特許第6445787号(P6445787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445787
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20181217BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20181217BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61K8/06
   A61K8/29
   A61K8/31
   A61K8/891
   A61Q17/04
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-109707(P2014-109707)
(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-224215(P2015-224215A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】荒関 美奈
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−236201(JP,A)
【文献】 特開2005−132828(JP,A)
【文献】 特開2003−342151(JP,A)
【文献】 特開2010−222305(JP,A)
【文献】 特開2004−359602(JP,A)
【文献】 Yamada Bee Farm, Japan,Whitening Day Serum SPF 50+ PA+++,Mintel GNPD,2014年 4月,ID:2377125,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
【文献】 Hydroxatone, USA,Anti-Aging BB Cream,Mintel GNPD,2012年 6月,ID:1799099,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
【文献】 3LAB Skin Care, USA,BB SPF40/PA+++ Tinted Moisturiser,Mintel GNPD,2011年12月,ID:1694595,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
【文献】 Avon, Japan,Daily Block,Mintel GNPD,2010年10月,ID:1416354,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL,2013年 9月15日,Vol.41, No.9,p.25-30
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL,1995年 7月15日,Vol.23, No.7,p.37-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)を含有する油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(A)アスコルビン酸グルコシド2〜3質量%
(B)紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物8〜15質量%
(C)スクワラン0.3〜3質量%
(D)架橋型シリコーンポリマーとして(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー0.01〜2質量%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において美白効果をあらゆる化粧料に求める傾向がみられ、美白効果と日焼け止め効果を併せ持つ化粧料の発明が提案されている。たとえば特許文献1では、特定の紫外線吸収剤と美白成分とを含有し、高い紫外線防御効果と美白効果とを両立した、みずみずしい使用感触を有する水中油型の美白日焼け止め化粧料が提案されている。
高い美白効果の化粧料を得るためには美白剤を多量に配合する必要がある。また、薬事法上の医薬部外品として承認されるためにはアスコルビン酸グルコシド2質量%以上を安定に配合することが求められる。
出願人は美白成分であるアスコルビン酸グルコシドを医薬部外品として認定される2質量%以上を安定に配合した日焼け止め化粧料の技術開発に取り組み、アスコルビン酸グルコシドに由来するべたつきが生じる問題に直面した。
また、一般的に、紫外線吸収剤よりも金属酸化物によって日焼け止め効果を得る方が皮膚に安全であるといわれているが、高い日焼け止め効果を期待して金属酸化物を多く配合すると皮膚に塗布したときに化粧料の透明感が得られない(白浮きする)場合があった。
医薬部外品として承認される量のアスコルビン酸グルコシドを配合してもべたつき感がなく、さらに皮膚に塗布したときに透明感がある(白浮きしない)日焼け止め化粧料の技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−199451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アスコルビン酸グルコシドを高配合した日焼け止め化粧料において、アスコルビン酸グルコシドに由来するべたつきが低減され、皮膚に塗布したときに透明感がある(白浮きしない)日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、アスコルビン酸グルコシドを配合した日焼け止め化粧料にスクワランと架橋型シリコーンポリマーを併用することで、アスコルビン酸グルコシドに由来するべたつきが低減されることを見出した。また、さらに本発明の構成をとることで、金属酸化物を配合した日焼け止め化粧料において、重要な品質特性とされる皮膚に塗布した時の透明感(白浮きしないこと)をも達成できることを見出した。
【0006】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
下記(A)〜(D)を含有する油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(A)アスコルビン酸グルコシド2〜3質量%
