化水素系樹脂の、炭化水素系ブロックコポリマーに対する質量比は、1から5の間、好ましくは1から3の間である。
【0222】
デキストリンエステル
本発明の組成物はまた、少なくとも1種の、デキストリンの、好ましくはC
12〜C
24及び特にC
14〜C
18脂肪酸エステルを含む。
【0223】
好ましくは、デキストリンエステルは、デキストリンと、C
12〜C
18及び特にC
14〜C
18脂肪酸とのエステルである。
【0224】
好ましくは、デキストリンエステルは、ミリスチン酸デキストリン及び/又はパルミチン酸デキストリン、並びにそれらの混合物から選択される。
【0225】
特定の一実施形態によれば、デキストリンエステルは、ミリスチン酸デキストリンであり、特に千葉製粉株式会社により名称Rheopearl MKL-2で販売されている製品である。
【0226】
好ましい一実施形態によれば、デキストリンエステルは、パルミチン酸デキストリンである。この製品は、例えば千葉製粉株式会社により名称Rheopearl TL(登録商標)及びRheopearl KL(登録商標)で販売されているものから選択することができる。
【0227】
本発明の組成物は、特に好ましくは、デキストリンエステルを、組成物の総質量に対して0.1質量%から10質量%の間、好ましくは0.5質量%から5質量%の間の総質量で含むことができる。
【0228】
本発明の組成物は、特に好ましくは、パルミチン酸デキストリンを、組成物の総質量に対して0.1質量%から10質量%の間、好ましくは0.5質量%から5質量%の間の総質量で含むことができ、特に例えば千葉製粉株式会社により名称Rheopearl TL(登録商標)及びRheopearl KL(登録商標)で販売されている製品がある。
【0229】
スクロースのC
2〜C
6カルボン酸エステル
本発明の組成物はまた、少なくとも1種のスクロースのC
2〜C
6カルボン酸エステルも含んでよい。
【0230】
より詳細には、この、スクロースのC
2〜C
6カルボン酸エステルは、酢酸とイソブチル酸とスクロースとの混合エステルから選択され、具体的にはEastman Chemical社により名称Sustane SAIB Food Grade Kosher(INCI名:イソ酪酸酢酸スクロース)で販売されている製品等の二酢酸ヘキサキス(2-メチルプロパン酸)スクロースがある。
【0231】
有利には、本発明の組成物は、スクロースのC
2〜C
6カルボン酸エステルを、前記組成物の総質量に対して1質量%〜15質量%、好ましくは3質量%〜10質量%含むことができる。
【0232】
保湿剤
本発明の組成物は、少なくとも1種の保湿剤を含んでもよい。好ましくは、保湿剤は、以下から選ばれうる:好ましくはC
2〜C
8の、より好ましくはC
3〜C
6の、ソルビトール、多価アルコール、好ましくは例えばグリセロール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセロール及びグリセロール、及びそれらの混合物。
【0233】
特定の一様式によれば、保湿剤は、グリセロールである。
【0234】
保湿剤は、好ましくは、脂肪相中に、組成物の総質量に対して0.1質量%から10質量%の間の含量で存在する。
【0235】
色素
本発明の組成物は、少なくとも1種の色素(着色剤としても知られる)を好ましくは含み、それは、水溶性又は脂溶性の色素、顔料及び真珠層、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0236】
本発明の組成物はまた、水溶性の色素及び粉体の色素から選択される1種又は複数の色素も含むことができ、例えば当業者に周知である、顔料、真珠層、及び輝くフレークである。
【0237】
特に好ましい様式では、本発明の組成物は、顔料及び/又は真珠層から選択される少なくとも1種の色素を含む。
【0238】
詳細には、本発明の組成物は、顔料及び/又は真珠層(それらが組成物中に存在するとき)がサスペンションのままであり沈降しないように十分に安定でなければならない。
【0239】
色素は、組成物中に、組成物の質量に対して0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜15質量%を範囲とする含量で存在することができる。
【0240】
用語「顔料」は、生じる皮膜を着色する及び/又は不透明化することが企図された、水溶液に不溶性である、白色又は有色の、無機又は有機の粒子の意味であると理解されるべきである。
【0241】
顔料は、化粧用組成物の総質量に対して、0.01質量%〜20質量%、特に0.1質量%〜15質量%、特に0.2質量%〜10質量%の比率で存在することができる。
【0242】
本発明で使用できる鉱物顔料として、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム、更に酸化亜鉛、酸化鉄又は酸化クロム、フェリクブルー、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー及びクロム水和物を挙げることができる。
【0243】
