特許第6445615号(P6445615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6445615読み出し専用の光情報記録媒体および該光情報記録媒体の反射膜形成用スパッタリングターゲット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445615
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】読み出し専用の光情報記録媒体および該光情報記録媒体の反射膜形成用スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/258 20130101AFI20181217BHJP
   G11B 7/26 20060101ALI20181217BHJP
   G11B 7/24085 20130101ALI20181217BHJP
   G11B 7/24056 20130101ALI20181217BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20181217BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20181217BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G11B7/258
   G11B7/26 531
   G11B7/24085
   G11B7/24056
   C23C14/06 R
   C23C14/08 K
   C23C14/08 D
   C23C14/34 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-94733(P2017-94733)
(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公開番号】特開2018-190478(P2018-190478A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田内 裕基
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−203470(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/004025(WO,A1)
【文献】 特開平07−021585(JP,A)
【文献】 特開2002−096559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/258
C23C 14/06
C23C 14/08
C23C 14/34
G11B 7/24056
G11B 7/24085
G11B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に反射膜および光透過層が少なくとも1層ずつ順次積層され、青色レーザーにより情報の再生が行われる読み出し専用の光情報記録媒体であって、
前記反射膜は、Sn−Zn−W酸化物(ただし、Wの組成比は、金属酸化物におけるO(酸素)を除いた全金属元素の合計に対して40原子%以上)、Sn−Zn−Nb酸化物、In−W酸化物およびIn−Nb酸化物のうち少なくとも1つからなり、かつ、前記反射膜の膜厚が20nm以上70nm以下であることを特徴とする読み出し専用の光情報記録媒体。
【請求項2】
前記反射膜は、波長405nmにおける屈折率が1.9以上、かつ、波長405nmにおける消衰係数が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載の読み出し専用の光情報記録媒体。
【請求項3】
基板上に反射膜および光透過層が少なくとも1層ずつ順次積層された構造を含み、青色レーザーにより情報の再生が行われる、読み出し専用の光情報記録媒体における反射膜形成用スパッタリングターゲットであって、
Sn−Zn−W酸化物(ただし、Wの組成比は、金属酸化物におけるO(酸素)を除いた全金属元素の合計に対して40原子%以上)、Sn−Zn−Nb酸化物、In−W酸化物およびIn−Nb酸化物のうち少なくとも1つからなることを特徴とする読み出し専用の光情報記録媒体における反射膜形成用スパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色レーザーを使用して再生を行う読み出し専用型のBD(Blu−ray Disc(登録商標)又はブルーレイディスク)等の光情報記録媒体、および該光情報記録媒体の反射膜形成用スパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
光情報記録媒体(光ディスク)は、記録再生原理に基づき、読み出し専用型、追記型又は書き換え型の3種類に大別される。
