特許第6445811号(P6445811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445811
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】臀部用の看護練習器
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20181217BHJP
   A61F 5/445 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G09B23/28
   A61F5/445
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-178662(P2014-178662)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-53607(P2016-53607A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】394014777
【氏名又は名称】株式会社コージン
(74)【代理人】
【識別番号】100083127
【弁理士】
【氏名又は名称】恒田 勇
(72)【発明者】
【氏名】小柴 雅信
(72)【発明者】
【氏名】砂子 哲也
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−095870(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/068360(WO,A1)
【文献】 特許第5065525(JP,B2)
【文献】 実開昭55−020560(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3032049(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28
A61F 5/445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臀部として仮想される保持器と、これに対して着脱可能に装着する疑似肛門とからなり、前記疑似肛門は、骨格となる中空形の骨部材に、インサート成形により軟質樹脂材を一体に肉付けしてなり、前記骨部材は、中空形において基端に広く開口する筒状ないし鞘状であって、前記軟質樹脂材は、前記骨部材の中空部に充填されるとともに、前記開口より無骨で突出することにより柔軟に弾性変形し得る張出部が充填部と一体に形成され、前記軟質樹脂材に、張出部先端の肛門口と、それに続く肛門通孔とを具備する操作初期部が形成されていることを特徴とする臀部用の看護練習器。
【請求項2】
前記張出部は、前記骨部材の基端開口より突出する台部と、その中央部より突出する弾性凸部とからなり、その先端中央部に前記肛門口が開口していることを特徴とする請求項1記載の臀部用の看護練習器。
【請求項3】
前記操作初期部は、浣腸用として、前記肛門通孔が浣腸を深く差し込み得るよう延長して形成され、前記骨部材の先端に突設した浣腸液の排出管にその肛門通孔が接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の臀部用の看護練習器。
【請求項4】
前記操作初期部は、摘便練習用として疑似便を予め充填しておくための空洞部が前記張出部と前記開口部との位置にわたって設けられており、その空洞部が指入れ可能な前記肛門通孔の先に膨大して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の臀部用の看護練習器。
【請求項5】
前記張出部に、金型パーツの入れ替えにより追加凸部を付加して設けることにより、前記軟質樹脂材の前記張出部における前記肛門通孔が長く調整されてなることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の臀部用の看護練習器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療を志す看護学生が、浣腸や摘便のやり方を練習するために、浣腸や指を挿入する対象として使用する臀部用の看護練習器に関する。
【背景技術】
【0002】
看護士や助産婦などの試験では、浣腸の実技が問われることがある。これに備えて従来は、仲間どうしで相手になることで技術的な練習が行われることがあったが、これでは不都合な面があり危険でもあるので、現在では浣腸練習用の臀部モデルを使用することがある。
【0003】
臀部モデルは、人体の尻部およびその周辺を軟質プラスチックで一体成形したブロック状であって、これには肛門および腸管に似せた肛門口が開けられており、また、練習用浣腸液が溜まる数人分のタンクを備えているので、学生が入れ替わり使用することで、タンクが満杯になるとその廃液を捨て、タンクを空にしながら臀部モデルを反覆使用していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
