(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動片と前記被駆動片とが干渉しない径方向位置関係を有し、周方向位置が異なる2つの前記駆動片間に配置された前記緩衝部材を周方向位置が異なる2つの前記被駆動片のうちの一方が一方の前記駆動片との間で加圧し、他方の前記被駆動片が他方の前記駆動片との間で前記緩衝部材を加圧することを特徴とする請求項1に記載の不正検知機構。
前記駆動片と前記被駆動片とが干渉しない径方向位置関係を有し、周方向位置が異なる2つの前記被駆動片間に配置された前記緩衝部材を周方向位置が異なる2つの前記駆動片のうちの一方が一方の前記被駆動片との間で加圧し、他方の前記駆動片が他方の前記被駆動片との間で前記緩衝部材を加圧することを特徴とする請求項1に記載の不正検知機構。
前記緩衝部材は、前記一つの被駆動片と前記一つの駆動片との間に配置され、前記駆動部材の回転時に前記一つの駆動片と前記一つの被駆動片との間で圧縮されつつ前記一つの被駆動片と直接接触して回転方向へ押圧することを特徴とする請求項1に記載の不正検知機構。
前記駆動伝達機構は、周方向位置を異ならせて前記回転部材に配置された2つの前記被駆動片と、周方向位置を異ならせて前記駆動部材に配置され、且つ前記各被駆動片と干渉しない径方向位置関係にある2つの前記駆動片と、を備え、
前記緩衝部材は前記2つの被駆動片間に配置され、前記駆動部材の正転時には一方の前記駆動片と一方の前記被駆動片との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片を正転方向へ付勢し、前記駆動部材の逆転時には他方の前記駆動片と他方の前記被駆動片との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片を逆転方向へ付勢することを特徴とする請求項1に記載の不正検知機構。
前記駆動伝達機構は、周方向位置を異ならせて前記回転部材に配置された2つの前記被駆動片と、周方向位置を異ならせて前記駆動部材に配置され、且つ前記各被駆動片と干渉しない径方向位置関係にある2つの前記駆動片とを備え、
緩衝部材は、前記2つの駆動片間に配置され、前記駆動部材の正転時には一方の前記駆動片と一方の前記被駆動片との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片を正転方向へ付勢し、前記駆動部材の逆転時には他方の駆動片と他方の被駆動片との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片を逆転方向へ付勢することを特徴とする請求項1に記載の不正検知機構。
前記駆動伝達機構は、夫々の周方向位置を異ならせて前記回転部材に配置した2つの被駆動片、及び一つの第3被駆動片と、周方向位置を異ならせて駆動部材に配置され、且つ前記2つの被駆動片とは干渉しない一方で、前記第3被駆動片と干渉する位置関係にある2つの前記駆動片と、を備え、
正転時には一方の前記駆動片が前記第3被駆動片と接してこれを押圧し、逆転時には他方の前記駆動片が前記第3被駆動片と接してこれを押圧し、
前記緩衝部材は、2つの前記被駆動片間に配置され、前記駆動部材の正転時には一方の前記駆動片と一方の前記被駆動片との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片を正転方向へ付勢し、
前記駆動部材の逆転時には前記他方の駆動片と他方の前記被駆動片との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片を正転方向へ付勢することを特徴とする請求項1に記載の不正検知機構。
前記駆動伝達機構は、周方向位置を異ならせて前記回転部材に配置した2つの前記被駆動片と、周方向位置を異ならせて前記駆動部材に配置されて2つの被駆動片と干渉しない位置関係にある2つの駆動片,及び各被駆動片と干渉する位置関係にある第3駆動片と、を備え、前記駆動部材の正転時には前記第3駆動片が一方の前記被駆動片と接してこれを押圧し、逆転時には前記第3駆動片が他方の前記被駆動片と接してこれを押圧し、
緩衝部材は、2つの前記駆動片間に配置され、駆動部材の正転時には一方の前記駆動片と前記他方の被駆動片との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片を正転方向へ付勢し、前記駆動部材の逆転時には他方の前記駆動片と前記一方の被駆動片との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片を逆転方向へ付勢することを特徴とする請求項1に記載の不正検知機構。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
但し、以下の各実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0011】
[紙幣搬送装置]
図1(a)は本発明の不正検知機構を備えた紙幣搬送装置の内部構成を示す縦断面図であり、(b)及び(c)は開閉部材による搬送路閉止状態を示す要部拡大図である。なお、(b)は搬送経路を遮断した状態を示し、(c)は開閉部材を回転させて不正手段を巻き取った状態を示している。
なお、本例では紙葉の一例として紙幣を示すが、本装置は紙幣以外の紙葉、例えば有価証券、金券、チケット等々の搬送における不正行為の防止にも適用することができる。
【0012】
紙幣搬送装置(紙葉搬送装置)1は図示しない紙幣入金機、各種自動販売機、両替機等の紙幣取扱装置本体に装着されて使用され、紙幣搬送装置1に受け入れられた紙幣は識別センサによって紙幣の真贋、金種の識別を受けてから紙幣取扱装置本体内のキャッシュボックス内に一枚ずつ順次収納される。
紙幣搬送装置1は、下部ユニット3と、下部ユニット3に対して開閉自在に支持された上部ユニット4とを備え、
図1に示した各ユニットが閉じた状態にある時に各ユニットの対向面間に紙幣搬送路(搬送経路)10が形成される。
【0013】
紙幣搬送経路10の一端には紙幣Pを導入する入口12が設けられ、入口12の内部には搬送経路10に沿って紙幣検知用の入口通紙センサ14、入口ローラ対16、紙幣の金種、真贋を識別するための情報を読取る光識別センサ18、中継ローラ対20、不正防止機構の入口側の通紙センサ22、不正検知用の開閉部材、不正防止用モータ等から成る不正防止機構24、不正防止機構の出口側の通紙センサ26、出口ローラ対28、出口通紙センサ30、出口32が配置されている。更に、紙幣搬送用の各ローラ対12、16、20、28を駆動する搬送モータ35と、光識別センサ18からの識別情報に基づいて紙幣の金種、真贋を判定したり、各通紙センサ、出口センサからの紙幣検知信号に基づいて搬送モータ35、その他の制御対象を制御する制御手段(CPU、MPU、ROM、RAM)200が配置されている。
出口32から排出された紙幣は図示しないスタッカ装置に収容される。
なお、紙幣搬送装置1の上記構成は一例に過ぎず、種々の変形が可能である。例えば、使用するモータ数、ローラ対の配置、識別センサの種類等々、種々変更選定可能である。
【0014】
各ローラ対12、16、20、28は、下部ユニット3側に配置された駆動ローラと上部ユニット4側に配置された従動ローラとにより構成され、紙幣の両面側をニップして搬送する構成を備える。光識別センサ18は搬送経路10を間に挟んで対向配置された発光素子と受光素子により構成され、発光素子から生じた赤外線を紙幣を透過させた後、受光素子により受光して紙幣の光学的パターン(光学的特徴)を認識することができるホトカプラである。なお、識別センサとしては磁気センサを用いることもできる。
【0015】
[不正防止機構:第1実施形態]
<基本構成>
第1実施形態に係る不正防止機構について
図1乃至
図11に基づいて説明する。
図2(a)(b)及び(c)は不正防止機構の一例を示す正面図、回転部材と回転姿勢(回転角度)検知手段との組み付け状態を示す正面図、及び(b)に駆動ギヤの一部及び緩衝部材を付加した状態を示す正面図であり、
図3(a)乃至(d)は開閉部材の構成を示す説明図、斜視図、(a)の右側面図(緩衝部材付き)、及び(a)のA−A断面図であり、
図4(a)及び(b)は駆動ギヤの内側面の斜視図、及び側面図である。また、
図5(a)乃至(f)は不正防止機構における開閉部材の正転時の動作手順の説明図であり、
図6(a)乃至(f)は不正防止機構における開閉部材の逆転時の動作手順の説明図である。
【0016】
不正防止機構24は、入口12から投入されて搬送経路10に沿って搬送される紙幣Pに引抜き用の不正手段Uが固定されていることを検知すると共に、不正手段Uによる紙幣引抜きを阻止する不正検知、及び防止のための機構である。
不正防止機構24は、
図1(a)に示した初期回転姿勢(待受け姿勢)にあるときに搬送経路を開放状態にして搬送される紙幣の進入、通過を許容すると共に、該初期回転姿勢から外れた非初期回転姿勢(
図1(b)及び(c))にある時に搬送経路の全部、又は一部を閉鎖して紙幣の通過を阻止する(不能とする)シャッター機能を備えたガイドスリット52を備え、且つガイドスリット52と並行な回転軸54を中心として回転可能に軸支された不正検知、及び防止用の開閉部材50と、開閉部材の回転軸54の一端部により軸芯部を固定された円盤であり、且つ外周縁に少なくとも一つの凹陥部72を備えて開閉部材と一体回転する回転部材70と、回転部材の外側面に対向して近接配置されて開閉部材の回転軸54の一端部により軸芯部を回転部材と相対回転可能に軸支された開閉部材駆動用の駆動ギヤ(駆動部材)90と、駆動ギヤからの駆動力を回転部材70に対して所定のタイミングで断続的に伝達するように作動する駆動伝達機構100と、駆動ギヤを駆動する不正防止用モータ(DCモータ)120と、不正防止用モータと駆動ギヤ90との間において駆動力を伝達するギヤ機構130と、開閉部材が初期回転姿勢にあること、或いは初期回転姿勢にないことを検知する回転姿勢検知手段140と、不正防止用モータ120を制御する制御手段200と、を備える。
【0017】
スリット52は紙幣の通過を許容する形状を有しており、初期回転姿勢(初期回転角度)にある時にのみスムーズな通過を許容し、少しでも回転姿勢がずれると通過を阻止するように構成されている。なお、スリットは必須ではなく、スリットを有しない開閉部材自体が回転する過程で搬送路を開閉するようにしてもよいし、開閉部材に切欠きを設け、初期回転姿勢にある時にだけ切欠きが搬送路を開放するようにしてもよい。
開閉部材50の長手方向側縁に沿って形成された凹凸部56は、その外径側に配置される装置本体側のカバー部材に設けた対応する凹凸部と噛み合うように構成され、両凹凸部の間には小さな凹凸状の隙間が形成される。凹凸状の隙間は、紙幣に固定した引抜き手段Uがスリット52内に進入した状態で開閉部材が回転する際に、引抜き手段を開閉部材の外周に絡め取り易くする役割を果たす。また、引抜手段Uが開閉部材50に巻き付くと、引抜手段によって開閉部材50の回転が妨害されるため、ロータリーエンコーダ135、137からのパルスに異常が発生するか、又は基準値として設定されている開閉部材50の回転速度に比べて回転速度が低下するため、不正行為が行われていることを判定することができる。
【0018】
図2乃至
図6に示した構成例に係る駆動伝達機構100は、一つの被駆動片74と、2つの駆動片92、93とを備え、緩衝部材101は、被駆動片74と第1駆動片92との間に形成される周方向ギャップ内に配置され第1駆動片92と被駆動片74との間で圧縮されつつ被駆動片74を正転方向へ付勢するようにした構成が特徴的である。
即ち、駆動伝達機構100は、回転部材70の外側面に設けられた突起である少なくとも一つの被駆動片74と、駆動ギヤ90の内側面(回転部材との対向面)に設けられて被駆動片74に対して相対的に回転移動する過程で所定のタイミングで直接、或いは間接的に被駆動片を周方向(正転方向)へ押圧することにより回転部材70を断続的に(所定のタイミングで)回転駆動する突起としての少なくとも一つ、本例では2つの駆動片92、93と、被駆動片74と第1駆動片92とを離間させる方向へ付勢する圧縮バネ等から成る緩衝部材(弾性部材)101と、を備える。駆動ギヤ90は回転部材70に対して、被駆動片74と各駆動片92、93との間の周方向ギャップの範囲内で相対回転する。
【0019】
本実施形態では、第1駆動片92は間接的に、つまり緩衝部材101を介して被駆動片74を押圧する構成であり、第2駆動片93は直接的に被駆動片74を押圧する構成である。
なお、緩衝部材101としては、コイル状の圧縮バネ以外にも板バネ、その他種々のバネ材を用いることができるし、ゴム、スポンジ等の弾性部材であってもよい。緩衝部材101は駆動片92と被駆動片74との間の周方向スペース内にフリーの状態で配置してもよいし、駆動片、或いは被駆動片に一端を固定してもよい。
【0020】
