(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のエアバッグでは、蓋体によってベントホールを閉塞してもテザーを挿通するスリット部からガスが漏れるとともに、蓋体はベントホールの外周面に対して押さえが効きにくい。また、スリット部をベントホールの直近に設定しないと、テザーが蓋体を遠巻きに引っ張ることとなり、シールが効きにくい一方で、ベントホールの直近にスリット部が位置すると、エアバッグ本体部のベントホール周囲の形状が不安定化して蓋体によりベントホールを閉じにくくなる。したがって、ベントホールの開度を適切に調整して乗員の拘束状況に応じてエアバッグ本体部の内圧をより適切に設定する構成が求められている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、排気孔を確実に開閉してエアバッグ本体部の内圧を適切に設定できるエアバッグ及びこれを備えたエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のエアバッグは、折り畳まれた状態から導入されたガスにより膨張する気室を備えたエアバッグ本体部と、このエアバッグ本体部に設けられ、前記エアバッグ本体部の展開状態に応じて前記気室から外部へと排出するガスの量を制御するガス流通機構とを具備し、前記ガス流通機構は、前記気室に連通して前記エアバッグ本体部に
長手状に開口された排気孔と、この排気孔よりも大きい外形を有し、
この排気孔の短手方向の両端部で前記エアバッグ本体部に対して接合されているとともに、中央部に前記エアバッグ本体部に向けて突出するスペーサを有し、前記排気孔に対して前記エアバッグ本体部の前記気室の外側に位置する蓋体と、この蓋体よりも小さい幅に形成され、前記排気孔に挿通されて一端側が前記蓋体の
スペーサに対して連結され、他端側が前記エアバッグ本体部に対して連結されて、前記エアバッグ本体部の展開により前記蓋体の一部を前記排気孔に引き込む連結部材とを備え
、前記スペーサは、前記蓋体の長手方向に亘り連続して形成され、前記エアバッグ本体部の外部と対向する部分が前記エアバッグ本体部と当接することで前記エアバッグ本体部との間に間隙を形成するものである。
【0008】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、蓋体は、排気孔の両側に位置する対をなす蓋体本体を備え、連結部材は、前記蓋体本体間に連結されたものである。
【0009】
請求項3記載のエアバッグは、請求項1または2記載のエアバッグにおいて、
スペーサは、可撓性を有するものである。
【0010】
請求項4記載のエアバッグは、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグにおいて、蓋体は、エアバッグ本体部を構成する部材より変形しにくい部材により形成されたものである。
【0011】
請求項5記載のエアバッグ装置は、請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグと、このエアバッグの気室にガスを供給するインフレータとを具備したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のエアバッグによれば、排気孔に挿通された連結部材の一端側を排気孔よりも外形が大きい蓋体の中央部
のスペーサに連結するとともに、この連結部材の他端側をエアバッグ本体部に連結することで、エアバッグ本体部により連結部材が引っ張られない状態では
、スペーサのエアバッグ本体部への当接によって蓋体が排気孔を完全に閉塞することがなく、排気孔を確実に開いてガスを外部に排出できるとともに、ガスが気室に導入されて展開したエアバッグ本体部により連結部材が引っ張られた状態では、蓋体の中央部を排気孔に引き込んで蓋体を排気孔の縁部に確実に密着させて排気孔を確実に閉じることができ、かつ、排気孔以外に例えば連結部材などを挿通するための孔部などが不要であるため、ガス漏れが生じにくい。そこで、排気孔を確実に開閉してエアバッグ本体部の内圧を適切に設定できる。
【0013】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加え、排気孔の両側に位置して互いに対向する対をなす蓋体本体間にて連結部材を連結することで、エアバッグ本体部の展開により連結部材が引っ張られたときに、各蓋体本体を排気孔に対して両側から引き込むことができ、蓋体によって排気孔をより確実に閉塞できる。
【0014】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項1または2記載のエアバッグの効果に加え