【0003】
図1に、読み出し専用の光情報記録媒体(1層光ディスク)の代表的な構成を模式的に示す。図1に示すように、読み出し専用の光情報記録媒体100は、透明プラスチックなどの基板10の上に、Ag、Al、Auなどを主成分とする反射膜20と、光透過層30とが順次積層された構造を有している。基板10には、ランド・ピット(記録データ)と呼ばれる凹凸の組み合わせによる情報が記録されており、例えば、厚さ1.1mm、直径12cmのポリカーボネート製基板が用いられる。光透過層30は、例えば光透過性樹脂の塗布・硬化によって形成される。記録データの再生は、光ディスクに照射されたレーザー光の位相差や反射差を検出することによって行われる。
【0004】
図1には、ランド・ピットの組み合わせによる情報が記録された基板10上に、反射膜20および光透過層30がそれぞれ1層ずつ形成された1層光ディスクを示しているが、例えば図2に示すように、第1の情報記録面40および第2の情報記録面50を備えた2層光ディスクも用いられる。詳細には、図2の2層光ディスクは、凹凸のランド・ピット(記録データ)の組み合わせによる情報が記録された基板10上に、第1の反射膜22、第1の光透過層32、第2の反射膜24、および第2の光透過層34が順次積層された構成を有しており、第1の光透過層32には、基板10とは別の情報がランド・ピットの組み合わせによって記録されている。
【0005】
光ディスクに用いられる前記反射膜としては、これまで、Au、Cu、Ag、Al及びこれらを主成分とする合金が汎用されてきた。
【0006】
このうち、Auを主成分とする反射膜は、化学的安定性(耐久性)に優れ、記録特性の経時変化が少ないという利点を有するが、極めて高価であり、また、例えばBDの記録再生に使用される青色レーザー(波長405nm)に対し、十分高い反射率が得られないという問題がある。また、Cuを主成分とする反射膜は安価であるが、従来の反射膜材料の中で最も化学的安定性に劣っているほか、Auと同様、青色レーザーに対する反射率が低いという欠点があり、用途が制限されている。これに対し、Agを主成分とする反射膜では、実用波長領域である400〜800nmの範囲で充分高い反射率を示しており、高い化学的安定性を持つことから、現在、青色レーザーを使用する光ディスクにおいて広く利用されている。
【0007】
一方、Alを主成分とするAl基合金の反射膜は、安価で、かつ、波長405nmにおいて充分高い反射率を有しているが、Ag系やAu系の反射膜に比べて耐久性に劣っている。そこで、Al基合金反射膜をDVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)へ適用する場合には、反射膜の厚さをおおむね、40nm程度に充分厚くして耐久性の向上を図っている。ところが、このような厚さのAl系反射膜を、青色レーザーを使用するBD−ROM(Blu−ray Disc Read Only Memory)やHD DVD−ROM(High−Definition Digital Versatile Disc Read Only Memory)などに適用すると、記録信号(再生信号)の精度が低下(すなわち、ジッターが上昇)し、安定した再生(再生安定性)を行うことができないという問題があった。
【0008】
また、DVDやBDでは情報記録層が複数あるため、レーザー入射側から見て奥の情報記録層の信号を記録再生するためには、レーザー入射側から見て手前の層の透過光を利用する必要がある。しかし、上記のような厚さのAl系反射膜を適用した場合、レーザー入射側から見て手前の層における、レーザーの反射や吸収により、レーザー入射側から見て奥の層における反射率が小さくなってしまい、十分なS/N(シグナル−ノイズ比)が得られないという問題があった。
【0009】
一方、Al系反射膜における再生安定性や耐久性を高めるため、例えば、特許文献1〜特許文献4に示す方法が提案されている。
【0010】
このうち特許文献1には、記録信号に応じたピットを有するピット列が形成された光ディスク基板と、ピットが形成された面に成膜された反射膜と、反射膜に形成された光透過層とを有してなる光ディスクにおいて、光透過層からみたピット列が250nm以下の長さおよび幅を有する微細化されたピットを含み、Al、Ag、Auの反射膜の厚さが20nm以下に低減された光ディスクが開示されている。一般に、ピットの微細化は信号再生の低下を招くが、特許文献1では、反射膜の厚さを20nm以下に制御することによってジッター劣化の問題を回避し、再生安定性を高めている。しかし、反射膜の厚さを20nm以下に低減すると、実用上充分な耐久性が得られないという問題がある。
【0011】
特許文献2には、基板表面に形成されるピットおよびピット間のスペースを基板長さとの関係で制御することにより、再生信号のジッター特性を改善する技術が開示されている。