顔料はまた、例えば、セリサイト/茶色の酸化鉄/二酸化チタン/シリカのタイプであってもよい構造を有する顔料とすることもできる。こうした顔料は、例えば、Chemicals and Catalysts社により参照名Coverleaf NS又はJSで販売されており、30の領域にコントラスト比を有する。
【0244】
色素は、例えば酸化鉄を含有するシリカミクロスフェアのタイプのものであってもよい構造の顔料も含むことができる。この構造を有する顔料の例は、三好化成株式会社から参照名PC Ball PC-LL-100 Pで販売されている製品であり、この顔料は、黄色の酸化鉄を含有するシリカミクロスフェアからなる。
【0245】
本発明で使用できる有機顔料の中で、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、コチニールカーマイン系レーキ又はバリウム、ストロンチウム、カルシウム若しくはアルミニウムをベースとするレーキ、又は代わりに特許文書EP-A-542669、EP-A-787730、EP-A-787731及びWO-A-96/08537に記載のジケトピロロピロール(DPP)を挙げることができる。
【0246】
用語「真珠層」は、真珠光沢を有していてもいなくてよく、特にある種の軟体類によってその殻中で生成される、又は代わりに合成され、且つ光学干渉を介して色効果を有する、任意の形態の着色粒子の意味であると理解されるべきである。
【0247】
真珠層は、真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄で被覆されたチタンマイカ、オキシ塩化ビスマスで被覆されたチタンマイカ、酸化クロムで被覆されたチタンマイカ、有機染料で被覆されたチタンマイカ、更にオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料から選択することができる。それらはまた、その表面で、金属酸化物及び/又は有機色素の少なくとも2つの連続層が重ね合わされているマイカ粒子であってもよい。
【0248】
更に挙げることができる真珠層の例には、酸化チタンで、酸化鉄で、天然顔料で又はオキシ塩化ビスマスで被覆された天然マイカがある。
【0249】
市販されている真珠層の中でも、Engelhard社により販売されている真珠層Timica、Flamenco及びDuochrome(マイカベースである)、Merck社により販売されているTimiron真珠層、Eckart社により販売されているPrestigeマイカベースの真珠層、及びSun Chemical社により販売されているSunshine合成マイカベースの真珠層を挙げることができる。
【0250】
真珠層は、より詳細には、黄、ピンク、赤、ブロンズ、オレンジ、茶、金及び/又は銅の、色又は色調を有することができる。
【0251】
本発明の関連で使用できる真珠層の例証として、特にEngelhard社により名称Brilliant gold 212G(Timica)、Gold 222C(Cloisonne)、Sparkle gold(Timica)、Gold 4504(Chromalite)及びMonarch gold 233X(Cloisonne)で販売されている金色の真珠層;特にMerck社により名称Bronze fine(17384)(Colorona)及びBronze(17353)(Colorona)で、且つEngelhard社により名称Super bronze(Cloisonne)で販売されているブロンズ色の真珠層;特にEngelhard社により名称Orange 363C(Cloisonne)及びOrange MCR 101(Cosmica)で、且つMerck社により名称Passion orange(Colorona)及びMatte orange(17449)(Microna)で販売されているオレンジ色の真珠層;特にEngelhard社により名称Nu-antique copper 340XB(Cloisonne)及びBrown CL4509(Chromalite)で販売されている茶色の真珠層;特にEngelhard社により名称Copper 340A(Timica)で販売されている銅の色合いの真珠層;特にMerck社により名称Sienna fine(17386)(Colorona)で販売されている赤の色合いの真珠層;特にEngelhard社により名称Yellow(4502)(Chromalite)で販売されている黄の色合いの真珠層;特にEngelhard社により名称Sunstone G012(Gemtone)で販売されている金の色合いの赤い真珠層;特にEngelhard社により名称Tan opale G005(Gemtone)で販売されているピンク色の真珠層;特にEngelhard社により名称Nu antique bronze 240 AB(Timica)で販売されている金の色合いの黒色の真珠層、特にMerck社により名称Matte blue(17433)(Microna)で販売されている青色の真珠層、特にMerck社により名称Xirona Silverで販売されている銀色がかった色合いの白色の真珠層、及び特にMerck社により名称Indian summer(Xirona)で販売されている金色-緑色でピンク色-オレンジ色の真珠層、並びにそれらの混合物を特に挙げることができる。