被駆動片74は回転部材70の外側面の外周縁に沿って設けた環状凸部71aの内周面の一部を内径側に突設(屈曲)させることにより形成されており、本例では被駆動片74の形成位置は凹陥部72の内径側(同等の周方向位置)に相当している。しかし、被駆動片74の周方向位置は、後述する駆動伝達機構の動作、挙動が実現できれば凹陥部72の内径側でなくてもよい。
環状凸部71aと中心凸部71bとの間に形成された環状の凹所71cは、回転部材の外面に駆動ギヤの内面を対向させて組み付けた際に、駆動ギヤの駆動片92、93、及び緩衝部材を収容する空間として利用される。
駆動部材90としては、駆動ギヤに代えてプーリを用いても良い。
【0021】
本発明と特許文献1との最大の相違点は、本発明では被駆動片74と第1駆動片92とを直接接触させることなく、両片間に圧縮バネから成る緩衝部材101を介在させた構成にある。また、特許文献1では回転体上に180度間隔で2つの被駆動片(連結部)を設けると共に、駆動ギヤ側の駆動片も180度間隔で2つ設けている。これに対して本実施形態例では、回転部材70には一つの被駆動片74を設けると共に、駆動ギヤ90の面上に180度間隔で駆動片を2個(92、93)配置している。駆動ギヤの正転方向上流側に位置する第1駆動片92は正転時に緩衝部材101を介して被駆動片74を押圧付勢し、正転方向下流側に位置する第2駆動片93は駆動ギヤの逆転時に被駆動片74を直接押圧付勢する。
【0022】
制御手段200は、ガイドスリット52が初期回転姿勢にあることを回転姿勢検知手段140が検知している時に不正防止用モータ120をOFFし、初期回転姿勢にないこと、即ち非初期回転姿勢にあることが検知されている時には不正防止用モータを正転駆動して駆動ギヤを介して回転部材を初期回転姿勢に移行させるように制御を行う。
ギヤ機構130は、不正防止用モータ120の出力ギヤ120aと駆動ギヤ90との間の駆動伝達経路に配置された中継ギヤ132、133、134等を備えている。一つの中継ギヤ133にはパルス板135が同一軸心状に固定され、パルス板の周縁に沿って所定のピッチで形成された切欠きをフォトインタラプタ137が検知してパルスを出力することにより、制御手段は単位時間当りの出力を計数して不正防止用モータ120及び駆動ギヤ90の回転数(回転速度、回転角度)を検出する。パルス板135とフォトインタラプタ137はロータリーエンコーダを構成している。
なお、ギヤ機構130を構成する何れかの2つのギヤをウォームとウォームホイールとから成るウォームギヤとすることにより負荷側からの駆動による逆回転が困難となるため、不正行為者が不正手段を用いて開閉部材を逆回転させることが困難となる。
【0023】
回転姿勢検知手段140は、ガイドスリット52が初期回転姿勢にある時に凹陥部72と嵌合して停止し、ガイドスリット(回転部材)が
図1(a)に示した初期回転姿勢から同図(b)に示した非初期回転姿勢に移行した時に凹陥部72から離脱して回転部材の外周(非凹陥部)73に沿って移動する回転自在なローラから成るローラ(追従部材)142と、支持部144aによってローラの軸142aを回転自在に支持すると共に他部に設けた軸部144bを中心としてローラを回転部材の外周縁に向けて回転軸54と直交する面に沿って揺動させるレバー144と、ローラ142が回転部材の外周縁に圧接する方向へレバー144を弾性付勢するレバー付勢用の弾性部材(トーションバネ)146と、ローラ142が凹陥部72内に完全に嵌合した(落ち込んだ)時にのみレバーに設けた被検知部144cを検知することによりガイドスリット52が初期回転姿勢にあることを検知するホーム位置検知用のセンサ160と、を備える。
【0024】
レバー付勢用弾性部材(レバー付勢部材)146はその環状部を軸部144bに巻き付けたトーションバネであり、環状部から突出した一端を装置本体の固定部により係止されると共に他端部をレバー144の適所により係止されることにより、レバー、及びローラを軸部144bを中心とした回動軌跡に沿って回転部材の外周縁に付勢する。
なお、追従部材としてのローラ142は一例に過ぎず、摩擦抵抗が少ないために回転部材外周縁をスムーズに移動できる部材であれば、回転しない構成としてもよい。
【0025】
制御手段200は、ガイドスリット52が初期回転姿勢にあることをホーム位置検知用センサ160が検知している時に不正防止用モータ120をOFFし、初期回転姿勢から外れた非初期回転姿勢にある時には不正防止用モータ120を正転駆動させる。
駆動ギヤ(駆動部材)90は同軸状に連結された回転部材70に対して相対回転する構成である一方で、駆動ギヤが正転する過程で第1駆動片92が緩衝部材101を介して被駆動片74を押圧することにより被駆動片を介して回転部材70を駆動する手段である(
図5(a)乃至(d))。また、駆動ギヤ90により回転部材が正転駆動されている過程で、レバー144により支持されたローラ142が回転部材の外周73から回転部材70の凹陥部72内に嵌合した時にはレバー付勢部材146の付勢によって回転部材は急に増速して凹陥部に落ち込むため、被駆動片74は第1駆動片92に対して所要角度だけ先行して離間した周方向位置関係となる(
図5(e)(f)参照)。
これを言い換えれば、ローラが凹陥部に嵌合する際には、レバー付勢部材146の力により回転部材70はそれまで駆動ギヤにより駆動されていた時の回転速度よりも急に増速するため、被駆動片74と第1駆動片92との間には周方向に減速区間としてのギャップG1が形成される。
【0026】
また、回転部材は凹陥部にバネ付勢されたローラが嵌合することにより機械的に回転を停止する。
回転部材が停止した時点における被駆動片74と第1駆動片92との間の周方向ギャップが駆動ギヤの減速区間G1となる。即ち、ローラが凹陥部に完全に落ち込んだ時点でホーム位置検知用センサ160がレバーの被検知部144cを検知することにより制御手段が不正防止用モータ120の駆動を停止させる。このため、ローラによって係止されることにより初期回転姿勢にて停止している回転部材70(被駆動片74)に対して駆動ギヤ90(第1駆動片92)は不正防止用モータの慣性(自らの余勢)により、減速区間の範囲で回転を続ける。つまり、不正防止用モータ120、及び回転部材の回転が停止した時には、駆動ギヤ90が緩衝部材101を圧縮させながら減速区間内を回転移動する間に緩衝部材の減衰作用により駆動ギヤの慣性力は減少し、緩衝部材を介して駆動片が被駆動片を押圧するときの衝撃力が緩和される。この緩衝作用により、駆動片が減速区間内を回転移動する期間中、レバー付勢部材146により付勢されたローラによって係止された回転部材は初期回転姿勢での停止状態を維持し続けることができる。このため、ガイドスリット52が搬送経路を開放する初期回転姿勢となるように開閉部材50が確実に位置決めされる。
なお、緩衝部材101が存在する場合に形成される減速区間の角度範囲は、緩衝部材が駆動片と被駆動片との距離を拡開させる作用を有することから、緩衝部材が存在しない場合に形成される減速区間に比して大きくなることが明らかである。減速区間が大きくなることにより、より余裕をもった減速が可能となり、被駆動片に加わる衝撃を大幅に減殺することができる。
本例では、ローラが凹陥部に嵌合する際の勢いによって回転部材が駆動ギヤに先行する現象を利用しなくても、緩衝部材の拡開力によってそれ以前の段階で充分な広さの減速区間が確保されている。
【0027】
次に、特許文献1のように駆動片が被駆動片を直接駆動する構成である場合(本実施形態における緩衝部材101が存在しない場合)の問題点を、比較図としての
図7を用いて説明する。
図7(a)では開閉部材50のガイドスリット52が初期回転姿勢にあって搬送される紙幣Pが通過することを許容する開放状態(待機状態)にある。この待機状態では不正防止用モータ120は回転部材70を停止させている。
また、
図7(a)の待機状態において駆動ギヤの第1駆動片92は被駆動片74と直接接触した状態で停止している。
次いで
図7(b)の正転開始状態において、駆動ギヤ90が回転部材(被駆動片74)を押圧して回転開始させると、ローラが凹陥部を離脱し(ホームアウトし)、外周73上に移行する((c))。
その後、駆動ギヤ90と回転部材70が一体となって正転すると、ローラが回転部材の外周に沿って相対移動し、(d)に示した凹陥部への嵌合(ホームイン)状態となる。
【0028】
図7(d)に示したホームイン状態になると不正防止用モータ120が駆動を停止するため、第1駆動片92(駆動ギヤ90)は図示の位置で減速を開始する。即ち、第1駆動片92は被駆動片74との間に(d)中に示した狭小な減速区間を残した状態でモータ120からの駆動力伝達を打ち切られるため、それ以降は慣性により正転方向へ回転を続ける。しかし、この正転過程では、減速区間が極めて短いために第1駆動片92は充分に減速することができずに被駆動片と衝突して被駆動片に衝撃を与える。このため、(e)に示したように回転部材がオーバーランとなって凹陥部72がローラを越えた状態となる。
オーバーランが発生した場合には、ローラが凹陥部に一旦嵌合した後で直ちに凹陥部から離脱する挙動が生じたことがホーム位置検知用センサ160により検知されるので、制御手段はオーバーラン発生を知ることができる。このため、(f)に示すように直ちにモータ120を逆転させて第2駆動片93により被駆動片74を時計回り方向へ押圧して再び凹陥部内にローラを嵌合させることによりオーバーランを解消することができる。
【0029】
しかし、オーバーラン発生に対処するためにオーバーランが発生する度に不正防止用モータ120を逆転させてホームインさせるとすれば、モータの耐久性が低下する。即ち、紙幣搬送装置1のDCモータ120に対しては、例えば正転についても50万回転以上の耐久性が求められているため、これに対して更に逆転動作が加わるとすればモータの耐久性の低下が著しくなることは明かである。
このように減速区間が過小である場合には、停止状態となった回転部材に対して駆動ギヤが減速を行うには不十分となり、オーバーランが発生する。
【0030】
また、減速区間として
図7(d)に示した幅よりも大きな幅を確保できた場合、減速区間を移動する第1駆動片92が停止状態にある被駆動片74に接した際の余勢が許容値の範囲であれば、駆動ギヤ90は回転部材の停止状態に影響を与えることなく停止することができるが、余勢が許容値を超えている場合にはレバー付勢部材146の力に抗して被駆動片74を強く押し込んでしまう。その結果、凹陥部72がローラから離脱すると、回転部材は初期回転姿勢を維持できずにオーバーランするため、ガイドスリット52が非初期回転姿勢となり、紙幣の通過が妨げられる事態となる。
【0031】
これに対して本発明では、両片74、92間に緩衝部材101を介在させることにより緩衝部材101を介して被駆動片74を第1駆動片92により押圧するようにしており、緩衝部材の拡開力を利用した減速区間を必要充分に大きく確保できるため、オーバーランの発生率を大幅に減少させることができ、逆転が不要となるためにモータの耐久性低下を防止できる。
なお、制御手段200は、出口センサ30が紙幣後端の通過を確認し搬送モータを停止させた後、不正防止用モータ120を任意の回数だけ正転駆動する。線材等の引抜き手段が紙幣に固定されている場合には紙幣後端がスリットを通過したことにより引抜き手段がガイドスリット内に残るため、開閉部材50を回転させて絡めることにより引抜き手段による引き戻しを阻止することができる。また、開閉部材に引抜き手段が巻き付くことにより発生する開閉部材の回転速度異常をロータリーエンコーダ135、137により検知することにより、不正行為の存在を知ることができ、警報を発する契機とすることができる。即ち、開閉部材に絡みついた引抜き手段は開閉部材50の回転を妨害して回転速度を低下させるため、引抜手段のない正規状態での基準回転速度、又はn回転して初期回転姿勢に戻るまでに要する基準回転時間と、実際の開閉部材の回転速度、又は初期回転姿勢に戻るのに要する回転時間とを比較して、開閉部材の回転速度が基準値よりも遅いか、又は回転時間が基準時間よりも長い場合に、開閉部材に引抜手段が絡んでいることを検出、判定することができる。
なお、紙幣がガイドスリットを通過した後に開閉部材を回転させる回数が常に一定であると、回転を停止するタイミングが不正行為者に知られてしまい、最適の引抜きタイミングを見出すことが可能となるため、回転数はランダムにすることもできる。
【0032】
本例では開閉部材50が紙幣の導入を待機する初期回転姿勢にある時にはガイドスリット52が搬送経路上の紙幣の移動経路を開放しているが、紙幣待機時にガイドスリットが搬送経路を閉止する非初期回転姿勢をとることによって入口2からの工具の不正な挿入、及びスタッカ装置内の紙幣の不正な抜き取りを防止するようにしてもよい。
制御手段200は、光識別センサ18の出力を受信して真紙幣か否か判断し、真紙幣と判断してから出口センサ30の出力を受信した後で搬送モータ35を正転駆動し続け、真紙幣と判断しないときは搬送モータ35を逆転して紙幣を入口2に返却する判別手段と、基準回転時間、及び/又は、基準回転速度を開閉部材50の実際の回転時間、及び/又は、実際の回転速度と比較して基準範囲外にあるとき警報出力を発生する比較手段と、を備えている。