、蓋体が連結部材により引っ張られた状態では、スペーサが可撓変形することで蓋体による排気孔の閉塞を妨げない。
【0015】
請求項4記載のエアバッグによれば、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグの効果に加え、連結部材により排気孔へと蓋体の一部を引き込んだ際に、エアバッグ本体部を構成する部材より変形しにくい部材により形成された蓋体が排気孔の周囲のエアバッグ本体部をこの蓋体に合わせて変形させるので、蓋体を排気孔に対してより確実に密着させて排気孔をより確実に閉塞できる。
【0016】
請求項5記載のエアバッグ装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグを備えることで、排気孔の開閉を適切に調整してエアバッグ本体部の内圧を適切に設定でき、乗員をより確実に保護できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1ないし
図7において、10はエアバッグで、このエアバッグ10は、エアバッグ装置11を構成し、このエアバッグ装置11は、車両としての自動車のハンドルであるステアリングホイールの被取付部材としての図示しないステアリングホイール本体に装着され、被保護物である乗員Aを衝突の衝撃から保護するようになっている。なお、ステアリングホイール本体は、通常、傾斜したステアリングシャフトに取り付けられ、傾斜した状態で用いられるものであるが、以下、エアバッグ装置11が取り付けられた被保護物側を乗員A側、上側、あるいは表側とし、反乗員A側すなわち乗員A側の反対側を車体側、下側、底面側、あるいは裏側として説明する。また、ステアリングホイール本体は、グリップ部あるいはリング部とも呼ばれる把持部としての円環状をなすリム部と、このリム部の内側に位置するボス部と、これらリム部とボス部とを連結する例えば3本あるいは4本のスポーク部とを備えており、ボス部に備えたボスに、図示しないステアリングシャフトが嵌着して固定される。さらに、図中において、乗員Aはダミーで示している。
【0020】
そして、エアバッグ装置11は、エアバッグモジュールとも呼ばれるもので、支持部材を構成するベースプレートと、このベースプレートに取り付けられるエアバッグ10、インフレータ12、リテーナ、及びカバー体となどから構成されている。
【0021】
そして、インフレータ12は、全体として略円盤状をなす一般的な形状及び機能を備えたもので、略円柱状をなすインフレータ本体部12aと、このインフレータ本体部12aの外周部から突設された板状の取付フランジ部12bとを備えるとともに、この取付フランジ部12bの上側に位置して、インフレータ本体部12aにはガスを噴射するガス噴射口12cが外周側に向かって複数放射状に配置されている。また、取付フランジ部12bには、ベースプレートに形成したボルト取付孔に連通するボルト取付孔12dが4カ所に形成されている。そして、インフレータ本体部12aの下側には、ハーネス13の先端部のコネクタ13aが接続され、このハーネス13を介して、インフレータ12の動作を制御する図示しない制御装置が電気的に接続される。
【0022】
そして、エアバッグ10は、ガスが導入されて膨張する1以上の気室を備え、本実施の形態では、1つの気室21を内部に備えた円形袋状のエアバッグ本体部22と、このエアバッグ本体部22の展開状態に応じて気室21から外部へと排出するガスの量を制御するガス流通機構23とを備えている。
【0023】
エアバッグ本体部22は、
図1ないし
図3に示すように、外殻パネル24を構成する乗員拘束面部としての乗員側パネル25、乗員Aに対向しない非乗員拘束面部としての基部パネル26、第1の補強布27、及び第2の補強布28を備えている。これら乗員側パネル25、基部パネル26、第1及び第2の補強布27,28は、それぞれ例えばナイロン(ナイロン66)製の織布である基布製で、基布、パネル、プレートなどとも呼ばれるものである。
【0024】
乗員側パネル25は、乗員A側に対向して配置されるもので、単なる円形状に形成されている。
【0025】
基部パネル26は、車体側に配置され、ステアリングパネルとも呼び得るもので、乗員側パネル25と略等しい外径寸法の円形状をなし、外周部が乗員側パネル25と外周接合部31に沿って縫合して接合されたのちに反転され、扁平な袋状の外殻パネル24を構成する。またこの基部パネル26は、中央部に位置してインフレータ取付開口33が円孔状に形成されているとともに、このインフレータ取付開口33の周囲に位置してバッグ固定用孔であるボルト取付孔34が形成され、これらボルト取付孔34を含みインフレータ取付開口33を囲む円環状のインフレータ取付部35が構成されている。