【0252】
顔料及び真珠層は、組成物中に、組成物の総質量に対して0.1質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜15質量%を範囲とする総含量で存在することができる。
【0253】
用語「染料」は、油等の脂肪物質に、又は水性アルコール相に溶解性である、一般に有機である化合物の意味であると理解されるべきである。
【0254】
本発明の化粧用組成物はまた、水溶性又は脂溶性の染料も含んでよい。脂溶性の染料は、例えば、Sudan red、DC Red 17、DC Green 6、β-カロテン、Sudan brown、DC Yellow 11、DC Violet 2、DC Orange 5及びキノリンyellowである。水溶性染料は、例えば、ビーツの根の汁、又はメチレンブルーである。
【0255】
本発明の化粧品組成物はまた、色素として、特異な光学的効果を有する少なくとも1種の材料を含有してもよい。
【0256】
この効果は、従来技術の単純な色調効果、即ち、標準的な色素によりもたらされる統一され安定化された効果、例えば単色性顔料とは異なる。本発明の目的では、用語「安定化された」は、観測の角度に応じて、又は代わりに温度変化に応答して、色のばらつきの影響がないことを意味する。
【0257】
例えば、この材料は、金属グリント、ゴニオクロマチック着色剤、回折顔料、サーモクロミック剤、蛍光増白剤、更に繊維、特に干渉繊維を有する粒子から選択することができる。言うまでもなく、これらの種々の材料を組み合わせて、2つの効果、又は本発明の新規な効果の発現さえ同時に得ることができる。
【0258】
粉体相
本発明の組成物は、少なくとも1種の粉体相を好ましくは含む。
【0259】
好ましくは、粉体相は、組成物の総質量に対して、0.1質量%から25質量%の間、好ましくは0.1質量%から20質量%の間、好ましくは0.5質量%から20質量%の間を占める。
【0260】
好ましくは、粉体相は、組成物の総質量に対して、1質量%から20質量%の間を占める。
【0261】
好ましくは、本発明の粉体相は、少なくともシリカエアロゲル粒子、任意選択で少なくとも1種の追加の充填剤、並びに/又は少なくとも1種の、真珠層及び/又は顔料から選択される色素、並びにそれらの混合物を含む。
【0262】
追加の充填剤
本発明の組成物は、少なくとも1種又は複数の追加の充填剤を含有することができる。
【0263】
用語「充填剤」は、組成物が製造される温度に関わりなく、組成物の媒体に不溶性である、無色又は白色の、無機又は合成の、任意の形の粒子の意味であると理解されるべきである。これらの充填剤は、組成物のレオロジー又はテクスチャを改変するために特に役立つ。
【0264】
追加の充填剤は、無機又は有機であってよく、且つ結晶学的な形態(例えば層状、立方体、六角形、斜方晶等)に関係なく、小平板形、球状若しくは楕円形の、任意の形態のものであってよい。
【0265】
好ましくは、前記追加の充填剤は、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ベントン、ポリアミド[Nylon(登録商標)]粉末[Atochem社からのOrgasol(登録商標)]、ポリ-β-アラニン粉末及びポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー[Teflon(登録商標)]粉末、ラウロイルリジン、デンプン、窒化ホウ素、ポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリルミクロスフェア等の中空ポリマーミクロスフェア、例えば、Expancel(登録商標)(Nobel Industrie社)、アクリル酸コポリマーミクロスフェア[Dow Corning社からのPolytrap(登録商標)]、及びシリコーン樹脂ミクロビーズ[例えば、東芝株式会社からのTospearls(登録商標)]、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフェア[Maprecos社からのSilica Beads(登録商標)]、エラストマーのポリオルガノシロキサン粒子、ガラス若しくはセラミックのマイクロカプセル、及び8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を含有する有機カルボン酸に由来する金属石けん、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛又はミリスチン酸マグネシウムから選択される。
【0266】