【0012】
特許文献3には、温度や湿度が急激に変化する条件下でも良好な耐久性を有する再生専用型光ディスクとして、4%Taを含有するAl反射層(厚さ100nm)を備えた光ディスクが実施例の欄に開示されている。
【0013】
特許文献4には、Cr、Fe、Tiをそれぞれ1〜4%含有するAl基合金反射膜が開示されており、このような合金組成とすることにより、反射率が高く、表面が平滑で(Raは約5〜10nm)、温度変化に伴う結晶粒の成長が小さく反射率の変化が小さい(耐久性に優れた)反射膜が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第00/65584号
【特許文献2】特開2006−66003号公報
【特許文献3】特公平7−62919号公報
【特許文献4】特開2007−092153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献1〜特許文献4に示す方法のいずれにおいても、高い反射率や低ジッター(再生信号の時間軸上のゆらぎが少ないこと)により優れた再生安定性を確保することや、あるいは耐久性について性能を満足できていたとしても、これら性能を両立することはできていない。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、BD−ROMやHD DVD−ROMのように青色レーザーを使用する光ディスクに好適に用いられる反射膜を備えた読み出し専用光情報記録媒体において、高い反射率および低ジッターにより再生安定性に優れており、かつ、耐久性も良好な、読み出し専用光情報記録媒体を提供することにある。また、上記光情報記録媒体の反射膜形成用スパッタリングターゲットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の金属酸化物により形成される反射膜を備えた読み出し専用光情報記録媒体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[]に係るものである。
[1]基板上に反射膜および光透過層が少なくとも1層ずつ順次積層され、青色レーザーにより情報の再生が行われる読み出し専用の光情報記録媒体であって、 前記反射膜は、Sn−Zn−W酸化物(ただし、Wの組成比は、金属酸化物におけるO(酸素)を除いた全金属元素の合計に対して40原子%以上)、Sn−Zn−Nb酸化物、In−W酸化物およびIn−Nb酸化物のうち少なくとも1つからなり、かつ、前記反射膜の膜厚が20nm以上70nm以下であることを特徴とする読み出し専用の光情報記録媒体。
[2]前記反射膜は、波長405nmにおける屈折率が1.9以上、かつ、波長405nmにおける消衰係数が0.1以下であることを特徴とする前記[1]に記載の読み出し専用の光情報記録媒体。
]基板上に反射膜および光透過層が少なくとも1層ずつ順次積層された構造を含み、青色レーザーにより情報の再生が行われる、読み出し専用の光情報記録媒体における反射膜形成用スパッタリングターゲットであって、 Sn−Zn−W酸化物(ただし、Wの組成比は、金属酸化物におけるO(酸素)を除いた全金属元素の合計に対して40原子%以上)、Sn−Zn−Nb酸化物、In−W酸化物およびIn−Nb酸化物のうち少なくとも1つからなることを特徴とする読み出し専用の光情報記録媒体における反射膜形成用スパッタリングターゲット
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い反射率および低ジッターにより再生安定性に優れており、かつ、耐久性も良好な、読み出し専用光情報記録媒体を提供することができる。また、上記性能を満足する光情報記録媒体における反射膜形成用スパッタリングターゲットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、読み出し専用の光情報記録媒体(1層光ディスク)の円周方向の要部を模式的に示す断面図である。
図2図2は、他の読み出し専用の光情報記録媒体(2層光ディスク)の円周方向の要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、高い反射率および低ジッターにより再生安定性に優れており、かつ、耐久性も良好な読み出し専用光情報記録媒体であって、特に青色レーザーを用いて再生を行うBD−ROMやHD DVD−ROM(特には、2層型のBD−ROMやHD DVD−ROM)などに好適に用いられる光情報記録媒体(光ディスク)を提供するため、鋭意検討を行ってきた。
【0022】
その結果、反射膜としてSn及びZnを含む金属酸化物、又はInを含む金属酸化物を適用することにより、高い反射率および低ジッターにより再生安定性に優れており、更に、優れた耐久性をも実現できることを見出した。
【0023】
