(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445765
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】鎌錠の受座
(51)【国際特許分類】
E05B 15/02 20060101AFI20181217BHJP
E05B 65/08 20060101ALI20181217BHJP
E05C 3/30 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
E05B15/02 D
E05B65/08 A
E05C3/30
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-22796(P2014-22796)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-148118(P2015-148118A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】598001397
【氏名又は名称】株式会社フロンテア
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】布施 孝憲
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−280769(JP,A)
【文献】
特開平07−247739(JP,A)
【文献】
特開平11−062338(JP,A)
【文献】
特開平10−082218(JP,A)
【文献】
実開昭54−002594(JP,U)
【文献】
特開2001−082005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
E05C 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を開口した函形の受座本体の前面に配置した前板に形成された開口部から鎌錠本体のフックを回動しながら挿入して前記前板の開口部における端部に形成した前記前板に対して前後方向または上下方向の少なくとも一方向に調節可能である前記鎌錠本体のフックを掛止する受け部に掛止させることにより施錠される鎌錠の受座において、前板の開口部における前記フックの係入する側と対向する端部に前記鎌錠本体のトリガーを当接させるための補助部材を着脱自由に取り付け可能とし、前記補助部材がトリガー当接部と、前記受座本体の内面に沿って配置される取付部と、前記トリガー当接部と取付部とを連結する連結部とからなる側面が下方開放のコ字形に形成されているとともに前記取付部を前記受座本体の背板の外面から貫通させた取り付けねじにより着脱自由に取り付け可能とし、且つ前記補助部材における前記連結部の連結方向の幅が前記補助部材を前記受座本体に取り付けた際に前記トリガー当接部が前記前板とほぼ同一面となるように形成されていることを特徴とする鎌錠の受座。
【請求項2】
前記前板を受け具本体の前面に設置した下板と前記下板に縦方向に摺動可能に且つ調整位置で固定可能として枠体に取り付け可能な上板とから形成することにより補助部材の縦方向位置が調整可能であることを特徴とする請求項1記載の鎌錠の受座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸における柱や縦枠に埋設され、引き戸閉鎖時に鎌錠のフックが係合する鎌錠の受座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、引き戸端面と柱または縦枠とを当接させて連結する簡便な施錠手段として、鎌錠が広く用いられている。この鎌錠は、
図5 (A)に示すように引き戸4などの端面に彫り込まれた彫込溝に埋設される鎌錠本体1と、柱や縦枠などの枠体5に彫り込まれた彫込溝51に埋設される全体が筺状の受座2とからなり、鎌錠本体1のフック11を回動させて受座2の前板21に設けた開口部22から鎌錠本体1のフック11を回動しながら挿入して前記前板21の開口部22における端部に形成した受け部23に掛止させることにより施錠されるものである。
【0003】
ところで、斯かる鎌錠は施錠時においてフック11を回動させる際に鎌錠本体1に前記受座2の前板21に当接させてフック11を回動させるトリガー12を採用しているもの(例えば特公昭56−33553公報、実公平3−24778号公報、特開平8−86132号公報等参照)が知られている。
【0004】
これらの鎌錠は引き戸を閉じた後に手動で鎌部材を突出させて戸枠体の掛止部に掛止させ、また引き戸を開ける際も手動で鎌部材を掛止部から外し錠ケース内へ収納させてから、引き戸を開けるようにしたもの(例えば実開平5−47263号公報参照)に比べてフック11が引き戸4の開閉に伴って自動的に施錠および解錠状態になるのでフックの施錠および解錠操作を必要とせず引き戸4の開閉だけで施解錠が行えるのできわめて便利である。
【0005】
そして、前記従来の鎌錠は
図5(A)に示すように鎌錠本体1に出没可能に配置したトリガー12を受座2の前板21における開口部22の近辺に押し当てることにより引き戸4の開閉操作にフック11の作動を協動させたものである。
