(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状部の両端に他部材との接合のための接合部を有した芯材と、上記板状部の弱軸方向に直交する各面に対向して配置された拘束材とを備える座屈拘束ブレースにおいて、上記板状部と上記拘束材との間に、当該拘束材に接触して内挿板が設けられており、
上記拘束材は角形鋼管からなり、当該角形鋼管はその各面部の交差箇所に曲面領域を有する角部を有しており、
上記内挿板における上記拘束材と接触する側の面と上記拘束材の角部との間に、上記拘束材と上記内挿板とを固定する溶接部を設けたことを特徴とする座屈拘束ブレース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の座屈拘束ブレースにおいて、上記角形鋼管として規格品を用いると、当該規格品では幅や板厚が決まっているため、上記芯材の設計用軸力を所望の値にしたい場合に、これに合致した規格品が用意できない場合がある。このような場合に、1ランク上の角形鋼管を使うとすると、他の部材設計に影響が出てコストが高くなる。一方、特注で角形鋼管を作製する場合にもコストが高くつくことになる。なお、上記芯材の設計用軸力に対応できない拘束材が用いられ、設計用軸力を越えて芯材の弱軸方向の補剛力を受けてしまうと、上記拘束材に局部破壊が生じてしまうことになる。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、芯材の補剛力を受けた拘束材に局部破壊を生じさせない座屈拘束ブレース、並びに、芯材の補剛力を受けた拘束材に局部破壊を生じさせないための座屈拘束ブレースの評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の座屈拘束ブレースは、上記の課題を解決するために、板状部の両端に他部材との接合のための接合部を有した芯材と、上記板状部の弱軸方向に直交する各面に対向して配置された拘束材とを備える座屈拘束ブレースにおいて、上記板状部と上記拘束材との間に、当該拘束材に接触して内挿板が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、上記拘束材と上記内挿板とにより全体的な局部耐力を向上させることができ、上記芯材の弱軸方向の補剛力を受けた上記拘束材および上記内挿板に局部破壊を生じさせないようにすることができる。そして、上記拘束材で不足する局部耐力を上記内挿板で補うことができるので、上記拘束材として規格品を用いることができ、コストを抑制することができる。
【0009】
上記拘束材は角形鋼管からなり、当該角形鋼管はその各面部の交差箇所に曲面領域を有する角部を有していてもよい。
【0010】
上記内挿板と上記拘束材とが接触する面以外の箇所で上記内挿板が上記拘束材に固定されていてもよい。上記内挿板と上記拘束材とが固定されていると、上記内挿板と上記拘束材とが分離している状態に比べ、当該座屈拘束ブレースを組み立てる作業が容易になる。
【0011】
各内挿板は複数に分割されていてもよい。
【0012】
また、この発明の座屈拘束ブレースの評価方法は、板状部の両端に他部材との接合のための接合部を有した芯材と、上記板状部の弱軸方向の各面に対向して配置された拘束材とを備えており、上記板状部と上記拘束材との間に、内挿板が上記拘束材に接触して設けられている座屈拘束ブレースの評価方法であって、
上記拘束材は角形鋼管からなり、当該角形鋼管はその各面部の交差箇所に曲面領域を有する角部を有しているとし、
上記曲面領域を有する角部を平面領域として単純化することで上記角形鋼管の断面を八角形で表し、降伏線理論を用いて、上記芯材の弱軸方向への補剛力で上記角形鋼管および上記内挿板に舟底形の座屈が生じるとし、上記舟底形の座屈の幅を未知数xとし、上記舟底形の中央部と両端部における上記角形鋼管および上記内挿板の各々の降伏線の回転角を上記未知数xの関数とし、また、上記平面領域に単純化した箇所での上記角形鋼管の降伏線の回転角を上記未知数xの関数とし、