なお、本明細書において、「再生安定性に優れる」とは、後述する実施例で示す通り、初期(加速環境試験前)におけるディスク反射率が5.0%以上であり、かつ、初期ジッター値が8.5%以下であることを意味する。また、「耐久性に優れる」とは、後述する実施例で示す通り、温度80℃、相対湿度が約85%の環境下で96時間保持する加速環境試験を行ったときの、加速環境試験前後の反射率の低下量(試験後の反射率−試験前の反射率)が10.0%以下(絶対値)であり、かつ加速環境試験後のジッターが8.5%以下であることを意味する。
【0024】
以下、上記本発明の構成に到達した経緯について説明する。本発明者は、再生安定性に優れ、かつ、耐久性にも優れた金属酸化物を用いた新規の反射膜を開発するに当たり、各種の金属酸化物材料について加速環境試験前後の光学特性変化および再生安定性の挙動を調査した。具体的には,ピット・ランドが形成されたポリカーボネート基板上にスパッタリング法によって種々の金属酸化物薄膜を各種膜厚で成膜した後、紫外線硬化樹脂の光透過層を成膜した1層BD−ROMディスクを作製し、ジッター値を測定したり、耐久性を測定した。その結果、以下のことが判明した。
【0025】
Sn(スズ)及びZn(亜鉛)を含む酸化物、又はIn(インジウム)酸化物を用いることにより、高い成膜レートを確保した上でジッター値の劣化がないことを確認した。さらに、W(タングステン)またはNb(ニオブ)を混合することで屈折率が向上し、反射率が更に向上することを確認した。
【0026】
また、これら金属酸化物の混合比率にもよるが、反射膜としての膜厚は20nm以上であれば十分な反射率が得られることを確認した。一方、膜厚が70nm超えでは反射率が小さくなりすぎるとともに、再生安定性が低下することを確認した。各種反射膜の結晶性を確認したところアモルファス構造を有しており、加速環境試験後においてもアモルファス構造を保っており光学特性の変化が小さいことを確認した。以上の実験結果に鑑み、本発明においては、再生安定性に極めて優れ、かつ、耐久性にも優れた読み出し専用光情報記録媒体を特定することができた。
【0027】
以下、本発明の実施の形態につき、要件ごとに具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態につき限定されるものではない。
【0028】
(金属酸化物)
本発明の読み出し専用の光情報記録媒体に用いられる反射膜である金属酸化物について詳しく説明する。
【0029】
本発明にかかる金属酸化物は、Sn及びZnを含む金属酸化物、又はInを含む金属酸化物である。SnやZnを金属元素として用いる場合には、Sn及びZnを併用して金属酸化物を形成することが重要であり、後述する実施例で示すように、Sn単独の金属酸化物やZn単独の金属酸化物では本発明の効果は得られない。一方で、Inを金属元素として用いる場合には、In単独の金属酸化物として本発明の効果が得られる。
【0030】
ところで、Sn酸化物、Zn酸化物及びIn酸化物は、スパッタリングにおける成膜レートが高く、かつ、屈折率が大きいことが特徴である。Sn及びZnを併用した金属酸化物やIn単独の金属酸化物を反射膜として用いることにより、屈折率を低下させることなく、加速環境試験後の光学特性変化を小さくすることが可能となる。これは、Sn及びZnを含む金属酸化物の場合は、SnとZnの原子半径の違いにより、反射膜の構造にひずみを与えることができ、アモルファス構造とすることができた結果、加速環境試験による構造変化を抑制できるためと考えられる。また、In酸化物の場合は、In酸化物単体で構造安定性が高いため、加速環境試験による構造変化が小さいためと考えられる。
【0031】
ただし、Sn単独の金属酸化物やZn単独の金属酸化物では、加速環境試験による結晶化が進みやすいと考えられるため、上記の作用効果は得られない。
【0032】
なお、Snの組成比については、金属酸化物におけるO(酸素)を除いた全金属元素(Sn及びZn以外の金属元素を含む場合には、この金属元素も含む。)の合計に対する組成比が、95原子%以下とすることが好ましく、90原子%以下とすることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、耐久性向上および反射率向上の効果が十分に得られるためである。一方、特に耐久性確保の観点からは、Snの組成比は、10原子%以上とすることが好ましく、15原子%以上とすることが更に好ましい。
【0033】
同様に、Znの組成比については、金属酸化物におけるO(酸素)を除いた全金属元素の合計に対する組成比が、60原子%以下とすることが好ましく、50原子%以下とすることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、耐久性向上の効果が十分に得られるためである。同様に、耐久性向上の観点からは、Znの組成比は、5原子%以上とすることが好ましく、10原子%以上とすることが更に好ましい。