【0006】
そのため、従来の鎌錠は前記鎌錠本体1とこの鎌錠本体1のトリガー12などの構造に沿って設計された受座2のそれぞれ一組がセットとなって販売されており、受座2を埋め込むための彫込溝についてもセットされた受座ごとに合わせて形成する必要があり、よって各種の鎌錠本体ごとに適合する受座、彫込溝の形状を都度変更しなければならないため、きわめて不便であった。
【0007】
そこで、フックの大小や繰り出しの違いによる複数の鎌錠本体に合致可能な受座を提供することにより製品価格の節約を図ることや取り付け後に鎌錠本体だけを交換可能とすることが考えられる。
【0008】
多くの鎌錠本体1に対応させるための共通の受座2は前板21に形成した開口部22を縦長に形成するとともに開口部22の受け部23の位置を調整可能にすることにより可能とされる。
【0009】
しかしながら、フック11については受け部23の調整機構(図示せず)により調整可能であるが、
図5(B)に示すようにトリガー12の位置がフック11に近い場合にはトリガー12が開口部22に挿入して作用しないという問題があり、鎌錠本体1と受座2はセットで販売されているのが現状であり、常に鎌錠本体に合わせた受座を製造、販売しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭56−33553公報
【特許文献2】実公平3−24778号公報
【特許文献3】実開平5−47263号公報
【特許文献4】特開平8−86132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、引き戸に設ける鎌錠の受座について、フックとトリガーの配置間隔が異なる鎌錠本体についても使用可能な受座を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた本発明は、前面を開口した函形の受座本体の前面
に配置した前板に形成された開口部から鎌錠本体のフックを回動しながら挿入して前記前板の開口部における端部に形成した
前記前板に対して前後方向または上下方向の少なくとも一方向に調節可能である前記鎌錠本体のフックを掛止する受け部に掛止させることにより施錠される鎌錠の受座において、前板の開口部における前記フックの係入する側と対向する端部に前記鎌錠本体のトリガーを当接させるための補助部材を着脱自由に取り付け可能とし
、前記補助部材がトリガー当接部と、前記受座本体の内面に沿って配置される取付部と、前記トリガー当接部と取付部とを連結する連結部とからなる側面が下方開放のコ字形に形成されているとともに前記取付部を前記受座本体の背板の外面から貫通させた取り付けねじにより着脱自由に取り付け可能とし
、且つ前記補助部材における前記連結部の連結方向の幅が前記補助部材を前記受座本体に取り付けた際に前記トリガー当接部が前記前板とほぼ同一面となるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
鎌錠本体のトリガーを当接させるための補助部材を着脱自由に取り付け可能とし、使用する鎌錠本体のトリガー位置に合わせて補助部材を使用する場合と使用しない場合とに合わせてトリガーを有効に使用可能としてフックならびにトリガーの位置が異なる複数種類の鎌錠本体に対応可能とする。
【0014】
また、本発明において、前記補助部材が取り付けねじにより着脱自由に取り付け可能としたことにより、簡単確実に補助部材の脱着が行え、前記補助部材がトリガー当接部と、前記受座本体の内面に沿って配置される取付部と、前記トリガー当接部と取付部とを連結する連結部とからなる断面がコ字形に形成されているとともに前記取付部を前記受座本体の背板の外面から貫通させた取り付けねじにより着脱自由に取り付け可能とした場合には取付部が外部に露出しないので補助部材を取り付けた場合にも外観が美麗である。
【0015】
更に、前記補助部材における前記連結部の連結方向の幅が前記補助部材を前記受座本体に取り付けた際に前記トリガー当接部が前記前板とほぼ同一面となるように形成されている場合には美観に優れていると共に補助部材が前板よりも突出しないことから鎌錠本体と受座との間に隙間を形成することがなく、施錠時にがたついたりする心配もない。加えて、鎌錠本体のフックを掛止する受け部の位置を前後方向や縦方向に調整可能とすることで更に1つの受座で使用することが可能な鎌錠本体の種類が増大する。特に、本発明では前板を受け具本体の前面に設置した下板と前記下板に縦方向に摺動可能に且つ調整位置で固定可能として枠体に取り付け可能な上板とから形成することにより補助部材の縦方向位置を無段階に調整可能として多くの種類の鎌錠本体に対応させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、鎌錠本体のフックの大きさやトリガーの設置位置が異なる複数の鎌錠本体に対して適用可能であり、鎌錠本体に合わせて個別の受座を製造する必要がなく製品価格を廉価にすることができるとともに取り付け後に鎌錠本体を取り替えてもそのまま使用することも可能である。
【0017】