図8の制御手段のブロック図に示すように、制御手段200の各入力端子には、入口センサ14、光識別センサ18、出口センサ30、及びホーム位置検知用センサ160が接続される。制御手段200の各出力端子には、搬送モータ35、不正防止用モータ120、ロータリーエンコーダ135、137、及び警報機110が接続される。制御手段200は単位時間当たりのロータリーエンコーダの出力を計数して、不正防止用モータ120の回転数及び回転速度を検出することができる。
【0033】
次に、不正防止機構24における不正検知、及び不正防止動作の制御手順を
図9のフローチャートに基づいて説明する。
ステップ101では制御手段(識別制御回路)200は入口12に紙幣が投入されるか否かを検出するために待機している。紙幣が入口12に挿入される前の待機状態では、開閉部材50のスリット52は搬送経路10の上流側と下流側とを連通させた
図1(a)に示す初期回転姿勢に保持されている。搬送経路10の一端に設けられた入口12に紙幣を投入すると、入口センサ14が紙幣の挿入を検出して制御手段200に出力を送出する。次に、ステップ102において制御手段200は搬送モータ35を駆動して搬送経路10に沿って紙幣を搬送すると共に、ステップ103において光識別センサ18をオンする。続いて、紙幣は搬送経路10に沿って前進して開閉部材50のスリット52を通過して出口32に向かって搬送される。
【0034】
搬送経路10に沿って移動する紙幣が光識別センサ18を通過するとき、制御手段200は光識別センサ18の出力を受信して、搬送される紙幣が真紙幣か否か紙幣の真贋を判定する(ステップ104)。紙幣の光学的特徴から制御手段200が真紙幣であることを判定すると、ステップ105において出口センサ30が紙幣の通過を検出したか否かを判定する。出口センサ30が紙幣の通過を検出すると、ステップ106において搬送モータ35が停止される。紙幣が出口センサ30、及び出口32を通過し、搬送モータ35が停止した後、ステップ107、108において制御手段200は不正防止用モータ120に出力を送出して開閉部材50をn回転させてからステップ109において不正防止用モータを停止させる。これにより不正防止用モータを停止させてからステップ110における判定を行うことができる。
【0035】
ステップ110において制御手段200は開閉部材50がn回転したか否かを判定し、開閉部材50がn回転してホーム位置検知用センサ160がレバーの被検知部144cを検出すると、不正防止用モータ120の作動を停止する。開閉部材50をn回転させるのは、紙幣をスタッカ装置内に収納した後に開閉部材50をn回転させた時のホームアウトからホームインまでの全所要時間が設定基準時間よりも遅い(タイムアウト)か、或いはホームアウトからホームインまでのエンコーダパルス数が設定基準値より少ないかを知るためである。なお、設定基準値による判定においてn回転に要した合計時間を用いるのは一例であり、「1回転に要する時間×n回判定」を用いても良い。
なお、ロータリーエンコーダを設けずにホーム位置検知用センサ160のみを設けることも可能である。この場合には制御手段は異常判定条件のタイムアウト、即ち、開閉部材50をn回転させた時のホームアウトからホームインまでの全所要時間が設定基準時間よりも遅いか否かのみを監視する。
【0036】
図10の出口センサ、不正防止用モータ、及びホーム位置検知用センサの各動作を示すタイミングチャートに示すように、紙幣の通過を検出したときに出口センサ30は出力を発生するが、紙幣後端が出口センサ30を完全に通過した時点で制御手段200の出力により不正防止用モータ120が付勢されて、
図5(b)(c)に示すように、駆動ギヤの駆動片92が緩衝部材101を圧縮して潰しながら回転部材の被駆動片74を押圧開始するので開閉部材50が回転を開始する。このとき、
図5(c)に示すように、ローラ142がレバー付勢部材146の弾力に抗して開閉部材50の径方向外側に移動して、レバーの被検知部144cはホーム位置検知用センサ160から離間するので、ホーム位置検知用センサ160が「1」出力を発生する。開閉部材50が更に回転して、
図5(d)を経て、ホームイン直前の状態を示す(e)に示すようにローラ142が凹陥部72の手前に回転されたとき、ローラ142はレバー付勢部材146の弾力によって凹陥部72の端部を正転方向に押圧する。このため、ホームイン状態を示す
図5(f)に示すようにローラ142が凹陥部72内に嵌合されたとき、
図5(f)に示すように開閉部材50及び回転部材70は駆動ギヤ90よりも先行して回転して、駆動ギヤの駆動片92と開閉部材の被駆動片74との間に角度上の間隙(減速区間G1)を形成するように作動する。しかし、本実施形態では駆動片92と被駆動片74とを離間させる方向へ作動する緩衝部材101が配置されているため、
図5(a)(e)の段階で既に減速区間としての充分な間隙(減速区間)G1が形成されている。このため、ローラが凹陥部に嵌合することによる回転部材の先行回転と、それによる僅かな減速区間の形成を期待する必要がない。緩衝部材101が存在しない場合に形成される減速区間としての間隙は、
図7において説明したように極めて狭い角度範囲に留まる。
【0037】
図5(f)に示したホームイン状態では、
図10中の(4)に示すようにホーム位置検知用センサ160の出力が「1」から「0」となるので不正防止用モータ120の作動が停止される。従って、不正防止用モータ120の作動が停止した後で発生する不正防止用モータ120、及びギヤ機構130の慣性力は、駆動片92が減速区間G1内の緩衝部材101を圧縮しながら移動する間に減殺される。そして、緩衝部材101の存在によって
図5(e)(f)に示すように、駆動片92が被駆動片74に直接当接せずに広い減速区間G1が残存した状態を維持できるので、駆動片92から被駆動片74に対する強い衝撃を発生させずに
図5(a)に示す初期回転姿勢に開閉部材50を確実に移行させ、且つ保持することができる。このように、開閉部材50のスリット52が搬送経路10に整合する初期回転姿勢に開閉部材50が確実に位置決めされる。
【0038】
出口32を通過した真正紙幣に紐、糸、テープ等の引抜手段Uが接続されている場合には、引抜手段は搬送経路10及び開閉部材50のスリット52内に延びた状態となっているので、ステップ107、108において開閉部材50をn回転すると、引抜手段Uは開閉部材50の凹凸部56と装置本体側の凹凸部との間に形成される小さなクリアランス内に挟持されながら開閉部材50の外周に巻き付く。引抜手段が開閉部材50の外周に巻き付いていることにより引抜手段によって開閉部材50の回転が妨害されるため、ロータリーエンコーダを構成するパルス板135から得られるパルスに異常が発生するか、又は設定基準値と比べて開閉部材50の回転速度が低下する。従って、ステップ110において開閉部材のn回転に要した時間(n回転中におけるホームアウトからインまでの全所要時間)が設定基準値より遅い時(タイムアウトの時)、或いは開閉部材のn回転中におけるエンコーダパルス数が設定基準値よりも少ない時に、制御手段200は引抜手段が紙幣に接続されたものと判定して、ステップ125において警報機110に警報信号を送出して警報機110を作動させた後でエンドとなる。開閉部材50の外周に巻き付いた引抜手段は、上部ユニット4を開放してから開閉部材50を回転させて取り除くことができる。ステップ110において開閉部材のn回転に要した時間が設定基準値以内である場合、又は開閉部材のn回転中におけるエンコーダパルス数が設定基準値以内である場合には制御手段200は引抜手段が紙幣に接続されていないものと判定し、ステップ111に進んで制御手段200は出口センサ30がオンとなっているか否か判定する。紙幣がスタッカ装置内に収容されていれば出口センサ30はオフ状態に保持されるが、紙幣が引抜手段によって引き抜かれる場合には出口センサ30を逆方向へ通過するので出口センサ30がオンとなる。ステップ111において出口センサ30がオン状態の場合は紙幣が引抜手段によって引き抜かれるものと判定してステップ125において警報信号を発生する。ステップ111において出口センサ30がオフ状態のときは、ステップ112においてスタッカ装置内に紙幣を収納した後、エンドとなる。
【0039】
ステップ104において、制御手段200が真紙幣を判定しないとき、ステップ120及び121において搬送モータ35を停止してから逆転し、紙幣を入口12に向かって返却する。
ステップ122において入口センサ14がオフとなったとき、制御手段200は搬送モータ35の駆動を停止(ステップ123)して紙幣の排出を完了(ステップ124)してエンドとなる。
なお
図9において説明した不正防止機構24における不正検知、及び不正防止動作の制御手順は以下の全ての実施形態に共通するため、以下の実施形態では繰り返し説明しない。
【0040】
<第1実施形態に係る不正防止機構の動作>
次に、第1実施形態に係る不正防止機構100における開閉部材の回転姿勢制御手順について
図5、
図6、及び
図11に基づいて説明する。
図5(a)乃至(f)は第1実施形態に係る不正防止機構の不正防止モータ正転時における開閉部材の回転姿勢制御手順を示す説明図である。
図11は開閉部材をn回転させる動作手順を示すフローチャートであり、
図9のフローチャートのステップ108に相当しているサブルーチンである。
【0041】
図5(a)は開閉部材50のガイドスリット52が初期回転姿勢にあって搬送経路10上を長手方向に沿って搬送される紙幣Pがスムーズに通過することを許容する開放状態(待機状態)にある。この待機状態では、レバーの被検知部144cがホーム位置検知用のセンサ160により検知されているため不正防止用モータ120は停止しており、レバー付勢部材146により付勢されたレバー144により支持されたローラ142が回転部材の凹陥部72内に完全に嵌合しているため、回転部材70は回転を停止している。この時、
図11のステップ130がYESとなっており、開閉部材が初期回転姿勢にあることが検知されている。
また、
図5(a)の待機状態において駆動ギヤ(駆動部材)90の第1駆動片92は緩衝部材101を介して被駆動片74の一端と係合した状態で停止している。この時、図示するように緩衝部材101は被駆動片と第1駆動片との間で所定の力により圧縮されているが、ローラ142を凹陥部から離脱させる程の弾発力は生成していない。
【0042】
次いで(b)の正転開始状態(ステップ131)においては制御手段200が不正防止用モータ120を正転開始させるため、駆動ギヤ90が停止状態にある回転部材に先行して回転を開始して緩衝部材101が強く圧縮される。緩衝部材101の圧縮状態が所定の限界を越えると、駆動片から緩衝部材を介して被駆動片に伝達される押圧力が増大するためレバー付勢部材146の付勢に抗して回転部材が回転を開始する。回転部材が回転を開始すると凹陥部72がローラ142に対して回転移動を開始し、(c)(d)に順次示すようにローラが外径方向に変位して凹陥部を離脱し(ホームアウトし)、外周縁73上に移行して外周縁に沿った相対的な移動を続ける。
回転姿勢検知手段140はこの間、開閉部材が初期回転姿勢に戻ったか否かを検知し続ける(ステップ132)。
【0043】
ローラが凹陥部を離脱した後では(d)(e)に示すように緩衝部材101は駆動ギヤからの圧力から開放されて拡開した状態となっている。つまり、緩衝部材が拡開する際の適度な強さの付勢により回転部材が駆動ギヤに先行して回転し、被駆動片74と駆動片92との間に減速に必要充分な角度範囲の減速区間G1が形成される。
駆動ギヤ90と、拡開した緩衝部材101と、回転部材70とが一体となって正転を続けると、ローラが回転しながら回転部材の外周縁に沿って相対移動し、(f)に示した凹陥部への嵌合(ホームイン)の直前で(e)に示した状態となる。本実施形態では
図7に示したような緩衝部材が存在しない構成例とは異なり、緩衝部材101の拡開力により被駆動片74と駆動片92との距離が充分に拡開しているため、(e)以降においてローラが凹陥部に嵌合する際の増速により形成される僅かな幅の減速区間を期待する必要がない。
【0044】
また、ローラが凹陥部へ嵌合する際の挙動に依存することなく、ホームイン前において減速区間G1を広く確保できるため、駆動ギヤを高速回転させたとしてもオーバーランのないスムーズな回転と初期回転姿勢への復帰動作を実現することができる。従って、高速処理に適した不正防止機構を構築することが可能となる。
(f)に示したホームイン状態になると不正防止用モータ120が駆動を停止して駆動ギヤ90への駆動力伝達が遮断されるため、駆動ギヤの第1駆動片92は図示の位置で減速を開始する。即ち、第1駆動片は被駆動片との間に(f)中に角度θ1で示した大きな減速区間G1を残した状態でモータ120からの駆動力伝達を打ち切られるため、それ以降は慣性により正転方向へ回転を続ける。この正転過程で、緩衝部材101の潰れによる緩衝作用によって第1駆動片92は緩やかに減速しながら緩衝部材を圧縮させて行き、被駆動片に衝撃を与えることなく停止することができる。このようにモータ120が停止した時点で形成される減速区間G1の周方向長を必要充分な長さとすることができ、しかも緩衝部材の緩衝作用が働くため過大な力で被駆動片74を押圧してオーバーランが発生することを防止できる。