【0034】
本発明にかかるSn及びZnを含む金属酸化物又はInを含む金属酸化物は、更に、W(タングステン)又はNb(ニオブ)の少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの元素は、Sn及びZnを含む金属酸化物又はInを含む金属酸化物に添加されることで、更なる高い屈折率を確保することができる。結果として、光情報記録媒体の反射膜において、高い反射率を実現することが可能となる。なお、これら金属元素の添加により、高い屈折率を確保することができる理由については明らかではないが、単体で高い屈折率を有するタングステン化合物やニオブ化合物における金属原子と酸素の結合の構造に影響を受けることなく、Sn及びZnを含む金属酸化物又はInを含む金属酸化物がアモルファス構造を保つためであると考えられる。
【0035】
Wを金属酸化物に含める場合のWの組成比については、金属酸化物におけるO(酸素)を除いた全金属元素の合計に対する組成比が、5原子%以上とすることが好ましく、10原子%以上とすることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、反射率向上の効果が得られるためである。一方、耐久性向上の観点からは、Wの組成比は、80原子%以下とすることが好ましく、70原子%以下とすることが更に好ましい。
【0036】
同様に、Nbを金属酸化物に含める場合のNbの組成比については、金属酸化物におけるO(酸素)を除いた全金属元素の合計に対する組成比が、3原子%以上とすることが好ましく、5原子%以上とすることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、反射率向上の効果が得られるためである。一方、膜形成にかかる時間(スパッタリングレート)の観点からは、Nbの組成比は、50原子%以下とすることが好ましく、40原子%以下とすることが更に好ましい。
【0037】
以上、本発明に係る金属酸化物を反射膜として用いる場合、上述の通り、高い反射率および低ジッターにより再生安定性に優れており、かつ、優れた耐久性を両立することができる。更に、金属酸化物を用いているため、従来のAgを用いた反射膜に比べ、製造コストの面でも有利となる。
【0038】
(反射膜)
続いて、本発明の読み出し専用の光情報記録媒体に用いられる反射膜について詳しく説明する。
【0039】
上記の通り、本発明に係る反射膜は、Sn及びZnを含む金属酸化物、又はInを含む金属酸化物である材料から構成されることを特徴とする。
【0040】
反射膜の膜厚については、反射率が小さくなりすぎることを抑制する観点から、20nm以上とする必要があり、好ましくは30nm以上である。一方、膜厚が厚くなりすぎると、光学的な干渉により反射率が小さくなるため、70nm以下とする必要があり、好ましくは60nm以下である。
【0041】
反射膜の屈折率については、高い反射率を確保する観点から、波長405nmにおける屈折率が1.9以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。また、反射膜の消衰係数については、消衰係数が高すぎると、光の吸収率が高くなるため透過性が低下し、レーザー入射側から見て奥の層の反射率が小さくなってしまう。このため、波長405nmにおける消衰係数が0.1以下であることが好ましく、0.07以下であることがより好ましい。なお、本発明に係る反射膜の屈折率および消衰係数の測定方法については、分光エリプソメトリとする。
【0042】
(その他の光情報記録媒体の構成)
本発明の読み出し専用の光情報記録媒体は、上記金属酸化物を反射膜として用いたところに特徴があり、当該金属酸化物からなる反射膜が適用される光ディスクの構成や種類(光透過層、基板などの種類)は特に限定されず、通常用いられるものを採用することができる。
【0043】
本発明に用いられる基板の種類は特に限定されず、光ディスク用基板に汎用される樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などを用いることができる。価格や機械的特性などを考慮すると、ポリカーボネートの使用が好ましい。
【0044】
基板の厚さは、おおむね、0.4〜1.2mmの範囲内であることが好ましい。また、基板上に形成されるピットの深さは、おおむね50〜100nmの範囲内であることが好ましい。
【0045】
本発明に用いられる光透過層の種類も限定されず、例えば、紫外線硬化樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。光透過層の厚さは、1層光ディスクでは100μm程度であることが好ましく、2層光ディスクでは、第1の光透過層の厚さは25μm程度、第2の光透過層の厚さは75μm程度であることが好ましい。