上記関数を用いて求めた上記角形鋼管の局部耐力と上記関数を用いて求めた上記内挿板の局部耐力とを足し合せた合計局部耐力が、安全率を加味して、または安全率を加味せずに、上記芯材の弱軸方向への補剛力を上回るか否かにより、上記座屈拘束ブレースを評価することを特徴とする。
【0013】
上記の評価方法であれば、上記曲面領域を有する角部を平面領域として単純化することで上記角形鋼管の断面を八角形で表すので、比較的簡単な数式で座屈拘束ブレースを評価することが可能になる。
【0014】
また、この発明の座屈拘束ブレースの評価方法は、板状部の両端に他部材との接合のための接合部を有した芯材と、上記板状部の弱軸方向の各面に対向して配置された拘束材とを備えており、上記板状部と上記拘束材との間に、内挿板が上記拘束材に接触して設けられている座屈拘束ブレースの評価方法であって、
上記芯材の弱軸方向への補剛力で上記拘束材である角形鋼管および上記内挿板に舟底形の座屈が生じるとし、上記舟底形の座屈の幅を未知数x、角形鋼管の降伏応力度を
RF
y、内挿板の降伏応力度を
PF
y、角形鋼管の幅をB
R、内挿板の幅をB
P、角形鋼管の板厚をt
R、内挿板の板厚をt
p、円周率 をπとし、
【数11】
【数13】
上記の数13の数式で表される未知数xを、上記の数11で表される局部塑性耐力P
Rを求める数式に代入して得られる計算式に基づいて上記座屈拘束ブレースを評価することを特徴とする。
【0015】
上記の評価方法であれば、上記の比較的簡単な数式で座屈拘束ブレースを評価することが可能になり、例えば、一般的な表計算ソフトウェアを用いて簡単に評価結果を出すことができる。
【0016】
また、上述したいずれかの座屈拘束ブレースにおいて、上記芯材の弱軸方向への補剛力で上記拘束材である角形鋼管および上記内挿板に舟底形の座屈が生じるとし、上記舟底形の座屈の幅を未知数x、角形鋼管の降伏応力度を
RF
y、内挿板の降伏応力度を
PF
y、角形鋼管の幅をB
R、内挿板の幅をB
P、角形鋼管の板厚をt
R、内挿板の板厚をt
p、円周率 をπとし、
【数11】
【数13】
上記の数13の数式で表される未知数xを、上記の数11で表される局部塑性耐力P
Rを求める数式に代入して得られる計算式に基づき、上記補剛力で座屈を生じないとされた内挿板が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明であれば、既製の角形鋼管などの部材を拘束材として用いることが容易になり、高コスト化を招来することなく、芯材の補剛力を受けた拘束材に局部破壊を生じさせないようにできる。また、本発明の座屈拘束ブレースの評価方法であれば、比較的簡単な数式で座屈拘束ブレースを評価することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(A)、
図1(B)、
図2(A)および
図2(B)に示すように、この実施形態の座屈拘束ブレース1は、芯材11と、拘束材12と、内挿板13と、アンボンド材14と、幅方向補剛材15と、補強板16とを備える。
【0020】
上記芯材11は、例えば、鋼板からなり、板状部11aの両端に接合部11bを有している。上記板状部11aは一定幅であり、これよりも両端の接合部11bの方が広がった形状とされている。上記接合部11bは、上記板状部11aの長手方向に直交する面の断面が略H形状に作製されており、この接合部11bに添板を配置して他部材に接合することができる。上記接合部11bにおけるフランジ部となる箇所およびウェブ部となる箇所には、上記接合のためのボルトが挿通される孔が形成されている。また、上記板状部11aから上記接合部11bに至る境界領域では、上記板状部11aの幅が徐々に曲線状に広がって上記接合部11bのウェブ部をなすように形状が変化している。
【0021】
上記拘束材12は、断面が長方形の角形鋼管からなる。この角形鋼管は、上記長方形の長辺側となる第1面部と、短辺側となる第2面部とを有する。上記拘束材12は、上記第1面部が上記芯材11の上記板状部11aの弱軸方向(芯材11の板厚方向)に直交する各面に対向して配置されている。上記拘束材12の長手方向の両端部は、上記曲線状の広がり部分を越えて上記接合部11bにおける上記ウェブ部分に至っている。また、上記角形鋼管は、その各面部の交差箇所に曲面領域(R部)を有する角部を有している。