回転部材のオーバーランが解消されることにより、開閉部材50のガイドスリット52は常に初期回転姿勢に停止することが可能となり、新たに搬送経路を搬送されてくる紙幣のジャムが発生するリスクを解消できる。また、モータ120を逆転させることによるオーバーランの解消作業が不要となるため、処理速度の低下を防止しつつモータを始めとした駆動部品の耐久性低下を防止することができる。
【0045】
次に、
図6(a)乃至(f)は第1実施形態に係る駆動伝達機構の逆転動作手順を示す説明図である。
駆動伝達機構100は、
図5に示したように開閉部材50を正転(反時計回り)させることによる不正手段Uの巻き取り動作を不正検知、不正防止の基本としているが、ユーザーの要請によっては同一の紙幣搬送装置1において開閉部材を逆転(時計回り)させる時に不正手段を巻き取る仕様とする可能性もあるため、同一の駆動伝達機構において逆転時における不正手段巻取りをも可能とする構成についても提案、説明する。
【0046】
図6(a)では開閉部材50のガイドスリット52が初期回転姿勢にある。この待機状態ではレバーの被検知部144cがホーム位置検知用のセンサ160により検知されているため不正防止用モータ120は停止しており、ローラ142が凹陥部72内に完全に嵌合しているため、回転部材70は回転を停止している。
また、
図6(a)の待機状態において駆動ギヤの第2駆動片93が被駆動片74と接触した位置にある一方で、第1駆動片92は緩衝部材101から離間した位置にある。
次いで不正防止用モータ120を逆転開始すると、駆動ギヤ90の第2駆動片93が停止状態にある被駆動片74を逆転方向(時計回り方向)に押圧し始め、(b)のようにローラ142が凹陥部72から離脱(ホームアウト)して外周縁73上に移行する。
更に逆転を継続することにより(c)の段階ではローラは凹陥部内に嵌合(ホームイン)する直前となっている。
【0047】
(d)では更に逆転が進むことによりローラが凹陥部内にホームインした状態となっており、不正防止用モータ120が駆動を停止して駆動ギヤ90への駆動力伝達が遮断される。ローラが凹陥部内にホームインする際にはレバー付勢部材146の付勢によりローラは凹陥部の一端部を逆転方向へ押圧する。このため、回転部材だけが急激に増速してローラが急激に凹陥部に嵌合することにより被駆動片が第2駆動片から離間するので、第2駆動片はこの離間位置から減速を開始する。即ち、第2駆動片は被駆動片との間に角度θ2で示した減速区間G2を残した状態でモータ120からの駆動力伝達を打ち切られるため、それ以降は慣性により逆転方向へ回転を続ける。第2駆動片93が被駆動片74を過大な力で押圧してホームアウトさせない場合には逆転動作は終了する。これまでの逆転動作では緩衝部材101は特別な働きをしていない。
【0048】
ところがこの減速区間G2は極めて短いため、この逆転過程では充分に減速を行うことができない場合には(e)のようにオーバーランが発生する。特に、第2駆動片93と被駆動片74との間に緩衝部材101が存在しないため、オーバーランの発生率は高くなる。オーバーランが発生した場合には(f)に示すように不正防止モータにより駆動ギヤ90を正転させることにより第1駆動片92により緩衝部材101を介して被駆動片74を正転させ、ローラが凹陥部にホームインした時点で正転を停止させる。
なお、逆転時におけるオーバーラン防止のための対策としては、第2駆動片93と被駆動片74との間に第2の緩衝部材を配置すればよい。このように構成すれば、不正防止用モータが停止した時点で形成される減速区間θ2を大きくすると共に、過大な力で第2駆動片が第2緩衝部材を押圧しても緩衝作用によって被駆動片に伝わることがなくオーバーランが発生することを防止できる。
【0049】
逆転時における回転部材のオーバーランが解消されることにより、開閉部材50のガイドスリット52は常に初期回転姿勢に停止することが可能となり、紙幣ジャムが発生するリスクを解消できる。また、モータ120を正転させることによるオーバーランの解消作業が不要となるため、処理速度の低下を防止しつつモータを始めとした駆動部品の耐久性低下を防止することができる。
【0050】
[不正防止機構:第2実施形態]
<基本構成>
第2実施形態に係る不正防止機構について
図12乃至
図16に基づいて説明する。
図12(a)(b)及び(c)は第2実施形態に係る不正防止機構の一例を示す正面図、回転部材と回転姿勢検知手段との組み付け状態を示す正面図、及び(b)に駆動ギヤの一部及び緩衝部材を付加した状態を示す正面図であり、
図13(a)乃至(d)は開閉部材の構成を示す説明図、斜視図、(a)の右側面図(緩衝部材付き)、及び(a)のB−B断面図であり、
図14(a)及び(b)は駆動ギヤの内側面の斜視図、及び側面図である。また、
図15(a)乃至(f)は不正防止機構における開閉部材の正転時の動作手順の説明図であり、
図16(a)乃至(f)は不正防止機構における開閉部材の逆転時の動作手順の説明図である。
なお、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して重複した構成、動作の説明は省略する。即ち、第2実施形態に係る不正防止機構は駆動伝達機構100の構成を除けば第1実施形態とほぼ同等である。
つまり、ギヤ機構130、回転姿勢検知手段140、制御手段200の構成、機能、及び動作は、第1実施形態と同様である。
【0051】
不正防止機構24は、入口12から投入されて搬送経路10に沿って搬送される紙幣に引抜き用の不正手段Uが固定されていることを検知すると共に、不正手段Uによる紙幣引抜きを阻止する不正検知、及び防止のための機構である。
第2実施形態の不正防止機構24は、駆動伝達機構100の構成、特に回転部材70に設けた被駆動片75、76と、駆動ギヤ90に設けた駆動片92、93の構成と、緩衝部材101の配置等が第1実施形態と異なっている。特に、被駆動片75、76と駆動片92、93は径方向位置関係が互いにずれているために両片が相対回転する過程で干渉(接触)することがない一方で、各駆動片は2対の被駆動片間に保持された緩衝部材101とのみ接触してこれを押圧するように構成されている点が特徴的である。
即ち、第2実施形態に係る駆動伝達機構100は、回転部材70の外側面に設けられた2つの突起である第1被駆動片75(75a、75b)と、第1被駆動片75から時計回り方向に所定距離離間した位置に配置された第2被駆動片76(76a、76b)と、第1及び第2被駆動片75、76間に伸縮自在な状態で配置された圧縮バネ等から成る緩衝部材(弾性部材)101と、駆動ギヤ90の内側面(回転部材との対向面)に設けられて各被駆動片75、76に対して夫々相対的に回転移動(正転、逆転)する過程で緩衝部材101と接してこれを周方向へ押圧することにより緩衝部材101、及び各被駆動片75、76を介して回転部材70を断続的に回転駆動する突起としての2つの駆動片92、93と、を備える。
【0052】
各被駆動片75、76と各駆動片92、93とは互いに干渉(接触)しない径方向位置関係を有する。即ち、各被駆動片75、76は、夫々、回転部材外面の環状凸部71aの内周に突設した短尺の被駆動片75a、76aと、回転部材外面の中心凸部71bの外周に突設されて各被駆動片75a、76aと夫々対向する短尺の被駆動片75b、76bとから構成される。一方、各駆動片92、93は、被駆動片75a、75b間の径方向ギャップ、及び被駆動片76a、76b間の径方向ギャップを通過可能な径方向位置(凹所71cの径方向幅中間位置に相当する位置)に円弧状に突設されているため、各被駆動片と各駆動片とは相対的に周方向に移動する過程で干渉することがない。
第1駆動片92は
図15に示した正転時に被駆動片75、76間に保持された緩衝部材101の一端と接してこれを押圧することにより第1被駆動片75との間で圧縮させながら被駆動片75を介して回転部材を正転させる。第2駆動片93は
図16に示した逆転時に被駆動片75、76間に保持された緩衝部材101の他端と接してこれを押圧することにより第2被駆動片76との間で圧縮させながら被駆動片76を介して回転部材を逆転させる。
【0053】
以上の特徴的な構成により次のような特徴的な効果が生じる。
即ち、正転時には
図15(d)(e)に示したホームアウト後の各段階において緩衝部材101の拡開作用により第1被駆動片75と第1駆動片92との間には大きな周方向長を有した減速区間G1が形成されている。このため、
図15(f)に示すように回転部材が停止した時点で形成される減速区間G1も同様に大きな周方向長を有しており、余裕をもった減速を行いオーバーランを防止することができる。
従って、ローラ142が回転部材の外周73から凹陥部72内に嵌合したホームイン時の回転部材の増速による先行回転による僅かな減速区間の形成を期待する必要が無い。
【0054】
図15(f)に示すように回転部材が停止した時点における第1被駆動片75と第1駆動片92との間の周方向ギャップG1が駆動ギヤの減速区間G1となる。ローラによって係止されることにより初期回転姿勢にて停止している回転部材70(第1被駆動片75)に対して駆動ギヤ90(第1駆動片92)は不正防止用モータの慣性(自らの余勢)により、前記減速区間の範囲で回転を続ける。つまり、第1駆動片92が緩衝部材101を圧縮させながら減速区間内を回転移動する間に緩衝部材の減衰作用により駆動ギヤの慣性力は減少し、緩衝部材を介して駆動片92が被駆動片75を押圧するときの衝撃力が緩和される。この緩衝作用により、駆動片92が減速区間内を回転移動する期間中、レバー付勢部材146により付勢されたローラによって係止された回転部材は初期回転姿勢での停止状態を維持し続けることができる。このため、ガイドスリット52が搬送経路を開放する初期回転姿勢となるように開閉部材50が確実に位置決めされる。
なお、本実施形態においても、緩衝部材101が存在する場合に形成される減速区間の角度範囲は、緩衝部材が駆動片と被駆動片との距離を拡開させる作用を有することから、緩衝部材が存在しない場合に形成される減速区間に比して大きくなることが明らかである。減速区間が大きくなることにより、より余裕をもった減速が可能となり、被駆動片に加わる衝撃を大幅に減殺することができる。
【0055】
また、共通の一つの緩衝部材101を用いて正転時のみならず逆転時にも広い減速区間を確保してオーバーランを防止できる点も第2実施形態のメリットである。
なお、第2実施形態に係る不正防止機構24における不正検知、及び不正防止動作の制御手順は、
図9のフローチャートに基づいて説明した第1実施形態の制御手順と同等であるため、重複した説明は省略する。
【0056】
<第2実施形態に係る不正防止機構の動作>
次に、第2実施形態に係る不正防止機構(駆動伝達機構)における開閉部材の回転姿勢制御手順について
図15、
図16、及び
図11に基づいて説明する。
【0057】
図15(a)乃至(f)は第2実施形態に係る不正防止機構の不正防止モータ正転時における開閉部材の回転姿勢制御手順を示す説明図である。
図11は開閉部材をn回転させる動作手順を示すフローチャートであり、
図9のフローチャートのステップ108に相当しているサブルーチンである。
図15(a)は開閉部材50のガイドスリット52が初期回転姿勢にあって紙幣Pがガイドスリット内を通過することを許容する開放状態(待機状態)にある。この待機状態では、レバーの被検知部144cが不正防止用モータ120は停止しており、バネ付勢されたローラ142が回転部材の凹陥部72内に完全に嵌合しているため回転部材70は回転を停止している。この時、
図11のステップ130がYESとなっており、開閉部材が初期回転姿勢にあることが検知されている。
また、
図15(a)の待機状態において駆動ギヤの第1駆動片92は第1被駆動片75との間で緩衝部材101を軽く圧縮した状態で停止しているが、この時の緩衝部材はローラ142を凹陥部から離脱させる程の弾発力を生成していない。
【0058】
次いで、
図9のステップ101〜105に示すように入口12から投入されて光識別センサ18により真正紙幣であることが検知された紙幣Pが不正防止機構24を通過して下流側のスタッカに収納されたことが検知されると、ステップ108に示したように不正防止用モータ120をn回転させる。
図15(b)はこの時点における正転開始状態を示している。
即ち、
図15(b)の正転開始状態(
図9:ステップ131)においては、駆動ギヤ90が停止状態にある回転部材に先行して回転を開始するため緩衝部材101が第1被駆動片92と第1駆動片75との間で強く圧縮される。緩衝部材101の圧縮状態が限界状態に達して弾発力が高まると、第1駆動片92から緩衝部材を介して第1被駆動片75に伝達される押圧力が増大するためレバー付勢部材146の付勢に抗して回転部材が正転を開始する。回転部材が正転を開始すると凹陥部72がローラ142に対して回転移動を開始し、(c)(d)に順次示すようにローラが外径方向に変位して凹陥部を離脱し(ホームアウトし)、外周縁73上に移行して移動を開始する。緩衝部材はローラが凹陥部を離脱するまで強く圧縮された状態を維持し続け、(c)に示した離脱後に拡開して広い減速区間G1を形成する。