(B)紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物8〜15質量%
(C)スクワラン0.3〜3質量%
(D)架橋型シリコーンポリマーとして(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー0.01〜2質量%
【発明の効果】
【0007】
医薬部外品として承認される量のアスコルビン酸グルコシドを配合した日焼け止め化粧料にもかかわらず、アスコルビン酸グルコシドに由来するべたつきが低減された日焼け止め化粧料が提供できる。
また、皮膚に塗布したときに白浮きせず、透明感がある日焼け止め化粧料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、(A)アスコルビン酸グルコシド(B)金属酸化物(C)スクワラン(D)架橋型シリコーンポリマーを含有する油中水型乳化日焼け止め化粧料である。
必須成分
(A)アスコルビン酸グルコシド
アスコルビン酸グルコシドは、アスコルビン酸にグルコースが結合した化合物である。本発明においては、アスコルビン酸の2位の炭素にグルコースが結合したものをいう。アスコルビン酸グルコシドは公知の手法により得られるものである。市販されているアスコルビン酸グルコシドとしては、例えば、(株)林原の「Ascorbic acid2−glucoside10」を例示できる。医薬部外品として承認されるためには2質量%以上のアスコルビン酸グルコシドを安定に配合することが求められる。本発明では、2〜3質量%配合することが好ましい。
【0009】
(B)金属酸化物
本発明において、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化ジルコニウム等の紫外線遮蔽効果を有する金属酸化物(無機粉体)を配合することが好ましい。さらに、シリコーンで表面処理(被覆処理)しているものを用いることが好ましい。これらの金属酸化物は、市販されている各金属酸化物の単体を所望する日焼け止め効果に応じて適宜決定される。また、金属酸化物が揮発性シリコーン基材中に安定に低次粒子化されたペースト状の市販品を用いても良い。このような市販品として大日本化成社製のコスメサーブWP−40TK、コスメサーブWP−TTN(V)を例示できる。
コスメサーブWP−40TKは酸化チタン30質量%、シクロペンタシロキサン50質量%、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン10質量%、その他10質量%を占める成分(水酸化アルミ、シリカおよび(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー)から成る。
コスメサーブWP−TTN(V)は酸化チタン23質量%、シクロペンタシロキサン66質量%、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2が2質量%、その他8質量%を占める成分(水酸化アルミ、ステアリン酸および(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー)から成る。
金属酸化物の種類と配合量は、所望する日焼け止め効果に応じて適宜決定される。配合量は、金属酸化物として5〜20質量%、より好ましくは8〜15質量%配合することが日焼け止め化粧料として好ましい。
【0010】
(C)スクワラン
本発明において、スクワランは、化粧料に配合できるものであればいずれも使用可能である。スクワランは、後述する(D)架橋型シリコーンポリマーとともにアスコルビン酸グルコシドによるべたつきを抑える効果を発揮する。またさらに金属酸化物を配合した日焼け止め化粧料において、皮膚に塗布したときに白浮きすることなく透明感を得る効果を発揮する。スクワランは0.1〜5質量%配合することが好ましく、より好ましくは0.3〜3質量%配合することが好ましい。5質量%を超えて配合すると伸びが重くなる恐れがある。
【0011】
(D)架橋型シリコーンポリマー
本発明において、架橋型シリコーンポリマーは、ジビニルジメチルポリシロキサンで架橋したジメチルポリシロキサンである。架橋型シリコーンポリマーは3次架橋構造をした微細な粒子であり、シリコーン油に対する膨潤性に優れた性質を持つ。本発明ではあらかじめシリコーン油に膨潤させている市販品を用いてもよい。このような市販品としては信越化学工業株式会社製のKSG−15、KSG−16が例示できる。
KSG−15は(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー4〜10質量%とシリコーン油であるシクロペンタシロキサン90〜96質量%を含む混合原料である。
KSG−16は(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー20〜30質量%とシリコーン油であるジメチコン70〜80質量%からなる混合原料である。
本発明においては、架橋型シリコーンポリマーは、0.01〜2質量%配合することが好ましい。
【0012】
本発明の日焼け止め化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられる成分、例えば、油剤、界面活性剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、香料、保香剤、防腐剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤その他の美容成分、薬効成分などを配合することができる。
【0013】
本発明の日焼け止め化粧料には(C)スクワランを配合する。
さらに、化粧料に配合可能なその他の油剤の配合を妨げない。シリコーン油、トリグリセリド油、ワックスエステル油、高級アルコール、高級脂肪酸等を配合することができる。特に、シリコーン油を配合すると使用感に優れるため好ましい。シクロペンタシロキサン、シクロテトラシロキサン、シクロヘキサシロキサン等の揮発性の環状シリコーン油や、直鎖の低分子シリコーン油を用いると「のび」が良好となるので好ましい。特に、環状シリコーン油であるシクロヘキサシロキサン、シクロペンタシロキサンは日焼け止め化粧料の「のび」が良好となるので配合することが好ましい。配合する場合は、20〜35質量%配合することが好ましい。