加えて、前記鎌錠本体のフックを掛止する受け部が前記前板に対して前後方向または上下方向の少なくとも一方向に調節可能とすることにより多くの種類の鎌錠本体におけるフックに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態における受座の斜視図を示すものであり、(A)は補助部材を取り外した状態、(B)は補助部材を取り付けた状態、(C)は前板の一部を分解した状態の補助部材を取り外した状態を示す。
【
図5】従来例および本発明の実施の形態についての使用状態を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明すると、
図1は本実施の形態における受座の斜視図を示すものであり、(A)は補助部材を取り外した状態を示し、(B)は補助部材を取り付けた状態を示し、(C)は前板の一部を分解した状態の補助部材を取り外した状態をそれぞれ示すものである。
図2は受座の補助部材を取り外した状態の正面図、
図3は補助部材を取り付けた状態を示す正面図、
図4は
図3のY−Y線に沿う断面図である。
【0020】
受座2は前面を開口した細長直方体状を呈する函形の受座本体24の前面に細長矩形状の開口部22を配置した前板21が固着されており、図示しない縦枠または柱の引き戸が当接する枠体の引き戸側鎌錠本体に対応する位置に形成された彫込溝に、筺形の受け座本体24が埋設されるとともに、前記前板21に形成した取付孔25にネジ26で固定されてなるものである。
【0021】
また、本実施の形態では前板21が前記受座本体24に固着された縦方向に延びる長孔の取付孔25aを有する下板21aと前記前板の前面に配置された円孔の取付孔25bを有する上板21bとからなり、上板21bと下板21aとの縦方向位置をスライドさせることにより開口部22の一端に形成した受け部23の縦方向位置を調節可能として使用する鎌錠本体のフックの位置に対応可能としている。
【0022】
更に、本実施の形態では、前記受け部23が前記下板21bの開口部22にフックを掛止める受け具本体231が露出して配置されているとともにこれに連続する調整部232が下板21aの内部に調節ねじ233により前後方向に移動可能に且つコイルばねからなる弾性体234により前方へ付勢された状態で配置されており、前記調節ねじ233を回転させることにより鎌錠本体に設置されたフック(図示せず)の前後方向の掛止位置を調整可能として更に多くのフックの掛止位置が異なる鎌錠本体に対応可能とされている。
【0023】
更にまた、本実施の形態で使用される補助部材6は、前記前板21の開口部22における受け部23に対向する端部に配置されるものであり、全体が端面コ字形で受座本体24に取り付けた際に前記前板21を構成する上板21bに面一となるように配置されるトリガー当接部61と、前記受座本体24の内面に沿って配置される取付部62と、前記トリガー当接部61と取付部62とを連結する連結部63とからなり、前記取付部62を前記受座本体24の背板27の外面から貫通させた取り付けねじ64により外側から着脱自由に取り付けるものである。
【0024】
以上の構成を有する本実施の形態は、例えば
図5(A)に示すように、補助部材6を使用しなくても鎌錠本体1のフック11およびトリガー12が支障なく使用可能な場合には補助部材6を取り外した状態で従来の鎌錠の受座と同様にして使用すればよい。特に、本実施の形態ではフック11の受け部23が縦方向ならびに前後方向に調節可能であり、多くの種類の鎌錠本体1に対応させることが可能である。
【0025】
一方、
図5(B)に示すように、補助部材6を装着しない場合には鎌錠本体1のトリガー12が前板21に当接することができずに使用できないが、その場合には補助部材を取り付けた状態で使用することにより
図5(C)に示すように補助部材6のトリガー当接部61がトリガー12の受けとなって有効にフック11を作動させることになりこの種の鎌錠本体1にも対応することが可能である。
【0026】
このとき、本実施の形態では、補助部材6を受座本体24の背板27の外面から貫通させた取り付けねじ64により外側から着脱自由に取り付けるものであり、着脱作業が容易で取り付けが確実であるばかりか、取り付けねじ64を含めて取り付け部が外部に露出しないので補助部材6を取り付けた場合にも外観が美麗である。
【0027】
更に、前記補助部材6におけるトリガー当接部61が前記前板21とほぼ同一面となるように形成されているので美観に優れているとともに補助部材6が前板21よりも突出しないことから鎌錠本体1と受座2との間に隙間を形成することがなく、施錠時にがたついたりする心配もない。
【0028】
特に、前板21を受け具本体24の前面に設置した下板21aと上板21bに縦方向に摺動可能に且つ調整位置で固定可能として枠体5に取り付け可能な上板21bとから形成することにより補助部材6の縦方向位置を無段階に調整可能であり、多くの種類の鎌錠本体1に対応させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 鎌錠本体、2 受座、4 引き戸、5 枠体、6 補助部材、11 フック、12 トリガー、21 前板、21a 下板、21b 上板、22 開口部、23 受け部、24 受座本体、25,25a,25b 取付孔、26 ネジ、27 背板、61 トリガー当接部、62 取付部、63 連結部、64 取り付けねじ、231 受け具本体、232 調整部、233 調整ねじ、234 弾性体