好ましくは、前記追加の充填剤は、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ベントン、ポリアミド[Nylon(登録商標)]粉末[Atochem社からのOrgasol(登録商標)]、ポリ-β-アラニン粉末及びポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー[Teflon(登録商標)]粉末、ラウロイルリシン、デンプン、窒化ホウ素、ポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリルミクロスフェア等の中空ポリマーミクロスフェア、例えばExpancel(登録商標)(Nobel Industrie社)、アクリル酸コポリマーミクロスフェア[Dow Corning社からのPolytrap(登録商標)]、及びシリコーン樹脂ミクロビーズ[例えば、東芝株式会社からのTospearls(登録商標)]、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフェア[Maprecos社からのSilica Beads(登録商標)]、エラストマーのポリオルガノシロキサン粒子、ガラス若しくはセラミックのマイクロカプセル、及び8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を含有する有機カルボン酸に由来する金属石けん、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛又はミリスチン酸マグネシウムから選択される。
【0267】
本発明による組成物は、追加の充填剤として、トリメチロールヘキシルラクトンを含んだコポリマーを含む粒子もまた含むことができる。詳細には、それは、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンのコポリマーであってもよい。こうした粒子は、特に、例えば東色ピグメント株式会社から名称Plastic Powder D-400(登録商標)又はPlastic Powder D-800(登録商標)で市販されている。
【0268】
好ましくは、組成物は、追加の充填剤の総質量を、組成物の総質量に対して0.1質量%から15質量%の間、特に0.1質量%から10質量%の間、含有する。
【0269】
添加剤
本発明の組成物は、化粧品及び皮膚科学において従来技術で添加剤として使用される任意の成分を更に含んでもよい。
【0270】
これらの添加剤は、有利には、抗酸化剤、増粘化剤、甘味剤、酸性化剤又は塩基性化剤、グリコール等の保存剤、挙げたもの以外の皮膜形成性ポリマー、及び炭化水素系ブロックコポリマー、並びにそれらの混合物から選択される。
【0271】
言うまでもなく、当業者であれば、本発明の組成物の有利な特性が、想定される添加によって、全く又は実質的に悪影響を受けないように、これらの任意の追加の化合物及び/又はそれらの量を慎重に選択することになる。
【0273】
用語「液体」は、流体のテクスチャ、即ち特にクリーミー又はペースト状の形態にあってもよいものを意味する。
【0274】
用語「流体」は、特に、室温(20〜25℃)で固体でなく、その粘度を測定することが可能である組成物を意味する。
【0275】
本発明の組成物は、特に、皮膚又は唇をメイクアップする及び/又はケアすることが企図されたグロス形態にあってもよい。
【0276】
粘度を測定するためのプロトコル:
粘度測定は、No.4スピンドルが備え付けられたRheomat RM180粘度計を用いて25℃で一般に実施し、測定は、組成物中でスピンドルが回転してから10分後に(この時間の後に粘度の安定及びスピンドルのスピン速度の安定が観察される)、せん断速度200rpmで実施する。
【0277】
好ましくは、組成物は、25℃で、粘度が1Pa.sから25Pa.sの間であり、好ましくは2Pa.sから20Pa.sの間である。
【0278】
用語「の間の」及び「を範囲とする」は、上下値を含むと理解されるべきである。
【0279】
以下の実施例は、例示として付与するものであり、限定する性質は一切ない。
【0280】
別段の指定がない限り、以下の実施例における値は、組成物の総質量に対する質量%として表す。
【実施例】
【0281】
以下の液体リップスティック組成物を調製する(含量は活性材料の質量で表す)。
【0282】
【表1】
【0283】
調製方法
第1の段階で、顔料を、存在する不揮発性油の混合物の一部の中で、3本ロール粉砕機の中で砕いた。
次いで、不揮発性油及び他の脂肪物質(ワックス、ペースト状物質)の残りを、加熱パンの中で混合し、該混合物を、ライネリブレンダーを用いて撹拌しながら、均質な混合物が得られるまで、温度100℃へ持ち込んだ。
次いで、砕いた顔料材料を前記混合物中へ組み入れ、混合物が均質になるまで撹拌を続けた。
次いで、シリカエアロゲル、マイカ及び真珠層を加え、得られた混合物を撹拌した。
該混合物を、撹拌しながら、60℃以下の温度へ冷却した。
最後に、該組成物を加熱袋の中へ注入し、次いで室温で24時間置いた。
【0284】
組成物の評価
粘度: 先に記載したプロトコルによれば、組成物は25℃で5.9Pa.sの粘度を有する。
【0285】
安定性:組成物の安定性を、組成物を、室温で、24時間貯蔵することによって、且つ油性相の分離、及び/又は顔料及び/又は真珠層の沈降が起きるかどうかを観察することによって、評価する。
【0286】
組成物の安定性はまた、450×gの速度で10分間、遠心分離にかけた後にも評価した。
【0287】
組成物は、室温及び遠心分離下で、24時間、安定である。
【0288】
その上、組成物は、唇の上に適用しやすく、且つ薄く、均質な、粘着性でない、グロスのある且つ快適な皮膜を形成した。