【0026】
第1の補強布27は、乗員側パネル25及び基部パネル26をそれぞれ補強するとともに、これら乗員側パネル25と基部パネル26とを連結することでエアバッグ本体部22の前方への展開寸法を規制するバッグ連結部材であり、エアバッグ本体部22の内部(気室21)に位置し、乗員側パネル25に重ねられて例えば縫製などによって接合された乗員側補強部37と、基部パネル26に重ねられて例えば縫製などによって接合された基部側補強部38とを備えている。
【0027】
乗員側補強部37は、乗員側パネル25の中央部に同心状に重ねられてこの乗員側パネル25と接合される円形状の乗員側補強部本体37aと、この乗員側補強部本体37aから径方向に沿って放射状に突出する複数、例えば3つのストラップ部37bとを一体に備えている。これらストラップ部37bは、互いに周方向に略等間隔に離間されており、基部パネル26側である下側へと長尺状に延びている。
【0028】
基部側補強部38は、基部パネル26の中央部、すなわちインフレータ取付部35に同心状に重ねられて例えば縫製などによって接合される円形状の基部側補強部本体38aと、この基部側補強部本体38aから径方向に沿って放射状に突出する複数、例えば3つのストラップ部38bとを一体に備えている。また、基部側補強部本体38aには、インフレータ取付開口33及びボルト取付孔34に対応して円孔が形成されている。さらに、各ストラップ部38bは、互いに周方向に略等間隔に離間されており、乗員側パネル25側である上側へと長尺状に延びて、先端部が乗員側補強部37のストラップ部37bの先端部と例えば縫製などによって接合されて連結されている。
【0029】
第2の補強布28は、強度的あるいは熱的に補強を要する部分に配置され、本実施の形態では、基部パネル26のインフレータ取付部35の上面に縫合などして接合されている。この第2の補強布28は、インフレータ取付開口33及びボルト取付孔34に対応して円孔が形成された円形状となっている。
【0030】
また、ガス流通機構23は、エアバッグ本体部22の展開初期、あるいは乗員Aを拘束した状態では気室21からガスをエアバッグ本体部22(気室21)の外部に排出するとともに、エアバッグ本体部22の展開中期ないし展開後期では気室21からガスを排出しないようにするものである。このガス流通機構23は、
図1ないし
図4に示すように、エアバッグ本体部22の基部パネル26の外周部の近傍の位置にスリット状に開口された排気孔であるベントホール41と、このベントホール41を覆う蓋体としてのカバー42と、このカバー42に一端側が連結された連結部材としてのテザー43と、このテザー43の他端側をエアバッグ本体部22(第1の補強布27)に連結する本体部側連結部材としてのキャッチパネル44とを備えている。
【0031】
ベントホール41は、気室21内のガスを気室21(エアバッグ本体部22)の外部へと排出する、すなわち排気用のものである。このベントホール41は、例えばインフレータ取付部35(インフレータ取付開口33)の側方の位置にて基部パネル26に左右方向に沿って長手状(長孔状)に形成されている。また、このベントホール41の周縁部には、基部パネル26に対して、補強用の周辺補強部材としてのパッチ布47が例えば縫製などにより取り付けられている。このパッチ布47は、例えばナイロン(ナイロン66)製の織布である基布製で、ベントホール41の周囲を囲む環状に形成されて基部パネル26の内側、すなわち気室21(エアバッグ本体部22)の内部側に例えば縫製などにより接合され、ベントホール41の周囲の基部パネル26(エアバッグ本体部22)を補強して、ベントホール41の位置でのエアバッグ本体部22(基部パネル26)の変形などを抑制するものである。
【0032】
カバー42は、弁シート、排気孔カバー、あるいはフラップなどとも呼ばれるもので、例えばエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))を構成する基布(部材)と同じ、あるいはエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))を構成する基布(部材)よりも変形しにくい(こわい)ナイロン(ナイロン66)製の織布である基布製で、ベントホール41全体を覆う大きさ、すなわちベントホール41の両側間及び両端間の寸法よりも充分大きい両側間及び両端間の寸法を有する四角形状に形成され、ベントホール41の開口面積よりも大きい面積に設定されている。また、このカバー42は、ベントホール41を短手方向に跨いで配置されており、このベントホール41の短手方向の両端部の位置で、それぞれエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))に対して縫製などにより接合されているとともに、中央部が、エアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))に向けて突出するスペーサとしての屈曲部51となっている。さらに、このカバー42は、エアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))に対して固定される短手方向の両端部(長辺)の寸法L1と比較して、これら両端部の中央部に位置する屈曲部51の位置の長手寸法L2が短く設定されている(