【0046】
本発明に用いられる金属酸化物からなる反射膜は、例えば、スパッタリング法、蒸着法などによって成膜することができるが、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法によれば、上記の金属元素及び酸素が均一に分散するので均質な膜が得られ、安定した光学特性や耐久性が得られるからである。
【0047】
スパッタリング時における成膜条件は特に限定されないが、例えば、以下のような条件を採用することが好ましい。
・基板温度:室温〜50℃
・到達真空度:1×10−5Torr以下(1×10−3Pa以下)
・成膜時のガス圧:0.1〜1.0Pa、酸素分圧:1〜50%
・DCスパッタリングパワー密度(ターゲットの単位面積当たりのDCスパッタリングパワー):1.0〜20W/cm
【0048】
(スパッタリングターゲット)
本発明にかかる読み出し専用の光情報記録媒体における反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットとしては、Sn及びZnを含む金属酸化物又はInを含む金属酸化物を用いるのが良い。すなわち、本発明に係る反射膜の成分組成と基本的に同一のものを用いるのが良い。また、Sn及びZnを含む金属酸化物又はInを含む金属酸化物は、上記で説明した通り、W又はNbの少なくとも1種を含むことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットを用いることで、所望の成分組成の反射膜を容易に成膜することができる。
【0049】
また、本発明にかかるスパッタリングターゲットは、体積抵抗率が1Ωcm以下であることが、直流電源を用いたスパッタリングを安定に行うためには好ましい。
【0050】
スパッタリングターゲットは、溶解・鋳造法、粉末焼結法、スプレイフォーミング法などのいずれの方法によっても製造することができるが、生産性などを考慮すると、粉末焼結法の使用が好ましい。
【0051】
成膜について、酸素雰囲気で反応性スパッタリングを行うことでZnやSnの金属をスパッタリングターゲットとして用いることもできるが、これらは融点が低いため、高パワーによる成膜での溶融を避けるためには、Sn酸化物やZn酸化物を原料とし、粉末焼結法で製造することが好ましい。WやNbは、金属粉末と金属酸化物粉末のいずれでも原料とすることができる。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、その趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
<実施例1>
(1層BD−ROMの作製)
本実施例では、以下のようにして表1に示す種々の1層BD−ROM(No.1〜No.13)を作製した。
【0054】
まず、ランド・ピットを有するNiスタンパーを用い、ポリカーボネートを射出成型することによって厚さ1.1mmのBD−ROM基板を得た。得られたBD−ROM基板上に、表1に示す種々の成分組成(表1中のNo.2〜No.13の各金属酸化物の組成は、Oを除く全金属元素の合計に対する各元素の割合を示している。)の金属酸化物又は金属ターゲットを用いて、酸素雰囲気で反応性スパッタリングを行い、表1に示す膜厚の反射膜をそれぞれ形成した。なお、スパッタリング条件は、Arガス流量:20sccm、Arガス圧:2mTorr、成膜パワー:DC400W、到達真空度:2.0×10−6Torr以下とした。反射膜の厚さは、スパッタリング時間を変化させることによって制御した。
【0055】
続いて、スピンコート法により厚さが100μmとなるように紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線照射により樹脂を硬化させて光透過層を形成した。このようにして、各種組成の反射膜をもつ1層BD−ROMを作製した。
【0056】
(ジッターの測定)
パルステック社製ODU−1000およびテクトロニクス社製タイムインターバルアナライザTA820を用い、以下の条件でジッターを測定した。本実施例では、初期(加速環境試験前)におけるジッターが8.5%以下のものを再生安定性に優れるとし、合格とした。
再生レーザーパワー:1〜2mW
ディスク回転速度:4.98m/s
【0057】
(反射率の測定)
反射率は、パルステック社製ODU−1000を用い、読み出しパワー0.35mWで再生を行なった後、横河電機社製デジタルオシロスコープ(商品名DL1640L)を用い、反射信号の最大レベル(反射強度、単位:mV)を測定し、この反射強度をディスク反射率に換算して「反射率」と定義した。本実施例では、初期(加速環境試験前)におけるディスク反射率が5.0%以上のものを合格とした。
【0058】
(耐久性の評価)