【0022】
上記内挿板13は、鋼板からなり、上記板状部11aと各拘束材12との間に設けられている。そして、上記内挿板13は、上記拘束材12である上記角形鋼管の第1面部に接触している。また、上記内挿板13は、上記角形鋼管の第2面部の表面間の長さに一致する幅を有している。もちろん、このような幅に限らず、上記内挿板13は、上記角形鋼管の第2面部の表面間の長さ以下で上記曲面領域以外の上記第1面部の幅以上の幅を有していてもよい。ここで、B
Rを角形鋼管の幅、B
Pを内挿板13の幅、t
Rを角形鋼管の板厚をとすると、上記内挿板13の幅B
Pは、B
R−5t
R≦B
P≦B
Rと表すことができる(
図6参照)。なお、角形鋼管の幅B
Rは、上記芯材11の弱軸方向に交差する面における短辺方向の長さであり、上記拘束材12となる角形鋼管においては上記第2面部の表面間の長さとなる。
【0023】
また、上記芯材11の長手方向の中央側であって幅方向の中央側には、芯材11の両面に突出するピン状のずれ止め突起11cが設けられている。このずれ止め突起11cは、上記拘束材12の内側となる上記第1面部に設けられた孔および上記内挿板13に形成された孔に、当該座屈拘束ブレース1の組み立て時に挿入される。上記ずれ止め突起11cは、鋼棒などの鋼材からなり、例えば、上記芯材11に設けられた孔内に挿入して接合される。
【0024】
また、上記芯材11には、上記ずれ止め突起11cを挟む上記芯材11の長さ方向の両側のそれぞれに、耐力調整用の中間スリット11dが設けられている。各中間スリット11d内には、スペーサとなる鋼材などからなる内部変形防止材が中間スリット11dに対して長手方向に相対移動可能に挿入されている。上記内部変形防止材は、上記内挿板13、13の間に介在し、中間スリット11dの深さ方向に対しては上記内挿板13、13により位置規制される。
【0025】
上記アンボンド材14は、上記板状部11aと上記内挿板13との間に設けられており、このアンボンド材14の厚みをクリアランスとして上記板状部11aが圧縮力を受けたときに波状の変形が生じるようになっている。上記アンボンド材14は、例えばブチルゴムなどからなる。
【0026】
上記幅方向補剛材15は、鋼板からなり、芯材11の幅方向(構面内)の変形を拘束する。この幅方向補剛材15は、上記拘束材12、12の上記第2面部間に掛け渡されており、溶接部15aによって上記拘束材12、12に固定されている。また、上記幅方向補剛材15の端部には、
図3(A)および
図3(B)にも示すように、当該端部側に開口を有するU字状のカット部15bが形成されており、このカット部15b内に上記板状部11aの上記曲面領域が位置している。上記カット部15bが形成されていることにより、上記芯材11における上記接合部11bの近傍部分が上記幅方向に拘束されず、無補剛区間(ハッチング部分)となる。このように拘束材12に上記幅方向補剛材15を固定し、芯材11における上記接合部11bの近傍に強軸方向の無補剛区間を設けることで、大変形時に当該座屈拘束ブレース1に曲げヒンジが形成され(図の白抜き矢印参照)、上記拘束材12や内挿板13に曲げや軸力が入って拘束材12や内挿板13が損傷することが防止される。
【0027】
上記補強板16は、鋼板からなり、上記芯材11における接合部11bのフランジ部間に渡され、当該フランジ部に溶接固定されている。上記補強板16は上記無補剛区間(上記カット部15b)に重なるように設けられている。上記拘束材12の端部が上記芯材11の弱軸方向に開くと、当該座屈拘束ブレース1の端部が損傷することになるが、上記補強板16を設けることで、上記損傷が防止される。また、上記補強板16を上記無補剛区間に重なるように設けることで、上記カット部15bを見えにくくできる。
【0028】