図5)。そして、このカバー42は、本実施の形態では一対の蓋体本体としての(一方及び他方の)カバー本体52,52が互いに縫製などによって接合されて構成されている。
【0033】
屈曲部51は、可撓性を有し、カバー42の長手方向全体に亘って連続している。この屈曲部51により、カバー42は長手方向の端部側から見て略M字状となっている。そして、この屈曲部51は、カバー42がテザー43を介して引っ張られていない状態で先端部がエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))と当接してエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))に対して間隙を形成するとともに、カバー42がテザー43を介して引き込まれた状態で倒れてエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))に対して間隙を形成しないように構成されている(
図6(a)及び
図6(b))。
【0034】
カバー本体52,52は、それぞれ略等しい形状に形成されており、ベントホール41の短手方向の両端に位置して互いに対向している。各カバー本体52は、エアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))と接合される略四角形(台形)状の本体部52aと、この本体部52aの長辺に連続する長方形状のスペーサ形成部としての連続部52bと、この連続部52bの本体部52aと反対側の長辺の長手方向の略中央部に例えば台形状に突設された連結部であるタブ52cとを一体に備えた、略凸字状となっている。本体部52aは、連続部52b側に向けて徐々に長手寸法が小さくなるように形成されている。そして、これらカバー本体52,52は、連続部52b,52bが本体部52a,52aに対して略直角状に屈曲された状態で互いに対向されて重ねられ縫製などにより接合されて一体的となって屈曲部51を構成するとともに、タブ52c,52cがテザー43と縫製などによりそれぞれ接合されて連結されている。したがって、屈曲部51は、カバー42(カバー本体52)2枚分の厚みを有している。また、タブ52c,52cは、ベントホール41の長手寸法よりも小さい幅寸法を有し、ベントホール41からエアバッグ本体部22の内部へ引き込み可能となっている。
【0035】
テザー43は、例えばエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))を構成する基布(部材)と同じナイロン(ナイロン66)製の織布である基布製で、長尺状(帯状)に形成され、両端部が折り返されてタブ52c,52cのそれぞれと例えば縫製などにより接合されてループ状となっている。このテザー43は、エアバッグ本体部22の展開中期ないし展開後期、すなわちエアバッグ本体部22が所定以上展開した状態で最大に伸張してカバー42にテンション(張力)を付与する長さに設定されている。したがって、このテザー43は、エアバッグ本体部22の折り畳み状態(非展開状態)や、乗員Aを拘束した状態では弛緩するようになっている。
【0036】
キャッチパネル44は、エアバッグ本体部22に固定されてテザー43の他端側と連結されるもので、例えばエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))を構成する基布(部材)と同様のナイロン(ナイロン66)製の織布である基布製で、円形状のパネル本体44aと、このパネル本体44aの外縁部の互いに反対側の位置、すなわちパネル本体44aの直径の両端部の位置に舌片状に突設された一対の腕部44b,44bとを一体に備えている。
【0037】
パネル本体44aは、第1の補強布27の乗員側補強部37の乗員側補強部本体37aと同心状に重ねられてこの第1の補強布27及び乗員側パネル25と一体的に縫製などによって接合されている。
【0038】
腕部44b,44bは、互いの先端部が例えば縫製などによって接合されてキャッチパネル44全体としてループ状をなし、ループ状のテザー43の他端側に挿通されてこのテザー43の他端側を移動可能に保持している。