臀部モデルは、全体が軟質プラスチックであって、人体の皮膚感をそなえているのでリアルではある。全体の形状を保つために柔らかさが抑えられているが、浣腸の差し込み通孔の形状が捻じれることがあり、そうなると、差し込みに抵抗が生じることになるので、骨盤、尾骨、坐骨等に囲まれて安定している人体の肛門部分とは違いがあり、十分に練習成果が得られない結果となっていた。
【0005】
しかも、臀部モデルであると、看護学生が共同で使用するために、誤って肛門の通孔に多量の液を残した場合には、それを取り除く手間に時間が取られ、また、順調に全員の練習が終わったとしても、多量の排液を一挙に処分するのが負担であった。
【0006】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、例えば臀部モデル等の形態のものを保持器として、それに装着しながら実習生が自分用として個別的に使うこともでき、使ってみると、人の肉体に似せた柔らかさを保持するが、捻じれがないため、浣腸や指の滑り具合に過不足がなく抵抗があり、ブレで支える肛門部分のリアル感と、肛門通孔の通し安定性とが得られる臀部用の看護練習器を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、臀部として仮想される保持器と、これに対して着脱可能に装着する疑似肛門とからなり、前記疑似肛門は、骨格となる中空形の骨部材に、インサート成形により軟質樹脂材を一体に肉付けしてなり、前記骨部材は、中空形において基端に広く開口する筒状ないし鞘状であって、前記軟質樹脂材は、前記骨部材の中空部に充填されるとともに、前記開口より無骨で突出することにより柔軟に弾性変形し得る張出部が充填部と一体に形成され、前記軟質樹脂材に、張出部先端の肛門口と、それに続く肛門通孔とを具備する操作初期部が形成されていることを特徴とする臀部用の看護練習器を提供する。
【0008】
臀部用の看護練習器を上記のように構成したから、保持器の所定箇所に装着して、形態に応じて、先端の肛門口から浣腸器を差し込みながら浣腸の練習をし、あるいは指を差し込んで、摘便の練習をするものであるが、その操作初期部が人体の肉に近い非常に柔らかい軟質樹脂材で構成されていても、骨部材の影響の少ない状態で且つ安定して保持されているので、骨部材が操作の妨げになることもなく、肛門通孔が捻じれるような不都合を招くこともない。しかも、浣腸器や指先が適度に支えたり、抵抗を受けたりして、困難に遭遇しながら解決するコツを覚えて行くことができるものである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明の臀部用の看護練習器によれば、骨部材とこれに支持される軟質樹脂材からなるものであるが、軟質樹脂材が言わば硬軟にわけられ、少なくとも操作初期部が両者の調和のとれた箇所に設けられるものであって、人体の肉に似た軟質樹脂材で構成されていても、全体的に捻じれるような不都合がなく支持され、しかも、肉に似た柔らかさが操作を適度に難しくすることになり、肉質構造のリアルな場面の提供になり、その場の解決により得難いコツを覚えることにもなり、これによって練習成果が高められるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一の発明の臀部用の看護練習器を保持器とともに示す斜視図である。
図2】同臀部用の看護練習器の使用状態を示す保持器の斜視図である。
図3図1のA−A線矢視の断面図である。
図4】B−B線矢視の断面図である。
図5】C−C線矢視の断面図である。
図6】D−D線矢視の断面図である。
図7】同発明に係る骨部材の両半殻片を内面を上にして並列して示す平面図である。
図8】同骨部材の斜視図である。
図9】他の実施例を示す臀部用の看護練習器の斜視図である。
図10図9のE−E線矢視の断面図である。
図11】さらに他の実施例を示す看護練習器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明において、臀部用の看護練習器Pは、全体的な形状が保持器Tとの相対関係において決まるので、実施例のように台形ないし鞘状の形状に限定されることはなく、また、保持器Tの構造や機能も様々となるものである。
【実施例1】
【0012】
図1ないし図8は一実施例を示したもので、その臀部用の看護練習器Pは、基端部を除いて全体的に及ぶような形状の骨部材1をインサート品とし、それに肉付けするようインサート成形されたもので、硬質の骨部材1に極柔らかい軟質樹脂材3を一体化して、適度な柔軟性と形状の安定化が図られる。
【0013】