回転姿勢検知手段140はこの間、開閉部材が初期回転姿勢に戻ったか否かを検知し続ける(ステップ132)。
ローラが凹陥部を離脱した後では(d)(e)に示すように緩衝部材101は大きく拡開した状態となっているため、第1被駆動片75と第1駆動片92との間に大きな周方向長(角度θ1)を有した減速区間G1が形成される。
【0059】
駆動ギヤ90と緩衝部材101と回転部材70が一体となって正転を続けて(e)から(f)に示したホームイン状態になると、第1駆動片92は第1被駆動片75との間に(f)中に角度θ1で示した大きな減速区間G1を残した状態でモータ120からの駆動力伝達を打ち切られるため、それ以降は慣性により正転方向へ回転を続ける。この正転過程で、緩衝部材101の潰れによる緩衝作用によって第1駆動片92は緩やかに減速しながら緩衝部材を圧縮させて行き、第1被駆動片75に衝撃を与えることなく停止することができる。このため、モータが停止した時点で形成される減速区G1を大きく確保することができ、緩衝部材の緩衝作用と相まって、過大な力で被駆動片を押圧してオーバーランが発生することを防止できる。
なお、図示上、(d)(e)における減速区間G1の角度θ1と、(f)における減速区間G1の角度θ1とが一定であるように描かれているが、一定になるとは限らず、(f)における減速中の角度θ1の方が短くなり得る。
回転部材のオーバーランが解消されることにより、開閉部材50のガイドスリット52は常に初期回転姿勢に停止することが可能となり、新たに搬送経路を搬送されてくる紙幣がガイド部材の箇所でジャムとなるリスクを解消できる。また、モータ120を逆転させることによるオーバーランの解消作業が不要となるため、処理速度の低下を防止しつつモータを始めとした駆動部品の耐久性低下を防止することができる。
【0060】
次に、第1実施形態において説明したように、同一の紙幣搬送装置1において正転時のみならず、開閉部材を逆転(時計回り)させる時に不正手段を巻き取る仕様が求められる可能性もあるため、一つの駆動伝達機構100において逆転時における不正手段巻取りをも可能とする構成についても説明する。
即ち、
図16(a)乃至(f)は第2実施形態に係る不正防止機構の逆転動作手順を示す説明図である。
図16(a)は、
図15(a)と同様に開閉部材50が紙幣の投入を待受けている状態を示している。
【0061】
図16(a)の待機状態では、駆動ギヤの第2駆動片93が第2被駆動片76との間で緩衝部材101を加圧している一方で、第1駆動片92は緩衝部材101から離間した位置にある。
次いで(b)において不正防止用モータ120を逆転開始すると、第2駆動片93が緩衝部材を介して停止状態にある第2被駆動片76を逆転方向(時計回り方向)に押圧し始め、(c)のようにローラ142が凹陥部72から離脱(ホームアウト)して外周縁73上に移行する。(b)(c)では緩衝部材は強い力で圧縮されているため、第2駆動片93の力が第2駆動片76に伝達される。
更に逆転を継続することにより、ホームアウト後の(d)(e)では緩衝部材が広く拡開し、その結果として回転部材が駆動ギヤに先行した状態となっており、広い減速区間G3が形成されている。
(f)では更に逆転が進むことによりローラが凹陥部内にホームインしており、駆動ギヤ90への駆動力伝達が遮断される。ローラがホームインした時点では既に緩衝部材101の拡開力によって第2被駆動片76と第2駆動片93との間に広い減速区間G3が確保されており、第2駆動片はこの離間位置から減速を開始するため充分な減速が可能となる。減速区間G3の存在によってオーバーランが解消されるメカニズムと、そのメリットは
図15の正転時と同様である。
【0062】
[不正防止機構:第3実施形態]
<基本構成>
第3実施形態に係る不正防止機構(駆動伝達機構)について
図17乃至
図21に基づいて説明する。
なお、第2実施形態と同一部分には同一符号を付して重複した構成、動作の説明は省略する。即ち、第3実施形態に係る不正防止機構は駆動伝達機構100の構成を除けば第2実施形態とほぼ同等である。即ち、ギヤ機構130、回転姿勢検知手段140、制御手段200の構成、機能、及び動作は、第2実施形態と同様である。
図17(a)(b)及び(c)は第3実施形態に係る不正防止機構の一例を示す正面図、回転部材と回転姿勢検知手段との組み付け状態を示す正面図、及び(b)に駆動ギヤの一部及び緩衝部材を付加した状態を示す正面図であり、
図18(a)乃至(d)は開閉部材の構成を示す説明図、斜視図、(a)の右側面図、及び(a)のC−C断面図であり、
図19(a)(b)及び(c)は駆動ギヤの内側面の斜視図、側面図、及び緩衝部材付きの側面図である。また、
図20(a)乃至(f)は不正防止機構における開閉部材の正転時の動作手順の説明図であり、
図21(a)乃至(f)は開閉部材の逆転時の動作手順の説明図である。
【0063】
第3実施形態の不正防止機構24は、第2実施形態の変形例であり、駆動伝達機構100の構成、特に回転部材70に設けた被駆動片75、76の構成と、駆動ギヤ90に設けた駆動片92、93の構成と、緩衝部材101の配置等が第2実施形態と異なっている。
具体的には、被駆動片75、76は回転部材の外側面の凹所71cの径方向幅中間位置に設けられた細長い円弧状の突起であり、相対回転時に各駆動片92、93と干渉しない位置関係にある。
【0064】
一方、駆動片92、93は、駆動ギヤ内面の外側環状凸部91aの内周に突設された駆動片92a、93aと、駆動ギヤ内面の中心凸部91bの外周に各駆動片92a、93aとの間に所定の通過ギャップを挟んで対向するように突設された駆動片92b、93bとから夫々構成され、この通過ギャップ内には各被駆動片75、76が周方向へ通過可能である。また、第2実施形態とは逆に緩衝部材101は駆動片92、93間に配置されており、正転、逆転時に夫々被駆動片75、76の一方によって相対的に押圧されることにより駆動片92、93の周方向間隔内で収縮する。
【0065】
被駆動片と駆動片は径方向位置関係が互いにずれているために両片が相対回転する過程で緩衝(接触)することがない一方で、被駆動片は通過ギャップ内に入り込むことにより2対の駆動片間に保持された緩衝部材とのみ接触してこれを相対的に押圧するように構成されている。
即ち、第3実施形態に係る駆動伝達機構100は、回転部材の外側面に設けられた突起である第1被駆動片75と、第1被駆動片から時計回り方向に所定距離離間した位置に配置された突起である第2被駆動片76と、駆動ギヤ90の内側面(回転部材との対向面)に周方向位置を異ならせた位置関係で突設されて圧縮バネ等の弾性部材から成る緩衝部材101を伸縮自在に保持すると共に各被駆動片75、76に対して相対的に回転移動(正転、逆転)する過程で緩衝部材を介して各被駆動片75、76(回転部材70)を断続的に回転駆動する駆動片92、93と、を備える。
【0066】
第1駆動片92は
図20に示した正転時には第2駆動片93との間で保持した緩衝部材101の一端と接してこれを押圧することにより第1被駆動片75との間で圧縮しながら第1被駆動片75を介して回転部材を正転させる。第2駆動片93は
図21に示した逆転時には第1駆動片92との間で保持した緩衝部材101を第2被駆動片76との間で圧縮しながら第2被駆動片76を介して回転部材を逆転させる。
言い換えれば、第3実施形態に係る駆動伝達機構100は、回転部材に設けた2つの被駆動片75、76と、各被駆動片と干渉しない径方向位置関係にある駆動ギヤ側の2つの駆動片92、93とを備え、緩衝部材101は、各駆動片92、93間に形成される周方向ギャップ内に配置され、正転時には第1駆動片92と第1被駆動片75との間で圧縮されつつ第1被駆動片75を正転方向へ付勢する。また、逆転時には第2駆動片93と第2被駆動片76との間で圧縮されつつ第2被駆動片76を逆転方向へ付勢する。
【0067】
図20(d)(e)に示した正転時の各段階において、緩衝部材101の拡開作用により第1被駆動片75と第1駆動片92との間には大きな周方向長を有した減速区間G1が形成されている。このため、
図20(f)に示すように回転部材が停止した時点で形成される減速区間G1も同様に大きな周方向長を有しており、余裕をもった減速を行いオーバーランを防止することができる。
【0068】
図21(d)(e)(c)に示した逆転時の各段階においても同様の大きな減速区間G3を形成することができる。
減速区間G1、G3と、緩衝部材の減衰作用との協働によってオーバーランが解消されて開閉部材50が初期回転姿勢に復帰できる原理は第2実施形態において述べたことと同様である。
なお、第3実施形態に係る不正防止機構24における不正検知、及び不正防止動作の制御手順は、
図9のフローチャートに基づいて説明した第1実施形態の制御手順と同等であるため、重複した説明は省略する。
【0069】
<第3実施形態に係る不正防止機構の動作>
次に、第3実施形態に係る不正防止機構(駆動伝達機構)における開閉部材の回転姿勢制御手順について
図20、
図21に基づいて説明する。なお、
図11のフローチャートを併せて参照する。
図20(a)乃至(f)は第3実施形態に係る不正防止機構の不正防止モータ正転時における開閉部材の回転姿勢制御手順を示す説明図である。
図20(a)は第2実施形態の
図15(a)と同じ待機状態を示している。
(b)の正転開始状態(ステップ131)においては、駆動ギヤ90が停止状態にある回転部材に先行して回転を開始するため緩衝部材101が第1駆動片92と第1被駆動片75との間で強く圧縮される。緩衝部材101の圧縮状態が限界状態に達して弾発力が高まるとレバー付勢部材146の付勢に抗して回転部材が正転を開始する。回転部材が正転を開始すると、(c)(d)に順次示すようにローラが外径方向に変位して凹陥部を離脱し(ホームアウトし)、外周縁73上に移行して移動を続ける。
回転姿勢検知手段140はこの間、開閉部材が初期回転姿勢に戻ったか否かを検知し続ける(ステップ132)。
ローラが凹陥部を離脱した後では(d)(e)に示すように緩衝部材101は拡開した状態となっているため、第1被駆動片75と第1駆動片92との間に充分大きな周方向長(角度θ1)を有した減速区間G1が形成される。
【0070】
続いて(f)に示したホームイン状態になると、第1駆動片92は第1被駆動片75との間に(f)中に角度θ1で示した大きな減速区間G1を残した状態でモータ120からの駆動力伝達を打ち切られるため、それ以降は慣性により正転方向へ回転を続ける。この正転過程で、第1駆動片92は緩やかに減速しながら緩衝部材を圧縮させて行き、第1被駆動片75に衝撃を与えることなく停止することができる。このため、モータが停止した時点で形成される減速区間θ1を大きく確保することができ、緩衝部材の緩衝作用と相まって、過大な力で被駆動片を押圧してオーバーランが発生することを防止できる。
【0071】
次に、
図21(a)乃至(f)は第3実施形態に係る不正防止機構の逆転動作手順を示す説明図である。
図21(a)の待機状態では、駆動ギヤ90、及び回転部材70は回転を停止している。
(b)において不正防止用モータ120を逆転開始すると、第2駆動片93が緩衝部材を介して停止状態にある第2被駆動片76を逆転方向(時計回り方向)に押圧し始め、(c)のようにローラ142が凹陥部72から離脱(ホームアウト)して外周縁73上に移行する。(b)(c)では緩衝部材は強い力で圧縮されているため、第2駆動片93の力が第2駆動片76に伝達される。
更に逆転を継続することにより(d)(e)では緩衝部材が広く拡開し、その結果として回転部材が駆動ギヤに先行した状態となっており、広い減速区間G3が形成されている。
(f)ではローラが凹陥部内にホームインした状態となっており駆動ギヤ90への駆動力伝達が遮断される。この時点では既に緩衝部材101の拡開力によって第2被駆動片76と第2駆動片93との間に広い減速区間G3が確保されており、第2駆動片は被駆動片との間に減速区間G3を残した状態でモータ120からの駆動力伝達を打ち切られるため、それ以降は慣性により逆転方向へ回転を続ける。この慣性は、充分に拡開した状態にある緩衝部材の緩衝作用によって減殺されるため、オーバーランの発生を効果的に防止できる。
【0072】
[不正防止機構:第4実施形態]
<基本構成>
第4実施形態に係る不正防止機構について
図22乃至
図26に基づいて説明する。
図22(a)(b)及び(c)は第4実施形態に係る不正防止機構の一例を示す正面図、回転部材と回転姿勢検知手段との組み付け状態を示す正面図、及び(b)に駆動ギヤの一部及び緩衝部材を付加した状態を示す正面図であり、
図23(a)乃至(d)は開閉部材の構成を示す説明図、斜視図、(a)の右側面図(緩衝部材付き)、及び(a)のD−D断面図であり、
図24(a)及び(b)は駆動ギヤの内側面の斜視図、及び側面図である。また、
図25(a)乃至(f)は不正防止機構における開閉部材の正転時の動作手順の説明図であり、