【0039】
また、リテーナは、例えば金属あるいは樹脂などにて形成され、ボルト取付孔12d,34に挿通される取付ボルトが突設されている。
【0040】
また、カバー体は、例えば軟質の合成樹脂などにて形成され、エアバッグ10の膨張により所定の扉を形成するようになっている。
【0041】
そして、このエアバッグ10の製造工程は、各パネル25,26に第1の補強布27、第2の補強布28、キャッチパネル44及びパッチ布47をそれぞれ縫い付けるとともに、カバー本体52,52の連続部52b,52b同士を縫着したカバー42のタブ52c,52cをベントホール41から挿入してこれらタブ52c,52cにテザー43の両端部を縫着してテザー43をループ状にした後、キャッチパネル44の腕部44b,44bをテザー43のループに挿通して互いに縫着する。この後、乗員側パネル25と基部パネル26との外周部を外周接合部31で縫い合わせ、インフレータ取付開口33から乗員側パネル25を引き出して表裏を反転させる。
【0042】
そして、エアバッグ装置11の組み立ての際は、まず、エアバッグ10の気室21にリテーナを挿入し、取付ボルトを上側からボルト取付孔34に挿入する。さらに、エアバッグ10に、ベースプレート、及びインフレータ12を組み合わせて、エアバッグ装置11が構成される。この作業は、エアバッグ10の下側にベースプレートを沿わせ、このベースプレートのボルト取付孔に取付ボルトを挿入し、さらに、ベースプレートの下側にインフレータ12の取付フランジ部12bを沿わせ、この取付フランジ部12bのボルト取付孔12dに取付ボルトを挿入し、取付ボルトの先端から図示しないナットを螺合して締め付ける。この状態で、インフレータ12のインフレータ本体部12aの上側部がエアバッグ10の内側に挿入され、すなわち、ガス噴射口12cが気室21に配置される。
【0043】
さらに、上記のインフレータ12の取付作業の前後に、エアバッグ10を花弁状など所定の形状に折り畳み、上側からカバー体を被せて嵌合して、エアバッグ装置11が組み立てられる。そして、このエアバッグ装置11は、ベースプレートに設けた取付片部を、ボルトなどを用いてステアリングホイール本体のボス部の芯金に固定し、ステアリングホイールに装着される。
【0044】
そして、このエアバッグ装置11を備えた自動車に衝突の衝撃が加わると、図示しない制御装置によりインフレータ12が起動され、インフレータ12のガス噴射口12cからエアバッグ10のエアバッグ本体部22の気室21内に急速にガスが噴射される。すると、エアバッグ10は、カバー体をテアラインに沿って扉状に破断して突出口を形成し、この突出口を介して膨出し、乗員Aの前方に所定の形状に膨出する。このエアバッグ10(エアバッグ本体部22)の膨張展開により、非展開状態では弛緩していたテザー43がキャッチパネル44を介して乗員側パネル25によって引っ張られてテンションが掛かる。この結果、カバー42がベントホール41側へと引っ張られ、屈曲部51が倒れるとともにカバー42(カバー本体52,52)が変形しながらベントホール41の内部へとタブ52c,52c周辺が引き込まれてエアバッグ本体部22内(気室21)に位置し、エアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))と重なったカバー42(カバー本体52,52)がベントホール41を覆った状態で本体部52a,52aがベントホール41の周縁部に圧接されてこのベントホール41を閉塞する(
図6(b)、
図7(b1)、
図7(b2))。したがって、エアバッグ10(エアバッグ本体部22)の内圧が比較的高い状態に維持される。
【0045】
この後、展開したエアバッグ10(エアバッグ本体部22)の乗員側パネル25が、前方に投げ出されてくる乗員Aを受け止めて拘束し、乗員Aに加わる衝撃を緩和する。このとき、乗員側パネル25が押し込まれることで、この乗員側パネル25に端部が保持(連結)されたテザー43にテンションが相対的に低くなり(掛からなくなり)(
図3)、カバー42はエアバッグ本体部22の内圧によって基部パネル26の外側へと押し出され、屈曲部51が立ち上がってカバー42とエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))との間に間隙を形成し、ガスがベントホール41からカバー42により整流されつつ排出される(
図6(a)、
図7(a1)、