骨部材1には、硬質の合成樹脂(例えばP.P)の成形品が使用され、軟質樹脂材3を充填するために空洞状に形成される。軟質樹脂材3としては、樹脂とゴムとを混合してなる弾力性にすぐれたエラストマーが使用される。非常に柔らかい軟質度は骨部材1のリブ性能により補完し安定化されている。
【0014】
骨部材1は、空洞の言わば殻状であって、それぞれ射出成形された上下一対の半殻片5,5を二枚合わせに組み合わせ、一端が全開口7となり、全開口7の基端から先端部に掛けて順次幅狭く差し込みやすい、言わば鞘型の殻形状であり、二枚合わせの半殻片5,5で組み立てられる。
【0015】
内部には開口7に全開する間口室20が横壁21により設けられ、それより奥において中央部が左右隔壁9,9により縦室8になっている。そして、間口室20と縦室8とに軟質樹脂材3が一体に充填され、さらに、この充填部と一体に開口7より張出部24が突出して形成される。
【0016】
なお、両半殻片5、5について、左右両端と先端には、上下に重なる合わせ鍔部10,10、10を有し、結合のために、一方の基端には凸部12,13を、他方にはそれに嵌るホゾ孔14や凹部15が設けられる。
【0017】
また、一の半殻片5については、厚みのある先端凸部13に縦室8が抜ける通路8aとともに排出管16が形成され、その排出管16が半殻片5の先端より突出される。また、鍔部10,10の二枚合わせ部分に、軟質樹脂材3を上下に連通させる抜穴18,18が設けられる。
【0018】
軟質樹脂材3は、内外一体に充填ないし成形されており、外部として基端部においては、端面開口7の全面より張出部分24が突設され、張出部24は、太く分厚い台部26とその幅中央部に突設される弾性筒部27とからなり、こうして、骨部材1を欠かせて特に柔軟性を付与する軟度アップにより、浣腸器の差し込みに熟練を要するよう工夫される。
【0019】
台部26の両横にはそれを挟む肩部30,30が形成され、両側から適度に支持して台部26に安定性が付与される。また、弾性凸部27の外周には環状凹溝28,28,28が形成される。なお、この環状凹溝28にゴム輪をかけて肛門口31を絞り調整することができる。外部にはさらに、各鍔部10,10、10の外面を全体的に被覆する軟質摩擦層33を有する。
【0020】
内部には前記したように軟質樹脂材3が充填され、その中に先方の前記排出管16に通じる肛門通孔35が形成されるが、途中には浣腸の過度な進入を防止する段差17が形成される。
【0021】
図2は、保持器Tを示したもので、保持器Tは、臀部に似せて割れ目39を有する椀状であって、携帯しやすくループ状の手掛け41が取り付けられる。
【0022】
使用については、臀部用の看護練習器Pを割れ目39の中にセットすると、内部において固定され、裏側の椀状口に排出管16が突出するので、排出管16に小型タンク41を取り付けた状態で使用する。
【実施例2】
【0023】
図9および図10は、摘便用として実施した他の例を示したもので、その摘便用の看護練習器Pbは、できるだけ同一金型や部材を使用することにより(図1等参照)コスト安が図られ、同じ形状の骨部材1と、同じようにインサート成形される軟質樹脂材3とからなるものであるが、操作初期部6は、軟質樹脂材3の張出部24において、肛門口31から指を差し込む肛門通孔35を形成し、肛門通孔35の先端に膨大した空洞部37を設け、空洞部37が骨部材1の開口部内に一部が納まる、言わば硬軟調和位置にあるので、摘便の操作時に、空洞部37が骨部材1に適度に支持される結果、過度にグラつくことがなく、実際に患者に対する摘便と同様のリアル感でコツを覚えながら操作ができ、練習効果が確実に得られる。ちなみに、軟質樹脂材3は、例えばトコロテン程度に柔らかいために、骨部材1の支持が無いならば、空洞部37の個所が過剰に柔らかく、空洞部37の位置が定まらなく不安定であるために指掻きが不能となる。この発明の場合、適度に骨部材1が支えるので、極柔らかい樹脂からなる空洞部37であっても、練習に過不足ない摘便の操作抵抗も得られる。
【0024】
ちなみに、使用するときには、空洞部37に疑似便を予め充填しておき、肛門口31から肛門通孔35に親指を差し込むことによりそれを少しずつ掻き出す操作となるが、骨部材1から離れている箇所に肛門通孔35があるので、指の差し込みにも適度な操作抵抗が伴う。
【実施例3】
【0025】
図11は、実施例1のものに類する浣腸用の練習器Pcを示したもので、金型パーツの入れ替えにより追加凸部39を設けることにより、軟質樹脂材3の張出部24における肛門通孔35が長く調整されている。
【符号の説明】
【0026】
P 臀部用の看護練習器
Pa、Pb、Pc 疑似肛門
1 骨部材
2 浣腸器(浣腸)
3 軟質樹脂材
6 操作初期部
7 開口
16 排出管
19 開口室
24 張出部
27 弾性筒部
31 肛門口
33 軟質摩擦層
35 肛門通孔
37 空洞部
39 追加凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11