図26(a)乃至(f)は不正防止機構における開閉部材の逆転時の動作手順の説明図である。
なお、前記各実施形態と同一部分には同一符号を付して重複した構成、動作の説明は省略する。即ち、第4実施形態に係る不正防止機構は駆動伝達機構100の構成を除けば前記各実施形態とほぼ同等である。
【0073】
第4実施形態の駆動伝達機構100は、被駆動片75、76(非干渉型被駆動片=駆動片により直接押圧されずに緩衝部材を保持する)のみを有した第2実施形態における回転部材70に対して第1実施形態に係る被駆動片74(干渉型被駆動片=駆動片により直接押圧される)を付加した構成が特徴的であり、2つの駆動片92、93は正転時と逆転時に夫々被駆動片(第3被駆動片)74を直接押圧する。また、緩衝部材101は第2実施形態と同様に被駆動片75、76間に配置される。
駆動ギヤの正転時には緩衝部材と接触していない方の第2駆動片93が被駆動片74と直接接触してこれを押圧することにより
図25(b)(c)のようにホームアウトを所定の確定したタイミングで確実に実現する。駆動ギヤの逆転時には緩衝部材と接触していない方の第1駆動片92が被駆動片74と直接接触してこれを押圧することにより
図26(b)(c)のようにホームアウトを所定の確定したタイミングで確実に実現する。
【0074】
第1実施形態と同様に駆動片と接触して押圧される被駆動片74は、嵌合凹所の内側に相当する環状凸部71aの内周面から回転部材の中心部に伸びることによって各駆動片92、93の移動経路を塞ぐように配置されている。つまり、被駆動片74は、駆動ギヤが正転開始した初期の段階(
図25(b)(c))において第2駆動片93により押圧されて回転部材を正転させ、駆動ギヤが逆転開始した初期の段階(
図26(b)(c))において第1駆動片92により押圧されて回転部材を逆転させる。被駆動片74は正転時、及び逆転時にローラが凹陥部から離脱するホームアウトの実現に貢献するのみであり、ホームアウト後は緩衝部材の拡開力によって回転部材が駆動ギヤに先行移動するため、各駆動片93、92から離間した状態となる。
【0075】
第2実施形態と同様に、各被駆動片75(75a、75b)、76(76a、76b)と各駆動片92、93とは、径方向位置関係が互いにずれているために被駆動片に対して駆動片が相対回転する過程で干渉(接触)することがない。一方、駆動片92、93は一方の駆動片が緩衝部材101を押圧している時には他方の駆動片が被駆動片74を押圧するように構成されている。
つまり、第4実施形態に係る駆動伝達機構100は、夫々の周方向位置を異ならせて回転部材70に設けた2つの非干渉型被駆動片75、76、及び一つの干渉型被駆動片(第3被駆動片)74と、周方向位置を異ならせて配置され、且つ各非干渉型被駆動片75、76とは干渉しない一方で、干渉型被駆動片74とは干渉する位置関係にある2つの駆動片92、93と、を備える。駆動ギヤの正転時には他方の駆動片93が干渉型被駆動片74と接してこれを押圧し、逆転時には一方の駆動片92が干渉型被駆動片74と接してこれを押圧する。緩衝部材101は、2つの非干渉型被駆動片75、76間に配置され、駆動ギヤの正転時には一方の駆動片92と一方の被駆動片75との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片75を正転方向へ付勢し、逆転時には他方の駆動片93と他方の被駆動片76との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片76を正転方向へ付勢する。
なお、本明細書において干渉型被駆動片とは、駆動ギヤが回転部材に対して相対回転する過程で何れかの駆動片と干渉する位置関係にある被駆動片(74)を指称し、非干渉型被駆動片とは、駆動ギヤが回転部材に対して相対回転する過程で何れの駆動片とも干渉しない位置関係にある被駆動片(75、76)を指称する。
【0076】
緩衝部材101は、駆動ギヤの正転時には第1駆動片92により反時計回り方向へ押圧されることにより第1被駆動片75との間で圧縮されつつ第1被駆動片75を正転方向へ付勢する。第1駆動片92が緩衝部材を圧縮しながら第1被駆動片75に近づくことにより第2駆動片93が被駆動片74に接近して行き、被駆動片74と接触した時点以降に被駆動片74を押圧開始する。また、緩衝部材101は、駆動ギヤの逆転時には第2駆動片93により時計回り方向へ押圧されることにより第2被駆動片76との間で圧縮されつつ第2被駆動片76を逆転方向へ付勢する。第2駆動片93が緩衝部材を圧縮しながら第2被駆動片76に近づくことにより第1駆動片92が被駆動片74に接近して行き、被駆動片74と接触した以降にこれを押圧開始する。
言い換えれば、本実施形態では、一方の駆動片が緩衝部材を圧縮させている時には他方の駆動片は被駆動片74を押圧する役割を果たし、逆に他方の駆動片が緩衝部材を圧縮させている時には一方の駆動片は被駆動片74を押圧する役割を果たすものである。
つまり、本実施形態では被駆動片74を直接押圧することにより回転部材を正転、又は逆転させるのは何れか一方の駆動片92、93であり、緩衝部材は被駆動片74が直接駆動される前段階において何れか一方の被駆動片75、76を介して回転部材を押圧する役割を果たす他は回転部材が初期回転姿勢で停止した後において駆動ギヤを減速させる時の緩衝手段として機能する。
【0077】
第4実施形態に係る駆動伝達機構100は、緩衝部材を介した駆動力のみによって回転部材を回転させる第1、及び第2実施形態における次のような問題点を解消するものである。
即ち、第1実施形態に係る駆動伝達機構100は、緩衝部材101が被駆動片74と接触して第1駆動片92との間で圧縮されながら被駆動片74を押圧する構成であるため、被駆動片74が押圧されることにより凹陥部からローラを一旦離脱させてから周回してきて再び凹陥部に嵌合させる挙動、及び再嵌合させるための各タイミングが全て緩衝部材の圧縮量(弾発力)という不確定要素に依存することとなっている。つまり、駆動ギヤが何角度回動した時点でローラが凹陥部から離脱を開始し、その後どのタイミングで再嵌合するのか不確定であり、バラツキが出る。このことは、第2実施形態においても同様である。特に、緩衝部材の耐久性が低下することによりこのバラツキの度合いが高くなる。
【0078】
これに対して第4実施形態では、緩衝部材を介することなく駆動片によって干渉型被駆動片を直接押圧する構成を採ることにより、ローラが凹陥部から離脱を開始するための駆動ギヤの回転角度やタイミング、更に再嵌合するための駆動ギヤの回転角度やタイミングを一義的に確定することができ、バラツキを防止できる。つまり、駆動片と被駆動片は共に剛体であり、且つ一部品であり、しかも両片間に緩衝部材が介在しないため、駆動片が被駆動片を押圧開始する位置、角度が一義的に確定され、駆動ギヤが所定の角度まで回動すると回転部材の回動が確実に開始されることとなる。しかも、緩衝部材の存在によって不正防止用モータを停止させた状態から駆動ギヤを回転開始させた後で形成される減速区間を長くできるため、オーバーラン発生を効率的に防止できる。
なお、第4実施形態に係る不正防止機構24における不正検知、及び不正防止動作の制御手順は、
図9のフローチャートに基づいて説明した第1実施形態の制御手順と同等であるため、重複した説明は省略する。
【0079】
<第4実施形態に係る不正防止機構の動作>
次に、第4実施形態に係る不正防止機構(駆動伝達機構)における開閉部材の回転姿勢制御手順について
図25、及び
図26に基づいて説明する。
図25(a)乃至(f)は第4実施形態に係る不正防止機構の不正防止モータ正転時における開閉部材の回転姿勢制御手順を示す説明図である。
図11の開閉部材をn回転させる動作手順を示すフローチャートと、
図9のフローチャートを併せて参照しながら説明する。
なお、前記各実施形態の対応する動作手順と重複する説明は適宜省略する。
【0080】
図25(a)の待機状態では回転部材70は回転を停止しており、開閉部材は初期回転姿勢にある。
図25(a)において駆動ギヤの第1駆動片92は第2被駆動片76を越えて緩衝部材101と接触し、第1被駆動部75との間で緩衝部材を押圧した状態で停止している。この時、緩衝部材101には、ローラ142を凹陥部72から離脱させる程の弾発力は生成していない。また、第1駆動片92と180度離間した位置にある第2駆動片93は第1被駆動片75と被駆動片(第3被駆動片)74との間に位置しているが被駆動片74とは接触してない。
次いで(b)の正転開始状態(ステップ131)においては、駆動ギヤ90が停止状態にある回転部材に先行して正転を開始するため緩衝部材101が第1被駆動片75と第1駆動片92との間で強く圧縮開始される。緩衝部材101の圧縮によって弾発力が高まることにより第1被駆動片75が押圧されるが、緩衝部材からの押圧力によって回転部材が回転開始する前に、第2駆動片93がいち早く被駆動片74と接触して押圧開始することにより回転部材を回転開始させる。つまり、被駆動片74及び第1被駆動片75に対する第2駆動片93の位置関係は、第1駆動片92により押し込まれて圧縮した緩衝部材が第1被駆動片75を介して回転部材を回転開始させる前に第2駆動片93が被駆動片74と接触を開始して押圧開始するように設定する。
【0081】
凹陥部72がローラ142に対して回転を開始し、(c)(d)に順次示すようにローラが外径方向に変位して凹陥部を離脱し(ホームアウトし)た後では、外周縁73上に移行して転動しながら移動を続ける。
回転姿勢検知手段140はこの間、開閉部材が初期回転姿勢に戻ったか否かを検知し続ける(ステップ132)。
ローラが凹陥部を離脱した後では
図25(d)(e)に示すように緩衝部材101は大きく拡開した状態となっているため、第1被駆動片75と第1駆動片92との間に充分大きな周方向長(角度θ1)を有した減速区間G1が形成される。また、凹陥部がローラから離脱(ホームアウト)した後は、緩衝部材の拡開力によって回転部材が駆動ギヤに先行して正転方向へ移動するために第2駆動片93は被駆動片74から離間している。つまり、第2駆動片93が被駆動片74と接してこれを押圧するのはホームアウトさせる時のみであり、駆動ギヤの正転開始からホームアウトまでの駆動ギヤの回転角度、所要時間(タイミング)が緩衝部材の挙動に影響されずに常に確定した一定値となる。
駆動ギヤ90と緩衝部材101と回転部材70が一体となって正転を続けると、ローラが回転部材の外周縁に沿って相対移動し、(e)に示した状態となる。
【0082】
続いて(f)に示したホームイン状態になると、駆動ギヤの第1駆動片92は図示の位置で減速を開始する。回転部材が停止した時点における第1被駆動片75と第1駆動片92との間の周方向ギャップG1が駆動ギヤの減速区間G1となる。第1駆動片92は第1被駆動片75との間に(f)中に角度θ1で示した大きな減速区間G1を残した状態でモータ120からの駆動力伝達を打ち切られるため、それ以降は慣性により正転方向へ回転を続ける。緩衝部材101の潰れによる緩衝作用による回転部材のオーバーランの防止効果と、オーバーラン解消による効果は上記各実施形態の場合と同様である。
なお、本実施形態においても、緩衝部材101が存在する場合に形成される減速区間の角度範囲は、緩衝部材が駆動片と被駆動片との距離を拡開させる作用を有することから、緩衝部材が存在しない場合に形成される減速区間に比して格段に大きくなることが明らかである。減速区間が大きくなることにより、より余裕をもった減速が可能となり、被駆動片に加わる衝撃を大幅に減殺することができる。
【0083】
次に、
図26(a)乃至(f)は第4実施形態に係る不正防止機構の逆転動作手順を示す説明図である。なお、第1実施形態の正転時に関する
図11のフローチャートを併せて参照しつつ説明する。
図26(a)は
図25(a)と同様の待機状態である。
図26(a)の待機状態においては駆動ギヤの第2駆動片93が緩衝部材101を介して第2被駆動片76を軽く加圧した位置にある一方で、第1駆動片92は緩衝部材101から離間した位置にあり、且つ被駆動片74とは接触してない。
次いで(b)の逆転開始状態(ステップ131)においては、駆動ギヤ90が回転部材に先行して逆転を開始するため緩衝部材101が第2駆動片93と第2被駆動片76との間で強く圧縮開始される。緩衝部材101の弾発力により回転部材が逆転開始する前に、第1駆動片92がいち早く被駆動片74と接触して押圧開始することにより回転部材を逆転開始させる。つまり、被駆動片74及び第2駆動片76に対する第1駆動片92の位置関係は、第2駆動片93により押し込まれて圧縮した緩衝部材が第2被駆動片76を介して回転部材を回転開始させる前に第1駆動片92が被駆動片74と接触を開始して押圧開始するように設定する。
(c)(d)に順次示すようにローラが外径方向に変位して凹陥部を離脱し(ホームアウトし)た後では、外周縁73上に移行して転動しながら移動を続ける。
回転姿勢検知手段140はこの間、開閉部材が初期回転姿勢に戻ったか否かを検知し続ける(ステップ132)。