図7(a2))。この結果、エアバッグ10(エアバッグ本体部22)の内圧が比較的低い状態まで低下する。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、ベントホール41を介してテザー43の一端側をカバー42に連結するとともに、このテザー43の他端側をエアバッグ本体部22に連結することで、エアバッグ本体部22によりテザー43が引っ張られない状態、すなわちエアバッグ本体部22の非展開状態(折り畳み状態)、あるいは乗員Aを拘束した状態では、ベントホール41を確実に開いてガスを外部に排出できるとともに、ガスが気室21に導入されて展開したエアバッグ本体部22によりテザー43が引っ張られた状態では、カバー42の一部をベントホール41に引き込んでカバー42をベントホール41の縁部に確実に密着させてベントホール41を確実に閉じることができ、かつ、ベントホール41以外に例えばテザー43などを挿通するための孔部などが不要であるため、ガス漏れが生じにくい。そこで、ベントホール41を確実に開閉してエアバッグ本体部22の内圧を適切に設定できる。
【0047】
つまり、エアバッグ本体部22の展開終了時には、カバー42は、エアバッグ本体部22(気室21)の外部に位置する部分が基部パネル26と重なる部分に密着でき、ベントホール41に位置する部分が気室21(エアバッグ本体部22)の内部に引き込まれて、いわば猪口のような形状となるので、ベントホール41の周縁部に面圧が加わりやすく、ガスが漏れにくい。
【0048】
また、ベントホール41内でテザー43によりカバー42を直接引っ張るので、引っ張り力が効率よくカバー42に伝わり、所定のシール効果を生じるための引っ張り力を抑制できる。
【0049】
さらに、ベントホール41の両側に位置して互いに対向する対をなすカバー本体52,52間にてテザー43を連結することで、エアバッグ本体部22の展開によりテザー43が引っ張られたときに、各カバー本体52をベントホール41に対して両側から引き込むことができ、カバー42によってベントホール41をより確実に閉塞できる。
【0050】
また、カバー42は、エアバッグ本体部22に固定される短手方向の両端部の寸法L1よりも、ベントホール41に対向する短手方向の両端部の中央部に長手寸法L2を短くすることで、テザー43にテンションが掛かった際に、カバー42がベントホール41からエアバッグ本体部22の内部(気室21)へとより容易に引き込まれるようにすることができるとともに、皺を寄りにくくすることができる。
【0051】
さらに、ベントホール41の形状をパッチ布47により安定化させているので、カバー42によってベントホール41をより確実に閉塞できる。
【0052】
また、カバー42に設けた可撓性の屈曲部51がエアバッグ本体部22に対して当接することでエアバッグ本体部22とカバー42との間に間隙を形成するので、カバー42がテザー43により引っ張られていない状態では、屈曲部51によってカバー42がベントホール41を完全に閉塞することがなく、ベントホール41から確実にガスを排出できるとともに、カバー42がテザー43により引っ張られた状態では、屈曲部51が可撓変形することでカバー42によるベントホール41の閉塞を妨げることがない。
【0053】
さらに、エアバッグ本体部22(基部パネル26)を構成する部材より変形しにくい部材によりカバー42を形成することで、テザー43によりベントホール41へとカバー42の一部を引き込んだ際にカバー42がベントホール41の周囲のエアバッグ本体部22(基部パネル26)をこのカバー42に合わせて変形させることができるので、カバー42をベントホール41に対してより確実に密着させてベントホール41をより確実に閉塞できる。
【0054】
次に、第2の実施の形態を
図8を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
この第2の実施の形態は、上記の第1の実施の形態のカバー42のカバー本体52,52に、それぞれ副排出孔56が開口されているものである。
【0056】
これら副排出孔56は、各本体部52aの長手方向の中央部などに例えば円形状に開口されており、ベントホール41から排出されたガスの一部を排出可能となっている(
図8(a))。
【0057】
そして、エアバッグ10(エアバッグ本体部22)の膨張展開により、非展開状態では弛緩していたテザー43がキャッチパネル44を介して乗員側パネル25によって引っ張られてテンションが掛かると、カバー42がベントホール41側へと引っ張られる。このとき、カバー42は、カバー本体52,52の本体部52a,52aに副排出孔56,56が開口されているため、テザー43の引っ張りにより容易に延び(
図8(b))、屈曲部51が倒れるとともにカバー42(カバー本体52,52)が変形しながらベントホール41の内部へとタブ52c,52c周辺が引き込まれてエアバッグ本体部22内(気室21)に位置し、エアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))と重なったカバー42(カバー本体52,52)がベントホール41を覆った状態で本体部52a,52aがベントホール41の周縁部に圧接されてこのベントホール41を閉塞する。