図4に示すように、上記内挿板13と上記拘束材12とが接触する面以外の箇所、例えば、4隅であって上記拘束材12の角部と上記内挿板13との間の凹となる箇所に、溶接部17を設けることにより、上記内挿板13を上記拘束材12に固定してもよい。
【0029】
上記の構成であれば、上記拘束材12と上記内挿板13とによる全体的な局部耐力を向上させることができ、上記芯材11の弱軸方向の補剛力を受けた上記拘束材12および上記内挿板13に局部破壊を生じさせないようにすることができる。そして、上記拘束材12で不足する局部耐力を上記内挿板13で補うことができるので、上記拘束材12として規格品を用いることができ、製造コストを抑制することができる。
【0030】
上記内挿板13と上記拘束材12とが接触する面以外の箇所で上記内挿板13が上記拘束材12に固定されていると、上記内挿板13と上記拘束材12とが分離している状態に比べ、当該座屈拘束ブレース1を組み立てる作業が容易になる。上記溶接部15aの箇所を接着材による接着部に代えることも可能である。
【0031】
また、各内挿板13は複数に分割されていてもよい。例えば、上記内挿板13がその厚み方向に分割され、複数の薄い板厚の内挿板を積層させる構造としてもよい。また、上記内挿板13が幅方向に分割され、同板厚の複数の内挿板を横に並べた構造としてもよい。
【0032】
次に、座屈拘束ブレースの評価方法について説明していく。拘束材の鋼管および内挿板は,次式を満足して芯材弱軸方向への局部破壊が生じないように設計する。下記の数1の式において、P
Ry を拘束材(角形鋼管および内挿板13)の局部耐力とし、R
L を局部耐力の低減係数(安全率)とする。また、C
1 は芯材弱軸方向への補剛力とする。すなわち、数1の式で示すように、芯材11の変形による補剛力よりも拘束材(ここでは、角形鋼管と内挿板の全体を意味する)の耐力を大きくすることで局部破壊を防止する。
【0034】
上記補剛力には一般的な算定式があるが、拘束材の局部変形に対する一般式がないため独自に設計式を立てている。また,実際の設計では,鋼管の局部耐力を0.8倍程度低減し、局部破壊に対する安全率を設けることとする。以下に芯材の変形による補剛力の算定式で一般的なものを示す。
【0035】
芯材11は圧縮力に対しては,クリアランス内で高次モードでの座屈を呈する。このとき,芯材11の弱軸方向へ拘束材を面外に押す力C
1(補剛力)が生じる。補剛力C
1によって拘束材の板要素が曲げ降伏して局部的な面外変形を生じる破壊形式を芯材弱軸方向の局部破壊と呼ぶ。拘束材の局部破壊を防止するには,拘束材の局部降伏耐力P
Ry が補剛力C
1よりも大きい必要がある。補剛力C
1は,
図5(A)に示す系の力の釣合条件より、次式で表わされる。
【0037】
ここで、2sは芯材11と拘束材のクリアランス(アンボンド材14の厚さ)、l
n1は芯材11の弱軸方向への高次の座屈モードの波長である。芯材11の軸力が降伏軸力に達すると
図5(B)に示すような座屈モードが生じ,この形は歪硬化による耐力上昇や繰返しに対しても変わらないものと仮定する。このときl
n1は対応する接線係数荷重をN
yに等置して次式から得られる。
【0039】
ここで、E
tは接線係数である。また、I
sは芯材11の弱軸回りの断面二次モーメントであり、次式で表わされる。
【0041】
ここで,B
hは芯材11の幅、B
sはスリット11dの幅、t
sは芯材11の板厚である。接線係数E
tは歪硬化係数e
tを用いて次式で表わされる。歪硬化係数は既往の文献を参照して0.05とした。
【0043】
「角形鋼管である拘束材12の局部耐力」と「内挿板13の局部耐力」を足し合わせたものを「拘束材局部耐力」(合計局部耐力)とする。
【0044】
「角形鋼管である拘束材12の局部耐力」は、角形鋼管の板厚をt
Rとすると、
図6のAE線上に補剛力が作用したときにAE線が一様に2t
R下がることで、角形鋼管が舟底形に変形するよう角形鋼管の変形を仮定する。角形鋼管の曲面角部を平坦化して八角形とすることで本来複雑な変形となる鋼管角部の曲面の変形状態を簡易に算定することが可能となる。舟底形の幅は未知数xとしており、各種パラメータをもとにエネルギーの釣合式を立てた後に算出される。