更に逆転を継続することにより(d)(e)では緩衝部材が広く拡開し、その結果として回転部材が駆動ギヤに先行した状態となっており、広い減速区間G3が形成されている。
【0084】
(f)ではローラが凹陥部内にホームインしており、駆動ギヤ90への駆動力伝達が遮断される。ホームインの時点では既に緩衝部材101の拡開力によって第2被駆動片76と第2駆動片93との間に広い減速区間G3が確保されており、第2駆動片はこの離間位置から減速を開始するため充分な減速が可能となる。広い減速区間が形成されることによるオーバーラン防止効果、及びオーバーラン解消による効果は正転の場合と同様である。
また、第1駆動片92が被駆動片74と接してこれを押圧するのはホームアウトさせる時のみであるため、駆動ギヤの逆転開始からホームアウトまでの駆動ギヤの回転角度、所要時間(タイミング)を緩衝部材の挙動に影響されずに常に確定した一定値とすることができる。
【0085】
[不正防止機構:第5実施形態]
<基本構成>
第5実施形態に係る不正防止機構について
図27乃至
図31に基づいて説明する。
なお、前記各実施形態と同一部分には同一符号を付して重複した構成、動作の説明は省略する。即ち、第5実施形態に係る不正防止機構は駆動伝達機構100の構成を除けば前記各実施形態とほぼ同等である。
図27(a)(b)及び(c)は第5実施形態に係る不正防止機構の一例を示す正面図、回転部材と回転姿勢検知手段との組み付け状態を示す正面図、及び(b)に駆動ギヤの一部及び緩衝部材を付加した状態を示す正面図であり、
図28(a)乃至(d)は開閉部材の構成を示す説明図、斜視図、(a)の右側面図、及び(a)のE−E断面図であり、
図29(a)(b)及び(c)は駆動ギヤの内側面の斜視図、側面図、及び緩衝部材を加えた側面図である。また、
図30(a)乃至(f)は不正防止機構における開閉部材の正転時の動作手順の説明図であり、
図31(a)乃至(f)は開閉部材の逆転時の動作手順の説明図である。
【0086】
第5実施形態の駆動伝達機構100は、第3実施形態、及び第4実施形態を組み合わせた如き構造を有している。
具体的には、被駆動片75、76は第3実施形態と同様に回転部材の外側面の凹所71cの径方向幅中間位置に設けられた細長い円弧状の突起であり、駆動ギヤと相対回転する過程で各駆動片92、93と干渉しない位置関係にある。
【0087】
一方、駆動片92、93は、駆動ギヤ内面の外側環状凸部91aの内周に突設された駆動片92a、93aと、駆動ギヤ内面の中心凸部91bの外周に各駆動片92a、93aと所定の通過ギャップを挟んで対向するように突設された駆動片92b、93bとから夫々構成され、この通過ギャップ内には各被駆動片75、96が周方向へ相対的に通過可能である。また、緩衝部材101は駆動片92、93間に配置されており、駆動片92、93の周方向間隔内で伸縮する。
被駆動片75、76は各通過ギャップ内に相対的に入り込むことにより緩衝部材と接してこれを圧縮させる機能を有する。
特に、被駆動片75、76と駆動片92、93は径方向位置関係が互いにずれているために両片が相対回転する過程で干渉(接触)することがない一方で、被駆動片75、76は2つの駆動片92、93間に保持された緩衝部材101と接触してこれを押圧するように構成されている。また、駆動ギヤの正転、及び逆転時に夫々被駆動片75、76が単一の干渉型駆動片(第3駆動片)96により押圧されることにより回転部材が正転、及び逆転する。
【0088】
即ち、駆動ギヤの内側面には、各駆動片92、93から等距離の部位に、各被駆動片75、76と干渉する干渉型駆動片96が外側環状凸部91aと中心凸部91bとの間に跨がって配置されている。駆動ギヤの正転時には一方の駆動片92が一方の被駆動片75との間で緩衝部材101を圧縮しつつ被駆動片75を付勢すると共に、干渉型駆動片96が他方の被駆動片76と接してこれを押圧する。また、駆動ギヤの逆転時には他方の駆動片93が他方の被駆動片76との間で緩衝部材101を圧縮しつつ被駆動片76を付勢すると共に、干渉型駆動片96が一方の被駆動片75と接してこれを押圧する。
即ち、第5実施形態に係る駆動伝達機構100は、周方向位置を異ならせて回転部材に設けた2つの被駆動片75、76と、周方向位置を異ならせて駆動ギヤに配置されて2つの被駆動片75、76と干渉しない位置関係にある2つの駆動片92、93、及び各被駆動片75、76と干渉する位置関係にある干渉型駆動片(第3駆動片)96と、を備える。
図30に示した正転時には干渉型駆動片96が他方の被駆動片76と接してこれを押圧し、
図31に示した逆転時には干渉型駆動片96が一方の被駆動片75と接してこれを押圧する。緩衝部材101は、2つの駆動片92、93間に配置され、駆動ギヤの正転時には一方の駆動片92と一方の被駆動片75との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片75を正転方向へ付勢し、駆動ギヤの逆転時には他方の駆動片93と他方の被駆動片76との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片76を逆転方向へ付勢する。
駆動ギヤ90が正転する過程で干渉型駆動片96が緩衝部材101を介さずに直接第2被駆動片76と接触して押圧することにより回転部材70を正転駆動する。駆動ギヤの逆転時には干渉型駆動片96が緩衝部材101を介さずに直接第1被駆動片75と接触して押圧することにより回転部材70を正転駆動する。
【0089】
図30(d)(e)の各段階において緩衝部材101の拡開作用により第1駆動片92と第1被駆動片75との間には大きな周方向長を有した減速区間G1が形成されている。このため、
図30(f)に示すように回転部材が停止した時点で形成される減速区間G1も同様に大きな周方向長を有しており、余裕をもった減速を行いオーバーランを防止することができる。
減速区間G1と、緩衝部材の減衰作用との協働によってオーバーランが解消されて開閉部材50が初期回転姿勢に復帰できる原理は前記各実施形態において述べたことと同様である。
なお、第5実施形態に係る不正防止機構24における不正検知、及び不正防止動作の制御手順は、
図9のフローチャートに基づいて説明した第1実施形態の制御手順と同等であるため、重複した説明は省略する。
【0090】
<第5実施形態に係る不正防止機構の動作>
次に、第5実施形態に係る不正防止機構(駆動伝達機構)における開閉部材の回転姿勢制御手順について
図30、
図31に基づいて説明する。なお、
図11のフローチャートを併せて参照する。
図30(a)乃至(f)は第5実施形態に係る不正防止機構の不正防止モータ正転時における開閉部材の回転姿勢制御手順を示す説明図である。なお、
図30の各図(a)乃至(f)は、前記各実施形態の各図(a)乃至(f)と対応しているため、重複した説明は省略する。
【0091】
図30(a)の待機状態では回転部材70は回転を停止している。
図30(a)の待機状態において駆動ギヤの第1駆動片92は第1被駆動片75との間で緩衝部材101を軽く圧縮している。干渉型駆動片96は何れの被駆動片とも非接触状態にある。
(b)の正転開始状態(ステップ131)においては、緩衝部材101が第1駆動片92と第1被駆動片75との間で強く圧縮されると共に、干渉型駆動片96が第2被駆動片76を押圧することにより回転部材が正転を開始する。回転部材が正転を開始すると(c)(d)に順次示すようにローラが凹陥部をホームアウトし、外周縁73上に移行して移動を続ける。圧縮された緩衝部材からの圧力によって第1被駆動片75が駆動される訳ではなく専ら干渉型駆動片96からの押圧力により駆動される。
回転姿勢検知手段140はこの間、開閉部材が初期回転姿勢に戻ったか否かを検知し続ける(ステップ132)。
ローラが凹陥部を離脱した後では(d)(e)に示すように緩衝部材101は拡開した状態となっているため、第1被駆動片75と第1駆動片92との間に充分大きな周方向長(角度θ1)を有した減速区間G1が形成される。(d)の時点では干渉型駆動片96と第2被駆動片76とはすでに離間しており、駆動力の伝達は行われていない。
【0092】
続いて(f)に示したホームイン状態になると、駆動片92は図示の位置で減速を開始する。即ち、第1駆動片92は第1被駆動片75との間に(f)中に角度θ1で示した大きな減速区間G1を残した状態でモータ120からの駆動力伝達を打ち切られるため、それ以降は慣性により正転方向へ回転を続ける。この正転過程で、緩衝部材101の潰れによる緩衝作用によって第1駆動片92は緩やかに減速しながら緩衝部材を圧縮させて行き、第1被駆動片75に衝撃を与えることなく停止することができる。このため、モータが停止した時点で形成される減速区間G1を大きく確保することができ、緩衝部材の緩衝作用と相まって、過大な力で被駆動片を押圧してオーバーランが発生することを防止できる。
【0093】
次に、
図31(a)乃至(f)は第5実施形態に係る不正防止機構の逆転動作手順を示す説明図である。
図31(a)では回転部材70は回転を停止している。
(a)の待機状態において駆動ギヤの第2駆動片93は第2被駆動片76との間で緩衝部材101を軽く圧縮している。干渉型駆動片96は何れの被駆動片とも非接触状態にある。
(b)の逆転開始状態(ステップ131)においては、緩衝部材101が第2駆動片93と第2被駆動片76との間で強く圧縮されると共に、干渉型駆動片96が第1被駆動片75を時計回り方向へ押圧することにより回転部材が逆転を開始する。回転部材が逆転を開始すると(c)(d)に順次示すようにローラが凹陥部を離脱し(ホームアウトし)、外周縁73上に移行して移動を続ける。圧縮された緩衝部材からの圧力によって第2被駆動片76が駆動される訳ではなく専ら干渉型駆動片96からの押圧力により駆動される。
ローラが凹陥部を離脱した後では(d)(e)に示すように緩衝部材101は拡開した状態となっているため、第2被駆動片76と第2駆動片93との間に充分大きな周方向長(角度θ3)を有した減速区間G3が形成される。(d)の時点では干渉型駆動片96と第1被駆動片75とはすでに離間しており、駆動力の伝達は行われていない。
図31(e)(f)については、
図30(a)(f)の正転時の場合と回転方向が逆であるだけであるため、説明を省略する。
【0094】
[本発明の構成、作用、効果のまとめ]
第1の発明に係る不正検知機構24は、搬送経路10に沿って搬送される紙葉Pに不正手段Uが取り付けられていることを検知する手段であって、初期回転姿勢にあるときに紙葉の通過を許容すると共に、該初期回転姿勢から外れた非初期回転姿勢にある時に紙葉の通過を阻止する不正検知用の開閉部材50と、開閉部材と一体回転する回転部材70と、回転部材と対向配置されて相対回転可能に軸支された開閉部材駆動用の駆動部材90と、駆動部材からの駆動力を回転部材に断続的に伝達する駆動伝達機構100と、を備え、駆動伝達機構は、回転部材70に設けられた少なくとも一つの被駆動片と、駆動部材90に設けられて被駆動片に対して相対的に回転移動する過程で直接、或いは間接的に被駆動片を周方向へ押圧することにより回転部材を断続的に回転駆動する少なくとも一つの駆動片と、被駆動片と駆動片とを離間する方向へ付勢する緩衝部材101と、を備えていることを特徴とする。
【0095】
第1の発明に係る不正検知機構24は、第1乃至第5実施形態に対応している。
不正検知機構24は、開閉部材50に設けたスリット52内を紙葉が通過した後に開閉部材50を回転させることにより紙葉に固定された線材、テープ等の不正手段を巻き取って物理的に検知すると共に、不正手段を用いた抜取りを阻止する手段である。なお、開閉部材の構成としてスリットは必須ではなく、スリットを有しない開閉部材自体が通路を開閉してもよいし、スリットに代えて開閉部材に切欠きを設けてもよい。
開閉部材50の待機時にスリット52を開放状態として紙葉の通過を許容する設定とした場合、開閉部材が前回の回転時にオーバーランしてスリットを開放させた姿勢(初期回転姿勢)で停止できないと紙葉がジャムを起こして円滑、且つスピーディーな運用が阻害される。
オーバーランを防止する手法として、逆転させて初期回転姿勢に戻したり、モータをPWM制御するとすれば、処理時間が増大したり、部品の耐久性が低下する。
【0096】
一方、開閉部材50と一体の回転部材70に対して駆動部材90を相対回転可能に組み付けると共に、回転部材に設けた被駆動片を駆動部材90側に設けた駆動片により断続的に所定のタイミングで駆動するように構成した場合には、n回転後に回転部材が初期回転姿勢に復帰した時点でモータを停止させる。この場合には、先に停止した回転部材の被駆動片に対して余勢を有した駆動部材の駆動片を減速させるための減速区間を確保することができるが、この減速区間は過小となるため、被駆動片に対して駆動片が衝突してオーバーランが発生する。このため、逆転動作による初期回転姿勢への復帰のための処理時間の遅延、モータの耐久性の低下という不具合がある。