【0058】
一方、展開したエアバッグ10(エアバッグ本体部22)の乗員側パネル25が、前方に投げ出されてくる乗員Aを受け止めて拘束し、乗員Aに加わる衝撃を緩和するときには、乗員Aにより乗員側パネル25が押し込まれてテザー43にテンションが相対的に低くなり(掛からなくなり)、カバー42はエアバッグ本体部22の内圧によって基部パネル26の外側へと押し出され、屈曲部51が立ち上がってカバー42とエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))との間に間隙を形成し、ガスがベントホール41から排出される。この排出されたガスは、カバー42により整流されてこのカバー42の長手方向の両端部と基部パネル26との間の間隙、及び、この間隙と連通する副排出孔56からガスが排出される。
【0059】
このように、カバー42に副排出孔56を設けることで、ベントホール41から排出されたガスをより効果的に排出できるとともに、エアバッグ本体部22の展開によりテザー43を介して引っ張られたカバー42が延びやすくなり、このカバー42をより容易にベントホール41へと引き込んで、ベントホール41にカバー42をより確実に密着させてベントホール41をより確実に閉塞できる。
【0060】
次に、第3の実施の形態を
図9を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
この第3の実施の形態は、上記の第1の実施の形態のカバー42が1枚の基布(カバー本体57)によって形成されたものである。
【0062】
カバー42を構成するカバー本体57は、例えばナイロン(ナイロン66)製の織布である基布製で、略四角形(台形)状の本体部57a,57aと、これら本体部57a,57a間に連続する四角形状の連続部57bとを一体に備える四角形状となっている(
図9(a))。
【0063】
また、各本体部57aは、連続部57bに向けて徐々に長手寸法が小さくなるように形成されている。
【0064】
連続部57bは、本体部57a,57aの短手方向に連続する四角形状に形成されており、短手方向に屈曲させてタック状に撓ませた状態で例えば縫製などにより接合されることでカバー42の屈曲部51を構成している(
図9(b))。また、この連続部57bには、短手方向にU字状に湾曲した切込部58を長手方向の略中央部、すなわち屈曲部51の中央部に備えており、連続部57bをタック状に撓ませることでこの切込部58から連続部57bの一部が切り起こされることにより、テザー43の両端部と例えば縫製などにより接合される連結部である舌片状のタブ59が形成される(
図9(c))。このタブ59は、ベントホール41の長手寸法よりも小さい幅寸法を有し、ベントホール41からエアバッグ本体部22の内部へ引き込み可能となっている。
【0065】
そして、このように、1枚のカバー本体57によってカバー42を構成することで、部品点数をより抑制し、より安価にガス流通機構23を製造できる。
【0066】
なお、上記の第3の実施の形態において、本体部57aに上記の第2の実施の形態と同様の副排出孔56を設けてもよい。
【0067】
次に、第4の実施の形態を
図10を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0068】
この第4の実施の形態は、カバー42が1枚の基布によって形成されているとともに、四隅近傍でのみエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))に対して例えば縫製などにより接合され、その他の部分(各辺部)が接合されていないものである。
【0069】
また、カバー42の略中央部には、ベントホール41に挿通されたテザー43の一端側が例えば縫製などにより接合されて連結されている(
図10(a))。なお、このテザー43の他端側は、図示しないが、ループ状となるように適宜折り返して接合することで、キャッチパネル44のループ状の腕部44b,44bに連結されるように構成できる。
【0070】
そして、エアバッグ10(エアバッグ本体部22)の膨張展開により、非展開状態では弛緩していたテザー43がキャッチパネル44を介して乗員側パネル25によって引っ張られてテンションが掛かると、カバー42がベントホール41側へと引っ張られる。このとき、カバー42は、四隅のみが基部パネル26と接合されているため、各辺部がベントホール41側へと容易に引き込まれて(
図10(b)及び