【0045】
なお、
図6において、「角形鋼管崩壊機構(断面図)」における実線は、角形鋼管の板厚の中心を示すとともに、角形鋼管の曲面角部を平坦化した部分も示している。「角形鋼管崩壊機構(伏図)」におけるD点、E点、F点は、角形鋼管の第1面部の幅方向の中央部を示しており、角形鋼管の長手方向に並ぶ。また、A点は平坦化した部分のなかで最も第2面部側に近い点であり、B点およびD点は、平坦化した部分のなかで最も第1面部側に近い点である。AE線、AB線、AC線は、角形鋼管の曲面角部を通るのではなく、平坦化した部分を通る直線とする。また、「内挿板崩壊機構(伏図)」におけるJ点、K点、L点は、内挿板13の幅方向の中央部を示しており、内挿板13の長手方向に並ぶG点、H点、I点は、内挿板13の幅方向縁部を示している。
【0046】
「内挿板13の局部耐力」は、
図6のHK線上に補剛力が作用したときに、GJ、HK、ILの3本の降伏線(折れ曲がり)が「鋼管の局部耐力」の舟底と同じ幅で生じると仮定し、簡易な式で耐力を算定する。崩壊機構を仮定した後の式の導出については、一般的な降伏線理論の考え方を用いることができる。
【0047】
上記拘束材局部耐力(角形鋼管および内挿板の各局部耐力の和)であるP
RY は、降伏線理論を用いて算定する。
図6に示すように、補剛力C
1が作用して面外変形δが生じるとする。ここでδは角形鋼管の角部の曲率半径2t
Rに等しいと置く。
【0048】
また、対称性を考慮して,
図6の崩壊機構の半分を対象にして考える。各降伏線(AB,AE等)の回転角(θ)を以下に示す。
【0050】
ここで、l
ABは降伏線ABの長さである。また、t
pは内挿板13の板厚である。xの値は未知であり、内部仕事が最小の条件で決定する。降伏線における単位長さ当たりの角形鋼管の全塑性モーメント
RM
p、降伏における単位長さ当たりの内挿板13の全塑性モーメント
PM
yを次式で与える。
【0052】
ここで、
RF
yは角形鋼管の降伏応力度、
PF
yは内挿板13の降伏応力度、各降伏線における内部仕事を次式で与える。なお、lは各降伏線(AB,AE等)の長さである。
【0054】
ここで、B
Rは角形鋼管の幅、B
Pは内挿板13の幅である。
降伏線における内部仕事の総和Eは次式で表わされる。
【0056】
局部塑性耐力をP
Rとし、外力仕事Wを次式で与える。
【0058】
外力仕事と内部仕事を等しいと置くと、局部塑性耐力P
Rは次式で与えられる。
【0060】
局部降伏耐力P
Ry を次式で与える。なお、2/3倍することに限定するものではない。
【0062】
局部降伏耐力P
Ryをxで微分し、x=0と置いて解くと、未知数xは次式で表わされる。
【0064】
RF
y:角形鋼管の降伏応力度
PF
y:内挿板の降伏応力度
B
R:角形鋼管の幅
B
P:内挿板の幅
t
R:角形鋼管の板厚
t
p:内挿板の板厚
π:円周率
【0065】
数13の式で求めたxを数12の式に代入することで、局部降伏耐力P
Ry が求まる。このようにして得られた局部降伏耐力P
Ryを数1の式に照らして、座屈拘束ブレース1を評価する。
【0066】
すなわち、上記座屈拘束ブレースの評価方法は、上記板状部11aの両端に他部材との接合のための接合部11bを有した芯材11と、上記芯材11の上記板状部11aの弱軸方向の各面に対向して配置された拘束材12とを備えており、上記板状部11aと上記拘束材12との間に、内挿板13が上記拘束材12に接触して設けられている座屈拘束ブレース1を評価する方法である。
【0067】
そして、上記拘束材12は角形鋼管からなり、当該角形鋼管は各面部の交差箇所に曲面領域を有する角部を有するとする。
【0068】
そして、
図7のフローチャートに示すように、上記曲面領域を有する角部を平面領域として単純化することで上記角形鋼管の断面を八角形でモデル化する(ステップS1)。
【0069】
そして、降伏線理論を用いて、上記芯材の弱軸方向への補剛力で上記角形鋼管および上記内挿板に舟底形の座屈が生じるとし、上記舟底形の座屈の幅を未知数xとし、上記舟底形の中央部における上記角形鋼管および上記内挿板の各々の降伏線の回転角を上記未知数xの関数とし、また、上記平面領域に単純化した箇所での上記角形鋼管の降伏線の回転角を上記未知数xの関数とする(ステップS3)。