【0014】
本発明の日焼け止め化粧料は油中水型乳化組成物である。
乳化に用いる界面活性剤としては、乳化型が油中水型となるものであればいずれでもよい。使用感が良いことからシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンを好ましく例示できる。
シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに−C−O−(CO)Hで表されるポリエーテル基が上記のポリジメチルシロキサン骨格のSi原子に側鎖として複数結合している。すなわち、−C−(Si(CHO)−Si(CHで表されるシリコーン基が側鎖としてポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合した化合物である。このようなシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンは市販品を用いることができる。例えば信越化学工業製PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6028)が挙げられる。
シリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに炭素数2以上のアルキル基が側鎖としてポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合したものである。側鎖として、−C−O−(CO)Hで表されるポリエーテル基が上記と同様にポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合している。このようなシリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンとして市販品を用いることができる。例えば信越化学工業製ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6038)が挙げられる。
シリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに−C−O−(CHCH(OH)CHO)Hで表されるポリエーテル基が上記のポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合したものである。このようなシリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンとして市販品を用いることができる。例えば信越化学工業製のポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6104)が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンとしては、信越化学工業製PEG−9ジメチコン(商品名:KF−6019)が挙げられる。分岐型ポリエーテル変性シリコーンを配合することが特に好ましい。本発明に用いる界面活性剤は、それぞれを単独で配合しても良いし、2種又は3種を混合しても良い。界面活性剤の配合量は、適宜設定されるが1〜5質量%が好ましい。
【0015】
本発明の日焼け止め化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のポリマービーズや球状シリカ等の粉体を配合することができる。
【0016】
本発明の日焼け止め化粧料の形態として、サンスクリーンクリーム、サンスクリーンロ
ーション、サンケアスプレー、サンスクリーンエマルジョン、サンスクリーンムース等が
挙げられる。アスコルビン酸グルコシドを2質量%配合したものは医薬部外品として取り扱われることになる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例、試験例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0018】
アスコルビン酸グルコシド含有日焼け止め化粧料の官能評価試験
表1の組成の日焼け止め化粧料を、下記調製法により調製した。得られた日焼け止め化粧料について皮膚に塗布した時のべたつき感、透明感(白浮きのなさ)を評価した。
【0019】
<日焼け止め化粧料の調製法>
粉体、界面活性剤、油剤を常温で撹拌混合して油相とした。この油相にあらかじめ溶解混合した水相を投入しながらホモミキサーで撹拌混合し、油中水型の日焼け止め化粧料を得た。金属酸化物はあらかじめ分散された市販品「コスメサーブWP−40TK」、「コスメサーブWP―TTN(V)」を用いた。
【0020】
<べたつき感>
得られた日焼け止め化粧料を上腕内側部にとり、塗り伸ばした後のべたつき感を、下記の基準により評価した。
○:べたつかない
△:ややべたつく
×:べたつく
【0021】
<透明感(白浮きのなさ)>
得られた日焼け止め化粧料を電子天秤で0.025g量りとり、上腕内側部4×4cmにスパチュラで塗布し5分放置後に目視観察し、下記の基準により透明感を評価した。
○:白浮きせず透明感がある
△:やや白浮きしている
×:白浮きし透明感がない
【0022】
【表1】
【0023】
(結果)
本発明の構成をとる実施例1〜3の日焼け止め化粧料は、べたつかず皮膚に塗布した時に白浮きせずに透明感に優れていた。
これに対して、(C)スクワランを含まない比較例1及び比較例4はややべたつきがあり、やや白浮きした。(D)架橋型シリコーンポリマーを含まない比較例2はややべたついた使用感であった。(C)スクワラン、(D)架橋型シリコーンポリマーを共に含まない比較例3はべたつきがあり、皮膚に塗布した時に白浮きして透明感がなかった。
実施例1〜3および比較例1〜4の結果から、医薬部外品として認定される量(2質量%)のアスコルビン酸グルコシドを配合した金属酸化物配合の日焼け止め化粧料において、スクワランと架橋型シリコーンポリマーを併用して配合することで「べたつきの低減」と「白浮きを抑える」効果が得られることがわかった。
【0024】
本発明の構成をとることで、アスコルビン酸グルコシドに由来するべたつきが低減され、皮膚に塗布したときに白浮きせず透明感のある日焼け止め化粧料が提供できた。
また、医薬部外品として認定される2〜3質量%のアスコルビン酸グルコシドを配合した本発明の日焼け止め化粧料は、美白効果を有した。