図10(c))エアバッグ本体部22内(気室21)に位置し、エアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))と重なったカバー42(カバー本体52,52)がベントホール41を覆った状態で本体部52a,52aがベントホール41の周縁部に圧接されてこのベントホール41を閉塞する。
【0071】
一方、拘束された乗員Aにより乗員側パネル25が押し込まれてテザー43にテンションが相対的に低くなると(掛からなくなると)、カバー42はエアバッグ本体部22の内圧によって基部パネル26の外側へと押し出され、カバー42とエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))との間の間隙を介して、ガスがベントホール41からカバー42により整流されつつ排出される。
【0072】
このように、カバー42の四隅を点状に基部パネル26(エアバッグ本体部22)に対して接合したので、エアバッグ本体部22の展開によりテザー43を介して引っ張られたカバー42をより容易にベントホール41へと引き込んで、ベントホール41にカバー42をより確実に密着させてベントホール41をより確実に閉塞できる。
【0073】
なお、
図11に示す第5の実施の形態のように、カバー42の四隅に切欠部61を設け、かつ、これら切欠部61を除く各辺部をエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))に対して例えば縫製などにより接合してもよい。この場合には、テザー43の弛緩により開口したベントホール41から排出されたガスを、カバー42により整流してこのカバー42の四隅の切欠部61から効果的に排出できる。
【0074】
また、
図12に示す第6の実施の形態のように、カバー42を、エアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))に対して接合しない構成とすることもできる。この場合には、カバー42を、例えば基部パネル26を構成する基布(部材)よりも変形しにくい(こわい)ナイロン(ナイロン66)製の織布である基布製とする。本実施の形態では、カバー本体57(カバー42)は、940dtexのナイロン66製、基部パネル26を構成する基布は、470dtexのナイロン66製とする。そして、エアバッグ10(エアバッグ本体部22)の膨張展開により、非展開状態では弛緩していたテザー43がキャッチパネル44を介して乗員側パネル25によって引っ張られてテンションが掛かると、カバー42がベントホール41側へと引っ張られ、カバー42のテザー43と連結された中央部近傍がベントホール41側へと容易に引き込まれて(
図12(c))エアバッグ本体部22内(気室21)に位置し、エアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))と重なったカバー42(カバー本体52,52)がベントホール41を覆った状態で本体部52a,52aがベントホール41の周縁部に圧接されてこのベントホール41を閉塞する。また、拘束された乗員Aにより乗員側パネル25が押し込まれてテザー43にテンションが相対的に低くなると(掛からなくなると)、カバー42はエアバッグ本体部22の内圧によって基部パネル26の外側へと押し出され(
図12(a)及び
図12(b))、カバー42とエアバッグ本体部22(外殻パネル24(基部パネル26))との間の間隙を介して、ガスがベントホール41からカバー42により整流されつつ排出される。このように、カバー42をエアバッグ本体部22に対して接合しないので、エアバッグ10の製造性をより向上できるとともに、エアバッグ本体部22(基部パネル26)を構成する部材より変形しにくい部材によりカバー42を形成したので、テザー43によりベントホール41へと引き込まれたカバー42の一部がベントホール41の周囲のエアバッグ本体部22(基部パネル26)をこのカバー42に合わせて変形させ、カバー42をエアバッグ本体部22に接合していなくても、このカバー42をベントホール41に対してより確実に密着させてベントホール41をより確実に閉塞できる。
【0075】
なお、上記の第4ないし第6の実施の形態において、カバー42は、上記第3の実施の形態と同様に屈曲部51を設けてもよい。
【0076】
また、カバー42は、第1の実施の形態と同様にカバー本体52,52を接合して構成してもよい。
【0077】
さらに、上記の各実施の形態において、カバー42は、3枚以上の基布により構成してもよい。
【0078】
そして、カバー42は、短手方向の中央部の長手寸法L2が両端部の寸法L1よりも短くなるように形成したが、単なる四角形状としてもよい。