n回転してきた開閉部材が初期回転姿勢で停止する際のオーバーランを防止するために、仮に回転部材が初期回転姿勢に達する前(360度回転する前)にモータ120を停止させて早めにブレーキを実施するとした場合には、ブレーキのタイミングが難しくなる。回転部材を停止させるブレーキのタイミングが少しでも早過ぎると、減速のし過ぎにより駆動片が被駆動片と接してこれを初期回転姿勢に移動させる前に駆動片が停止してしまう回転未了(回転角度が360度に達しない状態での停止)が発生する。紙葉搬送装置毎の部品精度、組み付け精度のばらつきによりこのような不具合を解消することは難しいのが実態であり、個別にブレーキのタイミングを設定するのは困難である。また、紙葉搬送装置を設置する場所の温度環境の違いによっても不正防止機構の動作にバラツキが発生する。例えば0度の低温環境では動作が鈍くなって停止し易くなり、60度の高温環境では50万回の動作を求められる小型モータの耐久性は常温環境に比して更に低下し易い。このような不具合に対して細かいソフト制御により対処するのは難しかった。
【0097】
また、不正防止のために紙幣を一枚通過させる度に開閉部材50を二回転、或いはそれ以上の回数回転させることが求められる場合には、小型モータに求められる回転数は100万回以上となる。オーバーラン発生後に逆転させて停止位置を修正するとすれば小型モータは更に膨大な数の回転を行うこととなる。
これに対して本発明では、回転部材70の被駆動片と駆動部材90の駆動片とを離間させる方向へ付勢する緩衝部材101を付加、配置するだけの簡単な改良によって、前記減速区間を拡大することが可能となり、逆転や複雑なソフト制御を行うこと無くオーバーランの発生を確実に防止することが可能となり、小型モータの耐久性の低下を防止することができる。
【0098】
実施形態に即して説明すれば、360度回転した後でローラ142によって係止されることにより初期回転姿勢にて停止した回転部材70(被駆動片)に対して、駆動ギヤ90(駆動片)は不正防止用モータの慣性(自らの余勢)により減速区間の範囲で回転を続ける。つまり、駆動片が緩衝部材101を圧縮させながら減速区間内を回転移動する間に緩衝部材の減衰作用により駆動ギヤの慣性力は減少し、緩衝部材を介して駆動片が被駆動片を押圧するときの衝撃力が緩和される。この緩衝作用により、駆動片が減速区間内を回転移動する期間中、ローラによって係止された回転部材は初期回転姿勢での停止状態を維持し続けることができる。このため、ガイドスリット52が初期回転姿勢となるように開閉部材50が確実に位置決めされる。
この駆動伝達機構100は、開閉部材の正転時は勿論、逆転時にもオーバーランを防止することが可能である。
【0099】
第2の本発明に係る不正防止機構24は、駆動片92、93と被駆動片75、76とが干渉しない径方向位置関係を有し、周方向位置が異なる2つの駆動片92、93間に配置された緩衝部材101を周方向位置が異なる2つの被駆動片75、76のうちの一方(例えば、75)が一方の駆動片(例えば、92)との間で加圧し、他方の被駆動片(例えば、76)が他方の駆動片(例えば、93)との間で緩衝部材を加圧することを特徴とする。
第2の本発明に係る不正防止機構は、第3、第5実施形態に対応している。
緩衝部材101は駆動部材と回転部材とを離間する周方向へ付勢する機能を発揮するのであれば、駆動部材と回転部材のどの部位に配置してもよい。本例では、離間配置された2つの駆動片92、93間に緩衝部材を配置している。緩衝部材に対して相対的に進退して駆動片との間でこれを加圧するのは被駆動片75、76である。
この駆動伝達機構100は、開閉部材の正転時は勿論、逆転時にもオーバーランを防止することが可能である。
【0100】
第3の本発明に係る不正防止機構24は、被駆動片75、76を直接押圧する干渉型駆動片96を駆動部材に備えていることを特徴とする。
第3の本発明は、第5実施形態に対応している。
各被駆動片は挙動が安定しない緩衝部材を介さずに剛体である干渉型駆動片96により直接駆動されるので、初期回転姿勢から回転を開始して360度回転した後に再び初期回転姿勢に復帰する過程において、復帰のタイミングを一義的に設定することが可能となり、不正検知、不正防止のための開閉部材の回転動作の安定性を高めることができる。
この駆動伝達機構100は、開閉部材の正転時は勿論、逆転時にもオーバーランを防止することが可能である。
【0101】
第4の本発明に係る不正防止機構24は、駆動片92、93と被駆動片75、76とが干渉しない径方向位置関係を有し、周方向位置が異なる2つの被駆動片間に配置された緩衝部材101を周方向位置が異なる2つの駆動片のうちの一方(例えば、92)が一方の被駆動片(例えば、75)との間で加圧し、他方の駆動片(例えば、93)が他方の被駆動片(例えば、76)との間で緩衝部材を加圧することを特徴とする。
第4の本発明に係る不正防止機構24は、第2、第4実施形態に対応している。
緩衝部材101は駆動部材と回転部材とを周方向の離間する方向へ付勢する機能を発揮するのであれば、駆動部材と回転部材のどの部位に配置してもよい。本例では、離間配置された2つの被駆動片75、76間に緩衝部材を配置している。緩衝部材に対して相対的に進退して駆動片との間でこれを加圧するのは駆動片92、93である。
この駆動伝達機構100は、開閉部材の正転時は勿論、逆転時にもオーバーランを防止することが可能である。
【0102】
第5の本発明に係る不正防止機構24は、駆動片92、93によって直接押圧される干渉型被駆動片74を備えていることを特徴とする。
第5の本発明は第4実施形態に対応している。
干渉型被駆動片74は挙動が安定しない緩衝部材を介さずに剛体である各駆動片92、93により直接駆動されるので、初期回転姿勢から回転を開始して360度回転した後に再び初期回転姿勢に復帰する過程において、復帰のタイミングを一義的に設定することが可能となり、不正検知、不正防止のための開閉部材の回転動作の安定性を高めることができる。
この駆動伝達機構100は、開閉部材の正転時は勿論、逆転時にもオーバーランを防止することが可能である。
【0103】
第6の本発明に係る不正検知機構24では、緩衝部材101は、一つの被駆動片(75、又は76)と一つの駆動片(92、又は93)との間に配置され、駆動部材90の回転時に一つの駆動片と一つの被駆動片との間で圧縮されつつ一つの被駆動片と直接接触して回転方向へ押圧することを特徴とする。
第6の本発明は、第1実施形態に対応している。
一つの被駆動片74と一つの駆動片92との間に緩衝部材101を配置したことにより一方向(正転方向)に開閉部材50が一回転する際における減速区間を広く確保してオーバーランの発生を防止することが可能となる。
他方の被駆動片75と他方の駆動片93との間にも緩衝部材101を配置すれば逆転時にもオーバーランの発生を防止することが可能となる。
【0104】
第7の本発明に係る不正検知機構24では、駆動伝達機構100は、周方向位置を異ならせて回転部材に配置された2つの被駆動片75、76と、周方向位置を異ならせて駆動部材に配置され、且つ各被駆動片と干渉しない径方向位置関係にある2つの駆動片92、93と、を備え、緩衝部材101は、2つの被駆動片75、76間に形成される周方向ギャップ内に配置され、駆動部材の正転時には一方の駆動片92と一方の被駆動片75との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片75を正転方向へ付勢し、駆動部材の逆転時には他方の駆動片93と他方の被駆動片76との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片76を逆転方向へ付勢することを特徴とする。
第7の発明は、第2実施形態に対応している。
緩衝部材101による減速区間の拡大効果と、それによるオーバーラン防止効果は他の発明と同様である。
【0105】
第8の本発明に係る不正防止機構24では、駆動伝達機構100は、周方向位置を異ならせて回転部材に配置された2つの被駆動片75、76と、周方向位置を異ならせて駆動部材に配置され、且つ各被駆動片と干渉しない径方向位置関係にある2つの駆動片92、93とを備え、緩衝部材101は、2つの駆動片92、93間に配置され、駆動部材の正転時には一方の駆動片92と一方の被駆動片75との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片75を正転方向へ付勢し、駆動部材の逆転時には他方の駆動片93と他方の被駆動片76との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片76を逆転方向へ付勢することを特徴とする。
第8の本発明は、第3実施形態に対応している。
緩衝部材101による減速区間の拡大効果と、それによるオーバーラン防止効果は他の発明と同様である。
【0106】
第9の本発明に係る不正防止機構24では、駆動伝達機構100は、夫々の周方向位置を異ならせて回転部材に配置した2つの被駆動片75、76、及び一つの第3被駆動片(干渉型被駆動片)74と、周方向位置を異ならせて駆動部材に配置され、且つ2つの被駆動片とは干渉しない一方で、第3被駆動片74と干渉する位置関係にある2つの駆動片92、93と、を備え、正転時には一方の駆動片93が第3被駆動片74と接してこれを押圧し、逆転時には他方の駆動片92が第3被駆動片74と接してこれを押圧し、緩衝部材101は、2つの被駆動片75、76間に配置され、駆動部材の正転時には他方の駆動片92と一方の被駆動片75との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片75を正転方向へ付勢し、駆動部材の逆転時には一方の駆動片93と他方の被駆動片76との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片76を正転方向へ付勢することを特徴とする。
第9の本発明は、第4実施形態に対応している。
第3被駆動片74は挙動が安定しない緩衝部材を介さずに剛体である各駆動片92、93により直接駆動されるので、初期回転姿勢に復帰するタイミングを一義的に設定することが可能となり、不正検知、不正防止のための開閉部材の回転動作の安定性を高めることができる。
緩衝部材101による減速区間の拡大効果と、それによるオーバーラン防止効果は他の発明と同様である。
【0107】
第10の本発明に係る不正防止機構24では、駆動伝達機構100は、周方向位置を異ならせて回転部材に配置した2つの被駆動片75、76と、周方向位置を異ならせて駆動部材に配置されて2つの被駆動片75、76と干渉しない位置関係にある2つの駆動片92、93、及び各被駆動片75、76と干渉する位置関係にある第3駆動片96と、を備え、駆動部材の正転時には第3駆動片96が一方の被駆動片76と接してこれを押圧し、逆転時には第3駆動片96が他方の被駆動片75と接してこれを押圧し、緩衝部材101は、2つの駆動片92、93間に配置され、駆動部材の正転時には一方の駆動片92と他方の被駆動片75との間で圧縮されつつ該他方の被駆動片75を正転方向へ付勢し、駆動部材の逆転時には他方の駆動片93と一方の被駆動片76との間で圧縮されつつ該一方の被駆動片76を逆転方向へ付勢することを特徴とする。
第10の本発明は、第5実施形態に対応している。
各被駆動片は挙動が安定しない緩衝部材を介さずに剛体である干渉型駆動片96により直接駆動されるので、初期回転姿勢に復帰する過程において、復帰のタイミングを一義的に設定することが可能となり、不正検知、不正防止のための開閉部材の回転動作の安定性を高めることができる。
【0108】
第11の本発明に係る不正検知機構24は、駆動部材を駆動する不正防止用モータと、開閉部材が初期回転姿勢にあることを検知する回転姿勢検知手段と、不正防止用モータを制御する制御手段と、を備え、制御手段は、開閉部材が初期回転姿勢にあることを回転姿勢検知手段が検知している時に不正防止用モータをOFFすることを特徴とする。
開閉部材が非初期回転姿勢にある時にはモータを駆動して回転させる。
【0109】
第12の本発明に係る紙葉搬送装置は、第1乃至第11の何れかの不正検知機構を備えたことを特徴とする。
この紙葉搬送装置によれば、各不正検知機構の発揮する不正検知、不正防止効果を発揮することができる。
【0110】
第13の本発明に係る紙葉搬送装置は、上記紙葉搬送装置を備えたことを特徴とする。
この紙葉取扱装置によれば、各不正検知機構の発揮する不正検知、不正防止効果を発揮することができる。
【課題】不正検知、及び引抜き防止用の開閉部材を備えた不正検知機構において、開閉部材を初期回転姿勢に停止する際にモータの慣性力によるオーバーランにより停止位置がずれることを防止する。
【解決手段】初期回転姿勢にあるときに前記紙葉の通過を許容すると共に、該初期回転姿勢から外れた非初期回転姿勢にある時に前記紙葉の通過を阻止する開閉部材50と、開閉部材と一体回転する回転部材70と、開閉部材と相対回転可能に軸支された駆動部材90と、駆動伝達機構100と、を備え、駆動伝達機構は、回転部材に設けられた少なくとも一つの被駆動片と、前記駆動部材に設けられて回転部材を断続的に回転駆動する少なくとも一つの駆動片と、被駆動片と前記駆動片とを離間する方向へ付勢する緩衝部材101と、を備えている。