作製したBD−ROMの一部について、温度80℃、相対湿度が約85%の大気雰囲気中で96時間保持する加速環境試験を行った。本実施例では、加速環境試験前後の反射率の低下量(試験後の反射率−試験前の反射率)が10.0%以下(絶対値)であるものを合格とした。また、加速環境試験後のジッターが8.5%以下であるものを合格とした。
【0059】
これらの結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果より、次のように考察できる。すなわち、本発明で規定する金属酸化物を用いた反射膜(表1のNo.4〜No.13)は、初期(加速環境試験前)の反射率が5.0以上と高く、初期ジッター値についても8.5%以下の低い値を示している。よって、再生安定性に優れていることが読み取れる。また、反射率の変化率(加速環境試験前後の反射率の低下量)が10.0%以下(絶対値)と低く、加速環境試験後のジッターも8.5%以下の低い値を示しており、耐久性に優れていることが読み取れる。以上の結果より、本発明の実施例であるNo.4〜No.13は、再生安定性に優れ、かつ、耐久性にも優れるものであり、総合判定として「○」とした。
【0062】
これに対し、純Al膜やSn酸化物やZn酸化物など、本発明で規定する金属酸化物を用いていないものは、高反射率を得られないか、加速環境試験により反射率が低下したり、加速環境試験後のジッターが高くなるなど、耐久性の劣化が生じる結果となった。
【0063】
具体的に、No.1は、反射膜が純Al膜からなるため、初期の反射率は著しく高いものの、加速環境試験後は反射率が大きく低下し、かつ、加速環境試験前後ともにジッターが増大する結果となった。
【0064】
また、No.2は、反射膜がSn単体の金属酸化物からなるため、初期の反射率が低かった。No.3は、反射膜がZn単体の金属酸化物からなるため、反射率の変化率が著しく低いものとなった。以上の結果より、本発明の比較例であるNo.1〜No.3は、再生安定性又は耐久性において劣るものであり、総合判定として「×」とした。
【0065】
なお、SnとZnの組成比が同一である、No.4(Sn−Zn系)とNo.6〜No.8(Sn−Zn−W系)で比較した場合、Wが添加されているNo.6〜No.8の方が高い屈折率を確保することができた結果、更なる高い反射率を示した。同様に、SnとZnの組成比が同一である、No.4(Sn−Zn系)とNo.9又はNo.10(Sn−Zn−Nb系)で比較した場合においても、Nbが添加されているNo.9又はNo.10の方が高い屈折率を確保することができた結果、更なる高い反射率を示した。更に、No.11(In系)とNo.12(In−W系)又はNo.13(In−Nb系)で比較した場合においても、W又はNbが添加されているNo.12又はNo.13の方が高い屈折率を確保することができた結果、更なる高い反射率を示した。以上の結果より、W又はNbを添加することによる反射率の向上が読み取れる。
【0066】
<実施例2>
本発明で規定する金属酸化物を用いた反射膜の膜厚の影響を調べるため、実施例1のNo.4であるSn70Zn30Oに対し、膜厚を表2のように変化させたこと以外は、上記実施例1と同様にして、1層BD−ROMを作製した。
【0067】
このようにして得られた各1層BD−ROMについて、実施例1の場合と同じ条件で、初期(加速環境試験前)におけるジッターの測定及び反射率の測定を行った。なお、初期におけるジッターが8.5%以下であり、かつ、初期におけるディスク反射率が5.0%以上のものを再生安定性に優れるとし、総合判定として「○」とした。また、上記要件を満たさないものを、総合判定として「×」とした。
【0068】
これらの結果を表2に示す。なお、表2のNo,14及びNo.18について、「ジッター」及び「反射率」の結果を「−」と表記しているのは、反射率が低すぎるために計測が不可能であったため、「ジッター」及び「反射率」を測定できなかった場合である。
【0069】
【表2】
【0070】
表2の結果より、本発明で規定する金属酸化物を用いた反射膜(表2のNo.15〜No.17)は、上記で説明した通り、20nm以上70nm以下の範囲で、初期の反射率が5.0以上と高く、初期ジッター値についても8.5%以下の低い値を示しており、再生安定性に優れていることが読み取れる。
【0071】
なお、実施例2においては、本発明で規定する金属酸化物としてSn70Zn30Oを用いたが、Sn70Zn30O以外の本発明で規定する金属酸化物についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 基板
20 反射膜
22 第1の反射膜
24 第2の反射膜
30 光透過層
32 第1の光透過層
34 第2の光透過層
40 第1の情報記録面
50 第2の情報記録面
100 読み出し専用の光情報記録媒体(1層光ディスク)
200 読み出し専用の光情報記録媒体(2層光ディスク)
図1
図2