【0070】
上記関数を用いて求めた上記角形鋼管の局部耐力と、上記関数を用いて求めた上記内挿板の局部耐力とを足し合せて、上記局部降伏耐力P
Ry(合計局部耐力)を得る(ステップS4)。そして、上記局部降伏耐力P
Ryが、安全率を加味して、或いは安全率を加味せずに、上記芯材11の弱軸方向への補剛力(C
1)を上回るか否かを判断する(ステップS5)。上記局部降伏耐力P
Ryが補剛力(C
1)を上回れば、適正であり、そうでなければ不適性とされる。
【0071】
上記数12の局部降伏耐力P
Ryを求める式のxに数13のxを表す式を代入するプログラム、或いは代入して得た数式をパーソナルコンピューター等に記憶させておけば、上記内挿板13の板厚等を入力するだけで、評価結果が得られることになる。なお、上記プログラム或いは数式は簡単であるので、一般的な表計算ソフトウェアを用いて記述することもできる。
【0072】
上記評価方法であれば、上記曲面領域を有する角部を平面領域として単純化することで上記角形鋼管の断面を八角形で表したことにより、比較的簡単な数式により座屈拘束ブレースを評価することが可能になり、例えば、一般的な表計算ソフトウェアを用いて、上記内挿板13の適切な厚みを簡単に求めることができる。なお、上記内挿板13がその厚み方向に分割され、複数の薄い板厚の内挿板を積層させる構造であれば、内挿板の耐力項が枚数分増加するだけであり、大きな変更はない。
【0073】
そして、この実施形態の座屈拘束ブレース1は、上記ステップS5の判断で適正となる条件を満たす内挿板13を備えている。すなわち、この実施形態の座屈拘束ブレース1は、上記の数13の数式で表される未知数xを、上記の数11で表される局部塑性耐力P
Rを求める数式に代入して得られる計算式に基づき、上記補剛力で座屈を生じないとされた内挿板13が設けられている。
【0074】
上記接合部11bと他部材との接合には、添板を用いる。例えば、
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)に示す例では、添板として、フランジプレート2およびウェブプレート3を用いている。上記接合部11bのフランジ部となる部位では、当該フランジ部を図において上下から挟むように上記フランジプレート2が設けられており、ボルト・ナットにより固定される。同様に上記接合部11bのウェブ部となる部位では、当該ウェブ部を図において左右ら挟むように上記ウェブプレート3が設けられており、ボルト・ナットにより固定される。この接合は、設計用軸力が大きい場合に用いられる。なお、この
図8に示す接合では、例えば、上記拘束材12として幅60mm程度の角形鋼管が用いられると、ボルトが納まらないなどの問題が生じる。
【0075】
そこで、
図9(A)、
図9(B)、
図9(C)に示すように、上記接合部11bのウェブ部となる部位において、当該ウェブ部を図において左右から挟むように断面略T字形の部材4を配置し、この部材4をボルト・ナットにより固定する。上記接合部11bのフランジ部となる部位では接合プレートを用いないことで、上記拘束材12として幅60mm程度の角形鋼管が用いられる場合でも、ボルトが納まることになる。この接合は、設計用軸力が小さい場合に用いられる。
【0076】
また、
図10(A)、
図10(B)、
図10(C)に示す例では、上記接合部11bのウェブ部となる部位において、当該ウェブ部を図において左右から挟むように断面略コ字形の部材5を配置し、この部材5をボルト・ナットにより固定する。この接合も、上記接合部11bのフランジ部となる部位では接合プレートを用いないことで、上記拘束材12として幅60mm程度の角形鋼管が用いられる場合でも、ボルトが納まることになる。この接合も、設計用軸力が小さい場合に用いられる。
【0077】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。